特許第6039162号(P6039162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039162
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの配索構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
   B60R16/02 623T
   B60R16/02 623U
   B60R16/02 620S
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-68349(P2011-68349)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2012-201252(P2012-201252A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2014年2月17日
【審判番号】不服2015-15890(P2015-15890/J1)
【審判請求日】2015年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 寛
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆行
【合議体】
【審判長】 氏原 康宏
【審判官】 島田 信一
【審判官】 和田 雄二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−18257(JP,A)
【文献】 特開2008−228426(JP,A)
【文献】 特開2007−221897(JP,A)
【文献】 特開平8−85401(JP,A)
【文献】 特開平10−16669(JP,A)
【文献】 特開昭60−96122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の固定部材と、前記第1の固定部材より大きく振動する第2の固定部材との間に電線が架け渡されるワイヤハーネスの配索構造であって、
前記電線は、底部、一端が該底部の一端に連結され他端が前記第の固定部材に固定されるとともに、該底部の一端において屈曲した第1側部、及び一端が該底部の他端に連結され他端が前記第の固定部材に固定されるとともに、一部が該第1側部の一部と平行となるよう該底部の他端において屈曲した第2側部を含んで形成され、該底部、該第1側部の一部及び該第2側部の一部が全体としてU字形状を成し、
前記電線は、複数本の電線によって構成される電線束であって、前記底部、前記第1側部の一部及び前記第2側部の一部がプロテクタの内部に収容され、前記底部、前記第1側部の一部及び前記第2側部の一部において、前記電線がばらけた状態であり、
前記電線は、コルゲートチューブによって覆われており、
前記コルゲートチューブは、前記第1側部の少なくとも一部を覆う第1の筒部と、前記第2側部の少なくとも一部を覆う第2の筒部と、に分断され、
前記コルゲートチューブのうちの前記第1側部を覆う部分は、前記プロテクタに固定され、
前記電線は、前記第1の筒部及び前記第2の筒部に覆われていない部分が、前記プロテクタに固定され、
前記プロテクタは、前記第1の固定部材に固定されている、
ことを特徴とするワイヤハーネスの配索構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渡りに電線が配索されるワイヤハーネスの配索構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、揺動による電線の断線を防止することを一つの目的として、配索方向規制材を用いて、車体パネルとエンジンの間に位置する渡りに電線を架け渡らせるワイヤハーネスの配索構造について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている配索方向規制材は、電線を帯材に沿わせて配置することで、電線を湾曲した形状に維持している。しかし、配索方向規制材は、バンド部及びクリップを介して車体パネル及びエンジンに固定されている。このため、車体パネルよりも大きく振動するエンジンの振動が、剛性を有する帯材を伝播し、車体パネル側に位置する電線にもまた、帯材を介してエンジンの振動が伝播することになる。この結果、車体パネル側に位置する電線が揺動によって、電線の破損または断線や、コネクタの嵌合状態の解除や端子の接触不良などの事態を招く虞がある。このため、渡りに配索されたワイヤハーネスの振動をより一層抑制することができる構造が求められている。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、渡りに配索された電線の振動を抑制することができるワイヤハーネスの配索構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネスの配索構造は、下記(1)を特徴としている。
(1) 第1の固定部材と、前記第1の固定部材より大きく振動する第2の固定部材との間に電線が架け渡されるワイヤハーネスの配索構造であって、
前記電線は、底部、一端が該底部の一端に連結され他端が前記第の固定部材に固定されるとともに、該底部の一端において屈曲した第1側部、及び一端が該底部の他端に連結され他端が前記第の固定部材に固定されるとともに、一部が該第1側部の一部と平行となるよう該底部の他端において屈曲した第2側部を含んで形成され、該底部、該第1側部の一部及び該第2側部の一部が全体としてU字形状を成し、
前記電線は、複数本の電線によって構成される電線束であって、前記底部、前記第1側部の一部及び前記第2側部の一部がプロテクタの内部に収容され、前記底部、前記第1側部の一部及び前記第2側部の一部において、前記電線がばらけた状態であり、
前記電線は、コルゲートチューブによって覆われており、
前記コルゲートチューブは、前記第1側部の少なくとも一部を覆う第1の筒部と、前記第2側部の少なくとも一部を覆う第2の筒部と、に分断され、
前記コルゲートチューブのうちの前記第1側部を覆う部分は、前記プロテクタに固定され、
前記電線は、前記第1の筒部及び前記第2の筒部に覆われていない部分が、前記プロテクタに固定され、
前記プロテクタは、前記第1の固定部材に固定されている、
こと。
【0007】
上記(1)の構成のワイヤハーネスの配索構造によれば、渡りに配索された電線の振動を抑制することができる。また、U字形状を成す一区間においてその一部の箇所を露出させ、当該電線がばらけた状態にしてやれば、ワイヤハーネスを伝播する振動をその箇所において減衰させることができる。同時に、ワイヤハーネスを保護することができる。
また、第1側部を覆うコルゲートチューブをプロテクタを介して第1の固定部材に固定することによって、ワイヤハーネスの第1側部を伝播する振動を減衰させることができる。
また、ワイヤハーネスのU字形状を成す一区間を伝播した僅かな振動も、減衰させることができる。特に、ワイヤハーネスのうち、第2側部を第1の固定部材に固定しておけば、U字形状を成している一区間で充分減衰された振動をより一層減衰させることができる。
また、ワイヤハーネスのうちのコルゲートチューブに覆われていない部分をプロテクタに固定することによって、ワイヤハーネスの所望の位置をプロテクタに固定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のワイヤハーネスの配索構造によれば、渡りに配索された電線の振動を抑制することができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造を説明する、渡りに配索されたワイヤハーネスの斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造を説明する、渡りに配索されたワイヤハーネスの側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタの、その内部が視える方向からの斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタの、その外部が視える方向からの斜視図である。
図5図5は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第2プロテクタの、その内部が視える方向からの斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第2プロテクタの、その外部が視える方向からの斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタの、ワイヤハーネスを収容した状態の内部を視た側面図である。
図8図8は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタ及び第2プロテクタにワイヤハーネスを収容した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造について説明する。まず、本発明の実施形態の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造を説明する、渡りに配索されたワイヤハーネスの斜視図である。図2は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造を説明する、渡りに配索されたワイヤハーネスの側面図である。尚、本発明の実施形態では、ワイヤハーネスが配索される、車体パネル9とエンジン5の間に位置する空間を「渡り」と称する。
【0012】
ワイヤハーネスWは、複数本の電線をテープ巻きやビニルチューブ等で結束して構成されている。ワイヤハーネスWは、入力側コネクタ19及び出力側コネクタ22が両端に接続されたものであり、エンジン側4に位置する、エンジン5またはエンジン5の周囲に配置された電子機器18と、車体側8に位置する、車体パネル9の周囲に配置された電子機器21とを入力側コネクタ19及び出力側コネクタ22を介して電気的に接続するものである。
【0013】
ワイヤハーネスWは、一区間の電線がU字形状を成している。図1では、ワイヤハーネスWは、一区間の電線がU字形状を描いている。より詳細には、ワイヤハーネスWは、底部Wa、第1側部Wb及び第2側部Wcの三つの区間によって構成され、底部Wa、第1側部Wb及び第2側部Wcが次の位置関係になるように渡りに配索される。すなわち、底部Waは、その一端に第1側部Wbの一端が連結され、その他端に第2側部Wcの一端が連結される。このため、底部Waは、第1側部Wbと第2側部Wcの間の区間に位置する。第1側部Wbは、一端が底部Waの一端に連結され他端がエンジン5に固定される。このため、第1側部Wbは、底部Waよりもエンジン側4の区間に位置する。さらに、第1側部Wbは、底部Waの一端において屈曲し、もう一箇所で屈曲してエンジン5の電子機器18に向うように延びている。第2側部Wcは、一端が底部Waの他端に連結され他端が車体パネル9に固定される。このため、第2側部Wcは、底部Waよりも車体側8の区間に位置する。さらに、第2側部Wcは、底部Waの他端において屈曲し、もう一箇所で屈曲して車体パネル9の電子機器21に向うように延びている。ワイヤハーネスWの一区間をU字形状にするにあたっては、電線にU字状のクセをつけておくことが考えられる。
【0014】
ワイヤハーネスWは、第1側部Wbがエンジン5に、第2側部Wcが車体パネル9に、それぞれ固定されている。第1側部Wbをエンジン5に固定するため、エンジン5には取付孔51が穿設された取付ブラケットが設けられており、その取付孔51に第1側部Wbを縛るバンドTに設けられたクリップのアンカー突起を差し込むことによって、第1側部Wbをエンジン5に固定している。すなわち、アンカー突起は、アンカー突起を差し込む方向とは交差する方向に弾性変化する羽根部と、その羽根部が突設された土台と、を有しており、取付孔51にアンカー突起を差し込んだ際には、取付孔51を貫通した羽根部が弾性変化して取付孔51の径よりも幅が大きくなるとともに、弾性変化した羽根部と土台が取付ブラケットにおける取付孔51の周部を挟み込む。同様に、第2側部Wcを車体パネル9に固定するため車体パネル9には一組のバンド孔91が穿設されており、その一組のバンド孔91に挿通させたバンドTによって第2側部Wcを縛ることによって、第2側部Wcを車体パネル9に固定している。ワイヤハーネスWは、電子機器18、21への接続、及びバンドTによる取付孔51、一組のバンド孔91への固定をもって、エンジン5と車体パネル9との間に位置する渡りへ配索されている。ワイヤハーネスWのうち、バンドTによる取付孔51によってエンジン5に固定された箇所から、バンドTによる一組のバンド孔91によって車体パネル9に固定された箇所までの区間を、渡り部と称することがある。尚、第1側部Wbをエンジン5に、第2側部Wcを車体パネル9に、それぞれ固定するに当たって、バンドT及び取付孔51、バンド孔91を用いた固定構造に限られない。ワイヤハーネスを被配索部材に固定する種々の手法、例えばバンド及びクランプを用いた手法など、を適用することができる。
【0015】
本発明のワイヤハーネスの配索構造では、渡りに配索されるワイヤハーネスWは、一区間の電線がU字形状を成している。上述したように渡りにワイヤハーネスWを配索した場合、エンジンの駆動時、エンジンの振動がワイヤハーネスWの第1側部Wbへ伝播していく。しかし、U字形状を成しているワイヤハーネスWの一区間によって、その振動の振幅は減衰していく。ワイヤハーネスWの当該一区間は、言わば緩衝材の役割を果たしている。この結果、ワイヤハーネスWを経由して出力側コネクタ22に到達する振動は、ワイヤハーネスWの渡り部によって減衰されたものであるため、出力側コネクタ22の破損、及び出力側コネクタ22近辺での電線の断線を防止することができる。
【0016】
また、本発明のワイヤハーネスの配索構造では、ワイヤハーネスWの一部が車体パネル9に固定されている。ところで、エンジン側4が振動する振動数と車体側8が振動する振動数とは異なり、また、それぞれの振動の振幅もまた異なる。一方の振幅の大きな振動が他方に伝播することによって、電線の破損または断線や、コネクタの嵌合状態の解除や端子の接触不良などの事態が引き起こされる。一般に、エンジン5の振動の振幅が車体パネル9の振動の振幅に比べて大きくなる傾向にあり、このため、車体パネル9に振動が伝播することを防止することが求められる。上述したように振幅の小さい車体パネル9にワイヤハーネスWの一部である第2側部Wcを固定することにより、ワイヤハーネスWの渡り部を伝播する振動がその固定箇所においても減衰する。
【0017】
上述した実施形態では、渡りに配索されるワイヤハーネスWの一区間の電線がU字形状を成していることによってワイヤハーネスWの渡り部を伝播する振動を減衰させることができる。さらに、ワイヤハーネスWの一区間を伝播した僅かな振動も、ワイヤハーネスWの一部が振幅の小さい車体パネル9に固定されていることによって、減衰させることができる。
【0018】
以上、本実施形態の概略を説明したが、具体的な構成はこの形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれるものである。
【0019】
本実施形態では、ワイヤハーネスWが、複数本の電線をテープ巻きやビニルチューブ等で結束されていると説明した。しかし、底部Wa、第1側部Wbの一部及び第2側部Wcの一部の少なくとも一つの箇所において電線を露出させ、当該電線がばらけた状態にしてやれば、ワイヤハーネスWの渡り部を伝播する振動をその箇所において一層減衰させることができる。
【0020】
続いて、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造についてより詳細に説明する。ここでは、一区間の電線がU字形状をなすワイヤハーネスをその渡りに配索するに当たって、そのU字形状の一区間をプロテクタの内部に収容させ、その状態のプロテクタを配索する配索構造について説明する。図3は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタの、その内部が視える方向からの斜視図である。図4は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタの、その外部が視える方向からの斜視図である。図5は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第2プロテクタの、その内部が視える方向からの斜視図である。図6は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第2プロテクタの、その外部が視える方向からの斜視図である。図7は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタの、ワイヤハーネスを収容した状態の内部を視た側面図である。図8は、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造に用いられる第1プロテクタ及び第2プロテクタにワイヤハーネスを収容した状態を示す斜視図である。尚、先に実施形態の概略で参照した符号が割り当てられた部材は、上述した通りのものであり、その部材についての説明を省略する。
【0021】
一区間がU字形状であるワイヤハーネスWを内部に収容するプロテクタ100は、第1プロテクタ200と、第2プロテクタ300によって構成される。第1プロテクタ200及び第2プロテクタ300はそれぞれ、一方の側が開口した半割体であり、それぞれの開口した側を向かい合わせに組み合わせることにより、ワイヤハーネスWを収容可能な空間が内部に確保されたプロテクタ100が組み立てられる。第2実施形態では、図8に示すように、電線の一部がコルゲートチューブによって保護されたワイヤハーネスWを用いる場合について説明する。
【0022】
コルゲートチューブは、エンジン側4に向けて延びる第1側部Wbの少なくとも一部を覆う第1の筒部C1と、車体側8に向けて延びる第2側部Wcの少なくとも一部を覆う第2の筒部C2と、に分断されている。このため、ワイヤハーネスWは、底部Wa、第1側部Wbの他部、第2側部Wcの他部がプロテクタ100内部においてコルゲートチューブから露出している。
【0023】
第1プロテクタ200は、概略的な構成として、一面が開口した箱形状の第1プロテクタ本体210を備えている。第1プロテクタ本体210には、第1側部Wbを覆うコルゲートチューブの第1の筒部C1によって挿通される第1挿通孔220、第2側部Wcを覆うコルゲートチューブの第2の筒部C2によって挿通される第2挿通孔230、第2プロテクタ300に設けられた係止爪に係合する係止孔240、第2挿通孔230よりも第1プロテクタ本体210の内部よりに位置し、第1プロテクタ本体210の内部にある第2側部Wcをバンドによって第1プロテクタ本体210に固定するためのバンド挿入孔251及びバンド支持壁252、及び、第2挿通孔230を通過した第2の筒部C2を第1プロテクタ本体210に固定するための支持板260が形成されている。
【0024】
第1挿通孔220は、その形状が、コルゲートチューブの第1の筒部C1の断面形状に即したものであり、第1プロテクタ本体210の上壁に形成されている。第1挿通孔220は、該第1挿通孔220を通過する、蛇腹上の第1の筒部C1の側壁を係止することによって、第1の筒部C1を第1プロテクタ本体210に固定する。このため、第1挿通孔220を画成する内壁には、該第1挿通孔220の周方向に突条221が複数形成されている。これらの突条221が蛇腹上の第1の筒部C1の側壁の凹部に嵌り込むことにより、第1の筒部C1を第1プロテクタ本体210に固定する。
【0025】
第2挿通孔230は、その形状が、第1挿通孔220と異なり、コルゲートチューブの第2の筒部C2の断面を内側に納めることができる形状であり、第1プロテクタ本体210の上壁に形成されている。
【0026】
係止孔240は、第1プロテクタ本体210に7個、形成されており、そのそれぞれが第2プロテクタ300に設けられた係止爪に係合する。係止孔240及び第2プロテクタ300の係止爪を係止させるように第1プロテクタ200及び第2プロテクタ300を組み付けることにより、プロテクタ100が組み立てられる。
【0027】
バンド挿入孔251は、矩形形状であり、第1プロテクタ本体210の側壁に形成されている。また、バンド挿入孔251は、第2挿通孔230の下方(図7の図中下方向)に位置している。第1プロテクタ200にワイヤハーネスWを収容した際、第2側部Wcのバンド挿入孔251に向かい合う箇所は、第2の筒部C2に覆われておらず電線が露出している。第1プロテクタ200及び第2プロテクタ300の組み付け後、この露出した部分とバンド支持壁252とをバンド(図示せず)によって縛ることによって、第2側部Wcを第1プロテクタ本体210に固定する。
【0028】
支持板260は、第1プロテクタ本体210の上壁から上方(図7の図中上方向)に向けて突出した板形状のものである。また、支持板260は、第2挿通孔230の上方に位置している。第2挿通孔230を通過し第1プロテクタ本体210から上方に向けて延設される第2の筒部C2は、支持板260によってその延設方向が規制される。また、支持板260には、図8に示すように、第2側部Wcに巻き付けられたクランプ付きバンド270のクランプ271が嵌入するクランプ孔261が設けられている。これにより、このコルゲートチューブから露出した第2側部Wcの一部分をクランプ付きバンド270及びクランプ孔261によって第1プロテクタ本体210に固定する。
【0029】
続いて、第2プロテクタ300について説明する。
第2プロテクタ300は、概略的な構成として、一面が開口した箱形状の第2プロテクタ本体310を備えている。第2プロテクタ本体310には、第1側部Wbを覆うコルゲートチューブの第1の筒部C1によって挿通される第1挿通孔320、第2側部Wcを覆うコルゲートチューブの第2の筒部C2によって挿通される第2挿通孔330、第1プロテクタ200に設けられた係止孔240に係合する係止爪340、第2挿通孔330よりも第2プロテクタ本体310の内部よりに位置し、第2プロテクタ本体310の内部にある第2側部Wcをバンドによって第2プロテクタ本体310に固定するためのバンド挿入孔351及びバンド支持壁352、及び、渡りに臨む車体パネル9に第2プロテクタ本体310を固定するブラケット370が形成されている。
【0030】
第1挿通孔320は、その形状が、コルゲートチューブの第1の筒部C1の断面形状に即したものであり、第2プロテクタ本体310の上壁に形成されている。第1挿通孔320は、該第1挿通孔320を通過する、蛇腹上の第1の筒部C1の側壁を係止することによって、第1の筒部C1を第2プロテクタ本体310に固定する。このため、第1挿通孔320を画成する内壁には、該第1挿通孔320の周方向に突条321が複数形成されている。これらの突条321が蛇腹上の第1の筒部C1の側壁の凹部に嵌り込むことにより、第1の筒部C1を第2プロテクタ本体310に固定する。
【0031】
第2挿通孔330は、その形状が、第1挿通孔320と異なり、コルゲートチューブの第2の筒部C2の断面を内側に納めることができる形状であり、第2プロテクタ本体310の上壁に形成されている。
【0032】
係止爪340は、第2プロテクタ本体310に7個、形成されており、そのそれぞれが第1プロテクタ200に設けられた係止孔に係合する。係止爪340及び第1プロテクタ200の係止孔240を係止させるように第1プロテクタ200及び第2プロテクタ300を組み付けることにより、プロテクタ100が組み立てられる。
【0033】
バンド挿入孔351は、矩形形状であり、第2プロテクタ本体310の側壁に形成されている。また、バンド挿入孔351は、第2挿通孔330の下方(図7の図中下方向)に位置している。第2プロテクタ300にワイヤハーネスWを収容した際、第2側部Wcのバンド挿入孔351に向かい合う箇所は、第2の筒部C2に覆われておらず電線が露出している。第1プロテクタ200及び第2プロテクタ300の組み付け後、この露出した部分とバンド支持壁352とをバンド(図示せず)によって縛ることによって、第2側部Wcを第2プロテクタ本体310に固定する。より詳細には、第1プロテクタ200及び第2プロテクタ300を組み付けた状態において、第1プロテクタ本体210のバンド挿入孔251及び第2プロテクタ本体310のバンド挿入孔351のいずれか一方からプロテクタ100の内部に向けてバンドの先端を進入させ、露出した電線の一部分を沿わせるようにバンドを周回させ、第1プロテクタ本体210のバンド挿入孔251及び第2プロテクタ本体310のバンド挿入孔351の他方からプロテクタ100の外部に向けてバンドの先端を取り出す。そして、第1プロテクタ本体210のバンド支持壁252及び第2プロテクタ本体310のバンド支持壁352に対してバンドを組み付けるように縛る。この一連の作業により、第2側部Wcを第1プロテクタ本体210及び第2プロテクタ本体310に固定する。
【0034】
ブラケット370は、第2プロテクタ本体310の側壁から突出するように該第2プロテクタ本体310に設けられている。
【0035】
続いて、上述したプロテクタ100を用いてワイヤハーネスWを渡りに配索する一連の作業手順を説明する。
【0036】
まず、ワイヤハーネスWを第1プロテクタ200に対して収容する。すなわち、ワイヤハーネスWの第1側部Wbを覆う第1の筒部C1を、その外壁の凹部に突条221に係合させるように第1挿通孔220に配置する。さらに、第1プロテクタ本体210内で底部Wa、第1側部Wb及び第2側部WcがU字を描くようにワイヤハーネスWを第1プロテクタ本体210に配置する。そして、第2側部Wcを第2挿通孔230に配置し、その第2側部Wcがクランプ孔261の近辺までコルゲートチューブから露出するよう第2の筒部C2の位置を調整する。その後、クランプ孔261に向かい合う第2側部Wcの一部分にクランプ付きバンド270を巻きつけ、クランプ271をクランプ孔261に嵌入する。この状態の第1プロテクタ本体210に対して第2プロテクタ本体310を組み付ける。この組み付けられた状態が図8に示されている。
【0037】
必要に応じて、第1プロテクタ本体210のバンド挿入孔251及び第2プロテクタ本体310のバンド挿入孔351のいずれか一方からプロテクタ100の内部に向けてバンドの先端を進入させ、露出した電線の一部分を沿わせるようにバンドを周回させ、第1プロテクタ本体210のバンド挿入孔251及び第2プロテクタ本体310のバンド挿入孔351の他方からプロテクタ100の外部に向けてバンドの先端を取り出す。そして、第1プロテクタ本体210のバンド支持壁252及び第2プロテクタ本体310のバンド支持壁352に対してバンドを組み付けるように縛る。この一連の作業により、第2側部Wcを第1プロテクタ本体210及び第2プロテクタ本体310により強固に固定することができる。
【0038】
このように組み付けられたプロテクタ100をエンジン5と車体パネル9の間に位置する渡りに配置するに当たっては、渡りに面する車体パネル9に形成されたブラケット固定台910にブラケット370を固定する。
【0039】
本実施形態では、渡りに配索されるワイヤハーネスWは、一区間の電線がU字形状を成すとともに、プロテクタ100によって保護されている。ワイヤハーネスWはコルゲートチューブによって覆われているもののコルゲートチューブの内部で振動することが考えられるが、U字形状を成しているワイヤハーネスWの一区間によって、ワイヤハーネスWの第1側部Wbから底部Waへ向って伝播する振動は、振幅を減衰させていく。ワイヤハーネスWの当該一区間は、言わば緩衝材の役割を果たしている。この結果、出力側コネクタ22に到達する振動は、減衰されたものであるため、出力側コネクタ22の破損、及び出力側コネクタ22近辺での電線の断線を防止することができる。
【0040】
また、本実施形態では、プロテクタ100によってワイヤハーネスWの一区間におけるU字形状が維持されるため、ワイヤハーネスWにU字形状のクセをつけておく必要が無い。
【0041】
また、本実施形態では、ワイヤハーネスWの第2側部Wcがクランプ付きバンド270及びクランプ孔261を介してプロテクタ100に固定されている。このプロテクタ100は、車体パネル9に設けられたブラケット固定台910にブラケット370が固定される。ところで、エンジン側4が振動する振動数と車体側8が振動する振動数とは異なり、また、それぞれの振動の振幅もまた異なる。一方の振幅の大きな振動が他方に伝播することによって、電線の破損または断線や、コネクタの嵌合状態の解除や端子の接触不良などの事態が引き起こされる。一般に、エンジン5の振動の振幅が車体パネル9の振動の振幅に比べて大きくなる傾向にあり、このため、車体パネル9に振動が伝播することを防止することが求められる。本実施形態のように振幅の小さい車体パネル9のブラケット固定台910にプロテクタ100のブラケット370を固定することにより、ワイヤハーネスWの第2側部Wcはクランプ付きバンド270、プロテクタ100を介して車体パネル9に固定されたことになり、ワイヤハーネスWの渡り部を伝播する振動がクランプ付きバンド270によって縛られた箇所においても減衰する。本実施形態では、渡りに配索されるワイヤハーネスWの一区間の電線がU字形状を成していることによってワイヤハーネスWの渡り部を伝播する振動を減衰させることができる。さらに、ワイヤハーネスWの一区間を伝播した僅かな振動も、ワイヤハーネスWの一部が振幅の小さい車体パネル9側にクランプ付きバンド270及びプロテクタ100を介して間接的に固定されていることによって、減衰させることができる。特に、ワイヤハーネスWの一区間のうち、第2側部Wcを車体パネル9側に固定しておけば、U字形状を成している一区間で充分減衰された振動をより一層減衰させることができる。
【0042】
以上、本実施形態を具体的に詳述してきたが、具体的な構成はこの形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれるものである。例えば、底部Wa、第1側部Wbの一部及び第2側部Wcの一部の少なくとも一つの箇所において、電線を露出させ当該電線がばらけた状態であれば、ワイヤハーネスWの渡り部を伝播する振動をその箇所において減衰させることができる。このとき、電線がばらけていてもプロテクタ100によって保護されているため、コルゲートチューブから露出した箇所における断線の虞も無い。
【0043】
また、本実施形態では、第1挿通孔220、320によって第1の筒部C1がプロテクタ100に固定され、そのプロテクタ100は車体パネル9に固定される。第1の筒部C1がプロテクタ100を介して車体パネル9に固定されることにより、エンジン側4から第1の筒部C1に伝播する振動を減衰させることができる。このとき、ワイヤハーネスWの第1側部Wbは、エンジン側4から振動が伝播して第1の筒部C1の内部において振動している。振動が減衰した第1の筒部C1の内部で第1側部Wbが振動すると、第1側部Wbが第1の筒部C1の内面に接触したときに、その第1側部Wbを伝播する振動が第1の筒部C1の振動程度に弱められる。このように、第1の筒部C1をプロテクタ100に固定することによっても、ワイヤハーネスWの第1側部Wbを伝播する振動を減衰させることができる。
【0044】
以上、プロテクタを用いてワイヤハーネスを渡りに配索する、本発明の実施形態のワイヤハーネスの配索構造によれば、エンジン側4からワイヤハーネスWに伝播する振動を次の点で減衰させている。すなわち、
(1)第1の筒部C1をプロテクタ100を介して車体パネル5に固定することによって、ワイヤハーネスWの第1側部Wbを伝播する振動を減衰させることができる。
(2)U字形状を成しているワイヤハーネスWの一区間によって、ワイヤハーネスWの第1側部Wbから底部Wa、第2側部Wcへ向って伝播する振動を減衰させることができる。
(3)ワイヤハーネスWの第2側部Wcをプロテクタ100を介して車体パネル5に固定することによって、ワイヤハーネスWの第2側部Wcを伝播する振動を減衰させることができる。
このようにワイヤハーネスWを伝播する振動を減衰させることによって、電線の破損または断線や、コネクタの嵌合状態の解除や端子の接触不良などの事態が発生することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0045】
4 エンジン側
5 エンジン
8 車体側
9 車体パネル
51 取付孔
91 バンド孔
100 プロテクタ
200 第1プロテクタ
210 第1プロテクタ本体
220 第1挿通孔
230 第2挿通孔
240 係止孔
260 支持板
270 クランプ付きバンド
300 第2プロテクタ
310 第2プロテクタ本体
320 第1挿通孔
330 第2挿通孔
340 係止爪
370 ブラケット
910 ブラケット固定台
C1 第1の筒部
C2 第2の筒部
T バンド
W ワイヤハーネス
Wa 底部
Wb 第1側部
Wc 第2側部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8