(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、吸引カテーテルを体外へ導出する際には、ガイドワイヤにおけるガイディングカテーテルからの導出部分が曲げられた状態で吸引カテーテルが引き出されることとなるため、吸引カテーテルの遠位端側がガイディングカテーテルの基端開口付近まで引き出されてガイドワイヤチューブがガイディングカテーテルの基端開口から導出されると、その後吸引カテーテルはガイディングカテーテルに沿って引き出されるのに対し、ガイドワイヤチューブは曲げ状態にあるガイドワイヤに沿って吸引チューブから離間する側へ案内されることとなる。そのため、ガイドワイヤチューブには当該離間する側への負荷が生じることとなる。
【0009】
また、吸引カテーテルを体内に導入した際にガイドワイヤチューブ全体がガイディングカテーテルよりも先端側に位置することとなった場合には、吸引カテーテルを体外に引き出す際に、ガイドワイヤの一部がガイドワイヤチューブの基端とガイディングカテーテルの先端との間でループ状をなしてしまうおそれがあり、そうなると、吸引カテーテルはガイディングカテーテルに沿って引き出されるのに対しガイドワイヤチューブはループ状のガイドワイヤに沿って吸引チューブから離間する側へ案内されることとなってしまう。したがって、この場合においても、上記同様ガイドワイヤチューブには当該離間する側への負荷が生じることとなる。
【0010】
ここで、上記の吸引カテーテル80では、吸引チューブ81の外周面に凹み部87が形成されているため、ガイドワイヤチューブ83に吸引チューブ81から離間する側への負荷が生じた場合に、その凹み部87に応力集中が生じ、その結果凹み部87を起点として吸引チューブ81が吸引ルーメン84とガイドワイヤチューブ83との間で破断してしまうおそれがある。その場合、その破断に伴ってガイドワイヤチューブ83が吸引チューブ81の周壁部82から離脱してしまうおそれがある。そうなると、当該離脱した部分により吸引カテーテル80の操作性の低下を招くおそれがある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、メインチューブの周壁部にガイドワイヤチューブが埋設されている構成において、メインチューブからのガイドワイヤチューブの離脱を防止することで操作性の低下を抑制することができるカテーテルを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決すべく、第1の発明のカテーテルは、メインルーメンを有するメインチューブと、ガイドワイヤを挿通可能なガイドワイヤルーメンを有するガイドワイヤチューブと、を備えるカテーテルにおいて、前記メインチューブは、前記メインルーメンの周囲に前記ガイドワイヤチューブを保持する保持部を有しており、前記保持部および前記ガイドワイヤチューブは、前記ガイドワイヤルーメンに挿通された前記ガイドワイヤにおいて同ルーメンから近位側に導出しているワイヤ導出部分が前記メインチューブから離れる側へ曲げられることに伴い、前記ガイドワイヤチューブに当該離れる側への負荷が生じる場合に、前記保持部による前記ガイドワイヤチューブの保持が解除されるよりも前に破断するように形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、吸引チューブにおいて吸引ルーメンの周囲に設けられた保持部によりガイドワイヤチューブが保持されている。そして、ガイドワイヤチューブのガイドワイヤルーメンに挿通されたガイドワイヤにおいて同ルーメンから近位側に導出されたワイヤ導出部分が吸引チューブから離れる側へ曲げられることに伴い、ガイドワイヤチューブに当該離れる側への負荷が生じた場合には、保持部によるガイドワイヤチューブの保持が解除されるよりも先に保持部及びガイドワイヤチューブが破断する。これにより、ガイドワイヤチューブが吸引チューブから離脱するのを防止することができるため、ガイドワイヤチューブの離脱に伴う操作性の低下を抑制すること
ができる。
【0014】
第2の発明のカテーテルは、第1の発明において、前記保持部は、前記メインルーメンを囲む周壁部における周方向の一部であって他の部位よりも肉厚とされた肉厚部であり、その肉厚部に前記ガイドワイヤチューブが埋設されており、前記肉厚部には、前記ガイドワイヤルーメンに挿通された前記ガイドワイヤを同ルーメンから近位側に導出させるための導出口が形成されており、前記肉厚部と前記ガイドワイヤチューブの周壁部とからなるチューブ埋設部のうち、前記メインルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとが並ぶルーメン並び方向において前記ガイドワイヤルーメンよりも前記メインルーメンとは反対側の部分であって、カテーテル軸線方向に前記導出口から延びる部分が易破断部となっており、前記易破断部は、前記ガイドワイヤの前記ワイヤ導出部分が前記メインチューブから離れる側へ曲げられることに伴い、前記ガイドワイヤチューブに当該離れる側への負荷が生じる場合に、前記メインチューブの周壁部における前記メインルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとの間の部分よりも破断しやすいように形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、吸引チューブの周壁部において周方向の一部に形成された肉厚部にガイドワイヤチューブが埋設されることで、同チューブが吸引チューブに保持されている。そして、吸引チューブの肉厚部とガイドワイヤチューブの周壁部とからなるチューブ埋設部分のうち、ルーメン並び方向においてガイドワイヤルーメンよりも吸引ルーメンとは反対側の部分でありかつ導出口から軸線方向に延びる部分が易破断部となっている。この場合、ガイドワイヤのワイヤ導出部分が吸引チューブから離れる側へ曲げられることに伴い、ガイドワイヤチューブに当該離れる側への負荷が生じた場合には、吸引チューブの周壁部が吸引ルーメンとガイドワイヤルーメンとの間で破断するよりも先に易破断部が破断する。これにより、吸引チューブの周壁部における両ルーメン間での破断を防止することができるため、かかる破断に伴ってガイドワイヤチューブが吸引チューブの周壁部(肉厚部)から離脱するのを防止することができる。よって、ガイドワイヤチューブの離脱に伴う操作性の低下を抑制すること
ができる。
【0016】
第3の発明のカテーテルは、第2の発明において、前記肉厚部は、前記メインチューブにおける軸線方向の途中位置よりも遠位側に設けられており、前記メインチューブの周壁部には、前記肉厚部とそれよりも近位側の領域との間で外周面に段差を生じさせる段差部が形成されており、その段差部に前記導出口が形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、メインチューブの周壁部に形成された段差部に導出口が形成されているため、導出口が近位側に向けて開口されている。この場合、ガイドワイヤが導出口から近位側に向かってメインチューブに沿って導出されるため、導出口がメインチューブの外周面にて径方向外側に向けて開口されている場合と比べ、ガイドワイヤのワイヤ導出部分が撓むのを抑制することができる。これにより、ガイドワイヤの撓みによってガイドワイヤチューブに作用するメインチューブから離間する側への負荷を低減させることができ、その結果ガイドワイヤチューブの肉厚部からの離脱を抑制することができる。
【0018】
第4の発明のカテーテルは、第2又は第3の発明において、前記メインチューブの周壁部の外周面には、前記メインルーメンと前記ガイドワイヤルーメンとの間の境界部に向かって凹む凹み部が形成されていないことを特徴とする。
【0019】
メインチューブの周壁部の外周面にメインルーメンとガイドワイヤルーメンとの間の境界部に向かって凹む凹み部が存在する構成では、ガイドワイヤのワイヤ導出部分がメインチューブから離れる側へ曲げられることに伴い、ガイドワイヤチューブに当該離れる側への負荷が生じた場合に、その凹み部に応力集中が生じて、凹み部を起点としてメインチューブの周壁部が両ルーメン間で破断してしまうことが想定される。そこで本発明では、この点に鑑みて、メインチューブの周壁部の外周面にかかる凹み部を形成しないようにしている。これにより、凹み部を起点としたメインチューブの周壁部の破断を回避することができるため、結果として易破断部をメインチューブの周壁部における両ルーメンの間の部分よりも破断させ易くすることができる。
【0020】
第5の発明のカテーテルは、第4の発明において、前記メインチューブの周壁部の外周面を周方向全域において外側に凸となる曲面形状とすることで、当該外周面に前記凹み部を形成しないようにしたことを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、メインチューブの周壁部の外周面が周方向全域において外側に凸となる曲面形状をなしているため、メインチューブの周壁部におけるメインルーメンとガイドワイヤルーメンとの間の部分の厚みを大きくすることができる。これにより、易破断部をメインチューブの周壁部における両ルーメンの間の部分よりも、より一層破断させ易くすることができる。
【0022】
第6の発明のカテーテルは、第2乃至第5のいずれかの発明において、前記肉厚部は、前記メインチューブにおける軸線方向の途中位置よりも遠位側に設けられており、前記メインチューブの周壁部には、前記肉厚部とそれよりも近位側の領域との間で外周面に段差を生じさせる段差部が形成されており、その段差部に前記導出口が形成されており、前記段差部は、遠位側から近位側に向かうにつれて前記メインルーメンの側に近づくように軸線方向に対して傾斜させて形成されていることを特徴とする。
【0023】
ところで、ガイドワイヤのワイヤ導出部分がメインチューブから離れる側に曲げられることに伴い、ガイドワイヤチューブに当該離れる側への負荷が生じた場合において、メインチューブの周壁部がメインルーメンとガイドワイヤルーメンとの間に沿って破断する際には、肉厚部の近位端部に形成された段差部詳しくは段差部において径方向内側の端部となる段差部の根元部分を起点として破断が生じることが考えられる。ここで、段差部が軸線方向に対して直交する方向に延びている場合には、段差部の根元部分に応力集中が生じ易く、上記のような破断が生じ易いと考えられる。そこで、本発明ではこの点に着目し、段差部を遠位側から近位側に向かうにつれてメインルーメンの側に近づくように軸線方向に対し傾斜させて形成している。これにより、段差部の根元部分に生じる応力集中を緩和させることができるため、根元部分を起点としてメインチューブの周壁部が両ルーメンの間に沿って破断するのを抑制することができる。そのため、結果としてメインルーメンの周壁部における両ルーメンの間の部分よりも易破断部を破断させ易くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、血栓を吸引するための吸引カテーテルについて具体化している。
図1は、吸引カテーテルの構成を示す概略全体側面図である。
【0026】
図1に示すように、吸引カテーテル10は、1m〜2mの長さ寸法とされており、カテーテル本体11と、当該カテーテル本体11の近位端部(基端部)に取り付けられたハブ12とを備えている。カテーテル本体11は、吸引チューブ14と、当該吸引チューブ14の遠位端側(先端側)に設けられたガイドワイヤチューブ15とを備え、これら各チューブ14,15が溶着により接合されることで形成されている。吸引チューブ14は、その内部に吸引ルーメン17を有しており、ガイドワイヤチューブ15は、その内部にガイドワイヤGが挿通されるガイドワイヤルーメン18(
図2参照)を有している。
【0027】
ハブ12は、その内部に吸引チューブ14の吸引ルーメン17に通じる流体通路12aを有している。ハブ12には、吸引具としてシリンジSが接続されており、このシリンジSを用いて吸引ルーメン17に負圧を付与することで、同ルーメン17を介して血栓の吸引等を行うことが可能となっている。ちなみに、かかる吸引具としては、シリンジSの他に、電動式の真空ポンプ等が用いられる。
【0028】
次に、カテーテル本体11の構成について
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、カテーテル本体11の構成を示す縦断面図である。
図3は、カテーテル本体11の構成を示す横断面図であり、(a)が
図2のA−A線断面、(b)がB−B線断面を示す。ちなみに、縦断面はカテーテル本体11の長手方向(カテーテル軸線方向)に平行な断面であり、横断面は同長手方向に直交する断面である。
【0029】
図2及び
図3に示すように、カテーテル本体11は、上述したように吸引チューブ14とガイドワイヤチューブ15とが互いに溶着されてなるものである。吸引チューブ14は、近位側吸引チューブ21とそれよりも遠位側に設けられた遠位側吸引チューブ22とを備え、それら各チューブ21,22が溶着により互いに接合されることで形成されている。なおここで、吸引チューブ14がメインチューブに相当する。
【0030】
近位側吸引チューブ21は、吸引チューブ14においてその近位端部から遠位側に向けた所定の範囲を構成している。近位側吸引チューブ21は、管状をなしており、その内部に長手方向全域に亘って連続して延びる内腔21aを有している。近位側吸引チューブ21は、合成樹脂を含む複数種類の素材が積層されてなる複層構造を有している。具体的には、近位側吸引チューブ21は、同チューブ21の内周面を形成する内層27と、同チューブ21の外周面を形成する外層28と、内層27及び外層28の間に設けられた中間層29とを有する。そして、これら内層27、外層28及び中間層29により近位側吸引チューブ21の周壁部46が構成されている。
【0031】
内層27は、合成樹脂により形成されており、具体的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いて形成されている。但し、内層27は必ずしもPTFEにより形成される必要はなく、ポリフッ化ビニルデンやパーフロロアルコキシ樹脂等その他の合成樹脂により形成されてもよい。
【0032】
外層28は、合成樹脂により形成されている。外層28は、近位側吸引チューブ21の近位端部から遠位側に向けた所定の範囲を構成する外層31と、それよりも遠位側の範囲を構成する外層32とを備える。外層28は、これら各外層31,32が互いに溶着されることにより形成されている。各外層31,32は、ポリアミドやポリアミドエラストマ等のポリアミド系樹脂により形成されている。外層32は、その硬度が外層31よりも小さくなっている。したがって、外層32は、その剛性が外層31よりも小さくなっている。
【0033】
なお、各外層31,32は必ずしもポリアミド系樹脂により形成する必要はなく、ポリイミド、ポリイミドエラストマ、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、シリコンゴム等その他の合成樹脂により形成してもよい。また、外層31を軸線方向に並ぶ複数の外層により構成してもよい。その場合、それら複数の外層を、近位側のものから遠位側のものに向かって剛性(硬度)が小さくなるように形成するのが望ましい。
【0034】
外層32には、周方向における一部がそれ以外の部位と比べて肉厚とされた肉厚部32aが形成されている(
図3(b)参照)。この肉厚部32aには、ガイドワイヤチューブ15の近位側部分(詳しくは後述する近位側ガイドチューブ41)が埋設される。なおここで、肉厚部32aが保持部に相当し、この肉厚部32aにガイドワイヤチューブ15の近位側部分が埋設されることで保持されるようになっている。
【0035】
肉厚部32aの近位端部には、当該肉厚部32aの外周面と外層31の外周面との間に段差を生じさせる段差部37が形成されている。段差部37は、遠位側から近位側に向かうにつれて吸引ルーメン17の側に近づくように軸線方向に対して傾斜させて形成されている。また、段差部37は、ガイドワイヤチューブ15よりも近位側に設けられている。
【0036】
段差部37には、ガイドワイヤチューブ15のガイドワイヤルーメン18を近位側に向けて開放させる開口部38が形成されている。開口部38は、その開口形状が段差部37の傾斜方向に長い楕円形状をなしている。但し、開口部38の形状は、必ずしもかかる形状である必要はなく、円形状(真円形状)等その他の形状であってもよい。開口部38は、ガイドワイヤGをガイドワイヤルーメン18から近位側に導出させる導出口として機能するものである。具体的には、ガイドワイヤGは、段差部37により囲まれた内側領域を通じて開口部38から導出されるようになっている。
【0037】
中間層29(編組層)は、金属製の編組体30により形成されている(
図4参照)。編組体30は、近位側吸引チューブ21を補強するための補強体であり、ステンレス製の補強用線35がメッシュ状に編み込まれることにより形成されている。編組体30における複数の補強用線35の間には外層28の樹脂が入り込んでおり、その入り込んだ樹脂が内層27と接している。なお、
図2では便宜上、中間層29を、編組体30の補強用線35間の隙間が埋められた状態で示している。
【0038】
また、内層27と中間層29とはその一部が外層28(外層32)よりも遠位側に延出しており、その延出した部分が遠位側吸引チューブ22に対して接合される接合部39となっている。
【0039】
遠位側吸引チューブ22は、ポリアミドエラストマにより管状に形成されており、単一層構造をなしている。具体的には、遠位側吸引チューブ22は、外層32の硬度と同じか又はそれよりも低い硬度を有するポリアミドエラストマにより形成されている。遠位側吸引チューブ22は、近位側吸引チューブ21とは異なり、編組体30を有しておらず、そのため近位側吸引チューブ21よりも剛性が低く形成されている。
【0040】
遠位側吸引チューブ22は、その内部に長手方向全域に亘って連続して延びる内腔22aを有している。この内腔22aは、その近位端側において近位側吸引チューブ21の内腔21aと連通しており、これら各内腔21a,22aによって吸引ルーメン17が形成されている。
【0041】
内腔22aの遠位端開口は、血栓等の異物を吸引ルーメン17に取り込むための吸引口45となっている。遠位側吸引チューブ22の遠位側端面は軸線方向に対して傾斜しており、その傾斜に沿って吸引口45が形成されている。この場合、吸引口45が軸線方向に直交する方向に沿って形成されている場合と比べ、吸引口45の開口面積を大きくすることができ、異物の吸引性能を高めることができる。
【0042】
遠位側吸引チューブ22において内腔22aを囲む周壁部47には、周方向における一部がそれ以外の部位と比べて肉厚とされた肉厚部47aが形成されている(
図3(a)参照)。この肉厚部47aは近位側吸引チューブ21の外層32の肉厚部32aと周方向において同位置に設けられている。この肉厚部47aには、ガイドワイヤチューブ15の遠位側部分(詳細には後述する遠位側ガイドチューブ42)が埋設される。なおここで、肉厚部47aが保持部に相当し、この肉厚部47aにガイドワイヤチューブ15の遠位側部分が埋設されることで保持されるようになっている。
【0043】
遠位側吸引チューブ22の近位端部は、近位側吸引チューブ21の遠位端部に対して溶着されている。遠位側吸引チューブ22の近位端側には、近位側吸引チューブ21の接合部39が挿入されており、その挿入状態において接合部39と遠位側吸引チューブ22とが溶着されている。また、遠位側吸引チューブ22の近位端部と近位側吸引チューブ21の外層28(外層32)の遠位端部とは互いに突き合わせされた状態で溶着されている。これにより、近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22とが互いに接合されている。
【0044】
ガイドワイヤチューブ15は、合成樹脂により管状に形成されており、その内部に長手方向全域に亘って延びるガイドワイヤルーメン18を有している。ガイドワイヤチューブ15は、ガイドワイヤルーメン18に挿通されるガイドワイヤGの摺動性を高めるべく、吸引チューブ14を形成する材料と比べて硬い材料を用いて形成されている。具体的には、ガイドワイヤチューブ15は、ナイロン樹脂により形成されている。
【0045】
ガイドワイヤチューブ15は、吸引チューブ14の軸線方向に沿って近位側吸引チューブ21と遠位側吸引チューブ22との双方に跨って延びるように設けられている。具体的には、ガイドワイヤチューブ15は、遠位側吸引チューブ22の肉厚部47aと近位側吸引チューブ21の外層32の肉厚部32aとにそれぞれ埋設されており、これら各肉厚部32a、47aを軸線方向に貫通するように設けられている。
【0046】
ガイドワイヤチューブ15は、軸線方向に分割されてなる近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを備え、これら各ガイドチューブ41,42が溶着により互いに接合されることで形成されている。これら各ガイドチューブ41,42は同じ横断面形状を有しており、互いの端面同士を突き合わせた状態で溶着されている。また、各ガイドチューブ41,42はそれぞれその内側に長手方向全域に亘って連続して延びる内腔41a,42aを有している。これら各内腔41a,42aは互いに連通しており、これら各内腔41a,42aによってガイドワイヤルーメン18が形成されている。
【0047】
近位側ガイドチューブ41は、近位側吸引チューブ21の外層32の肉厚部32aに埋設されている。近位側ガイドチューブ41は、かかる埋設状態において外層32に溶着されており、ひいては近位側吸引チューブ21に溶着されている。具体的には、近位側ガイドチューブ41は、軸線方向の全域が肉厚部32aに埋設されており、その遠位端部が軸線方向において外層32の遠位端部と同位置にある。したがって、上述した近位側吸引チューブ21の接合部39は、外層32に対してのみならず近位側ガイドチューブ41に対しても遠位側に延出している。
【0048】
遠位側ガイドチューブ42は、遠位側吸引チューブ22の肉厚部47aに埋設されており、その埋設状態で遠位側吸引チューブ22に溶着されている。具体的には、遠位側ガイドチューブ42は、その内腔42aを囲む周壁部44の一部が遠位側吸引チューブ22の周壁部47に埋設されておらず、遠位側吸引チューブ22の内腔22aに露出している。この場合、遠位側ガイドチューブ42のかかる露出部分によって同チューブ42の内腔42aと遠位側吸引チューブ22の内腔22aとが区画されている。
【0049】
なお、本明細書では、このようにガイドワイヤチューブ15の一部が吸引ルーメン17に露出している場合であっても、ガイドワイヤチューブ15が吸引チューブ14の周壁部(肉厚部)に埋設されているものとする。
【0050】
また、遠位側ガイドチューブ42は、その一部が遠位側吸引チューブ22よりも遠位側に延出しており、その延出した部分については同チューブ22に埋設されない状態となっている。これにより、遠位側ガイドチューブ42の遠位端開口において内腔42a(ひいてはガイドワイヤルーメン18)が外部に開放されている。
【0051】
遠位側ガイドチューブ42は、その近位端側では、軸線方向において近位側吸引チューブ21の接合部39と一部重複しており、その重複部位において接合部39の外周面と当接している。この場合、かかる重複部位では、遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21の接合部39とが共に遠位側吸引チューブ22の周壁部47により被覆された状態にあり、この周壁部47に対して遠位側ガイドチューブ42と接合部39とがそれぞれ溶着されている(
図3(b)参照)。すなわち、遠位側ガイドチューブ42と近位側吸引チューブ21とは周壁部47を介して互いに接合されている。
【0052】
次に、カテーテル本体11の横断面形状について
図3に基づいて説明する。
【0053】
図3(b)に示すように、カテーテル本体11において近位側吸引チューブ21の外層32(肉厚部32a)に近位側ガイドチューブ41が埋設されている領域(以下、近位側埋設領域という)では、カテーテル本体11の横断面つまりは近位側吸引チューブ21の横断面が近位側吸引チューブ21の内腔21a(ひいては吸引ルーメン17)と近位側ガイドチューブ41の内腔41a(ひいてはガイドワイヤルーメン18)とが並ぶルーメン並び方向Xに長い楕円形状をなしている。換言すると、この近位側埋設領域では、近位側吸引チューブ21(外層28)の外周面が周方向全域において外側に凸となる曲面形状をなしている。したがって、当該領域では、近位側吸引チューブ21の外周面において周方向全域に亘って凹みが存在しておらず、それ故近位側吸引チューブ21の外周面には、近位側吸引チューブ21の内腔21aと近位側ガイドチューブ41の内腔41aとの間の境界部に向かって凹む凹みが存在していない。
【0054】
ここで、近位側吸引チューブ21の外層32の肉厚部32aと近位側ガイドチューブ41において内腔41aを囲む周壁部43とのうち(つまり、肉厚部32aと周壁部43とからなるチューブ埋設部のうち)、ルーメン並び方向Xにおいてガイドワイヤルーメン18よりも吸引ルーメン17とは反対側の部分は易破断部50となっている。易破断部50は、開口部38から遠位側に向かって軸線方向に延びており、その遠位端部が近位側ガイドチューブ41の遠位端部に達している。
【0055】
また、
図3(a)に示すように、カテーテル本体11において遠位側吸引チューブ22の周壁部47(肉厚部47a)に遠位側ガイドチューブ42が埋設されている領域(以下、遠位側埋設領域という)では、カテーテル本体11の横断面つまりは遠位側吸引チューブ22の横断面がルーメン並び方向Xに長い楕円形状をなしている。換言すると、この遠位側埋設領域では、遠位側吸引チューブ22の外周面が周方向全域において外側に凸となる曲面形状をなしている。したがって、当該領域では、遠位側吸引チューブ22の外周面において周方向全域に凹みが存在しておらず、それ故遠位側吸引チューブ22の外周面には、遠位側吸引チューブ22の内腔22aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとの間の境界部に向かって凹む凹みが存在していない。
【0056】
ここで、遠位側吸引チューブ22の周壁部47の肉厚部47aと遠位側ガイドチューブ42の周壁部44とのうち(つまり、肉厚部47aと周壁部44とからなるチューブ埋設部のうち)、ルーメン並び方向Xにおいてガイドワイヤルーメン18よりも吸引ルーメン17とは反対側の部分は易破断部51となっている。易破断部51は、軸線方向に沿って延びており、その基端部において易破断部50と連続している。具体的には、易破断部51は、軸線方向において遠位側ガイドチューブ42の近位端部から遠位側吸引チューブ22の遠位端部までの範囲に亘って延びている。
【0057】
次に、吸引カテーテル10における易破断部50,51の作用について
図4に基づいて説明する。なお、
図4は、吸引カテーテル10における易破断部50,51の作用を説明するための説明図である。
【0058】
図4(a)には、ガイドワイヤチューブ15のガイドワイヤルーメン18にガイドワイヤGが挿通された状態が示されている。この状態では、ガイドワイヤGの一部がガイドワイヤルーメン18から開口部38を通じて近位側に導出されている。以下、この導出された部分をワイヤ導出部分49という。
【0059】
図4(a)に示す状態からガイドワイヤGのワイヤ導出部分49が、
図4(b)に示すように、吸引チューブ14における開口部38よりも近位側の部分から離れる側(以下、略して吸引チューブ離間側という)に曲げられると、ガイドワイヤチューブ15には当該離れる側への負荷が生じる。そして、その負荷が所定の大きさに達すると、カテーテル本体11の易破断部50が開口部38の周縁から遠位側に向かって徐々に破断していく。すなわち、近位側吸引チューブ21の周壁部46(詳しくは外層32)がその内腔21aと近位側ガイドチューブ41の内腔41aとの間に沿って破断を始めるよりも先に易破断部50が破断する。そして、ガイドワイヤチューブ15に対するかかる負荷を継続させると、易破断部50の破断は遠位側に向かって進行し、その後易破断部51が破断をし始める。すなわち、遠位側吸引チューブ22の周壁部47がその内腔22aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとの間に沿って破断するよりも先に易破断部51が破断する。したがって、本吸引カテーテル10では、ガイドワイヤチューブ15に上記の負荷が生じた場合に、吸引チューブ14の周壁部が吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との間で破断するのを防止することができ、ひいてはガイドワイヤチューブ15が吸引チューブ14の周壁部から離脱するのを防止することができる。
【0060】
易破断部50,51は、要するに、ガイドワイヤチューブ15に上記の負荷が生じた場合に、吸引チューブ14の周壁部(詳しくは各吸引チューブ21,22の周壁部46,47)における両ルーメン17,18の間の部分よりも破断し易いように形成されている。換言すると、易破断部50,51は、肉厚部32a,47aによるガイドワイヤチューブ15の保持が解除されるよりも前に破断するように形成されている。ここで、易破断部50,51についてより詳しく説明すると、近位側吸引チューブ21の外周面には、上述したように内腔21aと近位側ガイドチューブ41の内腔41aとの境界部に向かって凹む凹みが存在しておらず、また遠位側吸引チューブ22の外周面にも同様に内腔22aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとの境界部に向かって凹む凹みが存在していない。すなわち、吸引チューブ14の外周面にはその全域においてかかる凹みが存在していない。したがって、ガイドワイヤチューブ15に上記の負荷が生じた場合に、かかる凹みを起点として吸引チューブ14の周壁部が吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との間で破断してしまうことが回避されており、その結果として当該吸引チューブ14の周壁部における両ルーメン17,18間の部分よりも易破断部50,51が破断し易くなっている。
【0061】
より詳しくは、各吸引チューブ21,22の外周面は周方向全域において外側に凸となる曲面形状をなしているため、各吸引チューブ21,22の周壁部46,47における両ルーメン17,18間の部分は厚みが大きくなっている。そのため、この点からも、各吸引チューブ21,22における両ルーメン17,18間の部分よりも易破断部50,51が破断し易くなっているといえる。
【0062】
次に、吸引カテーテル10の製造手順について
図5を用いながら説明する。なお、
図5は、吸引カテーテル10の製造手順を説明するための説明図である。
【0063】
まず、
図5(a)に示すように、遠位側吸引チューブ22と遠位側ガイドチューブ42とを熱溶着により接合することで遠位側チューブ55を製造する遠位側チューブ製造工程を行う。この工程では、遠位側吸引チューブ22の内腔22aに遠位側ガイドチューブ42を、その外周面を遠位側吸引チューブ22の内周面に当接させた状態で配置し、その配置状態でそれら両チューブ22,42を熱溶着により接合する。
【0064】
次に、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが接合されてなる近位側チューブ56を製造する近位側チューブ製造工程を行う。この工程では、まず
図5(b)に示すように、近位側吸引チューブ21の内層27を構成する内管58の外周面に、複数の補強用線35を螺旋状にかつ編組させて巻き付けることで編組体30を形成する。その後、編組体30の外周側を、外層31を構成する外管59により被覆して、内管58の外周面と外管59の内周面とを熱溶着により接合する。これにより、外層31が形成され、内層27と外層31との間に編組体30(中間層29)が介在される。
【0065】
次に、
図5(c)に示すように、編組体30の外周側における所定位置に近位側ガイドチューブ41を配置するとともに、近位側ガイドチューブ41と編組体30との双方を外側から囲むようにして外層32を構成する外管60を被せ、その外管60の外側からヒータにより熱を加える。これにより、外管60が溶け出して、それが編組体30の各補強用線35の間に入り込んで内層27に溶着されるとともに近位側ガイドチューブ41に溶着される。この溶着によって外管60が外層32となり、外層28全体が形成される。そして、近位側吸引チューブ21と近位側ガイドチューブ41とが溶着されてなる近位側チューブ56が製造される。
【0066】
次に、
図5(d)に示すように、遠位側チューブ55と近位側チューブ56とを接合するチューブ接合工程を行う。この工程では、まず近位側チューブ56における近位側吸引チューブ21の接合部39を遠位側チューブ55における遠位側吸引チューブ22の近位端部に挿入するとともに、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを互いの端面同士を突き合わせた状態で配置する。
【0067】
その後、遠位側チューブ55と近位側チューブ56とを熱溶着により接合する。具体的には、近位側吸引チューブ21の接合部39と遠位側吸引チューブ22の近位端側とを熱溶着するとともに、近位側吸引チューブ21の外層28の遠位側端面と遠位側吸引チューブ22の近位側端面とを熱溶着する。これにより、吸引チューブ14が形成される。また、近位側ガイドチューブ41と遠位側ガイドチューブ42とを熱溶着する。これにより、ガイドワイヤチューブ15が形成される。よって、以上によりカテーテル本体11が形成される。
【0068】
その後、後工程として、カテーテル本体11にハブ12を連結するハブ連結工程等を行うことで、一連の製造工程が終了する。
【0069】
次に、吸引カテーテル10の使用手順について説明する。
【0070】
先ず予め血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通する。ガイディングカテーテルを挿通した後、ガイドワイヤGをガイディングカテーテル内に挿通して血栓が存在する治療対象箇所を越える位置まで導入する。次いで、ガイドワイヤGをガイドワイヤチューブ15のガイドワイヤルーメン18に挿通し、その挿通状態で吸引カテーテル10をガイドワイヤGに沿って押引操作を加えながら治療対象箇所まで挿入する。吸引カテーテル10を治療対象箇所まで挿入した後、ハブ12に接続されたシリンジSを用いて、吸引チューブ14の吸引ルーメン17を負圧とする。これにより、吸引ルーメン17を介して血管内の血栓が吸引除去される。
【0071】
血栓の吸引除去が終了した後、吸引カテーテル10をガイドワイヤGに沿ってガイディングカテーテル内を通じて体外に導出する。この場合、ガイディングカテーテルとガイドワイヤGとをそれぞれ体内に保持したまま、吸引カテーテル10を体外へ引き出すこととなる。この際、ガイドワイヤGはその一部がガイディングカテーテルの基端開口から導出されており、その導出された部分を片手で持ちながら、もう一方の手で吸引カテーテル10を引き出すこととなる。そして、このとき、ガイドワイヤGにおいて手で保持されることとなる上記の導出部分は、吸引カテーテル10の引き出しの邪魔とならないように、吸引カテーテル10から離れた位置に、例えばルーメン並び方向Xにおいて吸引チューブ14から離れる側に曲げられる。
【0072】
ここで、吸引カテーテル10の導出に際し、吸引カテーテル10の遠位端側がガイディングカテーテルの基端開口付近まで引き出されてガイドワイヤチューブ15がガイディングカテーテルの基端開口から導出されると、その後吸引カテーテル10がガイディングカテーテルの軸線方向に沿って引き出されるのに対しガイドワイヤチューブ15は曲げ状態にあるガイドワイヤGに沿って吸引カテーテル10から離れる側へと案内されることとなる。そうなると、ガイドワイヤチューブ15に当該離れる側への負荷が、具体的にはルーメン並び方向Xにおいて吸引チューブ14(吸引ルーメン17)から離れる側への負荷が生じることとなる。
【0073】
ここで、上述したように本吸引カテーテル10ではカテーテル本体11に易破断部50,51が設けられているため、この場合、近位側吸引チューブ21の周壁部46(外層32)が吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との間で破断するよりも先に易破断部50が破断する。そのため、外層32の破断に伴ってガイドワイヤチューブ15が外層32から離脱する事態が生じるのを防止することができる。これにより、本吸引カテーテル10を再度体内に挿入して使用するに際し、その離脱した部分が吸引カテーテル10の外周面とガイディングカテーテルの内周面との間に挟み込む等して挿通性の低下を招くといった不都合が生じるのを回避することができる。
【0074】
なお、吸引カテーテル10は上記のように主として血管内を通されて、例えば冠状動脈、大腿動脈、肺動脈などの血管を治療するために用いられるが、血管以外の尿管や消化管などの生体内の「管」や、「体腔」にも適用可能である。
【0075】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0076】
吸引チューブ14の周壁部46に、肉厚部32aとそれよりも近位側の領域との間で段差を生じさせる段差部37を形成し、その段差部37に開口部38を設けた。この場合、開口部38が近位側に向けて開口されているため、ガイドワイヤGを開口部38から近位側へ吸引チューブ14に沿って導出することができる。これにより、ガイドワイヤGのワイヤ導出部分49が撓むのを抑制することができるため、当該撓みによりガイドワイヤチューブ15に作用する吸引チューブ14から離間する側への負荷を低減させることができる。その結果、ガイドワイヤチューブ15の吸引チューブ14からの離脱を抑制することができる。
【0077】
段差部37を、遠位側から近位側に向かうにつれて吸引ルーメン17の側に近づくように軸線方向に対して傾斜させて形成した。ここで、ガイドワイヤGのワイヤ導出部分49が吸引チューブ14から離間する側へ曲げられることに伴いガイドワイヤチューブ15に負荷が生じた場合には、段差部37詳しくは段差部37において径方向内側の端部となる根元部分に応力集中が生じることが想定される。この点、上記の構成とすれば、かかる応力集中を段差部37が軸線方向に対し直交する方向に延びている場合と比べて緩和することができる。これにより、段差部37の根元部分を起点として吸引チューブ14の周壁部が吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との間に沿って破断するのを抑制することができるため、結果として吸引チューブ14の周壁部における両ルーメン17,18間の部分よりも易破断部50,51を破断させ易くすることができる。
【0078】
遠位側ガイドチューブ42(ガイドワイヤチューブ15)を、その一部を遠位側吸引チューブ22(吸引チューブ14)の内腔22a(吸引ルーメン17)に露出させた状態で、遠位側吸引チューブ22の周壁部47に埋設させた構成では、周壁部47が遠位側ガイドチューブ42の内腔42aと遠位側吸引チューブ22の内腔22aとの境界部で破断し遠位側ガイドチューブ42が周壁部47から離脱してしまうと、吸引ルーメン17の一部が外部に開口されてしまい、吸引カテーテル10を再使用することができなくなってしまう。この点、カテーテル本体11に易破断部51を設けた上記の構成では、かかる問題を防止できるという利点もある。
【0079】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0080】
(1)上記実施形態では、吸引チューブ14(具体的には各吸引チューブ21,22)の横断面を楕円形状とすることにより、換言すると吸引チューブ14の外周面をその周方向全域において外側に凸となる曲面形状とすることにより、当該外周面に吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との間の境界部に向かって凹んだ凹み部を形成しないようにしたが、これを変更してもよい。例えば
図6に示すような横断面形状としてもよい。
【0081】
図6では、近位側吸引チューブ21の横断面がルーメン並び方向Xにおいてその内腔21a(吸引ルーメン17)側から近位側ガイドチューブ41の内腔41a(ガイドワイヤルーメン18)側に向かって先細りされた形状とされている。具体的には、近位側吸引チューブ21の外周面には、内腔21aと近位側ガイドチューブ41の内腔41aとの境界部を挟んでルーメン並び方向X及び軸線方向のそれぞれと直交する方向に対向する一対の平面部65が形成されている。これら各平面部65はルーメン並び方向Xにおいて近位側吸引チューブ21の内腔21a側から近位側ガイドチューブ41の内腔41a側に向かうにつれて互いに接近するように傾斜している。この場合、これらの平面部65により、近位側吸引チューブ21の外周面には内腔21aと近位側ガイドチューブ41の内腔41aとの境界部に向かって凹む凹み部が形成されていない。したがって、この場合においても、凹み部を起点として近位側吸引チューブ21の周壁部46が吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との間で破断するのを防止することができるため、当該周壁部46における両ルーメン17,18の間の部分よりも易破断部50を破断させ易くすることができる。なお、これと同様に、遠位側吸引チューブ22についてもその外周面に平面部を形成することで、凹み部を形成しないようにしてもよい。
【0082】
(2)ガイドワイヤチューブ15(詳しくは各ガイドチューブ41,42)の周壁部(詳しくは周壁部43,44)の横断面形状を周方向に不均一とすることで、当該周壁部において吸引ルーメン17とは反対側の部分にそれ以外の部分よりも破断し易いガイドチューブ易破断部を設けてもよい。この場合、このガイドチューブ易破断部が易破断部50,51の一部を構成するものとなるため、結果として易破断部50,51を吸引チューブ14の周壁部における吸引ルーメン17とガイドワイヤルーメン18との間の部分よりも破断させ易くすることができる。一般にガイドワイヤチューブ15(各ガイドチューブ41,42)は押し出し成形により形成されるものであるため、かかる構成とすれば、ガイドワイヤチューブ15の周壁部の横断面形状を調整するといった比較的簡易な手法で易破断部50,51を形成することが可能となる。
【0083】
例えば、ガイドワイヤチューブ15の周壁部の横断面をルーメン並び方向Xに長い楕円形状とすることでガイドチューブ易破断部を形成することが考えられる。その例を
図7(a)に示す。
図7(a)では、近位側ガイドチューブ41の周壁部43の横断面がルーメン並び方向Xに長い楕円形状をなしている。この場合、近位側ガイドチューブ41の周壁部43の厚みは周方向全域において一定となっている。かかる構成では、近位側ガイドチューブ41の周壁部43においてルーメン並び方向Xにおける両端部がその他の部位と比べて曲率が大きくされた大曲率部66となっている。そしてこれら各大曲率部66のうち、近位側吸引チューブ21の内腔21aとは反対側の大曲率部66aがガイドチューブ易破断部に相当するものとなっている。この場合、ガイドワイヤGのワイヤ導出部分49が吸引チューブ14における開口部38よりも近位側の部分から離れる側に曲げられることに伴い、近位側ガイドチューブ41に当該離れる側への負荷が生じた場合に大曲率部66aにおいて応力集中を生じさせ易くすることができる。これにより、当該大曲率部66aにて破断を生じさせ易くすることができる。
【0084】
また、ガイドワイヤチューブ15の周壁部のうち吸引ルーメン17とは反対側の部分をそれ以外の部位よりも肉薄とすることでガイドチューブ易破断部を形成してもよい。その例を
図7(b)に示す。
図7(b)では、近位側ガイドチューブ41の周壁部43のうちルーメン並び方向Xにおける吸引ルーメン17とは反対側の部分がそれ以外の部位と比べて肉薄とされた薄肉部67となっている。そして、この薄肉部67がガイドチューブ易破断部に相当するものとなっている。この場合、近位側ガイドチューブ41の周壁部43のうち薄肉部67においてその強度(破断強度)を小さくすることができるため、近位側ガイドチューブ41を薄肉部67で破断させ易くすることができる。
【0085】
(3)カテーテル本体11の易破断部50に、その近位端にて開放されるとともに当該易破断部50を貫通するように形成された切り込みを設けてもよい。その場合、その切り込みをきっかけとして易破断部50を破断に導き易くすることができる。
【0086】
(4)例えば、カテーテル本体11において各易破断部50,51のうち近位側の易破断部50のみ設け遠位側の易破断部51については設けないようにしてもよい。例えば、遠位側吸引チューブ22の外周面に内腔22aと遠位側ガイドチューブ42の内腔42aとの間の境界部に向かって凹む凹み部を形成することが考えられる。この場合、遠位側吸引チューブ22に遠位側ガイドチューブ42が埋設されている領域(遠位側埋設領域)では、ガイドワイヤGのワイヤ導出部分49が吸引チューブ14から離れる側に曲げられることに伴いガイドワイヤチューブ15に負荷が生じた場合に、カテーテル本体11において易破断部51に相当する部分が破断するより先に、遠位側吸引チューブ22の周壁部47が凹み部を起点として両ルーメン17,18間で破断することとなる。ただ、かかる場合においても、近位側の易破断部50については、近位側吸引チューブ21の周壁部46(外層32)における両ルーメン17,18間の部分よりも先に破断させることができるため、周壁部46の破断を防止することができ、その結果周壁部46からの近位側ガイドチューブ41の離脱を防止することができる。
【0087】
(5)上記実施形態では、易破断部50,51を開口部38からガイドワイヤチューブ15の先端部までの範囲(ガイドワイヤチューブ15の軸線方向全域を含む範囲)に亘って形成したが、易破断部を開口部38からガイドワイヤチューブ15の軸線方向の途中位置までの範囲に形成してもよい。例えば、ガイドワイヤチューブ15(詳しくは遠位側ガイドチューブ42)の外周面における軸線方向の途中位置に造影機能を有する造影環を取り付ける構成が考えられる。造影環は、X線不透過性を有する材料により形成されており、例えばPt−Irからなる。かかる構成では、カテーテル本体11の易破断部が開口部38を起点として先端側に向かって破断する場合、その破断が造影環によって阻止され、造影環よりも先端側については破断されないこととなる。つまり、易破断部が開口部38から造影環の基端までの範囲にのみ形成されることとなる。
【0088】
このような構成によれば、易破断部に破断が生じた場合に、ガイドワイヤチューブ15における遠位側の一部については破断されることがないため、ガイドワイヤGの挿通状態を維持しつつ、吸引カテーテル10の操作性の低下を防止することができる。特に、体内において易破断部がガイドワイヤチューブ15の軸線方向全域で破断してしまうと、ガイドワイヤチューブ15によるガイドワイヤGの挿通状態を維持できなくなって、ガイドワイヤGに沿って吸引カテーテル10を操作できなくなる不都合が生じるおそれがあるが、上記の構成にすれば、かかる不都合が生じることを回避することが可能となる。
【0089】
(6)上記実施形態では、吸引チューブ14(近位側吸引チューブ21)において段差部37に開口部38(導出口)を形成し、同開口部38を近位側に向けて開口させたが、これを変更して、吸引チューブ14の外周面に開口部を形成し、同開口部を吸引チューブの径方向外側に向けて開口させてもよい。この場合であっても、ガイドワイヤGをガイドワイヤルーメンから近位側に導出させることが可能である。
【0090】
(7)上記実施形態では、吸引チューブ14(メインチューブに相当)の周壁部にガイドワイヤチューブ15が埋設されてなる吸引カテーテル10に対して本発明を適用したが、ガイドワイヤチューブがメインチューブの周壁部に埋設されてなるその他のカテーテルに対して本発明を適用してもよい。