(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039266
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
H01H 33/664 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
H01H33/664 C
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-142523(P2012-142523)
(22)【出願日】2012年6月25日
(65)【公開番号】特開2014-7081(P2014-7081A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】染井 宏通
(72)【発明者】
【氏名】捧 浩資
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】関森 裕希
【審査官】
関 信之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−151412(JP,A)
【文献】
特開2000−113778(JP,A)
【文献】
特開平08−287794(JP,A)
【文献】
特開2000−268684(JP,A)
【文献】
特開平05−225866(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/159669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/664
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在の固定側接触子と可動側接触子とを真空絶縁容器に収納した真空バルブであって、
前記固定側接触子の接触面を窪んだ球面状とし、
前記可動側接触子の接触面を前記固定側接触子と接離する突出した球面状とし、
前記固定側接触子の曲率半径を前記可動側接触子よりも大きく、且つ前記真空絶縁容器の半径以上としたことを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
前記固定側接触子の底部と前記可動側接触子の頂部の少なくとも一方に座繰り穴を設けたことを特徴とする請求項1に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、接離自在の一対の接点の接触状態を改善し得る真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空バルブには、円板状の一対の接点が用いられ、電流の開閉が行われている(例えば、特許文献1参照。)。また、接点の中心部を窪んだ円錐状とし、接触状態を安定させようとするもの知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
この種の真空バルブを
図4に示すが、筒状の真空絶縁容器1の両端開口部には、固定側封着金具2と可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2には、固定側通電軸4が貫通固定され、真空絶縁容器1内の端部に固定側電極5が固着されている。固定側電極5には、円板状の固定側接触子6が固着されている。固定側接触子6に対向し、接離自在の円板状の可動側接触子7が可動側電極8に固着されている。可動側電極8は、可動側封着金具3を移動自在に貫通する可動側通電軸9に固着されている。可動側通電軸9の中間部には、伸縮自在のベローズ10の一方端が封着されており、他方端が可動側封着金具3に封着されている。固定側、可動側接触子6、7の周りには、筒状のアークシールド11が設けられ、金属蒸気が真空絶縁容器1内面に付着しないようになっている。
【0004】
これにより、真空絶縁容器1内の真空を保って、可動側通電軸9を軸方向に移動させることができる。しかしながら、
図5に示すように、製作誤差や組立誤差などで固定側通電軸4と可動側通電軸9の中心軸が、角度θ偏芯していると、固定側接触子6と可動側接触子7は接触面全域が当接する面接触から周縁部に偏った点接触となる。このような不均等な接触をすると、接触抵抗が上昇し、通電性能を低下させる。また、電流経路が偏って過熱し、溶着に到れば、遮断性能を低下させることになる。特許文献2のような環状の接触子においても、中心軸が偏芯すると、点接触になることは避けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−225866号公報
【特許文献2】特開平8−287794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、固定側通電軸4と可動側通電軸9の中心軸が偏芯していても、固定側接触子6と可動側接触子7が点接触にはならず、面接触するようにし、通電性能や遮断性能を向上させることのできる真空バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、実施形態の真空バルブは、接離自在の
固定側接触子
と可動側接触子とを真空絶縁容器に収納した真空バルブであって、
前記固定側接触子の接触面を窪んだ球面状とし、
前記可動側接触子の接触面を前記
固定側接触子と接離する突出した球面状とし、
前記固定側接触子の曲率半径を前記可動側接触子よりも大きく、且つ前記真空絶縁容器の半径以上としたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例1に係る真空バルブの構成を示す断面図。
【
図2】本発明の実施例1に係る真空バルブの接触子の接触状態を示す断面図。
【
図3】本発明の実施例2に係る真空バルブの一方の接触子を示す断面図。
【
図5】従来の真空バルブの接触子の接触状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
先ず、本発明の実施例1に係る真空バルブを
図1、
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る真空バルブの構成を示す断面図、
図2は、本発明の実施例1に係る真空バルブの接触子の接触状態を示す断面図である。なお、従来と同様の構成部分は、同一符号を付した。
【0011】
図1に示すように、筒状の真空絶縁容器1の両端開口部には、固定側封着金具2と可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2には、固定側通電軸4が貫通固定され、真空絶縁容器1内の端部に固定側電極5が固着されている。固定側電極5には、接触面が窪んだ球面状の固定側接触子20が固着されている。接触面の中心部には、円形状の固定側座繰り穴21が設けられている。固定側座繰り穴21は、窪んだ球面の最も底部に設けられる。
【0012】
固定側接触子20に対向し、接離自在の接触面が突出した球面状の可動側接触子22が可動側電極8に固着されている。可動側接触子22の中心部には、円形状の可動側座繰り穴23が設けられている。可動側座繰り穴23は、最も突出した球面の頂部に設けられる。ここで、可動側接触子22よりも固定側接触子20の球面を形成する曲率半径を僅かに大きくしている。
【0013】
可動側電極8には、可動側封着金具3を移動自在に貫通する可動側通電軸9の端部が固着されている。可動側通電軸9の中間部には、伸縮自在のベローズ10の一方端が封着されており、他方端が可動側封着金具3に封着されている。固定側、可動側接触子6、7の周りには、筒状のアークシールド11が設けられている。
【0014】
次に、固定側接触子20と可動側接触子22の接触について
図2を参照して説明する。
【0015】
図2に示すように、固定側通電軸4と可動側通電軸9の中心軸が角度θずれていても、固定側接触子20と可動側接触子22は互いが球面状であり、接触面の全域が当接するような面接触となる。窪んだ球面状の固定側接触子20の曲率半径が可動側接触子22よりも僅かに大きく、また、固定側座繰り穴21を底部に、可動側座繰り穴23を頂部に設けているので、接触面の全体が接触し易いようになる。曲率半径は、可動側通電軸9の軸ずれを考慮し、真空絶縁容器1の半径以上とする。
【0016】
固定側、可動側座繰り穴21、23は、少なくとも一方に設けることで面接触をし易くすることができる。なお、固定側通電軸4と可動側通電軸9の中心軸がずれていない場合にも、当然のこと、面接触させることができる。
【0017】
上記実施例1の真空バルブによれば、固定側接触子20を窪んだ球面状とし、可動側接触子22を突出した球面状としているので、固定側通電軸4と可動側通電軸9の中心軸がずれていても、互いの接触子20、22を面接触させることができ、接触抵抗の上昇を抑制して通電性能を向上させ、また、局部過熱を抑制して遮断性能を向上させることができる。
【0018】
上記実施例1では、固定側接触子20を窪んだ球面状、可動側接触子22を突出した球面状として説明したが、この逆で、固定側接触子20を突出した球面状、可動側接触子22を窪んだ球面状としてもよい。即ち、一方を窪んだ球面状、他方をこれと接離する突出した球面状とする。
【実施例2】
【0019】
次に、本発明の実施例2に係る真空バルブを
図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施例2に係る真空バルブの一方の接触子を示す断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、電極を磁界が発生する構成にしたことである。
図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0020】
図3に示すように、固定側電極5をカップ状とし、外周面に複数本の螺旋状のスリット24を設け、所謂、スパイラル電極としている。また、固定側接触子20の端部外周には、半径方向に突出した環状の電界緩和リング25を設けている。
【0021】
これにより、スリット24で電流経路が螺旋状となり、軸方向の磁界を発生させることができる。なお、縦磁界を発生させる縦磁界電極を用いることもできる。また、電界緩和リング25により、固定側接触子20の端部外周の電界緩和を図ることができる。
【0022】
上記実施例2の真空バルブによれば、実施例1による効果のほかに、アークを拡散させるような磁界発生により遮断性能を向上させることができ、また、電界緩和により耐電圧性能を向上させることができる。
【0023】
以上述べたような実施形態によれば、接離自在の一対の接触子を球面で接触させているので、互いの中心軸がずれていても面接触させることができ、通電性能と遮断性能を向上させることができる。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1 真空絶縁容器
2 固定側封着金具
3 可動側封着金具
4 固定側通電軸
5 固定側電極
6、20 固定側接触子
7、22 可動側接触子
8 可動側電極
9 可動側通電軸
10 ベローズ
11 アークシールド
21 固定側座繰り穴
23 可動側座繰り穴
24 スリット
25 電界緩和リング