(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の画像処理手段は、前記第2の画像処理手段において入力される画像に施されるコントラスト処理またはシャープネス処理よりも強いコントラスト処理またはシャープネス処理を、入力される画像に施すことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の実施形態にかかわる、画像処理装置の一例であるデジタルカメラの構成を示した図である。以下、
図1と
図2を参照して、本発明の第1の実施形態による、露光量の異なる2枚の画像の位置ずれを補正しながら、その2枚の画像を合成し1枚のハイダイナミックレンジ合成画像を取得する方法について説明する。
【0012】
図1は本実施形態における撮像装置の一例であるデジタルカメラ100の構成を示し、制御部1170が、
図2の処理ステップに従って、以下の各モジュール間のデータのやり取りや、各モジュールでの演算処理を制御している(不図示)。また、場合によっては、ユーザ指示などの外部操作がインターフェースI/F1180からカメラへと入力され、制御部1170を介して、デジタルカメラを制御する。
【0013】
ステップS1では、制御部1170の指示に従い、撮像部1000は、被写体像を光電変換する撮像素子からアナログ電圧として出力する信号を、以降の画像処理に適するデジタルデータへと変換し、メモリ1010とメモリ1020へ格納する処理まで行う。本実施形態では、撮像素子として、650nm(R)、550nm(G)、450nm(B)近傍に透過主波長帯を持つ3種類の色フィルタを備える一般的な原色カラーフィルタを備えるCMOSセンサを用いることとするが撮像素子の形態としてはこれに限らない。本実施形態では、露光時間が異なる2回の撮像を行い、露光時間が基準となる露光時間よりも長い撮像結果(オーバー画像)をメモリ1010に格納し、露光時間が基準となる露光時間よりも短い撮像結果(アンダー画像)をメモリ1020に格納する。
【0014】
ステップS2では、制御部1170の指示に従い、画像処理部A1030は、オーバー画像に位置ずれ検出に適したゲイン補正処理を含む画像処理を行った位置ずれ検出画像を、メモリ1040へ格納する処理まで行う。ステップS3では、制御部1170の指示に従い、画像処理部A1050は、アンダー画像に位置ずれ検出に適したゲイン補正処理を含む画像処理を行った位置基準用画像を、メモリ1060へ格納する処理まで行う。次のステップS4の処理を行う前に、ステップS2とステップS3の処理が終わっていればよいため、ステップS2とステップS3の処理は同時に行ってもよく、どちらのステップを先に行ってもよく、本発明はいずれかに限定するものではない。
【0015】
ステップS4では、制御部1170の指示に従い、位置ずれ検出部1070は、画像処理を施した2枚の位置ずれ検出画像と位置基準用画像の位置ずれ情報を取得し、メモリ1080へ格納する処理まで行う。以下に、
図3を参照して、位置ずれ検出部1070における位置ずれ検出方法について述べる。
【0016】
まず、画像を複数個のブロック領域に分割して、それぞれのブロック毎にエッジ検出処理を行う(S41)。エッジ検出方法として、入力画像にローパスフィルタをかけることで大ボケ画像を作成し、入力画像から大ボケ画像を減算することでエッジを検出する。もしくは、公知の微分フィルタやプリューウィットフィルタなどを用いる方法が考えられる。エッジ検出では、センサ起因のノイズではなく、被写体像のエッジのみを検出した方が位置ずれ検出精度の向上を図ることができる。
【0017】
次に、画像のブロック領域の中でエッジ検出ができたブロック領域に対してずれ量検出を行う(S42)。エッジ検出ができたブロック領域に対してのみずれ量検出をすることで、位置ずれ検出精度の向上を図ることができる。本実施形態では、ずれ量検出として以下の方法を用いる。ブロック領域内の全画素の位置基準用画像の画素値と位置ずれ検出画像の画素値の差分絶対値和(SAD:Sum of Absolute Difference)を算出する。そして、その総和(SAD)が最も小さくなる移動量と移動方向をそのブロックの動きベクトルとする。
【0018】
図4にずれ量検出方法の例を示す。
図4(a)は、位置基準画像の対象ブロック領域の画素値を示している。一方、
図4(b)は、位置ずれ検出画像の画素値を示している。
図4の場合、画素値の差の絶対値が最も小さくなる移動量は、(x,y)=(1,2)と求まる。同様の処理を画像の全ブロック領域に対して行い、全てのブロック領域の動きベクトルを求める。さらに、これらの処理を各信号(本実施形態では、YUV信号それぞれ)について行い、平均を取るなどして動きベクトルを算出する。ずれ量検出では、位置基準用画像と位置ずれ検出画像の同じ被写体領域が同じ明るさ、同じ色味である方が位置ずれ検出精度の向上を図ることができる。
【0019】
最後に、アフィン係数を算出する(S43)。アフィン係数とは、線形変換と平行移動を組み合わせたアフィン変換に用いる行列であり、以下の式1で表せる。
【0021】
この時、補正前画像の座標を(x,y)、補正後画像の座標を(x’,y’)とし、3×3行列をアフィン係数と呼ぶ。各ブロック領域から求めた動きベクトルを用いて、アフィン係数を求める。
【0022】
以上が、位置ずれ検出部1070における位置ずれ検出方法である。ただし、位置ずれ検出方法としては、周波数解析から2枚の画像のずれ量を検出するなど、他にもさまざまな方法が公知であるが、位置ずれ検出精度や検出処理負荷、検出処理スピードなど、デジタルカメラに適した方法であれば、いずれかに限定するものではない。
【0023】
ステップS5Aでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部B1090は、オーバー画像に対して合成に適したガンマ変換処理を含む画像処理を行った位置ずれ補正用画像を、メモリ1100へ格納する。位置ずれ補正部1110は、位置ずれ補正用画像を位置ずれ検出部1070から取得した位置ずれ検出情報(アフィン係数)に基づいて補正(アフィン変換)し、オーバー合成用画像を取得する処理まで行う。ステップS6Aでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部B1120は、アンダー画像に対して合成に適したガンマ変換処理を含む画像処理を行ったアンダー合成基準用画像を、メモリ1130へ格納する処理まで行う。次のステップS7の処理を行う前に、ステップS5AとステップS6Aの処理が終わっていればよいため、ステップS5AとステップS6Aの処理は同時に行ってもよく、どちらのステップを先に行ってもよく、本発明はいずれかに限定するものではない。
【0024】
ここで、画像処理部A1030と画像処理部A1050、画像処理部B1090と画像処理部B1120の詳細に関して以下に述べる。まず、画像処理方法に関して、通常の1枚の画像を扱う場合の一般的な方法について
図5を参照して述べる。メモリに格納された撮像結果を入力画像501とし、画像が所望の明るさとなるように画素ごとにゲインを乗算するゲイン補正処理502を行う。具体的には、光学収差に起因する周辺光量落ちを補正する周辺光量補正などを行う。次に、画像の白くあるべき領域のR,G,Bが等色になるようなゲインを画像全体のR,G,B各々に乗算するホワイトバランス補正処理503を行う。次に、ノイズリダクション(ノイズ低減:NR)処理504を行い、被写体像に由来しないセンサ起因のノイズなどを低減する。次に、各画素に対してその周辺画素から足りない色情報を集め与えることで色情報を補間するデモザイク処理505を行い、フルカラー画像を作り出す。さらに、生成されたカラー画像に対して、各色信号成分を他の出力に適した色信号成分に置き換えるためのマトリックス変換処理506、およびノンリニアなゲイン(ガンマ)テーブルによるガンマ変換処理507を行い、基本的なカラー画像を生成する。最後に、色調整処理508として彩度強調、色相補正、シャープネス強調などの画像の見栄えを改善するための処理がカラー画像に対し行われ、出力画像509が生成される。
【0025】
本実施形態では、画像処理部A1030と画像処理部A1050、画像処理部B1090、画像処理部B1120は、どのブロックも上述した画像処理を行う。しかし、制御部1170の指示により、それぞれの意図する出力画像、すなわち画像処理部A1030、A1050は位置ずれ検出用、画像処理部B1090、B1120は合成用といった用途に適した各画像処理のパラメータが設定される。そのため、本実施形態では別々のブロックとして図示している。従って、構成としては、ハードとして画像処理部を1つ構成し、上述したこれらの処理を逐次行うようにしてもよい。
【0026】
本実施形態では、これら一連の画像処理を、位置ずれ検出用画像と合成用画像それぞれに適した各画像処理のパラメータを設定して行うことに特徴がある。具体的には、まず第一に、位置ずれ検出用画像を出力する画像処理部A1030、A1050では、ホワイトバランス処理において露光時間の異なる画像間の明るさを合わせる第1のゲインを併せて掛ける処理(第1の画像処理)を行う。次に、合成用画像を出力する画像処理部B1090、B1120では、ガンマ変換処理において露光時間の異なる画像間の明るさを合わせる第2のゲインを掛ける処理(第2の画像処理)を行う。さらに、前述した第1のゲイン、第2のゲインが一連の画像処理において異なるステップで掛かることに起因して、ノイズ低減処理を位置ずれ検出用画像に対する画像処理と合成用画像に対する画像処理とで異ならせる。ただし、ホワイトバランス補正係数は、位置ずれ検出においても、合成においても、同じ色味である方が良いため、画像処理部A1030とA1050、画像処理部B1090とB1120それぞれで同一のホワイトバランス補正係数を用いることとする。
【0027】
ここで、位置ずれ検出用画像に掛ける第1のゲインとノイズ低減処理について詳しく説明する。先にも述べたように、位置ずれ検出精度を向上させるためには、露光時間の異なる画像であっても位置ずれ検出に用いる2枚の画像は同じ明るさであることが望ましい。そこで、撮像結果の全ての画素に画像間の露光量比に基づいた同じゲインを乗算することで、露光時間の異なる画像の明るさを揃える(露光量を揃える)ことが重要である。例えば、長い露光時間が短い露光時間の4倍だった場合、短い露光時間の画像には4倍のゲインを乗算することで明るさを揃えることができる。また、本実施形における位置ずれ検出は、エッジ検出部分を特徴点として位置ずれを検出する方法を用いている。この時、位置ずれ検出精度を向上させるためには、エッジ検出の精度を向上させることが重要である。そこで、画像に対して平滑化処理(NR処理)を行い、被写体像に由来しないノイズをエッジと誤検出しないようにすることが重要である。この時、本実施形態のようにNR処理の前にゲイン補正を行った場合、NR処理方法は、通常の1枚の画像を扱う場合とは異なる考え方が必要となる。画像処理におけるNR処理とは、単純な平滑化処理ではなく、本実施形態で用いられるイプシロンフィルタや、その他にもバイラテラルフィルタのようにエッジを保ちながらノイズのみを低減する処理が求められる。この場合に重要となる要素は、被写体のエッジ成分の信号値の振幅とノイズ成分の信号値の振幅の大小関係である。一般的にはエッジ成分の信号値の振幅の方がノイズ成分の信号値の振幅よりも大きいという期待がある。イプシロンフィルタやバイラテラルフィルタでは、画像の中のある閾値よりも小さな信号値の振幅をノイズと判断して平滑化処理を行い、ある閾値よりも大きな信号値の振幅はエッジとして保持する。通常の1枚の画像を扱う場合では、ISO感度が高くなる(入力信号の増幅率が高くなる)に従ってノイズ成分の信号値の振幅として評価する閾値を大きくすることで、ノイズを被写体のエッジとして誤検出しないような仕組みがある。この考えと同様に、位置ずれ検出画像へのNR処理は、ゲイン補正処理におけるゲイン量に応じて、ノイズ成分の信号値の振幅を評価する閾値を、ISO感度を変えた場合と同様に変える必要がある。つまり、例えば信号を大きくする方にゲイン補正を行った場合、信号とノイズの比率は同じであるが、信号とノイズの差の絶対値(ノイズ成分の信号値の振幅)は拡大してしまうという現象が起きてしまう(
図6(a))。従って、ゲイン補正処理におけるゲイン量に応じて、ノイズ成分の信号値の振幅を評価する閾値を変えることで、ノイズを正しく判断して低減し、被写体に由来するエッジのみを保つことができる。以上のように、位置ずれ検出用画像が入力される画像処理部A1030、A1050では、画像間の明るさを合わせる第1のゲインをホワイトバランスのゲインと併せて掛ける。その後、後段のNR処理(第1のノイズ低減処理)のパラメータを第1のゲインに応じて設定する。なお、本実施形態では、第1のゲインを、同じく画像全体に一様に掛けるホワイトバランスのゲインと併せて掛けたが、これに限らず、前段の画素毎に設定されるゲインのゲイン補正処理に、各ゲインを嵩上げするような形で第1のゲインを併せて掛けても良い。
【0028】
次に、合成用画像に掛ける第2のゲインとノイズ低減処理(第2のノイズ低減処理)について詳しく説明する。合成用画像に第1のゲインのように全ての画素に同じゲインを乗算すると、高輝度部が白とびしてしまったり、低輝度部が黒つぶれしてしまったりと、白とび・黒つぶれを軽減するハイダイナミックレンジ合成画像の効果が失われてしまうことがある。そこで、画像処理部B1090と画像処理部B1120は、露光時間の異なるそれぞれの画像の明るさをノンリニアなガンマテーブル(ガンマ特性)によるガンマ処理において調整する。例えば、
図6(b)のように長い露光時間が短い露光時間の4倍だった場合、長い露光時間の画像は1/4倍に近いが、黒つぶれをしない程度のガンマテーブルを用いる。一方、短い露光時間の画像のガンマテーブルとしては、明るさの暗い領域と中間領域では、長い露光時間より短い露光時間の画像には4倍のゲインを、明るい領域では明るくなるに従って徐々に4倍より小さいゲインを乗算するようなガンマテーブルを用いる。このようなガンマテーブルを用いることで、アンダー画像の高輝度部の白とびは軽減され、ハイダイナミックレンジ画像の効果が得られる。ここで、
図6(b)は横軸に画像処理部B1090、B1120に入力される入力値(14bit)、縦軸に出力値(8bit)をとる場合のガンマ特性曲線を示している。
【0029】
また、前述の位置ずれ検出用の画像のようにNR処理の前に画像の明るさを合わせる処理をしているわけではないので、NR処理は通常の1枚の画像を扱う場合と同じでもよい。すなわち、例えば短い露光時間の画像が長い露光時間の画像に明るさを合わせる場合、位置ずれ検出用のNR処理が、位置ずれ検出用画像に掛ける第1のゲインの大きさに合わせて、合成用画像に施すNR処理に比べて強くかかる。ただし、明るさ(露光量差に応じた第2のゲインの値の大きさ)によっては、通常の1枚の画像よりは大きなゲインを乗算するため、明るさに応じて合成用画像に施すNRの効果を変えたりしてもよい。また、ユーザが通常の1枚の画像を扱う場合よりNR効果を強めたり弱めたりしたいと希望する場合、ユーザ指示によりインターフェースI/F1180からカメラへとNR効果に関する情報が入力され、それに従ってもよい。
【0030】
また、合成画像の効果を変えるために、合成用画像の処理としても領域ごとのゲイン補正とガンマテーブルでの調整を併用することがあるが、この場合のNR処理は位置ずれ検出用画像に用いた考え方を取り入れるとよい。また、色調整処理に関しても、それぞれの画像の見栄えを改善するような別処理を行ってもよく、ユーザ指示によりインターフェースI/F1180からカメラへと情報が入力され、それに従ってもよい。
【0031】
以上が、画像処理部A1030と画像処理部A1050、画像処理部B1090と画像処理部B1120で行われる処理についての詳細である。
【0032】
ステップS7では、制御部1170の指示に従い、オーバー合成用画像とアンダー合成基準用画像を画像合成部1140で合成し、ハイダイナミックレンジ画像を取得する処理まで行う。ハイダイナミックレンジ合成画像を取得するためには、アンダー合成基準用画像の合成基準輝度閾値より暗い領域はオーバー合成用画像で置き換える(合成基準用画像の合成比率=0%)。また、合成基準輝度閾値より明るい領域はアンダー合成基準用画像をそのまま(合成基準用画像の合成比率=100%)に合成する。または、合成基準輝度閾値付近の明るさの中間領域は合成基準用画像の合成比率を徐々に変化させるなど、よりユーザにとって自然な見えとなる様に合成方法を工夫してもよく(
図7)、本実施形態は画像合成部1140での処理をいずれかに限定するものではない。
【0033】
ステップS8では、制御部1170の指示に従い、画像合成部1140から出力したハイダイナミックレンジ合成画像を、メモリ1150に格納する。その後、必要に応じてSDカードなどの外部メモリ1160に保存する。
【0034】
本実施例のおける、メモリ1010からメモリ1150までのメモリは別々のメモリでもよいが、それぞれの情報に必要な時にアクセスできるのであれば、同じメモリ内の別ブロックでもよい。
【0035】
また、本実施例では、位置基準画像をアンダー画像としたが、位置ずれの検出精度がオーバー画像を位置基準画像とした方が良い場合はオーバー画像でもよい。同様に、合成基準画像をアンダー画像としたが、ハイダイナミックレンジ合成結果の画質がオーバー画像を合成基準画像とした方が良い場合はオーバー画像でもよい。
【0036】
以上のように、本実施形態では、露光量の異なる複数枚の画像に対して、位置ずれ検出のための画像とHDR画像合成のための画像を別々に生成することで、位置ずれ検出精度を確保しつつ好適なハイダイナミックレンジ画像を生成することを可能とする。特に位置ずれ検出用画像に対しては画素に一様な第1のゲインを掛け、合成用画像に対しては画素の輝度に応じた第2のゲインを掛けて画像間の明るさを合わせる、というように各用途に適した処理を行うことで上述した効果を実現する。さらに、前記ゲインの掛け方の違いに起因して位置ずれ検出用画像に対するNR処理と合成用画像に対するNR処理とを異ならせることで、各用途に適した処理画像を得ることを可能とする。
【0037】
(第2の実施形態)
組み込み機器としての画像処理装置としては、使用するメモリ容量を削減した方が良いことがある。また、位置ずれ検出のための画像と画像合成のための画像を別々に生成する構成を応用することで、画像合成のための画像としては適さないが、位置ずれ検出の精度をより向上させる位置ずれ検出のための画像を生成することも可能である。そこで、本実施形態では、第1の実施形態に比べて位置ずれ検出用画像の処理を異ならせて、よりメモリ容量を削減でき、処理時間も短縮できるような処理を行うことを特徴とする。
【0038】
以下、
図8を参照して、本発明の第2の実施例による、露光量の異なる2枚の画像の位置ずれを補正しながら、その2枚の画像を合成し1枚のハイダイナミックレンジ合成画像を取得する方法について説明する。第1の実施形態で既に説明をしたステップに関しては同じステップ番号を付しており、説明を省略する。
【0039】
ステップS2Bでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部A1030は、オーバー画像に位置ずれ検出に適したゲイン補正処理を含む画像処理を行った位置ずれ検出画像を、メモリ1040へ格納する処理まで行う。ステップS3Bでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部A1050は、アンダー画像に位置ずれ検出に適したゲイン補正処理を含む画像処理を行った位置基準用画像を、メモリ1060へ格納する処理まで行う。次のステップS4の処理を行う前に、ステップS2BとステップS3Bの処理が終わっていればよいため、ステップS2BとステップS3Bの処理は同時に行ってもよく、どちらのステップを先に行ってもよく、本発明はいずれかに限定するものではない。
【0040】
以下に、本実施例に特有である、画像処理部A1030と画像処理部A1050について述べる。本実施例における画像処理部A1030と画像処理部A1050は、他の実施例における画像処理部A1030と画像処理部A1050と画像処理方法は同じであるが、制御部1170の指示により、異なる各画像処理のパラメータが設定される。位置ずれ検出方法では、位置基準用画像と位置ずれ検出画像の色空間の1次元情報のみでもよく、輝度情報のみでも位置ずれ検出できる。そこでメモリを削減するために、画像処理部A1030、A1050におけるマトリックス変換処理で、RGB信号をYUV信号に変換した後、Y信号のみを取り出して位置ずれ検出を行う。さらに、位置ずれ検出用画像に行うコントラスト処理やシャープネス処理を合成用画像に行う各処理に比べて強めに行うことで、エッジ検出精度が向上することが見込める。使用メモリ量を削減したり、位置ずれ検出精度を向上させたりすることができる。しかし、このような処理を行った画像を用いて合成してしまうと、ユーザが望んでいた画像とは違う画像を提供することになり、あくまでも位置ずれ検出画像として使用する。
【0041】
ステップS5Bでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部B1090は、オーバー画像に合成に適したガンマ変換処理を含む画像処理を行った位置ずれ補正用画像を、メモリ1100へ格納する。位置ずれ補正部1110は、位置ずれ補正用画像を位置ずれ検出部1070から取得した位置ずれ検出情報(アフィン係数)に基づいて補正(アフィン変換)し、オーバー合成用画像を取得する処理まで行う。ステップS6Bでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部B1120は、アンダー画像に合成に適したガンマ変換処理を含む画像処理を行ったアンダー合成基準用画像を、メモリ1130へ格納する処理まで行う。次のステップS7の処理を行う前に、ステップS5BとステップS6Bの処理が終わっていればよいため、ステップS5BとステップS6Bの処理は同時に行ってもよく、どちらのステップを先に行ってもよく、本発明はいずれかに限定するものではない。
【0042】
以上のように、本実施形態では、露光量の異なる複数枚の画像に対して、位置ずれ検出のための画像とHDR画像合成のための画像を別々に生成することで、位置ずれ検出精度を確保しつつ好適なハイダイナミックレンジ画像を生成することを可能とする。特に位置ずれ検出用画像に対しては画素に一様な第1のゲインを掛け、合成用画像に対しては画素の輝度に応じた第2のゲインを掛けて画像間の明るさを合わせる、というように各用途に適した処理を行うことで上述した効果を実現する。さらに、前記ゲインの掛け方の違いに起因して位置ずれ検出用画像に対するNR処理と合成用画像に対するNR処理とを異ならせることで、各用途に適した処理画像を得ることを可能とする。
【0043】
また、本実施形態では、第1の実施形態に比べて位置ずれ検出用画像の処理をY信号のみを抽出して行うので、メモリ容量を削減できる、という効果を奏する。さらに位置ずれ検出用画像に行うコントラスト処理やシャープネス処理を合成用画像に行う各処理に比べて強めに行うことで、エッジ検出精度が向上する、という効果を奏する。
【0044】
(第3の実施形態)
本発明を応用することで、ランダムノイズ低減合成画像を提供することができる。ランダムノイズ低減合成画像とは、露光量の等しい複数枚の合成用画像のそれぞれの画素値を平均加算することで、ランダムノイズを低減した画像である。ランダムノイズ低減合成画像を提供することは、より高感度で撮影した場合でも、通常の1枚の画像よりもランダムノイズを低減した画像を提供できることを意味している。より高感度で撮影できることは、より短い露光時間で撮影できることを意味しており、手ブレを防ぐ効果がある。
【0045】
以下、
図1と
図9を参照して、本発明の構成を応用した第3の実施例による、露光量の同じ2枚の画像の位置ずれを補正しながら、その2枚の画像を合成し1枚のランダムノイズ低減合成画像を取得する方法について説明する。
【0046】
制御部1170が、
図9の処理ステップに従って、以下の各モジュール間のデータのやり取りや、各モジュールでの演算処理を制御している(不図示)。また、場合によっては、ユーザ指示などの外部操作がインターフェースI/F1180からカメラへと入力され、制御部1170を介して、デジタルカメラを制御する。
【0047】
ステップS1では、制御部1170の指示に従い、撮像部1000は、被写体像を光電変換する撮像素子からアナログ電圧として出力する信号を、以降の画像処理に適するデジタルデータへと変換し、メモリ1010とメモリ1020へ格納する処理まで行う。本実施形態では、被写体像の撮像素子への露光時間が同じ2回の撮像を行い、1枚目の撮像結果をメモリ1010に格納し、2枚目の撮像結果をメモリ1020に格納する。
【0048】
ステップS2Cでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部A1030は、1枚目の画像に位置ずれ検出に適した画像処理を行った位置ずれ検出画像を、メモリ1040へ格納する処理まで行う。ステップS3Cでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部A1050は、2枚目の画像に位置ずれ検出に適した画像処理を行った位置基準用画像を、メモリ1060へ格納する処理まで行う。この時、2枚の画像の露光時間は同じであるため、本実施例においてはゲイン補正の必要はない。次のステップS4の処理を行う前に、ステップS2CとステップS3Cの処理が終わっていればよいため、ステップS2CとステップS3Cの処理は同時に行ってもよく、どちらのステップを先に行ってもよく、本発明はいずれかに限定するものではない。
【0049】
ステップS4では、制御部1170の指示に従い、位置ずれ検出部1070は、画像処理を施した2枚の位置ずれ検出画像と位置基準用画像の位置ずれ情報を取得し、メモリ1080へ格納する処理まで行う。
【0050】
ステップS5Cでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部B1090は、1枚目の画像に合成に適した画像処理を行った位置ずれ補正用画像を、メモリ1100へ格納する。位置ずれ補正部1110は、位置ずれ補正用画像を位置ずれ検出部1070から取得した位置ずれ検出情報(アフィン係数)に基づいて補正(アフィン変換)し、1枚目の合成用画像を取得する処理まで行う。ステップS6Cでは、制御部1170の指示に従い、画像処理部B1120は、2枚目の画像に合成に適した画像処理を行った合成基準用画像を、メモリ1130へ格納する処理まで行う。次のステップS7の処理を行う前に、ステップS5CとステップS6Cの処理が終わっていればよいため、ステップS5CとステップS6Cの処理は同時に行ってもよく、どちらのステップを先に行ってもよく、本発明はいずれかに限定するものではない。
【0051】
以下に、本実施例に特有である、画像処理部B1090と画像処理部B1120について述べる。本実施例における画像処理部B1090と画像処理部B1120は、他の実施例における画像処理部B1090と画像処理部B1120と画像処理方法は同じであるが、制御部1170の指示により、異なる各画像処理のパラメータが設定される。ランダムノイズを低減するために複数枚の画像を合成する場合、位置ずれを完全に補正することが難しいため、エッジと平坦部の差の絶対値が小さくなってしまい解像感が低下してしまう問題が考えられる。また、合成処理によりランダムノイズが低減することを見越して、合成用画像は通常の1枚の画像よりもNRの効果を弱めることでよりエッジを残すことが可能となる効果もある。またこれらの問題や効果に対応するため、シャープネス処理を強めに行ったりしてもよい。
【0052】
ステップS7では、制御部1170の指示に従い、1枚目の合成用画像と2枚目の合成基準用画像を画像合成部1140で合成し、ランダムノイズ低減合成画像を取得する処理まで行う。ランダムノイズ低減合成画像を取得するためには、1枚目の合成用画像と2枚目の合成用画像のそれぞれの画素値を平均加算することで、ランダムノイズを低減することができる。
【0053】
ステップS8では、制御部1170の指示に従い、画像合成部1140から出力したランダムノイズ低減合成画像を、メモリ1150に格納する。その後、必要に応じてSDカードなどの外部メモリ1160に保存する。
【0054】
以上のように、本実施形態では、合成用画像に対するNR処理を、通常の撮影モードにおける1枚の画像に対するNR処理や位置ずれ検出用画像に対するNR処理に比べて弱めにかけることで、エッジを適切に残した合成画像を得ることができる。
【0055】
上記の各実施形態では、露出の異なる2枚の画像の位置ずれの補正と合成について述べた。しかし、露出の異なる3枚以上の画像の位置ずれ補正と合成に関しても本実施形態の処理を繰り返すことで本発明を適用し得るものである。
【0056】
(他の実施形態)
また、本発明の実施形態の目的は、次のような方法によっても達成される。すなわち、前述した実施形態の機能を実現するための手順が記述されたソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給する。そして、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行する。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行可能とすることにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、本発明には次のような場合も含まれる。すなわち、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【0057】
さらに、次のような場合も本発明に含まれる。すなわち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【0058】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明した手順に対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0059】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。