(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本実施例に係る定着装置を搭載する画像形成装置の横断側面の概略構成を表す模式断面図である。この画像形成装置は電子写真式のレーザービームプリンターである。
【0011】
本実施例に示す画像形成装置は、現像剤としてのシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のトナーを用いてトナー画像を形成する第1から第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを所定の方向に一列に並設したインライン方式の装置である。各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれ、像担持体としてドラム形状の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)117を有している。
各画像形成部Pa〜Pdにおいて、感光ドラム117の外周面(表面)の周囲には、帯電部材としてのドラム帯電器119と、露光手段としての走査露光装置107が設けられている。また感光ドラム117表面の周囲には、現像手段としての現像器120と、ドラムクリーナ122が設けられている。そして感光ドラム117に跨るように搬送部材としての中間転写ベルト123が設けてある。この中間転写ベルト123は、駆動ローラ125aと、二次転写対向ローラ125bと、に掛け回してある。
【0012】
中間転写ベルト123の内周面(内面)側には、各感光ドラム117と中間転写ベルト123を挟むように第1の転写部材としての一次転写ローラ124が設けられている。中間転写ベルト123の外周面(表面)側には、二次転写対向ローラ125bと中間転写ベルト123を挟むように第2の転写部材としての二次転写ローラ121が設けられている。
本実施例の画像形成装置は、ホストコンピュータ、ネットワーク上の端末機、外部スキャナなどの外部装置(不図示)から出力されるプリント指令に応じて制御部101が所定の画像形成シーケンスを実行する。制御部101はCPUとROMやRAMなどのメモリとからなり、メモリには画像形成シーケンスや画像形成に必要な各種プログラムなどが記憶されている。
【0013】
本実施例の画像形成装置の画像形成動作を、
図1を参照して説明する。制御部101は、プリント指令に応じて実行される画像形成シーケンスに従い各画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを順次駆動する。先ず、各感光ドラム117が所定の周速度(プロセススピード)で矢印方向へ回転されると共に、駆動ローラ125aにより中間転写ベルト123が各感光ドラム117の回転周速度と対応した周速度で矢印方向へ回転される。1色目のシアンの画像形成部Paにおいて、感光ドラム117表面はドラム帯電器119によって所定の極性・電位に一様に帯電される。次に走査露光装置107が外部装置から出力される画像データ(画像情報)に応じたレーザ光を感光ドラム117の帯電面に対し走査露光する。これにより感光ドラム117表面の帯電面に画像データに応じた静電潜像(静電像)が形成される。そしてこの静電潜像が現像器120によってシアンのトナーを用いて現像される。これによって感光ドラム117表面上にシアンのトナー画像(現像像)が形成される。
【0014】
同様の帯電、露光、現像の各工程が、2色目のマゼンタの画像形成部Pb、3色目のシアンのイエローの画像形成部Pc、4色目のブラックの画像形成部Pdにおいても行われる。各感光ドラム117表面に形成された各色のトナー画像は感光ドラム117表面と中間転写ベルト123表面との間の一次転写ニップ部で一次転写ローラ124によって中間転写ベルト123表面上に順番に重ねて転写される。これにより中間転写ベルト123表面にフルカラーのトナー画像が担持される。
【0015】
トナー画像転写後の感光ドラム117表面は、感光ドラム117表面に残留する転写残トナーがドラムクリーナ122により除去され次の画像形成に供される。
【0016】
一方、給送カセット102から記録紙等の記録材(以下、記録材と記す)Pが繰り出しローラ105により1枚ずつ繰り出されレジストローラ106に搬送される。この記録材Pはレジストローラ106によって中間転写ベルト123表面と二次転写ローラ121の外周面(表面)との間の二次転写ニップ部に搬送される。そしてこの搬送過程において二次転写ローラ121によって中間転写ベルト123表面のトナー画像が記録材P上に転写される。これにより記録材P上に未定着のフルカラーのトナー画像が担持される。
【0017】
フルカラーのトナー画像を担持した記録材Pは定着部に備える定着装置109の後述する定着ニップ部N1に導入される。そして、この定着ニップ部N1で記録材Pを挟持搬送しつつトナー像に熱とニップ圧を印加し、これにより記録材P上のトナー像は記録材Pに加熱定着される。定着ニップ部N1を出た記録材Pは排出ローラ111により排出トレイ112上に排出される。
【0018】
(2)定着装置
以下の説明において、定着装置及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と直交する方向である。短手方向とは記録材の面において記録材搬送方向と平行な方向である。長さとは長手方向の寸法である。幅とは短手方向の寸法である。
【0019】
図2は本実施例に係る定着装置109の概略構成を表す断面図である。
図3は本実施例に係る定着装置109に用いられるセラミックヒータ15の概略構成を表す模式断面図である。
図4はセラミックヒータ15と通電制御系とを表す説明図である。
【0020】
本実施例の定着装置109は、外部加熱方式の定着装置であり、定着ローラ30と、加熱ユニット10と、加圧部材としての加圧ユニット50などを有している。
【0021】
定着ローラ30は、鉄、SUS、アルミニウム等の金属材料からなる丸軸状の芯金30Aを有している。そしてこの芯金30Aの外周面上にシリコーンゴムなどを主成分とする弾性層30Bが形成され、この弾性層30Bの外周面上にPTFE、PFA又はFEPなどを主成分とする離型層30Cが形成されている。ここで、PTFEはポリテトラフルオロエチレン、PFAはテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、FEPはテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体の略称である。
【0022】
この定着ローラ30は、芯金30Aの長手方向の両端部が装置フレーム(不図示)の長手方向の両側の側板(不図示)に軸受(不図示)を介して回転可能に支持されている。従って、定着ローラ30は、定着ローラ30の回転中心軸となる芯金30Aの外側に弾性層30Bを有している。
【0023】
加熱ユニット10は、加熱源としての役割と、加熱圧接部形成部材としての役割と、を担うセラミックヒータ(以下、ヒータと記す)15を有する。加熱ユニット10は、更に、加熱回転体としての筒状の加熱フィルム(エンドレスフィルム)16と、加熱フィルム16の内面を支持する加熱フィルム支持部材としての加熱フィルムガイド19と、を有している。加熱フィルムガイド19は、LCP(液晶ポリマ)などの耐熱性材料を用いて横断面が略凹字形状になるように形成されている。そして加熱フィルムガイド19の長手方向の両端部が装置フレームの長手方向の両側の側板に支持されている。ヒータ15は加熱フィルムガイド19の長手方向に沿って、加熱フィルムガイド19の平坦面に設けられた溝19Aに支持され、ヒータ15を支持させた加熱フィルムガイド19に加熱フィルム16をルーズに外嵌させている。ヒータ15は、アルミナ、窒化アルミ等のセラミックを主成分とする薄板状のヒータ基板15Aを有している。このヒータ基板15Aの加熱フィルム16側の基板面には、銀、パラジウム等を主成分とした通電発熱抵抗体15Bがヒータ基板15Aの長手方向に沿って設けられている。またこの基板面には、ガラスや、フッ素樹脂又はポリイミド等の耐熱樹脂を主成分とする保護層15Cが通電発熱抵抗体15Bを覆うように設けられている。
【0024】
加熱フィルム16は、加熱フィルム16の内周長が加熱フィルムガイド19の外周長より長くなるように形成され、加熱フィルムガイド19に無張力にてルーズに外嵌されている。加熱フィルム16の層構成として、ポリイミドを主成分とするフィルム基層の外周面を、PFAを主成分とする表面層により被覆するという二層構造が採用されている。
【0025】
この加熱ユニット10は、定着ローラ30の
図3における上方で定着ローラ30と平行に配置されている。そして加熱フィルムガイド19の長手方向両端部を、加圧バネ(不図示)によって、定着ローラ30の母線方向と直交する方向へ定着ローラ30に対して付勢する。ヒータ15の保護層15Cと加熱フィルムガイド19の外表面は、加熱フィルム16を介して定着ローラ30の表面に押圧させる。これにより定着ローラ30の弾性層30Bがヒータ24の保護層15Cの外表面及び加熱フィルムガイド19の外表面に対応する位置で潰れて弾性変形し、定着ローラ30表面と加熱フィルム16の表面とで、所定幅の加熱圧接部N2が形成される。従って、定着ローラ30は、加熱フィルムガイド19およびヒータ15と共に加熱フィルム16を介して加熱圧接部N2を形成する。
【0026】
加圧ユニット50は、ニップ部形成部材としての加圧板500と、加圧回転体としての筒状の加圧フィルム(エンドレスフィルム)51と、加圧フィルム51の内面をガイドするための加圧フィルムガイド52を有している。加圧板500は、アルミなどの熱伝導率の良い金属材料を用いる。加圧フィルムガイド52は、LCP(液晶ポリマ)などの耐熱性材料を用いて横断面略凹字形状に形成されている。そして加圧フィルムガイド52の長手方向の両端部が装置フレームの長手方向の両側の側板に支持されている。そしてこの加圧フィルムガイド52に加圧フィルム51をルーズに外嵌させている。
【0027】
加圧フィルム51は、加圧フィルム51の内周長が加圧フィルムガイド52の外周長より長くなるように形成され、加圧フィルムガイド52に無張力にてルーズに外嵌されている。加圧フィルム51の層構成として、ポリイミドを主成分とするフィルム基層の外周面を、PFAを主成分とする表面層により被覆するという二層構造が採用されている。
【0028】
この加圧ユニット50は、
図3に示すように定着ローラ30と平行に配置されている。そして加圧フィルムガイド52の長手方向の両端部を、加圧バネ(不図示)によって、定着ローラ30の母線方向と直交する方向へ定着ローラ30に対して付勢する。具体的には、加圧フィルムガイド52の溝52Aで保持した加圧板500を、加圧フィルム51を介して定着ローラ30表面に対して付勢する。これにより定着ローラ30の弾性層30Bが加圧板500と対応する位置で潰れて弾性変形し、定着ローラ30表面と加圧フィルム51の表面とで所定幅の定着ニップ部N1が形成される。従って、定着ニップ部N1は、加圧板500と、定着ローラ30と、で加圧フィルム51を介して形成される。
【0029】
図2及び
図4を参照して、定着装置109の定着処理について説明する。制御部101は、プリント指令に応じて実行される画像形成シーケンスに従い駆動源としての駆動モータ(不図示)を回転駆動する。この駆動モータの出力軸の回転は所定のギア列(不図示)を介して定着ローラ30の芯金30Aに伝達される。これにより定着ローラ30は矢印方向へ所定の周速度(プロセススピード)で回転する。定着ローラ30の回転は、定着ニップ部N1において定着ローラ30表面と加圧フィルム51表面との間に生じる摩擦力によって加圧フィルム51に伝わる。これにより加圧フィルム51は加圧フィルム51の内周面が加圧板500と接触しながら定着ローラ30の回転に追従して矢印方向へ回転する。
【0030】
また定着ローラ30の回転は、加熱圧接部N2において定着ローラ30表面と加熱フィルム16表面との間に生じる摩擦力によって加熱フィルム16に伝わる。これにより加熱フィルム16は加熱フィルム16の内周面がヒータ23の保護層23Cの外表面と接触しながら定着ローラ30の回転に追従して矢印方向へ回転する。
【0031】
また制御部101は、画像形成シーケンスに従いトライアック20がオンされる。トライアック20はAC電源21から印加される電力を制御しヒータ15の通電発熱抵抗体15Bへの通電を開始する。この通電により通電発熱抵抗体15Bが発熱してヒータ15は急速に昇温し加熱フィルム16を加熱する。ヒータ15の温度はヒータ基板15Aの加熱フィルムガイド19側の基板面に設けられた温度検知部材としてのサーミスタ18により検知される。制御部101は、サーミスタ18からの出力信号(温度検知信号)をA/D変換回路22を介して取り込み、この出力信号に基づいてヒータ15を所定の定着温度(目標温度)に維持するようにトライアック20を制御する。これによりヒータ15は所定の定着温度に温調される。
【0032】
回転している定着ローラ30表面は加熱圧接部N2でヒータ15により加熱フィルム16を介して加熱される。これにより定着ローラ30の表面には記録材Pが担持する未定着のトナー像Tを定着ニップ部N1で定着するために必要十分な熱量が与えられる。駆動モータを駆動し、かつヒータ15を制御している状態において、未定着のトナー像Tを担持した記録材Pは、トナー像担持面が定着ローラ30の表面に対向する向きで定着ニップ部N1に導入される。この記録材Pは定着ニップ部N1で定着ローラ30表面と加圧フィルム51表面とにより挟持搬送される。この搬送過程において、トナー像Tが定着ローラ30表面で加熱されて溶融すると共にこの溶融したトナー像Tに定着ニップ部N1による圧力が印加され、これによりトナー像Tは記録材Pの面上に定着される。
【0033】
(3)加熱圧接部N2の圧力分布
図5(a)に実施例1に係る加熱圧接部N2の断面図を、
図5(b)に実施例1に係る加熱圧接部N2の圧力分布を示す。
【0034】
本実施例の定着装置109では、加熱圧接部N2における加熱フィルム16の表面と定着ローラ30表面との間の圧力が減少した後に上昇する圧力減少領域Xdを有している。
【0035】
この圧力減少領域Xdは、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央Xcよりも下流側にある。ここで言う加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央Xcは、
図5の加熱圧接部入口Xinと加熱圧接部出口Xoutの中央である。
【0036】
(4)加熱圧接部N2の圧力分布の測定方法
図5(b)に示すような加熱圧接部N2の圧力分布の測定方法について説明する。
図6は加熱圧接部N2の圧力分布を測定する場合の定着装置109の断面図である。加熱圧接部N2の圧力分布の測定には、記録材型圧力分布測定素子を用いる。本実施例では、フィルム式圧分布測定システムPINCH(ニッタ株式会社)を用いて測定した。
図6のように、通常のプリント動作時と同方向に定着ローラ30を回転させて、加熱圧接部N2に圧力分布測定記録材Psを突入させる。そして、定着ローラ30を回転させて加熱圧接部N2の圧力が十分に検知できる位置まで圧力分布測定記録材Psを挟持搬送した後、定着ローラ30を静止させ、静止状態で圧力分布を測定する。
【0037】
(5)圧力減少領域Xdを形成する方法
加熱圧接部N2において圧力減少領域Xdを有する圧力分布を形成する方法としては、加熱フィルムガイド19の加熱圧接部N2の下流付近に、
図5(a)に示す突起部19Bを設ける構成が考えられる。突起部19Bは、ヒータ15の加熱フィルム16との摺動面よりも定着ローラ30側に向かって突出している。
【0038】
定着ローラ30は、加熱圧接部形成部材(主にヒータ15)に加熱フィルム16を介して押圧されて弾性変形する。その結果、加熱圧接部N2において、加熱フィルム16の回転方向の中央Xcより上流側の位置Xmで圧力がピーク値Pmとなる。この位置Xmを第1の圧力ピーク部Xmと記す。第1の圧力ピーク部Xmから加熱フィルム16の回転方向の上流又は下流に向かって緩やかに圧力が低下していく圧力分布となる。
【0039】
突起部19Bがなければ、加熱圧接部N2の加熱フィルムの回転方向の下流付近は、定着ローラ30の弾性変形が小さくなり、定着ローラ30と加熱フィルム16との当接圧力が低下するだけの領域である。
【0040】
これに対し、突起部19Bを前述した位置に設けると、突起部19Bが加熱フィルム16を介して、定着ローラ30を強く弾性変形させる。その結果、加熱圧接部N2の圧力が一時的に減少してから増加する圧力減少領域Xdの加熱フィルム16の回転方向の下流の位置Xpにおいて、圧力がピーク値Ppとなる。この位置を第2の圧力ピーク部Xpと記す。
【0041】
つまり、第1の圧力ピーク部Xmと、第2の圧力ピーク部Xpと、の間には、圧力が一時的に減少してから上昇する圧力減少領域Xdが形成されるのである。
【0042】
圧力減少領域Xdの位置は、
図5(b)に示すように、第1の圧力ピーク部Xmよりも加熱フィルム16の回転方向下流側で、且つ、第2の圧力ピーク部Xpよりも加熱フィルム16の回転方向の上流側であることが望ましい。また、加熱圧接部N2内の加熱フィルム16の回転方向の中央Xcよりも下流の領域にあるのが望ましい。
【0043】
尚、第2の圧力ピーク部Xpの圧力は、第1の圧力ピーク部Xmよりも大きくても良い。
【0044】
第2の圧力ピーク部Xpの位置は、加熱圧接部N2内の下流付近にあることが好ましく、加熱圧接部N2の出口付近がより好ましい。
【0045】
尚、突起部19Bの位置、高さ、接触面の形状などは、本実施例のものに限定されない。
【0046】
(6)トナー等の付着問題
上述の定着動作において、記録材Pの上のトナー像Tを記録材Pに定着する際に、記録材Pに含まれる紙の繊維や、炭酸カルシウム、タルクなどの無機物からなる填料などの紙粉が脱落して定着ローラ30表面に付着する。この無機物からなる微量な紙粉に、定着ローラ30の表面に付着した微量のトナーが付着し、混ざって付着物Tcとなる。この付着物Tcは、
図7に示すように、定着ローラ30の回転に伴い加熱圧接部N2において、加熱フィルム16の表面とも接触する。付着物Tcが加熱フィルム16の表面へ転移してしまうと、加熱フィルム16の表面の離型性を悪化させ、付着物Tcに更にトナーや紙紛が付着して付着物Tcを成長させてしまう。この付着物Tcは、紙粉と混ざっている為、熱を加えても軟化しにくく、粘着性も低い。このため、この付着物Tcは、加熱フィルム16の表面の離型性を上げたり、加熱フィルム16の表面と定着ローラ30の表面との温度差をつけて移動させたりする対策では十分でない場合がある。
【0047】
加熱フィルム16の表面に付着した付着物Tcは、定着ローラ30に付与する熱量のばらつきを生じさせて、画像の光沢むらやスジなどの画像不良を発生させることがある。また、付着物Tcは、加熱フィルム16の表面で大きな塊に成長した後に、不定期に記録材上に落下する、又は、定着ローラ30表面へ移り記録材Pへ転移する、などして画像不良を発生させることがある。
【0048】
(7)加熱フィルム16の表面への付着物の付着を抑制するメカニズム
本実施例の定着装置109では、加熱フィルム16表面への付着物の付着を抑制できる。このメカニズムについて説明する。
図8(a)に加熱圧接部N2における各部材の動きを、
図8(b)に加熱圧接部N2の圧力分布を示す。
【0049】
図8において、定着ローラ30は矢印の方向に回転し、定着ローラ30の表面が加熱フィルム16の表面と接触する。定着ローラ30の回転方向において、定着ローラ30の表面が加熱フィルム16表面と接触し始めるXinの位置を加熱圧接部N2入口とし、加熱フィルム16表面から離れ始めるXoutの位置を加熱圧接部N2出口とする。
【0050】
前述したように、加熱フィルムガイド19に設けられた突起部19Bによって、第2の圧力ピーク部Xpが形成され、第1の圧力ピーク部Xmと、第2の圧力ピーク部Xpの間に、圧力が減少してから上昇する圧力減少領域Xdが形成される。
【0051】
加熱圧接部入口Xin、第1の圧力ピーク部Xm、圧力減少領域Xd、第2の圧力ピーク部Xp、及び、加熱圧接部出口Xoutのそれぞれの位置おける定着ローラ30の弾性層30Bの変形状態について説明する。また、上記位置における加熱フィルム16の表面と定着ローラ30の表面との周速差についても説明する。
【0052】
加熱圧接部入口Xinの位置で、弾性体である定着ローラ30は圧縮変形しながら、加熱フィルム16表面と接触し始める。第1の圧力ピークXmの位置を中心に定着ローラ30表面と加熱フィルム16表面は圧接され、摩擦力によって、加熱フィルム16は定着ローラ30に従動駆動される。
【0053】
第1の圧力ピーク部Xmにおける加熱フィルム16と定着ローラ30表面との間に働く摩擦力は大きい。従って、定着ローラ30が定常回転している状態では、第1の圧力ピーク部Xmにおける定着ローラ30表面の周速Vrmと、加熱フィルム周速Vfmの周速差ΔVmは小さい。
【0054】
図9は、加熱圧接部N2内の圧力減少領域Xd付近の定着ローラ30の弾性変形と各部材の周速を示した図である。
【0055】
第1の圧力ピーク部Xmにおいて、加熱フィルム16と密着していた定着ローラの弾性層30Bは、定着ローラ30の回転に伴い、圧力減少領域Xdへ移動する。
【0056】
圧力減少領域Xdは、加熱フィルム16の回転方向の上流側にある第1の圧力ピーク部Xmと、圧力減少領域Xdより加熱フィルム16の回転方向の下流側にある第2の圧力ピーク部Xpと、に挟まれており、局部的に圧力が低い。
【0057】
従って、定着ローラ30の弾性層30Bは、圧力減少領域Xdにおいて、圧縮状態から復元しようとラジアル方向に膨張する。つまり、定着ローラ30の弾性層30Bは、圧力減少領域Xdにおいて、潰れ量が大きい第1の圧力ピーク部Xmの位置よりも外径が大きくなる。
【0058】
定着ローラ30の弾性層30Bは、圧縮状態から復元しようとする際に、定着ローラ30のラジアル方向だけでなく、定着ローラ30の回転方向で圧力が低い方向にも膨張しようとする。
【0059】
しかしながら、本実施例における定着ローラ30の弾性層30Bは、圧力減少領域Xdにおいて、2つの圧力ピークに挟まれている為、定着ローラの回転方向には膨張できない。
【0060】
従って、定着ローラ30の弾性層30Bは、圧力減少領域Xd部において、定着ローラ30のラジアル方向に復元して膨張し、定着ローラ30の外径が大きくなりやすい。
【0061】
一方、加熱フィルム16は、定着ローラ30の表面のように弾性変形しない為、圧力減少領域Xdでのフィルム16の周速Vfdは、第1の圧力ピーク部Xmの位置におけるフィルム周速Vfmと変わらない。
【0062】
従って、圧力減少領域Xdにおいて、定着ローラ30の表面と加熱フィルム16の表面で、周速差ΔVdが発生する。
ΔVd=Vrd−Vfd
圧力減少領域Xdにおいて、定着ローラ30の表面は、加熱フィルム16表面よりも周速差ΔVd分速く進む為、定着ローラ30の回転に伴い、定着ローラ30の表面と加熱フィルム16の表面にズレが発生する。その結果、定着ローラ30の表面と加熱フィルム16の表面との界面でせん断力が発生する。このせん断力の効果については後述する。
【0063】
ところで、
図10は、加熱圧接部N2において、付着物Tcが受ける力を示した断面図である。加熱圧接部N2における定着ローラ30表面と、加熱フィルム16表面と、付着物Tcとの間に働く作用について説明する。
【0064】
定着ローラ30に付着した付着物Tcは、定着ローラ30の回転に伴い加熱圧接部N2に進入し、定着ローラ30と加熱フィルム16の間に挟まれて加圧される。
【0065】
付着物Tcの定着ローラ30の表面に対する付着力は、付着物Tcの定着ローラ30の表面との接触面積の大きさに比例する。同じく、付着物Tcの加熱フィルム16の表面に対する付着力は、付着物Tcの加熱フィルム16の表面との接触面積の大きさに比例する。
【0066】
定着ローラ30は、加熱圧接部N2において、弾性体であるため付着物Tcの形状にならって表面が変形し、付着物Tcとの接触面積を増しやすい。
【0067】
一方、加熱フィルム16についても、定着ローラ30ほどの弾性はないものの、加熱圧接部N2内の熱により表面層が軟らかくなり、加熱圧接部N2内を進むうちに、加熱フィルム16の表面を徐々に変形させながら、付着物Tcとの接触面積を増やしていく。
【0068】
付着物Tc自身についても、トナーと紙粉とが混じり、トナー単体よりも溶融しにくくなっているものの、加熱圧接部N2で熱と圧力を長い期間受けると、定着ローラ30及び加熱フィルム16の表面にならった形状に変形する。
【0069】
加熱圧接部入り口Xinから加熱圧接部N2の第1の圧力ピーク部Xmにかけて、付着物Tcは定着ローラ30表面と、加熱フィルム16の表面と、のいずれにも密着して付着している状態となる。
【0070】
しかしながら、付着物Tcが圧力減少領域Xdに達すると、加熱フィルム16の表面との間、定着ローラ30の表面との間のそれぞれにおいて、せん断力Fdを受ける。
【0071】
せん断力Fdを受けた付着物Tcは、定着ローラ30及び加熱フィルム16の表面と密着していた状態から変形する、又は、移動するなどして、定着ローラ30又は加熱フィルム16との密着状態がリセットされる。つまり、付着物Tcの定着ローラ30又は加熱フィルム16への付着力は弱まったり、付着物Tcが定着ローラ30又は加熱フィルム16から引き剥がされたりする。そして、付着物Tcは、圧力減少領域Xdから第2の圧力ピーク部Xpを経て、加熱圧接部出口Xoutまで至る間に、再び定着ローラ及び加熱フィルム16との接触面積を増やして付着力を回復させる。
【0072】
しかしながら、付着物Tcの付着力の回復は、定着ローラ30よりも弾性力が小さい加熱フィルム16の方が遅い。更に、圧力減少領域Xdは、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向下流側の領域にあるので、圧力減少領域Xdから加熱圧接部出口Xoutまでの距離は、加熱圧接部入り口Xinから圧力減少領域Xdまでの距離よりも短い。
【0073】
つまり、付着物Tcと加熱フィルム16の表面との付着力が十分に回復しない間に付着物Tcが加熱圧接部出口Xoutに至るようにすることで、付着物Tcが加熱フィルム16に付着することを抑制することができる。
【0074】
尚、上述した上記の付着物Tcの加熱フィルム16への付着を抑制するメカニズムから、圧力減少領域Xdは、加熱圧接部出口Xoutに近い位置にある方がより好ましいことがわかる。
【0075】
一方、定着ローラ30の表面に付着している付着物Tcは、次回のプリント動作時に定着ニップ部N1にて記録材P上に定着され、排出される。これは微量であるため、画像上ではほとんど目立たず、画像不良になりにくい。付着物Tcが加熱フィルム16上に蓄積して塊になることがなくなる。
【0076】
ここで、本実施例の特徴的な構成と作用効果について説明する。
図11は、加熱圧接部N2に圧力減少領域Xd、及び、第2の圧力ピーク部Xpが存在しない定着装置における加熱圧接部N2内の各部材の周速と、付着物Tcの受ける力を示した図である。
図11の定着装置を比較例(2)の定着装置とする。
【0077】
比較例(2)の定着装置の加熱圧接部N2内の圧力は、第1の圧力ピーク部Xmから加熱フィルム16の回転方向の下流側に向かって徐々に減少する。
【0078】
定着ローラ30の弾性層30Bは、圧縮状態から復元する際に、圧力の小さい加熱圧接部出口Xoutがあるため、定着ローラ30のラジアル方向だけでなく加熱フィルム16の回転方向にも膨張しやすくなる。その結果、加熱圧接部出口Xoutにおける定着ローラ30の外径の膨張(ラジアル方向の膨張)は、本実施例よりも小さくなる。従って、定着ローラ30の表面と加熱フィルム16の表面との周速差も、本実施例より小さい。
【0079】
また、加熱圧接部出口Xoutでは、加熱フィルム16表面と定着ローラ30の表面とは分離し始めており、付着物Tcと加熱フィルム16の表面との間、付着物Tcと定着ローラ30の表面との間、のそれぞれにおいて、せん断力Foutが働きにくい。
【0080】
なぜなら、加熱フィルム16表面と定着ローラ30の表面との当接圧力が減少している為、加熱フィルム16表面と定着ローラ30の表面に周速差があったとしても、付着物Tcが受けるせん断力は小さくなるからである。
【0081】
従って、加熱フィルム16に付着した付着物Tcは、加熱圧接部N2を通過する際に、加熱フィルム16への付着力が増すばかりで、ほとんど弱められることがなく、加熱フィルム16に付着した状態で加熱圧接部出口Xoutを通過することになる。
【0082】
次に、
図12に示す定着装置のように、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央より上流側に、圧力減少領域Xdが形成された定着装置について説明する。ここで、この定着装置を比較例(1)の定着装置とする。
【0083】
比較例(1)の定着装置は、本実施例と同様に圧力減少領域Xdにて、付着物Tcはせん断力Fdを受け、付着物Tcの加熱フィルム16との付着力が弱められる、又は、付着物Tcが定着ローラ30又は加熱フィルム16から引き剥がされる。
【0084】
しかしながら、圧力減少領域Xdは、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央Xcよりも上流側にあるため、圧力減少領域Xdから加熱圧接部出口Xoutまでの距離は、加熱圧接部入口Xinから圧力減少領域Xdまでの距離よりも長い。
【0085】
従って、付着物Tcは、圧力減少領域Xdにて加熱フィルム16に対する付着力が弱められたり、引き剥がされたりしても、加熱圧接部出口Xoutに至るまでの間に長い時間熱や圧力を受けて加熱フィルム16への付着力を回復することになる。従って、結果的に加熱フィルム16の表面に付着物Tcが付着した状態で加熱圧接部出口Xoutを通過することになる。
【0086】
以上述べたことから、比較例(1)及び比較例(2)の定着装置は、本実施例よりも付着物Tcが加熱フィルム16に付着しやすいことがわかる。
【0087】
そこで、本実施例の特徴は、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央Xcより下流側に圧力減少領域Xdを形成する。そして、その圧力減少領域Xdよりも加熱フィルム16の回転方向下流側に圧力が局部的に増大する第2の圧力ピーク部Xpを形成することである。
【0088】
上記の特徴を備えた結果、定着ローラ30表面に付着した付着物Tcが加熱フィルム16の表面に付着することを抑制することができる。
【0089】
(8)実験結果
画像形成装置を用いて本実施例における定着装置109の加熱フィルム16表面への付着物Tcの付着抑制効果を確認する実験を行った。本実験に用いた画像形成装置は、プロセススピードが90mm/sで、14枚/分のフルカラープリント出力が可能なレーザービームプリンターである。
実験に用いた本実施例に係る定着装置109の構成について説明する。定着装置109の概略構成は
図2に示したとおりである。ヒータ15の概略構成は
図3に示したとおりである。
【0090】
ヒータ15は、厚み1.0mm、幅6.0mmのアルミナからなるヒータ基板15A上に、銀とパラジウムからなる厚み10μm、幅4.0mmの通電発熱抵抗体15Bを備えている。そしてこの通電発熱抵抗体15Bは保護層15Cとしての厚み60μmのガラス層で覆われている。
【0091】
加熱フィルム16は、内径20mm、厚み30μmのポリイミド樹脂からなるフィルム基層の上に、厚み20μmのPFA樹脂からなる離型層を備えたものである。
【0092】
定着ローラ30は、アルミ製の外径14mmの芯金30A上に、厚み3.0mmの熱伝導率0.2W/m・Kのシリコーンゴムからなる弾性層30Bを形成し、最外層として厚み20μmのPFA樹脂からなる離型層30Cを設けたものである。
【0093】
定着ローラ30のアスカーC硬度は45°であった。アスカーC硬度は、アスカーC硬度計(高分子化学製)9.8N(1kgf)荷重で測定した。定着ローラ30のマイクロ硬度は50°であった。マイクロ硬度は、マイクロゴム硬度計MD−1 タイプA押針(高分子化学製)で測定した。
【0094】
定着ローラ30は、定着ローラ30の芯金30Aの長手方向の両端部を不図示の軸受にて回転可能に支持されている。
【0095】
加圧ユニット50は、LCP樹脂からなる加圧フィルムガイド52に、加圧フィルム51を外嵌させたものである。加圧フィルム51は、内径20mm、厚み30μmのポリイミド樹脂からなるフィルム基層の上に、厚み20μmのPFA樹脂からなる離型層を備えたものである。
【0096】
ヒータ15と加熱フィルム16との間、加圧フィルムガイド52と加圧フィルム51との間には、潤滑剤として、グリス500mgが塗布してある。
【0097】
加熱フィルムガイド19とヒータ15は、加熱フィルム16を介して、加圧力176.4N(18kgf)で定着ローラ30の表面に付勢され、幅7.0mmの加熱圧接部N2を形成する。加圧フィルムガイド52は、加圧フィルム51を介して、加圧力176.4N(18kgf)で定着ローラ30表面に付勢され、幅7.0mmの定着ニップ部N1を形成する。
【0098】
定着ニップ部N1の出口から記録材搬送方向に60mm進んだ位置には、排出ローラ111が設けられている。定着ニップ部N1で記録材Pは定着処理されて、排出ローラ111に送られ、排出ローラ111により排出トレイ112上に排出される。
【0099】
まず、実施例(1)〜(3)の定着装置は、
図5(a)に示したように、加熱フィルムガイド19の加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央Xcよりも下流側に突起部19Bを設けて、圧力減少領域Xdを形成したものである。実施例(1)〜(3)は、
図19に示した突起部19Bの加熱フィルムガイド19のヒータガラス面からの突出量Hと、突起部19Bの位置(加熱圧接部N2の中央Xcからの距離Xg)が異なる。尚、距離Xgは、加熱圧接部N2の中央Xcを基準に加熱フィルム16の回転方向に進んだ距離を示す。
【0100】
次に、比較例(1)及び(2)の定着装置について説明する。
【0101】
比較例(1)の定着装置の突起部19Bは、
図12に示すように、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央Xcより上流側に設けられている。比較例(1)の定着装置の突起部19Bの位置は、
図19において、Xg=−3.0mmとなる。
【0102】
比較例(2)の定着装置は、突起部19Bを有していない。従って、加熱圧接部N2に圧力減少領域Xdは形成されない。
【0103】
実施例(1)〜(3)、及び、比較例(1)と(2)の加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の圧力分布を、前述した圧分布測定器を用いて測定した結果を
図13に示す。
【0104】
実施例(1)〜(3)は、圧力減少領域Xdが加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央より下流側に形成されていることが確認できる。
【0105】
実施例(1)〜(3)及び比較例(1)と(2)の定着装置をそれぞれ用いた画像形成装置で、市販されている一般的なA4サイズのLBP印刷用紙(坪量80g/m
2)を用い、印字率5%の画像をプリントした。実験環境は、室温15℃、湿度15%である。
【0106】
尚、本実験に用いる画像形成装置は、坪量80g/m
2の記録材を定着処理する定着モードにおいて、室温15℃の環境に置かれた場合のフルカラープリントでは、ヒータ15は目標温度200℃に制御される。
【0107】
表1に、実施例(1)〜(3)及び比較例(1)と(2)における加熱フィルムガイド19の突起部19Bの高さHと、加熱圧接部N2の中央Xcからの距離Xgを示す。突起部19Bの高さH、及び、加熱圧接部N2の中央Xcからの距離Xgを
図19に示す。また、第1の圧力ピーク部Pmの面圧Pmに対する圧力減少領域Xdの面圧Pdの比率と、と第1の圧力ピーク部Pmの面圧Pmに対する第2の圧力ピーク部Xpの面圧Ppの比率についても表1に示す。
【0109】
実施例(1)〜(3)では、30000枚のプリントを行っても、加熱フィルム16の表面に付着物Tcの付着はなかった。突起部19Bbの高さHや加熱圧接部の中央からの距離Xgのパラメータや、第2の圧力ピーク部Xpの面圧Ppの大きさによらず、効果があることが確認できた。
【0110】
一方、比較例(1)及び(2)では、2000枚プリントしたところで、記録材Pの画像に光沢むらがみられるようになった。これらの定着装置の内部を観察したところ、加熱フィルム16表面に付着物Tcが付着していた。加熱圧接部N2に、圧力減少領域Xd及び第2の圧力ピーク部Xpが形成されていない構成や、圧力減少領域Xdが加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央より上流側に形成された場合には、実施例のような作用効果はないことが確認できた。
【0111】
以上説明したように、本実施例における定着装置109では、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央より下流側に圧力減少領域Xdを形成する。そして、圧力減少領域Xdよりも加熱フィルム16の回転方向下流側に、当接圧力が局部的に増大する第2の圧力ピーク部Xpを形成する。これにより、加熱フィルム16表面と定着ローラ30表面との間で付着物Tcにせん断力を発生させることで、付着物Tcの加熱フィルム16の表面への付着力を弱めて付着物Tcの加熱フィルム16への付着を抑制することができる。
【0112】
これにより付着物Tcの付着物の加熱フィルム16表面における蓄積を防ぐことができて、良好なプリント画像を維持することができる。
【0113】
ここで、本実施例の変形例について述べる。本実施例の定着装置109においては、加圧回転体として加圧フィルム51を用いたが、
図16に示すように、加圧ローラ17を用いた構成でも良い。
【0114】
また、定着ローラ30が熱源を有する構成でも良い。例えば、
図17に示すように、定着ローラ30に内包されるハロゲンヒータ70を備えた構成が考えられる。
【0115】
更に、本実施例の定着装置109においては、熱源としてセラミックヒータ(ヒータ15)を用いたが、これに限定されない。例えば、
図18に示すように、セラミックヒータに代えて加熱フィルム16に内包され、加熱フィルム16の内面を輻射熱で加熱するハロゲンヒータ60を備え、加熱圧接部形成部材としてアルミ等の金属板を用いた構成でも良い。
【0116】
[実施例2]
定着装置の他の例を説明する。
図14は本実施例に係る定着装置の概略構成を表す模式断面図である。本実施例では、実施例1の定着装置109と共通する部材、及び部分には同じ符号を付して、その部材、及び部分の説明を援用する。
【0117】
本実施例に示す定着装置109は、加熱フィルムガイド19とは別部材の押圧部品19Cを、加熱フィルムガイド19を定着ローラ30に押圧する加圧手段とは別の独立した加圧手段19Dによって押圧する構成である。加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の圧力分布は
図15に示したようになる。実施例1と同じように、加熱圧接部N2の加熱フィルム16の回転方向の中央より下流側に圧力減少領域Xdが形成され、圧力減少領域Xdよりも加熱フィルム16の回転方向の下流側に第2の圧力ピーク部Xpが形成される。
【0118】
独立した加圧手段19Dで、第2の圧力ピーク部Xpを形成する為、定着ローラ30の弾性層30Bの硬度が耐久要因などで変動したとしても、安定して第2の圧力ピーク部Xpと圧力減少領域Xdを形成することができる。
【0119】
以上説明したように、本実施例によれば、定着ローラ30の弾性層30Bの硬度変化によらず、安定して加熱フィルム16への付着物抑制効果を維持できる。