特許第6039358号(P6039358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039358
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】着色ユニット
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20161128BHJP
   H01B 13/34 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B05C1/02 101
   H01B13/00 529Z
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-233644(P2012-233644)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-83490(P2014-83490A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】593098646
【氏名又は名称】株式会社小寺電子製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】小寺 博治
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−039550(JP,A)
【文献】 特開2009−151965(JP,A)
【文献】 特開2005−265134(JP,A)
【文献】 特開2005−163701(JP,A)
【文献】 実開昭61−040172(JP,U)
【文献】 実開昭54−116558(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00−3/20
H01B13/00−13/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に小径の注出口が形成されたインクシリンダ、及び該インクシリンダ内に水密且つ摺動可能に挿入されたピストンを有し、前記インクシリンダ内の前記注出口と前記ピストンとの間にインクが貯留されたインク貯留部材と、
該インク貯留部材を、前記注出口の下側に前記ピストンが位置する状態で着脱可能に保持するユニットベースと、
該ユニットベースに取付けられ、該ユニットベースに保持された前記インク貯留部材の前記ピストンを上方へ摺動させるインク送給機構と、
該インク送給機構によって前記ピストンを上方へ摺動させることで前記注出口から注出されたインクがインク受部、流通管を通って供給、含浸される多孔質のインク受渡部材、インクが収容されると共に外部に連通した開口部を有するインク収容凹部、該インク収容凹部内に移動可能に支持されると共に前記開口部との間に隙間を形成した状態で先端が前記開口部から突出した着色可動部材、及び該着色可動部材の前記先端が着色対象物に当接する着色位置と前記着色可動部材の前記先端が着色対象物から遠ざかった退避位置との間で前記インク収容凹部を移動させる着色移動機構を備え、前記ユニットベースに支持されており、前記退避位置では前記インク受渡部材と前記着色可動部材とが当接して前記インク収容凹部にインクが収容され、該インク収容凹部にインクが収容された状態で前記退避位置から前記着色位置へ移動させると、前記インク受渡部材と前記着色可動部材とが離れ、前記着色位置では着色対象物と前記着色可動部材とが当接して前記インク収容凹部に収容されたインクを着色対象物に付着させて着色を行う着色装置と
を具備することを特徴とする着色ユニット。
【請求項2】
前記インク貯留部材の前記インクシリンダ内における前記注出口と前記ピストンとの間に移動可能に収容され磁性体によって形成された撹拌片と、
該撹拌片に磁力を作用させて前記インクシリンダ内で移動させる磁石を有し、前記ユニットベースに取付けられた撹拌駆動機構と
を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の着色ユニット。
【請求項3】
前記着色装置に取付けられ、着色対象物に着色されたインクを硬化させるインク硬化装置を更に具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の着色ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色ユニットに関し、特に、電線の被覆材等の着色対象物にインクを付着させて着色部を形成する着色ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気製品には配線用の電線が数多く使用されている。これらの電線は、銅等で形成された芯線と、塩化ビニール等の樹脂で形成された被覆材とから構成されている。また、電気製品や自動車等には、複数の電線を束ねたワイヤーハーネスも使用されている。ワイヤーハーネスでは、それぞれの電線の端部に端子が圧着されるとともに、それらの端子が、一つまたは複数のコネクタにまとめて接続されており、コネクタを介して電気部品の基板等に連結されている。
【0003】
ところで、ワイヤーハーネスを製造するためには、夫々の電線を、コネクタの、対応する位置に間違えることなく接続する必要がある。そこで、コネクタの種類やピン番号に応じて被覆材の色が異なる電線を使用することで、コネクタ等の対応する位置を視覚的に認識させて識別することが一般的に行われている。
【0004】
しかしながら、被覆材の色が異なる電線を使用する場合、予め互いに色が異なる電線を多数用意する必要があり、電線の発注や保管等の管理に手間がかかる問題があった。また、ワイヤーハーネスを製造するために、電線加工機で電線を切断したり電線の先端部分の被覆材を除去したりする際には、電線加工機に供給する電線を、被覆材の色毎に頻繁に交換する必要があり、手間がかかって生産性が悪くなる問題があった。
【0005】
これに対して、ノズルから着色材を噴射して電線の一部に着色するマーキング装置(着色装置)が提案されている(例えば、特許文献1)。これにより、予め用意する電線を単一色(例えば、白色)とすることができるため、電線の種類を少なくすることができ、管理にかかる手間を軽減させることができる。また、マーキング装置の下流側に電線加工機を配置することで、色違いによる電線の交換を廃止することができ、生産性を高めることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、ノズルから着色材(インク)を噴射して電線に着色しており、ノズルからの距離によって着色材の付着量が異なるため、色むらが発生し易い問題があると共に、着色位置の境界が不明瞭になり易い問題がある。また、着色材を噴射して着色する場合、蓋然的に、霧状の着色材が飛散するため、飛散した着色材によって電線やマーキング装置が汚れてしまう問題がある。更に、飛散した着色材によってマーキング装置が汚れた場合、マーキング装置の汚れによって電線が汚れてしまう虞があるため、マーキング装置を頻繁に清掃等のメンテナンスする必要があり、生産性を高めることが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記の実情に鑑み、電線の被覆材等の着色対象物に、色むらがなく明瞭に着色を行うことができると同時に、生産性を高めることが可能な着色ユニットの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る着色ユニットは、「一端に小径の注出口が形成されたインクシリンダ、及び該インクシリンダ内に水密且つ摺動可能に挿入されたピストンを有し、前記インクシリンダ内の前記注出口と前記ピストンとの間にインクが貯留されたインク貯留部材と、該インク貯留部材を、前記注出口の下側に前記ピストンが位置する状態で着脱可能に保持するユニットベースと、該ユニットベースに取付けられ、該ユニットベースに保持された前記インク貯留部材の前記ピストンを上方へ摺動させるインク送給機構と、該インク送給機構によって前記ピストンを上方へ摺動させることで前記注出口から注出されたインクがインク受部、流通管を通って供給、含浸される多孔質のインク受渡部材、インクが収容されると共に外部に連通した開口部を有するインク収容凹部、該インク収容凹部内に移動可能に支持されると共に前記開口部との間に隙間を形成した状態で先端が前記開口部から突出した着色可動部材、及び該着色可動部材の前記先端が着色対象物に当接する着色位置と前記着色可動部材の前記先端が着色対象物から遠ざかった退避位置との間で前記インク収容凹部を移動させる着色移動機構を備え、前記ユニットベースに支持されており、前記退避位置では前記インク受渡部材と前記着色可動部材とが当接して前記インク収容凹部にインクが収容され、該インク収容凹部にインクが収容された状態で前記退避位置から前記着色位置へ移動させると、前記インク受渡部材と前記着色可動部材とが離れ、前記着色位置では着色対象物と前記着色可動部材とが当接して前記インク収容凹部に収容されたインクを着色対象物に付着させて着色を行う着色装置とを具備する」ことを特徴とする。
【0009】
ここで、「インク」としては、「紫外線によって硬化するもの(紫外線硬化型塗料)」、「水や有機溶剤の揮発・乾燥によって硬化するもの(有機塗料、水性塗料、等)」、「化学反応によって硬化するもの(二液硬化型塗料、吸湿硬化型塗料、等)」等を例示することができる。
【0010】
また、「インクシリンダ」としては、「円柱状」、「四角形や六角形等の多角柱状」、等を例示することができる。また、「ピストン」としては、「インクシリンダの下端から下方へ延出する棒状のロッド部を有したもの」、「インクシリンダ内から突出しない柱状のもの」、等を例示することができる。なお、「インク貯留部材」としては、一般的な注射器を用いても良い。
【0011】
更に、インク貯留部材を「着脱可能に保持する」としては、「インクシリンダの軸方向に対して直角方向へ延びた棒状の保持部を備えると共に、ユニットベースにその保持部が嵌入される保持孔を備えたもの」、「ユニットベースにインクシリンダを挟持する挟持部材を備えたもの」、「インクシリンダの軸方向に対して直角方向へ延びた棒状の保持部を備えると共に、ユニットベースにその保持部を挟持する挟持部材を備えたもの」、等を例示することができる。
【0012】
また、「インク送給機構」としては、「昇降可能且つ回転不能に支持されピストンの下端と当接可能な当接部材と、当接部材と螺合し上下に延びた雄ネジ部材と、雄ネジ部材を回転させるモータとを備えたもの」、「供給される流体の圧力により昇降するロッドを有し、ロッドの上端がシリンダの下端に当接するアクチュエータを備えたもの」、等を例示することができる。
【0013】
また、着色装置における着色可動部材がインク収容凹部内に「移動可能に支持」としては、「開口部から突出した方向へスライド可能に支持」、「開口部から突出した方向に対して直角方向へスライド可能に支持」、「回転可能に支持」、等を例示することができる。なお、着色可動部材をスライド可能に支持する場合、元の位置に復帰できるようにすることが望ましい。また、着色装置における着色可動部材と開口部との間の「隙間」としては、「毛細管現象が生じる隙間」、「インクの表面張力によって外部へ漏れ出さない隙間」、等を例示することができる。また、「着色可動部材」としては、「板状に形成されたもの」、「柱状に形成されたもの」、「球状に形成されたもの」、等を例示することができる。なお、インク収容凹部内に、着色可動部材を一つのみ支持させても良いし、着色可動部材を複数支持させても良い。
【0014】
更に、「着色対象物」としては、「電線(電線の被覆材)」、「ロープ」、「スチールワイヤー」、「棒材」、「管材」、等を例示することができる。また、「着色移動機構」としては、「駆動源としてエアシリンダを備えたもの」、「駆動源としてモータを備えたもの」、「駆動源としてソレノイドを備えたもの」、等を例示することができる。また、着色移動機構による着色対象物に「当接する」としては、「インク収容凹部(着色可動部材)を着色対象物に対して接線方向へ移動させて当接する」、「インク収容凹部(着色可動部材)を着色対象物に対して垂直方向へ移動させて当接する」、等を例示することができる。
【0015】
本構成によれば、インクが貯留されたインク貯留部材を、ユニットベースに取付けた状態で、インク送給機構によってピストンを上方へ摺動させることで、インクシリンダ内のインクを注出口から押出して、着色装置のインク収容凹部内へ収容させることができる。そして、着色装置のインク収容凹部内にインクが収容された状態で、着色移動機構によってインク収容凹部を退避位置から着色位置へ移動させると、インク収容凹部の開口部から突出した着色可動部材が着色対象物に当接する。この着色可動部材は、インク収容凹部内で移動可能に支持されているため、開口部から突出した先端が着色対象物に当接すると、着色可動部材がインク収容凹部内で移動することとなり、着色可動部材の移動によって着色可動部材と開口部との隙間からインクが外部へ放出され、着色可動部材と当接した着色対象物に付着して着色することができる。
【0016】
着色対象物へのインクの着色(付着)について具体的に詳述すると、着色可動部材がインク収容凹部内で開口部から突出した方向へスライド可能に支持されている場合、着色可動部材を着色対象物に当接させると、着色可動部材がインク収容凹部内へ没入する方向へ移動するため、インク収容凹部の容積が減少し、インク収容凹部内のインクが開口部と着色可動部材との間の隙間から外部へ押出されて着色対象物に付着する。或いは、着色可動部材がインク収容凹部内で回転可能に支持されている場合、着色可動部材を着色対象物に対して接線方向へ移動させて当接させると、着色可動部材が着色対象物上を転動することとなるため、着色可動部材の転動(回転)によってインク収容凹部内のインクが着色可動部材の表面に付着した状態で外部へ繰り出されて着色対象物に付着する。
【0017】
このように、インク収容凹部を移動させて着色可動部材を着色対象物に当接させることでインクを付着させて着色しているため、ノズルから着色材(インク)を噴射して着色する場合と比較して、インクが飛散することがなく、当接させた部位のみにインクを付着させることができ、色むらがなく明瞭に着色することができる。また、インクが飛散しないため、着色装置を含む着色ユニットがインクで汚れることがなく、長期に亘って着色装置等を良好な状態に維持させることができ、清掃等のメンテナンスに係る手間を低減させて生産性を高めることができる。
【0018】
また、インク貯留部材をユニットベースに対して着脱可能に保持させているため、予めインクを貯留させたインク貯留部材を用意することで、インクがなくなった時に、インク貯留部材を交換するだけで良く、着色ユニットの稼動停止時間を可及的に短くして生産性を高めることができる。なお、着色装置では、インク収容凹部に所定量のインクが収容されており、インク貯留部材内のインクがなくなっても暫くは着色することができるため、その間にインク貯留部材を新しいものと交換することで、着色ユニットを停止させることなく連続して稼動させることができ、生産性を高めることができる。
【0019】
更に、インク貯留部材をユニットベースに対して着脱可能に保持させているため、インクが飛び散る可能性のあるインク貯留部材へのインクの充填作業を、着色ユニットとは別の場所で行うことができる。従って、インクの充填作業によって着色ユニットや着色対象物が汚れるのを回避させることができるため、着色ユニットの清掃等のメンテナンスに係る手間を低減させて生産性を高めることができる。
【0020】
ところで、インク貯留部材から着色装置へインクを供給する際に、例えば、インクシリンダの下端に注出口を備えた上でインク貯留部材を着色装置の上側に配置した場合や、重力によってインクを供給するようにした場合、インク貯留部材に貯留されたインクの量によって、インクの供給圧が変化する虞がある。そして、インクの供給圧が高い場合、着色装置へインクが必要以上に供給されてしまい、着色装置内でインク漏れが発生して着色対象物や着色ユニット等が汚れてしまう問題が発生する。一方、インクの供給圧が低い場合、着色装置へ供給されるインクが少なくなるため、着色対象物に対して良好な状態に着色することができなくなる問題が発生する。或いは、インクシリンダの下端に注出口を備えた上で、ピストンを摺動させる機構として、インクシリンダ内のインクに対してピストンの重量が作用する機構を採用した場合、インクシリンダ内のインクが常に加圧された状態となるため、着色装置へインクが必要以上に供給されてしまう虞があり、着色装置内でインク漏れが発生して上述と同様の問題が発生する。
【0021】
これに対して、本構成では、ユニットベースによってインク貯留部材を、注出口の下側にピストンが位置する状態で保持させ、インク送給機構によってピストンを上方へ摺動させて注出口からインクを注出させているため、インク送給機構によってピストンを上方へ摺動させた時のみインクシリンダ内のインクに圧力を作用させることができる。従って、インク貯留部材からインクが着色装置側へ必要以上に供給されるのを防止することができ、着色装置内でインク漏れが発生して着色対象物や着色装置等が汚れてしまうのを防止することができる。
【0022】
また、インク送給機構によってピストンの摺動を適宜制御することで、インクシリンダ内に貯留されたインクの量に関らず、一定の圧力で必要な量のインクを着色装置へ供給することができるため、着色対象物にインクが付着しすぎたり付着が足りなかったりするのを防止することができ、着色対象物に対して色むらがなく明瞭な良好な状態に着色することができる。
【0023】
なお、ユニットベースに対して着色装置を複数支持させると共に、各着色装置毎にインク貯留部材を備えるようにしても良い。これにより、一つの着色対象物に対して複数の色を着色することができるため、着色する色、着色位置、着色位置の数、等の組み合わせにより着色パターンを多彩化することができ、着色による識別性を高めることができると共に、着色パターンによって高度な情報を付与することができる。
【0024】
また、本構成に係る着色ユニットは、上記の構成に加えて、「前記インク貯留部材の前記インクシリンダ内における前記注出口と前記ピストンとの間に移動可能に収容され磁性体によって形成された撹拌片と、該撹拌片に磁力を作用させて前記インクシリンダ内で移動させる磁石を有し、前記ユニットベースに取付けられた撹拌駆動機構とを更に具備する」構成とすることができる。
【0025】
ここで、「磁石」としては、「永久磁石」、「電磁石」、等を例示することができる。また、「撹拌駆動機構」としては、「磁石を移動可能に保持する磁石保持部と、磁石保持部を移動させる駆動源とを備え、磁石の移動によって撹拌片を移動させるもの」、「磁石としての電磁石への通電をオン・オフさせる、又は、電流を変化させることで、撹拌片に作用する磁力を変化させて撹拌片を移動させるもの」、等を例示することができる。
【0026】
本構成によれば、撹拌駆動機構によって撹拌片をインクシリンダ内で移動させることができるため、撹拌片の移動によってインクを撹拌することができ、インクに含まれた染料や顔料、溶媒、その他の添加剤等が、分離したり沈殿したりするのを防止することができる。従って、インクを良好な状態に維持することができるため、インクの色が変わるのを防止したり、インクが硬化不良を起こすのを防止したりすることができ、着色対象物に対して確実に着色することができる。
【0027】
更に、本構成に係る着色ユニットは、上記の構成に加えて、「前記着色装置に取付けられ、着色対象物に着色されたインクを硬化させるインク硬化装置を更に具備する」構成とすることができる。
【0028】
ここで、「インク硬化装置」としては、使用するインクの物性に対応したものであれば良く、例えば、インクとして紫外線硬化型塗料を用いた場合では、「紫外線LED」、「水銀ランプ」、「メタルハライドランプ」、等を例示することができる。また、インクとして揮発・乾燥によって硬化するものを用いた場合では、「赤外線LED」、「白熱ランプ」、「ニクロム線等の発熱半導体」、等を例示することができる。
【0029】
ところで、着色対象物に付着させたインクを硬化させるインク硬化装置を、着色ユニット内における着色装置から離れた位置に配置した場合、着色対象物に付着したインクが未硬化の状態で大きく移動することとなるため、着色対象物の移動中に未硬化のインクが飛び散ったり、着色対象物におけるインクを付着させた部位が他の部材に当接したりする虞がある。そして、インクが飛び散ったり他の部材に当接したりした場合、着色対象物へ付着させたインクが剥がれて着色が不完全になったり、着色対象物が汚れてしまったりする問題が発生する。また、この場合、着色ユニット内等が汚れてしまい、清掃等のメンテナンスに手間が係る問題が発生する。
【0030】
これに対して、本構成では、着色装置にインク硬化装置を取付けているため、着色対象物にインクを付着させる位置と、付着させたインクを硬化させる位置とを可及的に接近させることができ、未硬化のインクが付着した着色対象物が大きく移動するのを回避させることができる。従って、未硬化のインクが飛び散ったり、インクを付着させた部位が他の部材に当接したりするのを可及的に抑制することができ、着色対象物に対して綺麗に着色することができると共に、着色ユニット等が汚れるのを防止してメンテナンスに係る手間を簡略化することができ、生産性を高めることができる。
【発明の効果】
【0031】
このように、本発明によれば、電線の被覆材等の着色対象物に、色むらがなく明瞭に着色を行うことができると同時に、生産性を高めることが可能な着色ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態である着色ユニットを用いたワイヤーハーネス製造システムを概略で示す説明図である。
図2図1における着色ユニットの平面断面図である。
図3図1における着色ユニットの右側面断面図である。
図4図3における着色ユニットの着色装置のみを拡大して示す説明図である。
図5図4の着色装置においてインク収容凹部が退避位置から着色位置へ移動した状態を示す説明図である。
図6】(a)は着色装置におけるインク収容凹部を有した付着機構を示す斜視図であり、(b)は付着機構の一部を分解して示す分解斜視図であり、(c)は付着機構全体を分解して示す分解斜視図であり、(d)は付着機構におけるインク収容凹部内を断面で拡大して示す説明図である。
図7図2の着色ユニットにおける専用インク硬化ユニットを示す斜視図である。
図8図3の着色ユニットにおけるインク貯留部材の着脱を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施形態である着色ユニット1について、図1乃至図8を参照して詳細に説明する。本実施形態の着色ユニット1は、着色対象物として、金属等の導電性の芯線をゴムや樹脂等の絶縁性の被覆材で覆った電線Dに、インクを付着させて着色するものであり、複数の電線Dの両端にコネクタCを接続したワイヤーハーネスWを製造するためのワイヤーハーネス製造システム2に適用したものである。なお、着色ユニット1において、図2における下側及び図3における左側を前側とし、図2における上側及び図3における右側を後側として、以下説明する。
【0034】
本実施形態のワイヤーハーネス製造システム2は、芯線を被覆する被覆材が白色の電線Dを供給する電線供給ユニット3と、電線供給ユニット3から供給された電線Dの被覆材にインクを付着させて着色する着色ユニット1と、着色ユニット1によって着色された電線DをコネクタCに対して接続可能に加工する電線加工ユニット4と、電線加工ユニット4により加工された電線Dが接続されるコネクタCを作業者へ供給するコネクタ供給ユニット5と、を備えている。なお、図示は省略するが、ワイヤーハーネス製造システム2は、電線加工ユニット4によって加工された電線Dをコネクタ供給ユニット5の近傍に位置した作業者へ搬送するベルトコンベアを備えている。
【0035】
電線供給ユニット3は、図示は省略するが、白色の電線Dが巻かれたドラムと、ドラムから繰り出された電線Dに対して複数のローラを接触させることで電線Dの巻き癖を矯正する矯正機構と、矯正機構によって巻き癖が矯正された電線Dを着色ユニット1側へ向かって案内するガイド部材と、を備えている。
【0036】
電線加工ユニット4は、図示は省略するが、着色ユニット1によって着色された電線Dを一対のローラの間で挟持する電線保持ローラと、電線保持ローラを回転させて電線Dを送る電線送りモータと、電線送りモータの回転により送られた電線Dを切断したり電線Dの被覆材に切込みを入れたりすることが可能な切断切込装置と、を備えている。
【0037】
コネクタ供給ユニット5は、図示は省略するが、上側が開放された容器状のコネクタ収容部が周方向へ列設されて円盤状に形成されたコネクタ収容部材と、コネクタ収容部材を回転可能に支持するベース部材と、コネクタ収容部材を回転させる収容部材駆動モータと、一つのコネクタ収容部と対応した大きさの開口部を有しコネクタ収容部材の上側を覆うと共にベース部材に固定されたカバーと、を備えている。
【0038】
着色ユニット1は、図2及び図3等に示すように、紫外線硬化型塗料からなるインクを貯留したインク貯留部材10と、インク貯留部材10に貯留されたインクを送給するインク送給機構20と、インク送給機構20によって送給されたインクが供給され、電線Dにインクを付着させて着色する着色装置30と、着色装置30に対してインクを付着させるための駆動力を供給する着色駆動機構60と、着色装置30によって電線Dに付着されたインクに対して紫外線を照射して硬化させるインク硬化装置70と、を備えている。
【0039】
また、着色ユニット1は、インク貯留部材10に貯留されたインクを撹拌可能な撹拌片80と、撹拌片80を移動させてインクを撹拌する撹拌駆動機構90と、複数のインク貯留部材10と複数の着色装置30を夫々着脱可能に保持すると共に、複数のインク送給機構20と複数の着色駆動機構60、及び撹拌駆動機構90が取付けられたユニットベース100と、ユニットベース100に取付けられインク貯留部材10、インク送給機構20、及び着色装置30を覆う遮光性のユニットカバー110と、ユニットカバー110を貫通して取付けられ電線Dを案内する電線案内部材120と、を備えている。
【0040】
着色ユニット1のインク貯留部材10は、一端に小径の注出口11aが形成されたインクシリンダ11と、インクシリンダ11内に水密且つ摺動可能に挿入されたピストン12と、インクシリンダ11の他端部に取付けられインクシリンダ11の軸方向に対して直角方向へ延びた角棒状の保持部13と、インクシリンダ11の一端に取付けられ注出口11aから注出されたインクを着色装置へ送給するための可撓性の送給管14と、を備えている。インク貯留部材10のピストン12は、インクシリンダ11の他端から外方へ延出する棒状のロッド部12aを備えている。
【0041】
インク貯留部材10は、インクシリンダ11及びピストン12によって一般的な注射器の形態を呈している。このインク貯留部材10は、インクシリンダ11内の注出口11aとピストン12との間にインクが貯留されており、ピストン12をインクシリンダ11の一端側へ摺動させることによって注出口11aからインクを注出することができる。なお、インク貯留部材10は、注出口11aの下側にピストン12が位置する状態で、ユニットベース100に対して着脱可能に保持される。
【0042】
着色ユニット1のインク送給機構20は、図3に示すように、ユニットベース100におけるインク貯留部材10を着脱可能に保持する部位の下側に取付けられている。インク送給機構20は、ユニットベース100に保持されたインク貯留部材10のピストン12におけるロッド部12aの下端と当接可能な当接部材21と、当接部材21から下方へ延出した長尺状のスライダ22と、スライダ22を上下方向へのみ移動可能に支持しユニットベース100に取付けられたスライダガイド部材23と、当接部材21と螺合し上下方向へ延びた雄ネジ部材24と、雄ネジ部材24を回転させユニットベース100に取付けられた送給モータ25と、を備えている。
【0043】
インク送給機構20の当接部材21は、ピストン12のロッド部12aの下端が当接する部位から離反した位置に上下方向へ貫通し雄ネジ部材24が螺合される雌ネジ孔21aを備えている。スライダ22は、当接部材21におけるロッド部12aが当接する位置と雌ネジ孔21aとの間の位置から下方へ延出している。雄ネジ部材24は、下端が送給モータ25の回転軸に連結されている。このインク送給機構20は、送給モータ25によって雄ネジ部材24を回転させることで、当接部材21を昇降させることができる。
【0044】
着色ユニット20の着色装置30は、図3等に示すように、平板状で略中央に電線Dが挿通される挿通孔31aが形成され、ユニットベース100に着脱可能に取付けられるベースプレート31と、ベースプレート31に取付けられインク貯留部材10の送給管14が接続されるインク受部32と、インク受部32に受けられたインクが供給されると共にベースプレート31における挿通孔31aから遠ざかった位置に取付けられ多孔質で柔軟性を有したインク受渡部材33と、インク受渡部材33とインク受部32とを連絡しインクが流通する流通管34と、インク受渡部材33を介してインク貯留部材10の注出口11aから注出されたインクが供給されると共にベースプレート31の挿通孔31aに挿通された電線Dに対してインクを付着可能とされた付着機構40と、付着機構40がベースプレート31の挿通孔31aに挿通された電線Dに当接する着色位置と付着機構40が電線Dから遠ざかりインク受渡部材に当接する退避位置との間で付着機構40を移動させる着色移動機構50と、を備えている。
【0045】
着色装置30は、ベースプレート31の一方の面側に、インク受部32、インク受渡部材33、付着機構40、及び着色移動機構50が配置されている。また、着色装置30は、図示するように、ベースプレート31の挿通孔31aを中心としてベースプレート31の長辺方向両側にインク受渡部材33が配置されていると共に、各インク受渡部材33に対応した付着機構40が挿通孔31aを中心として対称に配置されている。
【0046】
ベースプレート31は、金属板によって長方形状に形成されており、短辺方向の中央で、長辺方向の中央から一方側(図4及び図5において下側)へ寄った位置に挿通孔31aが形成されている。また、ベースプレート31は、長辺側の側面における挿通孔31aよりも一方側(図4及び図5において左側)の位置に固定用の切欠部31bが形成されている。
【0047】
インク受部32は、ベースプレート31における長辺方向の他方側の端部で短辺方向の中央に取付けられており、送給管14の先端を着脱可能に接続されている。
【0048】
インク受渡部材33は、合成樹脂製の織布、不織布、スポンジ、等によって形成されており、本実施形態では一対備えられている。一対のインク受渡部材33は、ベースプレート31における挿通孔31aを中心として長辺方向へ略同じ距離の位置に、ブラケット(図示は省略)によってベースプレート31に取付けられている。
【0049】
付着機構40は、図6に示すように、外形が略長方形で板状の本体部材41と、本体部材41に形成されインクが収容されると共に外部に連通した開口部42aを有するインク収容凹部42と、インク収容凹部42内に移動可能に複数支持されると共に開口部42aとの間に隙間を形成した状態で先端が開口部42aから突出可能な薄板状の着色可動部材43と、着色可動部材43が開口部42aから突出する方向への移動位置を規制しインク収容凹部42内に配置された移動規制部材44と、を備えている。
【0050】
付着機構40の本体部材41は、長辺の一方の側面から先端が台形状に膨出した膨出部41aと、膨出部41aの先端面に形成された複数の凹凸部41bと、を備えている。また、本体部材41は、台形状に膨出した膨出部41aの一対の斜辺付近から夫々短辺方向へ矩形状に延びた貫通口41cと、貫通口41cよりも外側で短辺方向へ延びた長穴状に形成され本体部材41を着色移動機構50に取付けるための一対の取付孔41dと、を備えている。
【0051】
付着機構40のインク収容凹部42は、本体部材41における膨出部41aを本体部材41の長辺方向へ貫通すると共に、膨出部41aの先端面に開口部42aが開口した状態に形成されている。本実施形態のインク収容凹部42は、本体部材41の長辺方向へ延びた形態とされている。
【0052】
付着機構40の着色可動部材43は、インク収容凹部42の幅(本体部材41の厚味方向)よりも薄い金属板によって形成されている。着色可動部材43は、帯板状の本体部43aと、本体部43aの長手方向両端における一方の長辺側から他方の長辺側へ向かって切欠かれた一対の切欠部43bと、本体部43aの長手方向両端における他方の長辺側から長手方向に対して直角方向へ突出した一対の脚部43cと、各脚部43cの突出端から互いに接近する方向へ細く延びた一対の弾性部43dと、を備えている。
【0053】
付着機構40の移動規制部材44は、インク収容凹部42の長さと略同じ長さで棒状の棹部44aと、棹部44aの中央から一方側へ突出した突部44bと、棹部44aの両端から突部44bが突出した方向と同じ方向へ夫々延出した一対の延出部44cと、一対の延出部44cにおける突出端側から互いに接近する方向へ夫々突出した一対の規制部44dと、棹部44aの両端から延出部44cとは反対側へ夫々延出した一対の係止部44eと、を備えている。
【0054】
この付着機構40は、着色可動部材43の弾性部43dの自由端を移動規制部材44の突部44bに当接させると共に、着色可動部材43の切欠部43b内に移動規制部材44の規制部44cを位置させることで、着色可動部材43の弾性部43dが本体部43a側へ弾性変形し、その弾性変形の付勢力によって切欠部43bが規制部44cに当接し、着色可動部材43が一方側の移動端に位置した状態となる。この状態では、着色可動部材43の脚部43cと移動規制部材44の棹部44aとの間に隙間があり、弾性部43dの付勢力に抗して着色可動部材43を他方側へ移動させると、脚部43cが棹部44cに当接して移動が規制され、着色可動部材43が他方側の移動端に位置した状態となる。従って、移動規制部材44によって着色可動部材43を移動可能に支持することができると共に、移動範囲を規制することができる。
【0055】
付着機構40は、移動規制部材44に複数(本例では3個)の着色可動部材43を支持させた状態で、移動規制部材44をインク収容凹部42内へ挿入し、棹部44aをインク収容凹部42の底部に当接させると共に、一対の係止部44eを本体部材41の膨出部41aにおける台形状の斜辺に当接させる。これにより、インク収容凹部42における本体部材41の長辺方向両端の開口が移動規制部材44の延出部44cによって閉鎖された状態となると共に、着色可動部材43が移動規制部材44を介してインク収容凹部42内に移動可能に支持された状態となる。なお、本実施形態では、移動規制部材44が本体部材41に対して接着固定されている。
【0056】
付着機構40は、組立てた状態で、着色可動部材43における本体部43aの一方側の端部が、インク収容凹部42の開口部42aから突出しており、弾性部43dの付勢力に抗して着色可動部材43を他方側へ移動させると、本体部43aがインク収容凹部42内へ没入することができる(図6(d)を参照)。また、付着機構40は、着色可動部材43とインク収容凹部42の開口部42aとの間と、着色可動部材43同士の間に、毛細管現象が生じる隙間が形成されている。
【0057】
着色移動機構50は、ベースプレート31の長辺方向へ延び、ベースプレート31における挿通孔31aの中心を通る長辺方向へ延びた軸線に対して対称に取付けられた一対のレール部材51と、各レール部材51によってスライド可能に支持された一対のスライダ52と、各スライダ52に取付けられると共に付着機構40が取付けられ、互いに対向する側面にベースプレート31の長辺方向へ延びたラックギア53aが形成された一対のラック部材53と、一対のラック部材53におけるラックギア53aに夫々噛合しベースプレート31に回転可能に支持された平歯車状の伝達ギア54と、を備えている。
【0058】
また、着色移動機構50は、ラック部材53に当接することでラック部材53に取付けられた付着機構40の移動範囲を規制しベースプレート31に取付けられたストッパ部材55と、一端側がラック部材53に係止されると共に他端側がベースプレート31に係止され、ラック部材53に取付けられた付着機構40を退避位置へ復帰させる復帰バネ56とを備えている。
【0059】
一対のレール部材51は、ベースプレート31の挿通孔31aの中心からペースプレート31における短辺方向の距離がインク受渡部材33よりも遠い位置に、ベースプレート31に対して取付けられている。
【0060】
一対のラック部材53は、ベースプレート31における長辺方向へ延びた形態とされ、長手方向の中央よりもベースプレート31における長辺方向の一方側にラックギア53aが形成されており、長手方向の中央よりもラックギア53aが形成された側とは反対側に付着機構40が取付けられる。また、一対のラック部材53は、ベースプレート31における長辺方向の他方側の端部に、ストッパ部材55に当接可能なストッパ部53bを備えている。
【0061】
一対のラック部材53における片方のラック部材53は、ベースプレート31における長辺方向の一方側の端部に、着色駆動機構60によって駆動される被駆動部53cを備えている。また、一対のラック部材53における他方のラック部材53は、ベースプレート31における長辺方向の一方側の端部付近に、復帰バネ56の一端が係止される係止部53dを備えている。この他方のラック部材53は、係止部53dに復帰バネ56が係止されることで、復帰バネ56によりベースプレート31における長辺方向の他方側へ付勢された状態となる。
【0062】
伝達ギア54は、ベースプレート31の挿通孔31aの中心を通る長辺方向へ延びた軸線上で、挿通孔31aの中心からインク受渡部材33よりも遠くベースプレート31における長辺方向の一方側の端部付近の位置に支持されている。着色移動機構50は、片方のラック部材53を移動させると、一対のラック部材53のラックギア53aと伝達ギア54との作用によって他方のラック部材53を相反する方向へ移動させることができる。
【0063】
また、着色移動機構50は、ラック部材53との間で付着機構40を摺動可能に挟持する板状の挟持部材57を備えている。この挟持部材57は、ラック部材53に対して付着機構40における本体部材41の取付孔41dを通して取付けられる。ラック部材53への付着機構40の取付けは、ラック部材53の長手方向に対して直角方向へ取付孔41dが延びた状態に取付ける。従って、着色移動機構50は、付着機構40をラック部材53の長手方向に対して直角方向へ摺動可能に取付けることができる。
【0064】
更に、着色移動機構50は、挟持部材57を介してラック部材53に取付けられた付着機構40を、ラック部材53の長手方向に対して直角方向で且つベースプレート31の挿入孔31aに接近する方向へ付勢する接近バネ58と、接近バネ58の基端側を支持しラック部材53に取付けられるバネ保持部材59と、を備えている。接近バネ58及びバネ保持部材59は、ラック部材53に付着機構40を取付けた状態で、本体部材41の貫通口41c内に位置し、接近バネ58の先端が貫通口41c内における膨出部41aに近い側の内面に当接すると共に、接近バネ58の基端側を支持するバネ保持部材59が貫通口41c内における膨出部41aから遠ざかった内面付近に取付けられている。なお、バネ保持部材59には、補助バネ58内へ延びた保持棹59aを有しており、この保持棹59aによって接近バネ58が貫通口41c内から脱落するのを防止することができる。
【0065】
この着色移動機構50は、一対のラック部材53のラックギア53aと伝達ギア54とによって、片方のラック部材53が移動すると、他方のラック部材53が相反する方向へ移動する。従って、着色移動機構50は、片方のラック部材53のストッパ部53bを対応するストッパ部材55に当接させた時に、他方のラック部材53のストッパ部53bが対応するストッパ部材55から最も遠ざかった位置となる(図4を参照)。一方、他方のラック部材53のストッパ部53bを対応するストッパ部材55に当接させた時には、片方のラック部材53のストッパ部53bが対応するストッパ部材55から最も遠ざかった位置となる(図5を参照)。なお、一対のラック部材53は、夫々のストッパ部53bがストッパ部材55から離れた状態では、ストッパ部53bとは反対側の端部が、ベースプレート31における短辺よりも外側へ延出した状態となる。
【0066】
また、着色移動機構50は、片方のラック部材53のストッパ部53bを対応するストッパ部材55に当接させた状態では、ラック部材53における付着機構40が取付けられる部位がベースプレート31の挿通孔31aに接近した位置となり、他方のラック部材53のストッパ部53bを対応するストッパ部材55に当接させた状態では、ラック部材53における付着機構40が取付けられる部位がベースプレート31の挿通孔31aから遠ざかった位置となる。これにより、着色移動機構50は、各ラック部材53に着色機構40を取付けることで、一対の着色機構40を、挿通孔31aに接近して電線Dに当接可能な着色位置と、挿通孔31a(電線D)から遠ざかった退避位置との間で移動させることができる。
【0067】
更に、着色移動機構50は、一対のラック部材53に対して、付着機構40が、夫々のインク収容凹部42の開口部42aが互いに対向可能な向きに取付けられる。従って、着色移動機構50は、ベースプレート31の挿通孔31aに挿通された電線Dに対して、付着機構40の開口部42aから突出した着色可動部材43の先端を、接線方向へ移動させて当接させることができる。これにより、着色移動機構50は、一対の付着機構40によって電線Dを挟持させることができると共に、着色可動部材43(膨出部41aの先端)に沿って電線Dを転動させることができる。
【0068】
また、着色移動機構50は、ラック部材53と挟持部材57とによって付着機構40をラック部材53の長手方向に対して直角方向へ摺動可能に取付けることができると共に、接近バネ58及びバネ保持部材59によって取付けた付着機構40をベースプレート31の挿通孔31aへ接近する方向へ付勢している。つまり、着色移動機構50は、付着機構40を電線Dの接線方向に対して直角方向へ摺動可能に支持することができると共に、付着機構40を電線Dへ接近する方向へ付勢しているため、挿通孔31aに挿入された電線Dの外径が変化しても、着色機構40の着色可動部材43の先端を確実に電線Dに当接させることができる。
【0069】
本実施形態の着色装置30は、一対の付着機構40が、着色移動機構50の一対のラック部材53に対して、夫々のインク収容凹部42の開口部42aが互いに対向可能な向きに取付けられる。そして、着色装置30は、一対の付着機構40を、ベースプレート31の挿通孔31aを中心としてインク収容凹部42の開口部42aが互いに対向し開口部42aから突出した着色可動部材43が挿通孔31aに挿通された電線Dに当接する着色位置と、挿通孔31a(電線D)から遠ざかりインク収容凹部42の開口部42aから突出した着色可動部材43がインク受渡部材33に当接する退避位置との間で移動させることができる。
【0070】
着色駆動機構60は、公知のエアシリンダとされ、ユニットベース100における着色装置30が取付けられる位置の下側に取付けられている。着色駆動機構60は、ユニットベース100に取付けられた着色装置30における片方のラック部材53の被駆動部53cに上端が当接し、昇降する棒状の駆動ロッド61を備えている。なお、着色駆動機構60は、ユニットベース100に取付可能な着色装置30の数と同じ数だけ取付けられている。この着色駆動機構60は、加圧されたエアの供給により駆動ロッド61を昇降させることができ、駆動ロッド61の上端に当接した被駆動部53cを介して着色移動機構50を駆動させることができる。
【0071】
インク硬化装置70は、電線Dが挿通可能な挿通孔71aを有したブラケット71と、ブラケット71に取付けられ挿通孔71aの中心へ向って紫外線を照射する複数(本例では4個)の紫外線LED72とを備えている(図7を参照)。インク硬化装置70は、着色装置30に用いるベースプレート31に対して、付着機構40や着色移動機構等が配置される側とは反対側の面に取付けられる。また、インク硬化装置70は、挿通孔71aがベースプレート31の挿通孔31aと同軸上に取付けられる。
【0072】
このインク硬化装置70は、電線Dに対して紫外線LED72を可及的に近い位置に配置していると共に、挿通孔71a内でその中心へ向って紫外線を照射しているため、紫外線LED72から照射された紫外線が挿通孔71aから漏れ難く、インク貯留部材10内や着色装置30内のインクが硬化するのを防止することができる。なお、図7は、ベースプレート31にインク硬化装置70のみを取付けて、着色機能を有していない専用インク硬化ユニット75である。
【0073】
撹拌片80は、インク貯留部材10のインクシリンダ11内における注出口11aとピストン12との間に移動可能に収容され、鉄等の磁性体によって形成されている(図3を参照)。本実施形態の撹拌片80は、穴の開いた円盤状に形成されている。
【0074】
撹拌駆動機構90は、図2及び図3に示すように、ユニットベース100に保持されたインク貯留部材10のインクシリンダ11に接近した位置に配置された磁石91と、複数の磁石91を左右方向へ列設した状態で保持する横長の磁石保持部材92と、磁石保持部材92における左右方向の略中央に取付けられたスライダ93と、スライダ93を昇降可能に支持し上下方向へ延びると共に下端がユニットベース100に取付けられた昇降レール94と、昇降レール94の下端に取付けられスライダ93を昇降駆動させるための昇降駆動モータ95と、昇降駆動モータ95によって回転する駆動プーリ96と、昇降レール94の上端に回転可能に支持された従動プーリ97と、従動プーリ97と駆動プーリ96とに巻き掛けられたベルト98と、を備えており、ベルト98に一部にスライダ93が取付けられている。
【0075】
撹拌駆動機構90は、磁石保持部材92が、ユニットベース100における複数のインク貯留部材10を保持する間隔と同じ間隔で、複数の磁石91を保持している。なお、本実施形態では、磁石91は、公知の永久磁石とされている。
【0076】
この撹拌駆動機構90は、昇降駆動モータ95によって駆動プーリ96を回転させると、駆動プーリ96と従動プーリ97とに巻き掛けられたベルト98が回転し、ベルト98に取付けられたスライダ93がベルト98の回転方向と対応した方向へ移動する。これにより、撹拌駆動機構90は、駆動モータ95の回転によって、スライダ93を介して磁石91を昇降させることができる。この撹拌駆動機構90は、ユニットベース100に保持されたインク貯留部材10のインクシリンダ11内に収容された撹拌片80に対して、磁石91からの磁力を作用させることができる。従って、磁石91を昇降駆動モータ95によって昇降させることで、インクシリンダ11内の撹拌片80を磁石91に吸引させて磁石91と共に移動(昇降)させることができる。これにより、撹拌片80がインクシリンダ11内で昇降することで、インクシリンダ11内のインクを撹拌させることができる。
【0077】
ユニットベース100は、図2図3及び図8等に示すように、床面等に載置され上下方向へ延びた箱状の本体101と、本体101の前面上部から前面に対して直角方向へ延びた板状の支持棚102と、支持棚102の前端に開口しインク貯留部材10の保持部13を挿入可能な挿入口103と、挿入口103内に突出し挿入口103外へ弾性変形可能とされた板状の弾性片104と、を備えている。
【0078】
ユニットベース100の支持棚102は、着色ユニット1の左右方向へ延びている。また、挿入口103は、左右方向へ複数(本例では10個)列設されている。また、支持棚102の上面には、撹拌駆動機構90が取付けられている。
【0079】
弾性片104は、挿入口103内へインク貯留部材10の保持部13が挿入されることで、挿入口103外へ弾性変形すると共に、保持部13に対して弾性力を作用させて保持部13が挿入口103から容易に抜けるのを防止することができる。これにより、ユニットベース100は、挿入口103と弾性片104とによってインク貯留部材10を着脱可能に保持することができる(図8を参照)。
【0080】
また、ユニットベース100は、本体101における支持棚102の下側に取付けられると共に、内部にインク送給機構20が取付けられ、上側が開放された箱状の送給機構取付部材105を備えている。送給機構取付部材105は、図示は省略するが、平面視の大きさが支持棚102と略同じ大きさとされ、図3に示すように側面視では上下方向へ延びている。送給機構取付部材105は、前壁部105aの内側で上下方向の略中央の位置にインク送給機構20のスライダガイド部材23が取付けられていると共に、後壁部105bの内側でスライダガイド部材23の下端よりも下側の位置に送給モータ25が取付けられている。また、送給機構取付部材105は、前壁部105aにおけるスライダガイド部材23が取付けられた位置よりも上側に形成され、インク送給機構20の当接部材21が通過可能な上下方向へ延びたスリット106を備えている。
【0081】
更に、ユニットベース100は、本体101の上面に固定され着色装置30におけるベースプレート31の長辺の長さの約半分の高さで左右方向へ延びた保持ブロック107を備えている。保持ブロック107は、前後方向の幅が着色装置30におけるベースプレート31の短辺よりも狭く左右方向へ略全長に渡って延び、上下に貫通した開口107aを備えている。また、保持ブロック107は、開口107a内における前後方向に対向した内面に、ベースプレート31の厚さと略同じ幅で上下方向へ延びた保持溝107bを夫々備えている。互いに対向した保持溝107bの底面同士の間隔は、ベースプレート31の短辺の長さよりも若干広い間隔に形成されている。これにより、互いに対向した保持溝107bにベースプレート31の長辺側を挿入することで、ベースプレート31の面が左右方向へ向いた状態に保持することができる。また、保持溝107bは、図2に示すように、左右方向へ一定間隔に複数(本例では13組)備えられており、複数の着色装置30を保持することができる。
【0082】
更に、保持ブロック107は、着色装置30のベースプレート31の長辺に形成された二つの切欠部31bが挿通孔31aよりも下側に位置した状態でベースプレート31を保持溝107bに保持させた時に、切欠部31bと同じ高さで保持ブロック107の前側から開口107aへ向って貫通した二つの固定孔107cを備えている。これら固定孔107cは、内周面に雌ネジが形成されている。これにより、保持ブロック107の前側から固定孔107cにボルト108を螺合させて、ボルト108の先端をベースプレート31の切欠部31bの底部に当接させることで、ベースプレート31を後方へ押し付けることができると共に、ベースプレート31が上方へ移動するのを阻止することができる。また、複数の着色装置30を、ベースプレート31における付着機構40や着色移動機構50が配置された面が正面視右方向へ向いた状態で、確実に固定することができる。
【0083】
なお、本体101は、上面における保持ブロック107によって着色装置30が保持される位置と対応した位置に、上下へ貫通した開口101aを備えている(図3を参照)。この開口101aを通して、保持ブロック87に保持された着色装置30のラック部材53が、本体101の上面よりも下方へ延出することができる。
【0084】
また、ユニットベース100は、本体101内に取付けられ着色駆動機構60が取付けられる取付ブラケット109を備えている。この取付ブラケット109により、保持ブロック107によって着色装置30が保持される位置と対応した位置に、複数の着色駆動機構60を取付けることができる。
【0085】
ユニットカバー110は、ユニットベース100に保持されたインク貯留部材10及び着色装置30を覆い、板材によって箱状に形成されたカバー本体111と、カバー本体111の上面及び前面にかけて貫通した開口部112と、開口部112を閉鎖しカバー本体111に開閉可能に取付けられた開閉扉113と、開閉扉113に取付けられた取っ手114とを備えている。このユニットカバー110は、開閉扉113によってカバー本体111の開口部112を閉鎖することで、ユニットベース100に保持されたインク貯留部材10や着色装置30等に対して外部から光が照射されるのを防止することができる。
【0086】
電線案内部材120は、図2に示すように、電線Dが通過可能な案内孔120aを有し、全体が細長い円筒状に形成されている。この電線案内部材120は、ユニットカバー110におけるカバー本体111の左右両側面に、夫々取付けられている。また、二つの電線案内部材120は、ユニットベース100の保持ブロック107に保持されたベースプレート31の挿通孔31aの中心軸に対して、案内孔120aの中心軸が同軸上となる位置に、夫々取付けられている。これら電線案内部材120によって、ユニットカバー110内で電線Dを真っ直ぐに案内することができる。
【0087】
次に、着色ユニット1の作用について説明する。まず、インク供給機構20の当接部材21を送給モータ25によって最も下降した状態とすると共に、着色駆動機構60の駆動ロッド61を最も下降した状態とする。また、ユニットカバー110の開閉扉113を開けた状態とする。そして、ユニットカバー110の開口部112から着色装置30をユニットカバー110内へ進入させ、ユニットベース100の保持ブロック107に着色装置30を保持させる。本実施形態では、10個の着色装置30を保持ブロック107に保持させる。なお、保持ブロック107における最も右側(電線Dの下流側)の保持溝107bには、ベースプレート31にインク硬化装置70のみを取付けた専用インク硬化ユニット75を保持させる。これにより、各ベースプレート31の挿通孔31aが、電線案内部材120の案内孔120aと同軸上に位置する。なお、本実施形態では、最も左側の着色装置30には、インク硬化装置70が取付けられていない。
【0088】
続いて、電線供給ユニット3から繰り出した被覆材が白色の電線Dの先端を、図2における左側の電線案内部材120に対して外側から案内孔120aへ挿入してユニットカバー110内へ進入させる。そして、電線Dの先端を、ユニットベース100に保持された各ベースプレート31の挿通孔31aに右方向へ順次挿通させて、反対側の電線案内部材120の案内孔120aを通してユニットカバー110の外部へ延出させる。ユニットカバー110から外部へ延出させた電線Dの先端を、電線加工ユニット4の電線保持ローラに挟持させた上で、電線送りモータにより電線保持ローラを回転させて電線Dをピンと張った状態にする。
【0089】
一方、ユニットベース100の保持ブロック107に保持させた着色装置30の数と同じ数のインク貯留部材10に、インクシリンダ11内に撹拌片80を収容した上で、夫々異なる色のインクを貯留させる。そして、各インク貯留部材10の注出口11aを上方へ向けた状態で、インク貯留部材10の保持部13をユニットベース100における支持棚102の前面に開口した挿入口103へ挿入して、ユニットベース100に各インク貯留部材10を保持させる。また、各インク貯留部材10の上端から延出した送給管14の先端を、後側に保持された着色装置30のインク受部32に接続する。その後、ユニットカバー110の開閉扉113を閉めて、開口部112を閉鎖する。これにより、ユニットカバー110内部が暗室となり、ユニットカバー110内の複数のインク貯留部材10及び複数の着色装置30に、外部から光(紫外線)が照射されるのを防止して、外部からの光によってインクが硬化するのを防止することができる。
【0090】
続いて、インク送給機構20の送給モータ25を回転させて当接部材21を上昇させ、当接部材21の上面をユニットベース100保持された各インク貯留部材10のロッド12aの下端に当接させる。そして、送給モータ25によって当接部材21を更に上昇させると、当接部材21によってピストン12が上方へ押され、インク貯留部材10に貯留されたインクが注出口11aから送給管14を通って着色装置30のインク受部32へ送給される。インク受部32に送給されたインクは、流通管34を流通してインク受渡部材33へ供給されて多孔質のインク受渡部材33に含浸した状態となる。
【0091】
着色装置30は、当初の状態では、付着機構40が退避位置に位置しており、付着機構40におけるインク収容凹部42の開口部42aから突出した着色可動部材43の先端が、インク受渡部材33に当接している。そして、開口部42aと着色可動部材43との間に隙間が形成されているため、その隙間による毛細管現象によって、インク受渡部材33に含浸されたインクがインク収容凹部42内へ吸い込まれ、インク収容凹部42内がインクで満たされた状態となる。換言すると、インク収容凹部42に、注出口11aから注出されたインクが収容された状態となる。これにより、着色ユニット1は、電線Dに対して着色可能な状態となる。なお、退避位置では、付着機構40における膨出部41aの先端もインク受渡部材33に当接するため、膨出部41aの先端に形成された凹凸部41b内にインクが収容されて膨出部41aの先端にもインクが付着した状態となる。
【0092】
そして、着色駆動機構60の駆動ロッド61を上昇させると、着色装置30における片方のラック部材53の被駆動部53cが上方へ押され、片方のラック部材53が上昇すると共に、各ラック部材53のラックギア53a及び伝達ギア54によって他方のラック部材53が下降する。これにより、一対のラック部材53に取付けられた付着機構40が、退避位置から電線Dに当接する着色位置へ互いに接近する方向に移動する。
【0093】
なお、付着機構40がインク受渡部材33から離れると、インク収容凹部42の開口部42aが露呈した状態となるが、開口部42aと着色可動部材43との間の隙間のインクに作用する表面張力により、開口部42aからインクが漏出するのが阻止され、インク収容凹部42からインクが漏れることなく移動する。そして、付着機構40における着色可動部材43の先端が電線Dに当接すると、着色可動部材43が弾性部43dの付勢力に抗してインク収容凹部42内へ没入する。この着色可動部材43の没入により、インク収容凹部42内に収容されたインクが開口部42aとの隙間から外部へ押出され、電線Dの表面にインクが付着する。
【0094】
更に詳しく説明すると、着色位置へ移動する一対の着色機構40は、互いに反した方向から接線方向へ電線Dに対して当接するため、一対の着色機構4における着色可動部材43の先端が突出した膨出部41aの先端によって、電線Dが挟持される。この膨出部41aの先端には凹凸部41bが備えられているため、凹凸部41bの抵抗によって電線Dがその中心軸を中心として回転する。これにより、着色機構40における膨出部41aの先端が、電線Dの周方向全体に亘って当接することとなり、膨出部41aの先端の幅で電線Dの全周にインクを付着させることができる。
【0095】
そして、電線Dにインクを付着させたら、着色駆動機構60の駆動ロッド61を下降させることで、復帰バネ56の付勢力によって一対のラック部材53に取付けられた各付着機構40が、着色位置から退避位置へ移動する。
【0096】
その後、電線加工ユニット4の電線送りモータにより電線保持ローラを回転させて、電線Dを右方向へ移動させ、インクを着色した部位を、平面視右側に保持されたベースプレート31に取付けられたインク硬化装置70の挿通孔71a内に位置させて停止させる。そして、インク硬化装置70の紫外線LEDを発光させて電線Dに付着させたインクを硬化させる。これにより、電線Dへの着色が完了する。
【0097】
本実施形態では、ユニットベース100に保持された10個の着色装置30は、一方側から、黒、茶、赤、橙、黄、緑、青、紫、灰、白、を着色することができる。従って、所望の色を着色する着色装置30に対応した着色駆動機構60を駆動させることで、電線Dに所望の色で着色することができる。また、電線加工ユニット4における電線送りモータを適宜制御することで、電線Dの長手方向に対して、所望の位置に着色することができる。これにより、一つの電線Dに対して、単一の色を着色することができるだけでなく、複数の色を位置が異なる状態で着色したり、着色する位置の数や着色する位置の間隔等を異ならせてバーコードのように着色したりすることができる。
【0098】
なお、白を着色する着色装置30は、インク貯留部材10から黒色のインクが供給されると共に、付着機構40におけるインク収容凹部42内に収容される着色可動部材43を省略した構成としている。従って、着色機構40におけるインク収容凹部42の開口部42aの両側に位置した膨出部41aの先端のみが電線Dに当接するため、インク受渡部材33によって膨出部41aの先端に付着したインクにより、電線Dに開口部42aの幅だけ離間した一対の線を付着させることができる。これにより、一対の線の間に現れた電線Dの白色の被覆材によって、白色を着色したこととしている。
【0099】
ところで、着色ユニット1は、着色装置30において電線Dにインクを着色させることで、着色装置30内のインクが減少するため、着色回数に応じて対応するインク送給装置20の送給モータ25を駆動して当接部材21によってインク貯留部材10のピストン12を所定量上昇させて、インク貯留部材10からインクを着色装置30へ送給する。その後、インク貯留部材10のピストン12がインクシリンダ11内での上方への移動端に到達すると、送給モータ25によって当接部材21を上昇させようとしても、ピストン12がストッパとなって当接部材21が上昇できず、送給モータ25に係る負荷が高くなる。そして、着色ユニット1では、送給モータ25に係る負荷を検知することによって、ピストン12が動かなくなったこと、つまり、インク貯留部材10内のインクがなくなったことを検知し、その旨を作業者に知らせてインク(インク貯留部材10)の交換を促す。
【0100】
また、着色ユニット1は、撹拌駆動機構90における昇降駆動モータ95を、定期的に正転・逆転を繰り返させて磁石91を往復昇降させる。これにより、磁石91の磁力により吸引されたインクシリンダ11内の撹拌片80が昇降し、撹拌片80によってインクシリンダ11内のインクを撹拌させる。
【0101】
本実施形態のワイヤーハーネス製造システム2は、電線供給ユニット3、着色ユニット1、及び電線加工ユニット4によって、製造するワイヤーハーネスWの形態に対応した、両端の着色パターンが同じで、夫々異なる着色パターンで着色された所定長さの複数の電線Dを作製することができる。これら作製された複数の電線Dは、製造するワイヤーハーネスWの形態に対応している。そして、作製した複数の電線Dに対して、コネクタ供給装置5によって製造するワイヤーハーネスWに対応したコネクタCを作業者へ供給し、作業者が、各電線Dを、コネクタCにおける着色パターンに対応した位置に接続することでワイヤーハーネスWを製造することができる。
【0102】
このように、本実施形態の着色ユニット1によれば、着色装置30における付着機構40を移動させて着色可動部材43を電線Dに当接させることでインクを付着させて着色しているため、ノズルから着色材(インク)を噴射して着色する場合と比較して、インクが飛散することがなく、当接させた部位のみにインクを付着させることができ、色むらがなく明瞭に着色することができる。また、インクが飛散しないため、着色装置30を含む着色ユニット1がインクで汚れることがなく、長期に亘って着色装置30等を良好な状態に維持させることができ、清掃等のメンテナンスに係る手間を低減させて生産性を高めることができる。
【0103】
また、インク貯留部材10をユニットベース100に対して着脱可能に保持させているため、予めインクを貯留させたインク貯留部材10を用意することで、インクがなくなった時に、インク貯留部材10を交換するだけで良く、着色ユニット1の稼動停止時間を可及的に短くして生産性を高めることができる。なお、着色装置30では、インク受渡部材33やインク収容凹部42に所定量のインクが収容されており、インク貯留部材10内のインクがなくなっても暫くは着色することができるため、その間にインク貯留部材10を新しいものと交換することで、着色ユニット1を停止させることなく連続して稼動させることができ、生産性を高めることができる。
【0104】
更に、インク貯留部材10をユニットベース100に対して着脱可能に保持させているため、インクが飛び散る可能性のあるインク貯留部材10へのインクの充填作業を、着色ユニット1とは別の場所で行うことができる。従って、インクの充填作業によって着色ユニット1や電線Dが汚れるのを回避させることができるため、着色ユニット1等の清掃等のメンテナンスに係る手間を低減させて生産性を高めることができる。
【0105】
また、ユニットベース100によってインク貯留部材10を、注出口11aの下側にピストン12が位置する状態で保持させ、インク送給機構20によってピストン12を上方へ移動させて注出口11aからインクを注出させているため、インク送給機構20によってピストン12を上方へ移動させた時のみインクシリンダ11内のインクに圧力を作用させることができる。従って、インク貯留部材10からインクが着色装置30側へ必要以上に供給されるのを防止することができ、着色装置30内でインク漏れが発生して電線Dや着色装置30等が汚れてしまうのを防止することができる。
【0106】
また、インク送給機構20によってピストン12の移動を適宜制御することで、インクシリンダ11内に貯留されたインクの量に関らず、一定の圧力で必要な量のインクを着色装置30へ供給することができるため、電線Dにインクが付着しすぎたり付着が足りなかったりするのを防止することができ、電線Dに対して色むらがなく明瞭な良好な状態に着色することができる。
【0107】
更に、撹拌駆動機構90によって撹拌片80をインクシリンダ11内で移動させてインクを撹拌することができるで、インクに含まれた染料や顔料、溶媒、その他の添加剤等が、分離したり沈殿したりするのを防止することができる。従って、インクを良好な状態に維持することができるため、インクの色が変わるのを防止したり、インクが硬化不良を起こするのを防止したりすることができ、電線Dに対して確実に着色することができる。
【0108】
また、着色装置30にインク硬化装置70を取付けているため、電線Dにインクを付着させる位置と、付着させたインクを硬化させる位置とを可及的に接近させることができ、未硬化のインクが付着した電線Dが大きく移動するのを回避させることができる。従って、電線Dから未硬化のインクが飛び散ったり、電線Dにおけるインクを付着させた部位が他の部材に当接したりするのを可及的に抑制することができ、電線Dに対して綺麗に着色することができると共に、着色ユニット1等が汚れるのを防止してメンテナンスに係る手間を簡略化することができ、生産性を高めることができる。
【0109】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0110】
例えば、上記の実施形態では、撹拌駆動機構90として、磁石91を昇降させることで撹拌片80を移動させるものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、インクシリンダ11の上下両端付近に電磁石を配置し、それら電磁石に対して交互に通電させることで、撹拌片80を上下に移動させても良い。
【符号の説明】
【0112】
1 着色ユニット
10 インク貯留部材
11 インクシリンダ
11a 注出口
12 ピストン
20 インク送給機構
30 着色装置
31 ベースプレート
31a 挿通孔
33 インク受渡部材
40 付着機構
41 本体部材
42 インク収容凹部
42a 開口部
43 着色可動部材
50 着色移動機構
60 着色駆動機構
70 インク硬化装置
72 紫外線LED
80 撹拌片
90 撹拌駆動機構
100 ユニットベース
110 ユニットカバー
120 電線案内部材
D 電線
W ワイヤーハーネス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】国際公開第2004/049354号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8