【実施例1】
【0018】
<画像形成装置の概要>
図1(a)は、電子写真プロセスを用いた画像形成装置の概略構成図であり、画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタの概略構成を示している。画像形成装置本体100(以下、「本体100」という)は、記録紙Sを収納するカセット102を有する。そして、カセット102の記録紙Sの有無を検知するカセット有無センサ103、複数個のマイクロスイッチで構成され、カセット102の記録紙Sのサイズを検知するカセットサイズセンサ104を有する。また、カセット102から記録紙Sを繰り出す給紙ローラ105等が設けられている。また、給紙ローラ105の記録紙Sの搬送方向の下流側には、記録紙Sを同期搬送するレジストローラ対106が設けられている。
【0019】
レジストローラ対106の記録紙Sの搬送方向の下流側には、レーザスキャナ部107からのレーザ光に基づいて、記録紙S上にトナー像を形成する画像形成部108が設けられている。更に、画像形成部108の記録紙Sの搬送方向下流側には、記録紙S上に形成されたトナー像を加熱定着する、本実施例の加熱定着装置である定着器109が設けられている。定着器109の記録紙Sの搬送方向下流側には、排紙部の搬送状態を検知する排紙センサ110、記録紙Sを排紙する排紙ローラ111、記録の完了した記録紙Sを積載する積載トレイ112が設けられている。記録紙Sの搬送基準は、記録紙Sの画像形成装置の搬送方向に直交する方向の長さ、つまり記録紙Sの幅に対して中央になるように設定されている。
【0020】
レーザスキャナ部107は、後述する外部装置131から送出される画像信号(画像信号VDO)に基づいて、変調されたレーザ光を発光するレーザユニット113を有する。また、レーザスキャナ部107は、レーザユニット113からのレーザ光を、後述する感光ドラム117上に走査するためのポリゴンモータ114、結像レンズ115、折り返しミラー116等により構成されている。画像形成部108は、公知の電子写真プロセスに必要な、感光ドラム117、1次帯電ローラ119、現像器120、転写帯電ローラ121、クリーナ122等から構成されている。
【0021】
定着器109は、定着フィルム109a、加圧ローラ109b、定着フィルム109a内部に設けたセラミックヒータ109c(以下、「ヒータ109c」ともいう)、セラミックヒータの表面温度を検知する温度検知素子であるサーミスタ109dから構成される。また、本実施例では、メインモータ123は、給紙ローラ105に対しては給紙ローラクラッチ124を介して、レジストローラ対106に対してはレジストローラ125を介して、駆動力を与えている。更に、メインモータ123は、感光ドラム117を含む画像形成部108の各ユニット、定着器109、排紙ローラ111にも駆動力を与えている。
【0022】
エンジンコントローラ126は、レーザスキャナ部107、画像形成部108、定着器109による画像形成プロセスの制御、記録紙の搬送制御等を行っている。なお、エンジンコントローラ126は、内部にCPUを有し、画像形成の制御等を行う。更に、CPUは、不図示のROMとRAMを有している。ROMは、画像形成を制御するプログラムやデータを格納したメモリである。また、RAMは、CPUが実行する制御プログラムが一時的に情報を保存するために使用するメモリである。
【0023】
ビデオコントローラ127は、パーソナルコンピュータ等の外部装置131と汎用の外部インタフェース(セントロニクス、RS232C等)で接続されている。ビデオコントローラ127は、外部インタフェースを介して、外部装置131から送信されてくる画像情報をビットデータに展開する。そして、ビデオコントローラ127は、展開されたビットデータを画像信号(画像信号VDO)として、内部インタフェースを介してエンジンコントローラ126へ送出する。更に、ビデオコントローラ127は、例えば、ハードディスク装置等で構成されるデータ記憶部133を有しており、必要に応じて、画像情報をデータ記憶部133に記憶する。ビデオコントローラ127も、制御部として、エンジンコントローラ126と同様に、内部にCPU、ROM、RAMを有し、インタフェースを介してのデータの送受信や、データ記憶部133の制御を行う。また、エンジンコントローラ126とビデオコントローラ127を一体にして、1つのCPUで制御することも可能である。空冷ファン129は、空冷及び本体100内部を外部より高圧に保持する。
【0024】
電源回路部132は、商用交流電源からの電力供給により、本体100内で必要な直流電圧を生成し、本体100内の装置や回路等の負荷に供給するスイッチング電源である。電源回路部132は、スイッチング電流の過電流状態による定格電流値の超過や、回路構成部品の異常発熱による部品故障を防止するため、
図10で説明した低入力電圧保護回路(不図示)を有している。低入力電圧保護回路は、商用交流電源からの入力電圧が低下したことを検知すると、電源回路部132から本体100内の装置や回路への電力供給を停止させる。
【0025】
(定着器109の概要)
図1(b)は、加熱装置である定着器109の断面図である。定着器109は、加熱体としての筒状のフィルム(筒状のベルトでもよい)109aと、フィルム109aを介して、ヒータ109cと共に、定着ニップ部Nを形成する加圧体としての加圧ローラ109bを有する。更に、フィルム109aの内面に接触して、ヒータ109cが設けられている。フィルム109aのベース層の材質としては、ポリイミド等の耐熱樹脂、又は、ステンレス等の金属を用いることができる。加圧ローラ109bは、鉄やアルミニウム等の材質の芯金201と、シリコーンゴム等の材質の弾性層202を有する。ヒータ109cは、耐熱樹脂製の保持部材203に保持されている。保持部材203は、フィルム109aの回転を案内するガイド機能も有している。加圧ローラ109bは、不図示のモータから動力を受けて矢印方向に回転し、加圧ローラ109bが回転することによって、フィルム109aも従動して矢印方向に回転する。
【0026】
ヒータ109cは、セラミック製のヒータ基板204と、ヒータ基板204上に発熱抵抗体を用いて形成された発熱体H1及びH2と、発熱体H1及びH2を覆う絶縁性の表面保護層205(本実施例ではガラス)から構成されている。ヒータ基板204の裏面側の、画像形成装置で利用可能な最小サイズ紙(本実施例では、例えば封筒サイズ(110mm幅))の通紙領域には、温度検知素子であるサーミスタ109dが当接している。サーミスタ109dの検知温度に応じて、商用交流電源から発熱体H1及びH2へ供給される電力が制御される。トナー画像を担持する記録紙Sは、発熱体H1、H2を有するヒータ基板204及び表面保護層205からなるニップ部形成部材と、弾性層202によって形成される定着ニップ部Nで、用紙搬送方向に挟持搬送されつつ、加熱されて定着処理される。ヒータ基板204の裏面側には、ヒータ109cが異常昇温したときに作動して、発熱体H1及びH2への給電ラインを遮断するサーモスイッチ等の素子206も当接している。素子206も、サーミスタ109dと同様に、最小サイズ紙の通紙領域に当接している。金属製のステー207は、保持部材203に不図示のバネの圧力を加える。
【0027】
(セラミックヒータ制御の概要)
図2は、本実施例における定着器109のセラミックヒータ109cの駆動を制御する回路構成を示した図である。
図2において、ヒータ駆動制御回路300(破線部)は、セラミックヒータ109cの駆動を制御する回路である。画像形成装置に接続された商用交流電源(AC)301からは、リレー302を介して、セラミックヒータ109cを構成する発熱体H1、H2へ電力が供給され、これにより、発熱体H1、H2は発熱する。発熱体H1、H2への電力供給は、トライアックTR1のオン/オフにより制御される。抵抗303、304は、トライアックTR1のためのバイアス抵抗である。フォトトライアックカプラ305は、一次、二次間の沿面距離を確保するためのデバイスである。フォトトライアックカプラ305の発光ダイオードに電流が流れると、トライアックTR1がオンされ、発熱体H1、H2へ電力が供給される。抵抗306は、フォトトライアックカプラ305への電流を制限する抵抗である。トランジスタ307によりフォトトライアックカプラ305をオン/オフする。トランジスタ307は、エンジンコントローラ126(一点鎖線部)内部のCPU309から出力されるTRM信号に従って動作する。トランジスタ307のベース端子に印加されるTRM信号がハイレベルになり、トランジスタ307がオン状態となって、フォトトライアックカプラ305の発光ダイオードに電流が流れると、トライアックTR1がオンされ、発熱体H1、H2へ電力が供給される。トランジスタ307のベース端子に印加されるTRM信号がハイレベルからローレベルになると、トランジスタ307はオフ状態となり、フォトトライアックカプラ305の発光ダイオードには電流が流れなくなる。トライアックTR1は、商用交流電源(AC)301からの電力が供給されている間、即ち電流が流れなくなり、入力電圧が0Vになるまでは、オン状態が継続され、発熱体H1、H2には電力が供給される。
【0028】
また、商用交流電源(AC)301の入力電圧は、ゼロクロス検知回路308にも入力される。ゼロクロス検知回路308は、商用交流電源の入力電圧がある閾値以下であることを検知すると、エンジンコントローラ126内部のCPU309に対して、パルス信号(以下、「ZEROX信号」という)を出力する。CPU309は、ZEROX信号のパルスの立ち上がりエッジ、又は立ち下がりエッジを検知し、位相制御又は波数制御に基づいたタイミングでTRM信号を出力することにより、トライアックTR1のオン/オフを制御する。
【0029】
トライアックTR1のオン状態時に発熱体H1、H2に流れるヒータ電流は、カレントトランス310によって電圧に変換され、ブリーダ抵抗311を介して、電流検知回路312に入力される。電流検知回路312は、電圧に変換されたヒータ電流波形を電流の平均値又は実効値に変換し、CURRMS信号としてCPU309に出力する。
【0030】
セラミックヒータ109cの温度は、サーミスタ109dにより検知されて、TH信号としてCPU309に出力され、CPU309は、TH信号で示される温度とセラミックヒータ109cの目標温度を比較する。そして、CPU309は、セラミックヒータ109cを構成する発熱体H1、H2に商用交流電源の電源電圧をすべて供給した場合の電力と、比較結果に基づいて発熱体H1、H2に供給するべき電力との比である供給電力比を算出する。そして、算出された供給電力比を、対応する位相角(位相制御の場合)、又は波数(波数制御の場合)に換算し、位相制御又は波数制御に基づいて、CPU309はトランジスタ307にTRM信号を出力し、トライアックTR1のオン・オフを制御する。
【0031】
<画像形成装置の加熱制御>
定着器109の加熱制御については、位相制御により行われる場合、波数制御により行われる場合、そして位相制御と波数制御を組み合わせたハイブリッド制御により行われる場合がある。以下では、これら3種類の加熱制御方法について、説明する。
【0032】
(1)位相制御による加熱制御
定着器109の加熱制御が位相制御により行われる場合について説明する。位相制御の場合、例えば、ヒータに供給する電力比(デューティD(%))と位相角(α(°))とを対応付けた表1をCPU309内のROMに有しており、表1の内容に基づいて、CPU309は、定着器109の加熱制御を行う。
【0033】
【表1】
【0034】
定着器109に与える熱量の算出は、到達させるべき目標温度とサーミスタ109dにより検知された温度に基づいて、ゼロクロス検知回路308よりZEROX信号が出力される度に行われる。本実施例では、フィードバック系制御の一種であるPI制御を用いて説明する。PI制御は、比例(Proportional)制御+積分(Integral)制御で表わされ、ヒータ109cに電力供給するデューティD(供給電力比D)を決定する。そして、決定されたデューティDに応じて、エンジンコントローラ126のCPU309が、位相制御に基づいて、スイッチング素子であるトライアックTR1をオン・オフすることにより、より精細な温度調整を行う。
【0035】
図3(a)、(b)は、供給電力比Dに応じて、ヒータ109cに流れるヒータ電流波形(太い実線で表示)とTRM信号を示した図であり、αDは、供給電力比Dに対応する位相角を示す。
図3(a)は、供給電力比Dが75%の場合のヒータ電流波形を、
図3(b)は供給電力比Dが25%の場合のヒータ電流波形を示している。
【0036】
図3(a)において、CPU309は、供給電力比Dが75%になるタイミングで、TRM信号をハイレベルにする。その結果、トランジスタ307がオン状態となり、フォトトライアックカプラ305の発光ダイオードに電流が流れると、トライアックTR1がオンされる。表1より、供給電力比Dが75%のときの位相角αは66.17°なので、CPU309は、位相角αが66.17°になるタイミングで、TRM信号をハイレベルにする。TRM信号がハイレベルになると、トライアックTR1がオン状態になり、セラミックヒータ109cに電力供給が開始される。トライアックTR1は、入力電圧が0Vになるゼロクロスポイントまで給電状態が維持され、ヒータ109cの電流波形は、
図3(a)で示した波形になる。
【0037】
図3(b)も、
図3(a)と同様に、CPU309は、供給電力比Dが25%になるタイミングでTRM信号をハイレベルにすることにより、トライアックTR1をオン状態にする。表1から、供給電力比Dが25%のときの位相角αは113.83°なので、CPU309は、位相角αが113.83°になるタイミングで、TRM信号の出力をハイレベルにする。
【0038】
本実施例におけるPI制御を用いた供給電力比Dは、以下の式(1)により算出される。
供給電力比D=P制御値+I制御値 (1)
供給電力比Dは、電流波形の半周期である1半波を80に分割し、1.25%刻みで制御される。式(1)におけるP制御値は、比例制御の制御値であり、本実施例では、式(2)によって求めることができる。
P制御値=Kp×ΔT (2)
式(2)において、Kpは比例ゲインであり、温度オーバーシュートや温度安定性を考慮し、適切な値が設定される。また、ΔTは、ヒータ109cの目標温度とサーミスタ109dによる検知温度との差分であり、目標温度から現在の検知温度を減算することにより算出される。
【0039】
式(1)におけるI制御値は、積分制御の制御値であり、一定期間にわたるΔTの積分値、すなわち目標温度値からのドリフトを補正するもので、P制御における供給電力比Dにオフセットとして付与する。本実施例では、エンジンコントローラ126のCPU309に、ヒータ109cの目標温度とサーミスタ109dによる検知温度との大小関係の履歴を積分するカウンタを保持している。CPU309は、100msec(ミリ秒)毎に目標温度と検知温度との大小関係を判断し、目標温度の方が高ければカウンタをインクリメントし、目標温度の方が低ければカウンタをデクリメントする。その結果、カウンタが6以上になると、I制御値をインクリメントしてカウンタをリセットし、カウンタが−6以下となると、I制御値をデクリメントし、カウンタをリセットする。
【0040】
また、CPU309は、発熱体H1、H2に供給する供給電力比Dを算出する際に、電流検知回路312から出力されるCURRMS信号に基づいて、上限の供給電力比を算出する。そして、CPU309は、その上限の供給電力比である最大供給可能電力比Dmax以下の電力がヒータ109cに供給されるように、制御を行う。最大供給可能電力比Dmaxは、電流検知回路312からCURRMS信号として出力される電流値Irmsと、サーミスタ109dの検知結果に基づいて投入される供給電力比Dと、最大供給可能電流値Ilimitとを用いて、以下の式(3)から算出される。
Dmax=(Ilimit/Irms)
2×D (3)
なお、式(3)において、最大供給可能電流値Ilimitは、本体100に接続された商用交流電源の定格電流値から、電源回路部132に供給される最大電流値を差し引いた、ヒータ109cに供給可能な許容電流値を指す。例えば、商用交流電源が100V系の場合には、最大供給可能電流値Ilimitは、商用交流電源の定格電流値15A(アンペア)から、電源回路部132へ供給される最大電流値5Aを差し引いた10Aとなる。
【0041】
図3(c)は、供給電力比Dに応じて、ヒータ109cに流れるヒータ電流波形(太い実線で表示)、TRM信号、ZEROX信号を示した図であり、αDは、供給電力比Dに対応する位相角、αDmaxは、最大供給可能電力比Dmaxに対応する位相角を示す。
図3(c)の下段のZEROX信号の波形は、ゼロクロス検知回路308が、商用交流電源の入力電圧がある閾値以下の電圧になったことを通知するために、CPU309に対してパルス信号として出力するゼロクロス信号である。
【0042】
CPU309は、サーミスタ109dによって検知された温度に基づいて、セラミックヒータ109cを構成する発熱体H1、H2に供給するべき供給電力比Dを算出する。CPU309は、算出された供給電力比Dを、前述した表1を用いて、対応する位相角に変換する。そして、CPU309は、ゼロクロス信号の立ち上がり又は立ち下がりエッジを同期タイミングとして、変換された位相角のタイミングに合わせて、TRM信号の出力をハイレベルにする。
【0043】
CPU309は、式(3)により、最大供給可能電力比Dmaxを算出することができる。本実施例の位相制御では、最大供給可能電力比Dmaxに対応する位相角αDmaxを超えた位相角αDによる電力供給を禁止している。従って、位相制御範囲はαDmax〜180度であり、供給電力比Dは0%(位相角が180度の場合)〜Dmax(位相角がαDmaxの場合)までの範囲となる。
【0044】
(2)波数制御による加熱制御
定着器109の加熱制御が波数制御により行われる場合について説明する。波数制御では、交流電源の半波単位で給電制御が行われる。
図4は、波数制御におけるヒータ109cへの電力供給パターンを示した図で、縦軸は制御レベル(LV1〜LV13)を、横軸は電力供給パターンを示し、実線で描かれた半波部分はヒータ109cに電力が供給される期間を示す。波数制御の場合、例えば
図4に示すような半波単位でヒータ109cへの電力供給のオン・オフを行う制御パターンデータを、CPU309内のROMに有しており、CPU309は、
図4の制御パターンに基づいて、定着器109の加熱制御を行う。
図4の例では、波数制御の1制御周期は15半波であり、
図4では、半波を1〜15で表示している。そのため、定着器109のヒータ109cに供給される電力量は、到達させるべき目標温度とサーミスタ109dにより検知された温度に基づいて、1制御周期である15半波周期毎に算出される。波数制御では、位相制御の場合と同様に、PI制御によりヒータ109cに電力供給するデューティD(供給電力比D)を決定する。そして、決定されたデューティDに応じて、エンジンコントローラ126のCPU309がトライアックTR1を波数制御によりオン・オフすることにより、より精細な温度調整が行われる。
【0045】
波数制御における供給電力比Dは、位相制御の場合と同様に、式(1)にて算出される。そして、算出された供給電力比Dは、1制御周期を13の制御パターンに分割した制御レベル(LV1〜LV13)に変換され、制御レベルに基づいて温度制御が行われる。
【0046】
波数制御における最大供給電力比Dmaxは、位相制御の場合と同様に、前述の式(3)により算出される。即ち、最大供給電力比Dmaxは、電流検知回路312からCURRMS信号として出力される電流値Irmsと、サーミスタ109dの検知結果に基づいて投入される供給電力比Dと、最大供給可能電流値Ilimitを用いて、式(3)により算出される。なお、波数制御の場合、式(3)中の電流値Irmsは、1制御周期である15半波の平均値である。そのため、CPU309は、電流検知回路312からCURRMS信号として出力される15半波分の電流値Irmsを記憶しておき、電流値Irmsの平均値を算出する必要がある。
【0047】
(3)ハイブリッド制御による加熱制御
定着器109の加熱制御がハイブリッド制御により行われる場合について説明する。ハイブリッド制御とは、前述した位相制御と波数制御を組み合わせた制御のことであり、本実施例におけるハイブリッド制御では、2半波を1組にして、1組の半波においては同一位相角で給電制御が行われる。表2は、ハイブリッド制御での制御レベル、ヒータ109cに供給する電力比(単位:%)、及び1制御周期中の各半波における電力比を対応付けた表の一例である。CPU309は、表2をROMに有しており、表2の内容に基づいて、定着器109の加熱制御を行う。表2に示すように、ヒータ109cに供給する電力比に対応する制御LV(制御レベル)はLV0〜LV40の41段階あり、CPU309は、供給する電力比に応じて制御LVを決定する。表2の例では、ハイブリッド制御の1制御周期を4全波(=8半波)とし、表2では、8半波をcount1〜count8で表示している。そのため、定着器109のヒータ109cに供給される電力量は、到達させるべき目標温度とサーミスタ109dにより検知された温度に基づいて、1制御周期である4全波(=8半波)周期毎に算出される。表2に示すように、ハイブリッド制御では、各々の半波(count1〜count8)毎に、ヒータ109cに対し、細かな電力供給が可能である。
【0048】
【表2】
【0049】
図5は、ハイブリッド制御時にヒータ109cに流れる電流波形を示した図であり、
図5(a)は、制御LVがレベル20(L20)の場合の電流波形、
図5(b)は制御LVがレベル38(L38)の場合の電流波形を示している。
図5(a)に示す制御LVがレベル20の場合の電力比は表2より50%であり、1制御周期のcount1〜count8までの8半波において、電力比が55%、55%、45%、45%、55%、55%、45%、45%の電力供給が行われる。電力比が55%、45%の場合の位相角は、表1よりそれぞれ85.49°、94.51°であり、
図5(a)に示すように、CPU309は、位相角が85.49°、94.51°となるタイミングで、ヒータ109cに電力供給されるように、給電制御を行う。
図5(b)に示す制御LVがレベル38の場合の電力比は表2より95%であり、1制御周期のcount1〜count8までの8半波において、電力比が100%、100%、90%、90%、100%、100%、90%、90%の電力供給が行われる。電力比が100%、90%の場合の位相角は、表1よりそれぞれ0°、46.6°であり、
図5(b)に示すように、CPU309は、位相角が0°、46.6°となるタイミングで、ヒータ109cに電力供給されるように、給電制御を行う。
【0050】
ハイブリッド制御における供給電力比Dは、位相制御や波数制御の場合と同様に、式(1)式にて算出される。そして、算出された供給電力比Dは、1制御周期を41の制御パターンに分割した制御レベル(LV0〜LV40)に変換され、制御レベルに基づいて温度制御が行われる。
【0051】
ハイブリッド制御における最大供給電力比Dmaxは、位相制御や波数制御の場合と同様に、前述の式(3)により算出される。即ち、最大供給電力比Dmaxは、電流検知回路312からCURRMS信号として出力される電流値Irmsと、サーミスタ109dの検知結果に基づいて投入される供給電力比Dと、最大供給可能電流値Ilimitを用いて、式(3)により算出される。なお、ハイブリッド制御の場合、式(3)中の電流値Irmsは、1制御周期である4全波(=8半波)の平均値である。そのため、CPU309は、電流検知回路312からCURRMS信号として出力される8半波分の電流値Irmsを記憶しておき、電流値Irmsの平均値を算出する必要がある。
【0052】
以上、定着器109の加熱制御方式について、位相制御、波数制御、及びハイブリッド制御について説明した。いずれの制御方式においても、
図2に示す回路を使用し、供給電力比Dは式(1)により算出され、最大供給電力比Dmaxは式(3)により算出される。以下の説明においては、位相制御を例にして説明を行い、必要に応じて、波数制御、ハイブリッド制御の場合についての説明を行うものとする。ところで、制御方式により1制御周期の半波の数が異なる。そのため、式(3)において用いられる電流値Irmsは制御方式により異なり、位相制御の場合には半波毎に測定された電流値が用いられ、波数制御及びハイブリッド制御の場合には、1制御周期における電流値の平均値が用いられる。
【0053】
<商用交流電源の入力電圧低下の検知方法>
図6(a)、(b)は、商用交流電源の入力電圧低下の検知方法を説明する図である。
図6(a)、(b)において、横軸は商用交流電源の入力電圧、左側の縦軸は最大供給可能電力比Dmax、右側の縦軸は電流検知回路312で検知されたヒータ電流の電流値Irmsを示している。本実施例での商用交流電源の入力電圧低下は、電源回路部132が有している低入力電圧保護回路が低電圧を検知する前に検知されなければならない。そのため、商用交流電源の入力電圧低下の検知は、低入力電圧保護回路が低電圧を検知する電圧よりも高い電圧で行われる。そこで、電源回路部132の低入力電圧保護回路が低電圧として検知する商用交流電源の入力電圧を60Vとする。また、
図6(a)、(b)において、ヒータ109cの温度を一定に保つために必要な電力Wfuは一定であるとする。
図6(a)は、必要な電力Wfuが大きい場合、
図6(b)は必要な電力Wfuが小さい場合における、商用交流電源の入力電圧、最大供給可能電力比Dmax、電流検知回路312の電流値Irmsの関係を示している。
【0054】
CPU309は、ヒータ109cの温度を一定に保つように表1より位相角を算出し、トランジスタ307にTRM信号を出力する。即ち、CPU309は、セラミックヒータ109cの発熱体H1、H2に供給されるヒータ電流が一定となるように、TRM信号の出力をハイレベルにする制御を行う。そのため、商用交流電源の入力電圧が定着器109の温度を一定に保つために必要な電力Wfuが供給できる電圧の場合には、
図6(a)及び(b)に示す電流検知回路312が検知するヒータ電流の電流値Irmsは一定となる。ところが、商用交流電源の入力電圧が徐々に低下すると、ヒータ109cの温度を一定に保つ、即ち発熱体H1、H2の発熱量を一定に保つには、CPU309は、発熱体H1、H2に供給される電流値を徐々に上昇させなければならない。そして、発熱体H1、H2に供給される電流値を徐々に上昇させるためには、表1より位相角αを徐々に小さくしなければならず、これに伴い、供給電力比Dは徐々に大きくなる。その結果、電流検知回路312の電流値Irmsは一定に保たれるが、供給電力比Dが徐々に増加するため、最大供給可能電力比Dmaxは式(3)より徐々に増加することになる。更に、商用交流電源の入力電圧が所定の電圧以下に低下して、発熱体H1、H2に一定の電流が供給できなくなり、発熱体H1、H2に必要な電力Wfuを供給できないときは、電流検知回路312が検知するヒータ109cの電流値Irmsが徐々に低下する。その結果、最大供給可能電力比Dmaxは、式(3)より、電流値Irmsの低下に伴い、増加する。
【0055】
図6(a)は、ヒータ109cの温度を一定に保つために必要な電力Wfuが高い場合を示しているため、
図6(b)と比べ、商用交流電源の入力電圧が高い電圧からでも、電流値Irms(一点鎖線)が低下している。
図6(a)において、閾値Dth1は、商用交流電源の入力電圧が70Vのときの最大供給可能電力比Dmaxを示しており、このときの最大供給可能電力比Dmaxの値を100(第1の閾値)とする。CPU309は、式(3)より算出した最大供給可能電力比Dmaxの値が閾値Dth1(100)以上(第1の閾値以上)になった場合には、商用交流電源の入力電圧が70V以下に低下したと判断し、入力電圧の低下をビデオコントローラ127に通知する。そして、通知を受けたビデオコントローラ127は、データ記憶部133への書き込み動作を停止する。
【0056】
図6(b)は、ヒータ109cの温度を一定に保つために必要な電力Wfuが低い場合を示しているため、
図6(a)と比べ、商用交流電源の入力電圧が低い電圧になってから、電流値Irms(破線)が低下している。上述したように、電流値Irmsが一定の状態でも、商用交流電源の入力電圧が徐々に低下すると、それに伴い、最大供給可能電力比Dmaxは増加する。そこで、商用交流電源の入力電圧が70Vのときの最大供給可能電力比Dmaxの値を、商用交流電源の入力電圧低下を検知するための閾値Dth2として設定すれば、CPU309は、
図6(a)と同様に入力電圧の低下を検知することができる。ここで、閾値Dth2の値を75とすると、CPU309は、式(3)により算出した最大供給可能電力比Dmaxが閾値Dth2(75)以上になった場合には、商用交流電源の入力電圧が70V以下に低下したと判断する。そして、CPU309は、入力電圧が低下したことをビデオコントローラ127に通知し、通知を受けたビデオコントローラ127は、データ記憶部133への書き込み動作を停止する。
【0057】
このように、商用交流電源の入力電圧が徐々に低下すると、供給電力比Dの増加又は電流値Irmsの低下により、最大供給可能電力比Dmaxは徐々に増加する傾向にある。そのため、CPU309は、最大供給可能電力比Dmaxの増加を検知し、検知した値が閾値Dthを超えているかどうかを判断することにより、商用交流電源の入力電圧が所定の電圧よりも低下していることを検知することができる。CPU309は、商用交流電源の入力電圧が低下したことを検知した場合には、ビデオコントローラ127に通知することにより、データ記憶部133への書き込み動作を停止させることができる。前述したように、電源回路部132に設けられた低入力電圧保護回路が商用交流電源の入力電圧の低下を検知する電圧値は、CPU309が最大供給可能電力比Dmaxに基づいて入力電圧の低下を検知する電圧値よりも低い。そのため、電源回路部132に設けられた低入力電圧保護回路が入力電圧の低下を検知することにより、商用交流電源からの電力供給が遮断されても、データ記憶部133において、記録データが破損されることを防止できる。
【0058】
<商用交流電源の入力電圧検知の制御シーケンス>
本実施例における商用交流電源の入力電圧の低下を検知する制御シーケンスについて、以下に説明する。
図7は、商用交流電源の入力電圧の低下を検知する制御シーケンスを示すフローチャートである。
図7に示す処理は、エンジンコントローラ126のCPU309のROMに格納された制御プログラムに基づいて、CPU309により実行される。なお、以下の
図7のフローチャートの説明においては、ヒータ109cの給電制御は、位相制御に基づくものとする。
【0059】
まず、ステップ1(以下、S1のように記す)では、画像形成装置の電源がオンされて、CPU309が立ち上ると、CPU309は、画像形成装置のメインモータを起動させて、所要のプロセス機器の準備動作を実行する前多回転制御を開始する。S2では、CPU309は、セラミックヒータ109cの給電を開始する。S3では、CPU309は、サーミスタ109dの検知温度に基づいて、セラミックヒータ109cの温度を所定の目標温度まで上昇させる温度調整制御を行う。S4では、CPU309は、サーミスタ109dの検知温度が前多回転制御の終了条件である所定の目標温度に到達したと判断した場合にはS5に進み、到達していない場合にはS3に戻る。S5では、CPU309は、セラミックヒータ109cが目標温度に到達したので、温度調整制御を終了する。S6では、CPU309は、前多回転制御を終了し、スタンバイ状態に移行する。
【0060】
S7では、CPU309は、プリントジョブの有無について判断し、プリントジョブがなければS7の処理を繰り返し、プリントジョブがあればS8に進む。S8では、CPU309は、プリント動作を開始する。S9では、CPU309は、セラミックヒータ109cの温度を画像形成に適した温度にするため、セラミックヒータ109cへの給電を開始する。S10では、CPU309は、サーミスタ109dの検知温度に基づいて、セラミックヒータ109cの温度調整制御を行う。
【0061】
S11では、CPU309は、電流検知回路312から出力されたCURRMS信号に基づいて、セラミックヒータ109cに流れるヒータ電流の電流値Irmsを算出する。また、CPU309は、サーミスタ109dの温度検知結果に基づいて、式(1)より、セラミックヒータ109cへの現在の供給電力比Dを算出する。そして、CPU309は、算出した電流値Irms、供給電力比D、及び最大供給可能電流値Ilimitを用いて、式(3)より、最大供給可能電力比Dmaxを算出する。次に、CPU309は、算出された最大供給可能電力比Dmaxの値が、商用交流電源の入力電圧が所定の低電圧のときの最大供給可能電力比Dmaxに対応する閾値以上かどうかを判断し、閾値以上であればS12に進み、閾値未満であればS14に進む。なお、CPU309は、最大供給可能電力比Dmaxの算出を、プリントジョブが終了するまで、位相制御の場合、商用交流電源の半波周期毎に行うので、最大供給可能電力比Dmaxと予め設定されている閾値との比較は毎半波ごとに行われることになる。
【0062】
S12では、CPU309は、算出された最大供給可能電力比Dmaxが閾値以上であることを検知し、商用交流電源電圧が所定の電圧以下に低下したと判断したので、商用交流電源の入力電圧が低下したことをビデオコントローラ127に通知する。そして、通知を受けたビデオコントローラ127は、データ記憶部133への書き込み動作を停止する。S13では、CPU309は、本体100に設けられた表示部への表示を通じ、ユーザに商用交流電源の入力電圧が低下した警告を行い、S15に進む。
【0063】
S14では、算出された最大供給可能電力比Dmaxが閾値よりも小さく、商用交流電源の入力電圧は所定の電圧まで低下していないと判断したCPU309は、プリントジョブが終了したかどうかを判断する。CPU309は、プリントジョブが終了した場合には、S15に進み、プリントジョブが終了していない場合にはS10に戻る。S15では、CPU309は、プリントジョブが終了したので、トライアックTR1をオフしてセラミックヒータ109cへの給電を終了し、温度調整制御を終了する。S16では、CPU309は、プリント動作を終了して、スタンバイ状態へと移行し、S7に戻る。
【0064】
なお、上記説明では、CPU309は位相制御を行っているものとして説明したが、波数制御やハイブリッド制御を行っている場合においても同様に、
図7の制御シーケンスに基づいて、商用交流電源の入力電圧の低下を検知することができる。なお、位相制御の場合には、S11の最大供給可能電力比Dmaxと予め設定されている閾値との比較は、毎半波ごとに行われる。一方、波数制御やハイブリッド制御の場合には、最大供給可能電力比Dmaxを算出する際に用いられる電流値Irmsの算出は、1制御周期毎に行われる。そのため、波数制御やハイブリッド制御の場合、最大供給可能電力比Dmaxと予め設定されている閾値との比較は1制御周期毎に行われる点が、位相制御の場合とは異なる。
【0065】
以上説明したように、本実施例によれば、商用交流電源の入力電圧の低下を検知することができる。本実施例では、新たな回路を追加することなく、画像形成装置のヒータ駆動制御回路に設けられた電流検知回路で検知されたヒータ電流の電流値に基づいて、最大供給可能電力比Dmaxの値を算出する。算出された最大供給可能電力比Dmaxの値が、商用交流電源の入力電圧が所定の電圧になったときの最大供給可能電力比Dmaxの値以上と判断された場合は、ビデオコントローラに入力電圧の低下が通知され、データ記憶部へのデータ書き込みが停止される。電源回路部に設けられた低入力電圧保護回路が入力電圧の低下を検知して、商用交流電源からの電力供給を遮断する前に、データ記憶部へのデータ書き込みが停止されるので、データ記憶部に書き込み中のデータの破壊を防止することができる。
【実施例2】
【0066】
実施例1では、商用交流電源の入力電圧の低下は、最大供給可能電力比Dmaxの上昇によって判断している。最大供給可能電力比Dmaxは、電流検知回路312で検知されるヒータ電流値Irms、最大供給可能電流値Ilimit、サーミスタ109dの検知温度に基づいたセラミックヒータ109cへの供給電力比Dのパラメータを用いて、式(3)より算出される。最大供給可能電力比Dmaxの算出は、位相制御の場合には、プリントジョブが終了するまで毎半波ごとに行われる。上述のパラメータを誤検知すると、ただちにセラミックヒータ109cへの電力供給が停止され、プリント動作が停止してしまう虞がある。そこで、本実施例では、パラメータの誤検知によるプリント動作の停止を防止するために、より確実に商用交流電源の入力電圧の低下を検知する例について説明する。なお、本実施例における画像形成装置、及び加熱装置の構成は、実施例1の
図1、
図2と同様であり、説明を省略する。
【0067】
<商用交流電源の入力電圧低下の検知方法>
図8は、本実施例における商用交流電源の入力電圧低下の検知方法を説明する図である。
図8において、横軸は商用交流電源の入力電圧、左側の縦軸は最大供給可能電力比Dmax、右側の縦軸はサーミスタ109dによるヒータ109cの検知温度Tfuを示している。本実施例においても、実施例1の
図6(a)、(b)と同様に、ヒータ109cの温度を一定に保つために必要な電力Wfuは一定であるとする。
図8において、Tmは、ヒータ109cの目標温度を指し、CPU309は、サーミスタ109dの検知温度Tfuが目標温度Tmを保つように、位相角を算出する。本実施例では、目標温度Tmを200℃とする。なお、電流検知回路312の電流値Irmsは、
図6(a)、(b)に示した出力値と同様になるので、
図8では電流値Irmsの表示を省略する。
【0068】
商用交流電源の入力電圧がヒータ109cの温度を一定に保つために必要な電力Wfuが供給できる電圧の場合には、ヒータ109cの温度が一定になるように制御されるため、サーミスタ109dの検知温度Tfu(破線)も一定である。ところが、商用交流電源の入力電圧が徐々に低下し、定着器109の温度を一定に保つために必要な電力Wfuが供給できなくなると、供給できる電力に応じて、ヒータ109cの温度Tfuは徐々に低下していく。また、最大供給可能電力比Dmaxも、実施例1で説明したように、商用交流電源の入力電圧が低下していくにつれて、増加していく。
【0069】
本実施例では、CPU309は、最大供給可能電力比Dmaxが所定の閾値Dth以上であることに加えて、サーミスタ109dの検知温度Tfuが所定の温度閾値Tth1以下であれば、商用交流電源の入力電圧が低下していると判断する。「最大供給可能電力比Dmaxが所定の閾値Dthを超えている」ことは、実施例1における入力電圧低下の判断基準である。本実施例では、パラメータの誤検知による入力電圧低下の誤検知を防止するため、実施例1の判断基準に、「サーミスタ109dの検知温度Tfuが所定の温度閾値Tth1以下である」ことを新たに判断基準に加えて、入力電圧の低下の検知を判断する。
【0070】
図8において、最大供給可能電力比Dmaxの閾値Dthは100、サーミスタ109dの検知温度の閾値Tth1は190℃(第2の閾値)に設定されている。CPU309は、パラメータに基づいて、式(3)より算出された最大供給可能電力比Dmaxが100以上で、かつサーミスタ109dの検知温度Tfu1が190℃以下(第2の閾値以下)になったときに、商用交流電源の入力電圧が低下したと判断する。CPU309は、入力電圧が低下したことをビデオコントローラ127に通知し、通知を受けたビデオコントローラ127は、データ記憶部133への書き込み動作を停止する。更に、CPU309は、本体100に設けられた表示部へ電源電圧の低下を表示し、ユーザに警告することができる。また、温度閾値Tth1による判断は、「目標温度Tmとサーミスタ109dの検知温度Tfuとの差が所定の温度閾値Tth2以上(第3の閾値以上)である」ことにより行ってもよい。例えば、
図8の場合、目標温度Tmの200℃に対して、温度閾値Tth2は、10℃(=200℃−190℃)となる。
【0071】
<商用交流電源の入力電圧検知の制御シーケンス>
本実施例における商用交流電源の入力電圧の低下を検知する制御シーケンスについて、以下に説明する。
図9は、商用交流電源の入力電圧の低下を検知する制御シーケンスを示すフローチャートである。
図9に示す処理は、実施例1の
図7と同様に、エンジンコントローラ126のCPU309のROMに格納された制御プログラムに基づいて、CPU309により実行される。なお、以下の
図9のフローチャートの説明においては、ヒータ109cの給電制御は、位相制御に基づくものとする。
【0072】
S21〜S30における処理は、実施例1の
図7のS1〜S10と同様なため、説明を省略する。
【0073】
S31では、CPU309は、電流検知回路312から出力されたCURRMS信号に基づいて、セラミックヒータ109cに流れるヒータ電流の電流値Irmsを算出する。また、CPU309は、サーミスタ109dの温度検知結果に基づいて、式(1)より、セラミックヒータ109cへの現在の供給電力比Dを算出する。そして、CPU309は、算出した電流値Irms、供給電力比D、及び最大供給可能電流値Ilimitを用いて、式(3)より、最大供給可能電力比Dmaxを算出する。次に、CPU309は、算出された最大供給可能電力比Dmaxの値が、商用交流電源の入力電圧が所定の低電圧のときの最大供給可能電力比Dmaxに対応する閾値以上かどうかを判断し、閾値以上であればS32に進み、閾値未満であればS35に進む。なお、CPU309は、最大供給可能電力比Dmaxの算出をプリントジョブが終了するまで、位相制御の場合、商用交流電源の半波周期毎に行うので、最大供給可能電力比Dmaxと予め設定されている閾値との比較は毎半波ごとに行われることになる。
【0074】
S32では、S31において算出された最大供給可能電力比Dmaxが閾値以上であることが検知されたので、次に、CPU309は、サーミスタ109dの検知温度が温度閾値以下かどうかを判断する。そして、サーミスタ109dの検知温度が温度閾値以下であった場合には、CPU309は、商用交流電源の入力電圧が所定の電圧以下に低下したと判断してS33に進む。逆に、サーミスタ109dの検知温度が温度閾値より高かった場合には、CPU309は、算出された最大供給可能電力比Dmaxは誤検知であったと判断し、S35に進む。なお、S32の判断基準については、前述した判断基準である「目標温度Tmとサーミスタ109dの検知温度との差が所定の温度閾値以上かどうか」を用いてもよい。
【0075】
S33〜S34は、商用交流電源電圧が所定の電圧以下に低下したと判断された場合のCPU309の処理であるが、実施例1のS12〜S13と同様の処理であり、説明を省略する。
【0076】
S35〜S37は、最大供給可能電力比Dmaxが閾値未満と判断された場合、又は最大供給可能電力比Dmaxが閾値以上であるが、サーミスタ109dの検知温度が温度閾値より高いと判断された場合のCPU309の処理である。S35〜S37の処理は、実施例1のS14〜S16と同様であり、説明を省略する。
【0077】
なお、上記説明では、CPU309は位相制御を行っているものとして説明したが、波数制御やハイブリッド制御を行っている場合においても実施例1と同様に、
図9の制御シーケンスに基づいて、商用交流電源の入力電圧の低下を検知することができる。なお、実施例1と同様に、波数制御やハイブリッド制御の場合では、S31の最大供給可能電力比Dmaxと予め設定されている閾値との比較は1制御周期毎に行われ、毎半波ごとに行われる位相制御の場合とは異なる。
【0078】
以上説明したように、本実施例によれば、商用交流電源の入力電圧の低下を検知することができる。本実施例では、最大供給可能電力比Dmaxに基づいた商用交流電源の入力電圧低下の判断だけでなく、サーミスタ109dの検知温度による商用交流電源の入力電圧低下の判断を設けることにより、より確実に入力電圧低下を検知することができる。その結果、電源回路部に設けられた低入力電圧保護回路が入力電圧の低下を検知して、商用交流電源からの電力供給を遮断する前に、データ記憶部へのデータ書き込みが停止されるので、データ記憶部に書き込み中のデータの破壊を防止することができる。