【実施例】
【0022】
[
参考例]
図1は、本発明に係る放射性物質含有土壌の処理方法の
参考例を説明するフロー図である。当該フロー図においては、当初の放射性物質含有土壌の量を100質量%としたときの各段階におけるマスバランスを[質量%]として示し、各段階における放射能を〈Bq/kg〉として示した。
以下、
図1を参照しながら、本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
(放射性物質含有土壌)
本参考例において、当初の放射性物質含有土壌は10mmの粒径を有する土壌1.6kgで、放射能は2754Bq/kgであった。当該放射性物質含有土壌の性状および放射能測定結果を表1に示す。
【0024】
(洗浄処理)
放射性物質含有土壌と、当該放射性物質含有土壌の2倍の重量を有する水とを混合し、数分間撹拌した後、当該土壌と水とを分離し洗浄処理とした。
【0025】
(湿式分級)
洗浄処理後の放射性物質含有土壌と、同重量の水とを混合し、篩を用いて当該土壌を粗粒1(2mm超)、粗粒2(2〜0.075mm)、細粒(0.75mm未満)の3段階に分級した。
このとき粗粒1(2mm超)は27.5質量%、粗粒2(2〜0.075mmは45.05質量%)、細粒(0.75mm未満は27.5質量%)であった。
当該粗粒1、粗粒2、細粒の性状および放射能測定結果、使用した水の放射能測定結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示すように、粗粒1の放射能は434Bq/kg、粗粒2の放射能は1190Bq/kg、細粒の放射能は7326Bq/kgであった。即ち、27.5質量%の細粒に、放射能分布で78%のものが濃縮することが判明した。
一方、27.5質量%の粗粒1の放射能は、1000Bq/kgを下回り、このまま環境中へ還元できることが判明した。つまり、2mm超の土壌を得る湿式分級操作により、当初の放射性物質含有土壌を27.5%減容することが出来た。
【0028】
(磨鉱処理(粗粒2))
上述の結果より、本発明者らは放射性物質含有土壌において、放射性物質は、土壌を構成する微細粒子や微細結晶部分に主に吸着していることに想到した。
そこで、粗粒2へ磨鉱処理を施し、粗粒2から微細粒子や微細結晶部分を機械的に分離すれば、粗粒2から環境へ還元し得る部分を回収できると考えた。
磨鉱処理は、500gの粗粒2と、400mlの水と、4kgの鉄ボール(φ20mm)とをポットミルに装填し、10分間撹拌した。
【0029】
(浮遊選鉱(粗粒2))
磨鉱処理後の粗粒2へ、水1.5L、凝集剤として10%PAX(アミルザンセートカリウム試薬)5mL、パイン油5滴を添加し、浮選機にて5分間撹拌し、15分間の浮選を実施して、粗粒2の浮物と沈物とを得た。
当該粗粒2の浮遊選鉱で得られた浮物および沈物の性状および放射能測定結果、ろ液の放射能測定結果を表2に示す。
【0030】
尚、
本参考例においては、凝集剤として10%PAX(アミルザンセートカリウム試薬)およびパイン油を用いているが、これに限られるわけではなく、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、キサントゲン酸塩、ジアルキルジチオリン酸塩、各種の起泡剤も使用可能である。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示すように、粗粒2の浮物は8.9質量%(マスバランス:4.0質量%)、沈物は91.1質量%(マスバランス:41.0質量%)であった。
また、粗粒2の浮物の放射能は3540Bq/kg、粗粒2の沈物の放射能は960Bq/kgであった。即ち、マスバランス:4.0質量%の粗粒2の浮物が、主に、放射性元素を濃縮して吸着していることが判明した。
一方、マスバランス:41.0質量%の粗粒2の沈物の放射能は1000Bq/kgを下回り、このまま環境中へ還元できることが判明した。つまり、粗粒2への磨鉱処理と浮遊選鉱を実施することで、当初の放射性物質含有土壌を41.0%減容することが出来た。
【0033】
(浮遊選鉱(細粒))
上述した粗粒2への浮遊選鉱の効果を受けて、細粒への浮遊選鉱の適用を試みた。
具体的には、細粒へ、水3.0L、凝集剤として10%PAX(アミルザンセートカリウム試薬)5mL、パイン油5滴を添加し、浮選機にて5分間撹拌し、15分間の浮選を実施して、細粒の浮物と沈物とを得た。
当該細粗の浮遊選鉱で得られた浮物および沈物の性状および放射能測定結果、ろ液の放射能測定結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3に示すように、細粒の浮物は47.9質量%(マスバランス:13.2質量%)、沈物は52.1質量%(マスバランス:14.3質量%)であった。
また、細粒の浮物の放射能は11203Bq/kg、粗粒2の沈物の放射能は3763Bq/kgであった。即ち、マスバランス:13.2質量%の細粒の浮物が、主に、放射性元素を濃縮して吸着していることが判明した。
一方、マスバランス:14.3質量%の細粒の沈物の放射能は10000Bq/kgを上回り、このままでは環境中へ還元出来ないことも判明した。
【0036】
(まとめ)
放射性物質含有土壌を、2mm超と2mm以下との段階に分級し、2mm超の土壌は環境中へ還元し、2mm以下の土壌は管理下に置くことでも、管理下に置くべき放射性物質を含有した土壌量を27.5質量%減容することが出来る。
上述した2mm以下の土壌を、0.075mm以上と0.075mm未満との段階に分級し、2mm以下0.075mm以上の土壌を磨鉱した後、浮遊選鉱し、沈物となった土壌は環境中へ還元し、浮物となった土壌は管理下に置くことで、管理下に置くべき放射性物質を含有した土壌量を41.0質量%減容することが出来る。
従って、2mm超と2mm以下との段階への分級と、2mm以下0.075mm以上の土壌への磨鉱処理、浮遊選鉱の実施により、管理下に置くべき放射性物質を含有した土壌量を68.5質量%減容することが出来た。
また、いずれの工程においても使用された水は放射性物質を含有せず、再利用または環境への還元が可能であることも判明した。
【0037】
勿論、粗粒1と粗粒2との境界値は2mmに限られるわけではなく、土壌の種類、放射性物質の含有状況、環境中へ還元して問題とならない放射能レベルの設定によって変化する場合がある。そこで、当該粗粒1と粗粒2とを分級する際の境界値は、これら土壌の種類、放射性物質の含有状況、環境中へ還元して問題とならない放射能レベルの設定等、を勘案して実験的に設定すればよい。
尤も、本発明者らは、当該粗粒1と粗粒2とを分級する際の境界値は、概ね1〜3mmの範囲にあると考えている。
【0038】
同様に、粗粒2と細粒との境界値も0.075mmに限られるわけではなく、土壌の種類、放射性物質の含有状況、環境中へ還元して問題とならない放射能レベルの設定によって変化する場合がある。そこで、当該粗粒2と細粒とを分級する際の境界値も、これら土壌の種類、放射性物質の含有状況、環境中へ還元して問題とならない放射能レベルの設定等、を勘案して実験的に設定すればよい。
尤も、本発明者らは、当該粗粒2と細粒とを分級する際の境界値は、概ね0.1〜0.05mmの範囲にあると考えている。
【0039】
[
実施例]
実施例においては、放射性物質を含有した土壌に対し鉄粉、鉄化合物粉を適用することで、当該放射性物質を含有した土壌に起因する空間放射線を遮蔽した。
以下、試験方法について具体的に設明する。
【0040】
(放射性物質を含有した土壌)
放射性物質を含有した比重1.8g/dm
−3の土壌を200g準備した。
当該土壌の放射能は2700Bq/kgであった。
当該土壌を2mmのフルイで篩い、通過した粒子をステンレス製金属バット(φ210×H60mm)へ入れた。
【0041】
(空間放射線量の測定)
測定器は、米国 S.E.International社製のINSPECTOR+を用い、全γ線量を測定した。
具体的には、ステンレス容器上面に測定器をセットし、全γ線量を測定した。このとき試料表面と測定器検出器部分の空間距離は、50mmとした。そして、測定開始より5分間測定を継続し、平均値を求めて測定値とした。
尚、放射性物質を含有した土壌に起因する空間放射線測定に先立ち、バックグラウンドである測定場所の空間線量を測定したところ0.10μSv/hであった。そこで、当該バックグラウンドの値を測定値から減ずる補正を行い、バックグラウンド補正値を得た。
【0042】
(鉄粉、鉄化合物粉)
鉄粉としては、DOWA IPクリエイション株式会社製(E−200)を準備した。
水酸化鉄としては、FeCl
3をNaOHで中和してFe(OH)
3を形成し、当該Fe(OH)
3を濾過、乾燥した後に2mmの篩に通過させて得られた水酸化鉄(III)を用いた。
硫化鉄としては、鉱石として産出する天然パイライトを粉砕して、2mmの篩に通過させて得られた天然硫化鉄(FeS
2)を用いた。
【0043】
(操作)
〈均質混合法〉
放射性物質含有土壌200gへ所定量の5〜20質量%鉄粉または鉄化合物粉を添加し、5分間混合の後、ステンレスバット内に均一に敷きならし、空間放射線量を測定した。当該測定結果を表4に示す。
〈表面添加法〉
放射性物質含有土壌200gをステンレスバット内に均一に敷きならし、当該土壌表面へ、所定量の鉄粉を均一に敷きならして添加し、空間放射線量を測定した。当該測定結果を表4に示す。
【0044】
【表4】
【0045】
(まとめ)
表1の結果から、放射性物質含有土壌へ、鉄粉および/または鉄化合物粉を添加することで、当該放射性物質を含有した土壌に起因する空間放射線が遮蔽され、放射線量が低減することが判明した。当該空間放射線の遮蔽効果は、鉄粉の添加量が多いほど増加した。
また、同重量の添加であれば、鉄粉の方が、鉄化合物粉より空間放射線の遮蔽効果が高いことも判明した。
さらに、同重量の鉄粉添加であれば、表面添加法の方が、均質混合法より空間放射線の遮蔽効果が高いことも判明した。