(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記化合物(A)の含有量と前記ハロゲン化合物(B)の含有量との質量比(A:B)が、1:100〜50:100であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル繊維用難燃加工剤。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0026】
本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤は、前記化合物(a
1)〜(a
3)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物(A)、及び前記ハロゲン化合物(B)を含有することを特徴とするものである。
【0027】
(化合物(A))
本発明に係る化合物(A)は、下記化合物(a
1)〜(a
3)からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0028】
<化合物(a
1)>
本発明に係る化合物(a
1)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0030】
前記式(1)中、R
1は、水素原子、下記一般式(1a)〜(1g):
【0032】
[式(1a)〜(1g)中、Mはそれぞれ独立に水素原子又は1価のカチオン基を示す。]
のうちのいずれかで表されるアニオン性基、炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数2〜22のアルキニル基、炭素数1〜22のアルキルカルボニル基、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、及び炭素数2〜22のアルキニルカルボニル基からなる群から選択されるいずれかを示し、R
3は、水素原子、上記一般式(1a)〜(1g)のうちのいずれかで表されるアニオン性基、炭素数1〜22のアルキルカルボニル基、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、及び炭素数2〜22のアルキニルカルボニル基からなる群から選択されるいずれかを示す。
【0033】
R
1又はR
3が上記一般式(1a)〜(1g)のうちのいずれかで表されるアニオン性基である場合、Mとしては、難燃性を阻害する作用が弱い傾向にあるという観点から、ナトリウム、カリウム、アンモニウムであることが好ましい。本発明において、前記アニオン性基としては、前記カチオン基を除いた酸性基であってもよく、その中和度に関しては特に制限されず、適宜調整することができる。
【0034】
R
1又はR
3が炭素数1〜22のアルキルカルボニル基(アルキル基の炭素数が1〜22、以下同様)、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基(アルケニル基の炭素数が2〜22、以下同様)又は炭素数2〜22のアルキニルカルボニル基(アルキニル基の炭素数が2〜22、以下同様)である場合、炭素数が前記上限を超えると得られる難燃性ポリエステル繊維製品の摩擦堅牢度が低下する。また、これらの炭素数としては、摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、8以下であることが好ましい。
【0035】
また、R
1が炭素数1〜9のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数2〜22のアルキニル基である場合、炭素数が前記上限を超えるとポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性及び得られる難燃性ポリエステル繊維製品の摩擦堅牢度が低下する。また、これらの炭素数としては、摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、8以下であることが好ましい。
【0036】
これらの中でも、R
1及びR
3としては、ポリエステル繊維に対してより優れた難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化をより抑制できる傾向にあるという観点から、R
1及びR
3のいずれも水素原子であるか、又は、R
1及びR
3のいずれかが水素原子であり、他方が上記一般式(1a)で表されるアニオン性基であることが好ましい。
【0037】
前記式(1)中、R
2はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基を示す。このような炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、前記式(1)中、aは、(R
2−O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって3〜1000の整数を示す。aが前記下限未満であると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下し、また、風合いや曇価が悪化する。他方、前記上限を超えると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下するだけでなく、式(1)で表される化合物の取り扱いが困難となったりポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性が低下する。また、このようなaとしては、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品における曇価をより低下させ(曇価がより良好になり)、摩擦堅牢度の低下及び風合いの硬化をより抑制することができるという観点から、5〜100の整数であることが好ましく、5〜50の整数であることがより好ましい。
【0038】
但し、前記式(1)で表される化合物(a
1)においては、(R
2−O)
aで表されるオキシアルキレン鎖の総量に対するエチレンオキシ基の含有量は90質量%以上である。エチレンオキシ基の含有量が前記下限未満であると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下する。また、化合物(a
1)の水溶性が向上し、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、前記オキシアルキレン鎖の総量に対するエチレンオキシ基の含有量としては、95質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0039】
このような化合物(a
1)は、例えば、常法に従って、(I)アルキレンオキサイドを重合させる方法;(II)(I)で得られた化合物(すなわちポリアルキレングリコール)と炭素数2〜22の脂肪酸又はその低級アルコールエステルとを反応させる方法;(III)アルコールにアルキレンオキサイドを付加重合させる方法;(IV)(I)、(II)又は(III)で得られた化合物をアニオン化する方法により得ることができる。なお、このような方法において、反応の順序や原料の添加順序等は適宜変更することができる。
【0040】
<化合物(a
2)>
本発明に係る化合物(a
2)は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0042】
前記式(2)中、R
4は、炭素数が1〜22でありかつc価である脂肪族炭化水素基又は該脂肪族炭化水素基の炭素原子の一部が酸素原子と置換している脂肪族基を示す。前記脂肪族炭化水素基及び脂肪族基としては、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。R
4において、炭素数が前記上限を超えると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下し、風合いが悪化する。また、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、さらに、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、R
4としては、炭素数が1〜18であることが好ましく、具体的には、ペンタエリスリトールの残基(少なくとも1つのヒドロキシ基を除いた残基)、ジペンタエリスリトールの残基、トリペンタエリスリトールの残基、トリメチロールプロパンの残基、ジトリメチロールプロパンの残基、トリトリメチロールプロパンの残基、ポリグリセリルエーテルの残基、ソルビタンの残基であることがより好ましく、中でも、分岐鎖状であることがさらに好ましい。
【0043】
また、前記式(2)中、cはR
4の価数であって、2〜10の整数を示す。cが前記上限を超えると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下する。このようなcとしては、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、2〜8の整数であることが好ましい。
【0044】
さらに、前記式(2)中、R
5はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基を示す。このような炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、前記式(2)中、bは(R
5−O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であってそれぞれ独立に0〜1000を示す。但し、全てのbの合計は3〜1000である。bの合計が前記下限未満であると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下し、また、風合い及び曇価が悪化する。他方、前記上限を超えると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下するだけでなく、式(2)で表される化合物の取り扱いが困難となったりポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性が低下する。また、このようなbとしては、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品における曇価をより低下させ(曇価がより良好になり)、摩擦堅牢度の低下及び風合いの硬化をより抑制することができるという観点から、全てのbの合計が10〜100であることが好ましく、10〜50であることがより好ましい。
【0045】
さらに、前記式(2)で表される化合物(a
2)としては、(R
5−O)
bで表されるオキシアルキレン鎖の総量に対するエチレンオキシ基の含有量は90質量%以上である。エチレンオキシ基の含有量が前記下限未満であると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下する。また、化合物(a
2)の水溶性が向上し、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、前記オキシアルキレン鎖の総量に対するエチレンオキシ基の含有量としては、95質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0046】
前記式(2)中、R
6は、水素原子、前記一般式(1a)〜(1g)のうちのいずれかで表されるアニオン性基、炭素数1〜22のアルキルカルボニル基、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、及び炭素数2〜22のアルキニルカルボニル基からなる群から選択されるいずれかを示す。
【0047】
R
6が前記アニオン性基である場合、Mとしては、難燃性を阻害する作用が弱い傾向にあるという観点から、ナトリウム、カリウム、アンモニウムであることが好ましい。本発明において、前記アニオン性基としては、前記カチオン基を除いた酸性基であってもよく、その中和度に関しては特に限定はなく、適宜調整することができる。
【0048】
R
6が炭素数1〜22のアルキルカルボニル基、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、炭素数2〜22のアルキニルカルボニル基である場合、炭素数が前記上限を超えると得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合いが硬化したり摩擦堅牢度が低下する。また、R
6としては、風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基が好ましく、具体的には、オレイン酸の残基(カルボキシル基からOHを除いた残基)が好ましい。
【0049】
これらの中でも、R
6としては、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、水素原子、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、前記アニオン性基であることが好ましく、水素原子、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、前記一般式(1a)で表されるアニオン性基であることがより好ましい。
【0050】
このような化合物(a
2)は、例えば、常法に従って、(V)R
4(OH)
cで表されるc価の脂肪族ヒドロキシ化合物とアルキレンオキサイドとを反応させる方法;(VI)(V)の反応時にさらに炭素数2〜22の脂肪酸又はその低級アルコールエステルを併用して反応させる方法;(VII)(V)又は(VI)で得られた化合物をアニオン化させる方法により得ることができる。なお、このような方法において、反応の順序や原料の添加順序等は適宜変更することができる。
【0051】
<化合物(a
3)>
本発明に係る化合物(a
3)は、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0053】
前記式(3)中、R
7は、炭素数1〜21でありかつe価である脂肪族炭化水素基を示す。前記脂肪族炭化水素基としては、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。R
7において、炭素数が前記上限を超えると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下し、また、風合いが悪化する。このようなR
7としては、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、さらに、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、炭素数が1〜18であることが好ましく、鎖状であることがより好ましく、分岐鎖状であることがさらに好ましい。
【0054】
また、前記式(3)中、eはR
7の価数であって、2〜10の整数を示す。eが前記上限を超えると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下する。このようなeとしては、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、2〜8の整数であることが好ましい。
【0055】
さらに、前記式(3)中、R
8はそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基を示す。このような炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。また、前記式(3)中、dは(R
8−O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であってそれぞれ独立に0〜1000の整数を示す。但し、全てのdの合計は3〜1000である。dの合計が前記下限未満であると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下し、また、風合いや曇価が悪化する。他方、前記上限を超えると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下するだけでなく、式(3)で表される化合物の取り扱いが困難となったりポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性が低下する。このようなdとしては、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品における曇価をより低下させ(曇価がより良好になり)、摩擦堅牢度の低下及び風合いの硬化をより抑制することができるという観点から、全てのdの合計が10〜100であることが好ましく、10〜50であることがより好ましい。
【0056】
さらに、前記式(3)で表される化合物(a
3)としては、(R
8−O)
dで表されるオキシアルキレン鎖の総量に対するエチレンオキシ基の含有量は90質量%以上である。エチレンオキシ基の含有量が前記下限未満であると、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性、摩擦堅牢度が低下する。また、化合物(a
3)の水溶性が向上し、前記難燃成分(A)のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、前記オキシアルキレン鎖の総量に対するエチレンオキシ基の含有量としては、95質量%以上であることが好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0057】
前記式(3)中、R
9は、それぞれ独立に、水素原子、前記一般式(1a)〜(1g)のうちのいずれかで表されるアニオン性基、炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数2〜22のアルキニル基、炭素数1〜22のアルキルカルボニル基、及び炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、炭素数2〜22のアルキニルカルボニル基からなる群から選択されるいずれかを示す。
【0058】
R
9が上記一般式(1a)〜(1g)で表されるアニオン性基である場合、Mとしては、難燃性を阻害する作用が弱い傾向にあるという観点から、ナトリウム、カリウム、アンモニウムであることが好ましい。本発明において、前記アニオン性基としては、前記カチオン基を除いた酸性基であってもよく、その中和度に関しては特に限定はなく、適宜調整することができる。
【0059】
また、R
9が炭素数1〜22のアルキル基、炭素数2〜22のアルケニル基、炭素数2〜22のアルキニル基、炭素数1〜22のアルキルカルボニル基、炭素数2〜22のアルケニルカルボニル基、炭素数2〜22のアルキニルカルボニル基である場合、炭素数が前記上限を超えると得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合いが硬化したり摩擦堅牢度が低下する。
【0060】
これらの中でも、R
9としては、下記のハロゲン化合物(B)等の難燃成分のポリエステル繊維への吸尽率がより向上し、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化及び摩擦堅牢度の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、水素原子、前記アニオン性基であることが好ましい。
【0061】
このような化合物(a
3)は、例えば、常法に従って、(VIII)R
7(COOH)
eで表されるe価の脂肪族カルボキシ化合物とアルキレンオキサイド又はポリアルキレングリコールとを反応させる方法;(IX)(VIII)の反応時又は反応後にさらに炭素数2〜22の脂肪酸又はその低級アルコールエステルを併用して反応させる方法;(X)(VIII)又は(IX)で得られた化合物をアニオン化する方法により得ることができる。なお、このような方法において、反応の順序や原料の添加順序等は適宜変更することができる。
【0062】
本発明に係る化合物(A)としては、上記化合物(a
1)〜(a
3)からなる群から選択されるいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような化合物(A)の中でも、製品安定性がより優れ、ポリエステル繊維に対してより優れた耐久難燃性を付与することができ、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い硬化の低下をより抑制することができる傾向にあるという観点から、前記化合物(a
1)〜(a
2)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリエチレングリコール(分子量400〜2000)、ペンタエリスリトール(1モル)とエチレンオキサイド(10〜25モル)との反応物、及びペンタエリスリトール(1モル)とエチレンオキサイド(10〜25モル)と炭素数16〜20の脂肪酸(1〜2モル)との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0063】
(難燃成分)
(ハロゲン化合物(B))
本発明に係るハロゲン化合物(B)は、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤における難燃成分であり、下記一般式(4)で表される化合物である。
【0065】
前記式(4)中、Y
1〜Y
3は、それぞれ独立に、2,3−ジブロモプロピル基、2,3−ジブロモイソブチル基及び1,2−ジブロモエチル基からなる群から選択されるいずれかの基を示す。このようなハロゲン化合物(B)としては、例えば、トリス(1,2−ジブロモエチル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリス(2,3−ジブロモイソブチル)イソシアヌレートが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明に係るハロゲン化合物(B)としては、難燃性に優れる傾向にあるという観点から、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレートが好ましい。
【0066】
(リン化合物)
本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤においては、より優れた難燃性が発揮される傾向にあるという観点から、難燃成分として、前記ハロゲン化合物(B)に加えて、下記リン化合物(b
1)〜(b
5)からなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物を含有することが好ましい。
【0067】
<リン化合物(b
1)>
リン化合物(b
1)は、下記一般式(5)で表される化合物である。
【0069】
前記式(5)中、R
10及びR
11は、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基、及び置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいナフチル基からなる群から選択されるいずれかの基を示し、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、直接結合、−O−及び−NH−からなる群から選択されるいずれかを示し、fは1又は2を示し、gは0又は1を示す。
【0070】
このようなリン化合物(b
1)としては、例えば、トリフェニルホスフェート、1−ナフチルジフェニルホスフェート、2−ナフチルジフェニルホスフェート、ジ(1−ナフチル)フェニルホスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルホスフェート、1−ナフチル−2−ナフチルフェニルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリパラクレジルホスフェート、トリ2,6−キシレニルホスフェート、フェノキシエチルジフェニルホスフェート、ジ(フェノキシエチル)フェニルホスフェート、フェノキシエチルジナフチルホスフェート、ジ(フェノキシエチル)ナフチルホスフェート、ナフトキシエチルジフェニルホスフェート、ジ(ナフトキシエチル)フェニルホスフェート、ナフトキシエチルジナフチルホスフェート、ジ(ナフトキシエチル)ナフチルホスフェート、アニリノジフェニルホスフェート、ジアニリノフェニルホスフェート、トリアニリノホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイドが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記リン化合物(b
1)としては、難燃性に優れる傾向にあるという観点から、フェノキシエチルジフェニルホスフェートが好ましい。
【0071】
<リン化合物(b
2)>
リン化合物(b
2)は、下記一般式(6)で表される化合物である。
【0073】
前記式(6)中、R
12は、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、及び下記一般式(6a):
【0075】
[式(6a)中、R
13は、炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基及びベンジル基からなる群から選択されるいずれかの基を示す。]
で表される基からなる群から選択されるいずれかの基を示す。
【0076】
このようなリン化合物(b
2)としては、例えば、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(4−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−フェネチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(1−ナフチルメチル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(2−ナフチルメチル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド、ブチル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド−10−イル)メチル]スクシンイミド、フェニル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド−10−イル)メチル]スクシンイミド、ベンジル[3−(9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド−10−イル)メチル]スクシンイミドが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記リン化合物(b
2)としては、難燃性に優れる傾向にあるという観点から、10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイドが好ましい。
【0077】
<リン化合物(b
3)>
リン化合物(b
3)は、下記一般式(7)で表される化合物である。
【0079】
前記式(7)中、R
14〜R
17は、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有するフェニル基を示し、R
18は置換基を有していてもよいアリーレン基を示し、hは1〜5の整数を示し、hが2以上の場合、R
18は同一でも異なっていてもよい。
【0080】
このようなリン化合物(b
3)としては、例えば、レゾルシノールジ2,6−キシレニルホスフェート、ハイドロキノンジ2,6−キシレニルホスフェート、4,4’−ビフェノールジ2,6−キシレニルホスフェートが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記リン化合物(b
3)としては、難燃性に優れる傾向にあるという観点から、レゾルシノールジ2,6−キシレニルホスフェートが好ましい。
【0081】
<リン化合物(b
4)>
リン化合物(b
4)は、下記一般式(8)で表される化合物である。
【0083】
前記式(8)中、R
19及びR
20は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R
21はビフェニル基又はナフチル基を示す。
【0084】
このようなリン化合物(b
4)としては、例えば、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、5,5−ジメチル−2−(4’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、5−ブチル−5−エチル−2−(4’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド、5,5−ジメチル−2−(2’−ナフチロキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、前記リン化合物(b
4)としては、難燃性に優れる傾向にあるという観点から、5,5−ジメチル−2−(2’−フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシドが好ましい。
【0085】
<リン化合物(b
5)>
リン化合物(b
5)は、下記一般式(9)で表される化合物である。
【0087】
前記式(9)中、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、置換基として炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいフェニル基を示し、iは3〜10の整数を示す。
【0088】
このようなリン化合物(b
5)としては、例えば、ヘキサフェノキシシクロトリホスファゼン、オクタフェノキシシクロテトラホスファゼン、ドデカフェノキシシクロヘキサホスファゼン、ヘキサパラメチルフェノキシシクロトリホスファゼンが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本発明に係るリン化合物(b
5)としては、難燃性に優れる傾向にあるという観点から、フェノキシシクロホスファゼンを用いることが好ましい。
【0089】
また、前記リン化合物としては、上記リン化合物(b
1)〜(b
5)からなる群から選択されるいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなリン化合物の中でも、前記ハロゲン化合物(B)と併用した場合により優れた難燃性が発揮される傾向にあるという観点から、下記一般式(10):
【0091】
[式(10)中、R
24及びR
25は、それぞれ独立に、フェニル基又はナフチル基を示し、jは1又は2を示す。]
で表される化合物であることが好ましく、フェノキシエチルジフェニルホスフェートであることがより好ましい。
【0092】
本発明において、前記ハロゲン化合物(B)と前記リン化合物とを併用する場合、ポリエステル繊維用難燃加工剤における前記ハロゲン化合物(B)の含有量と前記リン化合物の含有量との質量比(B:リン化合物)としては、99:1〜50:50であることが好ましく、90:10〜65:35であることがより好ましく、90:10〜80:20であることがさらにより好ましい。
【0093】
また、本発明において、これらのハロゲン化合物(B)及びリン化合物(以下、場合により難燃成分という。)としては、より優れた難燃性が発揮される傾向にあるという観点から、疎水性であることが好ましい。難燃成分が疎水性であるとは、難燃成分が水に溶解又は自己乳化しないものであることを指す。水に溶解又は自己乳化する状態とは、難燃成分の40質量%水分散液200mlをT.K.HOMODISPER(プライミクス(株)製)を用いて室温(25℃程度)下において2000rpmで10分間撹拌した後、得られた溶液又は水乳化分散液を20℃において静置した際に、12時間分離及び/又は沈降が無く均一に溶解又は乳化分散している状態を意味する。
【0094】
さらに、前記難燃成分としては、20℃において固体であることが好ましい。20℃において液体である場合には、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の耐久難燃性及び摩擦堅牢度が低下する傾向にある。必要に応じて20℃において液状である難燃成分を配合する場合には、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤に含有される難燃成分の総量に対して、液状の難燃成分が5質量%以下であることが好ましい。
【0095】
(界面活性剤(C))
本発明においては、前記化合物(A)が界面活性剤成分としても機能するが、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤としては、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性、処理液安定性がより向上するという観点から、他の界面活性剤(C)をさらに含有することが好ましい。このような界面活性剤(C)としては、非イオン界面活性剤及びアニオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられ、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
前記非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル、下記一般式(11):
【0098】
[式(11)中、Arはp個のヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物からp個のヒドロキシ基を除いた残基を示し、R
26及びR
27は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、R
28は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、R
29は、水素原子又は前記一般式(1a)〜(1g)のうちのいずれかで表されるアニオン性基を示し、kは1〜10の整数を示し、mは1〜3の整数を示し、nは(R
28−O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって、1〜200の整数を示し、pは1〜10の整数を示し、n及び/又はpが2以上の場合、複数存在するR
28は同一でも異なっていてもよく、pが2以上の場合、複数存在するR
29は同一でも異なっていてもよい。但し、k+mは2〜10の整数を示す。]
で表されるポリオキシアルキレンスチレン化アリールエーテル、下記一般式(12):
【0100】
[式(12)中、Arはs個のヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物からs個のヒドロキシ基を除いた残基を表し、R
30は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、R
31は、水素原子又は前記一般式(1a)〜(1g)のうちのいずれかで表されるアニオン性基を示し、qは1〜3の整数を示し、rは(R
30−O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって、1〜200の整数を示し、sは1〜10の整数を表し、r及び/又はsが2以上の場合、複数存在するR
30は同一でも異なっていてもよく、sが2以上の場合、複数存在するR
31は同一でも異なっていてもよい。]
で表されるポリオキシアルキレンベンジル化アリールエーテル、アルキルアミンアルキレンオキサイド付加物、脂肪族アミドアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0101】
また、前記アニオン界面活性剤としては、例えば、前記非イオン界面活性剤の硫酸エステル塩、前記非イオン界面活性剤のリン酸エステル塩、前記非イオン界面活性剤のカルボン酸塩、前記非イオン界面活性剤のスルホコハク酸型アニオン界面活性剤、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルコールのリン酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、下記一般式(13):
【0103】
[式(13)中、R
32及びR
33は、それぞれ独立に、下記式(13a)〜(13b):
【0105】
のうちのいずれかで表される基を示し、R
34及びR
35は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、Zは、−SO
3H、−CH
2SO
3H、及びこれらの塩で表される基のうちのいずれかの置換基を示し、t及びuは、それぞれ独立に0以上の整数を示す。]
で表され、かつ、重合度t+u+2の平均値が2〜30であるフェノールホルムアルデヒド系縮合物、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物等のナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、メラミンスルホン酸塩系縮合物、ビスフェノールスルホン酸塩系縮合物が挙げられる。
【0106】
これらの中でも、前記界面活性剤(C)としては、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性がより向上する傾向にある観点から、上記一般式(11)で表されるポリオキシアルキレンスチレン化アリールエーテル、上記一般式(12)で表されるポリオキシアルキレンベンジル化アリールエーテル、上記一般式(13)で表されるフェノールホルムアルデヒド系縮合物、ナフタレンスルホン酸塩系縮合物、クレオソート油スルホン酸塩系縮合物、リグニンスルホン酸塩、及びメラミンスルホン酸塩系縮合物及びビスフェノールスルホン酸塩系縮合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0107】
上記一般式(11)で表されるポリオキシアルキレンスチレン化アリールエーテル及び上記一般式(12)で表されるポリオキシアルキレンベンジル化アリールエーテルにおいて、Arは、p個及びs個のヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物からそれぞれp個及びs個のヒドロキシ基を除いた残基を示す。このような残基としては、例えば、フェノール、2−クミルフェノール、3−クミルフェノール、4−クミルフェノール、2−フェニルフェノール、3−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、クレゾール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール等の1価の芳香族ヒドロキシ化合物から1個のヒドロキシ基を除いた残基;カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等の2価の芳香族ヒドロキシ化合物から2個のヒドロキシ基を除いた残基;ピロガロール(1,2,3−トリヒドロキシベンゼン)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、フロログルシノール(1,3,5−トリヒドロキシベンゼン)等の3価の芳香族ヒドロキシ化合物から3個のヒドロキシ基を除いた残基;テトラヒドロキシベンゼン等の4価の芳香族ヒドロキシ化合物から4個のヒドロキシ基を除いた残基が挙げられる。これらの中でも、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製造の容易さ、製品安定性、処理液安定性の観点から、1価の芳香族ヒドロキシ化合物の残基であることが好ましく、フェノールの残基、4−クミルフェノールの残基、4−フェニルフェノールの残基、2−ナフトールの残基であることがより好ましい。
【0108】
式(11)中、R
26及びR
27は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を示し、中でも、化合物が入手しやすいという観点から、水素原子であることが好ましい。また、式(11)及び(12)中、R
28及びR
30は、それぞれ、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、このような炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられ、中でも、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性、処理液安定性の観点から、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0109】
さらに、式(11)及び(12)中、p及びsは、それぞれ、1〜10の整数を示し、中でも、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製造の容易さ、製品安定性、処理液安定性の観点から、1〜3であることが好ましい。なお、n及び/又はp、或いは、r及び/又はsが2以上の場合、複数存在するR
28或いはR
30は同一でも異なっていてもよく、p或いはsが2以上の場合、複数存在するR
29或いはR
31は同一でも異なっていてもよい。但し、式(11)において、k+mは2〜10の整数を示し、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製造の容易さ、製品安定性、処理液安定性の観点から、2〜8であることが好ましく、2〜5であることがより好ましい。
【0110】
また、式(11)及び(12)中、n及びrは、それぞれ、(R
28−O)及び(R
30−O)で表されるアルキレンオキシ基の平均付加モル数であって、1〜200の整数を示し、中でも、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製造の容易さ、製品安定性、処理液安定性の観点から、3〜100の整数であることが好ましく、5〜50の整数であることがより好ましい。
【0111】
これらのポリオキシアルキレンスチレン化アリールエーテル及びポリオキシアルキレンベンジル化アリールエーテルとしては、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記ポリオキシアルキレンスチレン化アリールエーテルは、常法に従い、例えば、Ar(OH)
pで表される芳香族ヒドロキシ化合物にスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン類を付加した後、さらにアルキレンオキサイドを付加させることにより、或いは、前記により得られたアルキレンオキサイド付加物をアニオン化することにより得ることができる。また、前記ポリオキシアルキレンベンジル化アリールエーテルは、常法に従い、例えば、Ar(OH)
sで表される芳香族ヒドロキシ化合物とベンジルクロライドとを反応させた後、さらにアルキレンオキサイドを付加させることにより、或いは、前記により得られたアルキレンオキサイド付加物をアニオン化することにより得ることができる。
【0112】
上記一般式(13)で表されるフェノールホルムアルデヒド系縮合物は、置換基Zを含有していないフェノール骨格と置換基Zを含有するフェノール骨格とを備える化合物である。置換基Zを含有していないフェノール骨格とは、前記式(13a)で表される末端基又は下記式(13c):
【0114】
[式(13c)中、R
36は水素原子又はメチル基を示す。]
で表される繰り返し単位を意味する。前記式(13a)で表される末端基は、フェノール末端基又はクレゾール末端基であり、前記式(13c)で表される繰り返し単位は、フェノール又はクレゾールとホルムアルデヒドとを縮合させることによって形成される繰り返し単位である。
【0115】
また、置換基Zを含有するフェノール骨格とは、前記式(13b)で表される末端基又は下記式(13d):
【0117】
[式(13d)中、R
37は水素原子又はメチル基を示し、Zは、−SO
3H、−CH
2SO
3H、及びこれらの塩で表される基のうちのいずれかの置換基を示す。]
で表される繰り返し単位を意味する。前記式(13b)で表される末端基は、スルホン酸基、スルホン酸塩基、メチルスルホン酸基及びメチルスルホン酸塩基のうちのいずれかのアニオン性基を有するフェノール末端基又はクレゾール末端基であり、前記式(13d)で表される繰り返し単位は、スルホン酸基、スルホン酸塩基、メチルスルホン酸基及びメチルスルホン酸塩基のうちのいずれかのアニオン性基を有するフェノール又はクレゾールとホルムアルデヒドとを縮合させることによって形成される繰り返し単位である。
【0118】
このようなフェノールホルムアルデヒド系縮合物は、フェノール及びクレゾールのうちの少なくとも1種の置換基Zを含有しないフェノール系化合物と、フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ヒドロキシフェニルメタンスルホン酸、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種の置換基Zを含有するフェノール系化合物と、ホルムアルデヒドとを、公知の方法により縮合反応させることによって得ることができる。前記縮合反応としては、ランダム付加縮合であってもブロック付加縮合であってもよい。
【0119】
前記フェノールホルムアルデヒド系縮合物において、フェノールホルムアルデヒド系縮合物の重合度(t+u+2)の平均値(以下、「平均重合度」という。)は、2〜30であるが、得られるポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性、処理液安定性、及びフェノールホルムアルデヒド系縮合物の取り扱い容易性の観点から、3〜15であることが好ましく、3〜10であることがより好ましい。
【0120】
なお、このようなフェノールホルムアルデヒド系縮合物の平均重合度は、前記縮合反応の際に、フェノール系化合物全体に対するホルムアルデヒドの混合モル比を調整することによって制御することができる。例えば、ホルムアルデヒドの混合量をフェノール系化合物全体に対して、0.5〜0.97モル倍とすることによって、所定の平均重合度のフェノールホルムアルデヒド系縮合物を得ることができる。前記フェノールホルムアルデヒド系縮合物の平均重合度は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドとの原料モル比から求めることができる。すなわち、フェノール系化合物の仕込みモル数をMp、ホルムアルデヒドの仕込みモル数をMfとし、これらのうちの過剰成分を分母として、v=Mp/Mf又はMf/Mpとし、反応率をwとすると、平均重合度(Pn)は、下記式
Pn=(1+v)/[2v(1−w)+(1−v)]
で表され、反応率を100%(p=1)とすると、
Pn=(1+v)/(1−v)
となり、フェノールホルムアルデヒド系縮合物の数平均重合度を求めることができる。但し、本発明においては、前記式(13)に示すように、フェノール骨格数の平均を平均重合度としているため、本発明にかかるフェノールホルムアルデヒド系縮合物の平均重合度は、(Pn+1)/2となる。
【0121】
また、平均重合度は、フェノールホルムアルデヒド系縮合物の結合硫酸値から、置換基Zを含有しないフェノール骨格(Zn)と置換基Zを含有するフェノール骨格(Zp)との比率Zn:Zpを求め、置換基Zを含有しないフェノール骨格の分子量と前記比率Zn、置換基Zを含有するフェノール骨格の分子量と前記比率Zp、前記比率のフェノール骨格の結合に要するCH
2の量、並びに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した数平均分子量に基づいて算出することも可能である。
【0122】
本発明にかかる一般式(13)で表される化合物において、置換基Zを含有していないフェノール骨格(すなわち、前記(13a)で表される末端基及び前記(13c)で表される繰り返し単位)と置換基Zを含有するフェノール骨格(すなわち、前記(13b)で表される末端基及び前記(13d)で表される繰り返し単位)とのモル比は、得られるポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性と処理液安定性の観点から、〔(13a)+(13c)〕:〔(13b)+(13d)〕=1:0.2〜1:2.0であることが好ましく、1:1.0〜1:1.5であることがより好ましい。
【0123】
前記ナフタレンスルホン酸塩系縮合物は、ナフタレンスルホン酸の塩を、例えばホルマリンで縮合させた縮合体である。前記塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン等の1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアリルアミン等の2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
【0124】
前記ナフタレンスルホン酸塩の重合度としては、特に限定されないが、2〜20であることが好ましい。また、重量平均分子量としては、1000〜20000であることが好ましい。なお、前記重量平均分子量はGPC測定によるポリスチレン換算の値である。
【0125】
このようなナフタレンスルホン酸塩系縮合物の具体例としては、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物等が挙げられる。また、置換基としてのアルキル基としては、直鎖でも分岐でもよい。さらに、ナフタレン部分にはアルキル基等の置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0126】
前記クレオソート油スルホン酸塩系縮合物としては、クレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物の塩が好ましく用いられ、前記塩としては、前記ナフタレンスルホン酸塩の塩として挙げたものと同様のものが挙げられる。このようなクレオソート油スルホン酸塩系縮合物としては、重量平均分子量が1000〜20000であることが好ましい。
【0127】
前記リグニンスルホン酸塩は、木材の主要成分であるリグニンをスルホン化してなるものであり、塩としては、前記ナフタレンスルホン酸の塩として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0128】
前記メラミンスルホン酸塩系縮合物としては、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩が好ましく用いられ、前記塩としては、前記ナフタレンスルホン酸の塩として挙げたものと同様のものが挙げられる。このようなメラミンスルホン酸塩系縮合物としては、特に制限されないが、重量平均分子量が500〜20000であることが好ましい。
【0129】
前記ビスフェノールスルホン酸塩系縮合物としては、ビスフェノールスルホン酸ホルマリン縮合物の塩が好ましく用いられ、前記塩としては、前記ナフタレンスルホン酸の塩として挙げたものと同様のものが挙げられる。このようなビスフェノールスルホン酸塩系縮合物としては、特に制限されないが、重量平均分子量が500〜20000であることが好ましい。
【0130】
本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤において、前記界面活性剤(C)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このような界面活性剤(C)の中でも、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性、難燃性、経済性の観点から、前記一般式(11)で表されるポリオキシアルキレンスチレン化アリールエーテル、前記一般式(13)で表されるフェノールホルムアルデヒド系縮合物が好ましく、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化クミルフェニルエーテルがより好ましい。
【0131】
(ポリエステル繊維用難燃加工剤)
本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤において、前記化合物(A)の含有量と、前記ハロゲン化合物(B)の含有量との質量比(A:B)としては、1:100〜50:100であることが好ましく、5:100〜25:100であることがより好ましく、5:100〜15:100であることがさらに好ましい。また、前記難燃成分として前記リン化合物を併用する場合には、前記化合物(A)の含有量と、前記難燃成分の含有量との質量比(A:(B+リン化合物))としては、1:100〜50:100であることが好ましく、5:100〜25:100であることがより好ましく、5:100〜15:100であることがさらに好ましい。前記化合物(A)の含有量が前記下限未満である場合、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の風合い、耐久難燃性、及び難燃成分のポリエステル繊維への吸尽性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、化合物(A)の量に見合う風合い、耐久難燃性及び吸尽性の向上効果が少なくなり、また、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の堅牢度が低下する傾向にある。
【0132】
さらに、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤において、特に制限されないが、前記ハロゲン化合物(B)の含有量、及び、前記リン化合物を含有させる場合には前記ハロゲン化合物(B)と前記リン化合物との合計含有量としては、ポリエステル繊維用難燃加工剤中において0.1〜60質量%であることが好ましい。前記ハロゲン化合物(B)の含有量又は前記合計含有量が前記下限未満である場合、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性が不十分になる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性が低下する傾向がある。
【0133】
さらに、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤において、前記界面活性剤(C)をさらに含有する場合、その含有量としては、特に制限されないが、前記ハロゲン化合物(B)の含有量、又は、前記リン化合物を含有させる場合には前記ハロゲン化合物(B)と前記リン化合物との合計含有量に対して0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。前記界面活性剤(C)の含有量が前記下限未満である場合、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性の向上効果が少ない傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の堅牢度や耐久難燃性が低下する傾向にある。
【0134】
本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤は、例えば、前記難燃成分を前記化合物(A)を用いて水性媒体に乳化分散せしめることにより、或いは、前記化合物(A)、前記難燃成分、及び水性媒体とを連続的に乳化分散せしめることにより得ることができる。前記難燃成分としてハロゲン化合物(B)とリン化合物とを併用する場合には、ハロゲン化合物(B)とリン化合物とを同時に乳化分散せしめてもよいし、ハロゲン化合物(B)とリン化合物とを別々に乳化分散せしめたものを混合することによって本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤を得てもよい。
【0135】
また、前記界面活性剤(C)を用いる場合は、例えば、前記難燃成分を前記界面活性剤(C)を用いて水性媒体に乳化分散せしめることにより、或いは、前記難燃成分、前記界面活性剤(C)、及び水性媒体を連続的に乳化分散せしめることにより、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤を得ることができる。さらに、前述と同様に、前記難燃成分としてハロゲン化合物(B)とリン化合物とを併用する場合には、ハロゲン化合物(B)とリン化合物とを同時に乳化分散せしめてもよいし、ハロゲン化合物(B)とリン化合物とを別々に乳化分散せしめたものを混合してもよい。なお、前記界面活性剤(C)を用いる場合、前記化合物(A)は、前記難燃成分の乳化分散前、乳化分散中、乳化分散後のいずれの段階で添加してもよく、前記化合物(A)としては、そのまま添加してもよいし、水性媒体に希釈したものを添加してもよい。これらの方法の中でも、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製造の容易さと前記化合物(A)の配合量を適宜変化させやすいという観点から、前記難燃成分を前記界面活性剤(C)を用いて乳化分散せしめた後に前記化合物(A)を混合する方法が好ましい。
【0136】
前記水性媒体としては、水、水及び水に混和する親水性溶剤の混合溶媒であることが好ましい。前記親水性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、へキシレングリコール、グリセリン、ブチルグリコール、ソルフィット等が挙げられる。
【0137】
前記難燃成分を水性媒体に乳化分散せしめる方法としては、特に制限されず、従来公知の乳化分散機を用いた方法が挙げられ、前記乳化分散機としては、例えば、マイルダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ホモミキサー、ビーズミル、パールミル、ダイノーミル、アスペックミル、バスケットミル、ボールミル、ナノマイザー、アルチマイザー、スターバーストが挙げられる。これらの乳化分散機としては、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
このようにして得られる本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤は乳化分散液の状態であり、前記乳化分散液においては、50%積算粒径が0.05〜10μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましく、0.1〜2μmであることがさらに好ましい。50%積算粒径が前記下限未満であると、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性の向上効果が少なく、また、微粒子化に時間がかかるため経済的に不利となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性が低下する傾向にある。さらに、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤としては、ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性がさらに向上する傾向にあるという観点から、90%積算粒径が2.0μm以下であることが特に好ましい。
【0139】
本発明において、50%積算粒径及び90%積算粒径は、レーザ回折式/散乱式 粒度分布測定装置LA−920(株式会社 堀場製作所製)を用い、ポリエステル繊維用難燃加工剤の粒径の百分率積算値が小粒径側から50%の粒径を50%積算粒径、百分率積算値が小粒径側から90%の粒径を90%積算粒径とすることで測定することができる。
【0140】
本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、前記界面活性剤(C)に加えて、さらに、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を含有していてもよい。前記カチオン界面活性剤としては、特に制限されず、例えば、炭素数8〜24のモノアルキルトリメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のジアルキルジメチルアンモニウム塩、炭素数8〜24のモノアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のジアルキルアミン酢酸塩、炭素数8〜24のアルキルイミダゾリン4級塩が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
前記両性界面活性剤としても、特に制限されず、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルジエチレントリアミノ酢酸、ジアルキルジエチレントリアミノ酢酸、アルキルアミンオキサイドが挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
また、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤としては、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、前記ハロゲン化合物(B)及び前記リン化合物以外の従来公知の難燃剤、消臭剤、抗菌剤、柔軟剤、吸水剤、撥水撥油剤、平滑剤、浸透剤、分散均染剤、制電剤、キレート剤、酸化防止剤、消泡剤、溶剤、合成樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、グリオキザール樹脂、メラミン樹脂等)、架橋剤、凍結安定剤、艶消し剤、顔料、染料、キャリアー剤、フィックス剤、湿潤剤、光安定剤、紫外線吸収剤、増粘剤(ポリアクリルアミド、ザンタンガム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ソーダ、CMC、アルギン酸ソーダ、PVA等)、製膜助剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、黄変防止剤等の添加剤を含有していてもよい。また、本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤を用いたポリエステル繊維の処理と同時及び/又は前後にこれらの添加剤を用いてもよい。
【0143】
(難燃性ポリエステル繊維製品の製造方法)
本発明の難燃性ポリエステル繊維製品の製造方法は、前記本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤を用いてポリエステル繊維を処理するものである。本発明の製造方法によれば、前記本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤をポリエステル繊維製品に付与することにより、耐久性に優れた十分な難燃性を有し、かつ、堅牢度が維持され風合い硬化が十分に抑制された難燃性ポリエステル繊維製品を得ることができる。
【0144】
本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤としては、そのまま用いても適宜希釈した処理液として用いてもよい。前記処理液において、前記化合物(A)の含有量と前記ハロゲン化合物(B)の含有量との質量比(A:B)、前記リン化合物を併用する場合における前記化合物(A)の含有量と前記難燃成分の含有量との質量比(A:(B+リン化合物))、前記界面活性剤(C)をさらに含有する場合における含有量、50%積算粒径及び90%積算粒径としては、それぞれ前述のとおりである。
【0145】
前記本発明のポリエステル繊維用難燃加工剤をポリエステル繊維製品に付与する方法としては、特に制限されず、浸漬法、パディング法、コーティング法、スプレー法等の公知の方法を適宜用いることができる。
【0146】
前記浸漬法を用いる場合には、前記ポリエステル繊維用難燃加工剤を必要に応じて適宜希釈することにより、処理液中の難燃性分の濃度が0.01〜15%o.w.f.の範囲内となるようにすることが好ましい。また、前記パディング法を用いる場合には、処理液中の難燃性分の濃度が0.01〜15質量%の範囲内となるようにすることが好ましい。さらに、これらの方法においては、ポリエステル繊維に対する前記難燃性分の担持量が0.01〜15%o.w.f.となるように付与することが好ましい。前記難燃性分の担持量が前記下限未満では、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、難燃性の向上効果が少なく、場合によっては難燃性が低下する場合や、得られる難燃性ポリエステル繊維製品が白化して外観が損なわれたり、堅牢度の低下や風合い硬化がひきおこされる場合がある。
【0147】
前記浸漬法を用いる場合には、通常一般に使用される染色機械、例えば、ウインス、液流染色機、ジッカー、チーズ染色機、かせ染色機を用いて、所定の温度で所定の時間ポリエステル繊維を処理した後、脱水して乾燥させることにより難燃性ポリエステル繊維製品を得ることができる。また、前記パディング法を用いる場合には、ポリエステル繊維を処理液に浸漬し、マングル、ロール等を用いて所定のピクアップ量に調整した後、乾燥させることにより難燃性ポリエステル繊維製品を得ることができる。
【0148】
前記コーティング法を用いる場合には、前記ポリエステル繊維用難燃加工剤を必要に応じてバインダーに混合した処理液を使用することができ、この場合、処理液中における難燃性分の含有量としては、0.1〜15質量%の範囲内となるようにすることが好ましい。前記スプレー法を用いる場合には、難燃性分の含有量が10〜90質量%の範囲内となるように適宜希釈した処理液を用いてスプレー処理することが好ましい。
【0149】
前記コーティング法、スプレー法においては、ポリエステル繊維に前記難燃性分の担持量が0.1〜40g/m
2となるように付与することが好ましい。前記難燃性分の担持量が前記下限未満では、得られる難燃性ポリエステル繊維製品の難燃性が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、難燃性の向上効果が少なく、経済的に不利となる傾向にある。前記コーティング法を用いる場合には、刷毛塗り、ローラー塗装、フロー・コーター塗装、電着塗装等でポリエステル繊維に処理液を塗装し、乾燥させることにより難燃性ポリエステル繊維製品を得ることができる。
【0150】
これらの方法における乾燥条件としては、特に制限されず、例えば、0〜300℃において5秒〜数日間程度の条件で乾燥させることができる。また、必要に応じて、乾燥後に100℃以上の温度で10秒〜10分間程度加熱処理(キュアリング)してもよい。
【0151】
前記ポリエステル繊維としては、特に制限されず、例えば、レギュラーポリエステル繊維;カチオン可染ポリエステル繊維;再生ポリエステル繊維;及びこれらの2種以上からなるポリエステル繊維が挙げられ、さらに、前記ポリエステル繊維と綿、麻、絹、ウール等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の半合成繊維;ナイロン、アクリル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリトリメチレンテレフタレート繊維等の合成繊維;炭素、ガラス、セラミックス、アスベスト、金属等の無機繊維等との複合繊維、混紡繊維等からなる繊維製品も挙げられる。
【0152】
また、前記ポリエステル繊維の形態としても特に制限はされず、短繊維、長繊維、糸、織物、編物、わた、スライバー、トップ、不織布等が挙げられる。さらに、このようなポリエステル繊維としては、染色処理やソーピング処理が施されたものであってもよい。
【実施例】
【0153】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0154】
(1)粒径測定
各実施例及び比較例で得られたポリエステル繊維用難燃加工剤について、レーザ回折式/散乱式 粒度分布測定装置LA−920(株式会社 堀場製作所製)を用いて粒径を測定し、百分率積算値が小粒径側から50%の粒径を50%積算粒径とした。
【0155】
(2)ポリエステル繊維用難燃加工剤の製品安定性評価
ポリエステル繊維用難燃加工剤の製造直後(分散直後)と20℃×30日静置後の外観を目視で観察し下記の基準:
A:分離や沈降及び増粘がない
B:分離や沈降及び増粘があるが、簡単な撹拌で使用可能
C:分離や沈降及び増粘が発生しており、簡単な撹拌では使用不可
に従って判定した。
【0156】
(3)風合い
各実施例及び比較例で使用したポリエステル未加工布(難燃剤未処理布)の風合いを10(柔軟)、化合物(A)を使用せず、難燃成分としてFRBr1のみ、界面活性剤(C)成分としてTSP20Sのみを使用して得られた難燃性ポリエステル繊維製品(比較例2)の風合いを1(粗硬)として、得られた難燃性ポリエステル繊維製品の風合いを触感で10段階で評価した。性能がわずかに良好な場合は等級に「+」をつけ、性能がわずかに劣る場合には等級に「−」を付した。
【0157】
(4)摩擦堅牢度
各実施例及び比較例で得られた難燃性ポリエステル繊維製品について、JIS L 0849(2004)に記載されている摩擦に対する染色堅牢度試験方法と同様の方法で摩擦堅牢度試験を行い、級数を判定した。なお、本実施例においては、JIS L 0849(2004) 5.1b)に記載の摩擦試験機II形(学振形)を使用し、JIS L 0849(2004) 7.2b)に記載の湿潤試験のみを行った。
【0158】
(5)耐光堅牢度
各実施例及び比較例で得られた難燃性ポリエステル繊維製品について、JIS L0842(2004)に記載の紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法で63℃、40時間の処理を施し、「変退色用グレースケール」を使用してJIS L0804(2004)に記載の判定方法に従って判定した。
【0159】
(6)吸尽率(難燃剤成分の生地への付着量)
各実施例及び比較例で使用したポリエステル未加工布(難燃剤未処理布)の質量をW1、難燃剤処理布(難燃剤処理、ソーピングなし)の質量をW2、難燃剤処理布をソーピング処理した布(加工上がり)の質量をW3、難燃加工剤の固形分中の難燃成分の割合をRとし、吸尽率を以下の式:
吸尽率(%)=〔(W3−W1)×100〕/〔(W2−W1)× R/100〕
により求めた。なお、難燃剤未処理布、難燃剤処理布(難燃剤処理、ソーピングなし)、難燃剤処理布をソーピング処理した布(加工上がり)の質量は、20℃、65%RHの環境下で24時間放置した後に測定した質量である。
【0160】
(7)難燃性
各実施例及び比較例で得られた難燃性ポリエステル繊維製品について、加工上がり(水洗い洗濯前)と、加工上がりを水洗い洗濯及びドライクリーニングしたものについて、45°ミクロバーナー法と接炎試験(コイル法)により難燃性を評価した。なお、水洗い洗濯とドライクリーニングは以下の方法で行った。
【0161】
(7−1)45°ミクロバーナー法
JIS L 1091(1999) 8.1.1のA−1法を用いて、残炎時間と燃焼面積を測定した。なお、残炎時間が3秒以内かつ燃焼面積が30cm
2以下である場合を「A」、それ以外の場合を「B」と判定した。
【0162】
(7−2)接炎試験(コイル法)
JIS L 1091(1999) 8.4のD法を用いて、接炎回数を測定した。接炎回数は5回測定の平均値とした。接炎回数が多いほど難燃性能に優れていると判断する。
【0163】
(7−3)水洗い洗濯方法
各実施例及び比較例で得られた難燃性ポリエステル繊維製品について、JIS K 3371(1994)に記載の弱アルカリ性第1種洗濯用合成洗剤を1g/Lの割合で用い、浴比1:40として、60±2℃で15分間水洗濯した後、40℃±2℃で5分間のすすぎを3回行い、遠心脱水を2分間行う処理を1サイクルとし、これを5サイクル行った後、60℃±5℃で熱風乾燥した以外は、JIS L 1091(1999)に記載の方法にて水洗い洗濯を行った。
【0164】
(7−4)ドライクリーニング方法
各実施例及び比較例で得られた難燃性ポリエステル繊維製品1gにつき、テトラクロロエチレン12.6mL、チャージソープ0.265gを用いて、30℃±2℃で15分間クリーニングする処理を1サイクルとして、これを5サイクル行った後、つり下げ乾燥した以外は、JIS L 1091:1999に記載の方法にてドライクリーニングを行った。
【0165】
(合成例1)
<化合物(A):ペンタエリスリトールとオレイン酸2モルとエチレンオキサイド15モルとの反応物(一般式(2)で表される化合物)>
先ず、ペンタエリスリトール136質量部(1.0モル)、オレイン酸280質量部(1.0モル)及びパラトルエンスホン酸1質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して205〜215℃において約6時間脱水反応させ、その後冷却して、ペンタエリスリトールのオレイン酸エステルを得た。
【0166】
次いで、得られたペンタエリスリトールのオレイン酸エステル398質量部(1.0モル)と苛性ソーダ2質量部をオートクレーブに仕込み、加熱昇温して約130℃にした後、エチレンオキサイド660質量部(15モル)を温度150〜160℃、圧力0.39MPa以下において付加させた。エチレンオキサイド付加反応終了後、冷却し、氷酢酸によりpH7に中和してペンタエリスリトールのオレイン酸エステルのエチレンオキサイド15モル付加物を得た。
【0167】
次いで、得られたペンタエリスリトールのオレイン酸エステルのエチレンオキサイド15モル付加物1058質量部(1.0モル)、オレイン酸280質量部(1.0モル)及び濃硫酸5質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して180〜200℃において約3時間脱水反応させ、その後冷却して、ペンタエリスリトールとオレイン酸2モルとエチレンオキサイド15モルとの反応物を得た。
【0168】
(合成例2)
<化合物(A):ペンタエリスリトールとオレイン酸2モルとエチレンオキサイド25モルとの反応物(一般式(2)で表される化合物)>
先ず、ペンタエリスリトール136質量部(1.0モル)、オレイン酸280質量部(1.0モル)及びパラトルエンスホン酸1質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して205〜215℃において約6時間脱水反応させ、その後冷却して、ペンタエリスリトールのオレイン酸エステルを得た。
【0169】
得られたペンタエリスリトールのオレイン酸エステル398質量部(1.0モル)及び苛性ソーダ2質量部をオートクレーブに仕込み、加熱昇温して約130℃にした後、エチレンオキサイド1100質量部(25モル)を温度150〜160℃、圧力0.39MPa以下において付加させた。エチレンオキサイド付加反応終了後、冷却し、氷酢酸によりpH7に中和してペンタエリスリトールのオレイン酸エステルのエチレンオキサイド25モル付加物を得た。
【0170】
次いで、得られたペンタエリスリトールのオレイン酸エステルのエチレンオキサイド25モル付加物1498質量部(1.0モル)、オレイン酸280質量部(1.0モル)及び濃硫酸5質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して180〜200℃において約3時間脱水反応させ、その後冷却して、ペンタエリスリトールとオレイン酸2モルとエチレンオキサイド25モルとの反応物を得た。
【0171】
(合成例3)
<化合物(A):トリメチロールプロパンとエチレンオキサイド20モルとオレイン酸1モルとの反応物(一般式(2)で表される化合物)>
先ず、トリメチロールプロパン134質量部(1.0モル)及び苛性ソーダ2質量部をオートクレーブに仕込み、加熱昇温して約130℃にした後、エチレンオキサイド880質量部(20モル)を温度150〜160℃、圧力0.39MPa以下において付加させた。エチレンオキサイド付加反応終了後、冷却し、氷酢酸によりpH7に中和してトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド20モル付加物を得た。
【0172】
次いで、得られたトリメチロールプロパンのエチレンオキサイド20モル付加物1014質量部(1.0モル)、オレイン酸280質量部(1.0モル)及び濃硫酸5質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して180〜200℃において約3時間脱水反応させ、その後冷却して、トリメチロールプロパンとエチレンオキサイド20モルとオレイン酸1モルとの反応物を得た。
【0173】
(合成例4)
<化合物(A):POE(13)ポリグリセリルエーテルとオレイン酸1モルとの反応物(一般式(2)で表される化合物)>
POE(13)ポリグリセリルエーテル(SC−E750、平均分子量750、阪本薬品工業株式会社製)750質量部(1.0モル)、オレイン酸280質量部(1.0モル)及び濃硫酸5質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して180〜200℃において約3時間脱水反応させ、その後冷却して、POE(13)ポリグリセリルエーテルとオレイン酸1モルとの反応物を得た。
【0174】
(合成例5)
<化合物(A):ポリエチレングリコール(分子量600)の硫酸化物(一般式(1)で表される化合物)>
先ず、ポリエチレングリコール(平均分子量600)600質量部(1.0モル)を反応釜に仕込み、ホモミキサーで撹拌しながら、窒素気流下、105〜115℃においてスルファミン酸106.7質量部(1.1モル)を20分間隔で2分割して加えた。その後、105〜115℃において約4時間反応させ、水、イソプルピルアルコール及びアンモニア水を加え、pH8のポリエチレングリコール(分子量600)の硫酸化物を50質量%含む黄色液状組成物を得た。
【0175】
(合成例6)
<化合物(A):ペンタエリスリトールとオレイン酸2モルとエチレンオキサイド15モルとの反応物の硫酸化物=合成例1の化合物の硫酸化物(一般式(2)で表される化合物)>
合成例1で得られた化合物1320質量部(1.0モル)を反応釜に仕込み、ホモミキサーで撹拌しながら、窒素気流下、105〜115℃においてスルファミン酸126.1質量部(1.3モル)を20分間隔で4分割して加えた。その後、105〜115℃において約4時間反応させ、水、イソプルピルアルコール及びアンモニア水を加え、pH8の合成例1の化合物の硫酸化物を50質量%含む黄色液状組成物を得た。
【0176】
(合成例7)
<化合物(A):ポリエチレングリコール(平均分子量600)とプロピレンオキサイド1.7モルとエチレンオキサイド6.8モルとの反応物(一般式(1)で表される化合物)>
先ず、ポリエチレングリコール(平均分子量600)600質量部(1.0モル)及び苛性ソーダ2質量部をオートクレーブに仕込み、加熱昇温して約130℃にした後、プロピレンオキサイド100質量部(1.7モル)及びエチレンオキサイド300質量部(6.8モル)の混合物を温度150〜160℃、圧力0.39MPa以下にて付加させた。付加反応終了後、冷却し、氷酢酸によりpH7に中和してポリエチレングリコール(平均分子量600)とプロピレンオキサイド1.7モルとエチレンオキサイド6.8モルとの反応物を得た。
【0177】
(合成例8)
<界面活性剤(C):(一般式(13)で表される化合物)>
反応容器に、クレゾール86質量部(0.8モル)、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウム269質量部(1.2モル)、37質量%ホルマリン溶液130質量部(ホルムアルデヒド1.6モル)、水酸化ナトリウム8質量部及び水625質量部を仕込み、約100℃において5時間反応させて、クレゾールとヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウムとのモル比が1:1.5である一般式(13)で表される化合物の水分散物を得た。残留ホルムアルデヒド濃度が0.1%未満であったことから、反応率を100%として、フェノール系加工物とホルムアルデヒドの原料モル比から、この化合物の平均重合度を求めたところ5であった。
【0178】
(合成例9)
<界面活性剤(C):(一般式(13)で表される化合物)>
反応容器に、クレゾール130質量部(1.2モル)、ヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウム179質量部(0.8モル)、37質量%ホルマリン溶液130質量部(ホルムアルデヒド1.6モル)、水酸化ナトリウム8質量部及び水602質量部を仕込み、約100℃において5時間反応させて、クレゾールとヒドロキシトリルメタンスルホン酸ナトリウムとのモル比が1:0.67である一般式(13)で表される化合物の水分散物を得た。合成例8と同様の方法でこの化合物の平均重合度を求めたところ5であった。
(比較合成例1)
<ポリエステル樹脂>
反応容器にテレフタル酸ジメチル77.6質量部(0.4モル)、イソフタル酸ジメチル19.4質量部(0.1モル)、ポリエチレングリコール(平均分子量:3100)387.5質量部(0.125モル)、モノエチレングリコール68.2質量部(1.1モル)及び三酸化アンチモン0.1質量部、酢酸亜鉛0.1質量部を仕込み、窒素ガスを通入した。この混合物を130℃において加熱した後、130℃から180℃まで2時間かけてゆっくり昇温してエステル交換反応を行った。さらに、180℃から250℃まで2時間かけてゆっくり昇温した後、窒素ガスの通入を停止した。その後、減圧して0.7kPaの圧力下、260℃において30分間反応させてエステル交換反応を行い、ポリエステル樹脂500質量部を得た。このポリエステル樹脂の重量平均分子量は、36,000であった。次に、このポリエステル樹脂100質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド50gに溶解させた後、熱水850質量部を加えて乳化させ、ポリエステル樹脂液を得た。
【0179】
(比較合成例2)
<ペンタエリスリトールのオレイン酸2モルエステル>
ペンタエリスリトール136質量部(1.0モル)、オレイン酸560質量部(2.0モル)及びパラトルエンスホン酸1質量部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下にて加熱昇温して205〜215℃において約6時間脱水反応させ、その後冷却して、ペンタエリスリトールの2モルオレイン酸エステルを得た。
【0180】
(実施例1)
先ず、分散染料(Kayalon Polyester Black ECX300)3%o.w.f.、分散均染剤(ニッカサンソルトRM−3406、日華化学(株)製)0.5g/L、80質量%酢酸0.3cc/Lを含む染色浴にレギュラーポリエステルサテン未染色布を浴比1:20にて浸漬し、130℃において30分間染色加工処理を行った。その後、ソーピング剤(サンモールRC−700E、日華化学(株)製)2g/L、水酸化ナトリウム2g/L、ハイドロサルファイト2g/Lを含むソーピング浴を用いて、80℃において20分間ソーピング処理を行った後、水洗×5分を2回行い、熱風乾燥機中で80℃において1時間乾燥させてポリエステル染色布(ポリエステル未加工布)を得た。
【0181】
次いで、化合物(A)として合成例1で得られた化合物3質量部と合成例6で得られた化合物3質量部、ハロゲン化合物(B)としてFRBr1(トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート)40質量部、及びイオン交換水(イオン交換水1)44質量部を混合し、マイルダーで予備分散させた後、0.5mmのガラスビーズを充填したビーズミル(DYNO−MILL KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて微粒子化処理を施して乳化分散せしめた。次いで、Rhodopol23(キサンタンガム、ローディア社製)0.2質量部をイオン交換水(イオン交換水2)9.8質量部に溶解させた溶液を加え、均一撹拌してポリエステル繊維用難燃加工剤を得た。なお、得られたポリエステル繊維用難燃加工剤における50%積算粒径は0.58μmであった。
【0182】
得られたポリエステル繊維用難燃加工剤の20%soln水溶液に上記で得られたポリエステル染色布を浸漬し、ピックアップ50%となるようにロールで絞り、120℃において3分間、さらに180℃において3分間乾燥させて難燃剤処理布(難燃剤処理、ソーピングなし)を得た。次いで、ソーピング剤(リポトールTC−350、日華化学(株)製)2g/L、ソーピング剤(エスクードFRN、日華化学(株)製)1g/L、ソーダ灰2g/Lを含むソーピング浴を用いて、80℃において20分間ソーピング処理を行った後、水洗×5分を2回行い、120℃において3分間、さらに180℃において3分間乾燥させて難燃性ポリエステル繊維製品(加工上がり)を得た。
【0183】
(実施例2〜3、51〜52)
ポリエステル繊維用難燃加工剤の組成を表1〜5に示す組成としたこと以外は実施例1と同様にしてポリエステル繊維用難燃加工剤及び難燃性ポリエステル繊維製品を得た。
【0184】
(実施例4)
ハロゲン化合物(B)としてFRBr1 40質量部、界面活性剤(C)としてTSP20S(トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物の硫酸エステルナトリウム塩)1質量部、及びイオン交換水(イオン交換水1)24質量部を混合し、マイルダーで予備分散させた後、0.5mmのガラスビーズを充填したビーズミル(DYNO−MILL KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて微粒子化処理を施して乳化分散せしめた。次いで、Rhodopol23(キサンタンガム、ローディア社製)0.2質量部をイオン交換水(イオン交換水2)9.8質量部に溶解させた溶液を加え、均一撹拌した後、化合物(A)としてPEG600(ポリエチレングリコール(平均分子量600))0.2質量部をイオン交換水(イオン交換水3)24.8質量部に溶解させた溶液を加え、均一撹拌してポリエステル繊維用難燃加工剤を得たこと以外は、実施例1と同様に操作を行って難燃性ポリエステル繊維製品を得た。なお、得られたポリエステル繊維用難燃加工剤における50%積算粒径は0.53μmであった。
【0185】
(実施例5〜33、35〜50、53〜59)
(比較例1〜7、10〜13、17〜18、20、22〜23、27〜28、30〜31)
ポリエステル繊維用難燃加工剤の組成を表1〜9に示す組成としたこと以外は実施例4と同様にしてポリエステル繊維用難燃加工剤及び難燃性ポリエステル繊維製品を得た。
【0186】
(実施例34)
化合物(A)としてPEG600を5質量部、難燃成分としてFRP1を4質量部とFRBr1を36質量部、界面活性剤(C)としてTSP20S 1質量部、及びイオン交換水(イオン交換水1)44質量部を混合し、マイルダーで予備分散させた後、0.5mmのガラスビーズを充填したビーズミル(DYNO−MILL KDL型、ウィリー・エ・バッコーフェン社製)を用いて微粒子化処理を施して乳化分散せしめた。次いで、Rhodopol23(キサンタンガム、ローディア社製)0.2質量部をイオン交換水(イオン交換水2)9.8質量部に溶解させた溶液を加え、均一撹拌してポリエステル繊維用難燃加工剤を得たこと以外は、実施例4と同様に操作を行って難燃性ポリエステル繊維製品を得た。なお、得られたポリエステル繊維用難燃加工剤における50%積算粒径は0.55μmであった。
【0187】
(比較例8)
難燃成分としてFRP6 40質量部、界面活性剤(C)としてTSP20S 3質量部、及びイオン交換水(イオン交換水1)47質量部を混合し、ホモジナイザーを用いて乳化分散せしめた。次いで、Rhodopol23(キサンタンガム、ローディア社製)0.2質量部をイオン交換水(イオン交換水2)9.8質量部に溶解させた溶液を加え、均一撹拌してポリエステル繊維用難燃加工剤を得たこと以外は、実施例1と同様に操作を行って難燃性ポリエステル繊維製品を得た。なお、得られたポリエステル繊維用難燃加工剤における50%積算粒径は0.29μmであった。
【0188】
(比較例9)
難燃成分としてFRP7(クレジルジフェニルホスフェート)を用いたこと以外は比較例8と同様に操作を行ってポリエステル繊維用難燃加工剤及び難燃性ポリエステル繊維製品を得た。
【0189】
(比較例14〜16、19、24〜26、29)
ポリエステル繊維用難燃加工剤の組成を表7〜9に示す組成としたこと以外は実施例19と同様にしてポリエステル繊維用難燃加工剤及び難燃性ポリエステル繊維製品を得た。
(比較例21)
ポリエステル染色布(ポリエステル未加工布)をそのままポリエステル繊維製品とした。
【0190】
各実施例及び比較例において得られたポリエステル繊維用難燃加工剤について、粒径測定、製品安定性評価を行った結果をポリエステル繊維用難燃加工剤の組成と共に表1〜表9に示す。また、得られた難燃性ポリエステル繊維製品(加工上がり)について、風合い、摩擦堅牢度、耐光堅牢度、吸尽率、難燃性の評価結果を表1〜9に示す。なお、表中の化合物は以下のとおりである。
【0191】
FRP1:フェノキシエチルジフェニルホスフェート
FRP2:10−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナントレン−10−オキサイド
FRP3:レゾルシノールジ2,6−キシレニルホスフェート
FRP4:5,5−ジメチル−2−(2’フェニルフェノキシ)−1,3,2−ジオキサフォスフォリナン−2−オキシド
FRBr1:トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート
HBCD:ヘキサブロモシクロドデカン
FRP5:トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート
FRP6:レゾルシノールジフェニルホスフェート
FRP7:クレジルジフェニルホスフェート。
【0192】
PEG400:ポリエチレングリコール(平均分子量400)
PEG600:ポリエチレングリコール(平均分子量600)
PEG1000:ポリエチレングリコール(平均分子量1000)
PEG2000:ポリエチレングリコール(平均分子量2000)
PEG4000:ポリエチレングリコール(平均分子量4000)
TW−O120V:モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO)(花王株式会社製、レオドールTW−O120V)。
【0193】
比較合成例2:比較合成例2で得られた化合物(20質量部)をトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド30モル付加物(5質量部)で乳化させた溶液を比較合成例2で得られた化合物が不揮発分換算で5質量%となるように使用
エパン450:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー(第一工業製薬(株)製)
D−400:ポリプロピレングリコール(第一工業製薬(株)製、ハイフレックスD−400)
T−30:モノ牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド30%水溶液(ライオン株式会社製、アーカードT−30)、不揮発分換算で5質量%使用
TR:ジトリデシルスルホコハク酸ナトリウム70%水溶液(花王株式会社製、ペレックスTR)、不揮発分換算で5質量%使用
SP−O:ソルビタンモノオレート(花王株式会社製、レオドールSP−O10V)(20質量部)をトリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド30モル付加物(5質量部)で乳化させた溶液をソルビタンモノオレートが不揮発分換算で5質量%となるように使用
IDA15E:イソデカノールのエチレンオキサイド15モル付加物。
【0194】
TSP20S:トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物の硫酸エステルナトリウム塩
TSP20:トリスチレン化フェノールのエチレンオキサイド20モル付加物
TSCP20:トリスチレン化クミルフェノールのエチレンオキサイド20モル付加物
【0195】
【表1】
【0196】
【表2】
【0197】
【表3】
【0198】
【表4】
【0199】
【表5】
【0200】
【表6】
【0201】
【表7】
【0202】
【表8】
【0203】
【表9】