特許第6039313号(P6039313)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039313
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】衛生用薄葉紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20161128BHJP
   D21F 1/40 20060101ALI20161128BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A47K10/16 D
   D21F1/40
   D21H27/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-189879(P2012-189879)
(22)【出願日】2012年8月30日
(65)【公開番号】特開2014-45864(P2014-45864A)
(43)【公開日】2014年3月17日
【審査請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祥子
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−116614(JP,A)
【文献】 特開2011−212866(JP,A)
【文献】 特開2010−202986(JP,A)
【文献】 特開2007−061637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原反ロールから繰り出される複数の連続シートを積層して巻き取るプライマシンにおいて、
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理し、
そのカレンダー処理した積層連続シートを巻き取るまでの搬送過程に、積層連続シートの積層内面に接するように摺接バーを介在させる、
ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【請求項2】
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理した後に巻き取る第1プライ工程と、
前記第1プライ工程で巻き取って得たロールから積層連続シートを繰り出し、その積層連続シートの搬送過程に、積層連続シートの積層内面に接するように摺接バーを介在させ、その後に巻き取る第2プライ工程を行う、
ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【請求項3】
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理した後に巻き取る第1プライ工程と、
前記第1プライ工程で巻き取って得た複数のロールから積層連続シートを繰り出して積層して二次積層連続シートとするか、又は、前記第1プライ工程で巻き取って得た1又は複数のロールから積層連続シートを繰り出すとともに、抄紙設備により抄造され巻き取られた原反ロールから連続シートを繰り出し、その連続シートと前記積層連続シートとを積層して二次積層連続シートとし、
その二次積層連続シートを搬送する過程で、二次積層連続シートの積層内面に接するように摺接バーを介在させ、その後に巻き取る第2プライ工程とを行う、ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【請求項4】
摺接バーは、表面が粗面化された断面円形又は断面楕円形の棒である請求項1〜3の何れか1項に記載の衛生用薄葉紙の製造方法。
【請求項5】
第1プライ工程と第2プライ工程とを同一のプライマシンで行うこととし、
第1プライ工程では、摺接バーをバイパスして巻き取りを行い、
第2プライ工程では、カレンダー処理を行なわない、
請求項2又は3記載の衛生用薄葉紙の製造方法。
【請求項6】
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理した後に巻き取る第1プライ工程と、
前記第1プライ工程で巻き取って得た複数のロールから積層連続シートを繰り出してプライ剥離手段にて一時的に各連続シートにプライ剥離し、その一方の連続シートに液体を付与した後に再積層して積層連続シートに戻し、その後にその積層連続シートを液体を付与した連続シートの側が積層内面となるように積層して二次積層連続シートとし、その二次積層連続シートを巻き取る第2プライ工程とを行う、ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【請求項7】
第1プライ工程と第2プライ工程とを同一のプライマシンにて行うこととし、
第1プライ工程では、液体を付与する手段をバイパスして巻き取りを行い、
第2プライ工程では、カレンダー処理を行なわない、
請求項6記載の衛生用薄葉紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー、トイレットペーパー等の衛生用薄葉紙の製造方法に関し、特に複数プライのプライ構造を有する衛生用薄葉紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパー、トイレットペーパー等の衛生用薄葉紙では、「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」とが求められる。
特に、衛生用薄葉紙では、従来、2プライが一般的であったところ、近年では、3プライや4プライといった厚手で高級タイプの需要も高まっており、このような高級タイプの衛生用薄葉紙では、「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」のいっそうの向上が求められている。
【0003】
衛生用薄葉紙では、米坪を高めて紙厚を厚くすることにより実際の嵩を高めることができるが、この方法で嵩を高めても、紙が硬く、重たいものとなり、求められる「ふんわりとした嵩高感」とはならない。
また、紙を抄紙する際に低密度としてふんわりとした嵩のあるシートを得ても、複数プライ構造を採る衛生用薄葉紙では、シート同士をプライ構造とする際に押さえローラ間に通すため、この段階でシートの繊維間空隙がつぶされて嵩が減少してしまう。また、低密度なシートは、繊維間空隙が多くなるため表面の滑らかさに優れない。
【0004】
他方、「表面の滑らかさ」を高めるにはカレンダー処理が有効であるところ、カレンダー処理は、表面平滑なローラをシートに押し当てることにより行われるため従来製法では「ふんわりとした嵩高感」との両立が難しい。
【0005】
このように複数プライのプライ構造を有する衛生用薄葉紙では、「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」をともに向上させつつ効率的に製造することが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4431955号公報
【特許文献2】特開2005−40620号公報
【特許文献3】特開2012−110407号公報
【特許文献4】特許4763089号公報
【特許文献5】特開2006−97191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」とをともに向上させる、効率的な複数プライ構造を採る衛生用薄葉紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段及びその作用効果は次記のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
原反ロールから繰り出される複数の連続シートを積層して巻き取るプライマシンにおいて、
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理し、
そのカレンダー処理した積層連続シートを巻き取るまでの搬送過程に、積層連続シートの積層内面に接するように摺接バーを介在させる、
ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【0009】
(作用効果)
本項記載の発明では、積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理するため、製造される衛生用薄葉紙の外面(表面)の平滑性が高いものとなる。
その一方、カレンダー処理後の積層連続シートを巻き取るまでの間に搬送過程で、積層連続シートの積層内面に接するように摺接バーを介在させて連続シートを一時的に分離させる。
摺接バーと積層連続シートの積層内面を接するように搬送させることで、摺接バーと積層内面とが摺れて表面の毛羽立ちが生ずるとともに、一時的なプライ剥離が生ずることでその毛羽立ちされた表面に空気が入り込む。これにより製造される衛生用薄葉紙がふんわりとした嵩高なものとなる。
このように本項記載の発明によれば、表面の滑らかさに優れ、しかもふんわりとした嵩高な衛生用薄葉紙が得られる。
特に、本項記載の発明は、既存のプライマシンを小改良するだけで本発明に係る衛生用薄葉紙を製造することができる。
また、プライマシンは比較的高速に積層連続シートを搬送させる設備でもあるため、摺接バーとの摩擦による適度な毛羽立ちが生ずるようになる。
なお、連続シートを重ねると、2プライでは積層内面は1つ、3プライでは2つとなる。すなわち、プライ数−1の積層内面があるが、本項記載の発明では、その内の一つの積層内面のみに行なっても効果を奏する。
【0010】
〔請求項2記載の発明〕
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理した後に巻き取る第1プライ工程と、
前記第1プライ工程で巻き取って得たロールから積層連続シートを繰り出し、その積層連続シートの搬送過程に、積層連続シートの積層内面に接するように摺接バーを介在させ、その後に巻き取る第2プライ工程を行う、
ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【0011】
(作用効果)
本項記載の発明も、請求項1記載の発明と同様の作用効果を奏する。すなわち、積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理するため、製造される衛生用薄葉紙の外面(表面)の平滑性が高いものとなる。
また、摺接バーと積層連続シートの積層内面を接するように搬送させることで、摺接バーと積層内面とが摺れて表面の毛羽立ちが生ずるとともに、一時的なプライ剥離が生ずることでその毛羽立ちされた表面に空気が入り込む。これにより製造される衛生用薄葉紙がふんわりとした嵩高なものとなる。
特に、本項記載の発明では、第1プライ工程と、第2プライ工程において、それぞれ巻き取り操作がある。よって、第1プライ工程で巻き取ったロールの一部のみを第2プライ工程に移送するようにすることができる。
これにより、第1プライ工程のみの表面が滑らで嵩のあまりないロールから衛生用薄葉紙を製造することができ、その一方、さらに第2プライ工程まで行なったロールから表面がなめらかでふんわりとした嵩高な衛生用薄葉紙を製造することもできるようになる。
また、本項記載の発明では、第1プライ工程で巻き取ったロールと、第1プライ工程を経ていないロールとを用いて第2プライ加工を行なってもよい。
【0012】
〔請求項3記載の発明〕
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理した後に巻き取る第1プライ工程と、
前記第1プライ工程で巻き取って得た複数のロールから積層連続シートを繰り出して積層して二次積層連続シートとするか、又は、前記第1プライ工程で巻き取って得た1又は複数のロールから積層連続シートを繰り出すとともに、抄紙設備により抄造され巻き取られた原反ロールから連続シートを繰り出し、その連続シートと前記積層連続シートとを積層して二次積層連続シートとし、
その二次積層連続シートを搬送する過程で、二次積層連続シートの積層内面に接するように摺接バーを介在させ、その後に巻き取る第2プライ工程とを行う、ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【0013】
(作用効果)
本項記載の発明も、請求項1記載の発明及び請求項2記載の発明と同様の作用効果を奏する。また、第1プライ工程と第2プライ工程で巻き取りを行なうため、製造する衛生用薄葉紙の種類を生産量に応じて適宜変更することができる。
【0014】
〔請求項4記載の発明〕
摺接バーは、表面が粗面化された断面円形又は断面楕円形の棒である請求項1〜3の何れか1項に記載の衛生用薄葉紙の製造方法。
【0015】
(作用効果)
本項記載の発明では、摺接バーが断面円形又は断面楕円形の棒であるためシートの積層内面に接するように搬送してもスムーズに搬送することができ、また、その表面が粗面化されているため、接触過程で効率的に積層内面が毛羽立つようになる。もって、ふんわりとした嵩高感のあるものとすることができる。
【0016】
〔請求項5記載の発明〕
第1プライ工程と第2プライ工程とを同一のプライマシンで行うこととし、
第1プライ工程では、摺接バーをバイパスして巻き取りを行い、
第2プライ工程では、カレンダー処理を行なわない、
請求項2又は3記載の衛生用薄葉紙の製造方法。
【0017】
(作用効果)
第1プライ工程と第2プライ工程とを同一のプライマシンで行なうことにより、製造設備コストを削減でき、また、既存のプライマシンの小改良のみで効率良く「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」とを向上させることができる。
【0018】
〔請求項6記載の発明〕
抄紙設備により抄造され巻き取られた複数の原反ロールから繰り出される連続シートをその連続方向に沿って積層して積層連続シートとし、その積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理した後に巻き取る第1プライ工程と、
前記第1プライ工程で巻き取って得た複数のロールから積層連続シートを繰り出してプライ剥離手段にて一時的に各連続シートにプライ剥離し、その一方の連続シートに液体を付与した後に再積層して積層連続シートに戻し、その後にその積層連続シートを液体を付与した連続シートの側が積層内面となるように積層して二次積層連続シートとし、その二次積層連続シートを巻き取る第2プライ工程とを行う、ことを特徴とする衛生用薄葉紙の製造方法。
【0019】
(作用効果)
本項記載の発明では、第1プライ工程で積層連続シートの外面をカレンダー手段にてカレンダー処理するため、製造される衛生用薄葉紙の外面(表面)の平滑性が高いものとなる。
その一方、第1プライ工程で巻き取って得た原反ロールから複数の積層連続シートを繰り出して剥離手段にて一時的に連続シートにプライ剥離し、その一方の連続シートに液体を付与した後に再積層する。一時的に剥離した状態で一方の連続シートのみに液体を付与することで、カレンダー処理により平滑化された面の連続シートへの液体付与の影響を与えることなくシートに液体が付与される。そして、この液体付与によりその付与されたシートのみが液体吸収に伴うクレープの伸びなどによって伸ばされる。
すなわち、本項記載の発明では、第2プライ工程にて液体が付与された後の積層連続シートは、一方面がカレンダー処理された平滑面を有し、他方の面は液体付与による伸び等によって細かな皺や凹凸が発生した状態となり乾燥後はふんわりとした嵩高なものとなる。
本項記載の発明では、この状態の積層連続シートを液体を付与した連続シートの側が積層内面となるように積層して二次積層連続シートとし、その二次積層連続シートを巻き取る。したがって、表面の滑らかさに優れ、しかもふんわりとした嵩高な衛生用薄葉紙が得られる。
また、請求項2記載の発明や請求項3記載の発明と同様に、第1プライ工程と第2プライ工程で巻き取りを行なうため、製造する衛生用薄葉紙の種類を生産量に応じて適宜変更することができる。
【0020】
〔請求項7記載の発明〕
第1プライ工程と第2プライ工程とを同一のプライマシンにて行うこととし、
第1プライ工程では、液体を付与する手段をバイパスして巻き取りを行い、
第2プライ工程では、カレンダー処理を行なわない、
請求項6記載の衛生用薄葉紙の製造方法。
【0021】
(作用効果)
第1プライ工程と第2プライ工程とを同一のプライマシンで行なうことにより、製造設備コストを削減でき、また、既存のプライマシンの小改良のみで効率良く「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」とを向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり本発明によれば、「ふんわりとした嵩高感」と「表面の滑らかさ」とがともに向上される、効率的な複数プライ構造を採る衛生用薄葉紙の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る抄紙設備での原反ロールの製造方法を示す概略図である。
図2】本発明の第1実施形態を説明するための概略図である。
図3】摺接バーを説明するための斜視図である。
図4】第2実施形態に係るプライマシンでの第1プライ工程を説明するための概略図である。
図5】第2実施形態に係るプライマシンでの第2プライ工程を説明するための概略図である。
図6】第2実施形態における嵩高さの向上作用を説明するための断面図である。
図7】第3実施形態に係るプライマシンでの第1プライ工程を説明するための概略図である。
図8】第3実施形態に係るプライマシンでの第2プライ工程を説明するための概略図である。
図9】第3実施形態における嵩高さの向上作用を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態を説明する。なお、図中の矢印HDは水平方向を、矢印LDは上下方向を示している。
【0025】
『第1実施形態』
【0026】
本発明の第1実施形態を図1〜3を参照しながら説明する。
【0027】
〔抄紙工程〕
本発明に係る抄紙工程を図1に示す抄紙設備例を参照しながら説明する。まず、ヘッドボックスからパルプスラリーに適宜の薬品を添加して予め調整した紙料がワイヤーパートのワイヤ上に供給して湿紙Wを形成する(フォーミング工程:図示しない)。
【0028】
次にこの湿紙Wをプレスパート31のボトムフェルト31Bに移送し、その後、トップフェルト31T及びボトムフェルト31Bに挟持したまま、トップロール32とボトムロール33の間を通過させて搾水する(脱水工程)。
【0029】
その後、搾水された湿紙Wを、トップフェルト31Tに載せた状態で、タッチロール34を介してヤンキードライヤー35の表面に付着させて乾燥させた後にドクターブレード36によって掻き剥がしてクレープを有する乾燥原紙S1(後述の一次連続シート)とする(乾燥工程)。クレープ率は本実施形態では特に限定されない。
【0030】
そして、この乾燥原紙S1をワインディングドラム37を有する巻き取り手段38によって、前記乾燥原紙S1の裏面が原反ロールJRの軸側に対向するようにして(巻き取り内面となるようにして)巻き取り、原反ロールJRとする(原反巻き取り工程)。
【0031】
かかる原反ロールJRは、抄紙設備X1の性能によっても相違するが、概ね直径が1000〜5000mm、長さ(幅)が1500〜9200mm、巻き長さが5000〜80000mである。
【0032】
なお、乾燥原紙S1の裏面とは、ヤンキードライヤー35のシリンダと接していた面の反対側の面のことを意味する。なお、カレンダー工程の有無にもよるが一般には鏡面のヤンキードライヤーに接していた表面のほうが滑らかで表面性に優れる。
【0033】
〔プライマシンにおける工程〕
次いで、第1実施形態では、上記抄紙設備X1で製造された原反ロールJRから、図2に例示する積層設備とも称されるプライマシンX2にてロールRを製造する。
【0034】
(積層工程)
図示のプライマシンX2は、ロールを2つ以上セット可能であり、第1実施形態では、上記原反ロールJR,JRを2つセットして、各原反ロールJR,JRから連続シートを繰り出すようにしている。
【0035】
繰り出された連続シートS11,S12は、重ね合わせ部51に供給され、連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とされる。
重ね合わせ部51はガイドロール或いは一対のニップロール等で構成され、各連続シートS11,S12が合流されて積層する部位である。
なお、図示例では、各原反ロールJR,JRから繰り出される連続シートS11,S12の表面が、それぞれ積層連続シートS2の表面(ここで積層連続シートの「表面」とは積層外面である積層連続シートS2の表裏面のことである)となるようして重ね合わせ部51に供給されるようになっている。
なお、連続シートS11,S12の裏面がそれぞれ積層連続シートS2の表面となるよう構成してもよいし、連続シートS11,S12のどちらか一方の裏面が積層連続シートS2の表面となり、他方の表面が積層連続シートS2の表面となるようしてもよい。
また、図示例では原反ロールJRを2つセットしていわゆる2プライの積層連続シートを巻取る例であるが、3セット、4セットとして3プライ、4プライの積層連続シートを巻取るようにすることも可能である。
【0036】
(カレンダー処理)
次に、重ね合わせ部51で積層された積層連続シートは、カレンダー手段52に供給されたカレンダー処理される。図示のカレンダー手段は、一対のカレンダーロール52A,52Bで構成されている。カレンダー手段52におけるカレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーのことである。
カレンダー手段52の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、一つであるとスペースが狭くとも設置可能であるという利点を有する。
カレンダー処理におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数などが適宜の設計事項であり本発明では限定されない。求める衛生用薄葉紙の品質すなわち表面性によって適宜変更することができる。
【0037】
(摺接工程)
次に カレンダー処理した積層連続シートS2は、搬送過程で積層連続シートS2の積層内面に接するように摺接バー53が介在させられる。すなわち、この摺接バー53の部分にて積層連続シートS2は一時的に連続シートS11,S12に分離される態様となる。
摺接バー53は、鉄、ステンレス等の金属製の棒であり、プライマシンX2のカレンダー部から後段の巻き取り手段までの間において、図2図3に示すように積層連続シートS2の幅方向に沿って延在するようにして設けられる。但し、摺接バーは、図示例の直線的な棒状に限定されない。
本発明ではこの摺接バー53が積層連続シートS2の積層内面に接するように介在される態様で積層連続シートS2の搬送が行なわれることで、積層連続シートS2の積層内面が摺接バー53との摩擦によって毛羽立つようになるとともに一時的なプライ剥離によってその毛羽立ちされた層間に空気が含まれるようになり、ふんわりとした嵩高感が発現する。
【0038】
ここで、摺接バー53は限定されないものの、断面円形又は楕円形の円柱状の丸棒であるのが望ましく、その円形の場合、断面直径は30〜70φmm、好ましくは45〜55φmmであるのがよい。摺接バー53の直径が過度に大きいと、積層連続シートS2を搬送するにあたって過度の抵抗となり加工速度が遅くなる。そして加工速度が遅くなることにより、積層内面と摺接バー53との摩擦が不十分となり、十分に毛羽立ち効果が得られないおそれがある。
また、断面直径が過度に小さいと摺接バー53を挟んで搬送される連続シートS11,S12の双方に接しなくなるおそれがあり、また、摺接バー53との接触部分が小さくなり、十分な毛羽立ち効果が得られないおそれがある。
【0039】
また、摺接バー53は好適には、表面が粗面化されているのがよい。例えば、表面がローレット加工、波加工、マット加工などされているのがよい。粗面化により毛羽立ち効果がより一層発揮される。具体的な粗度は限定されないが、過度に粗面化すると不必要な紙粉の発生や断紙のおそれが高まるので、これらの紙粉や断紙を考慮して適宜定める。
【0040】
ここで、本発明に係る摺接バー53は、各連続シートS11,S12に剥離して搬送することを目的とするものではなく、積層内面に接して当該積層内面を毛羽立たせることが第1の目的となる。よって、摺接バー53通過後には各連続シートS11,S12を分離して搬送するようなことはせずに、積層連続シートS2の状態に直ちに戻るようにして搬送するのがよい。なお、摺接バー53通過後の積層連続シートS2は過度にロール等で押さえないように考慮する。
【0041】
また、本実施形態では、積層連続シートS2が2プライであるため各連続シート間の層間は一つしかないが、原反ロールを3つセットして3プライとする場合には、当然に積層内面が2つとなり、原反ロールを4つセットして3プライとする場合には、当然に積層内面が4つあることになる。このような3プライ以上の場合には、摺接バー53を複数個設けて、それぞれが各積層内面を通るようにしてもよい。また、その場合でも摺接バーを一つだけとして、ある一つの積層内面だけにプライ剥離による毛羽立ち加工をしてもよい。
【0042】
(巻き取り工程)
上記のとおり摺接バー53を通過したふんわりとした嵩高感が向上された積層連続シートS2は、巻き取り手段56に案内されて巻き取られロールRとされる。図示の巻取り手段56は、積層連続シートをロールRに案内するための2つのワインディングドラム56A、Bを有していて、これら2つのワインディングドラム56A、BがロールRの外周面に接して積層連続シートS2を案内して巻き取るようにしている。
なお、本発明では、巻き取り手段は、図示例のものに特に限定されず、プライマシンに付設される既知の巻き取り手段を用いることができる。
【0043】
(スリット工程、コンタクトエンボス付与工程)
プライマシンX2は、一般的には、巻き取り手段56の前段に、コンタクトエンボス付与手段54、スリット手段55が付設されており、必要に応じてこれらコンタクトエンボス付与手段54、スリット手段55を動作させて、コンタクトエンボスの付与や積層連続シートを幅方向に間隔を空けてスリットすることができるようになっている。
本発明では、コンタクトエンボス付与手段54、スリット手段55によりコンタクトエンボスの付与やスリットを行なうか否かは特に限定されない。
衛生用薄葉紙の種類、例えば、ティシュペーパーであるか、トイレットペーパーであるかなどによって相違する後段の加工工程に応じて、これらのコンタクトエンボス付与手段や、スリット手段によりコンタクトエンボスを付与したり、積層連続シートをスリットすればよい。
【0044】
(その他)
プライマシンX2においては、ロールRを製造するにあたって、加工速度を150〜800m/分、好ましくは150〜600m/分、より好ましくは200〜500m/分とするのが望ましい。150m/分未満だと十分な生産性とは言えない。他方、800m/分超過であるとテンションをかけることで嵩が低くなるため適していない。
【0045】
〔加工工程〕
上記のとおりプライマシンX2にて、ロールRを形成した後には、このロールRを用いて、適宜の製品とする加工工程を行なうことで、ティシュペーパー、トイレットペーパー等の衛生用薄葉紙とすることができる。本発明に係る製造方法では、これらの加工工程については限定されない。
加工工程は、例えば、ティシュペーパー製品とするのであれば、本ロールRを既知のマルチスタンド式インターフォルダやロータリー式インターフォルダに移送して、既知の方法にしたがって折畳み加工を行ない、箱詰め工程を経るなどして本発明に係る衛生用薄葉紙からなるティシュペーパーが収納された箱詰め製品とする。
【0046】
トイレットロールとするのであれば、既知のワインダー設備にて、既知の方法にしたがってトイレットロールの製品径で幅が複数倍幅の中間製品であるログを製造するなどしてこれを製品幅に裁断してトイレットロールを得たのちフィルム包装して、本発明に係る衛生用薄葉紙からなるトイレットペーパーロールが包装されたトイレットロール製品とする。
【0047】
『第2実施形態』
【0048】
次いで、本発明の第2実施形態を特に図4〜6を参照しながら説明する。第2実施形態は、第1実施形態とプライマシンX2における工程が相違する。〔抄紙工程〕及び〔加工工程〕は、上記第1実施形態と同様である。以下、第1の実施形態と重複する内容について説明を省略し、第1実施形態と相違する点を主に説明する。
【0049】
本実施形態では、プライマシンX2にて第1プライ工程と第2プライ工程とを行う。第1プライ工程と第2プライ工程とは別のプライマシンで行うこともできるが、本形態では好ましく同一のプライマシンX2で行う。
この場合に用いるプライマシンX2は、上記第1実施形態のプライマシンとほぼ同様の構成を採る。
【0050】
〔プライマシンにおける工程〕
[第1プライ工程]
第2実施形態における第1プライ工程では、上記第1実施形態と同様に、図4に示すように、抄紙工程で得た原反ロールJR,JRをプライマシンX2に2つセットして、各原反ロールJR,JRから繰り出し、重ね合わせ部(積層手段)51に供給して、連続方向に沿って積層して積層連続シートS2とする。
【0051】
なお、第2実施形態でも、原反ロールJRを3セット、4セットとして3プライ、4プライの積層連続シートを巻取るようにしてもよい。
次に、重ね合わせ部51で積層された積層連続シートS2は、カレンダー手段52に供給してカレンダー処理する。カレンダー処理におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数などは、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
カレンダー処理をした積層連続シートS2は、第2実施形態では、摺接工程を経ることなく一端巻き取り手段56にて巻き取りを行なう。
第2実施形態では、プライマシンX2に付設される摺接バー53A〜53Cをバイパス或いは迂回するようにペーパーラン(搬送路)を構成することで、摺接バーと摺接することなく巻き取り手段56へ積層連続シートS2を導いている。
巻き取り手段56における巻き取り工程は第1実施形態と同様である。
【0053】
[第2プライ工程]
第2実施形態では、図5に示すように、上記第1プライ工程で得たロールR(第1プライ工程で得たロールを一次ロールRともいう、以下の形態でも同様)を、プライマシンX2にセットして、各一次ロールR,Rから既にカレンダー処理されて表面平滑化された積層連続シートS2,S2を繰り出す。第2実施形態では、2つの一次ロールR,Rからそれぞれ積層連続シートを繰出している。
【0054】
各一次ロールR,Rから繰出した各積層連続シートS2,S2は重ね合わせ部(積層手段)51に供給して、連続方向に沿って積層して二次積層連続シートS3とする。この二次積層連続シートS3は、各積層連続シートS2が2プライであるから4プライとなっている。
【0055】
次に、重ね合わせ部51で積層された二次積層連続シートS3は、カレンダー手段52にてカレンダー処理を行なうことなく、下流へ搬送する。カレンダー処理を行なわずに二次積層連続シートS3を下流へ搬送するには、例えば、カレンダー手段52を迂回するようにペーパーランを構成する、或いはカレンダー手段52を構成する一対のカレンダーロール52A,52Bの間隙を開放してカレンダー処理がなされないようにすればよい。図示の形態では、カレンダーロール52A,52Bの間を開放して、カレンダーロール間を通すがカレンダー処理を行なわない態様としている。
【0056】
第2実施形態では、このようにしてカレンダー処理せずに搬送される二次積層連続シートS3に対して、巻き取りまでの搬送過程で二次積層連続シートS3の積層内面に接するように摺接バー53A〜53Cが介在させられる。
摺接バー53A〜53C及びその摺接バーとの摺接態様は、第1実施形態と同様であるが、第2実施形態では、二次積層連続シートS3が4プライ構造となっていることから、二次積層連続シートS3に3つの積層内面が存在するため、特に図5図6に示すように、第1摺接バー53A、第2摺接バー53B、第3摺接バー53CをプライマシンX2に設け、第1摺接バー53Aが、積層連続シートS2,S2の間の積層内面を通り、当該積層内面の毛羽立ちを行ない、第2摺接バー53Bと第3摺接バー53Cが、積層連続シートS2を構成する連続シートS11、S12間の積層内面を通り、当該積層内面の毛羽立ちを行なうようにしている。なお、複数の積層内面のうちどの積層内面を先に摺接バーに接するようにするかは適宜の設計事項である。
第2実施形態では、上記の各摺接バーにより、図6(A)〜(E)に示されるように徐々に嵩高さが高められる。但し、本発明は、図示の形態に限らず、必ずしも全ての積層内面に摺接バーを通さなくてもよい。
【0057】
各摺接バー53A〜53Cにて嵩高にされた二次積層連続シートS3は、第1実施形態、第1プライ工程と同様に巻き取り手段56にて巻き取りを行い、二次ロールR’とする。
二次ロールR’とした後には、第1実施形態と同様に加工工程にてトイレットロール、ティシュペーパー等の製品とする。
【0058】
[その他]
第2実施形態においては、スリット手段54によるスリットは第1プライ工程、第2プライ工程において行なうことができる。コンタクトエンボスの付与は、摺接バー53にて一時的なプライ剥離がなされることを考慮すれば、第2プライ工程で行なうのがよい。
【0059】
第2実施形態については、コンタクトエンボスの付与やスリットを行なうのであれば、第2プライ工程において行なうのが望ましい。
【0060】
ここで、上記説明の第2実施形態は、第1プライ工程と第2プライ工程を同一のプライマシンで行なう形態を説明したが、第1プライ工程と第2プライ工程とを別のプライマシンにて行なってもよい。
【0061】
この場合には、第1プライ工程を行なうプライマシンには摺接バーを設けずに、第2プライ工程を行なうプライマシンのみに設けるようにすることができる。また、第2プライ工程のみを行なうプライマシンにはカレンダー手段を設けないようにすることもできる。
【0062】
また、上記説明の第2実施形態は、第2プライ工程にて、第1プライ工程で得られた2つの一次ロールをセットした4プライの二次積層連続シートを巻き取る例であるが、3セット6プライの二次積層連続シートを巻取るようにしてもよい。
【0063】
さらに、第2プライ工程にて、抄紙工程で得た原反ロールと第1プライ工程で得た一次ロールとをセットして、3プライの二次積層連続シートを巻き取るようにしてもよい。この場合には、その二次積層連続シートは、一方面のみカレンダー処理された面を有するものとなる。
【0064】
『第3実施形態』
【0065】
次いで、本発明の第3実施形態を図7〜9を参照しながら説明する。第3実施形態は、第2実施形態と第2プライ工程が相違する。第2プライ工程以外は、上記第2実施形態と同様である。以下、第1実施形態、第2実施形態と重複する内容について説明を省略し、第2実施形態と相違する点を主に説明する。
第3実施形態も、第1プライ工程と第2プライ工程とは別のプライマシンで行うこともできるが、好ましく同一のプライマシンで行う。
【0066】
[第2プライ工程]
第3実施形態では、図7に示すように、上記第2実施形態と同様に第1プライ工程をプライマシンX2にて行って一次ロールRを製造した後、図8に示すように、その一次ロールR,RをプライマシンX2にセットして、各一次ロールR,Rから既にカレンダー処理されて表面平滑化された積層連続シートを繰り出す。
【0067】
第3実施形態では、繰出した積層連続シートS2,S2をまずプライ剥離手段57にて一時的に各連続シートS11,S12にプライ剥離する。プライ剥離手段57は、積層連続シートS2を構成する各連続シートS11,S12を一時的に別のペーパーランとなるように適宜にガイドローラ57Aを設けることで構成することができる。
【0068】
第3実施の形態では、このプライ剥離手段57によって一次的にプライ剥離された各連続シートS11,S12のうち、一方の連続シートS11,S11に液体を付与した後に再積層して積層連続シートS2に戻す。再積層は一時的に別のペーパーランとなった各連続シートS11,S12が合流するように適宜にガイドローラ57Bを設けることで構成することができる。
【0069】
第3実施形態では、この積層連続シートS2,S2を構成する一方の連続シートS11,S11に対して液体付与手段58により液体を付与することで、その液体が付与されたシートのみ伸びなどによって波打ち、皺等が発生する。そしてこの液体付与をプライ剥離部57で行なうことで液体が付与されていないシートのカレンダー処理による効果が維持される。
【0070】
液体の種類や付与量は特に限定されないが、上記連続シートS11,S11に対する液体の付与量は必ずしも限定されないが多量に付与すると過度に湿潤した状態で、液体付与していない連続シートと再積層されることになり好ましくない。このため再積層までの時間、液体の揮発性等を考慮して適宜液体付与量や液体種を定める。
【0071】
第3実施形態における好ましい液体の付与の態様を例示しておくと、シート重量の0.1〜10重量%程度の水を付与する例である。液体としては、水のほか、アルコール等も使用できる。
【0072】
液体付与手段58は、本発明では特に限定されないがスプレー塗布、グラビア印刷、フレキソ印刷等のロール転写により行なうことができる。
【0073】
第3実施形態では、一方の連続シートS11に液体を付与した後に再積層して積層連続シートS2に戻した後には、その積層連続シートS2を重ね合わせ部(積層手段)51に供給して、連続方向に沿って積層して二次積層連続シートS3とする。この二次積層連続シートS3は、各積層連続シートS2が2プライであるから4プライとなっている。
【0074】
ここで、第3実施形態では、この重ね合わせ部51にて液体を付与した連続シートS11の側が積層内面となるように積層する。これにより、図9に示すように、重ね合わせ部後の二次積層連続シートS3は、外面がカレンダー処理された平滑なものであり、外面に現れない積層内面に位置する連続シートS11,S11が液体付与によって波打ち、皺等が発生させられて全体として嵩高さのあるものとなる。
【0075】
第3実施形態では、この二次積層連続シートS3を巻き取り手段にて巻き取り二次ロールR’とする。第3実施形態でも、第2プライ工程では、カレンダー処理を行なわない。
【0076】
二次ロールR’とした後には、第1実施形態や第2実施形態と同様に加工工程にてトイレットロール、ティシュペーパー等の製品とする。
【0077】
[その他]
本3実施形態においても、スリット手段によるスリットは第1プライ工程、第2プライ工程において行なうことができる。コンタクトエンボスの付与は、液体付与時に一時的なプライ剥離がなされることを考慮すれば、第2プライ工程で行なうのがよい。
【0078】
第3実施形態については、コンタクトエンボスの付与やスリットを行なうのであれば、第2プライ工程において行なうのが望ましい。
【0079】
第3実施形態においても第1プライ工程と第2プライ工程とを別のプライマシンにて行なうことができる。
【0080】
また、第3実施形態においても、第2プライ工程にて、第1プライ工程で得られた2つの一次ロールをセットした4プライの二次積層連続シートを巻き取る例であるが、3セット6プライの二次積層連続シートを巻取るようにしてもよい。
【実施例】
【0081】
次いで、本発明の係る製造方法と本発明の製造方法と対比される製造方法によりティシュペーパーを作成し、その表面の滑らかさと嵩高さとを測定した。
実施例は、第2の実施形態にしたがって製造した4プライのティシュペーパーである。
比較例1は、プライマシンにて一次原反ロールを4本セットして製造した4プライのティシュペーパーであり、特に4シートを積層したのちカレンダー処理は、行なったものの摺接バーによる毛羽立ち操作は行なわないで製造したものである。
比較例2は、プライマシンにて一次原反ロールを4本セットして製造した4プライのティシュペーパーであり、特にカレンダー処理も摺接バーによる毛羽立ち操作も行なわないで製造したものである。
その測定の結果は、その他の組成・物性とともに下記表1に示す。
【0082】
なお表中の米坪は、JIS P 8124に基づいて測定した。
紙厚は、尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージ(PEACOCK G型)により測定した。
MMDは、KES-SE摩擦感テスター(カトーテック株式会社製)を用いて測定した。表中の値は縦横の平均値である。
ソフトネスは、JIS L 1096 一般織物試験方法6.19剛軟度E法(ハンドルオメータ法)に準拠して測定した。表中の値は縦横の平均値である。
乾燥紙力及び伸びは、JIS P 8113に基づいて測定した。
【0083】
【表1】
【0084】
本発明の実施例は、MMDの測定値が、カレンダー処理を行なっていない比較例2と比較して低く、表面が滑らかとなることが知見された。
【0085】
また、カレンダー処理のみ行なった比較例1と比べてみると、本発明の実施例は、米坪はほとんど変わりないにもかかわらず紙厚は厚く、さらにソフトネスの値もほぼ同様である。このことから、本発明の実施例は、比較例2よりもふんわりとした嵩高感のあるものであることが知見された。
【0086】
以上のとおり、本発明の製造方法によれば、表面が滑らかでしかもふんわりとした嵩高感のある衛生用薄葉紙が製造できる。
【符号の説明】
【0087】
X1…抄紙設備、31…プレスパート、31T…トップフェルト、31B…ボトムフェルト、W…湿紙、32…トップロール、33…ボトムロール、34…タッチロール、35…ヤンキードライヤー35、36…ドクターブレード、37…ワインディングドラム37、38…巻き取り手段38、S1…乾燥原紙、JR…原反ロール、
X2…プライマシン(積層設備)、S11,S12…連続シート、S2…積層連続シート、51…重ね合わせ部、52…カレンダー手段、52A,52B…カレンダーロール、53…摺接バー、53A…第一摺接バー、53B…第二摺接バー、53C…第三摺接バー、56…巻き取り手段、54…コンタクトエンボス付与手段、55…スリット手段、56A、B…ワインディングドラム、R…ロール,一次ロール、S3…二次積層連続シート、R’…二次ロール、57…プライ剥離手段、57A,57B…ガイドローラ、58…液体付与手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9