(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上の多層フィルムであることを必須の要件とするものである。
【0012】
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレ−ト(PEN)等が例示される。
【0013】
また、本発明で用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノーネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる
また、本発明のポリエステルフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等を混合することができる。また、導電材料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、蛍光増白剤、潤滑剤、遮光剤、マット化剤、および染料、顔料などの着色剤等を配合してもよい。また、必要に応じ、フィルムの滑り性や耐摩耗性を改良する目的などのために、ポリエステルに対し、不活性な無機または有機の微粒子などを配合することもできる。さらにその上に静電気による電撃、ゴミ付着防止、さらには電磁波シールドを目的とした機能性多層薄膜を形成してもよい。
【0014】
次に、本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を乾燥したペレットを単軸押出機を用いて、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。
【0015】
その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。
【0016】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0017】
また、本発明においては積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0018】
本発明のフィルムの全フィルム厚さは、10〜50μmの範囲が好ましい。全フィルム厚さが10μm未満の場合、グリーンシート塗設時のポリエステルフィルムのハンドリングが難しくなる場合がある。また、50μmより厚い場合、フィルムの厚さムラの絶対値が大きくなり、この影響でグリーンシートを均一に塗設することが難しくなる場合がある。
【0019】
本発明のフィルムは、平滑面側の最表層の厚さを1μm以上とすることが好ましく、より好ましくは2μm以上である。最表層の厚さが1μm未満の場合、ポリエステルの表面特性に内層の影響が現れてしまうことがある。
【0020】
本発明のフィルムの平滑面側の最表層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、酸化アルミニウム粒子を配合することが好ましい。添加する酸化アルミニウム粒子の平均一次粒子径は5〜100nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜100nmの範囲である。平均一次粒子径が5nm未満の場合は、平滑面の微細な凹凸構造を発現させることができない。また平均一次粒径が100nmを超える場合は、本発明の請求の範囲の表面粗度を達成できない恐れがある。
【0021】
また、酸化アルミニウム粒子の添加量は1000〜15000ppmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2000〜5000ppmの範囲である。酸化アルミニウム粒子の添加量が1000ppm未満の場合は、平滑面の微細な凹凸構造を発現させることができないのみでなく、併せて十分な耐擦傷性も実現できない恐れがある。また、添加量が15000ppmを超える場合は酸化アルミナ粒子同士が凝集体を生成し、フィルム表面の表面突起となり、後工程で塗設するグリーンシートの表面の平滑性に悪影響を与える恐れがある。
【0022】
また、本発明のフィルムの平滑面側の表面粗さ(Ra)は、0.001〜0.005μmの範囲であることを必須の条件とする。平滑面側の表面粗さ(Ra)が0.001μm未満である場合は、当該ポリエステルフィルムのグリーンシート塗設後の剥離工程で、フィルム表面が平滑すぎるために剥離不具合が発生しやすくなる。平滑面側の表面粗さ(Ra)が0.005μmを超える場合は、グリーンシートスラリーの塗工時に塗工欠陥が発生しやすくなる。
【0023】
本発明のフィルムの粗面側の最表層中も、易滑性の付与を主たる目的として、易滑性付与可能な粒子を添加する。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。添加する粒子の平均一次粒子径は5〜500nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜500nmの範囲である。平均一次粒子径が5nm未満および500nmを超える場合は、本発明の請求の範囲の表面粗度を達成できない恐れがある。
【0024】
また、粒子の粗面側に添加する粒子の添加量は1000〜30000ppmの範囲が好ましく、さらに好ましくは2000〜10000ppmの範囲である。粒子の添加量が1000ppm未満の場合は、フィルムの十分な巻き取り性を実現させることができない可能性がある。また、添加量が30000ppmを超える場合は粒子濃度が高くなりすぎ、粒子同士が凝集体を生成し、フィルム表面に突起形状が形成され、表面欠陥となる恐れがある。
【0025】
本発明において、ポリエステルに粒子を配合する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0026】
本発明のフィルムの粗面側の表面粗さ(Ra)は、0.010〜0.030μmの範囲であることを必須の条件とする。粗面側の表面粗さ(Ra)が0.010未満である場合は、ポリエステルフィルム製造時および当該ポリエステルフィルムの加工時にフィルム表面が平滑すぎて巻き取り工程で巻きずれ等の不具合が発生しやすくなり、粗面側の表面粗さ(Ra)が0.030μmを超える場合は、当該ポリエステルフィルム巻取り時に粗面側の突起形状が平滑面側に転写することによりグリーンシートの平滑性が十分に達成できなくなる。
【0027】
また、本発明において、ポリエステルフィルムに含有されるカルシウム化合物、珪素化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。これら化合物はポリエステルフィルム製造工程中にポリエステルフィルム表面からの脱離することがあり、特に100ppm以上含有される場合は、積層ポリエステルフィルムの製造時に、これら化合物の脱離物がフィルムへ巻き込まれることが高い頻度で発生し、ポリエステルフィルムの当該部分は表面平滑性を失うこととなり、該フィルムを加工して製造した製品の欠陥となる可能性がある。
【0028】
また、本発明において、ポリエステルフィルムに含有されるアンチモン化合物の含有量は100ppm以下であることが好ましい。特にアンチモン化合物の含有量が100ppmをこえる場合、往々にして、ポリエステルフィルム製造工程において、フィルム表面にアンチモン化合物析出由来の突起を形成させる場合がある。当該突起は、従来、汎用的な用途においては全く問題にならないが、本願発明のように、より高度なレベルにおいて、平滑性を必要とされる用途、例えば、グリーンシート成形用等においては致命的な問題となる。例えば、当該突起形成部においては、成形後のグリーンシート表面に形状転写する等の不具合を生じる場合がある。
【0029】
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。製膜と同時に塗布が可能であるため、製造が安価に対応可能であることから、インラインコーティングが好ましく用いられる。
【0030】
インラインコーティングについては、以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては、特に縦延伸が終了した横延伸前にコーティング処理を施すことができる。インラインコーティングによりポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、製膜と同時に塗布が可能になると共に、延伸後のポリエステルフィルムの熱処理工程で、塗布層を高温で処理することができるため、塗布層上に形成され得る各種の表面機能層との密着性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。また、延伸前にコーティングを行う場合は、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。すなわち、インラインコーティング、特に延伸前のコーティングにより、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
【0031】
本発明においては、平滑面側に、離型剤を含有する塗布液から形成される塗布層を有することを必須の要件とするものである。
【0032】
本発明のフィルムの平滑面側に形成する塗布層は、例えば、セパレートフィルム用等、離型性能を向上させるために設けられるものである。
【0033】
本発明のフィルムの平滑面側の塗布層の形成に使用する離型剤は、フィルムの離型性を向上させるために用いるもので、特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することが可能であり、例えば、長鎖アルキル化合物、ワックス、フッ素化合物、シリコーン化合物等が挙げられる。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。
【0034】
長鎖アルキル化合物とは、炭素数が6以上、特に好ましくは8以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。具体例としては、特に限定されるものではないが、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。
【0035】
ワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度数平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。これらのワックスの中でも性能が安定する、入手が容易であるという観点から合成炭化水素系が好ましく、酸化ポリエチレンワックスや酸化ポリプロピレンワックスがより好ましい。
【0036】
フッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。インラインコーティングによる塗布外観の点で有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましく、また、効果的に滑り性を向上させるためにパーフルオロアルキル基含有化合物が好ましい。
【0037】
シリコーン化合物とは、分子内にシリコーン構造を有する化合物のことであり、シリコーンエマルション、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮し、硬化型シリコーン樹脂を含有することが好ましい。
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型、縮合型、紫外線硬化型、電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0038】
これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数使用してもよい。また、これらの離型剤の中でも工程汚染を考慮するとシリコーン化合物ではないことが好ましく、また、離型性能を考慮すると長鎖アルキル化合物あるいはフッ素化合物であることがより好ましい
本発明の離型剤を含有する塗布液には、塗布外観や透明性の向上、離型性のコントロールために、各種のポリマーや架橋剤を併用することが可能である。
【0039】
ポリマーとしては例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも特に離型性のコントロールがしやすいという点において、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0040】
架橋剤としては、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられ、特に塗布層を強固にして、安定した離型性を出すために、メラミン化合物を併用することが好ましい。
【0041】
メラミン化合物としては、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
【0042】
なお、これら架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
【0043】
本発明における離型剤を含有する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、離型剤は、通常5重量%以上の範囲、好ましくは10〜90重量%の範囲、より好ましくは20〜85重量%の範囲である。5重量%未満の場合は離型性が十分でない場合がある。
【0044】
本発明における離型剤を含有する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤は、通常90重量%以下の範囲、好ましくは5〜80重量%の範囲、より好ましくは10〜60重量%の範囲である。上記範囲より外れる場合は、離型性が十分でない場合がある。
【0045】
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、離型剤を含有する塗布液から形成される塗布層の膜厚は、通常0.001〜1.0μm、好ましくは0.01〜0.3μm、より好ましくは0.02〜0.2μmの範囲である。膜厚が上記範囲より外れる場合は、離型性や塗布外観が悪化する場合がある。
【0046】
本発明におけるポリエステルフィルムは、平滑面側に、離型剤を含有する塗布液から形成される塗布層を有するが、フィルムの粗面側に同様のあるいは他の塗布層や機能層を設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
【0047】
例えば、ポリエステルフィルムの平滑面側に離型剤を含有する塗布液から形成される塗布層を設け、粗面側に帯電防止性能およびエステル環状三量体の析出を封止する性能を付与する目的で、四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液から形成される塗布層を設けることが好ましい。なお、四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液中には、その他の成分を含有していても構わない。
【0048】
ここでいう四級アンモニウム基含有ポリマーとは、分子内に四級化されたアンモニウム基を有する高分子化合物を指す。
【0049】
四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液から形成される塗布層では、例えば、四級アンモニウム基と不飽和性二重結合を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
【0050】
かかる重合体の具体的な例としては、例えば下記式1または下記式2で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体が挙げられる。これらの単独重合体や共重合体、さらに、その他の複数の成分を共重合していても構わない。
【0052】
上記式中、R
1は水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基、R
2は−O− または −NH− 、R
3は炭素数が1〜6のアルキレン基または式1の構造を成立しうるその他の構造、R
1、R
2、R
3はそれぞれが、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基、X
−は1価の陰イオンである。
【0054】
上記式中、R
1およびR
2はそれぞれ、水素原子または炭素数が1〜3のアルキル基、X
−は1価の陰イオンである。
【0055】
式1で示される構成要素を持つ重合体は、得られる塗布層の透明性に優れ好ましい。ただし塗布延伸法においては、耐熱性に劣る場合があり、塗布延伸法に用いる場合、X
−はハロゲンではないことが好ましい。
【0056】
式2で示される構成要素や、その他の四級アンモニウム塩基が高分子骨格内にある化合物は、耐熱性に優れており、塗布延伸法においても帯電防止性が得られやすい。
【0057】
また、式1ないし式2で示される構成要素と、ポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートとが共重合されているポリマーは、構造が柔軟となり、塗布延伸の際には、均一性に優れた塗布層が得られ好ましい。
【0058】
あるいは、ポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートポリマーを、塗布液中に含有して塗布することでも、同様に均一性に優れた塗布層を得ることができる。
【0059】
かかるポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートとしては具体的には、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(ポリエチレグリコール単位の重合度は4〜14の範囲が好ましい。)、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート等を出発原料とする重合体が例示される。
【0060】
なお、四級アンモニウム基含有ポリマーが、塗布液中の不揮発分全体に占める割合としては、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは20重量%以上である。含有量がこれより少ない場合、帯電防止性能が不十分となることがある。一方、上限は通常90重量%であり、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下である。含有量がこれより多い場合、得られる塗膜の均一性や外観に劣ることがある。
【0061】
また、四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液における多価アルデヒド化合物としては、例えばグリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、シクロヘキサンジアルデヒド、トリシクロデカンジアルデヒド、ノルボルナンジアルデヒド、スベルアルデヒド等が挙げられる。さらにこれらのアルデヒド基にグリコールやアミドを反応させたものも使用できる。特に、グリオキサールにエチレングリコールやグリセリン等の多価アルコール類、グルコース、ガラクトース等の単糖類、あるいは環状アミドを反応させたものは好ましく使用できる。かかる反応物は常温において多価アルデヒドの反応性を抑制し、塗布、乾燥後に、エチレングリコール等のグリコール類や環状アミドが外れ、塗布層の中でアルデヒドの反応が開始するため、取扱いが容易になるとともに、一旦エチレングリコール等のグリコール類や環状アミドが外れた後は、その高い反応性のために遊離の反応残基が少なくなり、経時での性能安定や、安全衛生上の利点がある。
【0062】
四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液は、ポリビニルアルコールを含有していることが好ましい。この様にして得られた塗布層を有するポリエステルフィルムは、加熱した際に、フィルム表面からのエステル環状三量体成分の析出がより抑制される傾向がある。
【0063】
四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液に配合するポリビニルアルコールは、通常の重合反応によって合成することができ、水溶性であることが好ましい。
【0064】
ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000のものが用いられる。重合度が100以下の場合、塗布層の耐水性が低下する傾向がある。ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上で99.9モル%以下であるポリ酢酸ビニルけん化物が実用上用いられる。
【0065】
また、四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液に熱硬化性の架橋成分を配合すると、得られる塗布層の耐久性が向上して好ましい。かかる架橋成分としては、例えばアミノ樹脂系、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系などが挙げられる。他のポリマー骨格に反応性基を持たせた、ポリマー型架橋反応性化合物も含まれる。本発明において特に好ましい様態としては、アミノ樹脂系の架橋剤を例示することができる。アミノ樹脂系の架橋剤としては、例えばアルキロール化したメラミン系、ベンゾグアナミン系、尿素系などがある。特に、アミノ基をメチロール化し、さらにそのメチロール基の一部をメチル化したものが、水溶性で取扱いがよく、反応性も高く、フィルムからのエステル環状三量体の析出が少ない積層ポリエステルフィルムが得られる。
【0066】
かかる架橋成分を含有する場合、同時に架橋を促進するための成分、例えば架橋触媒などを併用することができる。
【0067】
また、四級アンモニウム基含有ポリマーおよび多価アルデヒド化合物を含有する塗布液から形成される塗布層の厚さは、最終的に得られるフィルム上の皮膜厚さとして、通常0.003μm〜1μmの範囲であり、好ましくは0.005μm〜0.5μm、さらに好ましくは0.01μm〜0.2μmの範囲である。厚さがこれより薄い場合には、フィルムから析出するエステル環状三量体量が十分に少なくならないことがある。またこれより厚い場合には、塗布層の外観の悪化や、ブロッキングしやすくなるなどの問題が生じることがある。
【0068】
本発明のフィルムにおいて、塗布層の厚みは、塗布フィルムをルテニウム化合物やオスミウム化合物等の重金属を用いて染色を行い、超薄切片法により塗布フィルムの断面を調整した後、透過型電子顕微鏡にて塗布フィルム断面の塗布層を複数個所観測し、その実測値を平均することで確認することができる。
【0069】
本発明のフィルムにおいて、塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
【0070】
本発明のフィルムにおいて、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0071】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0072】
一方、インラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、70〜270℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0073】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0074】
本発明で用いる塗布剤は、水を主たる媒体とする限りにおいて、水への分散を改良する目的または造膜性能を改良する目的で少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は、水に溶解する範囲で使用することが必要である。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらの有機溶剤は、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0075】
本発明において用いる塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
【0076】
また本発明の趣旨を損なわない範囲において、滑り性、固着性などをさらに改良するため、塗布層中に無機系粒子や有機系粒子を含有させてもよい。
【0077】
無機粒子としては、二酸化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化バリウム、カーボンブラック、硫化モリブデン、酸化アンチモン等が挙げられる。これらの中では、二酸化ケイ素が安価でかつ粒子径が多種あるので利用しやすい。
【0078】
有機粒子としては、炭素−炭素二重結合を一分子中に2個以上含有する化合物(例えばジビニルベンゼン)により架橋構造を達成したポリスチレンまたはポリアクリレートポリメタクリレートが挙げられる。
【0079】
上記の無機粒子および有機粒子は表面処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、界面活性剤、分散剤としての高分子、シランカップリング剤、チタンカップリング剤などが挙げられる。塗布層中の粒子の含有量は、透明性を阻害しない適切な添加量として10重量%以下が好ましく、さらには5重量%以下が好ましい。
【0080】
また、塗布層は、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料などを含有していてもよい。
【0081】
本発明における積層ポリエステルフィルムを熱処理(180℃、10分間)した後における平滑面側のフィルム表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるエステル環状三量体の量は好ましくは10mg/m
2以下であり、さらに好ましくは1m
2以下である。エステル環状三量体の量が10mg/m
2を超える場合、析出したエステル環状三量体がグリーンシートに転写し配線板に混入することにより電気的特性が損なわれたり、電気的欠陥が生じたりする恐れがある。また析出したエステル環状三量体より加工装置が汚れたり、生産性が低下したりする可能性がある。
【0082】
本発明における積層ポリエステルフィルムを熱処理(180℃、10分間)した後における粗面側のフィルム表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるエステル環状三量体の量は好ましくは10mg/m
2以下であり、さらに好ましくは1mg/m
2以下、特に好ましくは0.5mg/m
2以下である。エステル環状三量体の量が15mg/m
2を超える場合、析出したエステル環状三量体により加工装置が汚れたり生産性が低下する恐れがある。
【0083】
本発明における積層ポリエステルフィルムの粗面側の表面固有抵抗値は1×10
14Ω以下であることが好ましく、さらに好ましくは1×10
13Ω以下である。粗面側の表面固有抵抗値が1×10
14Ωを超える場合は、フィルム加工時に静電気によりフィルムが帯電し、周囲の埃等を引き付ける不具合が生じる可能性がある。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0085】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0086】
(2)積層ポリエステルフィルムの表面粗さ(Ra)
(株)小坂研究所製表面粗さ測定機「SE−3500」を用い、JIS−B−0601−1994に準じて測定した。得られた断面曲線から、基準長さ(2.5mm)だけ抜き取った部分(以下、抜き取り部分という)の平均線に平行2直線で抜き取り部分を挟んだ時、この2直線の間隔を断面曲線の縦倍率の方向に測定してその値をマイクロメートル(μm)単位で表したものを抜き取り部分の最大高さとした。最大高さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の最大高さの平均値で表した。なお、この時使用した触針の半径は2.0μmとし、荷重は30mg、カットオフ値は0.08mmとした。
【0087】
(3)耐擦傷性
太平理化工業(株)社製のRUBBING TESTERを使用し、専用のフェルトで試料表面を荷重200gで10往復摩擦させた。摩擦後の表面を目視で観察し、以下の評価基準で耐擦傷性を評価した。
○:キズが確認できない
△:キズが少し確認できる
×:キズが多く確認できる
【0088】
(4)巻取り性
ポリエステルフィルム製造時のフィルムのロール巻取り性を以下の評価基準で評価した。
○:巻取り性は良好
△:フィルムの滑り性はやや不足し、巻取り性は多少劣る
×:フィルムの滑り性は不足し、巻きズレ等発生し、巻取り性に問題がある
【0089】
(5)珪素化合物、カルシウム化合物、アンチモン化合物の含有量の測定
蛍光X線分析装置((株)島津製作所社製型式「XRF−1500」を用いて、フィルムFP法(Fundamental Parameter Method)により単枚測定でフィルム中の元素量を求めた。なお、本方法での検出限界は、通常1ppm程度である。
【0090】
(6)グリーンシートスラリーの塗工性
ポリエステルフィルムの平滑面(離型成分を含有する塗布液から形成される塗布層を有する面)に、チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)社製:平均粒径0.7μm)100部、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業(株)社製「エスレック BM−S」)30部、可塑剤(フタール酸ジオクチル)5部、トルエン/エタノール混合溶媒(混合比率:6:4)200部よりなるセラミックスラリーを塗布し、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2となるように塗布しグリーンシートを得た。この際、以下の評価基準でグリーンシートの塗工性について評価した。
○:スラリーのはじき、塗工ムラが発生しない
△:微小なスラリーのはじき、塗工ムラが発生する
×:スラリーのはじき、塗工ムラが顕著に発生する
【0091】
(7)グリーンシートの剥離性
上記、(7)に記載の方法で得られたグリーンシートの離型フィルムからの剥離性を以下の評価基準で評価した。
○:グリーンシートが問題なく離型フィルムから剥離できる
×:グリーンシートの離型フィルムからの剥離が不良で、離型フィルム側にグリーンシートの断片が残る
【0092】
(8)グリーンシート表面の平滑性評価
上記、(7)に記載の方法で得られたグリーンシートの表面(測定対象面積:100cm
2)を走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック(株)社製)による表面観察を行い以下の判定基準により判定を行った。
○:グリーンシート表面に深さ0.2μm以上の凹みが1個以下/100cm
2
△:グリーンシート表面に深さ0.2μm以上の凹みが1個以上5個未満/100cm
2
×:グリーンシート表面に深さ0.2μm以上の凹みが5個以上/100cm
2
【0093】
(9)塗布層中の粒子の平均粒径の測定方法
TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
【0094】
(10)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuO
4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO
4で染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100V)を用いて測定した。
【0095】
(11)表面固有抵抗値
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを十分調湿後、印可電圧100Vで1分後の粗面側の塗布層の表面固有抵抗値を測定した。
【0096】
(12)埃付着性評価(アッシュテスト)
23℃,50%RHの測定雰囲気でポリエステルフィルムを十分調湿後、粗面側の塗布層を綿布で10往復こする。これを、細かく砕いた煙草の灰の上に静かに近づけ、その時の灰の付着状況を以下の基準で評価した。
○:フィルムを灰に接触させても付着しない
△:フィルムを灰に接触させると少し付着する
×:フィルムを灰に近づけただけで多量に付着する
【0097】
(13)積層ポリエステルフィルムの表面から抽出されるエステル環状三量体量の測定方法
あらかじめ、未処理の積層ポリエステルフィルムを空気中、150℃で90分間加熱する。その後、熱処理をした当該フィルムを上部が開いている縦横10cm、高さ3cmの箱の内面に出来るだけ密着させて箱形の形状とする。このとき、測定面が内側となるようにする。次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給して、DMF中のエステル環状三量体量を求め、この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面エステル環状三量体量(mg/m
2)とした。
【0098】
平滑面側の塗布層を形成する塗布液に含有される化合物例は以下のとおりである。
(化合物例)
・離型剤(長鎖アルキル化合物):(1)
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。
【0099】
・離型剤(フッ素化合物):(2)
ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF
3(CF
2)
nCH
2CH
2OCOCH=CH
2(n=5〜11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C
16H
33N(CH
3)
3Cl1.0gおよびC
8H
17C
6H
4O(CH
2CH
2O)nH(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて、共重合体エマルションを得た。
【0100】
・架橋剤(ヘキサメトキシメチルメラミン):(3)
【0101】
・ポリエステル樹脂:(4)
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
【0102】
・粒子:(5) 平均粒径0.07μmのシリカ粒子
粗面側の塗布層を形成する塗布液に含有される化合物例は以下のとおりである。
・対イオンがメチルスルホネートである、2−(トリメチルアミノ)エチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/ポリエチレングリコール含有モノアクリレートが、重量比で75/12/15/30 である共重合ポリマー:(6)
【0103】
・対イオンがメチルスルホネートである、2−ヒドロキシ3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩ポリマー:(7)
【0104】
・下記式1−1の構成単位と、下記式1−2の構成単位とを重量比率で95/5の重量比率で共重合した、数平均分子量20000の高分子化合物:(8)
【0105】
【化3】
【0106】
【化4】
【0107】
・グリオキサールに無水グルコースを反応させた多価アルデヒド化合物:(9)
・数平均分子量が20000の、ポリエチレングリコール含有モノアクリレートポリマー:(10)
【0108】
・けん化度=88モル%、重合度500のポリビニルアルコール:(11)
・イミノ基/メチロール基/メトキシ基が1.5/2/2.5のモル比である、ヘキサメ・トキシメチロール化メラミン:(12)
・表面アルミナコートシリカゾル、BET法による平均粒径15nm:(13)
【0109】
〈ポリエステルの製造〉
[ポリエステル(A0)の製造方法]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A0)の極限粘度は0.65であった。
【0110】
[ポリエステル(A1)の製造方法]
ポリエステル(A0)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径1.6μmのエチレングリコールに分散させたシリカ粒子を粒子のポリエステルに対する含有量が0.6重量%となるように添加し、4時間重縮合反応を行い、ポリエステル(A1)を得た。
【0111】
[ポリエステル(A2)の製造方法]
ポリエステル(A1)の製造方法において、添加する粒子種を平均粒子径0.7μmのエチレングリコールに分散させた炭酸カルシウム粒子とし、ポリエステルに対する含有量を2.0重量%とした以外は、ポリエステル(A1)の製造方法と同じ方法でポリエステル(A2)を得た。
【0112】
[ポリエステル(B0)]
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、4時間重縮合反応を行った。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップを得た。極限粘度は0.55であった。得られたポリエステルチップを220℃で固相重合し、極限粘度0.65のポリエステル(B0)を得た。
【0113】
[ポリエステル(B1)の製造方法]
ポリエステル(B0)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、平均粒子径60nmのエチレングリコールに分散させた酸化アルミニウム粒子を粒子のポリエステルに対する含有量が1.5重量%となるように添加し、4時間重縮合反応を行い、ポリエステル(B1)を得た。
【0114】
[ポリエステル(B2)の製造方法]
ポリエステル(B1)の製造方法において、添加する粒子種を平均粒子径0.4μmのジビニルベンゼン架橋ポリスチレン粒子とし、ポリエステルに対する含有量を0.5重量%とした以外は、ポリエステル(B1)の製造方法と同じ方法でポリエステル(B2)を得た。
【0115】
実施例1:
上記ポリエステル(B0)、(B1)をそれぞれ80.0重量%、20.0重量%の割合で混合した混合原料をa層の原料とし、ポリエステル(B0)100%の原料をb層の原料とし、ポリエステル(B0)、(B2)をそれぞれ50.0重量%、50.0重量%の割合で混合した混合原料をc層の原料とし、3台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、a層、c層を最外層(表層)、b層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、3種3層(abc)で、厚み構成比がa:b:c=2:27:2になるように共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムのa層側表面(平滑面)に下記表1に示す塗布液1を乾燥後膜厚が0.1μmとなるように塗布し、c層側表面(粗面)に下記表2に示す塗布液9を乾燥後膜厚が0.03μmとなるように塗布し、この縦延伸フィルムをテンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、フィルムをロール上に巻き上げ厚さ31μmの積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0116】
実施例2:
実施例1において、a層の原料としてポリエステル(A0)、(B1)をそれぞれ80.0重量%、20.0重量%の割合で混合し、b層の原料としてポリエステル(A0)を使用し、c層の原料として、ポリエステル(A0)、(B2)をそれぞれ50.0重量%、50.0重量%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0117】
実施例3:
実施例1において、a層の原料としてポリエステル(B0)、(B1)をそれぞれ30.0重量%、70.0重量%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0118】
実施例4:
実施例1において、c層の原料としてポリエステルポリエステル(B0)、(B2)をそれぞれ30.0重量%、70.0重量%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0119】
実施例5:
実施例1において、b層の原料としてポリエステルポリエステル(B0)、(A0)をそれぞれ70.0重量%、30.0重量%の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0120】
実施例6〜12:
実施例1において、平滑面に塗布する塗布剤1を表1に示す塗布液2〜6に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0121】
実施例13:
実施例1において、粗面に塗布液を塗布しないこと以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0122】
実施例14〜21:
実施例1において、粗面に塗布する塗布剤9を表2に示す塗布液10〜20に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0123】
比較例1:
実施例1において、a層の原料としてポリエステル(B0)、(B1)をそれぞれ96.0重量%、4.0重量%の割合で混合した混合原料を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0124】
比較例2:
実施例1において、c層の原料としてポリエステル(B0)、(B1)をそれぞれ80.0重量%、20.0重量%の割合で混合した混合原料を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0125】
比較例3:
実施例1において、c層の原料としてポリエステル(B0)、(A1)をそれぞれ50.0重量%、50.0重量%の割合で混合した混合原料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0126】
比較例4:
実施例2において、a層の原料としてポリエステル(A0)、(A2)をそれぞれ70.0重量%、30.0重量%の割合で混合した混合原料を使用し、c層の原料としてポリエステル(A0)、(A2)をそれぞれ70.0重量%、30.0重量%の割合で混合した混合原料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0127】
比較例5:
実施例2において、a層の原料としてポリエステル(A0)、(A1)をそれぞれ70.0重量%、30.0重量%の割合で混合した混合原料を使用し、c層の原料としてポリエステル(A0)、(A1)をそれぞれ70.0重量%、30.0重量%の割合で混合した混合原料を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0128】
比較例6:
実施例1において、平滑面に塗布液を塗布しないこと以外は実施例1と同様の方法で、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0129】
比較例7、8:
実施例1において、平滑面に塗布する塗布剤1を表1に示す塗布液7、8に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた積層ポリエステルフィルムの特性を下記表3、4に示す。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】