(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の陽イオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオンからなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項4に記載のリチウム空気電池。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、例示的な実施形態によるリチウム空気電池について、さらに詳細に説明する。
【0011】
一実施形態によるリチウム空気電池は、リチウムを含む負極と、酸素を正極活物質として使用する正極と、有機系電解質と、を含み、前記有機系電解質が、金属−リガンド錯体(metal-ligand complex)を含む。
【0012】
リチウム空気電池は、電解質として、水系電解質と有機系電解質とを使用することができ、有機系電解質を使用する場合、下記反応式1のような反応メカニズムを示す。
【0013】
[反応式1]
4Li+O
2⇔2Li
2O E
o=2.91V
2Li+O
2⇔Li
2O
2 E
o=3.10V
【0014】
放電時に、負極から由来するリチウムが、正極から導入される酸素と出合い、リチウム酸化物が生成され、酸素は還元される(ORR:酸素還元反応(oxygen reduction reaction))。また、反対に、充電時に、リチウム酸化物が還元され、酸素が酸化されて発生する(OER:酸素発生反応(oxygen evolution reaction))。
【0015】
一方、放電時には、Li
2O
2が正極の気孔に析出され、リチウム空気電池の容量は、析出されたLi
2O
2が正極の気孔を埋める含有量によって決定される。充電時には、析出されたLi
2O
2が酸化され難くて、それ故に過電圧が加えられる。前記過電圧を下げるために、従来には、正極に触媒物質を導入することが一般的であった。
【0016】
これに比べ、前記実施形態によるリチウム空気電池は、電解質に金属−リガンド錯体を添加することによって、容量上昇及び充放電分極(=充電電圧−放電電圧)低減が可能である。
【0017】
有機系電解質内の金属−リガンド錯体が電極反応に参与するによって、電極反応の反応面積が、電極と金属−リガンド錯体との界面反応と、金属−リガンド錯体とLi
2O
2との界面反応とに拡張される。
【0018】
また、界面の性質が変化するので、界面抵抗も変化する。従って、既存のリチウム空気電池に比べ、電極反応速度が顕著に増大し、すなわち、可逆的な電極反応が可能になり、充放電時の過電圧が顕著に低減しうる。
【0019】
前記金属−リガンド錯体は、充放電時の電子移動に関与しうり当技術分野で、金属とリガンドとの結合によって錯体を形成するあらゆる化合物を意味する。前記金属−リガンド錯体は、異なったものとしては、配位錯体(coordination complex)、金属錯体(metal complex)または中心原子が金属である錯化合物(complex compound)と呼ばれうる。例えば、前記金属−リガンド錯体は、無機化学(Inorganic Chemistry,Ian S.Butler & John F.Harrod,The Benjamin/Cumming Publishing Company,Inc.,1989)の359ページないし439ページに記載されて説明された定義に含まれる、中心原子が金属であるあらゆる錯化合物を含む。
【0020】
前記金属−リガンド錯体及びこれを含む有機系電解質は、充電及び/または放電の過程で、正極とリチウム酸化物との間の電子移動を、一部または全部媒介する媒介体(mediator)の役割を行うことができる。前記リチウム酸化物は、Li
2O、Li
2O
2などでありうる。本明細書でリチウム酸化物は、リチウム過酸化物を含むあらゆる種類のリチウム酸化物を意味する。
【0021】
前記金属−リガンド錯体の酸化還元電位(redox potential)は、リチウム金属に対し、2ないし5Vであり、リチウム空気電池の充放電電圧範囲に含まれる。すなわち、前記リチウム空気電池の充放電過程で、前記金属−リガンド錯体の酸化還元が起こりうる。前記金属−リガンド錯体は、リチウム空気電池の充放電電圧範囲内で、例えば、リチウム金属に対して、2ないし5Vの電圧範囲内で、酸化還元電位を有し、有機系電解質内で安定した状態を維持するものであるならば、具体的な化学的構造に係わりなく、いずれも使用可能である。
【0022】
以下、前記金属−リガンド錯体及びこれを含む有機系電解質が、充放電過程で電子移動に関与するメカニズムについて、さらに具体的に例示して説明するが、それらは本発明の理解を助けるためのものであり、本発明の範囲をこのような説明の範囲で限定しようとする意図ではない。
【0023】
例えば、前記リチウム空気電池の充電過程で、前記金属−リガンド錯体が、リチウム酸化物に比べて、低電圧で正極に電子を伝達し、まず酸化される。次に、前記酸化された金属−リガンド錯体が、正極表面に付着したリチウム酸化物から電子の伝達を受けて還元され、最初の(original)金属−リガンド錯体に再生される。前記酸化された金属−リガンド錯体に電子を伝達したリチウム酸化物は、酸素を放出しつつ、リチウムイオンに酸化され、有機系電解液に溶解する。次に、前記再生された金属−リガンド錯体は、正極に電子を伝達し、再び酸化される。
【0024】
前記金属−リガンド錯体は、充電過程及び/または放電過程で、酸化還元対(redox couple)を形成することによって、電子を伝達することができる。すなわち、酸化された状態と還元された状態とを交互に反復しつつ、電極反応の電子移動に関与しうる。
【0025】
前記金属−リガンド錯体で前記金属は、元素周期律表の第3族ないし第15族からなる群から選択された一つ以上を含む。例えば、前記前記金属は、遷移金属を含む。具体的には、前記金属は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo、Ru、Sn、Sb、W、Pt、Ag、Au、Pd、Rh及びPbからなる群から選択された一つ以上である。
【0026】
前記金属−リガンド錯体で前記リガンドは、分子内に二重結合及び/または三重結合を含む。前記二重結合は、炭素と炭素との二重結合、炭素と酸素との二重結合、窒素と窒素との二重結合などを含み、前記三重結合は、炭素と窒素との三重結合などを含むが、必ずしもこのような範囲に限定されるものではなく、当技術分野で使われる二重結合及び/または三重結合であるならば、いずれも可能である。
【0027】
また、前記リガンドは、共役構造(conjugated system)を含む。前記共役構造は、二重結合間に単一結合が存在し、p軌道が連続的に連結されて重畳するシステムを意味する。前記共役構造は、π電子の非局在化(delocalization)が可能な構造である。前記π電子の非局在化は、共役構造を含む化合物を安定化させる。従って、前記共役構造を含むリガンドを含む錯化合物は、酸化時及び/または還元時に、安定した状態を維持することができる。例えば、1,3−ブタジエン、1,3,5−ヘプタトリエン、ベンゼン、シクロペンタジエン、シクロヘプタトリエンなどである。
【0028】
また、前記リガンドは、ハプト数(hapticity)リガンド、または2以上の結合サイトを有する多座(polydentate)リガンドを含む。
【0029】
前記ハプト数は、リガンドに含まれた複数の連続した原子が、中心金属に同等に配位する方式を意味する。ハプト数リガンドは、例えば、η
1−アリル、η
3−アリル、η
3−アレニル、η
2−ブタジエン、η
4−ブタジエン、η
1−シクロペンタジエン、η
3−シクロペンタジエン、η
5−シクロペンタジエン、η
2−ベンゼン、η
4−ベンゼン、η
6−ベンゼン、η
7−シクロヘプタトリエニル、η
8−シクロオクタトリエニルなどである。
【0030】
前記多座リガンドは、中心金属に配位されるサイトが複数個であるリガンドであり、例えば、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、アセチルアセトネート、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、クラウンエーテル、クリプテート、ジエチレントリアミン、ジメチルグリオキシム、エチレンジアミンテトラアセテート、エチレンジアミントリアセテート、グリシネート、ヘム(heme)、トリエチレンテトラアミン、テルピリジンなどである。
【0031】
また、前記リガンドは、C
5−C
50脂肪族環、C
2−C
50ヘテロ脂肪族環、C
5−C
50芳香族環またはC
2−C
50ヘテロ芳香族環を含む。前記芳香族環及びヘテロ芳香族環は、2以上の芳香族環が融合された(fused)形態でありうる。
【0032】
例えば、前記リガンドは、フタロシアニン環、ポルフィリン環、シクロペンタジエン環、インデン環、ピリジン環、カルバゾール環、イミダゾール環、ピロール環、チオフェン環、チアントレン環、フラン環、ピラン環、イソベンゾフラン環、ピラゾール環、イソチアゾール環、イソオキサゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピロリジン環、インドリジン環、イソインドール環、インドール環、インダゾール環、プリン環、キノリジン環、イソキノリン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、プテリジン環、フェナントリジン環、アクリジン環、ペリミジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環及びそれらの誘導体からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0033】
また、前記リガンドは、F、Cl、Br、I、Si、N、O、S、P、B、Se、Te及びAsからなる群から選択された一つ以上のヘテロ原子を含む。前記リガンドは、原子自体がリガンドであり得、また2以上のヘテロ原子が結合してリガンドを形成することもできる。例えば、アセテート、アセチルアセトネート、ハライドまたは亜硝酸塩(nitrite)である。
【0034】
例えば、前記リガンドは、ベンゼン、シクロペンタジエン、アセチルアセトネート、ピリジン、ビピリジン、トリフェニルホスフィン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、エチレンジアミンテトラアセテート(EDTA)、エチレンジアミントリアセテート、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,1−ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,10−フェナントロリン、コロール(corrole)、クラウンエーテル、[2,2,2]クリプタンド、ジメチルグリオキシメート、グリシネート、ヘム、ニトロシル、ピラジン、スコルピオネート、2,6−ビス(2−ピリジル)ピリジン、1,4,7−トリアザシクロノナン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリエチレンテトラアミン、トリメチレンホスフィン、トリ(o−トリル)ホスフィン、トリス(2−アミノエチル)アミン、トリス(2−ジフェニルホスフィンエチル)アミン、トロピリウム、オキサレート、フタロシアニン、ポルフィリン、I
−、Br
−、S
2−、S−CN
−、Cl
−、NO
3−、N
3−、F
−、OH
−、C
2O
42−、H
2O、N=C=S
−、CH
3CN、NH
3、NO
2−、CN
−、C=O、SO
32−及びそれらの誘導体からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0035】
例えば、前記有機系電解質は、遷移金属と、1以上のハプト数シクロペンタジエン・リガンドとを含むメタロセン系錯体;遷移金属とフタロシアニン・リガンドとを含むフタロシアニン系錯体;遷移金属とポルフィリン・リガンドとを含むポルフィリン系錯体;遷移金属とアミン系リガンドとを含むアミン系錯体;遷移金属とホスフィン系リガンドとを含むホスフィン系錯体;遷移金属とピリジン系リガンドとを含むピリジン系錯体;遷移金属とフェナントロリン系リガンドとを含むフェナントロリン系錯体;遷移金属とアセチルアセトネート系リガンドとを含むアセチルアセトネート系錯体;遷移金属とアセテート・リガンドとを含むアセテート系錯体;それらの誘導体からなる群から選択された一つ以上の錯体を含む。
【0036】
例えば、前記メタロセン系錯体は、例えばM(C
5H
5)
2(前記Mは、Fe、Co、Ni、Cuなどの遷移金属である)であり、下記化学式1で表示されるメタロセンなどを含む。
【0038】
前記化学式1で、Mは遷移金属であり、R
1ないしR
10は、同一であるかまたは異なり、それぞれ水素、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシル基、ハロゲン、シアノ基、カルボン酸基、置換または非置換のC
1−C
20アルキル基、置換または非置換のC
2−C
20アルケニル基、置換または非置換のC
2−C
20アルキニル基、置換または非置換のC
1−C
20アルコキシ基、置換または非置換のC
2−C
20アルコキシカルボニル基、置換または非置換のC
6−C
30アリール基、置換または非置換のC
1−C
20ヘテロアルキル基、置換または非置換のC
3−C
20ヘテロアリール基、置換または非置換のC
2−C
20アルキルカルボニル基、置換または非置換のC
7−C
30アリールカルボニル基、あるいは置換または非置換のC
4−C
30ヘテロアリールカルボニル基を示す。
【0039】
前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリール基、ヘテロアルキル基、ヘテロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、ヘテロアリールカルボニル基の置換基が、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO
2;−OH;非置換、または−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
1−C
60アルキル基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
5−C
60シクロアルキル基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
2−C
60ヘテロシクロアルキル基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
5−C
60アリール基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
2−C
60ヘテロアリール基;からなる群から選択された一つ以上である。
【0040】
例えば、前記フタロシアニン系錯体は、Fe−フタロシアニン、Cu−フタロシアニン、Co−フタロシアニン、Sn−フタロシアニン、Pb−フタロシアニン、Pd−フタロシアニン、Ag−フタロシアニン、Ni−フタロシアニン、Pt−フタロシアニン、Au−フタロシアニンなどでありうる。
【0041】
例えば、前記ポルフィリン系錯体は、Fe−ポルフィリン、Cu−ポルフィリン、Co−ポルフィリン、Sn−ポルフィリン、Pb−ポルフィリン、Pd−ポルフィリン、Ag−ポルフィリン、Ni−ポルフィリン、Pt−ポルフィリン、Au−ポルフィリンなどでありうる。
【0042】
例えば、前記アミン系錯体は、Fe(EDTA)、Co(EDTA)、Cu(EDTA)、トリス(エチレンジアミン)Co(
+3)Cl
3などでありうる。
【0043】
例えば、前記ホスフィン系錯体は、NiCl
2(トリフェニルホスフィン)
2、PdCl
2(トリフェニルホスフィン)2、[(トリフェニルホスフィン)CuH]
6、[PdCl
2(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)]などでありうる。
【0044】
例えば、前記ピリジン系錯体は、[Co(ビピリジン)
3][BF
4]
2、Pd(ビピリジン)Cl
2、Pd(ビピリジン)(BF
4)
2、Ru(ビピリジン)
2Cl
2、Fe(ビピリジン)
3(BF
4)
2、Fe(ビピリジン)
3Cl
2、Fe(ビピリジン)
3(PF
6)
2などでありうる。
【0045】
例えば、前記フェナントロリン系錯体は、Cu(フェナントロリン)
2(BF
4)
2、Cu(フェナントロリン)
2(Cl)
2、Pd(フェナントロリン)
2(BF
4)
2、Pd(フェナントロリン)
2(Cl)
2、Ru(フェナントロリン)
3(BF
4)
2、Fe(フェナントロリン)]
2(BF
4)
2、Mn(フェナントロリン)
2(BF
4)
2、Co(フェナントロリン)
2(BF
4)
2、Pt(フェナントロリン)
2(BF
4)
2、Ag(フェナントロリン)(BF
4)などでありうる。
【0046】
例えば、前記アセチルアセトネート系錯体は、V(アセチルアセトネート)
3、Cu(アセチルアセトネート)
2、Cr(アセチルアセトネート)
3、Mn(アセチルアセトネート)
3、[Ni(アセチルアセトネート)
2]
3、Fe(アセチルアセトネート)
2、Co(アセチルアセトネート)
2、Pb(アセチルアセトネート)
2、Pd(アセチルアセトネート)
2、Pt(アセチルアセトネート)
2、Ag(アセチルアセトネート)、Rh(アセチルアセトネート)
3、Ru(アセチルアセトネート)
3、Sc(アセチルアセトネート)
3などでありうる。
【0047】
例えば、前記アセテート系錯体は、[Mo
2(O
2CCH
3)
4]、Co(アセテート)
2、Co(アセテート)
3、Cu(アセテート)、Cu(アセテート)
2、In(アセテート)
3、Fe(アセテート)
3、Fe(アセテート)
2、Pb(アセテート)
2、Mn(アセテート)
2、Ni(アセテート)
3、Pd(アセテート)
2、Sc(アセテート)
3、Sn(アセテート)
4などでありうる。
【0048】
前記「誘導体」という用語は、前記に羅列された芳香族環化合物、ヘテロ芳香族環化合物などに一つ以上の置換基が連結したものを意味し、前記置換基は、−F;−Cl;−Br;−CN;−NO2;−OH;非置換、または−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
1−C
60アルキル基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
5−C
60シクロアルキル基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
2−C
60ヘテロシクロアルキル基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
5−C
60アリール基;非置換、またはC
1−C
60アルキル基,−F,−Cl,−Br,−CN,−NO
2または−OHで置換されたC
2−C
60ヘテロアリール基;からなる群から選択された一つ以上である。
【0049】
前記アリール基は、芳香族環システムを有する一価基であり、2以上の環システムを含み、前記2以上の環システムは、互いに結合または融合された形態で存在しうる。前記ヘテロアリール基は、前記アリール基のうち一つ以上の炭素が、N、O、S及びPからなる群から選択された一つ以上で置換された基を指す。一方、シクロアルキル基は、環システムを有するアルキル基を指し、前記ヘテロシクロアルキル基は、前記シクロアルキル基のうち一つ以上の炭素が、N、O、S及びPからなる群から選択された一つ以上で置換された基を指す。前記融合された芳香族環または融合されたヘテロ芳香族環は、前記基本環と融合された形態で存在して、2以上の環システムを含み、前記2以上の環システムは、互いに結合または融合された形態で存在しうる。そして、前記ヘテロ芳香族環は、前記芳香族環のうち一つ以上の炭素が、N、O、S及びPからなる群から選択された一つ以上で置換された環を指す。
【0050】
前記有機系電解質で、金属−リガンド錯体の含有量は、0.01mMないし5Mである。例えば、前記含有量は、0.1mMないし0.5Mでありうる。しかし、前記含有量は、必ずしもこのような範囲に限定されるものではなく、有機系電解質が充放電過程で、効果的に電子を伝達することができる範囲であるならば、いずれも可能である。
【0051】
前記リチウム空気電池で、前記有機系電解質は、非プロトン性溶媒を含む。非プロトン性溶媒として、例えば、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系またはアルコール系溶媒を使用することができる。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使われ、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ−ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使われる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使われ、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使われる。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使われるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で使われる非プロトン性溶媒であるならば、いずれも可能である。
【0052】
また、非プロトン性溶媒としては、R−CN(Rは、C
2−C
20直鎖状、分枝状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができるもの)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類なども使われる。
【0053】
前記非プロトン性溶媒は、単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比は、電池の性能によって適切に調節することができ、これは、当業者に自明である。
【0054】
また、前記有機系電解質は、イオン性液体を含む。イオン性液体としては、直鎖状,分枝状に置換された、アンモニウム、イミダゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウムの陽イオン;PF
6−、BF
4−、CF
3SO
3−、(CF
3SO
2)
2N
−、(C2F
5SO
2)
2N
−、(C
2F
5SO
2)
2N
−、(CN)
2N
−などの陰イオン;から構成された化合物を使用することができる。
【0055】
前記有機系電解質は、アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の塩を含む。前記アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の塩は、有機溶媒に溶解され、電池内で、アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属イオンの供給源として作用し、例えば、正極と負極との間のアルカリ金属イオン及び/またはアルカリ土類金属イオンの移動を促進する役割を果たす。
【0056】
例えば、前記アルカリ金属塩及び/またはアルカリ土類金属塩の陽イオンは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオン、ストロンチウムイオン、セシウムイオン、バリウムイオンなどでありうる。
【0057】
前記有機系電解質に含まれた前記塩の陰イオンは、PF
6−、BF
4−、SbF
6−、AsF
6−、C
4F
9SO
3−、ClO
4−、AlO
2−、AlCl
4−、C
xF
2x+1SO
3−(ここで、xは、自然数である)、(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)N
−(ここで、x及びyは、自然数である)、及びハライドからなる群から選択された一つ以上である。
【0058】
例えば、前記アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の塩は、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAsF
6、LiN(SO
2C
2F
5)
2、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、LiClO
4、LiAlO
2、LiAlCl
4、LiN(C
xF
2x+1SO
2)(C
yF
2y+1SO
2)(ここで、x及びyは、自然数である)、LiF、LiBr、LiCl、LiI及びLiB(C
2O
4)
2(リチウムビスオキサレートボラート(LiBOB))からなる群から選択される一つまたは二以上であるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野でアルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の塩として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0059】
前記有機系電解質で、アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の塩の含有量は100mMないし10Mでありうる。例えば、前記含有量は、500mMないし2Mでありうる。しかし、前記含有量が必ずしもこのような範囲に限定されるものではなく、有機系電解質が、充放電過程で、効果的に電子を伝達することができる範囲であるならば、いずれも可能である。
【0060】
前記リチウム空気電池で、前記リチウムを含む負極としては、Li金属、Li金属ベースの合金、またはLiを吸蔵放出することができる物質が可能であるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で、負極として使われるものであり、リチウムを含み、又はリチウムを吸蔵放出することができるものであるならば、いずれも可能である。前記負極がリチウム空気電池の容量を決定するので、前記負極は、例えば、リチウム金属でありうる。前記リチウム金属ベースの合金としては、例えば、アルミニウム、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、チタン、バナジウムなどと、リチウムとの合金を挙げることができる。
【0061】
一方、酸素を正極活物質として使用する正極としては、導電性材料が使われる。前記導電性材料はまた、多孔性でありうる。従って、正極として、前記多孔性及び導電性を有するものであるならば、制限なしに使用することができ、例えば、多孔性を有する炭素系材料を使用することができる。このような炭素系材料としては、カーボンブラック類、グラファイト類、グラフェン類、活性炭類、炭素ファイバ類などを使用することができる。また、金属ファイバ、金属メッシュなどの金属性導電性材料を使用することができる。また、銅、銀、ニッケル、アルミニウムなどの金属性粉末を含むことができる。ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料を使用することができる。前記導電性材料は、単独でまたは混合して使われる。
【0062】
前記正極には、酸素の酸化/還元のための触媒が添加され、このような触媒としては、白金、金、銀、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウムのような貴金属系触媒、マンガン酸化物、鉄酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物のような酸化物系触媒、またはコバルトフタロシアニンのような有機金属系触媒を使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で酸素の酸化/還元触媒として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0063】
また、前記触媒は、担体に担持されうる。前記担体は、酸化物、ゼオライト、粘土系鉱物、カーボンなどでありうる。前記酸化物は、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、二酸化チタンなどの酸化物を一つ以上含む。また、Ce、Pr、Sm、Eu、Tb、Tm、Yb、Sb、Bi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Nb、Mo及びWから選択される一つ以上の金属を含む酸化物でありうる。前記カーボンは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラックなどのカーボンブラック類;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛類;活性炭類;炭素ファイバ類;などであるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で担体として使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0064】
前記正極は、バインダをさらに含むことができる。前記バインダは、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含む。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレン−ブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合剤などを単独でまたは混合して使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野でバインダとして使われるものであるならば、いずれも可能である。
【0065】
前記正極は、例えば、前記酸素酸化/還元触媒、導電性材料及びバインダを混合した後、適当な溶媒を添加して正極スラリを製造した後、集電体の表面に塗布して乾燥させ、又は選択的に電極密度の向上のために、集電体に圧縮成形して製造することができる。また、前記正極は、選択的にリチウム酸化物を含むことができる。また選択的に、前記酸素酸化/還元触媒は、省略されうる。
【0066】
集電体としては、酸素の拡散を迅速にするために、網状またはメッシュ状の多孔体を利用し、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウムなどの多孔性金属板を使用することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当技術分野で集電体として使われるものであるならば、いずれも可能である。前記集電体は、酸化を防止するために、耐酸化性の金属または合金被膜で被覆されうる。
【0067】
また、前記正極と負極との間には、セパレータを配することも可能である。このようなセパレータとしては、リチウム空気電池の使用範囲に耐えることができる組成であるならば、限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン素材の不織布、ポリフェニレンスルフィド素材の不織布などの高分子不織布、又はポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の多孔性フィルムを例示することができ、それらを2種以上併用することも可能である。
【0068】
また、前記負極と有機系電解質との間に、リチウムイオン伝導性固体電解質膜がさらに配される。前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、水系電解質内に含まれた水及び酸素などの不純物を、負極に含まれたリチウムと直接的に反応させないように保護する保護膜の役割を行うことができる。このようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜としては、リチウムイオン伝導性ガラス、リチウムイオン伝導性結晶(セラミックまたはガラス−セラミック)、またはそれらの混合物を含有する無機物質を例示することができるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、リチウムイオン伝導性を有して負極を保護することができる固体電解質膜として、当技術分野で使われるものであるならば、いずれも可能である。一方、化学的安定性を考慮するとき、前記リチウムイオン伝導性固体電解質膜は、酸化物を例として挙げることができる。
【0069】
例えば、前記リチウムイオン伝導性結晶としては、Li
1+x+y(Al,Ga)
x(Ti,Ge)
2−xSi
yP
3−yO
12(ただし、O≦x≦1、O≦y≦1であり、例えば、0≦x≦0.4、0<y≦0.6であり、または0.1≦x≦0.3、0.1<y≦0.4である)を挙げることができる。前記リチウムイオン伝導性ガラス−セラミックとしては、リチウム−アルミニウム−ゲルマニウム−リン酸塩(LAGP)、リチウム−アルミニウム−チタン−リン酸塩(LATP)、リチウム−アルミニウム−チタン−シリコン−リン酸塩(LATSP)などを例に挙げることができる。
【0070】
前記のようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス−セラミック成分以外に、高分子固体電解質成分をさらに含む。このような高分子固体電解質は、リチウム塩がドーピングされた酸化ポリエチレンであり、前記リチウム塩としては、LiN(SO
2CF
2CF
3)
2、LiBF
4、LiPF
6、LiSbF
6、LiAsF
6、LiClO
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiC(SO
2CF
3)
3、LiN(SO
3CF
3)
2、LiC
4F
9SO
3、LiAlCl
4などを例示することができる。
【0071】
前記のようなリチウムイオン伝導性固体電解質膜は、ガラス−セラミック成分以外に、無機固体電解質成分をさらに含む。このような無機固体電解質は、Cu
3N、Li
3N、LiPONなどを含む。
【0072】
放電容量、充電容量、平均充電電圧、及び平均放電電圧から、下記数式1を使用して計算される前記リチウム空気電池のエネルギー効率は、25℃、1atm、0.05mA/cm
2の定電流で、2ないし4.5Vで1サイクル放電及び充電させた後に測定され、その値は65%以上、例えば、70%以上、例えば、75%以上、例えば、80%以上、例えば、85%以上、例えば、90%以上、例えば、95%以上でありうる。
【0073】
[数式1]
エネルギー効率[%]=[平均放電電圧×放電容量]/[平均充電電圧×充電容量]×100
【0074】
前記平均充電電圧及び平均放電電圧は、50ないし300mAh/g容量範囲での電圧の平均値である。
【0075】
前記リチウム空気電池は、貴金属、金属酸化物のような酸素酸化還元触媒を含まなくとも、前記充放電エネルギー効率が65%以上でありうる。従って、前記リチウム空気電池は、酸素酸化還元触媒を使用しなくてもよく、又は酸素酸化還元触媒の使用量を大きく低減できる。また、酸素酸化還元触媒を追加し、充放電エネルギー効率をさらに向上させることが可能である。すなわち、前記リチウム空気電池は、有機電解液が充放電過程で、電子移動に関与することによって、充放電エネルギー効率を大きく向上できる。
【0076】
前記有機系電解液で、金属−リガンド錯体の含量が約500mMないし約2Mである。
【0077】
前記触媒はオキサイド、ゼオライト、クレイミネラル及びカーボンで成り立った群で選択される。
【0078】
前記負極及び前記正極がバインダを追加的に含む。
【0079】
一実施形態によるリチウム空気電池は、リチウムを含む負極と、酸素を正極活物質として使用する正極と、有機系電解質と、を含み、前記有機系電解質が、金属−リガンド錯体を含んで、金属−リガンド錯体のリガンドが脂肪族鎖、脂肪族環、ヘテロ脂肪族鎖、ヘテロ脂肪族環、芳香族環及びヘテロ芳香族環からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0080】
前記リチウム空気電池は、例えば、次の通り製造されうる。
【0081】
まず、酸素酸化/還元触媒、導電性材料及びバインダを混合した後、適当な溶媒を添加して正極スラリを製造した後、集電体の表面に塗布して乾燥させるか、選択的に電極密度の向上のために、集電体に圧縮成形して正極を準備する。前記酸素酸化還元触媒は、選択的に省略されうる。
【0082】
次に、ケース内の一側面に負極を設け、前記負極に対向する側にセパレータが設けられた正極を負極に対向するように設ける。次に、前記正極と負極との間に電解液を注入し、正極上に多孔性集電体を配し、その上に空気が正極に伝達されうる圧迫部材を押し付けて固定させ、リチウム空気電池が完成される。前記負極の一表面では、リチウムイオン伝導性固体電解質膜がさらに配される。
【0083】
前記ケースは、負極が接触する上部と、正極が接触する下部とに分離され、前記上部と下部との間に絶縁樹脂が介在され、正極と負極とを電気的に絶縁させる。
【0084】
前記リチウム空気電池は、リチウム一次電池、リチウム二次電池にいずれも使用可能である。またその形状は、特別に限定されるものではなく、例えば、コインタイプ、ボタンタイプ、シートタイプ、積層タイプ、円筒形、扁平形、円錐形などを例示することができる。また、電気自動車などに利用する大型電池にも適用することができる。
【0085】
前記リチウム空気電池の一実施形態を、
図1に模式的に図示する。該リチウム空気電池10は、第1集電体14に形成される酸素を活物質とする正極15と、第2集電体12に隣接するリチウムを含む負極13との間に、有機系電解質18が介在されており、前記正極15の一表面には、セパレータ16が形成されている。前記負極13の一表面には、リチウムイオン伝導性固体電解質膜(図示せず)が配されうる。前記第1集電体14は、多孔性であって、空気の拡散が可能であるガス拡散層(gas diffusion layer)の役割も行うことができる。図面には図示されていないが、前記第1集電体14上に空気を正極に伝達させる圧縮部材が追加されうる。
【0086】
本明細書で使われる用語である「空気(air)」は、大気空気に制限されるものではなく、酸素を含む気体の組み合わせ、または純粋酸素ガスを含む。このような用語「空気」に係わる広い定義があらゆる用途、例えば、空気電池、空気正極などに適用されうる。
【0087】
以下の実施例及び比較例を介して、本発明についてさらに詳細に説明する。ただし、実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけで本発明の範囲が限定されるものではない。
(有機系電解質の製造)
【0088】
[製造例1]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミン(LiTFSI))及び5mMのフェロセン(Fe(C
5H
5)
2)がプロピレンカーボネート(PC)溶媒に溶解された有機系電解質を製造した。
【0089】
[製造例2]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)及び5mMの[Co(
+2)(bpy)
3][BF
4−]
2がプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。前記bpyは、2,2’−ビピリジン・リガンドである。
【0090】
[製造例3]
1MのLi(CF
3SO2)
2N(LiTFSI)及び5mMのV(acac)
3がプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。前記acacは、アセチルアセトネート・リガンドである。
【0091】
[製造例4]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)及び5mMのCo−フタロシアニンがプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。
【0092】
[製造例5]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)及び5mMの[Co(エチレンジアミン)
3]Cl
3がプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。
【0093】
[製造例6]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)及び5mMのRhCl(PPh3)
3がプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。前記PPh3は、トリフェニルホスフィン・リガンドである。
【0094】
[製造例7]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)及び5mMのPd−ポルフィリンがプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。
【0095】
[製造例8]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)及び5mMのPd(フェナントロリン)
2(BF
4)
2がプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。
【0096】
[製造例9]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)及び5mMのFe(アセテート)
2がプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。
【0097】
[比較製造例1]
1MのLi(CF
3SO
2)
2N(LiTFSI)だけプロピレンカーボネート(PC)に溶解された有機系電解質を製造した。
(リチウム空気電池の製造)
【0098】
[実施例1]
カーボン(Super−P)40重量部、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)10重量部、及びN−メチルピロリドン(NMP)50重量部を混合して正極スラリを製造した後、前記スラリをコーティング及び圧延し、正極合材シートを得た。前記正極合材シートをステンレス・メッシュ上に圧着させた後、100℃オーブンで120分間真空乾燥させ、正極を得た。負極として、リチウム金属薄膜が、LiTFSI塩を含有した150μm厚の高分子電解質及び150μm厚のOhara社のリチウムイオン伝導性ガラスで保護された電極を使用した。前記正極上に配されるセパレータとして、ポリプロピレン素材のCelgard社のCelgard−3501を使用した。
【0099】
ステンレスケースに、前記リチウムイオン伝導性ガラスで保護されたリチウム負極を設け、前記負極に対向する側に、前記セパレータが設けられた正極を、負極に対向するようにセットした。次に、前記正極と負極との間に、製造例1の電解液を注入し、正極上に発泡ニッケル板を配し、その上に空気を正極に伝達させる圧縮部材で押し付けてセルを固定させ、リチウム空気電池を製造した。
【0100】
前記ケースは、負極が接触する上部と、正極が接触する下部とに分離され、前記上部と下部との間に絶縁樹脂が介在され、正極と負極とは電気的に絶縁されている。
【0101】
[実施例2]
製造例2の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0102】
[実施例3]
製造例3の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0103】
[実施例4]
製造例4の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0104】
[実施例5]
製造例5の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0105】
[実施例6]
製造例6の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0106】
[実施例7]
製造例7の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0107】
[実施例8]
製造例8の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0108】
[実施例9]
製造例9の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0109】
[比較例1]
比較製造例1の有機系電解質を使用したことを除いては、実施例1と同一にリチウム空気電池を製造した。
【0110】
[評価例1:充放電特性評価]
25℃、1atmで、実施例1ないし3及び比較例1で製造されたリチウム空気電池を、0.05mA/cm
2の定電流で2V(vs.Li)まで放電させた後、同じ電流で4.5Vまで充電させた。充放電試験結果を、下記表1及び
図2に示した。充放電時のエネルギー効率は、下記数式1で定義される。
【0111】
[数式1]
エネルギー効率[%]=[平均放電電圧×放電容量]/[平均充電電圧×充電容量]×100
【0112】
前記平均充電電圧及び平均放電電圧は、50ないし300mAh/g容量範囲での電圧の平均値である。
【0113】
充放電分極は、充電開始後または放電開始後、3,000秒地点での充電電圧と放電電圧との電圧差で定義される。
【0115】
前記表1から分かるように、実施例1ないし3のリチウム空気電池では、比較例1に比べ、顕著に向上したエネルギー効率及び充放電過電圧の低下が得られた。