(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039141
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】鳥獣忌避装置付外灯
(51)【国際特許分類】
A01M 29/26 20110101AFI20161128BHJP
A01M 29/16 20110101ALI20161128BHJP
【FI】
A01M29/26
A01M29/16
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-186273(P2012-186273)
(22)【出願日】2012年8月27日
(65)【公開番号】特開2014-42482(P2014-42482A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】306021376
【氏名又は名称】株式会社モハラテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】根岸 弘行
(72)【発明者】
【氏名】茂原 純一
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0021943(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0169585(US,A1)
【文献】
特開2002−017235(JP,A)
【文献】
特開平05−068461(JP,A)
【文献】
特開2003−339301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の先端側に固定された状態で本体ケーシングに内装した発光手段を駆動して所定のエリアを照明する外灯の前記本体ケーシングに、少なくとも忌避音出力手段を有して所定の鳥獣に忌避行動を起こさせる所定の動作を行う鳥獣忌避装置と、電子的制御手段を有して前記鳥獣忌避装置の駆動を自動的に制御する制御装置とを備えており、照明機能に加えて鳥獣忌避機能を発揮する鳥獣忌避装置付外灯において、
前記鳥獣忌避装置は、前記忌避音出力手段のほかに、前記本体ケーシングの上部に乗った鳥の両足に電流を流して感電させること又は前記両足の少なくともいずれかの指を挟み込んで拘束することによる身体的刺激を直接的に与える身体刺激手段を有しており、忌避音の出力中に聴覚による刺激とは異なる前記身体的刺激を加えることで、前記忌避行動を促進させることを特徴とする鳥獣忌避装置付外灯。
【請求項2】
前記身体刺激手段の駆動は、前記忌避音出力手段による出力開始時点から所定の時間が経過してから開始される、ことを特徴とする請求項1に記載した鳥獣忌避装置付外灯。
【請求項3】
前記身体刺激手段は、前記本体ケーシングの上部で鳥が両足を載せて留まれる形状の足場として設けられ、載せた前記両足が各々別個に触れながら両者間で電位差を生じるように配置された対の電極を有しており、所定のセンサで前記足場に鳥が留まったことを検知した前記制御装置が、所定のタイミングで前記対の電極間に所定レベルの電位差を与えて前記鳥の身体に電流を流す制御を実行する、ことを特徴とする請求項1または2に記載した鳥獣忌避装置付外灯。
【請求項4】
前記身体刺激手段は、前記本体ケーシングの上部で鳥が両足を乗せて留まれる形状の足場に付設され、乗せた前記両足の少なくともいずれかの指を前記足場の表面との間で挟み込んで拘束する動作及び前記拘束を解除する動作を実施可能に設けてなる足挟み部材を有しており、所定のセンサで前記足場に鳥が留まったことを検知した前記制御装置が、所定のタイミングで前記足挟み部材を動作させるアクチュエータを駆動させ、前記鳥を所定の時間だけ前記足場に拘束する、ことを特徴とする請求項1または2に記載した鳥獣忌避装置付外灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥獣に忌避行動を起こさせる装置を外灯に一体的に設けた鳥獣忌避装置付外灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鳥や獣が農地・工場・駐車場等の所定のエリア・施設に侵入して活動することによる被害が増加している。殊に、市街地では鳥類による被害が多く、例えば駐車場の車や出荷待ちで屋外に置いてある工業製品等をカラスがいたずらして傷つける被害が報告されており、また、市街地の街路樹にムクドリの大群が集合して騒音公害や糞害を発生させるという事例も知られている。
【0003】
斯かる問題に対し、例えば特開2001−120158号には、特定の動物に忌避行動を起こさせる音波(忌避音)を出力してその動物を特定のエリアから追い出したり近寄せないようにしたりする鳥獣忌避装置が提案されている。しかし、この装置の場合、鳥獣忌避装置のための新たな設置場所の確保が必要になり、また、対象エリアが広いケースではそのエリアをカバーする電力供給ラインの設置が必要になるため、設置コストが過大になりやすいという難点がある。
【0004】
これに対し、例えば特開平10―28511号公報にも記載されているように、外灯の上部に鳥獣忌避手段を付設する方式の鳥獣忌避装置も知られている。この装置の場合、対象エリアに外灯が設置してあるケースでは、その外灯の上部に取り付けるだけで設置作業が完了することから、新たな設置場所を要しないことに加え新たな電力供給ラインの設置も不要となるため、前述のものと比べて設置コストを低く抑えることができる。
【0005】
ところが、カラスのように知能が高く記憶力に優れた鳥獣にあっては、上述のような忌避音や磁力を用いた鳥獣忌避手段によるによる対策だけでは、時間の経過により慣れが生じたり、音や磁力を感じるだけで実際には痛い目にあわないと見破ったりするケースも見られ、効果の持続期間が比較的短くなりやすいという指摘がある。
【0006】
そこで、特開2012−105628号公報に記載されているように、忌避音に加えランプを発光させることで、接近した鳥獣に音と光で複合的に恐怖心を与える方式の装置も提案されている。しかしながら、音声による刺激やランプの光刺激が強く作用するのは所定の方向・エリアに限定されることから、鳥のように群れで多数飛来する対象や種の違いで存在する高さ・方向が様々に異なる対象には直接的に強く作用させることが困難であるため、忌避効果が不充分となりやすい。また、音と光の組み合わせにより当初は恐怖が増強されたとしても、実際の肉体的な苦痛はさほど大きくないため、慣れにより効果が減少することも懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−120158号
【特許文献2】特開平10―28511号公報
【特許文献3】特開2012−105628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、鳥獣忌避装置について、低コストで優れた忌避機能を発揮できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、支柱の先端側に固定された状態で本体ケーシングに内装した発光手段を駆動して所定のエリアを照明する外灯
の前記本体ケーシングに、少なくとも忌避音出力手段を有して所定の鳥獣に忌避行動を起こさせる所定の動作を行う鳥獣忌避装置と、電子的制御手段を有して前記鳥獣忌避装置の駆動を自動的に制御する制御装置とを備えており、照明機能に加えて鳥獣忌避機能を発揮する鳥獣忌避装置付外灯において、
前記鳥獣忌避装置は、前記忌避音出力手段のほかに、前記本体ケーシングの上部に乗った鳥の両足に電流を流して感電させること又は前記両足の少なくともいずれかの指を挟み込んで拘束することによる身体的刺激を直接的に与える身体刺激手段を有しており、忌避音の出力中に聴覚による刺激とは異なる前記身体的刺激を加えることで、前記忌避行動を促進させることを特徴とする鳥獣忌避装置付外灯とした。
【0010】
このように、鳥獣に忌避行動を起こさせる鳥獣忌避装置を、支柱先端に取り付ける外灯に一体的に設ける構成としたことにより、鳥獣忌避機能が必要なエリアと外灯による照明機能が必要なエリアが重なっている場合には、鳥獣忌避装置を設置するための場所・手段を新たに設ける必要がなくなるとともに、その電力供給ラインを新たに確保する必要もほぼなくなることから、低コストでも優れた忌避機能を発揮しやすいものとなり、かつ、2つの機能を一体化した複合機としたことで、鳥獣忌避装置があることで外灯の照射光を妨げないとともに、外観上もすっきりとしたものとなるが、
忌避音の出力中に音声による作用
とは異なるタイプの
感電による苦痛や身体を拘束される不快感による身体的な刺激が加わることにより、忌避音の経験と身体的刺激の経験が結びつけられた状態で記憶されるため、相乗的な忌避効果が期待できるものとなる。
【0012】
この場合、その身体刺激手段の駆動は、前記忌避音出力手段による出力開始時点から所定の時間が経過してから開始されることを特徴としたものとすれば、忌避音による経験と身体的刺激による経験が強く結びついて強い恐怖の経験として明確に記憶されやすくなることから、対象
の鳥を忌避させる学習効果の点で極めて優れたものとなり、装置を見るだけで或いは忌避音を聞くだけで強い恐怖心が蘇り、これに接近することを確実に回避させる効果が期待できる。
【0013】
さらに、上述した身体刺激手段を備えた鳥獣忌避装置付外灯において、その身体刺激手段は、前記本体ケーシングの上部で鳥が両足を載せて留まれる形状の足場として設けられ、載せた両足が各々別個に触れながら両者間で電位差を生じるように配置された
対の電極を有しており、所定のセンサで前記足場に鳥が留まったことを検知した前記制御装置が、所定のタイミングで前記
対の電極間に所定レベルの電位差を与えて鳥の身体に電流を流す制御を実行する、ことを特徴としたものとすれば、簡易な構成で適度な苦痛と強い恐怖心を与えることができる。
【0014】
或いは、その身体刺激手段は、前記本体ケーシングの上部で鳥が両足を乗せて留まれる形状の足場に付設され、乗せた両足の少なくともいずれかの指を足場の表面との間で挟み込んで拘束する動作及びその拘束を解除する動作を実施可能に設けてなる足挟み部材を有しており、所定のセンサで前記足場に鳥が留まったことを検知した前記制御装置が、所定のタイミングで前記足挟み部材を動作させるアクチュエータを駆動させ、前記鳥を所定の時間だけ前記足場に拘束することを特徴としたものとしても、前述と同様に簡易な構成で強い恐怖を与えることができる。
【発明の効果】
【0020】
鳥獣に忌避動作を起こさせる鳥獣忌避装置を外灯に一体的に設けた本発明によると、低コストでも優れた忌避効機能を発揮できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明における第1の実施の形態の縦断面図(一部斜視図)である。
【
図2】
図1の鳥獣忌避装置付外灯の機能ブロック図である。
【
図3】
図1の鳥獣忌避装置付外灯の機能を説明するための側面図(一部縦断面図)である。
【
図4】
図1の鳥獣忌避装置付外灯の応用例を示す部分拡大図である。
【
図5】本発明における第2の実施の形態を示す縦断面図である。
【
図6】(A)は
図5の鳥獣忌避装置付外灯において上向きに音波を放射させる場合、(B)は下向きに音波を放射させる場合の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0023】
図1は、本発明における第1の実施の形態である鳥獣忌避装置付外灯1Aの縦断面図を示している。この鳥獣忌避装置付外灯1Aは対象鳥獣として主にカラスを想定しており、地上に立設した支柱50の先端側に固定した状態で使用され、駐車場などのカラスによる悪戯が生じる可能性の高い場所で、鳥獣忌避装置によるカラスの忌避と外灯による照明の両方が必要なケースにおいて、極めて好適なものとなっている。
【0024】
その構成は、底面側が開口した筺状の本体ケーシング(フード)2Aに発光手段としてのLED5aを複数配列してなる基板4Aが内装され、その底面側開口部には透明のカバー3が装着されている。また、支柱50を経由した電力供給線が基板4Aに接続されて電力が供給されるとともに、電子的制御手段としてのCPU10A等が制御装置を構成しており、ケーシング2A上部に配置した光量センサ11bの検出信号を基に昼夜の別を判断して自動的に点灯・消灯の制御を実行するようになっており、以上の構成部分は従来の外灯にも見られる周知のものである。
【0025】
そして、本発明においては、斯かる一般的な外灯の構成に加え、忌避音出力手段としての音声出力部6Aと、ケーシング2A上部に乗った鳥に対しその位置で身体的な刺激を直接的に与える身体刺激手段である身体刺激部7Aとを有して、これらで所定の鳥獣に忌避行動を起こさせるための動作を行う鳥獣忌避装置を構成しており、1つの外灯で照明機能と鳥獣忌避機能の両方を発揮する点を特徴としている。
【0026】
即ち、本体ケーシング2A下部の下面側には、金網22を張った開口部に向かって斜め下向きに配置された忌避音発生器としてのスピーカ6aが配設され、増幅手段であるアンプ6bとともに忌避音出力部6Aを構成している。また、白抜矢印が指す部分斜視図に示すように、本体ケーシング2Aの上部には、側面板21a,21bを斜め上向きに延長した先端部分で両者間を水平に渡すように配置され、鳥が両足を乗せて留まった状態で刺激付与手段として機能するバー状の足場7aが配設されており、その駆動手段である駆動体7bとともに身体刺激部7Aを構成している。
【0027】
このように、支柱50の先端側に取り付ける外灯に鳥獣忌避装置を一体的に設けてなる複合機としたことにより、鳥獣忌避装置を設置するために新たな設置場所を確保したり新たな電源を確保したりすることが不要になり、これらを別個に設ける場合と比べて、設置コストを格段に低く抑えることができる。また、これにより鳥獣忌避装置が外灯の光を遮る心配がないとともに外観的にもすっきりとしたものとなる。
【0028】
尚、前述した足場7aは横向き円柱状の部材であるが、その外周面は端から絶縁部73、電極部71、絶縁部74、電極部72、絶縁部75で構成されており、これに鳥が留まった場合に、一方の足が電極部71を掴み、他方の足が電極部72を掴むような構造となっており、身体刺激部7Aを駆動させることにより、この電極部71と電極部72間に所定の電位差(例えば700〜1200V)を所定時間(例えば10ms)与えて、ショック死しない程度の電流を鳥の身体に流して、適度な苦痛と恐怖心を与えるようになっている。
【0029】
このような構成の忌避音出力部6Aと身体刺激部7Aとで1つの鳥獣忌避装置を構成するものであるが、これらは所定の保護エリア内に鳥獣が侵入したのを検出する第1のセンサとしての焦電型赤外センサ11aと本体ケーシング2A上端側に鳥が留まったのを検出する第2のセンサとしての光量センサ11bとを有した鳥獣検出部11の検出信号を基にして、制御装置のCPU10Aにより駆動制御されるようになっている。
【0030】
身体刺激部7Aにおいて鳥が足場7aに留まることにより、通常は日照量から点灯・消灯のタイミングを検出するための第2のセンサである光量センサ11bの上方が鳥の身体で遮られるが、その際にCPU10Aは、所定の時間内における所定レベル以上の光量の低下(短時間での急激な低下)を示す検出信号から鳥の存在を判定して、忌避音出力部6Aと身体刺激部7Aの両方を駆動させる制御を実行する。
【0031】
この場合、忌避音出力部6Aを駆動開始してから数秒経過した後に身体刺激部7Aを駆動させる設定とすることにより、忌避音を聞いた鳥が飛び去るか否か迷いながら滞在を継続している状態で電流刺激を与えることができ、忌避音の記憶と電流による苦痛の記憶が結びついた強い恐怖として記憶させることができ、忌避行動をとらせるための学習効果の観点において極めて有効なものとなる。これにより、それ以後はその忌避音を聞いたりその外灯を見たりするだけで、苦痛の記憶と恐怖心を蘇らせる結果となるため、忌避行動を確実に起こさせることができる。
【0032】
図2は、鳥獣忌避装置付外灯1Aの機能ブロック図を示している。本実施の形態の鳥獣忌避装置付外灯1Aは、起電手段としてのソーラーパネル9a、ボックス90に内装した蓄電手段としてのバッテリ9bおよびその制御手段としてのソーラーコントローラ9cを有してなる電源部9から電力を供給されるようになっており、また、前記ボックス90は、通常は支柱50の下部に付設されるものであるが、鳥獣忌避装置付外灯1Aにおける各種設定・操作を行うための操作手段である操作パネル8b、設定内容の表示手段である表示パネル8bを有した操作部8が内装されている。
【0033】
また、この鳥獣忌避装置付外灯1Aは、上述したように焦電型赤外センサ(第1センサ)11aと光量センサ(第2センサ)11bを有した鳥獣検出部11、スピーカ6aとその増幅器であるアンプ6bを有した忌避音出力部6、刺激付与手段である足場7aとその駆動体7bを有した身体刺激部7A、発光手段である複数のLED5aとその駆動体5bを有した発光部5を備えており、この忌避音出力部6Aと身体刺激部7Aとで鳥獣忌避装置を構成している。
【0034】
そして、鳥獣検出部11による出力信号が、制御装置のCPU10Aに入力され、その信号を基にして発光部5、忌避音出力部6A、身体刺激部7Aの駆動制御を実行するようになっている。尚、忌避音出力部6Aが出力する忌避音は、対象鳥獣に応じた複数種類の音声データが記憶手段としてのメモリ12に記憶されており、その音声信号が忌避音出力部6Aのアンプ6bに入力されてスピーカ6aから出力される。また、その忌避音としては、対象鳥獣が忌み嫌う人工音のほか、天敵声・威嚇声、さらには対象鳥獣の悲鳴声・警戒声が想定される。
【0035】
図3を参照しながら、対象鳥獣がカラスの場合における本実施の形態による動作について説明する。カラスは知能が高く用心深い鳥であり、降りたいと思う目的の場所については、電柱や樹木等の高い位置に留まっていったん安全確認を行ってから降りる習性がある。例えば、保護エリアAが駐車場の駐車スペースである場合、図示しない車に興味を持ったカラス100は、その近くで最も高い場所になる支柱50先端側の鳥獣忌避装置付外灯1Aの上端部分にある足場7aに留まってから安全確認を行う。
【0036】
このとき、足場7aの付近に配置した光量センサ11bの上方がカラス100の身体で遮られるため、検出している光量が短時間で急激に低下する。すると、これを検知したCPU10Aは、カラス100が足場7aに留まっていると判断して、忌避音出力手段6Aを駆動させてスピーカ6aからカラスの嫌う忌避音を出力させる。
【0037】
忌避音が出力されても、これを聴いたカラス100がそのまま留まる場合がある。そこで、忌避音出力開始から数秒経過後に、CPU10Aは身体的刺激手段7Aを駆動させて、足場7aの図示しない電極部71,72間に電位差を与えるように通電して、カラス100の身体に電流を流すことにより身体的な刺激を与えるように制御を実行する。
【0038】
即ち、カラスは忌避音効果で瞬時に反応して飛び立つのが通常であるが、カラスの個体差や慣れによりそのまま留まり続けるカラスも現れることがあり、また、留まっていても何も起きないことで逃げる必要がないと学習する
ケースや、このようなカラスを他のカラスが見ることで同様に学習してしまうケースも想定されることから、そのままでは忌避音効果が次第に減弱すると考えられている。そこで、忌避音の出力中に電流による身体的刺激を組み合わせることで、忌避音の経験と身体的苦痛の経験が結びつけられた状態で強い恐怖の経験として確実に記憶させることが可能となる。
【0039】
尚、忌避音の出力と身体的刺激が同時の場合は両者が別物として記憶されてしまう畏れがあるため、忌避音の出力開始時点から数秒(1〜10秒)遅らせて身体的な刺激を与える制御とすることにより、両者の記憶を強く結びつけることが可能となって学習効果(洗脳効果)に優れたものとすることができる。さらに、電流刺激を受けることでカラスは悲鳴声を出しながら逃げることになるが、その状況を見た他のカラスも恐怖心を覚え、その時に聞こえていた忌避音と恐怖の体験が結びついて強い記憶として残る効果が期待できる。
【0040】
このような経験をしたカラスは、次に同じ忌避音を聴くだけで逃避行動を起こすようになり、かつ鳥獣忌避装置付外灯1Aの設置場所にも近寄れなくなる。尚、図のように起電手段としてソーラーパネル9aを用いたことで、商用電源から延ばした電源ラインを確保する必要がなくなるとともに、省エネにも優れたものとなることは言うまでもない。またこの場合、ソーラーパネル9aに対する日照量の変動に伴う起電力の変動を利用して、昼夜の別の判断材料に使用することも可能である。
【0041】
図4は、前述した実施の形態の応用例を示す部分側面図である。この応用例では、鳥獣忌避装置付外灯1Aにおける身体刺激部7Aを除いた部分の構成は共通しているが、電流を使用する身体刺激部7Aの代わりに、電極のない足場7cに留まった鳥の足の指を、足場7c外周面と足挟み部材であるバー7fの先端側との間に挟み込んで、留まった鳥を所定時間拘束する機能を発揮する身体刺激部7Bを備えている点を特徴としている。
【0042】
この応用例においても、鳥が留まったことを検知する方式は前述と同様であり、忌避音の出力開始時点から所定時間遅れて駆動させることが好ましい点も同様である。即ち、足場7cに鳥(カラス)が留まったことを光量センサ11bで検知したCPU10Aが、所定のタイミングでアクチュエータ7dを駆動させ、これにリンクして軸7eで軸支されたバー7fの先端側を持ち上げることにより、鳥の指を足場7cとの間に挟み込んで拘束し、所定の時間経過後にアクチュエータ7dの駆動を停止させることでバー7fの先端側が自重により下降して指を開放し、拘束を解除するようになっている。
【0043】
このように、留まった鳥の指を怪我しない程度の圧力で挟み込むことにより、足場7cに足を固定して鳥が飛び立つのを拘束する結果となるが、前述の電流を与える場合と比べて直接的に与える苦痛は小さいものの、拘束される不快感・恐怖感は電流の場合に劣らないことが想像されるため、電流による身体的刺激の場合と同等の学習効果が期待できる。
【0044】
図5は、本発明における第2の実施の形態である鳥獣忌避装置付外灯1Bを縦断面図で示している。この実施の形態では、対象鳥獣として主にムクドリを想定した構成となっている。即ち、ムクドリは夕暮れになると街路樹などの比較的高い樹木に大群となって集合するケースが多いところ、これを忌避音で追い払うためには、スピーカ等の音声発生器の音声放射面を上又は斜め上向きに配置する必要があるため、音声発生器が雨水で濡れて耐久性が損なわれるという問題があった。
【0045】
そこで、本実施の形態は斯かる問題を解決することを目的としたものとなっている。この鳥獣忌避装置付外灯1Bは、本体ケーシング2Bの金網23を張った音声放射用の開口部が上面側にも設けられているが、音声発生器であるスピーカ6aは斜め下向きに基板4Bに固定された状態で本体ケーシング2Bに内装され、その音声放射方向の延長線上には反射板60が配置されており、放射した忌避音が反射板60で反射されてムクドリの存在する方向(上向き)に放射される点を特徴としている。
【0046】
これにより、スピーカ6aは前記開口部を介して侵入した雨水に濡れない位置・向きを確保することができ、その耐久性を損なう心配のないものとなっている。また、その反射板60は、中央部分で横向きに配置された軸60aで軸支されてその反射方向を仰角方向に沿って変更可能とされており、図示しないアクチュエータをCPU10Bが駆動制御することにより、所望の向きに変更・調整できるようになっている。
【0047】
このような構成を採用したことで、
図6(B)に示すように、夕暮れ時に鳥獣忌避装置付外灯1Bよりも高い位置の樹木に集合したムクドリに向かって忌避音を放射する状態の反射板60の向きと、
図6(C)に示すように日中に鳥獣忌避装置付外灯1Bよりも低い位置の保護エリアに侵入したカラス等の鳥獣に向かって忌避音を放射する状態の反射板60の向きとの間で、放射方向を自動的に変更することができるようになる。また、反射板60を回転駆動させながら忌避音を出力した場合は、忌避音を広範囲に放射できるとともに音の向きが連続的に変動・反射・共鳴することにより対象鳥獣に与える恐怖感を増幅させる効果も期待できる。
【0048】
以上の構成に加え、ムクドリのように夜行性の天敵から身を守るため比較的明るい場所を好む鳥獣を忌避対象にするケースでは、発光部5で点灯している状態において忌避音を出力する際に、発光部5を消灯する制御を組み合わせる制御を実行することにより、前述した電流や足の拘束による身体的刺激を組み合わせる場合と同様に、忌避効果の増強が期待できるものとなる。
【0049】
即ち、特定の樹木に大群で集合しているムクドリは、忌避音の放射により飛び立つのが通常であるが、これも前述したカラスの場合と同様に次第に慣れが生じることが懸念される。そこで、忌避音の出力と消灯を組み合わせる(同時が好ましい)ことで、大群のムクドリの間に集団的なパニックを引き起こすことができ、忌避効果を増強させるとともに忌避音とパニックの経験が結びついて強い恐怖として記憶させることができる。
【0050】
そのため、前述と同様に忌避音を聴くだけで忌避行動を起こさせたり、その場所に近づけない状態にしたりすることが可能となる。尚、このように消灯を組み合わせる場合、消灯動作に先立って、付近にいる人に対し数秒後に消灯があることを事前に知らせるアナウンスや合図を組み合わせる制御とすることが、安全上好ましい。
【0051】
また、上述した総ての実施の形態・応用例に共通して、忌避対象鳥獣の行動パターンに応じた時間帯のみに鳥獣忌避装置の駆動を限定する設定を可能とした構成とすることが推奨される。これにより、音声出力時間を必要最小限に抑えて省電力を実現しながら装置(スピーカ等)の耐久性を確保することができ、併せて近隣に対する騒音問題を低減することもできる。
【0052】
この場合、設定した時間帯は無条件で駆動し続ける制御のほか、実際に駆動させるためには予め設定した時間帯であることに加え、忌避対象鳥獣が保護エリアに侵入したことを所定のセンサで検出したことを条件に駆動させる制御の設定を可能とすることで、一層電力消費量の低減に有効なものとなる。
【0053】
尚、上述した各実施の形態及び応用例を適宜組み合わせることで各特徴部分による機能を相加的に各々発揮可能であることは言うまでもない。また、上述した実施の形態においては、忌避対象鳥獣としてカラスとムクドリを主に想定した場合を説明したが、本発明はこの対象に限定されるものではなく、他の鳥類、他の獣にも使用することができ、同様の効果が各々期待できるものである。
【0054】
さらに、音声発生器としてスピーカのほかピエゾフィルム等の他のデバイスも使用することができ、鳥獣検出手段としてエリア侵入対策用にドップラーセンサ、装置上の検出に重量センサを使用することもできる。さらにまた、鳥獣の検出から所定時間遅らせて電流刺激を与えるための遅延手段として、高圧電流発生回路の構成においてコンデンサ蓄電を利用するものとし、その昇圧時間を3〜10秒で規定電圧に達して出力する方式としても良い。
【0055】
以上述べたように、鳥獣忌避装置について、本発明により低コストでも優れた忌避機能を長期間に亘って発揮できるようになった。
【符号の説明】
【0056】
1A,1B 鳥獣忌避装置付外灯、2A,2B 本体ケーシング、5 発光部、5a LED、6A,6B 忌避音出力部、6a スピーカ、6b アンプ、7A,7B 身体刺激手段、7a,7c 足場、7b 駆動体、7f バー、9a ソーラーパネル、9b バッテリ、10A,10B CPU、11 鳥獣検出部、11a 焦電型赤外センサ、11b 光量センサ、50 支柱、60 反射板、71,72 電極部、100 カラス