(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1〜第5の実施形態に係る電力変換装置について、図面を参照しながら以下説明する。まず、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置について、
図1〜
図17を参照して説明する。なお、
図1〜
図4に示す構成は、本発明の第2〜第5の実施形態に係る電力変換装置においても共通する基盤的技術を示しており、第1の実施形態に限るものではない。また、本発明の第1〜第5の実施形態に係る電力変換装置は、HEV(hybrid electric vehicle、以下「HEV」と記述する)に限らず、プラグインハイブリッド自動車(plug−in hybrid electric vehicle、以下「PHEV」と記述する)あるいは電気自動車(electric vehicle、以下「EV」と記述する)等の車両に搭載される電力変換装置にも適用でき、さらには、建設機械等の車両に用いられる電力変換装置にも適用することができる。
【0013】
図1において、エンジンEGNおよびモータジェネレータMG1は車両の走行用トルクを発生する。また、モータジェネレータMG1は回転トルクを発生するだけでなく、モータジェネレータMG1に外部から加えられる機械エネルギーを電力に変換する機能を有する。モータジェネレータMG1は、例えば同期機あるいは誘導機であり、上述のごとく、運転方法によりモータとしても発電機としても動作する。モータジェネレータMG1を自動車に搭載する場合には、小型で高出力を得ることが望ましく、ネオジウムなどの磁石を使用した永久磁石型の同期電動機が適している。また、永久磁石型の同期電動機は誘導電動機に比べて回転子の発熱が小さく、この観点でも自動車用として優れている。
【0014】
エンジンEGNの出力側の出力トルクは動力分配機構TSMを介してモータジェネレータMG1に伝達され、動力分配機構TSMからの回転トルクあるいはモータジェネレータMG1が発生する回転トルクは、トランスミッションTMおよびデファレンシャルギアDEFを介して車輪に伝達される。
【0015】
一方、回生制動の運転時には、車輪から回転トルクがモータジェネレータMG1に伝達され、供給されてきた回転トルクに基づいて交流電力を発生する。発生した交流電力は後述する電力変換装置200により直流電力に変換され、高電圧用のバッテリ136を充電し、充電された電力は再び走行エネルギーとして使用される。
【0016】
次に、電力変換装置200について説明する。電力変換装置200に設けられたインバータ回路140は、バッテリ136と直流コネクタ138を介して電気的に接続されており、バッテリ136とインバータ回路140との相互において電力の授受が行われる。モータジェネレータMG1をモータとして動作させる場合には、インバータ回路140は直流コネクタ138を介してバッテリ136から供給された直流電力に基づき交流電力を発生し、交流
コネクタ188を介してモータジェネレータMG1に供給する。モータジェネレータMG1とインバータ回路140からなる構成は電動発電ユニットとして動作する。
【0017】
なお、本発明の実施形態では、バッテリ136の電力によって電動発電ユニットを電動ユニットとして作動させることにより、モータジェネレータMG1の動力のみによって車両の駆動ができる。さらに、本発明の実施形態では、電動発電ユニットを発電ユニットとしてエンジンEGNの動力或いは車輪からの動力によって作動させて発電させることにより、バッテリ136の充電ができる。
【0018】
また、
図1では省略したが、バッテリ136はさらに補機用のモータを駆動するための電源としても使用される。補機用のモータとしては例えば、エアコンディショナーのコンプレッサを駆動するモータ、あるいは制御用の油圧ポンプを駆動するモータである。バッテリ136から直流電力が補機用パワー半導体モジュールに供給され、補機用パワー半導体モジュールは交流電力を発生して補機用のモータに供給する。補機用パワー半導体モジュールは、インバータ回路140と基本的には同様の回路構成および機能を持ち、補機用のモータに供給する交流の位相や周波数、電力を制御する。
【0019】
また、電力変換装置200は、インバータ回路140に供給される直流電力を平滑化するためのコンデンサ500を備えている。
【0020】
電力変換装置200は、上位の制御装置から指令を受けたりあるいは上位の制御装置に状態を表すデータを送信したりするための信号用のコネクタ21を備えている。電力変換装置200は、信号用コネクタ21から入力される指令に基づいて制御回路172でモータジェネレータMG1の制御量を演算し、さらに、モータジェネレータMG1をモータとして運転するか発電機として運転するか演算する。電力変換装置200は、その演算結果に基づいて制御パルスを発生し、発生した制御パルスをドライバ回路174へ供給する。ドライバ回路174は、供給された制御パルスに基づいて、インバータ回路140を制御するための駆動パルスを発生する。
【0021】
図2は、車両における電力変換装置200の配置場所を模式的に示したものである。車両前方方向からエンジンEGN、トランスミッションTMの順に配置され、電力変換装置200はトランスミッションTMの筐体下方に配置されている。トランスミッションTMのケース内前方(電力変換装置200の上方)には、モータジェネレータMG1が配置されている。ここで、省スペースの観点から、電力変換装置200の配置スペースは小さいほど良い。また、電力変換装置200からモータジェネレータMG1へ電力を供給する配線は短いほど良く、電力変換装置200はモータジェネレータMG1の近傍に配置するのが好ましい。
【0022】
このような事情のため、電力変換装置200は、
図2に示すようなトランスミッションTMの下部のように狭いスペースに配置される場合が多く、電力変換装置200の小型化・薄型化が望まれている。なお、
図2の配置は一例を示したものであり、トランスミッションTMのケース内エンジン側に設けたり、ベルハウジングに内蔵したりする。
【0023】
次に、
図3を用いてインバータ回路140の電気回路の構成を説明する。なお、スイッチング用パワー半導体素子として絶縁ゲート型バイポーラトランジスタを使用しており、以下略してIGBTと記す。上アームとして動作するIGBT328及びダイオード156と、下アームとして動作するIGBT330及びダイオード166と、によって、上下アームの直列回路150が構成される。インバータ回路140は、この直列回路150が、出力しようとする交流電力のU相、V相、W相の3相に対応して備わったものである。
【0024】
これらの3相は、本発明の実施形態ではモータジェネレータMG1の電機子巻線の3相の各相巻線に対応している。3相のそれぞれの上下アームの直列回路150においては、直列回路の中点部分である中間電極169は、交流端子159、交流バスバー802、交流コネクタ188を介してモータジェネレータMG1に接続されている。直列回路150から出力される交流電流は、中間電極169から上記経路によりモータジェネレータMG1へ出力される。
【0025】
上アームのIGBT328のコレクタ電極153は、
図3に示すように、直流正極端子157を介してコンデンサ500の正極側のコンデンサ端子506に電気的に接続されている。また、下アームのIGBT330のエミッタ電極は、直流負極端子158を介してコンデンサ500の負極側のコンデンサ端子504に電気的に接続されている。
【0026】
図1と
図3に示すように、制御回路172は上位の制御装置から信号用コネクタ21を介して制御指令を受け、これに基づいてインバータ回路140の各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330を制御するための制御信号である制御パルスを発生し、ドライバ回路174に供給する。
【0027】
ドライバ回路174は、上記制御パルスに基づき、各相の直列回路150の上アームあるいは下アームを構成するIGBT328やIGBT330へ駆動パルスを供給する。IGBT328やIGBT330は、ドライバ回路174からの駆動パルスに基づき、導通あるいは遮断動作を行い、バッテリ136から供給された直流電力を三相交流電力に変換する。この変換された電力はモータジェネレータMG1に供給される。
【0028】
IGBT328は、コレクタ電極153と、信号用エミッタ電極155と、ゲート電極154とを備えている。また、IGBT330は、コレクタ電極163と、信号用のエミッタ電極165と、ゲート電極164とを備えている。ダイオード156は、コレクタ電極153とエミッタ電極155との間に電気的に接続されている。また、ダイオード166は、コレクタ電極163とエミッタ電極165との間に電気的に接続されている。
【0029】
スイッチング用パワー半導体素子としては金属酸化物半導体型電界効果トランジスタ(以下略してMOSFETと記す)を用いてもよい、この場合はダイオード156やダイオード166は不要となる。スイッチング用パワー半導体素子として、IGBTは直流電圧が比較的高い場合に適していて、MOSFETは直流電圧が比較的低い場合に適している。
【0030】
コンデンサ500に関して、
図3に示すように、正極側のコンデンサ端子506と負極側のコンデンサ端子504と正極側の電源端子509と負極側の電源端子508とが設けられている。バッテリ136からの高電圧の直流電力は、直流コネクタ138を介して正極側の電源端子509や負極側の電源端子508に供給され、コンデンサ500の正極側のコンデンサ端子506および負極側のコンデンサ端子504から、インバータ回路140へ供給される。
【0031】
一方、インバータ回路140によって交流電力から変換された直流電力は、正極側のコンデンサ端子506や負極側のコンデンサ端子504からコンデンサ500に供給される。また、直流電力は、正極側の電源端子509や負極側の電源端子508から直流コネクタ138を介してバッテリ136に供給され、バッテリ136に蓄積される。
【0032】
制御回路172は、IGBT328及びIGBT330のスイッチングタイミングを演算処理するためのマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と記述する)を備えている。マイコンへの入力情報としては、モータジェネレータMG1に対して要求される目標トルク値、直列回路150からモータジェネレータMG1に供給される電流値、及びモータジェネレータMG1の回転子の磁極位置がある。
【0033】
目標トルク値は、不図示の上位制御装置から出力された指令信号に基づくものである。電流値は、後述する電流センサモジュール180(
図3を参照)による検出信号に基づいて検出されたものである。磁極位置は、モータジェネレータMG1に設けられたレゾルバなどの回転磁極センサ(不図示)から出力された検出信号に基づいて検出されたものである。本実施形態では、電流センサモジュール180は3相の電流値を検出する場合を例に挙げているが、2相分の電流値を検出するようにし、演算により3相分の電流を求めても良い。
【0034】
制御回路172内のマイコンは、目標トルク値に基づいてモータジェネレータMG1のd軸,q軸の電流指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電流指令値と、検出されたd軸,q軸の電流値との差分に基づいてd軸,q軸の電圧指令値を演算し、この演算されたd軸,q軸の電圧指令値を、検出された磁極位置に基づいてU相、V相、W相の電圧指令値に変換する。そして、マイコンは、U相、V相、W相の電圧指令値に基づく基本波(正弦波)と搬送波(三角波)との比較に基づいてパルス状の変調波を生成し、この生成された変調波をPWM(パルス幅変調)信号としてドライバ回路174に出力する。
【0035】
ドライバ回路174は、下アームを駆動する場合、PWM信号を増幅したドライブ信号を、対応する下アームのIGBT330のゲート電極に出力する。また、ドライバ回路174は、上アームを駆動する場合、PWM信号の基準電位のレベルを上アームの基準電位のレベルにシフトしてからPWM信号を増幅し、これをドライブ信号として、対応する上アームのIGBT328のゲート電極にそれぞれ出力する。
【0036】
また、制御回路172内のマイコンは、異常検知(過電流、過電圧、過温度など)を行い、直列回路150を保護している。このため、制御回路172にはセンシング情報が入力されている。例えば、各アームの信号用のエミッタ電極155及び信号用のエミッタ電極165からは各IGBT328とIGBT330のエミッタ電極に流れる電流の情報が、対応する駆動部(IC)に入力されている。これにより、各駆動部(IC)は過電流検知を行い、過電流が検知された場合には対応するIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させ、対応するIGBT328,IGBT330を過電流から保護する。
【0037】
直列回路150に設けられた温度センサ(不図示)からは、直列回路150の温度の情報がマイコンに入力されている。また、マイコンには直列回路150の直流正極側の電圧情報が入力されている。マイコンは、それらの情報に基づいて過温度検知及び過電圧検知を行い、過温度或いは過電圧が検知された場合には全てのIGBT328,IGBT330のスイッチング動作を停止させる。
【0038】
図4は電力変換装置200の外観斜視図である。本実施形態の電力変換装置200は、
図2に示すような配置に対応するために、後述する構成を採用することによって電力変換装置200全体の高さ寸法を低く抑えている。筐体10は平面視形状が略矩形状の金属製ケースであり、側面には冷却媒体(例えば、冷却水などが用いられ、以下では冷媒と記す)を筐体内に流入させるための配管13と、冷媒を流出するための
冷媒流出配管14が配設されている。符号508,509は、
図3に示すように直流入力用の正負電源端子であり、802U,802V,802WはU相、V相、W相に対応した交流バスバー端子である。コネクタ21は、外部(例えば、上位制御装置)との接続のために設けられた信号用のコネクタである。
【0039】
「第1の実施形態」
次に、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成について、
図5と
図6を用いて説明する。
図5は第1の実施形態に係る電力変換装置200の内部構成の分解斜視図である。
図5(a)は
図4に示す上カバー3を省き、
図5(b)は
図4に示す筐体10を省いた図である。
図6は図5(a)に示す回路基板20と制御
回路172を省き、流路形成体12、コンデンサユニット4、パワー半導体モジュールユニット5ならびにバスバーユニット6の筐体10への組立分解図である。
【0040】
筐体10内の図示右上側には、
図2に示したインバータ回路140を設けたパワー半導体モジュールユニット5が、筐体10の長手方向に沿うように配置され、冷媒流路が形成されたケースである流路形成体12内で冷却されている。一方、筐体10内の図示左下側には、コンデンサ500とU相、V相、W相に対応した交流バスバ
ー中継部803U,803V,803Wを収納するコンデンサユニット4が、パワー半導体モジュールユニット5に対して並行に配置され、筐体10の床面に対し、接触して設置されている。
【0041】
コンデンサユニット4およびパワー半導体モジュールユニット5の間にはバスバーユニット6が配置され、その上方には
図4に示す信号用コネクタ21を取り付けた回路基板20が設置されている。回路基板20には、
図3に示した制御回路172およびドライバ回路174が設置されている。上カバー3は、筐体10の開口部を覆うようにボルト固定されている。交流バスバ
ー中継部803U,803V,803Wは、交流バスバーホルダ800に固定された交流バスバー端子802U,802V,802Wにねじ止めされるとともに、交流バスバーホルダ800に設置された電流センサモジュール180(図示せず)により各相を流れる電流が各々検出される。
【0042】
パワー半導体モジュールユニット5は上下の両面冷却方式であり、搭載床面積を小さくすることで、コンデンサユニット4の搭載面積を広くして筐体10の床面を介した冷却能力を向上するとともに、流路形成体12により筐体10が冷却できる構造となっている。
【0043】
次に、第1の実施形態に係る電力変換装置におけるパワー半導体モジュール300U〜300Wの詳細構成について、
図7〜
図11を用いて以下説明する。
図3に示したように、インバータ回路140には、U,VおよびW相のそれぞれに関する直列回路150が設けられている。パワー半導体モジュール300UにはU相の直列回路150が設けられ、パワー半導体モジュール300VにはV相の直列回路150が設けられ、パワー半導体モジュール300WにはW相の直列回路150が設けられている。パワー半導体モジュール300U,300V,300Wはいずれも同一構造を有しており、ここではパワー半導体モジュール300Uを例に説明する。なお、本実施形態では、パワー半導体モジュール300はU,VおよびW相からなる3相を形成するモジュールを例示しているが、これに限らずパワー半導体モジュール300を2相形成のものとしてモータジェネレータMG1の回転磁界を構成してもよい。
【0044】
図7はパワー半導体モジュール300Uの斜視図であり、
図8は
図7のA−A線の切断断面を示す図である。
図8に示すように、パワー半導体モジュール300Uは直列回路150を構成する半導体素子(IGBT328,330、ダイオード156,166)を、導体板315,320と導体板318,319に電気的に接合し(
図9をも参照)、絶縁性のモールド樹脂348で封止したものである。
【0045】
図9は、パワー半導体モジュール300の内蔵回路構成を示す回路図であり、
図10は実装形態を示す組立分解図であり、
図11が組立後の形態である。上アーム側のIGBT328のコレクタ電極と上アーム側のダイオード156のカソード電極は、導体板315に金属接合材160(たとえば、SnやZnやBiを主体としたはんだ合金による溶融接合、酸化銀や酸化銅や銀を主体とした微粒子による焼結接合、
図10を参照)を介して接続する。導体板315には直流正極端子157が接続されている。IGBT328のエミッタ電極と上アーム側のダイオード156のアノード電極は、導体板318に金属接合材160を介して接続する。
図3に示すIGBT328のゲート電極154には、3つの信号端子325Uが並列に金属ワイヤを介して電気的に接続する(
図7では端子325Uが3つ示され、
図9では端子325Uが2つ示されていて端子数が異なるが、制御用の端子として種々利用されることもあり、端子数が異なることも有り得る)。
【0046】
一方、下アーム側のIGBT330のコレクタ電極と下アーム側のダイオード166のカソード電極は、導体板320に金属接合材160を介して接続する。導体板320は、中間電極169(
図3をも参照)によって導体板318に金属接合材160を介して接続されるとともに、交流端子159が接続されている。IGBT330のエミッタ電極と下アーム側のダイオード166のアノード電極は、導体板319に金属接合材160を介して接続する。導体板319には、直流負極端子158が接続されている。IGBT330のゲート電極164には、3つの信号端子325Lが並列に金属ワイヤを介して電気的に接続する(図示せず)。パワー半導体モジュール300の組立後の状態を
図8と
図11に示す。
【0047】
図11に示す状態から、タイバー372を挟んでトランスファーモールド成型した後、タイバー372を切り離し、
図7に示すように、また、信号端子325U,325Lと他の信号端子336U,336Lと直流正極端子157、直流負極端子158、交流端子159(
図3を参照)が一部露出した状態で、
図8と
図9に示す導体板315,318,318,320で挟まれたパワー半導体素子を絶縁性モールド樹脂348(
図8を参照)で覆う。このとき、パワー半導体素子を挟持した導体板315,318,319,320の外側の面は放熱面として機能するため、
図8に示すように絶縁性モールド樹脂348から露出させておく。
【0048】
トランスファーモールド用の
絶縁性モールド樹脂348としては、例えばノボラック系、多官能系、ビフェニル系のエポキシ樹脂系を基とした樹脂を用いることができ、SiO
2,Al
2O
3,AlN,BNなどのセラミックスやゲル、ゴムなどを含有させ、熱膨張係数を導体板315,320,318,319に近づける。これにより、部材間の熱膨張係数差を低減でき、使用環境時の温度上昇にともない発生する熱応力が大幅に低下するため、パワー半導体モジュール300の寿命をのばすことが可能となる。
【0049】
次に、第1の実施形態に係る電力変換装置におけるパワー半導体モジュールユニット5の詳細構成について、
図12〜
図14を用いて以下説明する。
図12と
図13は、パワー半導体モジュールユニット5と、冷媒流路が形成されたケースである流路形成体12と、バスバーユニット6と、を示す図であり、
図12は当該図に示されたパワー半導体モジュールユニット5等の各種構成体の斜視図であり、
図13は当該図に示されたパワー半導体モジュールユニット5等の各種構成体の分解斜視図である。また、
図14は
図12に示すB−B線の切断面を示す図である。
【0050】
パワー半導体モジュールユニット5は、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wとこれらパワー半導体モジュールを収納する金属製のケース304を備えている。
【0051】
流路形成体12は、
図13に示すように、冷媒流路120内に設置した部品を冷却する冷却器として機能するものであり、金属製(例えば、アルミ)の直方体形状であって、長手方向の一端には冷媒流入用の配管13(
図4を参照)が設けられ、反対側の端面には冷媒排出用の配管14が設けられている。流路形成体12の側面には、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wを収納した金属製ケース304を冷媒流路120内に挿入するための
流路形成体開口120Aが形成されている。金属製ケース304には、その開口部側にフランジ307を備え、Oリングなどのシール材を介して流路形成体開口120Aにフランジ307を設置する。
【0052】
図13に示すように、金属製ケース304は、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wに冷媒が浸入しないCAN型の水密構造となっている。CAN型とは、一面に設けられた挿入口を有する有底筒状のケースである。つまり、金属製ケース(収納ケース)304は、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wを挿入する開口部以外に開口を設けない構造であり、挿入口の部分にはフランジ307が設けられている。また、フランジ307の挿入口側には、バスバーユニット6を固定するためのネジ穴と流路形成体12が設けられ、挿入口からは、端子類が引出せるようになっている。
【0053】
図13と
図14に示すように、金属製ケース304は扁平なケースであり、表裏両面には収納するパワー半導体モジュールの放熱面である導体板315,318,319,320に投影した位置に放熱ベース部305と冷却フィン306とを備えている。また、金属製ケース304の各放熱ベース部305の周囲には、
図14の断面図に示すように、薄肉部304Aと厚肉部304Cを備え、放熱ベース部305を反対側の放熱ベース部方向(
図14で上下方向)へ押圧した際に、薄肉部304Aのみが変形することで、一対の放熱ベース部305の間に各半導体モジュールがそれぞれの厚さに合わせて挟持できる構造となっている。
【0054】
このとき、導体板315,318,319,320と放熱ベース部305の間には、絶縁層333を介して絶縁が確保される。絶縁層333は、高熱伝導な絶縁性のセラミックスを高含有した樹脂を用いる。これにより、放熱ベース部305と導体板315,318,319,320が隙間無く接着される。
【0055】
金属製ケース304は、薄肉部304Aとフィン306を備えた放熱ベース部305と、厚肉部304Bを備えたフランジ307と、をそれぞれ鍛造、鋳造することで作製し、レーザ溶接や摩擦攪拌接合により一体化する。
【0056】
押圧によるパワー半導体モジュールの収納よりも先に金属製ケース304を一体化する場合には、押圧によるパワー半導体モジュールの収納時に金属製ケース304全体に反り変形ができないように、
図14に示すように各パワー半導体モジュールの間に、さらに厚肉部304Cを設ける。
【0057】
これに対して、薄肉部304Aとフィン306を備えた放熱ベース部305と、各パワー半導体モジュールと、を絶縁層333により接続してから、厚肉部304Bを備えたフランジ307を取り付ける際には、
図15に示すように、各パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの間の厚肉部304Cは不要となる。
図15は
図14に示すパワー半導体モジュールの収納用金属ケースの変形構成例を示す断面図である。上述した一体化の際に、薄肉部304Aが設けられこの部分が変形し応力を受け持つことで、絶縁層333に発生する応力を低減することが可能となる。
【0058】
ここで、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wは、それぞれの直流正極端子157、直流負極端子158、信号端子325U,325L、交流端子159(
図9を参照)が、溶接やろう接によりバスバーユニット6の正極端子中継部509a、負極端子中継部508a、信号端子中継部340、交流端子中継部804U,804V,804W(
図13を参照)に接合され位置決めされている。その後、金属製ケース304に絶縁
層333を介して収納した後に、バスバーユニット6との各接続部も含めた金属製ケース304の残りの空間に絶縁性の封止樹脂351(
図13では省略、
図14を参照)を封止することでパワー半導体モジュールユニット5が完成するとともに、さらに絶縁信頼性を向上することができる。
【0059】
絶縁性封止樹脂351としては、例えばノボラック系、多官能系、ビフェニル系のエポキシ樹脂系を基とした樹脂を用いることができる。また、エポキシ樹脂に対してはSiO
2,Al
2O
3,AlN,BNなどのセラミックスやゲル、ゴムなどを含有させ、熱膨張係数を金属製ケース304や各半導体モジュールに近づける。これにより、絶縁層333と金属製ケース304や各半導体モジュール間の熱膨張係数差を低減でき、使用環境時の温度上昇にともない発生する熱応力が大幅に低下するため、パワー半導体モジュールの寿命をのばすことが可能となる。
【0060】
次に、第1の実施形態に係る電力変換装置におけるコンデンサユニット4の詳細構成について、
図16と
図17を用いて以下説明する。
図16と
図17はバスバーユニット6とコンデンサユニット4を示す図であり、
図16は当該図に示された構成体の斜視図であり、
図17は当該図に示された構成体の分解斜視図である。
【0061】
図17に示すように、コンデンサユニット4は、コンデンサ正極接続端子500pとコンデンサ負極接続端子500nとから成るコンデンサバスバーと、複数のコンデンサ素子500aと、交流バスバ
ー中継部803U,803V,803Wと、で構成されている。コンデンサバスバーのコンデンサ正極接続端子500pとコンデンサ負極接続端子500nは、バスバーユニット6の正極端子中継部509b、負極端子中継部508bと溶接やろう接により電気的接合されている。電気的接合前のコンデンサ素子500aと交流バスバ
ー中継部803U,803V,803Wは、ベース(絶縁性台座)19(
図5(b)を参照)をガイドとして仮固定し、筐体10床面に接触できるようにしている。各コンデンサ素子や各交流バスバーと筐体床面間には、隙間を減らし放熱性を向上するとともに、絶縁を確保するための樹脂を設置している。また、ベース(絶縁性台座)19自体で絶縁を確保してもよい。この場合、導電性で高放熱なグリスや樹脂を設置できる。
【0062】
コンデンサユニット4は、バスバーユニット6を仮想境界面としてパワー半導体モジュールユニット5と対称となる位置に配置されている。この配置により、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wと複数のコンデンサ素子500aは、正極側バスバー509’と負極側バスバー508’とからなるバスバー501を介して近接配置されるため(コンデンサ素子とパワー半導体モジュールとの間に流れる電流はバスバー501で直結されているため)、バスバー501で発生する抵抗損失を抑制し発熱量を低減することが可能となる。さらには、バスバーユニット6が介在することによって、パワー半導体モジュール300からコンデンサ素子500aへの伝熱を抑制できることより、コンデンサ素子の温度上昇を低減することが可能であり、コンデンサの信頼性及び寿命を向上させる効果がある。
【0063】
また、コンデンサ素子500aは、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wに備えたそれぞれの交流端子159に接続され且つパワー半導体モジュールユニット5と反対側へ直線状に延伸したU,V,W相の交流バスバー802の中継部803U,803V,803Wの間に並列に配置している。この並列配置により、電力変換装置200の高さ寸法を低くすることができる。さらに、コンデンサユニット4及びU,V,W相の交流バスバーの中継部803U,803V,803Wを筐体10の床面に近接させられることより放熱性を向上することができる。
【0064】
また、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wと同数個あるいは倍数個となるように配置させると良い。これにより、各コンデンサ素子500aから各パワー半導体モジュール300U,300V,300Wへ供給する電力が略均等に分配され、特定のコンデンサからの電力過剰供給が抑制されるため、コンデンサの信頼性及び寿命を向上させる効果がある。
【0065】
次に、第1の実施形態に係る電力変換装置におけるバスバーユニット6の詳細構成について、
図13と
図17を用いて以下説明する。
図13と
図17に示すように、バスバーユニット6は、パワー半導体モジュールユニット5のパワー半導体モジュール300U,300V,300Wを収納する金属製ケース304の開口部側に対し、平行に積層された1対の正極導体板(正極側バスバー)509’と負極導体板(負極側バスバー)508’とを備えている。
【0066】
正極導体板509’は、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの各直流正極端子157(
図3と
図9を参照)方向に引き出された正極端子中継部509aと、コンデンサ500の正極接続端子500p方向に引き出された正極端子中継部509bと、を有し、筐体10の開口側(図面上方)に折れ曲がっている。負極導体板508’も同様に、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの各直流負極端子158とコンデンサ500の負極接続端子500n方向に引き出された負極端子中継部508aと負極端子中継部508bと、を有し、筐体10の開口側に折れ曲がっている。
【0067】
また、バスバーユニット6には、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの各交流端子159や交流バスバー中継部803U,803V,803Wに接続する交流端子中継部804U,804V,804Wと、信号端子325U,325L(
図8と
図9を参照)を中継する信号端子中継部340と、がそれぞれ形成されている(
図13を参照)。バスバーユニット6は、図示するように扁平な形状をしており、絶縁性樹脂550を用いて射出成型や圧着成型されることで、バスバーに繋がるそれぞれの連結端子が一体成型されている。
【0068】
以上説明したように、本発明の実施形態では、電力変換装置を構成するパワー半導体モジュール300、コンデンサユニット4を筐体10(例.金属製ケース)の床面に対して同一平面状に配置して薄型化することができた。この配置に対して、パワー半導体モジュールユニット5からの引き出される直流
正極端子157,
直流負極端子158とコンデンサから引き出されるコンデンサ
500の正極接続端子500p,
負極接続端子500nを、バスバーユニット6におけ
る負極導体板508’,
正極導体板509’の面において略同一平面上に揃え、さらに、U,V,W各相を連絡す
る負極導体板508’
,正極導体板509’を積層(薄板状の正負極導体板を互いの面が対面するように積層配置)できるようにした。
【0069】
次に、本発明の第1の実施形態に係る電力変換装置の構成と作用乃至効果との関係について以下説明する。本実施形態における上述した構成により、パワー半導体モジュール300U,300V,300Wの直流
正極端子157,
直流負極端子158と各コンデンサ
素子500aの正
極接続端子500p,
負極接続端子500nとの距離が短くなって抵抗損失を低減できる。さらに
、負極導体板508’と
正極導体板509’
との積層化によるインダクタンスの低減効果で、電力変換装置回路のスイッチング時に発生するサージ電圧を抑制でき、回路の高速スイッチング化により損失を低減できる。また、電力変換装置を構成するパワー半導体モジュールユニット5とコンデンサユニット4に対して、上述した構成と配置を有するバスバーユニット6を設置したことで、電力変換装置の薄型化を図りつつ、インバータ回路
140からの発熱量を低減できるようにした。
【0070】
電力変換装置の中で最も発熱が大きいパワー半導体モジュールユニット5に対し、最も冷却能力の高い水冷方式を採用しつつ、上下両面からパワー半導体モジュールユニット5を冷却させることで、
パワー半導体モジュールユニット5や冷却流路の設置底面積を減少できる。また、コンデンサ素子500aと
負極導体板508’,
正極導体板509’
とを筐体10(金属製ケース)との設置底面から冷却でき、放熱面が薄型化により広く取れるので、コンデンサ素子
500aとバスバー
501の温度上昇を抑制でき
て信頼性が向上する。このように、電力変換装置の薄型化を図りつつ信頼性を高めることが可能となる。
【0071】
本実施形態では、
図12と
図13に示すように流路形成体12下に設けたベース18(
図5(b)にはベース18が示されていて、
図5(b)が筐体10を取り除いた図示構造であるので、ベース18は筐体10とは別物)にガイド溝を設け、パワー半導体モジュールユニット5やバスバーユニット6を嵌め込むことで、流路形成体12による筐体10の冷却や筐体10によるバスバーユニット6の冷却効率を向上できる構造とした。また、コンデンサユニット4についても、
図5(b)に示したように、ベース(絶縁性台座)19を設置して筐体10と各部材の接触をより確実にできる。ベース18やベース19への各ユニットの設置や各ユニットの引き出し端子の向きがフランジ307の開口方向に揃えていることで、筐体10へ各部材を収納する組み立てが容易となり、生産性が向上する。また、ベース18やベース19を採用することで、冷却性能を向上する放熱グリスや放熱樹脂シートを各部材の底面に設置しやすくなる効果がある。
【0072】
また、パワー半導体モジュールユニット5の水密性の金属製ケース304は、水密性を確保するためのフラン
ジ307を有しており、流路形成体12の
流路形成体開口120Aにシールを介して設置される。本実施形態では、U,V,W相の直列回路を構成するパワー半導体モジュール300
U,300V,300W毎に金属製ケース304を一つずつ三つ用意せず、一つのケースに内蔵する構造とした。この内蔵構造により、パワー半導体モジュール300
U,300V,300Wの間隔に存在するフランジ307(パワー半導体モジュール
300U,300V,300W毎のフランジ)を省略でき、フランジ307の面積を小さくできるとともに、パワー半導体モジュール
300U,300V,300Wの並置間隔を最小に配置可能となる。
【0073】
また、複数のパワー半導体モジュール300U,300V,300Wを一つの金属製ケース304に収納する際に、一対
の負極導体
板508’,
正極導体板509’を有するバスバーユニット6に連結していることで(バスバーユニット
6を予めパワー半導体モジュール
300U,300V,300Wに連結した状態で
金属製ケース304に収納する)、金属製ケース304内の平面方向に対し、パワー半導体モジュール
300U,300V,300Wを所定位置に配置可能となる。ここで、連結していない状態で収納されたパワー半導体モジュール
300U,300V,300Wにおいては、連結のための配線のスペースを要するので、これとの対比において、パワー半導体モジュール
300U,300V,300W同士の間隔を最小にでき、上述したバスバーの長手方向長さを短くできるので、その分だけ損失を低減できる効果が大きくなる。また、上述した各コンデンサ素子500aとの対称性も高まりコンデンサ
500の信頼性も向上する。
【0074】
金属製ケース304に収納する複数のパワー半導体モジュール毎に金属製ケース304の周囲に薄肉部304Aを設けることで、パワー半導体モジュールの厚さにあわせ薄肉部304Aが変形して放熱ベース部305の間隔を制御できるので、絶縁層333を絶縁に必要な最小厚さに設定でき、放熱性を高めることが可能となる。一方で、薄肉部304Aを設けたことでフランジ307は押圧時に変形しないので、高い水密信頼性を有する。
【0075】
パワー半導体モジュール300U,300V,300Wをその長手方向に対して複数に分割して配置する構造とした。分割せずに一体化するものに比べて、絶縁性モールド樹脂
(トランスファーモールド法)348(
図8と
図14を参照)での封止時や絶縁層333での収納時の昇降温で発生する熱応力を小さくすることができる。これにより、反りなどの熱変形を極力小さくでき、絶縁層333の厚みばらつきによる熱抵抗の増加や冷却フィン306と流路形成体12の
冷媒流路120(
図13を参照)
を成す内壁との隙間ばらつきによる熱伝達率減少を抑制でき信頼性を向上できる。
【0076】
「第2の実施形態」
次に、本発明の第2の実施形態に係る電力変換装置について、
図18と
図19を参照して説明する。
図18はパワー半導体モジュールユニット5とコンデンサユニット4とバスバーユニット6を組み合わせた構成の斜視図であり、
図19はその分解斜視図である。
【0077】
第2の実施形態において、パワー半導体モジュールユニット5及び交流バスバー802は第1の実施形態と同様である。第2の実施形態の特徴は、正極導体板509’と負極導体板508’とから成るバスバー501が積層した状態で筐体10の床面に近接するようにコンデンサユニット4側に屈曲伸長していることである。
【0078】
複数のコンデンサ素子500aは交流バスバー中継部803の間に並列に配置され、コンデンサ素子500aの正極接続端子500p及び負極接続端子500nは筐体10の床面と垂直を成す向きでバスバー501と接続されている。これにより、バスバー501は筐体10の広い床面を介して放熱させることが可能となる。また、コンデンサ素子500aと交流バスバー中継部803は床面敷設のバスバー501を介して間接的に筐体10へ放熱させることが可能である。さらに、バスバー501の正極導体板509’と負極導体板508’の積層対向面積を増加させられることによって、第1の実施形態よりもインダクタンスの低減効果を大きくすることができる。
【0079】
「第3の実施形態」
次に、本発明の第3の実施形態に係る電力変換装置について、
図20と
図21を参照して説明する。
図20はパワー半導体モジュールユニット5とコンデンサユニット4とバスバーユニット6を組み合わせた構成の斜視図であり、
図21はその分解斜視図である。第3の実施形態において、パワー半導体モジュールユニット5は第1の実施形態と同様である。
【0080】
第3の実施形態の特徴は、正極導体板509’と負極導体板508’とから成るバスバー501は、積層した状態で、金属製ケース304のフランジ307に対向するように立設する構造を有するとともに、パワー半導体モジュールユニット5の流路形成体12及びコンデンサ素子500の底面に沿うように、かつ、筐体10の床面に近接するように屈曲伸長した構造である。複数のコンデンサ素子500aは、コンデンサ素子の正極接続端子500p及び負極接続端子500nが筐体10の床面と垂直を成す向きでバスバー501と接続されている。
【0081】
上述した構成により、バスバー501は、流路形成体12及び筐体10を介して放熱させることが可能となる。また、コンデンサ素子500aは流路形成体12の近傍に隣接して配置させることより、コンデンサ素子500aの放熱を容易にすることができ、バスバー501を介して間接的に筐体10へ放熱させることも可能である。
【0082】
そして、パワー半導体モジュールユニット5を収納した金属製ケース304のフランジ307側(フランジ307側にパワー半導体モジュール300の各種端子が配列されている)が、筐体10の側面近傍に配置されることより、交流バスバー802の長さは短縮できる(具体的には、交流バスバー端子802U,V,Wに連結される交流バスバー中継部803U,V,Wを短くできる)。これにより、交流バスバー802の抵抗損失が低減することより発熱を抑制する効果である。さらに、上述した底面配置されたバスバー501の正極導体板509’と負極導体板508’の積層対向面積を増加させられることより、低インダクタンスの効果を有する。
【0083】
「第4の実施形態」
次に、本発明の第4の実施形態に係る電力変換装置について、
図22と
図23を参照して説明する。
図22はパワー半導体モジュールユニット5とコンデンサユニット4とバスバーユニット6と磁気干渉抑制部材とを組み合わせた構成の斜視図であり、
図23はその上視図である。
【0084】
第4の実施形態の特徴は、第1の実施形態との比較において、バスバー501の正極導体板509’と負極導体板508’に加えて、導体もしくは磁性体の薄板555を設けている点にある。なお、この薄板555は磁気シールドの機能を奏しているものであるので、第1の実施形態の外に、第2と第3の実施形態に対しても同様に磁気シールドを為す薄板555を設けてもよい。
【0085】
第4の実施形態において、薄板555は、バスバーユニット6に備えられた信号端子中継部340と正極導体板509’又は負極導体板508’との間に設けられている。また、薄板555は、筐体10もしくは筐体10と電気的に接続された流路形成体12Aまたは金属製ケース304に(
図5をも参照)、ネジなどにより接続させてもよい。これにより、大電力を扱うバスバー501と低電圧を扱う制御信号端子である信号端子中継部340との磁気干渉を抑制でき、誤動作を防ぐことができる。また、この磁気干渉はスイッチング速度が高速であるほど影響が大きくなる。本実施形態の採用によって、磁気干渉を抑制するため、高速スイッチングが可能となり電力変換装置の損失を低減させる効果を有している。
【0086】
「第5の実施形態」
次に、本発明の第5の実施形態に係る電力変換装置について、
図24と
図25を参照して説明する。
図24は、本発明の第5の実施形態に係る電力変換装置におけるパワー半導体モジュールユニット、コンデンサモジュールユニット、バスバーユニット及び冷却用の流路形成通路の配置を示す概略斜視図であり、
図25は第5の実施形態に係る電力変換装置におけるパワー半導体モジュールユニット、コンデンサモジュールユニット、バスバーユニット及び流路形成体の配置と、冷却用の流路形成通路の配置とを示す分解斜視図である。
【0087】
第5の実施形態の特徴は、
図5と
図6に示す第1の実施形態における、パワー半導体モジュールユニット5に対し流路形成体12を用いて水冷している構成に対して、流路形成体12に加えて、筐体10の床面に流路15(冷媒流入配管13と冷媒流出配管14と流路形成体12に繋がる流路)を形成することで、バスバーユニット6とコンデンサユニット4を水冷できる構成とすることにある。この構成により、バスバーユニット6とコンデンサユニット4に対する筐体10床面での冷却性能を向上できるとともに、筐体10を介してモータに設置する場合にモータからの伝熱を冷却水により防止できるため、電力変換装置を近接して設置することが可能となる。また、筐体10を介してモータを冷却することも可能となる。ここで、ユニット5,4,6を載置するベース18の下方に流路15が形成され、この流路15と流路形成体12内の流路を経由して、冷媒流入配管13と冷媒流出配管14間で冷媒が流れることとなる。
【0088】
また、パワー半導体モジュールユニット5により冷却水が温度上昇するため、冷却水の上流側(冷媒流入配管13)をコンデンサユニット4側にすることで、コンデンサユニットに対する冷却性能を高めている。
【0089】
以上説明したように、本発明の各実施形態はそれぞれ単独に、あるいは組み合わせて用いても良い。それぞれの実施形態での効果を単独あるいは相乗して奏することができるからである。また、本発明の技術的特徴を損なわない限り、本発明は上述した各実施形態の構成に何ら限定されるものではない。