(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039357
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】流体圧ノズル弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/34 20060101AFI20161128BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
F16K1/34 A
F16K31/06 305L
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-232918(P2012-232918)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-84918(P2014-84918A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102452
【氏名又は名称】エスアールエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】世良 和也
(72)【発明者】
【氏名】萩原 敏治
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 幸伸
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−235478(JP,A)
【文献】
特表2011−511222(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102005014100(DE,A1)
【文献】
特開2005−249139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00− 1/54
F16K 31/06−31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が収容される部屋を有する本体と、
この本体の1つの壁に設けられ、弁座を有し、この弁座に連なって外部に連通する開口を備えた弁座部と、
前記部屋内に配置したシリンダ部に、先端部が前記弁座に着座及び離座可能に進退するように設けられたピストン弁と、
前記ピストン弁の先端部が前記弁座に着座している状態において、前記ピストン弁の基端側で前記ピストン弁に先端部が接触している可動鉄心と、
前記ピストン弁の先端部が前記弁座に着座するように、前記可動鉄心を押圧している弾性手段と、
少なくとも前記弾性手段の押圧力に抗して前記可動鉄心の先端部が前記ピストン弁から離れるように、前記可動鉄心を励磁する励磁手段と、
前記ピストン弁の基端部側に前記流体を供給するように前記シリンダ部に設けられた第1の流路と、
前記ピストン弁の先端部が前記弁座に着座した状態において、前記ピストン弁の先端部に、前記ピストン弁の先端部の着座位置よりも前記開口側に突出させて設けられた前記ピストン弁よりも細い筒状の突出部と
前記ピストン弁の前記突出部及び基端部において開口し、前記ピストン弁内に設けられ、前記基端部側の開口が前記可動鉄心の先端部によって閉鎖されている第2の流路とを、
具備し、前記可動鉄心は、前記ピストン弁が離座した状態において、前記シリンダ部に設けたストッパ部によって前記ピストン弁から離れる方向への移動が拘束され、前記ストッパ部は、非磁性材料によって形成されている流体圧ノズル弁。
【請求項2】
請求項1記載の流体圧ノズル弁において、前記弾性手段を前記ストッパ部と前記可動鉄心の先端部との間に設けた流体圧ノズル弁。
【請求項3】
請求項1記載の流体圧ノズル弁において、前記第1の流路にフィルタ手段を設けた流体圧ノズル弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧ノズル弁に関し、特に、可動鉄心の励磁を伴うものである。
【背景技術】
【0002】
上述したような流体圧ノズル弁の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術によれば、
図7に示すように、ケーシング100の内室101に、圧力がかけられた液体が通路103を介して供給されている。この内室101内に弁体102が配置され、弁体102に対向するように、大気圧下にある外部及び内室101とを連通する弁座104がケーシング100に設けられている。円錐台状の先端が弁座104に着座及び離座するピストン弁106が内室101内に配置され、ピストン弁106の基端部は弁体102内に進入している。ピストン弁106の内部には先端部と基端部との間を繋ぐ液体通路107が形成されている。弁体102内には電機子108が設けられ、その円錐台状の先端部109が、液体通路107の基端側の開口に接触して、ピストン弁106を弁座104側に押圧している。この電機子108をピストン弁106側に押圧して、ピストン弁106の先端を弁座104に着座させるように、弁体102内に設けたバネ110が電機子108を弁座104側に押圧している。弁体102内のピストン弁106の基端側に弁体102内の液体を供給する通路111が弁体102内において電機子108の周囲に形成されている。この液体の圧力も、ピストン弁106を弁座104に押圧している。なお、特許文献1には詳細には記載されていないが、ピストン弁106の周囲と弁体102の内面との間には、内室101の液体を弁体102内に供給する液体通路112が形成されている。この液体通路112は、液体通路111よりも絞られている。弁体102内には、バネ110の押圧力及び液体の圧力に抗して電機子108を後退させる電磁石113も設けられている。
【0003】
特許文献1の技術では、ピストン弁106の基端側に通路111から供給される弁体102内の液体の圧力とバネ110の押圧力とによって、電機子108の先端部109が流体通路107を閉じつつ、ピストン弁106を弁座104に押圧して、ピストン弁106の着座が維持されている。その結果、内室101内の液体は弁座104から流出しないし、流体通路107から弁体102内の液体が弁座104側に流れることもない。電磁石113を励磁すると、電機子108がバネ110の押圧力及び液圧に抗して後退し、電機子108の先端部109が後退し、液体通路107を開放する。これによって、ピストン弁106の基端側の液体が、開放された流体通路107を通って弁座104から、圧力が低い外部に流出し、ピストン弁106の基端側の圧力が、先端側の圧力よりも低下し、ピストン弁106が後退し、ピストン弁106の先端部が弁座104から離座し、内室101内の液体が、弁座104から外部に流出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−77908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には詳細な記載は無いが、上記のようにピストン弁106が後退した状態では、流体通路107よりも流体通路112の方が細く絞られているので、ピストン弁106の基端側への液体の流入よりも基端側からの流出が大きくなり、基端側の圧力が下がる。その結果、ピストン弁106の基端側の圧力とその面積とを乗算した値であるピストン弁106の前進力よりも、ピストン弁106の先端側の圧力と先端側面積とを乗算したピストン弁後退力が大きくなり、ピストン弁106は後退し、ピストン弁106の基端部が電機子108の先端部109付近まで後退し、ピストン弁106の先端側から液体が流出する。このとき、ピストン弁106の液体通路107は狭くなり、液体の流出は減少するが、ピストン弁106への基端側への液体の液体通路112を介しての流入は継続されるので、ピストン弁106の基端側の圧力が上昇する。これによって、ピストン弁106の前進力が再び大きくなり、ピストン弁106が前進し、ピストン弁106の先端側の圧力が基端側よりも低いと、液体が液体通路107を介して流出し、基端側の圧力低下、ピストン弁106の後退、ピストン弁106の前進の動作を、ピストン弁106は、電機子108が給電されている間、僅かなストロークで繰り返し、バランスしながら、液体はピストン弁106と弁座104の周囲及び液体通路107より放出される。
【0006】
この状態で、ピストン弁106の先端部では、弁座104の出口での液体の流れ方向の変化により、液体同士の衝突で液体の運動エネルギーが圧力エネルギーの変わるためサージ圧等の異常な圧力が発生し、圧力が安定せず、ピストン弁106の基端側の液体が先端側に流出しにくくなり、ピストン弁106の上下変動が大きくなり、チャッタリングを起こす場合がある。この場合、弁座104から放出される液体の流量が安定せず、流量も少なくなる。
【0007】
本発明は、安定した動作をする流体圧ノズル弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の流体圧ノズル弁は、内部に流体が収容される部屋を有する本体を備えている。流体としては、液体を使用することもできるし、気体を使用することもできる。本体の1つの壁に弁座部が設けられている。弁座部は、例えば部屋側の面に弁座を有し、この弁座に連なって本体の外部に連通する開口を備えている。部屋内に配置したシリンダ部に先端部が弁座に着座及び離座可能に進退するようにピストン弁が設けられている。ピストン弁の先端部が弁座に着座している状態において、ピストン弁の基端側で前記ピストン弁に可動鉄心の先端部が接触している。ピストン弁が弁座に着座するように、可動鉄心を弾性手段が押圧している。少なくとも弾性手段の押圧力に抗して前記可動鉄心の先端部が前記ピストン弁から離れるように、前記可動鉄心を励磁手段が励磁する。励磁手段としては、磁界発生手段、例えば電磁石を使用することができる。ピストン弁の基端部側に流体を供給するように前記シリンダ部に第1の流路が設けられている。ピストン弁の先端部が弁座に着座した状態において、前記ピストン弁の先端部に、前記ピストン弁の先端部の着座位置よりも開口側に突出させて前記ピストン弁よりも細い筒状の突出部が設けられている。突出部は、例えば円筒状または角筒状とすることができる。ピストン弁の突出部及び基端部において第2の流路が開口し、前記ピストン弁内に設けられている。第2の流路のピストン弁の基端部側の開口が可動鉄心の先端部によって閉鎖されている。
【0009】
このように構成された流体圧ノズル弁では、励磁手段によって可動鉄心が後退して、ピストン弁の先端部が離座したとき、弁座付近で流体の衝突(例えば開放された弁座から流入される流体と、弁座部に残留している流体との衝突や、弁座の内周囲から内周方向に流出される流体同士の衝突)によって異常圧力が発生していたとしても、その発生位置よりも離れた位置に突出部の先端があり、その先端で第2の流路が開口しているので、第2の流路の圧力は安定している。その結果、ピストン弁の動作は安定している。
【0010】
前記ピストン弁の先端部は、その周囲が弁座に着座するように前記弁座部の開口側に向かって細くなるように傾斜させた傾斜部を有することができ、この傾斜部を開口側まで延長した後に突出部を設けることもできるし、傾斜部の先端を弁座よりも幾分開口側まで延長した後、傾斜部に連ねて平坦部を形成し、この平坦部に突出部を形成してもよい。但し、突出部と平坦部との結合面にはアールを形成することが望ましい。これらの場合、突出部内に第2の流路を延長する。
【0011】
前記可動鉄心は、前記ピストン弁が離座した状態において、前記シリンダ部に設けたストッパ部によって前記ピストン弁から離れる方向への移動が拘束されている。ストッパ部は、非磁性材料によって形成されている。このように構成すると、可動鉄心の励磁状態において、ストッパ部が磁化されることがなく、励磁手段を非励磁状態としたとき、残留磁力が可動鉄心に架かることがなく、弾性手段によるピストン弁の着座状態への移行が速やかに行われ、戻り応答性が向上する。しかも、弾性手段は、残留磁力に打ち勝つような押圧力を発生する必要が無いので、押圧力の小さい小型の弾性手段を使用することができ、流体圧ノズル弁を小型化することもできる。このストッパ部を第1の流路の部屋側開口部まで延長して、後述するフィルタ手段の筒状体とすることもできる。
【0012】
さらに、前記弾性手段を前記ストッパ部に設けることもできる。その場合、可動鉄心の先端部とストッパ部との間に弾性手段を設ける。このように構成すると、可動鉄心の内部に弾性手段を設ける必要が無く、可動鉄心において励磁手段からの磁束が通る磁束面積を増加させることができ、励磁手段による可動鉄心の吸引力が大きくなり、可動鉄心の動作が安定し、流体圧ノズル弁の動作を安定させることができる。
【0013】
第1の流路にフィルタ手段を設けることができる。このように構成すると、部屋内の流体に異物が混入していても、その異物がピストン弁の基端部側に流入することを防止でき、ピストン弁や可動鉄心の動作を安定させることができ、より流体圧ノズル弁の動作を安定させることができる。なお、フィルタ手段は、例えば第1の流路の部屋側の開口の周囲に、異物が混入せずに流体のみが流入する隙間を形成するように筒状体を形成することによって設置することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、流体圧ノズル弁の動作を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態の流体圧ノズル弁のピストン弁の着座状態を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の流体圧ノズル弁のピストン弁が着座状態から離座状態へ移行する中途の状態を示す縦断面図である。
【
図3】
図1の流体圧ノズル弁のピストン弁の離座状態を示す縦断面図である。
【
図4】
図1の流体圧ノズル弁の部分破断断面図である。
【
図5】
図1の流体圧ノズル弁で使用する可動鉄心の正面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態の流体ノズル弁のピストン弁の着座状態及び離座状態を示す部分省略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態の流体圧ノズル弁は、流体として液体、例えば水、ケロシン等の低粘性の冷却媒体を噴射する液体圧ノズル弁2であって、
図1乃至
図4に示すように、ベース4の上に配置された本体6を有している。本体6の内部には部屋8が形成され、この部屋8内には、図示していないポートから上述した液体が圧力をかけた状態で供給されている。本体6の対向する2つの壁には外部と連通する貫通孔10、12が形成され、これらの間に、
図4に示すように弁体14が取り付けられている。
【0017】
弁体14は、
図1に示すように、貫通孔12に嵌め込まれた弁座部16を有している。弁座部16の部屋8側に弁座18がベース4側に向かって傾斜した状態に形成されている。この弁座18に連ねてベース4側に向かう開口20が形成され、この開口20は、ベース4に形成された接続ポート22と連通している。接続ポート22は、部屋8の液体を必要とする機器(図示せず)に接続され、その機器の圧力は、部屋8内の液体の圧力よりも低い。弁座部16の外周面には、液漏れ防止用のOリング24が配置され、ベース4と、貫通孔12が形成されている本体6の壁との間にも液漏れ防止用のOリング26が配置されている。
【0018】
弁座部16を部屋8側に延長してシリンダ部28が形成されている。このシリンダ部28の高さ方向の中途には、シリンダ部28の外周面から内周面に貫通して、
図4に示すように、複数の、例えば4つの液体流入口30が形成されている。
【0019】
シリンダ部28内に、ピストン弁32が、弁座18に対して進退するように摺動可能に配置されている。ピストン弁32は、例えば概略円筒状の胴部に形成され、この胴部の開口20側にある一端に先端部32aが形成されている。その先端部32aはベース4側に向かって先細となるように傾斜させられており、その傾斜は、弁座18の傾斜とほぼ一致している。
図1に示すように、この先端部32aの前記胴部に近い位置にある一部が着座部として弁座18に接触した状態、即ち着座した状態で、開口20はピストン弁32によって閉じられている。着座状態において、先端部32aの根本は、部屋8側に残り、その部分から弁座18に接触している部分、即ち着座部を経てさらにベース4側に延長され、先端部32aの最先端部には、ベース4側に向かって突出した突出部32bがピストン弁32の中心軸上に位置するように形成されている。突出部32bは、ピストン弁32よりも細径の筒状体、例えば円筒状で、開口20内に位置するように突出させられている。このように突出部32bは、弁座18よりもベース4側に寄った位置から、さらにベース4側に寄った位置まで形成されている。この着座状態において、ピストン弁32の基端部は、液体流入口30を超えて、シリンダ部28における弁座部16と反対側の端部(以下、後端部と称する。)よりも幾分内側の位置に位置している。従って、着座状態においては、液体流入口30は、ピストン弁32によって閉じられ、液体流入口30からの液体が開口20側に流出することは阻止されている。突出部32bの先端で第2の流路、例えば液体通路34が開口し、この液体通路34は、ピストン弁32の中心軸に沿って、ピストン弁32の基端部側までピストン弁32内に形成され、基端側で開口している。
【0020】
ピストン弁32が着座状態において、シリンダ部28のピストン弁32の基端部の後方には、可動鉄心36の平面状の先端部が位置している。可動鉄心36の先端部中央には、ボール38がその一部を可動鉄心36の先端部から突出させて取り付けられており、このボール38の突出部が液体通路34の開口に接触し、液体通路34を閉じると共に、ピストン弁32の基端部と可動鉄心36の先端部との間に流体室、例えば液体室40を形成している。この液体室40に部屋8内の液体を流入させるために、シリンダ部28の後端部側におけるピストン弁32の基端部よりも可動鉄心36側に寄った位置に、第1の流路、例えば液体導入通路42が形成されている。
【0021】
可動鉄心36は、
図5に示すように、概略砲弾型に形成されたものである。可動鉄心36の先端部が可動鉄心36の中で最大径である円板状のバネ受け部44とされている。このバネ受け部44のボール38の突出面と反対側の面から、これに連ねて2段に分けて直径が縮小された円筒状の段部が突出し、その2段目の部分が被ストッパ部46とされている。被ストッパ部46に連ねて、被ストッパ部46より小径の首部48が突出し、この首部48に連ねて、首部48よりも大径であるが、被ストッパ部46よりも小径である胴部50が突出し、この胴部50に連ねて、傾斜部52が突出し、その傾斜部52の最尖端部が可動鉄心36の基端部である。
【0022】
図1に示すように、胴部50の外周面が円筒状部54と滑り対偶を形成し、可動鉄心36は、ピストン弁32に向かって進退可能である。この円筒状部54のピストン弁32側の端部は、着座状態のピストン弁32にボール38が接触している状態において、首部48の中途まで進出しており、ここから可動鉄心36の外方に向かう円板状とされ、この円板状部は、可動鉄心36がピストン弁32と反対方向に後退したとき、被ストッパ部46と面接触が可能とされ、この面接触状態において、可動鉄心36のそれ以上の後退を阻止するストッパ部56とされている。このストッパ部56は、さらにバネ受け部44に対応する位置を超えて外方まで延長されている。バネ受け部44とストッパ部56との間、即ち、可動鉄心36の胴部50の外周囲に、弾性手段、例えばコイルバネ58が配置されている。このコイルバネ58は、可動鉄心36をピストン弁32側に押圧する押圧力を発生している。
【0023】
ストッパ部56の外周縁からシリンダ部28の外周面に沿って液体導入通路42を超えて円筒状部60が伸延している。円筒状部60の内周面とシリンダ部28の外周面との間には、図示していないが微小な隙間があり、この隙間を通じて、液体導入通路42内に液体が導入される。従って、この隙間よりも大きい異物が液体中に混入していても、異物は、液体導入通路42に入ることはない。即ち、円筒状部60は、異物除去のフィルタとして機能する。なお、61は、Oリングで、シリンダ部28の外面と円筒状部60の内面との間に隙間があるので、液体導入通路42以外の部分から液体がシリンダ部28の内部に進入することを防止するためのもので、液体導入通路42よりもストッパ部56に近いシリンダ部28の外面に設けられている。
【0024】
円筒状部60、ストッパ部56及び円筒状部54は、磁力が加わっても磁化されない非磁性材料、例えばオーストナイト系ステンレスによって一体に形成されている。
【0025】
可動鉄心36では、ボール38の後方から傾斜部52の最尖端部まで流体通路62が形成され、この流体通路62は流体通路64と繋がっている。この流体通路64は、胴部50に、その直径方向に沿って形成され、胴部50の外周面で開口している。従って、流体導入通路42から導入された液体は、流体通路64を通って、ボール38の背面及び傾斜部52の外部にまで供給される。なお、可動鉄心36の被ストッパ部46がストッパ部56に面接触したとき、流体通路64は、
図2及び
図3に示すように円筒状部54内に入るので、その状態でも、流体通路64に液体を供給するために、首部48の直径は、胴部50よりも小さくされ、被ストッパ部46の首部48との境界面には、
図5に示すようにスリット63が形成されている。
【0026】
ピストン弁32が着座している状態であって、可動鉄心36のボール38がピストン弁32の基端部に接触している状態において、可動鉄心36の傾斜部52に対して、この傾斜部52が後退可能な隙間67を空けて固定鉄心65が配置されている。この固定鉄心65は、本体6の貫通孔10を超えて本体6の外部にまで突出し、外側にフランジ状に広がり、その外側周縁部から可動鉄心の36のストッパ部56付近まで筒状に突出し、その突出端から円筒状部54まで伸びている。この固定鉄心65及び円筒状部54の内部に、ソレノイド66が配置されている。この固定鉄心65及びソレノイド66が、励磁手段を構成している。
【0027】
ソレノイド66を包囲するように、ストッパ部56の外周面から貫通孔10を通って本体6の外方まで殻68が形成されている。70は、殻68と貫通孔10との間からの液体漏れを防止するためのOリングである。
【0028】
このように構成された液圧ノズル弁2では、
図1に示すように、ピストン弁32の先端部32aが、弁座18に着座し、部屋8内の液体が液体導入通路42を介して液体室40に入り、流体通路64、62を通過して、固定鉄心65と可動鉄心36の傾斜部52との間の隙間67に進入している。この状態では、隙間67の液体の圧力とボール38のシート部の面積との乗算値と、コイルバネ58の押圧力とによって、可動鉄心36がピストン弁32側に押圧されている。
【0029】
この状態において、ソレノイド66に通電して、磁界を発生させると、可動鉄心36が磁化されて、
図2に示すようにコイルバネ58の押圧力と上記乗算値差とに打ち勝って、固定鉄心65側に移動する。これによって、流体通路34からボール38が離れて開かれる。開口20と液体室40との圧力差によって、液体室40の液体が流体通路34を介して開口20側に流出する。また、液体室40の圧力が下がり、隙間67の液体も流体通路62、64、可動鉄心36の首部48、首部48に設けたスリット63、コイルバネ58の設置空間、バネ受け部44を経て、液体室40に進入し、ここから流体通路34を通って開口20に流出する。その結果、ピストン弁32の先端部32aのうち部屋8にある部分の面積と、その部分にかかる圧力との乗算値の方が、液体室40の圧力とピストン弁32の基端部の面積の乗算値よりも大きく、
図3に示すようにピストン弁32及び可動鉄心36は移動し、弁座18からピストン弁32が離座する。これによって、液体流入口30から部屋8内の液体が開口20内に流出し、接続ポート22から、これに接続されている機器、例えばノズルに供給される。
【0030】
この状態で、液体導入通路42を介して液体が液体室40に進入し、ピストン弁32の基端側の圧力と基端側の面積との乗算値が、ピストン弁32の先端側の圧力と先端側面積との乗算値よりも大きくなり、ピストン弁32が前進して、弁座18に接近する。以下、上述したようにピストン弁32が、僅かなストロークで前進後退を繰り返し、バランスしながら、液体はピストン弁32と弁座18の周囲及び液体通路34より吐出される。
【0031】
このとき、ピストン弁32の先端部32aに突出部32bを設けてあるので、弁座部18の出口付近と開口20との間で液体の流れが変化して、液体流入口30から流入する液体が、開口20にある液体と衝突したり、弁座18の周囲から開口20の中心に向かって流れ込む液体同士が衝突したりしたことにより、異常な圧力変化が生じていても、その衝突が発生している位置よりも離れた位置に突出部32bの最先端部が位置し、その付近の圧力は安定している。従って、最先端部32b付近の圧力が急激に変化することがないので、安定して液体が液体通路34から弁座部16の開口20に流出するので、ピストン弁32が、僅かなストロークで前進後退を繰り返し、バランスしながら、液体はピストン弁32と弁座18の周囲及び液体通路34より安定して吐出される。
【0032】
液体の流出を停止させるときには、ソレノイド66への通電を絶つ。これによって、可動鉄心36の磁化が終了し、コイルバネ58の押圧力によって、可動鉄心36及びピストン弁32が開口20側に移動し、ピストン弁32の先端部32aが弁座18に着座する。
【0033】
このように構成された液体圧ノズル弁2では、上述したように突出部32bをピストン弁32の先端部32aに設けているので、最先端部32b付近の圧力が安定している。従って、ピストン弁32がチャッタリングすることがなく、液体圧ノズル弁2が安定した動作をする。なお、突出部32bを設けずに、
図7に示した従来のピストン弁106の先端部と同様に円錐台状にピストン弁32の先端部32aを形成し、その最先端の位置が圧力が安定している位置となるように円錐台の高さ寸法を長くすることも考えられる。しかし、この場合、ピストン弁のストロークを突出部32bを設けた場合と同じとすると、通路面積が小さくなり、吐出流量が少なくなる。吐出流量を確保しようとすると、ピストン弁のストローク、可動鉄心のストロークを長くする必要があり、大きなソレノイドが必要となり、ノズル弁全体が大型となる。
【0034】
さらに、液体導入通路42に対して円筒状部60が重なるように配置されているので、室内8の液体に異物が混入していても、液体導入通路42内に進入することがなく、液体圧ノズル弁2は安定した動作をする。
【0035】
また、円筒状部60に連なるストッパ部56が、可動鉄心36に対するストッパとして機能するが、このストッパ部56は非磁性材料によって構成されているので、可動鉄心36が磁化されているときにも、ストッパ部56が磁化されることはなく、ソレノイド66への通電が絶たれたとき、ストッパ部56は磁化されていないので、ストッパ部56から残留磁力が可動鉄心にかかることがなく、コイルバネ58によるピストン弁32の着座状態への移行が速やかに行われ、戻り応答性が向上する。しかも、コイルバネ58は、残留磁力に打ち勝つような押圧力を発生する必要が無いので、押圧力の小さい小型のものを使用できるので、流体圧ノズル弁を小型化することもできる。
【0036】
また、可動鉄心36のバネ受け部44とストッパ部56との間にコイルバネ58を設けているので、可動鉄心36の内部にコイルバネ58を設ける必要が無く、可動鉄心36においてソレノイド66からの磁束が通る磁束面積を増加させることができる。その結果、ソレノイド66による可動鉄心36の吸引力が大きくなり、可動鉄心36の動作が安定し、流体圧ノズル弁2の動作を安定させることができる。
【0037】
図6に、第2の実施形態の液体圧ノズル弁2aの一部を示す。この液体圧ノズル弁2aでは、ピストン弁32の先端部320aが、弁座18に着座する着座部から僅かに開口20側に進んだ位置で水平に進み、ピストン弁32の中央に突出部320bが形成されている。但し、突出部320bと先端部320aとの接合部はアールに形成され、液体流入口30から流入した液体が、この接合部付近でも円滑に突出部320bの先端側に流れるように構成されている。他の構成は、第1の実施例と同一であり、同一部分には同一符号を付して、その説明を省略する。この液体圧ノズル弁2aも、第1の実施形態の液体圧ノズル弁2と同様に動作する。
【0038】
上記の両実施形態では、流体として液体を使用したが、これに代えて気体、例えばエアーを流体として使用することもできる。上記の両実施形態では、ベース4と本体6とを別個に形成したが、一体に形成することもできる。また、上記の両実施形態では、コイルバネ58を使用したが、これに代えて例えば板ばね等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0039】
2 液体圧ノズル弁
6 本体
8 部屋
16 弁座部
20 開口
28 シリンダ部
32 ピストン弁
32a 先端部
32b 突出部
34 流体通路(第2の流路)
36 可動鉄心
42 液体導入通路(第1の流路)
58 コイルバネ(弾性手段)
66 ソレノイド(励磁手段)