(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コンクリートを調製する際、骨材は通常、湿潤状態で用いられる。その場合、コンクリートの単位水量は、添加する水の量と、骨材の表面に付着している水の量(表面水量)とを合わせた量とされる。この表面水量は、一般に、JIS A 1111にしたがって導かれる表面水率から求められる。
【0007】
ところが、骨材として上述したような低い品質の再生骨材を適用する場合は、天然細骨材を用いる場合には好適なフレッシュ性状が得られるはずの単位水量となるように水を添加しても、実際には所望とするフレッシュ性状が得られないことが多かった。例えば、コンクリートを圧送する際には、圧力中にコンクリートの粘性が増大してしまい、過剰な圧力を加える必要があるなど、圧送性が悪くなるという不都合が生じる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、品質が低い再生骨材を用いる場合であっても、好適なフレッシュ性状及びポンプ圧送性を容易に得ることができるコンクリート組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のように品質の低い再生骨材を用いた場合に所望のフレッシュ性状が得られなくなる要因について本発明者らが検討を行ったところ、品質の低い再生骨材は、内部の空隙が多いので、一見すると湿潤状態であっても更なる吸水を生じることが多いほか、原料となったコンクリートガラの物性により品質のばらつきが大きいので、吸水の程度も骨材によって大きく変化し易いことが一つの要因であることを見出した。
【0010】
そのため、再生骨材を適用する場合に、コンクリートに添加する水の量を天然骨材の場合と同程度とすると、再生骨材による水の吸収が更に生じてしまうので、見かけ上は好適な特性を得るために必要な単位水量としたにもかかわらず、実際には水の量が不足しており、その結果、粘性が過度に増大するなど、所望のフレッシュ性状が得られなくなると考えられる。
【0011】
本発明のコンクリート組成物の製造方法は、このような知見に基づいてなされたものであり、セメント成分、骨材、及び水を含むコンクリート組成物の製造方法であって、セメント成分、骨材及び水を混合する混合工程を有しており、骨材は、少なくとも、固化したコンクリートを砕いて得られる再生細骨材を含み、混合工程において、水の添加量を、コンクリート組成物が含むべき水の全量から、骨材の表面水率から求められる骨材の表面水量を引いた量とし、この際、少なくとも再生細骨材の表面水率を、当該再生細骨材に対応する天然細骨材のJIS A 1111の方法にしたがって測定された表面水率から、補正水率を引いた値とし、補正水率を、絶乾状態の再生細骨材の質量をMS
0、JIS A 1109の方法にしたがって表乾状態としたときの再生細骨材の質量をMS
1、この表乾状態とした再生細骨材に加圧しながら給水した後、常圧に戻して表面の水を取り除いたときの再生細骨材の質量をMS
2とし、且つ、絶乾状態の天然細骨材の質量をMN
0、JIS A 1109の方法にしたがって表乾状態としたときの天然細骨材の質量をMN
1、表乾状態とした天然細骨材に加圧しながら給水した後、常圧に戻して表面の水を取り除いたときの天然細骨材の質量をMN
2としたときの、下記式(1)で表されるW
R(%)とすることを特徴とする。
W
R(%)≧W
A/2 (1)
ここで、
W
A=[(MS
2−MS
1)/MS
0−(MN
2−MN
1)/MN
0]×100 (2)
【0012】
上記本発明のコンクリート組成物の製造方法では、混合工程で添加する水の量を決定する際、少なくとも再生細骨材について、表面水率を、再生細骨材に対応する天然細骨材のJIS A 1111の方法にしたがって測定された表面水率から、少なくとも補正水率(W
R(%))を引いた値とする。この補正水率W
Rは、W
A/2以上であり、このW
Aは、再生細骨材が、通常の方法で表乾状態とされてから、実際にはそこから更に給水し得る水の量に対応する表面水率から、天然細骨材の場合における同様の表面水率を引いたものに対応する。
【0013】
このように、本発明の製造方法によれば、少なくとも再生細骨材の表面水量を、補正水率の分だけ少なく見積もり、その分だけ添加する水の量を増やすことにより、再生細骨材により吸収される分の水を補充して、コンクリート組成物が、天然細骨材を用いる場合に好適であったのと同程度の水の含有量となるようにすることができる。
【0014】
したがって、本発明の製造方法によれば、環境への負荷を低減する観点から天然細骨材に代え、これよりも品質が低く、コンクリート組成物の調製後に更なる水の吸収を生じ易い再生細骨材を用いる場合であっても、好適なフレッシュ性状及びポンプ圧送性を有するコンクリート組成物を容易に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、品質が低い再生骨材を用いる場合であっても、好適なフレッシュ性状を容易に得ることができるコンクリート組成物の製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0018】
好適な実施形態に係るコンクリート組成物の製造方法は、セメント成分、骨材及び水を少なくとも混合する工程を有している。ここで、コンクリート組成物とは、少なくともセメント成分、骨材及び水を含む状態の組成物を意味し、骨材として細骨材のみを含む場合や粗骨材も更に含む場合など、いわゆるモルタル及びコンクリートの両方の状態を包含する。
【0019】
セメント成分としては、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩性、白色などの各種ポルトランドセメント、高炉スラグや通常のフライアッシュをポルトランドセメントに混合した混合セメント、エコセメント、超早強セメントや急硬セメント等が挙げられる。また、これらのセメントの複数を任意量混合したセメントも使用することができる。なかでも、セメントとしては、低熱ポルトランドセメント、または、中庸熱ポルトランドセメントが好ましい。
【0020】
本実施形態のコンクリート組成物は、少なくとも、骨材として再生細骨材を含む。再生細骨材としては、いったん固化した状態のコンクリートを砕いて得られるものであれば特に制限無く適用することができる。ここで、再生骨材には、JIS A5021で規定されるコンクリート用再生骨材H、JIS A5022で規定されるコンクリートに用いられる再生骨材M、及びJIS A5023で規定されるコンクリートに用いられる再生骨材Lという、骨材とともに含まれるモルタルの量に応じた3つの水準がある。本実施形態においては、再生細骨材としてこれらのいずれを適用することもできる。
【0021】
なかでも、再生骨材Hと比較して低品質である再生骨材M及び再生骨材Lに該当する再生細骨材を適用する場合、骨材の製造に要するエネルギーの低減や無駄となり易い微粉末の生成の抑制が可能となるので、環境に対する負荷を軽減する観点から好ましい。そして、本実施形態によれば、水の添加量を決定する際、少なくとも再生細骨材の表面水率を後述するような特定の条件を満たすようにすることから、これらの比較的品質が低い再生細骨材を適用する場合であっても、所望とするフレッシュ性状を有するコンクリート組成物を容易に得ることが可能となる。環境負荷を軽減しながら、フレッシュ性状の調整を特に容易化する観点からは、再生細骨材として、再生骨材Mに該当する再生細骨材を適用することが特に好適である。
【0022】
また、コンクリート組成物は、骨材として、再生細骨材に加えて粗骨材を更に含んでいてもよい。粗骨材としては、川砂利、海砂利、山砂利、砕石、スラグ砕石等、通常コンクリートにおける粗骨材として適用されるものを含有することができる。また、粗骨材としても、上述したようなコンクリート用再生骨材H、MやLに該当する再生骨材を適用してもよい。
【0023】
本実施形態のコンクリート組成物は、セメント成分、骨材及び水に加えて、他の混和剤を更に含有していてもよい。混和剤としては、コンクリートに適用される各種の混和剤を特に制限なく適用することができる。例えば、AE剤、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等が挙げられる。
【0024】
本実施形態のコンクリート組成物の製造方法では、上述したコンクリート組成物の構成成分を混合する工程(混合工程)において、水の添加量を、コンクリート組成物が含むべき水の全量から、骨材の表面水率から求められる骨材の表面水量を引いた量とする。
【0025】
本実施形態において、コンクリート組成物が含むべき水の全量とは、得られるコンクリート組成物中に含まれる水の合計量を意味し、所望とするコンクリートの単位水量に、コンクリート組成物の体積を掛け合わせた値がこれに該当する。なお、コンクリート組成物が含むべき水の全量には、骨材の内部に含浸されている水の量は含めない。
【0026】
一方、骨材の表面水量とは、骨材の表面に付着している水の量を意味する。この骨材の表面水量は、骨材の表面水率に、表乾状態の骨材の質量を掛け合わせた値である。骨材の表乾状態については詳細には後述するが、かかる表面水量を求める際には、JIS A 1109にしたがう表乾状態を適用する。
【0027】
骨材の表面水量は、コンクリート組成物に添加する全ての種類の骨材について求める。例えば、骨材として細骨材及び粗骨材の両方を含む場合は、各骨材について、それぞれの表面水率から表面水量を求め、それらを合計して骨材全体としての表面水量を求める。
【0028】
本実施形態において、水の添加量は、コンクリート組成物が含むべき水の全量から、骨材の表面水率から求められる骨材の表面水量を引いた量とするが、この際、少なくとも再生細骨材の表面水率は、次のようにして決定する。すなわち、再生細骨材の表面水率は、当該再生細骨材に対応する天然細骨材のJIS A 1111の方法にしたがって測定された表面水率から、補正水率を引いた値とする。
【0029】
ここで、「再生細骨材に対応する天然細骨材」とは、再生細骨材により置き換えられることが可能な天然細骨材である。すなわち、天然細骨材を再生細骨材に置き換える場合、再生細骨材としては、コンクリート組成物の調製において天然細骨材と置き換えても同程度の特性が得られるものが選ばれる。本実施形態において、再生細骨材に対応する天然細骨材としては、適用しようとしている再生細骨材によるそのような置き換えが可能な天然細骨材が全て含まれる。したがって、上述した天然細骨材の「表面水率」や、後述する天然細骨材の絶乾状態や表乾状態等の「質量」は、そのような条件に当てはまる天然細骨材のうちのいずれか一種を用いて算出することができる。以下、このような天然細骨材を、「対応天然細骨材」という。
【0030】
本実施形態において、再生細骨材の表面水率を決定する際の補正水率は、W
R(%)とする。このW
Rは、W
A/2以上の値であり、すなわち、補正水率を、W
A/2以上とすることを示している。そして、W
Aは、絶乾状態の再生細骨材の質量をMS
0(kg)、JIS A 1109の方法にしたがって表乾状態としたときの再生細骨材の質量をMS
1(kg)、表乾状態とした再生細骨材に加圧しながら給水した後、常圧に戻して表面の水を取り除いたときの再生細骨材の質量をMS
2(kg)とし、且つ、絶乾状態の対応天然細骨材の質量をMN
0(kg)、JIS A 1109の方法にしたがって表乾状態としたときの対応天然細骨材の質量をMN
1(kg)、表乾状態とした対応天然細骨材に加圧しながら給水した後、常圧に戻して表面の水を取り除いたときの対応天然細骨材の質量をMN
2(kg)としたときの、下記式(2)で表される値である。
W
A=[(MS
2−MS
1)/MS
0−(MN
2−MN
1)/MN
0]×100 (2)
【0031】
ここで、再生細骨材の「絶乾状態」とは、骨材の表面及び内部のいずれにも水が含まれていない状態であり、実際には、再生細骨材を定量となるまで乾燥させた状態を絶乾状態と見なすことができる。本実施形態においては、例えば、105±5℃で加熱しながら再生細骨材の経時的な質量変化を測定し、定量となるまで処理を行った場合を、絶乾状態と見なすことができる。
【0032】
再生細骨材の表乾状態とは、通常、骨材の内部は水が満たされているものの、表面には水が付着していない状態を意味する。
【0033】
本実施形態において、表乾状態として、JIS A 1109にしたがう表乾状態を適用する。JIS A 1109にしたがう表乾状態とは、再生細骨材を水中で給水させた後、再生細骨材の乾燥、及び再生細骨材をフローコーンに詰めた後にフローコーンを引き上げる操作を行った際、フローコーンの引き上げによって細骨材がはじめて崩れたときの状態を示す。
【0034】
このように、JIS A 1109にしたがう表乾状態とは、上記試験において細骨材がはじめて崩れたときの状態であることから、実際には内部に空隙が残っていたり、また表面に若干の水が付着していたりする場合があり、この状態は、「見かけ上の表乾状態」であると言える。
【0035】
一方、このように表乾状態とした再生細骨材に加圧しながら給水した後、常圧に戻して表面の水を取り除いたときの状態では、見かけ上の表乾状態とした再生細骨材に対し、更に加圧しながら給水を行うことによって、上記の表乾状態において再生細骨材の内部に残っていた空隙にまで水が含浸されることになる。したがって、この状態の再生細骨材は、本来の表乾状態、すなわち再生細骨材の内部は水が満たされ、表面には水が付着していない状態に極めて近い状態が得られるようになる。かかる表乾状態は、いわば「真の表乾状態」であると言うことができる。
【0036】
本実施形態において、このような真の表乾状態は、例えば次のようにして得ることができる。すなわち、まず、再生細骨材を加圧容器に入れた後、加圧容器内を水で満たす。次いで、加圧容器内を加圧し、容器内の圧力を5MPaまで上昇させる。加圧容器内の圧力が5MPaまで上昇したら、その後、容器内への加圧を終了し、降圧させる。そして、加圧終了後、5分が経過した時点で、乾布等を用いて再生細骨材の表面に付着した水を除去する。この作業を経て得られた再生細骨材を、真の表乾状態にあるとみなすことができる。
【0037】
上述した絶乾状態や表乾状態(見かけ上の表乾状態及び真の表乾状態)の定義は、対応天然細骨材においても同じである。
【0038】
本実施形態において、補正水率は、W
R(%)、すなわち、W
A/2以上の値とするが、この補正水率が大きすぎると、水の添加量が過度に大きくなって、得られるコンクリート組成物の水分量が多くなりすぎ、所望のフレッシュ性状が得られなくなるおそれがある。そこで、補正水率の上限は、得られるコンクリート組成物が、所望とする単位水量から15kg/m
3を加えた値を超える単位水量とならない量とすることが好ましい。このような条件を満たし易くする観点からは、補正水率W
R(%)の上限は、2.5W
A(%)であると好ましく、2W
A(%)であるとより好ましい。
【0039】
このように、本実施形態においては、水の添加量を決定する際に、少なくとも再生細骨材の表面水量を、対応天然細骨材のJIS A 1111の方法にしたがって測定された表面水率から上記補正水率W
Rを引いて得られる表面水率を用いて算出する。
【0040】
通常、コンクリート組成物を調製する際には、水の添加量は、コンクリート組成物が含むべき水の量から、骨材の表面水量を引いた水の量として計算される。細骨材として通常の天然細骨材を適用する場合、上記のような見かけ上の表乾状態から更なる水分吸収が生じる量はわずかであるため、見かけ上の表乾状態で求めた表面水量に基づいて水の添加量を決定しても、得られるコンクリート組成物において、所望とする水の含有量からのずれは少ない。
【0041】
ところが、天然細骨材に代えて再生細骨材を適用する場合、再生細骨材は内部に空隙等を多数有していることから、見かけ上の表乾状態としても、無視できない量の水分吸収が更に生じるため、対応天然細骨材を用いる場合と同様の水の添加量とすると、得られたコンクリート組成物における水分量が所望の量よりも実際には不足してしまい、目的とするフレッシュ性状が得られなくなる。
【0042】
これに対し、本実施形態では、対応天然細骨材のJIS A 1111の方法にしたがって測定された表面水率から上記の補正水率W
Rを引くことによって、天然細骨材の場合と比べて再生細骨材によって余分に吸収される分の水分量をあらかじめ差し引いて、再生細骨材の表面水量を算出することができる。
【0043】
したがって、本実施形態によれば、天然細骨材に代えて再生細骨材を適用する場合であっても、得られるコンクリート組成物の水分量が好適な範囲となるように水の添加量を設定することが可能であり、所望のフレッシュ性状及びポンプ圧送性を有するコンクリート組成物を容易に得ることができる。
【0044】
特に、本実施形態では、かかる補正水率W
Rを求めるためのW
Aを算出する際に、再生細骨材についての、真の表乾状態と見かけ上の表乾状態との水分量の差、すなわち、見かけ上の表乾状態から更に吸収され得る水の量を考慮するだけでなく、対応天然細骨材の場合の同様の水の量を求めて、これを再生細骨材の場合の値から引いて補正水率を算出している。こうすることで、従来必ずしも大きくは無かったとはいえ、天然細骨材の場合にも、見かけ上の表乾状態から更なる水分吸収が生じる可能性があったところ、その分も差し引いて表面水量を算出することが可能となるので、好適なフレッシュ性状を有するコンクリート組成物を調製することが一層容易となる。
【0045】
そして、一度上記の補正水率W
Rを決定しておけば、同様の再生細骨材を用いる場合であれば、その補正水率W
Rを用いて水の添加量を同様に決定することができるので、コンクリート組成物を製造するたびに、再生細骨材及び対応天然細骨材を用いて補正水率を求める必要が無い。したがって、たとえば、同一の現場で同様の材料を用いてコンクリート組成物を製造する場合は、はじめに上記の補正水率を求めておけば、その後は得られた補正水率に基づいて水の添加量を決定すればよく、所望のフレッシュ性状を有するコンクリート組成物を調製することが極めて容易となる。
【0046】
なお、上述した実施形態においては、再生細骨材についてのみ、表面水率を求める際に上述した補正水率を考慮したが、例えば、天然粗骨材に代えて再生粗骨材を用いる場合にも、細骨材を粗骨材に置き換えて上記と同様にして補正水率を決定し、それによって水の添加量を調整するようにしてもよい。
【0047】
通常、粗骨材は、天然材料から再生材料に置きかえた場合の余分な水分の吸収は、細骨材の場合ほどは生じないので、天然粗骨材に代えて再生粗骨材を用いる場合は、必ずしも補正水率を考慮しなくてもよい。ただし、例えば、所望とするフレッシュ性状が厳密な場合など、水分量のずれに対する許容が小さい場合は、細骨材の場合と同様に補正水率を考慮して再生粗骨材の表面水量を決定することによって、好適なフレッシュ性状を有するコンクリート組成物が得られ易くなる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されることは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。
【実施例】
【0049】
[補正水率の測定]
(再生細骨材及び天然細骨材の準備)
まず、表1に示す再生細骨材M及び天然細骨材をそれぞれ準備した。
【表1】
【0050】
(圧力吸水試験)
上記で得た各再生細骨材M及び天然細骨材(以下の手順の説明では、単に「試料」と表記する。)のそれぞれについて、以下のような圧力吸水試験を行った。圧力吸水試験は、以下の手順で行った。
(1)準備した試料の表面の水分を、乾布で取り除いた。なお、用いる試料の量は、かさ密度で1L程度とした。なお、この状態が、細骨材のJIS A 1109の方法による表乾状態に該当する。
(2)試料を計量(A
1(g))した後、加圧容器に入れ、容器内部を水で満たした。
加圧容器としては、容器及びふたからなり、加圧ポンプによる内部の加圧が可能であり、試験時の圧力に耐えうる強固な材質及び構造であり、加圧時に試験の妨げとなるような変形をしないものを用いた。また、加圧容器には、内部に水を入れることが出来る配管、及び、内部の圧力を保持できるような仕切り弁を有するものを用いた。
(3)加圧容器のふたを閉め、ボルト締めした後、容器内及びふたの配管の中まで水で満たし、加圧容器、水及び試料の質量を測定した(B
0(g))。
(4)加圧ポンプをセットして、容器内部が1.0MPaの圧力となるまで加圧した。その後、3分間圧力を保ち、加圧容器、水及び試料の質量(B
1(g))を測定した。以後、圧力を1MPaずつ大きくするとともに、1MPaごとに3分間の圧力保持及びその状態で加圧容器及び試料の質量(B
2〜5(g))の測定を行い、最終的に5MPaまで加圧を行った。
(5)除圧し、除圧してから15秒、30秒、1分、2分、3分、4分、5分、10分の時点での加圧容器、水及び試料の質量(B
6〜13(g))をそれぞれ測定した。
(6)加圧容器から試料を取り出し、乾布にて表面の水分を取り除いた後、試料の質量を測定した。
(7)試料を定量となるまで乾燥させ、質量を測定した(A
dry(g))。
【0051】
上記の圧力吸水試験の結果を、表2に示す。表2中、上記で測定したA
1、A
dry、B
0〜13を示すととともに、B
0〜13の各時点での吸水による試料の質量の増加分(B
n−B
0(g))並びに、B
0〜13の各時点での吸水率Q
0〜13(%)を示す。なお、吸水率は、下記式(2)にしたがって求めた。
Q(%)=[A
1+(B
n−B
0)−A
dry/A
dry]×100 (2)
【0052】
【表2】
【0053】
(補正水率の算出)
表2に示した値のうち、A
1がJIS A 1109の方法にしたがって表乾状態としたときの再生細骨材の質量(MS
1)又は天然細骨材の質量(MN
1)に該当し、A
dryが絶乾状態の再生細骨材の質量(MS
0)又は天然細骨材の質量(MN
0)に該当する。また、加圧吸水試験において、各試料は、除圧後、5分が経過(5MPa)まで昇圧した時点で、吸水率がほぼ一定となったことから、この時点での試料の質量(A
1+(B
12−B
0))を、JIS A 1109の方法にしたがって表乾状態とした再生細骨材に加圧しながら給水した後、常圧に戻して表面の水を取り除いたときの再生細骨材の質量(MS
2)又は天然細骨材の質量(MN
2)とした。
【0054】
そして、補正水率W
Rは、W
R≧W
A/2(式(1))であり、上記の試験の結果から、W
Aは、[(MS
2−MS
1)/MS
0−(MN
2−MN
1)/MN
0]×100=1.18(%)と求められるので、再生細骨材Mを用いる場合の補正水率W
Rは、0.59%以上と算出された。
【0055】
[フレッシュ性状の評価及びポンプ圧送試験]
(コンクリート組成物の調製)
表3に示すコンクリート組成物用の材料を準備し、それらを、表4に示すような配合のコンクリート組成物が得られるように混合して、実施例1、比較例1及び参考例1のコンクリート組成物をそれぞれ準備した。なお、実施例1及び比較例1で用いた再生細骨材Mは、上記で補正水率を求めた再生細骨材Mと同じである。
【0056】
表4中、水の単位量は、得られたコンクリート組成物の単位水量であり、骨材の表面水量に添加した水の量を加えた水分の合計量(kg)を、単位体積(m
3)で除した値がこれに該当する。そして、実施例1においては、表4に示す所望の単位水量を得るための水の添加量を決定する際に、再生細骨材Mの表面水量を、天然細骨材の表面水率から補正水率を引いた表面水率を用いて算出した。この補正水率は、上述した「補正水率の測定」の結果をふまえて、「1%」とした。なお、表4中、「W/C」は、水/セメントの質量比(水/セメント比)を示し、「s/a」は、細骨材率(コンクリート中の全骨材量に対する細骨材量の絶対容積比)を示す。
【表3】
【表4】
【0057】
(フレッシュ性状の評価)
実施例1、比較例1及び参考例1の各コンクリート組成物について、JIS A 1101に準拠するスランプ試験、及び、JIS A 1128に準拠する空気量試験を行った。得られた結果を表5に示す。なお、表5中には、試験時のコンクリート組成物の温度(コンクリート温度)も併せて示した。
【表5】
【0058】
表5に示すように、補正水率を考慮した再生細骨材の表面水率を用いた実施例1では、補正水率を考慮しなかった比較例1に比べて、天然細骨材を用いた参考例1に近いフレッシュ性状が得られることが確認された。
【0059】
(ポンプ圧送試験)
実施例1、比較例1及び参考例1の各コンクリート組成物を、配管及びフレキシブルホースを通して輸送する試験(ポンプ圧送試験)を行った。ポンプ圧送試験では、コンクリート組成物を、輸送元のポンプ車に直接繋いだ配管にテーパー管(φ5インチからφ4インチ)を介してφ4インチの配管(30m)を繋ぎ、さらに、φ4インチのフレキシブルホース(7m)を繋いだ経路において、ポンプ車の油圧(P
0)、φ4インチの配管の3箇所(0m、15m、30m)での配管内圧力(P
1、P
2、P
3)の測定を行った。
【0060】
ポンプ圧送試験の結果、実施例1のコンクリート組成物は、参考例1の場合と同程度に、ポンプ車の油圧P0を極端に増減させることなく、安定して上記経路を輸送することが可能であった。一方、比較例1のコンクリート組成物は、ポンプ車の油圧P0が安定した状態で輸送を行うことが難しく、当該ポンプの油圧最大値まで急上昇するときがあるなど、閉塞の予兆となる現象を生じていた。
【0061】
さらに、上記ポンプ圧送試験により得られた結果を、
図1及び2に示す。
図1は、実施例1、比較例1及び参考例1の各コンクリート組成物を用いた圧送試験における、輸送されたコンクリートの吐出量(実吐出量)と、そのときの油圧P0との関係を示すグラフである。また、
図2は、実施例1、比較例1及び参考例1の各コンクリート組成物を用いた圧送試験における、輸送されたコンクリートの実吐出量と、そのときの圧力損失(P1とP3との圧力差をその間の距離(30m)で除した値)との関係を示すグラフである。
【0062】
図1及び2に示されるように、実施例1のコンクリート組成物では、実吐出量に対するポンプ圧力又は圧力損失の傾きが、参考例1と同程度であった一方、比較例1のコンクリート組成物では、この傾きが大きいことが確認された。
【0063】
以上の結果から、補正水率を考慮した再生細骨材の表面水率を適用して得られた実施例1のコンクリート組成物によれば、補正水率を考慮しなかった比較例1に比べて、天然細骨材を用いた参考例1に近いポンプ圧送性が得られることが判明した。