(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の発熱体及び前記第2の発熱体の通電が同時に開始されないようにタイミングをずらしてそれぞれの通電が行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
複数のシートの加熱を続けて行う場合において、前記第1の発熱体の通電は、前記複数のシートのすべての加熱が終了するまで連続して行い、前記第2の発熱体の通電は、前記複数のシートの各々が前記加熱装置を通過している場合のみ行うことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置に具備される加熱装置である定着装置としては、熱ローラ方式が用いられている。
【0003】
しかしながら、熱ローラ方式の定着装置においては、熱容量の大きな熱ローラを加熱するため、多大な電力と時間を必要とする。これに対して、近年増大している省エネ、クイックスタートへの需要にこたえるため、特許文献1に示すような、加熱ベルトを用いた、ベルト方式の定着装置が提案されている。
【0004】
ベルト方式の定着装置においては、加熱ベルトと加圧部材が圧接配置され、加熱ベルト内部には、加圧部材との対抗部内面に加圧部材に定着ベルトを密着従動させるための摺動部材、加熱ベルト内面および摺動部材を加熱するための熱源が配置される。摺動部材は、加圧部材との間に均一なニップを形成するために、摺動板保持部材に支持され、摺動板保持部材は、さらに摺動板保持部材を長手方向に均一に加圧するために、支持部材によって、加圧支持される。
【0005】
このとき、画像形成装置の速度が比較的遅い場合は単一の熱源を用いて問題ないが、近年、高速化、一枚目出力時間(First Page Out Time:FPOT)短縮の要求が大きく、定着ベルトを急速に加熱する必要がある。そのためには、熱源の消費電力をある程度大きくする必要がある。このとき、熱源のオン・オフに伴う、フリッカ(同一電源に接続された蛍光灯やCRTモニタ等のちらつき)が問題となる。
【0006】
フリッカを防止するためには、急激な負荷変動を避ける必要がある。すなわち、熱源を複数に分割し、オン・オフ・のタイミングをずらすことにより、フリッカを軽減することが可能である。そのような加熱装置の一例は、特許文献2に開示されている。
【0007】
熱源としては、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、等が用いられる。特にハロゲンランプは、入手の容易さ、配置の自由度から、定着装置に用いるのには好適である。複数の熱源を配置する方法としては、ニップに対する略垂線に沿って配置することで、支持部材との干渉を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
<第1実施形態>
(画像形成装置の全体構成)
図3は、本発明の実施形態の画像形成装置の全体構成を示す図である。この画像形成装置は電子写真方式を用いたプリンタである。
【0017】
プリンタ100は、外部のホストコンピュータ等(図示せず)から画像情報を受信し、受信した画像情報に応じた画像をシート状の記録材P(シート)に形成して記録する。
【0018】
プリンタ100がプリント信号を受信すると、感光ドラム11の回転駆動が開始される。感光ドラム11は時計方向に規定の周速度にて回転駆動される。そして、規定のバイアスが印加されている帯電ローラ12により、感光ドラム11の表面が規定の電位に帯電される。
【0019】
次に、不図示のホストコンピュータ等からの画像情報に応じて感光ドラム11の表面の帯電処理済みの部位が、レーザースキャナ13により走査および露光される。露光された領域では画像情報に応じた静電潜像が感光ドラム11表面に形成される。そして、現像装置14により、現像されて、感光ドラム11の表面にトナー画像として可視像化される。
【0020】
一方、所定のタイミングにて駆動された給送ローラ15により給送カセットから記録材Pが一枚分離給送される。給送カセットから給送された記録材Pはレジストローラ対16により所定の制御タイミングにて感光ドラム11と転写ローラ17の間に形成された転写ニップ部Nへと給送される。そして、記録材Pが転写ニップ部を挟持搬送される過程において感光ドラム11上のトナー画像が記録材Pに順次転写される。
【0021】
そして、転写処理された記録材Pは、定着装置18(加熱装置)によりトナー画像の加熱定着処理が施されたのち、排出ローラ対19を通過して、プリンタ本体の外へと排出される。
【0022】
感光ドラム11上に残された転写残トナーは、クリーニング装置20によりクリーニングされ、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0023】
(定着装置の構成)
次に、加熱装置である定着装置18の構成について説明する。
図1は、定着装置18の構成を示す図である。
【0024】
定着装置18は、一般的な電子写真方式の画像形成方法により形成されたトナー像を加熱定着するためのものである。すなわち、図面右側より、トナー像を担持した記録材Pが、不図示の搬送手段により搬送され、定着装置18を通過すことにより、トナー像が加熱定着される。定着装置18は、記録材Pを加熱する、回転可能に支持された加熱ベルト1(無端ベルト部材)を具備している。加圧回転体である加圧ローラ2は、加熱ベルト1に圧接し、加熱ベルト1を駆動しつつ、記録材Pを搬送する。加熱ベルト1の内側には、加熱ベルト1に接触し、加熱ベルト1を介して、加圧ローラ2との間で定着ニップを形成するための摺動板3(摺動部材)が加熱ベルト1の内面を摺動するよう設けられている。
【0025】
摺動板保持部材4は、摺動板3を保持する。支持部材5は、摺動板保持部材4を支持し、不図示の加圧手段により、摺動板保持部材4を介して、摺動板3を加圧することによって加圧ローラ2との間に定着ニップ(圧接ニップ部)を形成する。すなわち、加圧ローラ2と摺動板3とが加熱ベルト1と記録材Pとを挟持して長手方向に直線状の定着ニップを形成し、この直線状の定着ニップで加熱及び加圧され、記録材Pの表面に掲載されたトナー画像が定着される。
【0026】
加熱ベルト1や摺動板3を加熱するヒータは、エンドレスの加熱ベルト1の内側にメインヒータ6b(第1の発熱体)とサブヒータ6a(第2の発熱体)の2個が配置されされている。サブヒータ6aは、2つのヒータのうち下側、すなわちメインヒータ6bよりも摺動板3に近い位置に配置され、補助的な役割を果たす熱源である。メインヒータ6bは、2つのヒータのうち、上側、すなわちサブヒータ6aよりも加熱ベルト1に近い側に配置され、定着プロセスに主に使用される熱源である。また、加熱ベルト1の外部には、不図示の加熱ベルト表面温度検出手段が設けられる。加熱ベルト1の表面温度検出手段により検出された温度は、不図示の制御手段に送られ、制御手段によりメインヒータ6bおよびサブヒータ6aの動作が制御される。
【0027】
また、本実施形態における定着装置18には配置しなかったものの、摺動板3の裏面や、摺動板保持部材4等に温度検知手段を設け、定着装置内部の構造物温度を測定し、その結果に基づいてサブヒータ6a、メインヒータ6bの駆動条件を決定しても構わない。
【0028】
加熱ベルト1は、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂またはニッケルやSUSといった金属製の基材上に離型層を設けることにより構成される。特に、カラートナー像のように、複数色を混色し、均一な定着画像を得る必要がある場合は、基材上に100〜1000μm程度の厚みの弾性層を設け、その上に離型層を設ける構成とすることが望ましい。
【0029】
また、加熱ベルト1の裏面(摺動部材側)に、黒色塗料等による、吸熱層を設けても良い。本実施形態の加熱ベルト1は、厚み50μmのSUS基材上に、弾性層として300μmの厚みのシリコーンゴム層を設け、さらに表面の離型層として、フッ素樹脂チューブを被覆している。また、加熱ベルト1の裏面には、耐熱性の黒色塗料を塗布し、熱源からの熱を効率よく吸収する構成としている。
【0030】
加圧ローラ2は、芯材上に弾性層、離型層を設けることにより構成される。本実施形態においては、芯材として、鉄製の心金、弾性層として、発泡シリコーンゴム層を設けた上に、フッ素樹脂チューブの離型層を設けたものを用いている。
【0031】
摺動板3は、金属板、セラミック板等の板材を用いる。定着ニップ内での圧力分布を変化させる凹凸形状等を設けても構わない。また、板材にフッ素樹脂等の樹脂コーティングまたはガラスコーティング等を設けても構わない。本実施形態においては、摺動板3として、幅10mm、長さ270mm、厚み1mmのアルミ平板表面にフッ素樹脂コーティングを施したものを用いている。
【0032】
摺動板保持部材4は、耐熱樹脂、金属等により構成され、摺動板3を保持する。また、摺動板保持部材4は、加熱ベルト1の軌道をガイドする機能を持っても良い。本実施形態においては、摺動板保持部材4を、LCP(液晶ポリマー)成形により得た。また、本実施形態における摺動板保持部材4には、長手方向にサブヒータ6aからの熱を直接、摺動板3に伝えるためのスリットを設けている。
【0033】
支持部材5は、金属、樹脂等により形成され、不図示の加圧手段により長手端部で加圧され、長手方向に均一に摺動板保持部材4を加圧することにより、摺動板3と加圧ローラ2との間に、加熱ベルト1を介して、均一な定着ニップを形成する。本実施形態においては、支持部材5として、厚み2mmの鉄製部材を用いた。
【0034】
サブヒータ6aおよびメインヒータ6bは、ランプヒータ、電熱線または抵抗パターンが備えられた面状発熱体等が主に用いられる。サブヒータ6aとメインヒータ6bは、異なる形式の熱源を用いても構わない。本実施形態においては、サブヒータ6a、メインヒータ6bとも、入手、配置が容易な円筒形状(長尺形状)のハロゲンランプを用いた。
【0035】
ここで、サブヒータ6a及びメインヒータ6bは、定着装置18の長手方向に垂直な投影面に於いて、およそ定着ニップに対して引いた垂線Lvに沿って配置される。すなわち、立体的に表現すれば、サブヒータ6aとメインヒータ6bは、定着ニップ部における加圧ローラ2と加熱ベルト1とが接する接線を含み、摺動板3の摺動面に略垂直な平面上で、それぞれ、この接線に平行となるように設けらている。
【0036】
これは、サブヒータ6aとメインヒータ6bを水平や斜めに配置すると、支持部材5にヒータが近づくこととなり、支持部材5が必要以上に昇温することとなり、好ましくないからである。また、メインヒータ6bを加熱ベルト1の外部に配置し、サブヒータ6aを加熱ベルト1の内部に配置すると、定着装置18の大型化及び構造の複雑化を招くことから、好ましくない。したがって、サブヒータ6aとメインヒータ6bは、加熱ベルト1の内側で、定着装置18の長手方向に垂直な投影面に於いて、およそ垂線Lvに沿って配置されることが好ましい。
【0037】
さらに、本実施形態において、サブヒータ6aとメインヒータ6bの定格消費電力(最大消費電力)は、サブヒータ6aが500Wで、メインヒータ6bが900Wとした。すなわち、メインヒータ6bの最大消費電力の方がサブヒータ6aの最大消費電力よりも大きくなっている。
【0038】
(定着装置の動作)
画像形成装置が動作を開始した後、一定のタイミングで、定着装置18の動作を開始する。不図示の定着モータにより、加圧ローラ2が回転駆動され、加圧ローラ2による駆動力により、加熱ベルト1の駆動も行われる。
【0039】
サブヒータ6a及びメインヒータ6bはともに不図示の制御手段によりオン・オフ制御される。加圧ローラ2の駆動開始とともに、サブヒータ6aを点灯し、定着装置18の内部の構造物を加熱しつつ、メインヒータ6bが加熱ベルト1の裏面を加熱することにより、定着動作に必要な熱が供給される。すなわち、室温状態からの定着装置18の立ち上げ時は、サブヒータ6a、メインヒータ6bともに点灯する。なお、十分な定着性を得るためには、加熱ベルト1の表面温度が160℃まで立ち上がっていることが必要となるため、160℃を加熱ベルト1表面温度の目標とした。
【0040】
加熱ベルト1の表面温度が160℃以上となるタイミング以降に、転写処理された記録材Pが定着装置18に搬送され、トナー画像の加熱定着処理が施され、排出ローラ対19を通過して、プリンタ100の外へと排出される。
【0041】
定着装置18が室温まで完全に冷えている場合、加熱ベルト1のみを加熱しても、定着ニップ部近傍においては、摺動板3や摺動板保持部材4、さらには支持部材5等、定着装置内部の構造物に熱を奪われてしまい、加熱ベルト1の昇温に時間がかかってしまう。そのため、サブヒータ6aを点灯することにより、定着装置18の内部の構造物を効果的に温めることにより、定着装置18の立ち上げを急速に行うことができる。
【0042】
本実施形態においては、加熱ベルト1の表面温度が160℃となるまでの時間は、7秒であった。記録材Pの搬送のための時間等を考慮しても、本実施形態の構成においては、一枚目出力時間を10秒以下とすることを達成できる。
【0043】
(従来例との比較)
次に、比較例と本実施形態の構成で、加熱ベルト1の表面温度の推移を評価した。
【0044】
この比較例においては、第1実施形態と同様の画像形成装置、定着装置を用いるものの、メインヒータ6bとサブヒータ6aの定格電力を逆にしたことが異なる。すなわち、サブヒータ6aの定格電力として、900W、メインヒータ6bの定格電力として、500Wのものを用いた。
【0045】
このとき、前回転時にメインヒータ6b、サブヒータ6aを同時に点灯すると、短時間で定着装置内部の構造物が高温になり、樹脂部材が溶融する可能性が発生するため、立ち上げ後短時間でサブヒータ6aをオフすることになる。メインヒータは加熱ベルト1の裏面を加熱するものの、定格電力が小さいために、加熱ベルト1の昇温速度は小さくなる。
【0046】
図2は、本実施形態と比較例の、室温(23℃)からの立ち上げ時の、加熱ベルト1の表面温度の推移を測定したグラフである。
図2において、実線は本実施形態における加熱ベルト1表面の温度推移、破線は比較例における加熱ベルト1の表面の温度推移を示す。
【0047】
図2に示すように、比較例においては、加熱ベルト1の表面温度が立ち上がらず、一枚目出力時間が不利になっていることがわかる。比較例においては、加熱ベルト1の表面が目標温度に到達するまでの時間は10.5秒であった。したがって、一枚目出力時間は、12〜13秒程度まで伸びてしまう。一方、本実施形態の構成においては、加熱ベルト1の表面温度が目標温度まで達するまでに要する時間は7秒程度であり、本実施形態の構成であれば、一枚目出力時間を10秒以内とすることが可能である。
【0048】
効率よく加熱ベルト1を加熱し、定着性を確保できる温度まで昇温させるために、メインヒータ6bの定格電力を、サブヒータ6aの定格電力よりも大きくする。そして、低温からの立ち上げ時にはサブヒータ6aにより、定着装置内部の構造物を効率よく温めながら、メインヒータ6bによって、加熱ベルト1の裏面により大きな熱量を供給することが効果的であることがわかる。
【0049】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態の画像形成装置について説明する。本実施形態においては、メインヒータとサブヒータを同時にオン・オフすることによる、フリッカを防止するため、メインヒータ、サブヒータの点灯タイミングをずらしたことを特徴とする。
【0050】
本実施形態では、プリンタ100は、第1実施形態と同様のものを用いた。また、定着ニップ部の下流側には、フォトカプラ等による排出センサ201が設けられ、定着ニップ部における記録材Pの有無を検知する。第1実施形態と異なるのは、メインヒータ6bとサブヒータ6aの通電の制御のタイミングである。
【0051】
図4は、本実施形態の定着装置18における、メインヒータ6b、サブヒータ6a、排出センサ201のオン・オフの動作のタイミングを示すシーケンスチャートである。このシーケンスチャートは、記録材Pを2枚連続通紙した場合のものである。
【0052】
同図に示すように、プリンタ100は、タイミング401においてプリント信号を受け取り、それと同時に定着装置18を駆動するモータが回転を始める。それとともに、メインヒータ6bへの通電を行い、加熱ベルト1への加熱を開始する。サブヒータ6aは、メインヒータより遅れて、タイミング402で通電を開始する。このことにより、メインヒータ6b、サブヒータ6aが同時に点灯を開始することを防ぎ、急激な負荷変動によるフリッカを防止している。特にハロゲンヒータを用いた場合には、通電開始時の突入電流が大きいので、2つのヒータが同時にオンすると急激に電流が流れてフリッカの原因となりやすい。このため2つのヒータのオンのタイミングを変えることは重要である。
【0053】
サブヒータ6aは、記録材Pの先端が排出センサ201を通過するタイミング403で消灯する。そして、レジストローラ対16に記録材Pが通過してから所定の時間が経過することにより定着装置18に2枚目の記録材Pが通過するタイミング404でサブヒータ6aが点灯される。さらに、この2枚目の記録材Pが定着装置18を通過し、排出センサ201で検知されるタイミング405で、再び、サブヒータ6aは、消灯する。
【0054】
立ち上げ時にある程度、定着装置18の構造物に蓄熱された状態であれば、メインヒータ6bから加熱ベルト1への熱供給のみで定着が可能である。そして、その後は紙間で熱を補うために、記録材Pが定着装置18を通過する間のみサブヒータ6aを点灯し、記録材Pが通過していない間は、消灯する。2枚数の記録材Pの排出後、タイミング406に於いて、メインヒータも消灯される。すなわち、複数の記録材Pの加熱を続けて行う場合において、メインヒータ6bの通電は、複数の記録材Pのすべての加熱が終了するまで連続して行い、サブヒータ6aの通電は、複数の記録材Pの各々が定着装置18を通過している場合のみ行う。これにより、省電力化が可能となる。
【0055】
本実施形態においては、通紙中にメインヒータ6bは常に点灯しているが、通紙中に加熱ベルト1の表面温度が定着に必要な温度を大幅に超えた場合は、メインヒータ6bもオフし、加熱ベルト1等に蓄熱された熱のみで定着動作させても良い。この場合も、メインヒータ6bとサブヒータ6aは、同時に点灯開始・消灯を行うことが無いよう、点灯・消灯タイミングをずらすシーケンスが採用される。