(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039153
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】燃料噴射弁と絶縁部材とを備える燃料噴射設備のための構造体
(51)【国際特許分類】
F02M 61/14 20060101AFI20161128BHJP
F02M 61/16 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
F02M61/14 320A
F02M61/14 320P
F02M61/16 X
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-542192(P2015-542192)
(86)(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公表番号】特表2015-535052(P2015-535052A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2013069817
(87)【国際公開番号】WO2014079609
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2015年5月18日
(31)【優先権主張番号】102012221134.9
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】クノルプ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シェッフェル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ナパル・ヒメネス,パブロ・アントニオ
【審査官】
小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−513370(JP,A)
【文献】
特開平11−210886(JP,A)
【文献】
特開2010−053775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00− 1/42、 7/00
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド(4)から燃料噴射弁(2)を絶縁する役目を果たす絶縁部材(3)であって、組付状態のときに前記燃料噴射弁(2)のハウジング(5)を包囲する役目を果たす本体(6)を有しており、前記本体(6)には前記シリンダヘッド(4)で支持をする役目を果たすシリンダ側の載置領域(7)と前記燃料噴射弁(2)を支持する役目を果たすバルブ側の支持領域(8)とが構成されている、そのような絶縁部材において、
前記本体(6)の前記シリンダ側の載置領域(7)だけが少なくとも部分的に閉じたリング(20)の形態で構成されており、前記本体(6)は、前記シリンダ側の載置領域(7)の前記閉じたリング(20)によって相互に結合された、円周にわたって配分されたセグメント(15〜18)を有しており、
前記シリンダ側の載置領域(7)の前記閉じたリング(20)は、円周にわたって配分された前記セグメント(15〜18)の間に、半径方向外側に向かって延びる湾出部(28)を有していることを特徴とする絶縁部材。
【請求項2】
前記本体(6)は前記バルブ側の支持領域(8)と前記シリンダ側の載置領域(7)の間で前記燃料噴射弁(2)を支持するときに圧縮の負荷を受けることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁部材。
【請求項3】
前記本体(6)は前記本体(6)の前記セグメント(15〜18)の間に設けられた切欠き(21〜23)を有しており、前記本体(6)の前記切欠き(21〜23)は部分的に前記本体(6)の前記シリンダ側の載置領域(7)に延びており、それにより前記本体(6)の前記シリンダ側の載置領域(7)は部分的にのみ閉じたリング(20)の形態で構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の絶縁部材。
【請求項4】
前記閉じたリング(20)の前記湾出部(28)は前記本体(6)の前記シリンダ側の載置領域(7)へ部分的に延びる前記切欠き(21〜23)を橋渡ししていることを特徴とする、請求項3に記載の絶縁部材。
【請求項5】
前記シリンダ側の載置領域(7)の前記閉じたリング(20)は前記シリンダヘッド(4)のための少なくとも実質的に平坦なシリンダ側の載置領域(7)として構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の絶縁部材。
【請求項6】
前記バルブ側の支持領域(8)の少なくとも1つのセグメント(18)には組付状態のときに紛失保全部を形成するために前記燃料噴射弁(2)の前記ハウジング(5)と協働作用する保全部材(32)が構成されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の絶縁部材。
【請求項7】
内燃機関の燃料噴射設備のための役目を果たす構造体(1)において、少なくとも1つの燃料噴射弁(2)と、請求項1から6項のいずれか1項に記載の絶縁部材(3)とを有しており、前記燃料噴射弁(2)は組付状態のときに前記絶縁部材(3)を介して前記内燃機関のシリンダヘッド(4)に支持可能である構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射弁をシリンダヘッドから絶縁する役目を果たす絶縁部材に関するものであり、および、燃料噴射弁とそのような絶縁部材とを備える構造体に関するものである。特に、本発明は内燃機関の燃料噴射設備の分野に関わるものであり、高圧下にある燃料が燃料噴射弁を通じて内燃機関の付属の燃焼室の中へ噴射される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1より、燃料噴射弁のための補償部材が公知である。この補償部材は、内燃機関のシリンダヘッドで燃料噴射弁を支承する役目を果たす。補償部材は環状に構成されており、燃料噴射弁のバルブハウジングと、シリンダヘッドの収容穴の壁部との間に配置されている。補償部材は、燃料噴射弁とシリンダヘッドとに支持される脚部を有している。このとき第1の脚部はシリンダヘッドの肩部に支持される。第2の脚部はバルブハウジングの肩部に支持される。補償部材には、切欠きと貫通部とが設けられていてよい。このとき補償部材は、補償部材から打ち抜かれて半径方向内側に向かって湾曲するセグメントを有することができる。それにより補償部材は、個々のコンポーネントの製造公差の補償のためばかりでなく、作動中の燃料噴射弁の加熱に原因が帰せられる公差の補償のためにも作用し、そのようにして傾動や誤位置を防止する。
【0003】
特許文献1から公知となっている燃料噴射弁のための補償部材の構成は、相応に大きな負荷が生じたときに応力が材料で広範に発生し、そのような応力が円周部で亀裂につながり、最終的に補償部材の失陥につながるという欠点がある。
【0004】
特許文献2より、燃料噴射装置のための絶縁部材が公知である。絶縁部材によって騒音の少ない設計が具体化される。絶縁共振が2.5kHz以下の周波数帯域に位置するように、絶縁部材のばね剛性が低く選択されて絶縁部材が配置される。考えられる1つの実施形態では、燃料噴射弁の考えられる傾斜位置が、絶縁部材の内側の載置領域の局所的な脆弱化によって受け止められる。半径方向内側の載置領域のこのような局所的な脆弱化は、半径方向に延びるスリットによって実現され、このスリットは絶縁部材の内径部を起点として、たとえば内側の半径部まで延びている。典型的な場合、そのようなスリットあるいは剛性を低下させるその他の開口部は、3から12の個数で設けられていてよい。
【0005】
特許文献2から公知となっている絶縁部材は、それが皿ばねに準ずるように構成されており、組付状態のときに引張の負荷を受けるという欠点がある。そのため耐用寿命を通じて、十分なコンポーネント強度およびそれと同時に希望される騒音低減を保証することに問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10338715A1号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第102008054591A1号明細書
【発明の概要】
【0007】
請求項1の構成要件を有する本発明の絶縁部材、および請求項10の構成要件を有する本発明の構造体は、耐用寿命を通じて改善された振動減衰が保証されるという利点がある。特に、長い動作期間の後でも十分な騒音減衰が保証され、早期のコンポーネント失陥が回避されるという利点がもたらされる。
【0008】
提案される絶縁部材により、簡単な仕方とできる限り少ない設計スペースで、かつ少ない追加コストで、燃料噴射弁からシリンダヘッドへの騒音伝達を低減することができる。このとき、たとえば50kN/mm以下の所定の目標剛性を遵守することができる。特にたとえばガソリン直接噴射の場合のような高いシステム圧力のときに必要である、付属の動作強度も保証することができる。このとき振動断絶と、固体伝搬音の絶縁および分断を保証することができる。
【0009】
本発明の背景として判明しているのは、高いシステム圧力およびこれに伴う高い軸方向負荷のための絶縁部材における、皿ばねのような回転対称の構成は、所定の非常に小さい設計スペースとの関連では希望どおりの成果をもたらさないということにある。その原因は、このような構成が、作用する力およびそれにより引き起こされる変形によって高い円周応力を生じさせ、それが円周部で亀裂につながり、最終的にはコンポーネントの失陥につながることにある。考えられる1つの解決法は、壁厚の増大によってこうした問題に対処することである。しかしその場合、応力低減のための当該部材の頑丈な構成により、求められる絶縁剛性を保証することができなくなる。
【0010】
本発明によると、回転対称性の破れを意味する特別なセグメント化によって、円周応力の問題を限定することができる。その場合に絶縁剛性は、円周にわたって配分された個々のセグメントの剛性の合算によってもたらされる。このことは、曲がりばねの並列回路に相当する。個々の曲げ部材として作用するセグメントは、本体のシリンダ側の載置領域の比較的小さい周回する閉じたリングによってのみ統合されている。したがって、一方では各セグメントの改善された弾性が実現され、それは、各セグメントが比較的大きく構成されており、それに伴って、所定の目標剛性のときに比較的厚い材料厚みで設計することができるからである。他方では、機械的な円周応力が本体のシリンダ側の載置領域に集中するが、本体は弾性挙動には一切寄与することがなく、したがって必要な円周力の観点から設計することができる。
【0011】
このように、曲げ部材としての役目を果たす個々のセグメントへのこのような特別なセグメント化の利点は、要求される剛性値を遵守しながら、明らかに低減された負荷がコンポーネントで発生し、それに伴って、素材に関わる強度要求が低くなるという点にもある。
【0012】
さらに別の利点は、セグメント(曲げ部材)の形状に、せん断力補償のために必要な公差補償部材の機能を簡単な仕方で統合できることにある。各セグメントの中高の構成もしくはこれに類似する構成により、絶縁部材の上でボールジョイントの上でのように燃料噴射弁を傾けることができ、それにより、シリンダヘッドへの取付穴の中心線とレールカップの中心線との間で作用するせん断力と公差のずれを補償することができる。
【0013】
このように、本体のシリンダ側の載置領域だけが少なくとも部分的に閉じたリングの形態で構成される本発明の構成は、重要な利点を有している。この構成は、本体が少なくともシリンダ側の載置領域の範囲外で、円周にわたって配分されたセグメントへとセグメント化されると理解することができる。ただしこのことは、円周にわたって配分されたセグメントが、部分的に本体のシリンダ側の載置領域へも延びているという可能性も含んでいる。その場合、本体のシリンダ側の載置領域は部分的にのみ閉じたリングの形態で構成される。
【0014】
本体のシリンダ側の載置領域が全面的に閉じたリングの形態で構成されているときにのみ、円周にわたって配分された本体のセグメントはシリンダ側の載置領域へと延びていない。
【0015】
本体は、バルブ側の支持領域とシリンダ側の載置領域との間で燃料噴射弁を支持するときに、圧縮の負荷を受けるのが好ましい。それにより、円周にわたって配分されたセグメントが曲げ部材として作用することができるという利点がある。このとき材料の所定の最大負荷に関して、比較的高い曲げ運動が可能である。このことは特に、燃料噴射弁の位置決めに関わる好ましい公差補償を可能にする。
【0016】
シリンダ側の載置領域の閉じたリングが、円周にわたって配分された各セグメントの間に、半径方向外側に向かって延びる湾出部を有しているのも好ましい。さらにこの場合、本体は本体の各セグメントの間に設けられた切欠きを有しており、本体の切欠きは部分的に本体のシリンダ側の載置領域に延びており、それにより本体のシリンダ側の載置領域は部分的にのみ閉じたリングの形態で構成されているのが好ましい。すなわちこの実施形態では、円周にわたって配分されている本体の各セグメントは載置領域へも若干延びている。それにより、セグメントの撓曲がいっそう容易になる。円周方向で発生するコンポーネント応力も、閉じたリングに集中させることができるという利点がある。円周にわたって配分された各セグメントの間に設けられ、したがってそれ自体も円周にわたって配分される湾出部は、セグメントの領域で、円周方向に作用する力を受け止めるために十分に広い材料断面を保証する。それと同時に、湾出部によってセグメントの曲げ挙動が影響を受けることがない。にもかかわらず湾出部によって、シリンダヘッドの載置面を広げることができる。このように湾出部は、さらに別の利点を有する改良された構成を可能にする。この場合、閉じたリングの湾出部が、本体のシリンダ側の載置領域へと部分的に延びる切欠きを橋渡しするのも好ましい。この実施形態では切欠きは、円周方向でそれぞれ切欠きに両側で後続する、シリンダ側の載置領域の領域へも若干延びている。このようにして、切欠きに接する領域への好ましい力導入が実現され、それに伴って、円周にわたっての好ましい外力式接合が実現される。
【0017】
シリンダ側の載置領域の閉じたリングが、シリンダヘッドのための少なくとも実質的に平坦なシリンダ側の載置領域として構成されているのも好ましい。そのようにして、シリンダヘッドの上での好ましい支持面と確実な位置決めがもたらされる。
【0018】
バルブ側の支持領域の少なくとも1つのセグメントに、組付状態のときに燃料噴射弁のハウジングと協働作用する保全部材が構成されているのも好ましい。特に、紛失保全部を形成するためにそれぞれ半径方向で燃料噴射弁のハウジングに向かって初期応力をかけられた複数の保全部材が設けられていてよい。それにより、燃料噴射弁と、これに取り付けられた絶縁部材とからなる構造体の好ましい組立も可能である。
【0019】
さらに、シリンダ側の載置領域の閉じたリングは、組付状態のときに燃料噴射弁のハウジングと協働作用するスナップリングと少なくとも間接的に結合されているのが好ましい。このことも同じく、絶縁部材をたとえば予備組立の一環として燃料噴射弁に取り付けるための手段となる。それにより、燃料噴射弁と絶縁部材とからなる構造体を、シリンダヘッドに簡単な仕方で組み付けることができる。
【0020】
本発明の好ましい実施例について、対応する部材には一致する符号が付されている添付の図面を参照しながら行う以下の記述で詳しく説明する。図面は次のものを示している:
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】燃料噴射弁と絶縁部材とを備える構造体、ならびにシリンダヘッドを抜粋的、模式的、かつ立体的な図面で、本発明の第1の実施例に準じて示す図である。
【
図2】
図1に示す構造体とシリンダヘッドとを本発明の第2の実施例に準じて示す図である。
【
図3】
図1に示す構造体とシリンダヘッドとを本発明の第3の実施例に準じて示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施例に準ずる
図1に示す構造体の絶縁部材を抜粋的、模式的、かつ立体的な図面で、本発明の考えられる構成の機能形態を図解するために示す図である。
【
図5】燃料噴射弁と絶縁部材とを備える構造体、ならびにシリンダヘッドを抜粋的、模式的な断面図として、本発明の第4の実施例に準じて示す図である。
【
図6】
図5に示す構造体とシリンダヘッドを本発明の第5の実施例に準じて示す図である。
【
図7】
図5に示す構造体とシリンダヘッドを本発明の第6の実施例に準じて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、燃料噴射弁2と絶縁部材3とを備える構造体1、およびシリンダヘッド4を抜粋的、模式的、かつ立体的な図面で、本発明の第1の実施例に準じて示している。構造体1は、内燃機関の燃料噴射設備のための役目を果たす。このとき構造体1は、内燃機関の燃焼室へ燃料を直接噴射するための燃料噴射設備に特別に適している。特に、内燃機関は混合圧縮式、外部点火式の内燃機関として構成されていてよく、ガソリンまたはこのような内燃機関に適したその他の燃料、ならびにそのような燃料からなる好適な混合気を噴射することができる。
【0023】
絶縁部材3は、このような適用ケースについて特別に好適である。
【0024】
構造体1ないし絶縁部材3により、燃料噴射弁2からシリンダヘッド4への騒音伝達の緩和が可能である。たとえば燃料噴射弁2は、直接噴射が行われるガソリンエンジンで適用される電磁式の高圧噴射弁2として構成されてよい。絶縁部材がなければ、燃料噴射弁2がエンジンの全体的騒音に顕著で有害な寄与をするという問題が起こる。バルブのガタつきとして表現可能な騒音は、たとえばバルブニードルが高いダイナミクスでそれぞれのリミットストッパへと位置調節されるときに、燃料噴射弁2の高速の開閉によって発生することがある。リミットストッパにバルブニードルが当たることは、非常に高い一時的な接触力につながり、このような接触力は、燃料噴射弁2のハウジング5を介して、大部分がシリンダヘッド4へ固体伝搬音や振動として伝達される可能性がある。すると、このことはシリンダヘッド4での強い騒音発生につながるが、シリンダヘッド4と燃料噴射弁2の間にある絶縁部材3によって、こうした騒音発生が明らかに緩和される。
【0025】
ただし絶縁部材3に対しては、騒音発生の低減のほか、所定の狭い設計スペースに関して、要求される絶縁剛性と要求される強度とを特に高いシステム圧力のもとで耐用寿命を通じて示すという要求も課される。このことは、実施例を参照して以下に説明する本発明の絶縁部材3の構成によって実現される。
【0026】
絶縁部材3は、シリンダ側の載置領域7とバルブ側の支持領域8とを備える本体6を有している。シリンダ側の載置領域7は、シリンダヘッド4の上面9で支持をする役目を果たす。バルブ側の支持領域8は、燃料噴射弁2を支持する役目を果たす。
図1に示されている組付状態のとき、絶縁部材3は燃料噴射弁2のハウジング5を円周で包囲する。シリンダヘッド4の上面9は、本実施例では平坦な上面9として構成されている。
【0027】
絶縁部材3の本体6は、バルブ側の支持領域8とシリンダ側の載置領域7との間で燃料噴射弁2を支持するときに、圧縮の負荷を受ける。このとき本体6は、負荷されたときに弾性的に曲がる、円周にわたって配分されたセグメント15,16,17,18を有している。バルブ側の支持領域8のセグメント化により、所定の材料厚みに関して最善の弾性が耐用寿命を通じて保証される。円周方向で作用する応力は、セグメント化によって、バルブ側の支持領域8で大幅に低減される。さらに、本体6のシリンダ側の載置領域7は少なくとも部分的に閉じたリング20の形態で構成されている。ここでは本体6のシリンダ側の載置領域7だけが、少なくとも部分的に閉じたリング20の形態で構成されている。本実施例では、本体6のシリンダ側の載置領域7は部分的にのみ閉じたリング20の形態で構成されている。というのもセグメント15から18の間には、シリンダ側の載置領域7にも若干延びる切欠き21,22,23が設けられているからである。それにより、たとえば切欠き22には閉じたリング20のウェブ25が残っており、そこでシリンダ側の載置領域7は、円周方向で見て、平坦な載置面26(
図5)の縮小された半径方向長さを有している。
【0028】
シリンダ側の載置領域7の閉じたリング20は、本実施例では、シリンダヘッド4のために平坦な載置面26を備える、平坦なシリンダ側の載置領域7として構成されている。したがって、シリンダヘッド4での確実な位置決めが可能である。このことは、場合により同時に必要となる燃料噴射弁2についての公差補償をしながら、振動減衰をも改善する。
【0029】
シリンダ側の載置領域7に延びている切欠き21,22,23は最大限に刻設され、それにより、ウェブ25における残りのリング厚みが可能な最小限まで低減されるのが好ましい。
【0030】
図2は、
図1に示す構造体1とシリンダヘッド4を、第2の実施例に準じて示している。本実施例では、閉じたリング20の外側の縁部27が、シリンダヘッド4の上面9から見たとき、上方に向かって離れるように曲がっている。それにより、そのつどの適用ケースに関して、特にスペース状況が狭くなっているときに、特にウェブ25における閉じたリング20の安定性を改善することができる。
【0031】
図3は、
図1に示す構造体1とシリンダヘッド4を、本発明の第3の実施例に準じて示している。本実施例では、シリンダ側の載置領域7の閉じたリング20は、円周にわたって配分されたセグメント15および18の間に湾出部28を有しており、図面を簡略化するために湾出部28だけに符号を付している。湾出部28は半径方向外側に向かって延びている。このとき本実施例では湾出部28によって、シリンダ側の載置領域7の載置面26が拡張される。ここでは湾出部28は、部分的にシリンダ側の載置領域7に延びる切欠き22を橋渡しする。それにより、円周の引張力を吸収するために重要な断面積が、特にウェブ25の領域で拡張される。それによって相応の引張応力も低減される。そのために湾出部28は、円周方向で切欠き22に接しているシリンダ側の載置領域7の領域(ゾーン)29,30にも延びている。すなわちゾーン29,30は、閉じたリング20での好ましい外力式接合を可能にする。
【0032】
図4は、本発明の第1の実施例に準ずる
図1に示す構造体1の絶縁部材3を、抜粋的で模式的な立体図として、本発明の考えられる1つの実施形態の機能形態の図解のために示している。図示している部分図は、たとえば1つの考えられる実施形態の4分の1部分図であってよい。上方に向かって湾曲したセグメント16,17は、図解のために引かれている線31のところで燃料噴射弁2に載置部ないし支持部を提供する、湾曲したラグの形態で構成されている。この線(載置線)31を介して、燃料噴射弁での抑えつけと圧縮力に基づき、負荷が絶縁部材3へと伝達される。この負荷によってセグメント16から18は撓曲する。そして絶縁部の全体的剛性は、個々の曲げ剛性の合算によって得られる。これは、個々の曲がりばねの並列回路に相当する。曲げ部材としての役目をするセグメント15から18の中高の形状により、および、燃料噴射弁2のハウジング5の相応の対応輪郭により、せん断力および/または公差に起因するずれを補償するための公差補償の機能が絶縁部に統合される。
【0033】
適用ケースに応じて、セグメント15から18を適当な形状、個数、および厚みで形態最適化によって、希望される剛性が所要の強度で実現されるように設計することができる。
【0034】
図5は、燃料噴射弁と絶縁部材3とを備える構造体1およびシリンダヘッド4を抜粋的で模式的な断面図として、第4の実施例に準じて示している。ここでは図解のために、本体6のセグメント18が断面で示されている。セグメント18およびその他の図示しないセグメントにはバルブ側の支持領域8が構成されており、ハウジング5はたとえばセグメント18の線31に当接し、それについては
図4を参照して相応に説明したとおりである。
【0035】
さらにセグメント18には、本実施例では保全部材32が構成されている。このとき、保全部材32に準じて構成された別の保全部材が、図示しない別のセグメントにも構成されているのが好ましい。保全部材32は、図示した組付状態のときにハウジング5と協働作用する。このとき保全部材32は、ハウジング5へ装着されたときに、半径方向で外方に向かって伸張することができる。その際に保全部材32の特別な形状により、特にハウジング5への、特にハウジング5の磁気カップへの爪立てを実現することができる。それによって紛失保全部が形成される。
【0036】
図6は、
図5に示す構造体1とシリンダヘッド4を、第5の実施例に準じて示している。本実施例では、セグメント18は内方に向かって開いたセグメント18として構成されている。このような構成は、セグメント18の最大の変形を制限するために、リミットストッパを具体化することができるという追加の利点がある。このときバルブ側の支持領域8のセグメント18には、本体6のシリンダ側の載置領域のほうを向くスペーサ部材33が構成されている。バルブ側の支持領域8がシリンダ側の載置領域7に向かって負荷されると、スペーサ部材33がある程度の運動経路の後にシリンダ側の載置領域7に当接する。このようにスペーサ部材33は、可能な運動範囲を制限するために、シリンダ側の載置領域と協働作用する。
【0037】
さらに本実施例では、ハウジング5と協働作用するスナップリング34が設けられている。シリンダ側の載置領域7の閉じたリング20は少なくとも間接的にスナップリング34と結合されており、それにより、絶縁部材3がハウジング2に確実に取り付けられる。このことは特に、シリンダヘッド4への燃料噴射弁2の組付を容易にする。絶縁部材3をすでに燃料噴射弁2へ予備組付することができるからである。
【0038】
このように適用ケースに応じて、たとえば
図1から
図4を参照して説明したような、外方に向かって開いた絶縁部材3だけでなく、
図6と
図7を参照して説明したような、内方に向かって開いた絶縁部材3も具体化することができる。
【0039】
図7は、
図5に示す構造体1とシリンダヘッド4を第6の実施例に準じて示している。本実施例では、燃料噴射弁2のハウジング5はアンダーカットのあるテーパ部35を有しており、ここで燃料噴射弁2が絶縁部材3のバルブ側の支持領域8に支持されている。ここではハウジング5はそのアンダーカットのあるテーパ部35によって、バルブ側の支持領域8の線31に当接する。本実施例では、絶縁部材3の構成が簡素化される。
【0040】
このように、内燃機関の燃料噴射設備のための役目を果たす構造体1を具体化可能である。このとき燃料噴射弁2は組付状態のとき、絶縁部材3を介して内燃機関のシリンダヘッド4に支持可能である。
【0041】
本発明は、上述した各実施例だけに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 構造体
2 燃料噴射弁
3 絶縁部材
4 シリンダヘッド
5 ハウジング
6 本体
7 載置領域
8 支持領域
15〜18 セグメント
20 閉じたリング
21〜23 切欠き
28 湾出部
32 保全部材
33 スペーサ部材
34 スナップリング
35 テーパ部