(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先ず、
図16を参照して、本発明に係る先頭衝撃吸収構造が衝撃軽減を図っている、鉄道車両のオフセット正面衝突について説明する。
図16に、先頭の鉄道車両Vc(以降、「車両Vc」)の先頭部(以降、「先頭車両先頭部Vcf」)を横から見た内部の様子を模式的に示す。本発明においては、先頭車両先頭部Vcfは、車両Vcにおいて運客仕切部Pによって、客室(不図示)と仕切られた運転士室を対象としている。
【0007】
図17に、車両Vcの台枠Fuc(
図16)の一部を示す。
図17における左側が、車両Vcの長手方向Dlにおける前方である。
図17における上側が車両Vcの車両幅方向Dwにおける右側であり、下側が車両幅方向Dwにおける左側である。台枠Fucは、車両長手方向Dlに延在する縦梁と車両幅方向Dwに延在する横梁とを有し、平面視した状態で概ね左右対称の形状を有する。
【0008】
台枠Fucは、それぞれ1本の側梁204R及び204L(必要に応じて側梁204と総称する)と、それぞれ1本の中梁206R及び206L(必要に応じて中梁206と総称する)と、それぞれ1本の端梁202R及び202L(必要に応じて端梁202と総称する)と、1本の枕梁210と、それぞれ3本の横梁208R(横梁208aR、横梁208bR、及び横梁208cR)及び208L(横梁208aL、横梁208bL、及び横梁208cL)とを含む。必要に応じて、横梁208R及び横梁208Lを横梁208と総称する。
【0009】
側梁204R及び204Lはそれぞれ、台枠Fucの車両幅方向Dwにおける端部に位置し、車両長手方向Dlに延在する。中梁206R及び206Lは、車両幅方向Dwにおいて側梁204Rと204Lとの間に位置し、車両長手方向Dlに延在する。
【0010】
端梁202R及び202Lは、台枠Fucの車両長手方向Dlにおける前方の端部に位置し、車両幅方向Dwに延在する。端梁202Rの一端は側梁204Rの前方端部に接続されており、他端は中梁206Rの前方端部に接続されている。同様に、端梁202Lの一端は側梁204Lの前方端部に接続されており、他端は中梁206Lの前方端部に接続されている。端梁202Rの中梁206R側の端部の上面部には、車両Vcの貫通路柱の下端部の下面部が固定されている。同様に、端梁202Lの中梁206L側の端部には、貫通路柱の下端が固定されている。なお、端梁202と側梁204とは一体に構成されていてもよい。
【0011】
横梁208は、車両長手方向Dlにおいて端梁202の後方に配置されている。横梁208はそれぞれ車両幅方向Dwに延在すると共に、車両長手方向Dlに所定の間隔で配置されている。横梁208は、側梁204と中梁206とを接続する。台枠Fucにおいて端梁202と枕梁210との間で、側梁204Rと中梁206Rとは、3個の横梁208R(横梁208aR、横梁208bR、及び横梁208cR)により互いに接続されている。同様に、側梁204Lと中梁206Lとは、3個の横梁208L(横梁208aL、横梁208bL、及び横梁208cL)により互いに接続されている。
【0012】
中梁206Rと中梁206Lとは、所定数n個の横梁212により互いに接続されている(
図17、
図19)。横梁212はそれぞれ、車両幅方向Dwに延在する。各横梁212の車両幅方向Dwにおける両端はそれぞれ、横梁208R及び208Lの車両幅方向Dwにおける端部に対向している。
【0013】
図18に、車両長手方向Dl(
図17)における後方に位置する2つの横梁212と、車輪Whとの位置関係を示す。
【0014】
オフセット正面衝突とは、
図16に示すように、車両Vcの台枠Fucより上の先頭車両先頭部Vcfに、トラック等の障害物Ocが正面衝突することをいう。オフセット正面衝突の場合、障害物Ocが、車両Vcの前面Wfに衝突すると衝撃力Fiが発生する。
図20に、車両Vcにおける、衝撃力Fiに対する反力Frを縦軸に、経過時間tを横軸にとり、
図16と共に、オフセット正面衝突時の先頭車両先頭部Vcfの状態について説明する。
【0015】
時刻t0に、障害物Ocが車両Vcにオフセット正面衝突すると、次の瞬間である時刻t1において反力Frは最大Fr1になる。この時点で、衝撃力Fiによる先頭車両先頭部Vcf(壁、天井、前面Wf)の変形や崩壊が開始する。変形や崩壊された前面Wfを被破壊前面Wfbと呼ぶ。変形や崩壊は時刻t2迄継続する。この間、
図16で二点鎖線で示すように、衝撃力Fiは減衰しつつ、側壁や天井を破壊しながら被破壊前面Wfbを客室に向かって押し下げていく。そして、時刻t2で、被破壊前面Wfbは運客仕切部Pに受け止められる。この時刻t1から時刻t2迄の期間を、衝突による「崩壊・変形期間Pd」と呼ぶ。
【0016】
崩壊・変形期間Pdにおいて、被破壊前面Wfbの移動によって、被破壊前面Wfbと運転士Oとの間にある運転台Doなどの機材を運転士Oに衝撃的に押し当てたり、運転士Oを運客仕切部Pに押しつけたりして死傷させてしまう可能性がある。このように、崩壊・変形期間Pdで衝撃力Fiのエネルギーのかなりの部分が消費・吸収され、残った衝撃エネルギーは、運客仕切部Pや側壁や天井及び台枠などの車両Vcの構体を経て伝播・吸収される。つまり、台枠より上でのオフセット正面衝突に関しては、崩壊・変形期間Pdでエネルギーを十分に減少させることがポイントである。これは、
図20において、崩壊・変形期間Pdでの反力Frの積分値を大きくすることを意味する。
【0017】
上述のような、オフセット正面衝突において、特許文献1に開示の衝撃吸収装置は、床(台枠)下に設置されて、台枠の下でのオフセット正面衝突エネルギーは吸収できる。しかし、台枠の上でのオフセット正面衝突エネルギーは吸収できない。特許文献2は鉄道車両用衝撃吸収台枠構造を開示しており、オフセット正面衝突エネルギー吸収に不適であることは言うまでも無い。つまり、特許文献1及び特許文献2のいずれの開示においても、上述の崩壊・変形期間Pdでのエネルギーを十分に減少できないことは明らかである。
【0018】
一方、特許文献3に開示の骨部材17(
図15)は車両のクラッシャブルゾーン11に設けられており、本発明と同様に、台枠より上でのオフセット正面衝突を対象としている。しかしながら、衝撃吸収部材である骨部材17はU字状断面の開口部を外板18と反対側に向けた状態で、車両Vcの進行方向(オフセット正面衝突の衝撃力Fiの伝播方向)に離間する2つの強度部材15、16との間に設けられている。つまり、先頭車両先頭部に加えられた衝撃力は、強度部材15を介して、骨部材17に対して垂直に伝えられる。この衝撃力により、骨部材17が切り欠き21で内部に向かって折れることにより衝撃エネルギーの吸収を図っている。
【0019】
しかしながら、骨部材17は、U字状断面という立体構造で、衝撃力Fiの伝播方向に一部材で延在しているため、本来は延在方向に加えられる力に抗する能力が高く、エネルギー吸収の観点からは不利である。そのために、開口部に切り欠き21を設けて、衝撃力Fiが加わった時に、切り欠き21から折れやすくしている。そのために、一本の骨部材17は切り欠き21で急激に折れる。つまり、骨部材17の全長(強度部材15、16の間)で一度だけ折れる。言い換えれば、骨部材17は一度折れたらそれ以上、衝撃エネルギーを吸収できない。
【0020】
これは、骨部材17は、クラッシャブルゾーン11で衝撃エネルギーを瞬間的に一度だけ吸収すると、後は衝撃エネルギーを吸収できない。つまり、クラッシャブルゾーン11は急激に変形・破壊することを意味する。つまり、クラッシャブルゾーン11は、連続的にではなく断続的に変形・破壊する。そのため、衝撃もなめらかに吸収できずに、ショックと共に断続的に吸収するので、乗員への衝撃を抑えることができない。
【0021】
なお、1本の骨部材17に切り欠き21を複数設けることにより、骨部材17を多段に折ることが考えられる。しかし、骨部材17は立体的(U字状断面)構造のために、複数の切り欠き21を有しても、1つの切り欠き21で折れれば、その部分の変形が進行して、残りの切り欠き21が折れたとしても、エネルギー吸収に対する寄与は小さい。
【0022】
また、車両Vcの台枠上の高さ方向に、数本(
図15(b)の例では5本)の骨部材17が離間して設けられている。つまり、クラッシャブルゾーン11のスペースの一部のみが衝撃力Fiの吸収に利用されているに過ぎない。なお、車両Vcにオフセット正面衝突した障害物Ocは、強度部材15によって受け止められて、衝撃力Fiは離間した数本の骨部材17に分散して伝えられるようにみえる。しかしながら、強度部材15は剛体ではないので、やはり障害物Ocが実際に当たっている部分に近い骨部材17に、衝撃力Fiは集中して伝えられる。
【0023】
そのため、数本の骨部材17の内の一本が折れても残りの骨部材17は折れないことがある。この場合、折れた骨部材17の周囲部分が極度に破壊されるが他の部分は破壊されない。つまり、数本の骨部材17の全てを衝撃エネルギー吸収に使用できない。これは、骨部材17を離間させないで、互いに隣接させてクラッシャブルゾーン11の全域に配しても、全ての骨部材17を有効的に使用できないことを意味している。つまり、クラッシャブルゾーン11で吸収できる衝撃力は極めて低いことを意味している。
【0024】
よって、上述の問題に鑑みて、本発明は、障害物が鉄道車両の台枠より上部でオフセット正面衝突した時の衝突エネルギーを吸収する鉄道車両の先頭衝撃吸収構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題を解決する為に、本発明は、鉄道車両の乗務員室部分が台枠より上の部分で障害物とオフセット正面衝突した時の衝撃を吸収する先頭衝撃吸収構造であって、
前記台枠は、車両幅方向に延在する端梁を有し、前記台枠には、貫通路柱の端部が挿入される収容部が形成され
、前記貫通路柱の端部は前方側が前記収容部に対向し固定されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、障害物が鉄道車両の台枠より上部でオフセット正面衝突したときの衝突エネルギーを効率良くかつなめらかに吸収できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。先ず、
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、及び
図11を参照して、本発明の実施の形態に係る先頭衝撃吸収構造について説明する。
図1は、本発明の先頭衝撃吸収構造が組み込まれた鉄道車両Vp(以降、「車両Vp」)の先頭部である乗務員室部分Vpf(
図3)の構体を正面から見た状態を示す。
図2は、
図1の乗務員室部分Vpfの構体を上からみた状態を示す。同図において、左半分はアーチ桁139及びアーチ桁140で支えられている屋根の外板102(以降、「屋根外板102」)で覆われている状態を表し、右半分は屋根外板102が無い状態を表している。
図3は、
図1において、運転士側の乗務員室部分Vpfの側面を見た状態を示している。
図4は、
図3において、直線IV−IVで乗務員室部分Vpfの構体を切った断面を示す。
図5は、
図1において、直線V−Vで切ったアーチ桁139及びアーチ桁140と、カモイ114との間の部分、つまり
図2の右衝撃吸収部材175Rの部分を右から見た状態を示す。
図6〜
図11は、車両Vpの台枠Fuの構造を示す。
【0029】
図1に示すように、車両Vp(乗務員室部分Vpf)の前面中央には、天井より高い位置から台枠Fuの中まで貫通して延在するH字状に構成された貫通路柱Ptが配設されている。貫通路柱Ptは、同図において向かって右側(車両Vpの内部から見て左側)に示す左貫通路柱ユニットULと、左側(車両Vpの内部から見て右側)に示す右貫通路柱ユニットURと、カモイ114とを含む。なお、車両Vpの正面から見て、左貫通路柱ユニットULより右側が運転士側であり、右貫通路柱ユニットURより左側が助士側である。左右の側壁の外板101(以降、「側外板101」)の内側にはそれぞれ、複数の補強板134L及び134Rが設けられている。
【0030】
図2に示すように、左貫通路柱ユニットULは、車両Vpの長手(進行)方向Dlに関して、前方(車両Vpの正面)に位置する左前方ユニット112Lと後方に位置する左後方ユニット113Lとで、内側と外側のそれぞれに段差を有する(
図2)ように一体的に構成されている。同様に、右貫通路柱ユニットURは、前方に位置する右前方ユニット112Rと後方に位置する右後方ユニット113Rとで、内側と外側のそれぞれに段差を有するように一体的に構成されている。この内側の段差に、カモイ114の両端が当接して、右貫通路柱ユニットURと左貫通路柱ユニットULは一体的に連結(
図1参照)されている。さらに、外側の段差に、脇骨124Lと124Rの端部がそれぞれ当接して、側外板101に連結(
図1参照)されている。
【0031】
左貫通路柱ユニットUL及び右貫通路柱ユニットURは、車両長手方向Dlに運客仕切部Pに向かって延在している。左貫通路柱ユニットUL及び右貫通路柱ユニットURのこの延在端部と運客仕切部Pとの間に、それぞれ左衝撃吸収部材175L及び右衝撃吸収部材175Rが連結されている。なお、前述の複数(本例では、それぞれ4枚)の補強板134L及び補強板134Rが、側外板101の正面からアーチ桁139までの領域に設けられている。
【0032】
図3に示すように、乗務員室部分Vpfの左側壁には、車両の先頭正面からアーチ桁139までの領域には補強板134Lが設けられ、アーチ桁139からアーチ桁140までの領域には、出入口Dが開口されている。
図4に示すように、複数(本例では、4枚)の補強板134Lが、側外板101に対して、ほぼ垂直(車両幅方向Dwと平行)に突出して、車両高さ方向Dv方向に延在している。結果、隣接する補強板134Lと側外板101によって、台枠から天井にかけて延在するコの字状の空間Svが形成される。この空間Svは、配管や配線などの収容に利用できる。
【0033】
図3に戻って、出入口Dの上部を、左衝撃吸収部材175Lがカモイ114と運客仕切部Pとに連結されているのが見て取れる。なお、乗務員室部分Vpfの右側壁にも同様に、補強板134Rが側外板101に対してほぼ垂直(車両幅方向Dwと平行)に突出して、車両高さ方向Dv方向に延在している。そして、隣接する補強板134Rと側外板101によって、台枠から天井にかけて延在するコの字状の空間Svが形成される。この空間Svは、配管や配線などの収容に利用できる。そして、出入口Dの上部を、右衝撃吸収部材175Rがカモイ114の後端部と運客仕切部Pとに連結されている。
【0034】
図5を参照して、右衝撃吸収部材175Rの構成について説明する。本例においては、右衝撃吸収部材175Rは、カモイ114と横梁151とに接続されるものと、横梁151と横梁152とに接続されるものとの二体物として構成されている。この理由を述べると、右衝撃吸収部材175Rが変形或いは崩壊することによって、オフセット正面衝突時の衝撃エネルギーを吸収する。そのためには、衝撃力Fiを受けた時に大きく変形あるいは移動すると引き続き衝撃力Fiを受けることができなくなるので、基本的な位置を保つために2以上の別体物として、それぞれを横梁などのしっかりした反力受で保持している。左衝撃吸収部材175Lについても同様である。なお、右衝撃吸収部材175R及び左衝撃吸収部材175Lは、一体物として構成されてもよいことは言うまでも無い。
【0035】
つまり、衝撃力Fiに対して右衝撃吸収部材175Rが逃げてしまわないようにするために、複数の部材に分割してそれぞれを、衝撃力Fiの伝播進路上に保持している。よって、右衝撃吸収部材175Rの個数は2に限らず適宜決められるものである。なお、左衝撃吸収部材175Lについても同様である。衝撃吸収部材175(右衝撃吸収部材175R及び左衝撃吸収部材175Lを総称)は、通常の荷重に耐える強度を有しながら、衝突荷重に対しては座屈変形しやすい部材である必要がある。衝撃吸収部材175の具体例として、金属製の角型のパイプや、複数個の穴を形成した金属製のチューブ状の部材が挙げられる。衝撃吸収部材175の素材は、アルミニウム合金材や鋼材等である。
【0036】
次に、
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、及び
図11を参照して、車両Vpの台枠Fu(
図1、
図3)について説明する。
図1を参照して述べたように、台枠Fuには貫通路柱Ptの下端が挿入されて保持されている。台枠Fuは、基本的に上述の台枠Fuc(
図17)に複数種類の部材が追加或いは変更された構造を有している。具体的には、
図6に示すように、台枠Fuは車両長手方向Dlに延在する縦梁と車両幅方向Dwに延在する横梁とを有し、平面視した状態で概ね左右対称の形状を有する。台枠Fuは、収容部Cpt(収容部CptR及びCptL)、横梁224、長手梁226、及び側梁補強部材Re204が追加されると共に、横梁208(横梁208R及び208L)及び端梁202(端梁202R及び202L)がそれぞれ、横梁228(横梁228R及び228L)及び端梁222(端梁222R及び222L)に置き換えられている。
【0037】
端梁222R及び222Lの形状は、端梁202R及び202Lの形状(
図17)と若干異なるが、この相違は車両のデザインの相違によるものである。以下に従来の台枠Fucの部材に対応する部材には同じ符号を付して、特に必要で無い限りその説明を省略し、本発明に固有の部材及び特徴について重点的に説明する。
【0038】
横梁228同士の車両長手方向Dlにおける間隔は、横梁208(
図17)同士の車両長手方向Dlにおける間隔より小さい。このことにより、横梁228R(228L)による台枠Fuの剛性補強は、横梁208R(208L)による台枠Fuc(
図17)の剛性補強よりも大きい。
【0039】
台枠Fuにおいて端梁222と枕梁210との間で、側梁204Rと中梁206Rとは、3個の横梁228R(横梁228aR、横梁228bR、及び横梁228cR)により互いに接続されている。同様に、側梁204Lと中梁206Lとは、3個の横梁228L(横梁228aL、横梁228bL、及び横梁228cL)により互いに接続されている。このように、本例においては、それぞれ3本の横梁228R及び228Lが台枠Fuに配設されているが、3本に限定されるものではなく、それぞれ任意の所定数N本の横梁228R及び228Lを設けることができる。所定数Nは、台枠Fuに要求される強度や、車両Vpの車両長手方向Dlの長さに基づいて決定される。
図6に示す例では、N=3である。
【0040】
次に、
図6及び
図7を参照して、貫通路柱Ptの下端が挿入される収容部Cptについて説明する。収容部Cptは、収容部CptRと収容部CptLとを含む。収容部CptR及びCptLは、端梁222Rの中梁206R側の端部と、端梁222Lの中梁206L側の端部とにそれぞれ形成されている。
図7に示すように、収容部Cpt(CptL)は、端梁222(222L)の上面部から内部に向かって(
図7(b)参照)、貫通路柱Ptの下端部の外形状に相当する形状(
図7(a)参照)に部分的に切り欠かれて形成される凹部である。この凹部に貫通路柱Ptの下端部が挿入されて、貫通路柱Ptが台枠Fuの端梁222に保持される。この意味において、以下、収容部Cptを切欠Cptと呼ぶ。
【0041】
切欠CptLには貫通路柱Ptの下端が挿入される。同様に、切欠CptRにも貫通路柱Ptの下端部が挿入される。この状態で、貫通路柱Ptが台枠Fuに固定且つ保持される。収容部Cptは貫通穴であってもよく、また端梁222を部分的に折り曲げることにより形成してもよい。そして、貫通路柱Ptの下端は台枠Fuを貫通していてもよい。
【0042】
次に
図6及び
図8を参照して、横梁224について説明する。横梁224は、それぞれ1本の横梁224Rと横梁224Lとを含む。横梁224Rは、端梁222Rと最前方に位置する横梁228R(横梁228aR)との間に配置されて、車両幅方向Dwに延在する。なお、横梁224Rの中梁206Rに対する位置は、従来の台枠Fucにおいて、先頭側の横梁208aRの中梁206Rに対する位置と同じである。つまり、台枠Fucにおける3本の横梁208Rが配されている領域と同等の領域に、1本の横梁224Rと3本の横梁228Rが配されている。同様に、横梁224Lは、端梁222Lと最前方に位置する横梁228L(横梁228aL)との間に配置されて、車両幅方向Dwに延在する。つまり、台枠Fuにおいては、台枠Fucに比べてより多くの横梁224及び228によって強度補強されている。
【0043】
図8に示すように、横梁224の断面は、直角四辺形の1辺が除去された3辺からなる所謂コ字状(C字状)である。横梁224は、互いに対向する横梁水平部224u及び224bと、横梁水平部224uと横梁水平部224bとを接続する横梁鉛直部224vとを含む。
図6及び
図8から見てとれるように、横梁224は、横梁鉛直部224vが端梁222に対向するように配置されている。横梁水平部224u及び224b間に形成される開放部は、最前方に位置する断面コ字状の横梁228の開放部に対向する(
図6(b)参照)。
【0044】
横梁224の幅w224(横梁水平部224uの車両長手方向Dlにおける長さ)は、横梁228の幅(車両長手方向Dlにおける長さ)より大きい。図示例では、横梁224の幅w224は、横梁228の幅の約2倍である。また、横梁224の厚さt224は、横梁228の厚さより大きい。図示例では、横梁224の厚さt224は、横梁228の厚さの約2倍である。つまり、横梁224の剛性は、横梁228の剛性より大きい。この意味において、以降、横梁224を必要に応じて強化梁と呼ぶ。なお、横梁224の幅w224及び厚さt224は必要に応じて適宜決定することができる。
【0045】
台枠Fuは、車両長手方向Dlにおいて強化梁224(横梁224を含む)から車両後方側に向かって延在する後方領域と、強化梁224(横梁224を含まず)から車両前方側(端梁222)に向かって延在する前方領域とに分類される。つまり、後方領域は横梁224及びN×2本の横梁228によって強度補強されており、強度補強されていない前方領域に比べてより大きな構造強度及び剛性を有している。
【0046】
次に
図6及び
図9を参照して、長手梁226について説明する。長手梁226は、横梁224と枕梁210との間に配置されて、車両長手方向Dlに延在する。長手梁226は、横梁224Rと枕梁210との間に配置される所定数L(Lは自然数)個の長手梁226Rと、横梁224Lと枕梁210との間に配置される所定数L個の長手梁226Lとを含む。図示例では、L=8である。
【0047】
長手梁226Rは、長手梁226aRと、長手梁226bRと、長手梁226cRと、長手梁226dRと、長手梁226eRと、長手梁226gRとを含む。同様に、長手梁226Lは、長手梁226aLと、長手梁226bLと、長手梁226cLと、長手梁226dLと、長手梁226fLと、長手梁226gLとを含む。
【0048】
長手梁226aRは、横梁224Rと横梁228aRとの間に配置されて、横梁224Rと横梁228aRとを接続する。図示例では、長手梁226aRは2個配置されている。同様に、長手梁226aLは、横梁224Lと横梁228aLとの間に配置されて、横梁224Lと横梁228aLとを接続する。図示例では、長手梁226aLは2個配置されている。長手梁226aR及び226aLの断面はコ字状(C字状)である。
【0049】
長手梁226bRは、横梁228aRと横梁228bRとの間に配置されて、横梁228aRと横梁228bRとを接続する。図示例では、長手梁226bRは2個配置されている。同様に、長手梁226bLは、横梁228aLと横梁228bLとの間に配置されて、横梁228aLと横梁228bLとを接続する。図示例では、長手梁226bLは2個配置されている。長手梁226bR及び226bLの断面はコ字状(C字状)である。
【0050】
長手梁226cRは、横梁228bRと横梁228cRとの間に配置されて、横梁228bRと横梁228cRとを接続する。図示例では、長手梁226cRは1個配置されている。同様に、長手梁226cLは、横梁228bLと横梁228cLとの間に配置されて、横梁228bLと横梁228cLとを接続する。図示例では、長手梁226cLは1個配置されている。
図9から読み取れるように、長手梁226cLの断面は、直角四辺形の隣接する2辺が除去された2辺からなる所謂L字状である。
【0051】
長手梁226dRと長手梁226eRとは、横梁228cRと枕梁210との間に配置されて、横梁228cRと枕梁210とを接続する。図示例では、長手梁226dR及び226eRは1個ずつ配置されている。
図9から読み取れるように、長手梁226dR及び226eRの断面はコ字状(C字状)である。同様に、長手梁226dLと長手梁226fLとは、横梁228cLと枕梁210との間に配置されて、横梁228cLと枕梁210とを接続する。図示例では、長手梁226dL及び226fLは1個ずつ配置されている。
【0052】
長手梁226gRは、横梁228bRと横梁228cRとの間に配置されて、横梁228bRと横梁228cRとを接続する。図示例では、長手梁226gRは1個配置されている。同様に、長手梁226gLは、横梁228bLと横梁228cLとの間に配置されて、横梁228bLと横梁228cLとを接続する。図示例では、長手梁226gLは1個配置されている。
図9から読み取れるように、長手梁226gLの断面はL字状である。
【0053】
車両幅方向Dwにおける長手梁226cRと長手梁226gRとの間の距離は、車両幅方向Dwにおける長手梁226aRと長手梁226aRとの間の距離よりも大きい。同様に、車両幅方向Dwにおける長手梁226cLと長手梁226gLとの間の距離は、車両幅方向Dwにおける長手梁226aLと長手梁226aLとの間の距離よりも大きい。つまり、長手梁226cRと長手梁226gRとは、車両Vpの床下に取り付けられる床下機器(不図示)を避けるように配置されている。同様に、長手梁226cLと長手梁226gLとは、床下機器を避けるように配置されている。
【0054】
上述のように、横梁224と横梁228によって強度補強された台枠Fuの後方領域は、長手梁226によってさらに強度補強と共に剛性も向上されている。つまり、後方領域の前方領域に対する構造強度及び剛性の差は拡大されている。
【0055】
次に
図6及び
図11を参照して、側梁補強部材Re204について説明する。側梁補強部材Re204は、側梁補強部材Re204Rと側梁補強部材Re204Lとを含む。側梁補強部材Re204R及びRe204Lは、車両長手方向Dlに延在する。
図11から読み取れるように、断面コ字状(C字状)の側梁204Lの開口部を塞ぐように平板状の側梁補強部材Re204Lが配置されている。同様に、側梁補強部材Re204Rは、断面コ字状(C字状)の側梁204Rの開口部を塞ぐように配置されている。このように、台枠Fuの後方領域は、側梁補強部材Re204によってさらに、強度及び剛性が向上されている。
【0056】
要約すると台枠Fuは、従来の台枠Fucと比較して、主に下記の3つの特徴を有する。第1に、台枠Fuには、貫通路柱Ptが挿入されて固定される収容部(切欠)Cptが設けられている。第2に、台枠Fuは、車両幅方向Dwに延在する強化梁(横梁)224を新たに備えている。第3に、台枠Fuは、車両長手方向Dlに延在する長手梁226と、側梁補強部材Re204とを新たに備えている。
【0057】
上述の構成を有する台枠Fuは、車両長手方向Dlにおける、強化梁224(横梁224を含む)から後方の部分の構造強度が、従来の台枠Fucに比して向上している。台枠Fuにおいて、強化梁224より前方の部分(横梁224を含まず)の構造強度は、従来の台枠Fucと同程度である。つまり台枠Fuには、上述のように、強化梁224を境にして、剛性(構造強度)の異なる2つの領域(後方領域及び前方領域)が形成されている。
【0058】
後方領域は、強化梁である横梁224に接続された複数の縦梁(長手梁226)を含む。そのため、横梁224より後方の部分の剛性は、前方領域の剛性より高い(大きい)。この意味において、以降、台枠Fuにおける横梁224より前方の部分(前方領域)を台枠柔部分VpFr(
図6)と呼び、横梁224より後方の部分(後方領域)を台枠剛部分VpRi(
図6)と呼ぶ。台枠剛部分VpRiは、特に車両長手方向Dlに働く圧縮・引張荷重に対する強度が向上している。
【0059】
車両Vpが障害物にオフセット正面衝突した時の台枠Fuによる衝撃吸収について、
図13を参照して説明する。障害物が車両Vpの貫通路柱Ptに衝突すると、貫通路柱Ptが車両長手方向Dlにおける後方に向かって倒れる。本発明においては、貫通路柱Ptの下端が台枠Fuに設けられた切欠Cptに挿入されて固定されている。よって、オフセット正面衝突時にも、貫通路柱Ptは、切欠Cptに挿入されて固定されている部分を支点として、回転しながら運客仕切部Pに近づき、貫通路柱Ptは従来の前面Wf(
図16参照)のように被破壊前面Wfbとして、運転士Oに向かって平行移動することはない。なお、貫通路柱Ptの回転により、台枠Fuは端梁222から横梁224の手前までまくれ上がる。この時に、衝突エネルギーが吸収される。
【0060】
台枠Fuにおいては、台枠剛部分VpRiの、車両長手方向Dlに働く圧縮・引張荷重に対する構造強度が向上している。そのため、衝突エネルギーの吸収は主に、台枠柔部分VpFrがまくれあがることと、台枠柔部分VpFrに含まれる骨部材が変形することとにより行われる。
【0061】
次に、
図12、
図13、及び
図14を参照して、本発明の実施の形態に係る先頭衝撃吸収構造による、オフセット正面衝突時の衝撃吸収について以下に説明する。
図12に、乗務員室部分Vpfにおける先頭衝撃吸収構造を模式的に示す。同図において、運客仕切部Pより左側が乗務員室部分Vpfであり、右側が客室部分Vppである。本発明に係る先頭衝撃吸収構造は、貫通路柱Ptの端部が台枠Fuの収容部Cptに貫入されている構造(以降、「貫通路柱台枠固定構造Spf」)と、台枠Fuに剛性(構造強度)の異なる2つの領域(台枠柔部分VpFr及び台枠剛部分VpRi)が設けられている構造(以降、「台枠柔−剛構造」)と、複数(本例では、3つ)の衝撃吸収部材175が貫通路柱Ptのカモイ114と運客仕切部Pとの間で保持されている構造(以降「天井部衝撃吸収構造Spc」」)と、複数(本例では、4枚)の補強板134が側外板101に対して垂直に且つ台枠から天井に向かって延在している構造(以降、「側壁衝撃吸収構造Sps」)とを含んでいる。
【0062】
次に、
図13を参照して、
図12に示した乗務員室部分Vpfがオフセット正面衝突した時の貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcとによる衝撃吸収について、ステージS1〜S5の5段階に分けて説明する。
【0063】
ステージS1では、障害物Oc(たとえば、25トントラック)が時速60kmの速度で車両Vpの貫通路柱Ptに衝突する。
【0064】
ステージS2では、貫通路柱Ptが倒れる。本発明においては、貫通路柱台枠固定構造Spfによって、貫通路柱Ptの下端が台枠Fuの収容部Cptに挿入されて固定されているので、貫通路柱Ptは従来の前面Wfのように被破壊前面Wfbとして、運転士Oに向かって平行移動することはない。貫通路柱Ptは、貫通路柱台枠固定構造Spfの部分を支点として、回転しながら運客仕切部Pに近づく。貫通路柱Ptの回転により、台枠Fuは先頭から第2端梁(強化梁224(
図6))までまくれ上がる。この時に、衝突エネルギーが吸収される。これを、衝突エネルギーの一次吸収Aec1と呼ぶ。
【0065】
ステージS3では、貫通路柱Ptが天井部衝撃吸収構造Spcの衝撃吸収部材175ごと、乗務員室部分Vpfの屋根部と側部を押しつぶす。このとき、ステージS2で吸収されなかった衝突エネルギーが衝撃吸収部材175によって吸収(以降、「二次吸収Aec2」)されると共に乗務員室部分Vpfの屋根部と側部によって吸収(以降、「三次吸収Aec3」)される。
【0066】
ステージS4では、貫通路柱Pt(及び、押しつぶされた衝撃吸収部材175)が運客仕切部Pで受け止められて、ステージS3で吸収されなかったエネルギーは、運客仕切部Pから客室部分Vppに伝播される。
【0067】
ステージS5では、崩壊・変形が終息し、伝播されたエネルギーが後方の構造で緩やかに低減される。この状態では障害物と列車の速度はほぼ等しくなっているが、障害物を引きずる抵抗があるために、反力Frは0とならない。
【0068】
図14に、
図20と対比して、ステージS1〜ステージS5までの車両Vpにおけるオフセット正面衝突時の乗務員室部分Vpfの状態について説明する。同図において、二点鎖線Lcは、
図20に示した車両Vcにおける反力Fr−時刻tの関係を示す。実線Lpは本発明の実施の形態に係る貫通路柱台枠固定構造Spf及び天井部衝撃吸収構造Spcを組み込んだ車両Vp(乗務員室部分Vpf)における反力Fr−時刻tの関係を示す。なお、対比のために、崩壊・変形期間Pdの開始時刻t1及び終了時刻t2は同じとして表示しているが、実際にそれぞれ乗務員室部分Vpfや貫通路柱台枠固定構造Spf及び天井部衝撃吸収構造Spcによって異なることは言うまでもない。
【0069】
図14に示すように、本発明に係る先頭衝撃吸収構造を用いることにより、衝撃力のピーク値がFr1からFrpに下がると共に、特にステージS3においては、直線Lpの傾きが、直線Lcの傾きに比して小さくなっているため、効果的にエネルギーが吸収されていることが見て取れる。このように、衝撃力ピークつまり、Frp(Fr1)は時間の短いステージS1にある。エネルギー吸収の効果の観点からは、衝撃力ピークを大きくすることも有効であるが、加速度が増すために乗員が被る損傷が大きくなる傾向がある。また、崩壊時間Pdを長くすることもエネルギー吸収を増大させる。
【0070】
しかしながら、時間に比例した変形量を伴うので、乗員を保護する空間が減少する。これらに基づき、乗員の保護の観点から言えば、クラッシャブルゾーンを設ける構造は、エネルギー吸収要素と許容変形量を組み合わせることで、ステージS3の部分を反力の高い位置で長い時間保持するものである。
【0071】
なお、衝撃吸収部材175や補強板134の個数は図示例に限られず、適宜決定することができる。また図示例において、衝撃吸収部材175は車両幅方向Dwに2個(左衝撃吸収部材175L及び右衝撃吸収部材175R)配置されているが、衝撃吸収部材175の配置はこれに限られず、適宜決定することができる。例えば、衝撃吸収部材175を車両幅方向Dwに3個配置してもよい。また、車両幅方向Dwにおける所定の位置において、複数個の衝撃吸収部材175を、台枠Fuからの高さが異なるように配置してもよい。
【0072】
図13及び
図14を参照して、貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcとの組み合わせにおける衝撃エネルギー吸収について説明した。天井部衝撃吸収構造Spcと側壁衝撃吸収構造Spsは、その構造が異なるため、厳密に言えば、衝撃吸収パターンは天井部衝撃吸収構造Spcとは異なる。
【0073】
つまり、側壁衝撃吸収構造Spsの補強板134は側外板101の内面上に設けられているので、衝突時に外板が側壁衝撃吸収構造Sps(側外板101或いは補強板134)に当たることはない。つまり、障害物Ocが貫通路柱Ptに当たった後に、側壁衝撃吸収構造Spsに当たる。以降の動作は、基本的に貫通路柱Ptと天井部衝撃吸収構造Spcとの動作と同様である。
【0074】
但し、車両長手方向Dlに、複数枚の補強板134が平行に配されているので、障害物Ocによって側外板101が面外変形すると、対応する補強板134は車両長手方向Dl方向に移動して、変形した側外板101と共に次の補強板134に当接する。衝撃の伝播及び吸収と、側外板101の変形とが進行するにつれて、当接する補強板134の枚数が増える。これにより、最初の補強板134に加えられた衝撃力Fiは、補強板134の枚数が増えるごとに吸収されると共に、より分散される。
【0075】
つまり、側壁衝撃吸収構造Spsにおいては、補強板134が側外板101の破断や破壊を抑えることによって、側外板101が変形することにより、衝撃エネルギーを吸収することを促進する、これにより、側壁衝撃吸収構造Spsが設けられている側外板101の面外変形をエネルギー吸収に利用することができる。さらに、衝撃が補強板134ごとに分散されるので、衝撃エネルギーをよりなめらかに低減できる。上述のように、縦骨や横骨の骨材と外板とから成る骨皮構造においては、皮に相当する外板を破断させずに変形させることが、衝突時の車両の衝撃エネルギー吸収の観点から望ましい。
【0076】
また、側壁衝撃吸収構造Spsは、乗務員室部分Vpfの側壁の全幅にではなく、正面からアーチ桁139までの長さを幅とする領域に設けられている。よって、乗務員室部分Vpfがオフセット正面衝突した際にも、乗務員室部分Vpfの側壁の変形は側外板101の面外変形のみに抑えられて、側壁衝撃吸収構造Spsの後端から運客仕切部Pまでの側壁は変形・崩壊を免れる。結果、運客仕切部Pから側壁衝撃吸収構造Spsまでの空間が乗務員のために確保できる。なお、側壁衝撃吸収構造Spsは運客仕切部Pに接続する必要がないので、路面電車など運客仕切部Pを有しない車両にも適用できる。
【0077】
このように、衝撃エネルギーの吸収の仕方は異なるものの、側壁衝撃吸収構造Spsは、基本的には天井部衝撃吸収構造Spcと類似の衝撃吸収性能を有している。よって、本発明においては、貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcとの組み合わせ、貫通路柱台枠固定構造Spfと側壁衝撃吸収構造Spsとの組み合わせ、さらに貫通路柱台枠固定構造Spfと天井部衝撃吸収構造Spcと側壁衝撃吸収構造Spsとの組み合わせによって実施することができる。また、貫通路柱台枠固定構造Spfと台枠柔−剛構造と天井部衝撃吸収構造Spcとの組み合わせ、貫通路柱台枠固定構造Spfと台枠柔−剛構造と側壁衝撃吸収構造Spsとの組み合わせ、さらに貫通路柱台枠固定構造Spfと台枠柔−剛構造と天井部衝撃吸収構造Spcと側壁衝撃吸収構造Spsとの組み合わせによって実施することができる。天井部衝撃吸収構造Spcと側壁衝撃吸収構造Spsを同時に実施すれば、ステージS1〜S5のタイミングは両者で異なり得るもののその衝撃吸収能力は足し算されるので、効果的に貫通路柱台枠固定構造Spfの衝撃的な破壊を防止し、乗務員の安全を図ることができる。