(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1検出手段による検出が実行される前に、前記第1記憶手段に記憶された前記第1検出不良ノズル情報および前記第2記憶手段に記憶された前記第2検出不良ノズル情報をリセットする手段を更に備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
前記メンテナンス処理は、前記記録ヘッドに対する吸引回復処理、前記記録ヘッドから記録に寄与しないインクを吐出する予備吐出処理、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするワイピング処理のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は本実施形態に係るインクジェット記録装置1(以下、「記録装置1」という。)を示す外観図である。記録装置1内においてロール状に保持されている記録媒体3は、後述する記録部5に給紙された後、記録データに従った記録が行われる。記録後の記録媒体3は図のようにX方向に引き出される。ユーザは、操作部15に設けられた各種スイッチを用いて、記録媒体3のサイズ指定、オンライン/オフラインの切り替えなど、記録装置1に対する各種コマンドの入力を行うことができる。
【0015】
図2は記録装置1の内部構成を示す断面図である。同図に示すように、記録装置1は、給紙部2と記録部5と検査部6と切断部8とを備える。本実施形態において給紙部2はロール状に保持されている記録媒体3を引き出して、搬送方向の下流に配置された記録部5へこれを供給する。
【0016】
記録部5は給紙部2から搬送されてきた記録媒体3に対して画像および画像形成とは関係ないノズルの吐出状態を検査するための検査パターンを記録する。記録部5は記録媒体3を所定のサイズに切断するための目印となるカットマークパターン、ノズルの吐出状態を維持するためのフラッシングパターン、ノズル検査パターン等も記録する。
【0017】
記録部5は異なる色のインクを吐出するフルライン型の記録ヘッド4a〜4dを備えており、記録ヘッド4a〜4dには記録媒体3の幅方向(Y方向)に沿ったノズル列が設けられている。本実施形態において、このようなノズル列は記録媒体3の搬送方向(X方向)へ複数配置されている。各ノズル列は、所定のピッチでY方向に配列する複数のノズルによって構成されており、Y方向と交差する方向に一定の速度で搬送される記録媒体に対し、複数のノズルからインクを吐出することによって記録媒体3にドットが形成される。本実施形態において、記録ヘッド4aはブラックインク(K)、記録ヘッド4bはシアンインク(C)、記録ヘッド4cはマゼンタインク(M)、記録ヘッド4dはイエローインク(Y)を、それぞれ吐出する。また、記録ヘッド4a〜4dには、夫々に対応するインクを貯留したインクタンクがインクチューブを介して接続されており、記録ヘッド4a〜4dからの消費に伴ってインクが供給される仕組みになっている。記録ヘッド4a〜4dの詳細については後述する。
【0018】
記録部5には記録媒体3を搬送するための搬送機構13が設けられている。搬送機構13は複数の搬送ローラ対を備えており、それぞれの搬送ローラ対の間にある記録媒体3を支持する。1つの搬送ローラ対と他の搬送ローラ対との間には記録面の裏面から記録媒体3を支持する支持面を持ったプラテン10が配置されている。同様の搬送機構13は検査部6および切断部8にも設けられている。また、記録ヘッド4a〜4dと搬送機構13とプラテン10とは筐体の中に収容されている。
【0019】
検査部6はスキャナ7aを有しており、このスキャナ7aによって記録部5が記録した画像および検査パターンを読み取る。読み取った情報はコントローラ17へ送られて、コントローラ17は、記録ヘッド4a〜4dのノズルの吐出状態のほか、記録媒体3の搬送状態、および記録位置等を検査する。
【0020】
スキャナ7aは不図示の発光部および撮像素子を備えている。発光部はスキャナ7aの読み取り方向へ向かって光を反射させる位置か、又はスキャナ7aとの間に記録媒体3を挟みスキャナ7aへ向かって光を発する位置に配置される。前者の場合は発光部から照射した光の反射光を撮像素子が受光し、後者の場合は発光部から照射した光のうち記録媒体3を透過した光を撮像素子が受光する。撮像素子は受光した光を電気信号に変換して、電気信号を出力する。撮像素子としては、Charge Coupled Devices(CCD)イメージセンサまたはComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサ等を用いることができる。
【0021】
本実施形態は、記録部5において、画像形成とは関係ない検査パターンを記録媒体3の非画像領域に記録する。この検査パターンを検査部6にて読み取り、解析することにより、各記録ヘッド4a〜4dに設けられている記録素子の吐出状態を検出することができる。
【0022】
切断部8は、上述のスキャナ7aと同一構成のスキャナ7b及び記録媒体3を切断する一対の切断機構9を有している。スキャナ7bが記録部5にて記録媒体3に記録されたカットマークパターンを読み取ることにより切断位置を確認して、切断機構9が記録媒体3を挟んでこれを切断する。
【0023】
その後、記録媒体3は不図示の乾燥部へ搬送されて、記録媒体3に記録されたインクは乾燥される。乾燥部は、熱風を記録媒体3に当てる方式、電磁波(紫外線や赤外線等)を記録媒体3に照射する方式等により、記録媒体3に記録されたインクを乾燥する。そして、乾燥部にて乾燥された記録媒体3は排紙部から排紙される。
【0024】
このように、記録媒体3の搬送、記録、検査、切断、乾燥、および排紙工程を経ることにより、画像が記録された出力物を得ることができる。以上の動作はコントローラ17が給紙部2、記録部5、検査部6、切断部8、および搬送機構13等を制御することにより行われる。
【0025】
図3は、上記4つの記録ヘッド4a〜4dのうち、記録ヘッド4aを構成するチップ10の、ノズル(吐出口)の配列状態を示す図である。本実施例において、チップ10上には4列のノズル列11〜14がX方向に並列しており、個々のノズル列は同じ種類のインクを吐出するノズルがY方向に600dpiピッチで複数配列している。各ノズルは、吐出エネルギ発生素子と吐出口とから構成される。インクの吐出方式については、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、およびMicro Electro Mechanical Systems(MEMS)素子を用いた方式等を採用することができる。本実施形態では、このようなチップ10が、X方向に交互にずれながらY方向に複数配列することにより、記録媒体3のY方向の幅が600dpiピッチで配列するノズルで覆われるような記録ヘッド4aが画成されている。
【0026】
このような構成のもと、X方向に搬送される記録媒体において、X方向に延びる1ラインのドット列は、ノズル列11〜14のいずれかのノズルすなわち4つのノズルによって代わる代わる記録される。そして、いずれかのノズルが吐出不良と検出された場合には、他の3つのノズルによって補完しながら、記録を行う。
【0027】
なお、記録ヘッドについては、このような複数のチップをつなぎ合わせて構成されるものでなくても構わない。記録ヘッドが、記録媒体3のY方向の幅全域に渡ってノズルが一列に配列された1つのチップによって構成された記録ヘッドであっても構わない。また、ここでは、KCMYの4色のインクに対応した記録ヘッド4a〜4dを配備した構成としているが、インクの色数および記録ヘッドの個数はこれに限定されるものではない。
【0028】
図4は、記録装置1の制御部14の構成を示すブロック図である。制御部14は、主に、ホスト装置16とデータの授受を行うための外部インターフェイス205、記録装置全体を制御するためのコントローラ17、およびユーザインターフェースとなる操作部15とを備えている。更に、コントローラ17は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、ヘッドドライバ209、スキャナドライバ211を備えている。
【0029】
CPU201は、ROM202に格納されたプログラムに従い、RAM203をワークエリアとしながら、各種処理を実行する。この際、HDD204は、記録データ、および記録装置1の各種動作に必要な設定情報を記憶する領域として使用される。また、画像処理部207は、CPU201の制御の下、ホスト装置16から受信した画像データの画像処理を行って、記録ヘッド4a〜4dが記録可能な記録データを生成し、RAM203またはHDD204に格納する。CPU201は、このように格納された記録データに従って、ヘッドドライバ209を制御し、記録ヘッド4a〜4dからインクを吐出させる。この際、CPU201は、エンジン制御部208介して、給紙部2、検査部6、切断部8、および搬送機構13等を制御する。また、スキャナドライバ211を介してスキャナ7aおよび7bを駆動する。
【0030】
操作部15は、ユーザとの入出力インターフェイスであり、入力部、および出力部から構成されている。入力部はハードキーやタッチパネル等で構成され、ユーザからの指示を受信するものである。出力部はディスプレイや音声発生装置などであり、情報を表示または発して、ユーザに対して情報を伝達するものである。
【0031】
なお、ホスト装置16は、コンピュータ等の汎用の機器であってもよいし、画像読み取り部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、およびフォトストレージ等の画像専用の機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータである場合、コンピュータ内の記憶装置には、オペレーションシステム、アプリケーションソフトウェア、および記録装置1用のプリンタドライバがインストールされていることが望まれる。
【0032】
(特徴構成)
以下、本実施形態における特徴的な構成について説明する。なお、以下の説明において、記載の混同を避けるため、ノズルの吐出状態を検出するために記録する画像データを検査画像、当該検査画像に従って記録媒体に記録したものを検査パターンとする。同様に、写真など、印刷の目的となる画像のデータを実画像、当該実画像に従って記録媒体に記録したものを実画と称する。本実施形態においては、1つの記録開始コマンドによって、連続紙である記録媒体に対し、複数の実画像を連続記録する場合について説明する。
【0033】
図5は、記録装置1に対しホスト装置16あるいは操作部15を介してユーザから記録開始コマンドが入力された場合にCPU201が実行するシーケンスを示すフローチャートである。
【0034】
本処理が開始されると、CPU201は、まずステップS501において、第1検出処理を実行し、その後ホスト装置16から実画像を受信する(ステップS502)。
【0035】
図6は、ステップS501で実行する第1検出処理シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、CPU201は、まず、ステップS800にて、記録ヘッドのメンテナンス処理を実行する。ここで行うメンテナンス処理は、比較的大掛かりな吸引回復処理、画像の記録にインクを吐出する予備吐出処理および記録ヘッドの吐出口面をワイパーでワイピングするワイピング処理などのうち少なくとも1つである。このメンテナンス処理を実行することにより、ヒータ断線のような半永久的な原因を有さないノズルについては、殆ど吐出状態を正常化することが出来る。
【0036】
続くステップS801において、CPU201は、HDD204に記憶されている第1検出不良ノズル情報と、第2検出不良ノズル情報をリセット(クリア)する。本実施形態において、第1検出不良ノズル情報と、第2検出不良ノズル情報は、HDD204の異なる領域に格納されており、ステップS801では、これら両方の情報をリセット、すなわち吐出不良ノズルが存在しない状態にメモリをクリアする。但し、出荷時において、既に吐出不良のノズル情報が検出されている場合には、出荷時の情報に戻すようなリセットであっても構わない。
【0037】
ここで、第1検出不良ノズル情報とは、第1検出処理にて不良ノズルとして検出されたノズルに関する情報であり、記録ヘッドおよび記録ヘッドにおける不良ノズルの位置が1ノズル単位で特定できる情報となっている。すなわち、この第1検出不良ノズル情報は、ステップS800のメンテナンス処理を行っても回復できなかったノズルに関する情報であり、このノズルは、今後メンテナンス処理を行っても回復できない可能性が高いことを示している。このため、後述のステップS509においてメンテナンス処理を行った後、ステップS510において吐出不良ノズル情報を更新するタイミングにおいて、この第1検出不良ノズル情報はリセットせずに吐出不良ノズルとして記憶しておく。また、後のステップS504において画像データを各ノズルに振り分ける際に、この第1検出処理において吐出不良ノズルとして検出されたノズルには画像データは振り分けず、他のノズルに振り分けることによって補完記録が行われる。
【0038】
一方、第2検出不良ノズル情報とは、ステップS507で実行する第2検出処理にて不良ノズルとして検出されたノズルに関する情報である。前述の第1検出処理において検出されたノズルは、ステップS504において他のノズルによって補完記録が行われるように処理されるため、この第2検出処理において検出された不良ノズルは、画像記録中に発生した不良ノズルである。この不良ノズルの発生原因については
図14を用いて後に詳しく説明する。そして、この画像記録中に発生した不良ノズルは、メンテナンス処理を行うことによって回復するノズルであると考えられる。このため、ステップS800及びS509においてメンテナンス処理が行われると、ステップS801及びS510においてこの第2検出不良ノズル情報がリセットされる。
【0039】
次に、ステップS802において、CPU201は記録ヘッド4a〜4dを用い、予めROM202に格納されている検査画像に従って、記録媒体に対し不吐出ノズル検出用の検査パターンを記録する。その後、ステップS803において、検出パターンを読み取り部6で読み取る際の解像度を記録解像度と等しい600dpiに設定した後、更にステップS804にて、スキャナ7aを用いて検査パターンの読み取りを行う。
【0040】
図7(a)および(b)は、第1検出処理における、検出パターンのドット配列状態と読み取り部7が読み取った結果を示す図である。
図3を参照しながら説明するに、本実施形態の検査画像は、1つのノズル列に含まれる全てのノズルが4ドットずつX方向に連続して記録し、そのような4ドット連続パターンを、4つのノズル列11〜14が順番に記録するようになっている。
図7(a)において、101がノズル列11によって記録されたパターン、102がノズル列12によって記録されたパターン、103がノズル列13によって記録されたパターン、104がノズル列14によって記録されたパターンである。ここでは、ノズル列14の4番目のノズルが吐出不良であった場合を示しており、当該ノズルが記録するべき箇所が白スジ901となって確認できる。なお、記録ヘッドは、白スジを検出した位置がどのノズル列のどのノズルに相当するかを判断するための基準パターン902も検出パターンの一部に記録している。
【0041】
図7(b)において、301がパターン101を読み取った結果の画像データ、302がパターン102を読み取った結果の画像データ、303がパターン103を読み取った結果の画像データ、304がパターン104を読み取った結果の画像データである。ここでは、記録ヘッドの記録解像度とスキャナの読み取り解像度が同じ600dpiであるので、ドットが記録されている画素の1つ1つが黒(1)と検出される中、画像データ304の4画素目のみが白(0)と検出されている。
【0042】
ステップS805において、CPU201は、白データが確認された位置903と基準パターンを検出した位置904とから吐出不良ノズルの位置を判断し、当該情報を第1検出不良ノズル情報としてHDD204に記憶する(ステップS806)。
図7(b)の場合であれば、ノズル列14の4番目のノズルが吐出不良である旨が、HDD204の第1検出不良ノズル情報の領域に記憶される。
【0043】
なお、図ではドットが記録されている画素が黒(1)、記録されていない画素が白(0)と判別される場合で説明したが、実際にスキャナが取得する画像データは多値の輝度情報であり、白か黒かを簡単に判断できるものではない。よって、ステップS805においては、X方向に読み取り輝度値の移動平均を取り、Y方向に対してヒストグラム解析することによって、吐出不良ノズルの判定処理を行ってもよい。
【0044】
以上で第1検出処理が終了し、
図5のステップS502に進む。この第1検出処理は、メンテナンスジョブとして実行され、処理終了後に検査パターンを切断し、未使用のロール紙が巻き戻される。
【0045】
ステップS502において、CPU201は、通常印刷ジョブとして記録媒体3に記録すべき実画像データをホスト装置から受信して、RAM203に記憶する。本実施形態において、ホスト装置16から受信する実画像は、300dpiのRGBデータとする。
【0046】
ステップS503において、CPU201は画像処理部207を用い、実画像の300dpiのRGB多値データから、記録ヘッドが記録可能な600dpiのCMYK2値データを生成する。
【0047】
図8は、画像処理部207が実行する実画像に対する画像処理工程を説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、画像処理部207は、まずステップS141にて、色処理Aを実行する。色処理Aは、ホスト装置16で表現された色空間を、記録装置1で表現可能な色空間に適応させるための処理であり、300dpiの多値のRGBデータが同じく300dpiの多値のR´G´B´データに変換される。
【0048】
続くステップS142において、画像処理部207は、色処理Bを実行する。色処理Bは、輝度データであるRGBデータを記録装置1で使用するインク色に対応した濃度データCMYKに変換するための処理である。具体的には、ROM202に予め格納されている3次元のルックアップテーブルを参照することにより、R´G´B´の多値データをC1、M1、Y1、K1の多値データに変換する。
【0049】
ステップS143では、1次元のルックアップテーブルを用い、多値データC1、M1、Y1、K1を、多値データのC2、M2、Y2、K2に変換する。ここで行うγ補正は、入力濃度信号C1、M1、Y1、K1に対し記録媒体上で実際に表現される濃度が、線形関係を得られるようにするための補正である。
【0050】
さらに、ステップS144では、量子化処理を行い、300dpiの多値データのC2、M2、Y2、K2を、記録(1)または非記録(0)を示す600dpiの2値データC3、M3、Y3、K3に変換する。量子化の方法としては、誤差拡散法やディザ法を用いることが出来る。量子化後の2値の記録データは、ラスタ(X方向に連続する列)ごとにRAM203に記憶される。以上で、画像処理部207における画像処理が終了し、個々のノズルが記録可能な記録データC3、M3、Y3、K3が得られ、
図5のステップS504に進む。
【0051】
ステップS504では、RAM203に記憶された2値の記録データを、
図6のステップS806で記憶した第1検出不良ノズル情報および後述する第2件出不良ノズル情報に従って、個々のノズルに振り分ける。この場合、吐出不良ノズルを含まないラスタについては、全てのノズル列11〜14に均等に記録データ(1)を振り分ける。一方、吐出不良ノズルを含むラスタについては、ノズル列11〜14のうち吐出が正常なノズル列にのみデータを振り分ける。
図7(b)のような場合には、4番目のラスタにおいて、ノズル列11、12および13にのみ記録データ(1)を振り分け、ノズル列14には振り分けない。
【0052】
ステップS505において、CPU201は記録ヘッド4a〜4dを用い、ステップS504で振り分けた記録データに従って1ページ分の記録を実行する。この際、ステップS501の第1検出処理にて吐出不良であると検出されたノズルが記録すべきデータは、他のノズルに振り分けられているので、白スジのない画像を出力することが出来る。
【0053】
続くステップS506において、CPU201は、記録部5が所定数のページの記録を行ったか否かを判断する。所定ページ数にまだ達していないと判断した場合は、ステップS511にて、実画像の全ての記録が完了したか否かを判断し、完了していなければ次ページの印刷のためにステップS502に戻る。また、完了している場合は本処理を終了する。一方、ステップS506で、所定ページ数に達したと判断した場合はステップS507に進み、第2検出処理を実行する。
【0054】
ここで所定ページ数とは、第2検出処理を実行する間隔を規定するページ数であり、突発的な吐出不良が多数現れない程度のページ数であることが望まれる。このようなページ数は、記録状況などによって適宜設定可能な値であり、また、ユーザによって設定可能とすることも出来る。更に、第2検出処理の検査パターンを挿入する間隔は、画像のページ数(枚数)で決めなくてもよい。例えば、搬送方向の長さが所定の長さを超えるタイミングや、所定時間経過したタイミングにおいて検査パターンを挿入する形態であってもよい。
【0055】
図9は、ステップS507で実行する第2検出処理シーケンスを説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、CPU201は、まずステップS1001にて、第1検出処理と同様の検査画像に従って、不吐出ノズル検出用の検査パターンを記録する。連続記録中に行われる第2検出処理は、その処理自体を短時間で完了させる必要があるため、第1検出処理のように記録ヘッドのメンテナンス処理などを行うことなく、直ぐに検査パターンの記録を開始する。
【0056】
図10(a)および(b)は、連続紙である記録媒体3に、実画像と検査パターンが連続して記録される状態の例を示した図である。図において、検査パターンAが第1検出処理にて記録される検査パターン、検査パターンBが第2検出処理にて記録される検査パターンである。実画1、2、3は、1つの実画像に対するステップS502〜S503の工程を、3回繰り返すことによって記録される3つの実画である。この実画1、2、3は、検査パターンBの記録が完了すると、滞ることなく次の実画が連続的に記録される。このように、本実施形態において、第2検出処理による検査パターンは、実画と実画の間に時間的にも位置的にも無駄のない状態で記録されている。
【0057】
また、
図10(b)のように、最初の実画1の前と最後の実画Eの後に検査パターンBを挿入することによって第2検出処理を行えば、画像記録の開始時及び終了時に吐出不良のない状態を保つことができる。
【0058】
なお、第1検出処理において用いる検査パターンは、
図7に示したパターンに限るものではなく、第2検出処理における検査パターンよりも高精度に吐出不良ノズルを検出可能な検査パターンであればどのようなものであってもよい。例えば、
図15に示すように、ノズル111で記録するラインL111とノズル112で記録するラインL112がX方向にオフセットして記録された階段状パターンであってもよい。このような検査パターンであれば、1ノズル単位で記録を行い、隣接ノズルの影響を受けることなく1ノズル単位で吐出不良を検出することができる。
図7の検査パターンでは、吐出されたインク滴がY方向にヨレて着弾した場合に、Y方向のノズル間隔が狭いと、インク滴が吐出されているにも関わらず吐出不良ノズルであると誤検出してしまう場合がある。これに対し
図15のような階段状パターンを用いることで、吐出不良の誤検出を低減し、不良ノズル検出精度を上げることができる。
【0059】
図9のフローチャートに戻る。ステップS1001にて検査パターンが記録されると、CPU201はステップS1002に進み、当該検出パターンの読み取り解像度を300dpiに設定する。この300dpiという値は、記録解像度や第1検出処理での読み取り解像度600dpiの半分に相当する。その後、ステップS1003に進み、スキャナ7aを用いて検査パターンの読み取りを行う。
【0060】
図11(a)および(b)は、第2検出処理において、検出パターンにおけるドット配列状態と読み取り部7が読み取った結果を示す図である。第2検出処理で記録する検査パターンも、第1検出処理で記録する検査パターンと等しく、全てのノズルが4ドットずつ連続記録するパターンを、4つのノズル列11〜14で順番に記録するようになっている。
【0061】
ここで、第1検出処理において吐出不良と判断されたノズル列14の4番目のノズルが記録すべき4つのドットは、ノズル列11、12および13夫々の4番目のノズルによって記録されているので、
図7(a)で示した白スジ901は現れていない。但し、実画を3ページ分記録した後の第2検査パターンでは、ノズル列12の6番目のノズルが吐出不良となり、当該ノズルが記録すべき位置が白スジ1101となっている。
【0062】
図12(a)〜(c)は、第2検出処理における、記録解像度と読み取り解像度の関係を示した図である。ここでは、記録ヘッドの記録解像度600dpiに対し、スキャナの読み取り解像度がその半分の300dpiであるので、読み取り解像度の1画素領域は、記録解像度の2画素×2画素領域に相当する。
【0063】
ここで、
図12(a)のように、600dpiの2画素×2画素領域のうち3つの画素にドットが記録され、1つの画素には記録されていない場合を考える。このように記録された画像を、600dpiの解像度で読み取った場合、読み取りデータは
図12(b)のようになる。すなわち、ドットが記録された画素の読み取り値が黒(1)、ドットが記録されていない画素の読み取り値は白(0)となり、記録の事実と同じ結果を得ることが出来る。
【0064】
これに対し、
図12(a)のように記録された画像を、300dpiの解像度で読み取った場合、読み取りデータは
図12(c)のようになる。すなわち、4つのドットが記録可能な領域に3つのドットが記録されている領域全体の濃度を読み取ることになるので、ドットの有無を平均化した結果が得られることになる。詳しくは、300dpiの1画素領域にドットが記録されていない領域が含まれているという事実は得られるが、どの位置にドットが記録されていないかを限定することが出来ない。
【0065】
以上のような読み取り処理を行うことにより、
図11(a)で示した検査パターンを読み取った結果は
図11(b)のようになる。低い濃度が検出された位置1102には、白スジ1101が含まれると判断することができる。
【0066】
その後、ステップS1004において、CPU201は、検出濃度の低い画素が確認された位置1102と基準パターンを検出した位置1103とから吐出不良ノズルの位置を判断する。
図11(b)の場合であれば、白スジ1101が含まれる領域は、低濃度が確認された領域1102に含まれること、つまりノズル列12の5番目および6番目の何れかあるいは両方に吐出不良のノズルが存在すると判断する。
【0067】
但し、ドットの記録位置によって規定される600dpiの2×2画素領域と、スキャナが読み取る300dpiの1画素領域は、紙面上で必ずしも一致しているとは限らない。よって、本実施形態では、続くステップS1005において、吐出不良のノズルとして設定する範囲を、ステップS1004で判断した2ノズルを中心に拡張する。具体的には、ノズル列12の3〜8番目のノズルを吐出不良ノズルとする(
図11(b)参照)。このような拡張処理を行うことによって、実際に吐出不良となっているノズルの記録が吐出不良と判断されず、他のノズルによって補完できないような状況を回避することが出来る。
【0068】
その後、ステップS1006に進み、ノズル列12の3〜8番目のノズルが吐出不良ノズルである旨を、HDD204の第2検出不良ノズル情報の領域に記憶する。
【0069】
しかしながら、600dpiの2×2画素領域と、スキャナが読み取る300dpiの1画素領域との間で殆どずれが発生しないことが分かっている場合には、ステップS1005のような工程は必ずしも必要ない。この場合には、ステップS1004からステップS1006へ進み、ノズル列12の5番目および6番目の2ノズルが吐出不良である旨をHDD204の第2検出不良ノズル情報の領域に記憶すればよい。
以上で本処理を終了し、
図5のステップS508に進む。
【0070】
以上説明した第2検出処理は、第1検出処理に比べて、上述した様に吐出不良ノズルの検出精度は劣る。そして、個々のノズルについてではなく、ノズル群の単位吐出不良か否かが判断されるので、実際には吐出不良ではないノズルも、吐出不良と判断されて記録するべき実画像を記録しない状況が生じる。しかしながら、第2検出処理は、その解像度を半分に低減している分、画像処理の対象となる画素数が減って処理を高速に完了させ、迅速に次の実画像の記録に移行することが出来る。
【0071】
ステップS508では、第2検出処理において吐出不良と判断されたノズルが所定数を超えたか否かを判断する。吐出不良のノズルが所定数を超えていない場合はステップS511へ進み、所定数を超えている場合は、吐出不良のノズルのための不吐補完は限界であると判断し、ステップS509へ進む。
【0072】
図13(a)および(b)は、ステップS508において、吐出不良と判断されたノズルのカウント方法を説明するための図である。ステップS508の工程は、「吐出不良のノズルの記録データを補完することが出来る正常なノズルが十分に存在するか」を判断するための工程である。よって、その判断は、吐出不良ノズルの記録データをどのノズルで補完するかによって異なる。
【0073】
ここで、
図13(a)は、吐出不良のノズルの記録位置を、本実施形態の様に、同じラスタデータを記録する別のノズル列のノズルによって補完する場合について示している。ここでは、同じラスタデータを記録する4つのノズルの中で、吐出不良のノズル数をカウントする。全ラスタについて上記カウントを行い、カウント値が閾値(例えば3)以上のラスタが1つでも存在した場合に、不吐補完は不能であると判断し、ステップS509へ進む。
【0074】
一方、
図13(b)は、吐出不良ノズルの記録位置を同じノズル列の両側のノズルによって補完する場合のカウント方法を示している。ここでは、連続する8ノズルのエリア中に含まれる吐出不良ノズルの数を、エリアを1ノズルずつずらしながら、カウントする。カウント値が閾値(例えば7)以上のエリアが1つでも存在した場合に、不吐補完は不能であると判断しステップS509へ進む。
【0075】
ステップS509では、記録ヘッドに対するメンテナンス処理を実行する。ここで実行するメンテナンス処理は、第1検出処理のステップS800で実行するメンテナンスシーケンスと同等であり、半永久的な原因を有する以外の吐出不良、すなわち、第2検出処理にて検出された吐出不良については、殆ど回復することが出来る。
【0076】
図14(a)および(b)は、第2検出処理にて新たに検出される吐出不良ノズルの様子を説明する図である。第2検出処理にて新たに検出される吐出不良は、メンテナンス処理を伴わない連続記録によって発生する吐出不良であり、主に、吐出口の表面外からの紙片やノズル内の泡によって引き起こされる。例えば、
図14(a)は、正常な吐出が行われていたが、吐出口に紙片等の異物が詰まり吐出口を完全に閉塞してしまった場合を示している。この場合、そのまま吐出動作を継続しても、閉塞されたノズルからはインクが吐出されないままである。一方、
図14(b)は、正常な吐出が行われていたが、吐出口の一部に紙片等の異物が詰まり、吐出口を半分閉塞してしまった場合を示している。この場合は、吐出動作を継続すると、半分閉塞された吐出口からにじみ出たインクが異物の周りに固着し、徐々に成長し、隣接するノズルの吐出口まで閉塞してしまう。
【0077】
そして、メンテナンス処理を実行せずに実画像の記録を継続すると、
図14(a)や(b)のような吐出不良の数は、徐々に増大していく。但し、吸引回復処理、吐出口面に対するワイピング処理、予備吐出処理等の一連のメンテナンス処理を実行すれば、このような異物や固着したインクは比較的簡単に除去される。すなわち、第2検出処理にて新たに検出される吐出不良は、ステップS509によるメンテナンス処理を周期的に行えば、ほぼ完璧に回復するころが出来る。
【0078】
その後、ステップS510に進み、CPU201は、HDD204に記憶されている第2検出不良ノズル情報をリセットして、ステップS511へ進む。このとき、第1検出情報はリセットせずに、吐出不良ノズル情報として残す。
【0079】
ステップS511では、実画像の全ての記録が完了したか否かを判断し、完了していなければ次ページの印刷のためにステップS502に戻る。また、完了している場合は本処理を終了する。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、精度の高い状態で吐出不良ノズルを検出する第1の検出処理と、精度は低いが吐出不良ノズルを高速に検出可能な第2の検出処理とを用意する。そして、連続記録中でない場合には、メンテナンス処理を伴いながら第1検出処理を実行し、連続記録中においてはメンテナンス処理を伴わずに所定のタイミングで第2検出処理を実行する。但し、第2検出処理で検出された吐出不良ノズルの数が所定値以上になってしまった場合には、メンテナンス処理を実行し、第2検出処理によって検出された吐出不良ノズルの情報のみをリセットする。
【0081】
このような本実施形態によれば、連続記録中においてもメンテナンス処理などによって記録動作を中断することなく、迅速に吐出不良ノズルを検出してこれを補完することが可能となる。そして、適切なタイミングで必要最低限のメンテナンス処理を実行しながらも、メンテナンス処理によって回復不可能な吐出不良ノズルについては、その情報を維持し、その記録位置に対する補完を継続することができる。
【0082】
なお、以上では、記録解像度を600dpiとし、第1検出処理で読み取るための第1の解像度を600dpi、第2検出処理での読み取るための第2の解像度を300dpiとしたが、本発明はこのような解像度に限定されるものではない。例えば、第1の解像度は、記録解像度よりも高い解像度とすることも出来る。この場合、第1検出処理における検出精度は、上記実施形態よりも更に向上させることが出来る。また、第2解像度は、記録解像度の半分の解像度でなくてもよく、高速処理に影響を与えない程度の処理負荷であれば、記録解像度と等しい解像度であっても構わない。逆に、記録解像度の半分程度であっても処理の負荷が大きい場合には、更に低い解像度としてもよい。更に、吐出不良のノズル位置を検出するのに影響するのは、ノズル並び方向すなわちY方向の解像度であるので、記録媒体搬送方向(X方向)の解像度は特に指定されるものではない。
【0083】
また、以上では、記録装置が記録コマンドを受信したタイミング、すなわち記録動作開始直前に第1検出処理を実行する内容で説明したが、第1検出処理を実行するタイミングはこれに限定されるものではない。第1検出処理は、記録動作を中断しなければ、装置の電源をONした時等、どのようなタイミングで実行しても構わない。例えば、ユーザが操作部15から指定したタイミングで実行するようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、ステップS506において、記録部5が所定数のページの記録を行ったか否かによって、第2検出処理の実行タイミングを判断したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。ステップS506では、吐出不良が発生しうるレベルまで記録動作が継続されたかどうかが判断されれば良く、その判断基準は、ページ数でなくても構わない。様々なサイズの実画像を連続して記録するような場合には、ページ数のほか実画像のサイズも考慮に入れて判断しても良く、更に、記録動作継続時間、前回メンテナンス処理を実行してからの経過時間、搬送距離、吐出回数値などを基準に判断することも出来る。
【0085】
また、上記実施形態では、第1検出処理と第2検出処理とで、同じ検査画像を用いたが、精度重視の第1検出処理と処理時間重視の第2検査シーケンスでは、異なる検査画像に基づいて異なる検査パターンを記録することも有効である。
【0086】
更に、上記実施形態では、吐出不良と検知されたノズルと同じラスタを記録する他の3ノズルで、吐出不良ノズルの記録を補完する例で説明したが、不吐補完方法はこれに限定されるものではない。
図13(b)でも説明したように、吐出不良ノズルと同じノズル列であって、吐出不良ノズルのY方向両側に位置するノズルによって吐出不良ノズルの記録位置を補完(補助する)する方法であっても構わない。
【0087】
更にまた、以上では、連続紙に画像を記録するフルライン型のインクジェット記録装置を例に説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。連続して複数枚のカットシートに実画を高速記録する場合であっても、またシリアル型の記録ヘッドを使用する場合であっても、本発明は有効に機能することが出来る。シリアル型の記録装置の場合はマルチパス記録を行うことが出来、この場合は、ある記録走査で吐出不良ノズルが記録すべき位置を、他の正常ノズルによって他の記録走査で記録するような補完方法を採用することも出来る。