特許第6039354号(P6039354)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039354
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/27 20060101AFI20161128BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61K8/27
   A61K8/31
   A61K8/37
   A61K8/39
   A61K8/81
   A61K8/06
   A61K8/365
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-227460(P2012-227460)
(22)【出願日】2012年10月12日
(65)【公開番号】特開2014-80377(P2014-80377A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−111726(JP,A)
【文献】 特開2005−272389(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/055761(WO,A1)
【文献】 特開2010−215602(JP,A)
【文献】 特開2013−091625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(f);
(a)トリアルコキシアルキルシラン及び/又はアルキルチタネートにより表面被覆処理された微粒子酸化亜鉛、3〜60質量%
(b)HLB3〜5の非シリコーン系界面活性剤、0.1〜10質量%
(c)炭化水素油及び/又はエステル油から選ばれる25℃で液体の油剤、5〜90質量%
(d)平均ポリオキシエチレン付加モル数が60〜100モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、0.1〜10質量%
(e)アクリルアミド系増粘剤、0.01〜10質量%
(f)水
を配合し、
成分(b)が、ヒドロキシステアリン酸重合度が3〜12であるポリヒドロキシステアリン酸及びグリセリン重合度が2〜4であるポリグリセリル型界面活性剤から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(c)の分子量200〜800であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(e)がビニルピロリドン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
化粧料の25℃における粘度が10000〜30000m・Pa/sであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の水中油型乳化化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の表面被覆処理された微粒子酸化亜鉛と、特定の分散剤と乳化剤とを配合した水中油型乳化化粧料に関し、微粒子酸化亜鉛を配合しながらも、伸び広がりの軽さと後肌のべたつきのなさに優れ、経時安定性にも優れた水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紫外線防御効果を有する化粧料には、有機紫外線吸収剤や無機紫外線散乱剤などが配合されている。無機紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の金属酸化物が用いられているが、中でも微粒子酸化亜鉛は、微粒子酸化チタンに比べて屈折率が低く透明度が高いため、自然な仕上がりが好まれて、多く用いられている。また、微粒子特有の粉感が少なく、紫外線遮蔽領域が320〜380nmでありUV−A防御能に優れるなど、審美性や感触面、機能面等、多くの利点を有する。
【0003】
その一方で金属酸化物は、凝集性が非常に高いため、化粧料中に均一に分散することが困難であり、また微量ではあるが多価金属イオンとして水中に溶出することによって、化粧料中の他成分に影響して乳化滴を破壊したり、経時による粘度低下や極端な粘度上昇を発生するなど、経時での安定性を保つことが非常に困難であった。
【0004】
そのため従来より、化粧品基材として有用な微粒子酸化亜鉛を有効に配合するために、多数の検討がなされている。例えば、有機ケイ素化合物で微粒子粉体を表面処理して、分散性を向上させる技術(例えば特許文献1参照)や、分散剤としてアクリル−シリコーングラフトポリマーを用いた技術(例えば特許文献2参照)が報告されている。また粘度を付与して経時安定性を向上させるために、高分子乳化剤として(アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルナトリウム)コポリマーを用いた技術(例えば特許文献3参照)などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−286147号公報
【特許文献2】特開2006−131547号公報
【特許文献3】特開2010−215602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、シリコーンオイルには特異的に分散性が向上するが、他の炭化水素油や、紫外線吸収剤を含む極性油への分散が困難であった。また特許文献2の技術は、水中油型乳化化粧料とすると、乳化滴の界面に分散剤が配向してしまい、微粒子金属酸化物の分散性が低下することがあった。特許文献3の技術では、粘度付与により安定性が確保されるものの、粉体のぬれや分散性が十分ではなく、伸び広がりの軽さや安定性の観点で満足のいくものではなかった。従って、微粒子酸化亜鉛を配合しながらも経時安定性に優れ、かつ使用感も良好な水中油型乳化化粧料が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において、本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の表面被覆処理された微粒子酸化亜鉛と、分散剤としてHLB3〜5の非シリコーン系界面活性剤とを選択し、炭化水素油及び/又はエステル油から選ばれる25℃で液体の油と、平均ポリオキシエチレン付加モル数が60〜100モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と、アクリルアミド系増粘剤とを組み合わせて用いることにより、微粒子酸化亜鉛を配合しながらも経時安定性に優れ、伸び広がりが良く、後肌のべたつきのない水中油型乳化化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
次の成分(a)〜(f);
(a)トリアルコキシアルキルシラン及び/又はアルキルチタネートにより表面被覆処理された微粒子酸化亜鉛
(b)HLB3〜5の非シリコーン系界面活性剤
(c)炭化水素油及び/又はエステル油から選ばれる25℃で液体の油
(d)平均ポリオキシエチレン付加モル数が60〜100モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
(e)アクリルアミド系増粘剤
(f)水
を配合することを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供するものである。
特には、本発明は、次の成分(a)〜(f);
(a)トリアルコキシアルキルシラン及び/又はアルキルチタネートにより表面被覆処理された微粒子酸化亜鉛、3〜60質量%
(b)HLB3〜5の非シリコーン系界面活性剤、0.1〜10質量%
(c)炭化水素油及び/又はエステル油から選ばれる25℃で液体の油剤、5〜90質量%
(d)平均ポリオキシエチレン付加モル数が60〜100モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、0.1〜10質量%
(e)アクリルアミド系増粘剤、0.01〜10質量%
(f)水
を配合し、
成分(b)が、ヒドロキシステアリン酸重合度が3〜12であるポリヒドロキシステアリン酸及びグリセリン重合度が2〜4であるポリグリセリル型界面活性剤から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする水中油型乳化化粧料を提供する。
【0009】
また本発明は、(b)がポリヒドロキシステアリン酸、ソルビタン型界面活性剤及びポリグリセリル型界面活性剤から選ばれる1種または2種以上である水中油型乳化化粧料、
(c)が分子量200〜800である水中油型乳化化粧料、
(e)がビニルピロリドン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体から選ばれる1種または2種以上である水中油型乳化化粧料に関する。
【0010】
また本発明は、化粧料の25℃における粘度が10000〜30000m・Pa/sである水中油型乳化化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型乳化化粧料は、微粒子酸化亜鉛を配合しながらも、伸び広がりの軽さに優れ、後肌のべたつきがなく良好な使用感であり、経時安定性にも優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
【0013】
本発明に用いられる成分(a)は、トリアルコキシシラン及び/又はアルキルチタネートにより表面被覆処理された微粒子酸化亜鉛であり、微粒子酸化亜鉛は、紫外線を吸収、散乱、反射、消光等することにより紫外線を遮断する粉体である。微粒子酸化亜鉛の平均粒子径は、紫外線防御効果と使用感の観点より、10〜200nmが好ましく、20〜100nmが特に好ましい。これらの粒子径は、動的光散乱法を用いた測定機器により測定可能である。本発明において、成分(a)の微粒子酸化亜鉛は、トリアルコキシアルキルシラン及び/又はアルキルチタネートを用いて表面処理することにより、粉体の分散性向上と、亜鉛イオンの溶出防止とを目的とする。
【0014】
成分(a)に用いられるトリアルコキシアルキルシランは、ケイ素原子に三つのアルコキシ基と一つのアルキル基が結合した化合物であり、該アルコキシ基が粉体表面の水酸基等と反応することにより、粉体表面を被覆する化合物である。このようなトリアルコキシアルキルシランは下記一般式(1)
CH(CHSi(O(C2n+1)) (1)
(m、nはそれぞれ正の整数で、m=6〜20、n=1〜3)で表すことができる。前記トリアルコキシアルキルシランにおける、アルコキシ基は、炭素数1〜3のアルコキシ基であるメトキシ、エトキシ、プロポキシ等が好ましい。また、該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルキル基は、炭素数6〜18のアルキル基であるヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等が好ましい。このようなトリアルコキシアルキルシランは、例えば、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン等が挙げられ、これらより1種または2種以上用いることができる。
【0015】
これらトリアルコキシアルキルシランの中でも、アルキル基の炭素数が8以上であると成分(a)の油剤中での分散性が良好となるため好ましく、上記一般式(1)においてm=7、n=2であるトリエトキシオクチルシランが特に好ましい。
【0016】
成分(a)に用いられるアルキルチタネートは、例えば、長鎖カルボン酸型、ピロリン酸型、亜リン酸型、アミノ酸型等のアルキルチタネート等が挙げられるが、分散安定化の観点より、炭素数8〜24のアルキル基を有するアルキルチタネートが好ましく、これらは下記一般式(2)
(RO)−Ti−(OCOR (2)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2は炭素数8〜24のアルキル基を表し、これらのアルキル基は、直鎖でも分岐していても良い。)で示される化合物が例示できる。前記アルキルチタネートは、具体的には、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等が挙げられ、これらより1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
これらアルキルチタネートの中でも、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートを用いると、成分(a)の油剤中での分散性が非常に優れたものとなるため好ましい。
【0018】
また本発明に用いられる成分(a)は、更にジメチコンや(ジメチコン/メチコン)コポリマーなど、撥水性の表面処理剤で被覆処理をすると、成分(a)の吸油量が下がり、化粧料中に成分(a)をより多く配合することができるため好ましい。(ジメチコン/メチコン)コポリマーはINCI(INTERNATIONAL NOMENCLATURE of COSMETIC INGREDIENTS)に収載されている化合物であり、ジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンシロキサンからなる共重合体である。
【0019】
本発明において微粒子酸化亜鉛の表面にトリアルコキシアルキルシラン、アルキルチタネート等の表面処理剤を被覆する方法は、特に限定されず、通常公知の処理方法が用いられる。具体的には、表面処理剤と微粒子酸化亜鉛とを直接混合し(加熱して)被覆する乾式被覆方法、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ヘキサン、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン等の溶媒にトリアルコキシアルキルシランを溶解又は分散し、この溶液又は分散液に微粒子酸化亜鉛を添加し、混合後、前記溶媒を乾燥等により除去、加熱、粉砕する湿式被覆方法、溶媒に溶解又は分散した表面処理剤を流動層中で粉体にスプレーコートする気相被覆方法、メカノケミカル方法等が挙げられる。これらの中でも湿式被覆方法が好ましい。
【0020】
成分(a)の微粒子酸化亜鉛の表面被覆処理量は、質量比で、表面処理剤/微粒子酸化亜鉛=0.02〜0.25が好ましく、更に好ましくは、0.03〜0.18である。この範囲であれば、成分(a)を配合した化粧料は、伸び広がりの軽さに優れ、経時安定性も向上する。
【0021】
本発明における成分(a)の配合量は、3〜60質量%(以下、%と略す)であることが好ましく、更に好ましくは5〜30%である。この範囲であれば、伸び広がりの軽さに優れ、経時安定性も向上する。
【0022】
本発明に用いられる成分(b)は、HLBが3〜5の非シリコーン系界面活性剤であり、成分(a)の油剤中での分散性を高めるために用いられ、ポリヒドロキシステアリン酸、ソルビタン型界面活性剤、ポリグリセリル型界面活性剤等が挙げられる。
【0023】
ポリヒドロキシステアリン酸としては、水酸基は12位が好ましく、ヒドロキシステアリン酸の重合度は3〜12が好ましく、更に好ましくは重合度4〜8である。市販品としては、ARLACEL P−100(ユニケマ社製)を挙げることが出来る。
【0024】
ソルビタン型界面活性剤としては、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンなどが挙げられる。市販品としては、オレイン酸ソルビタンとしてコスモール182V(日清オイリオグループ社製)、セスキオレイン酸ソルビタンとしてはレオドールAO−15(花王社製)を挙げることが出来る。
【0025】
ポリグリセリル型界面活性剤としては、グリセリンの重合度は2〜4が好ましく、イソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリルなどが挙げられる。市販品としては、イソステアリン酸ポリグリセリルとしてコスモール41V(日清オイリオグループ社製)、ジイソステアリン酸ポリグリセリルとしてはコスモール42V(日清オイリオグループ社製)を挙げることができる。
【0026】
本発明における成分(b)の配合量は、0.1〜10%であることが好ましい。この範囲であれば、伸び広がりの軽さに優れるものが得られる。本発明において、成分(a)と成分(b)の配合質量比(b)/(a)は0.01〜0.5が好ましく、更に好ましくは、0.02〜0.3である。この範囲であれば、後肌のべたつきのなさに優れ、経時安定性を向上する。
【0027】
本発明に用いられる成分(c)は、炭化水素油及び/又はエステル油から選ばれる25℃で液体の油剤であり、成分(a)を分散させる媒体として、伸び広がりの軽さを向上させるために配合される。ポリシロキサン骨格を持たない油剤であれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源は問わない。例えば、炭化水素類、油脂類、エステル油類、フッ素系油剤類、ラノリン誘導体類等を用いることができ、より具体的には流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズピップ油、アボカド油等の油脂類、ホホバ油、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油類、p−アミノ安息香酸エチルヘキシルジメチル、サリチル酸エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ジネオペンチル−4’−メトキシベンザルマロナート等の油溶性紫外線吸収剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類等を例示することができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。そのなかでも、分子量が200〜800の炭化水素油及び/又はエステル油が好ましく、イソドデカン、イソテトラデカン、イソヘキサデカン、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルなどが好ましい。これらの油剤であると、伸び広がりの良好な水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0028】
本発明における成分(c)の配合量は、5〜90%が好ましく、更に好ましくは10〜60%である。この範囲であると、伸び広がりの良好な水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0029】
本発明に用いられる成分(d)平均ポリオキシエチレン付加モル数が60〜100モルであるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、水中油型乳化を行うために用いられる界面活性剤であり、経時安定性を向上させるために配合される。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(80E.O.)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.)が挙げられ、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。このように、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の中でも高HLBのタイプを選択して用いることで、併用している界面活性剤である成分(b)とのHLB差が大きくなり、相互作用しにくくなるために水中油型の乳化剤として有用である。
【0030】
本発明における成分(d)の配合量は0.1〜10%が好ましく、より好ましくは1〜5%である。この範囲内であれば乳化状態も良好であり、充分な経時安定性を有するものが得られる。
【0031】
本発明に用いられる成分(e)アクリルアミド系増粘剤は、水中油型化粧料の粘性付与剤であり、経時安定性の向上を目的に配合されるものである。
アクリルアミド系増粘剤としては、アクリルアミドおよびその誘導体の中から選ばれる1種または2種以上を構成単位として含むホモポリマー、コポリマー、クロスポリマー、若しくは混合物である。具体例として好ましくはビニルピロリドン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ジメチルアクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリルアミド/アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリルアミドとポリアクリル酸の混合物、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリルアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、ポリアクリルアミド、アクリルアミド/アクリル酸共重合体、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のホモポリマー、およびビニルホルムアミド/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体が挙げられ、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0032】
また特に好ましくは、アクリル酸/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸共重合体、又はアクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体であり、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の架橋ポリマーはコポリマー40%を含む分散物がセピゲル305の名でSEPPIC社から発売されている。またアクリル酸・アクロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマーは、コポリマー37.5%を含む分散物がSIMULGEL−EGの名でSEPPIC社から発売されている。本発明においてはこれらの市販品を用いることが出来る。
【0033】
本発明における成分(e)の配合量は、特に限定されるものではないが、0.01〜10%が好ましく、より好ましくは0.05〜5%である。この範囲であれば伸び広がりやべたつきのなさといった使用感にも優れ、十分な粘度が獲得され、経時安定性に優れたものとなる。
【0034】
本発明に用いられる成分(e)水は、本発明の水中油型乳化化粧料に、みずみずしさを与える目的や、油性成分、及び微粒子酸化亜鉛等の分散媒として用いる。化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば精製水、温泉水、深層水、又は植物等の水蒸気蒸留水等が挙げられる。イオン交換水や蒸留水等の精製水であると、金属イオンなどの不純物が少ないため特に好ましい。
【0035】
また本発明の水中油型乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、成分(a)〜(f)の他に、通常化粧料に配合される成分として、成分(a)以外の粉体、成分(b)、(d)以外の界面活性剤、成分(c)以外の油剤、多価アルコール、低級アルコール、成分(e)以外の水溶性高分子、保湿剤、糖類、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効成分、安定化剤、色素、香料等を各種の効果の付与のために適宜配合することができる。
【0036】
例えば、油剤としては、成分(c)以外に、動物油、植物油、合成油等の起源の固形油、半固形油、液状油、揮発性油の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類等が挙げられる。但し、本発明の水中油型乳化化粧料において、シリコーン系油剤の配合量はできるだけ少量であることが好ましい。本発明の水中油型乳化化粧料中の全ての油剤中におけるシリコーン系油剤の配合量は20%以下であることが好ましく、更に好ましくは10%以下であり、最も好ましくはシリコーン系油剤を配合しないことである。シリコーン系油剤の配合量が多くなることで、微粒子酸化亜鉛の分散及び水中油型乳化が良好でなくなり、使用感や安定性に劣るものになることがある。
【0037】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は、特に限定されるものではないが、予め表面処理された微粒子酸化亜鉛(成分(a))を分散媒である非シリコーン系油剤(成分(c))中に分散剤である成分(b)を用いて分散処理して微粒子酸化亜鉛分散組成物を調製し、次いで該微粒子酸化亜鉛分散組成物を油中水型乳化化粧料に配合することがより好ましい。このような方法を行うことで、成分(a)の分散性や経時安定性がさらに優れる水中油型乳化化粧料となる。
【0038】
上記の微粒子酸化亜鉛分散組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、成分(b)と成分(c)を混合し、これに成分(a)を添加し、均一分散することにより得ることができる。この際に、均一分散する機器としては、3本ロール機、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ボールミル、ビーズミル等が挙げられるが、より好ましくは媒体を用いたボールミルやビーズミル等の湿式粉砕処理機器である。
【0039】
本発明の水中油型乳化化粧料は、特に限定されないが、形状として液状、半固形状のものが挙げられ、特に25℃における粘度が10000〜30000m・Pa/s程度であるものが好ましい。この範囲であれば、保存安定性が良好で、みずみずしい感触が良好である。前記粘度はB型回転粘度計によって測定したものである。また、製品形態としては、乳液、クリーム、美容液、化粧下地、日焼け止めなどの皮膚用化粧料、ファンデーション、アイシャドウ、コンシーラー、リップクリーム等の仕上げ用化粧料、ヘアミスト、ヘアクリーム、ポマード、チック、液体整髪料、セットローション、ヘアスプレー、等の頭髪用化粧料などを例示することができる。この中でも、日焼け止め、ファンデーション、化粧下地等が本発明の効果が発揮されやすい水中油型乳化化粧料である。
【実施例】
【0040】
以下に製造例及び実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1〜13及び比較例1〜15:水中油型乳化化粧料
表1に示す組成の水中油型乳化化粧料を下記の製造方法により調製し、各試料について、「伸び広がりの軽さ」、「べたつきのなさ」、「経時安定性」について下記の評価方法によって評価を行い、その結果も併せて表1に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
<製造方法>
A.成分(23)〜(35)を均一に混合分散する。
B.成分(19)〜(22)を70℃にて均一に混合溶解する。
C.成分(1)〜(12)、(13)〜(18)を70℃にて均一に混合溶解する。
D.AにBを均一に混合し70℃に加熱する。
E.CにDを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
F.Eを冷却し水中油系乳化化粧料を得た。
【0044】
(評価方法1)「伸び広がりの軽さ」、「べたつきのなさ」
水中油型乳化化粧料について化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行った。パネル各人に各試料を使用してもらい、下記絶対評価基準にて6段階に評価し評点を付け、各試料のパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
絶対評価基準
(評点):(評価)
6点:非常に良好
5点:良好
4点:やや良好
3点:普通
2点:やや不良
1点:不良
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :5点を超える
○ :4点を超える5点以下
△ :2点を超える4点以下
× :2点以下
【0045】
(評価方法2)「経時安定性」
経時安定性については次に示す加速試験にて評価した。ここでの加速試験とは50℃恒温槽に4週間保管することである。分散が良好であれば微粒子酸化亜鉛の凝集が抑えられ加速試験前後の化粧料の粘度変化は小さい。一方、経時安定性が悪い場合は微粒子酸化亜鉛が凝集し、それによって体積効果が発生したり、微粒子酸化亜鉛が沈降したりすることで加速試験前後の粘度変化が大きくなる。加速試験の具体的方法としては、水中油型乳化化粧料を製造後、30℃恒温槽にて1日保管した後にB型粘度計で測定した粘度値と、50℃恒温槽に4週間保管した後30度の恒温槽に1日保管した後に測定した粘度値を比較し、下記の基準に従って判断した。
判定基準
(判定):(評価)
◎ :粘度変化が0mPa・s以上、±1000mPa・s未満
○ :粘度変化が±1000mPa・s以上、±3000mPa・s未満
△ :粘度変化が±3000mPa・s以上、±5000mPa・s未満
× :粘度変化が±5000mPa・s以上
【0046】
表1に示したように、実施例1〜13は伸び広がりの軽さ、べたつきのなさ、経時安定性の全ての項目において優れていた。また、初期粘度も15000〜25000mPa・sで、使用性の良いものであった。一方、成分(a)の替わりに表面処理を施していない未処理の微粒子酸化亜鉛を配合した比較例1は油への分散性が良好でなく、それに伴い全ての項目において劣っていた。また、粒子径の大きな顔料級の酸化亜鉛に表面処理を施した比較例2や表面処理を施した微粒子酸化チタンを用いた比較例3は白さが目立ち、それ以外のすべての項目においても劣っているものであった。また成分(b)の替わりに低HLBのシリコーン系の界面活性剤を分散剤として配合した比較例4、5は微粒子酸化亜鉛の分散性に劣り、全ての項目において劣っていた。また成分(c)の代わりに25℃で固体の油剤を配合した比較例6に関しては伸び広がりが重く、べたつきも感じられ、劣っているものであった。成分(d)の替わりに他の親水性界面活性剤を配合した比較例7〜13は、乳化の際に十分な粘度が得られないものや、経時での粘度低下による安定性不良がみられるなど、経時安定性において劣っていた。また成分(e)の変わりに他の高分子を用いた比較例14、15においても粘度が十分に得られておらず、経時安定性において劣っていた。
【0047】
実施例14:水中油型日焼け止め料
(成分) (%)
1.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100EO) 2
2.グリセリン 5
3.1,3−ブチレングリコール 5
4.精製水 残量
5.アクリル酸/アクロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー *1 2
6.セトステアリルアルコール 1
7.ステアリン酸グリセリル 1
8.ベヘニルアルコール 1
9.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 3
10.トリエチルヘキサン酸グリセリル 20
11.ポリシリコーン−15 1
12.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1
13.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1
14.メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール 1
15.オクチルトリゾン 1
16.t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 1
17.オキシベンゾン−3 1
18.サリチル酸オクチル 1
19.トリエトキシオクチルシラン(5%)処理微粒子酸化亜鉛 15
20.ポリヒドロキシステアリン酸 0.2
21.トリエチルヘキサン酸グリセリル 10
*1:固形分37.5%
【0048】
(製造方法)
A:成分(19)〜(21)を均一に混合分散する。
B:成分(6)〜(18)を70℃にて均一に混合溶解する。
C:成分(1)〜(5)を70℃にて混合溶解する。
D:AにBを均一に混合し70℃にて油系を調整する。
E:CにDを均一に混合分散し70℃にて乳化する。
F:Eを冷却し水中油系乳化化粧料を得た。
(結果)
実施例14の水中油型日焼け止め料は、経時安定性に優れ、べたつきがなく、伸び広がりの良い水中油型日焼け止め料であった。
【0049】
実施例15:リキッドファンデーション(水中油型)
(成分) (%)
1.精製水 残量
2.アクリル酸/アクロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー *1 1.5
3.Tinosorb M *2 5
4.1,3−ブチレングリコール 5
5.エタノール 5
6.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(80EO) 0.2
7.メチルパラベン 0.1
8.トリイソステアリン酸イソプロピルチタン(5%)処微粒子酸化亜鉛 8
9.酸化鉄 1.5
10.酸化チタン 1.5
11.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 10
12.セスキオレイン酸ソルビタン 0.5
13.イソノナン酸イソトリデシル 5
14.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 3
*2:BASF社製
【0050】
(製造方法)
A:成分(1)、(2)を均一膨潤する。
B:Aに成分(3)〜(7)を添加して混合溶解する。
C:成分(8)〜(14)を均一分散させる。
D:BにCを添加して乳化し、水中油型のリキッドファンデーションを得た。
(結果)
実施例15のリキッドファンデーションは、伸び広がりが良好で、べたつきのなさに優れ、また経時での安定性にも優れたものであった。