(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例における反りの評価に使用した直方体状箱型成形品の形状を示す図である。
【0013】
[発明の概要]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、
(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂を、(A)及び(B)の合計100質量部基準で、(A)を50〜80質量部、(B)を20〜50質量部含有し、
さらに、(A)及び(B)の合計100質量部に対し、
(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤5〜15質量部、(D)臭素化エポキシ又は臭素化ポリカーボネートから選択される少なくとも1種を含む難燃剤20〜40質量部、(E)五酸化アンチモン1〜15質量部及び(F)ドリップ防止剤0.05〜1質量部を含有することを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の内容について詳細に説明する。
以下に記載する各構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定して解釈されるものではない。なお、本願明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0015】
[(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の主成分である(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下、「PBT樹脂」と略称することもある。)とは、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有する高分子を示す。即ち、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
【0016】
PBT樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0017】
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族または脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオぺンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノ一ル、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノ一ルAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールも挙げられる。
【0018】
PBT樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/またはジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。PBT樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
【0019】
また、上記のような二官能性モノマー以外に、分岐構造を導入するためトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三官能性モノマーや分子量調節のため脂肪酸等の単官能性化合物を少量併用することもできる。
【0020】
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分またはこれらのエステル誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分を、回分式または通続式で溶融重合させて製造することができる。また、溶融重合で低分子量のポリブチレンテレクタレート樹脂を製造した後、さらに窒素気流下または減圧下固相重合させることにより、重合度(または分子量)を所望の値まで高めることができる。
PBT樹脂は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、連続式で溶融重縮合する製造法で得られたものが好ましい。
【0021】
エステル化反応を遂行する際に使用される触媒は、従来から知られているものであってよく、例えば、チタン化合物、錫化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を挙げることができる。これらの中で特に好適なものは、チタン化合物である。エステル化触媒としてのチタン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタンアルコラート、テトラフェニルチタネート等のチタンフェノラート等を挙げることができる。
【0022】
PBT樹脂は、共重合により変性したポリブチレンテレフタレート樹脂であってもよいが、その具体的な好ましい共重合体としては、ポリアルキレングリコール類(特にはポリテトラメチレングリコール(PTMG))を共重合したポリエステルエーテル樹脂や、ダイマー酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、特にはイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂が挙げられる。なお、これらの共重合体は、共重合量が、PBT樹脂全セグメント中の1モル%以上、50モル%未満のものをいう。中でも、共重合量が好ましくは2〜50モル%、より好ましくは3〜40モル%、特に好ましくは5〜20モル%である。
そして、これら共重合体の好ましい含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の総量100質量%中に、10〜100質量%、更には30〜100質量%、特には50〜100質量%である。
【0023】
PBT樹脂の極限粘度([η])は、0.9dl/g以上であるものが好ましい。極限粘度が0.9dl/gより低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また極限粘度は、1.6dl/g以下であることが好ましく、1.3dl/g以下であることがより好ましい。1.6dl/gより高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。なお、極限粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定するものとする。
【0024】
[(B)ポリカーボネート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物は、(B)ポリカーボネート樹脂を含有する。
ポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0025】
原料のジヒドロキシ化合物としては、芳香族ジヒドロキシ化合物が好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0026】
ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導される芳香族ポリカーボネート樹脂、又は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導される芳香族ポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、芳香族ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。更には、上述したポリカーボネート樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、例えば、m−及びp−メチルフェノール、m−及びp−プロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0028】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、20000以上であることが好ましく、より好ましくは23000以上、25000以上であることがさらに好ましい。粘度平均分子量が20000より低いものを用いると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性等の機械的強度の低いものとなりやすい。また60000以下であることが好ましく、40000以下であることがより好ましく、35000以下であることがさらに好ましい。60000より高いものでは、樹脂組成物の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
【0029】
なお、本発明において、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、ウベローデ粘度計を用いて、20℃にて、ポリカーボネート樹脂のメチレンクロライド溶液の粘度を測定し極限粘度([η])を求め、次のSchnellの粘度式から算出される値を示す。
[η]=1.23×10
−4Mv
0.83
【0030】
ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法(界面重合法)及び溶融法(エステル交換法)のいずれの方法で製造したポリカーボネート樹脂も使用することができる。また、溶融法で製造したポリカーボネート樹脂に、末端のOH基量を調整する後処理を施したポリカーボネート樹脂も好ましい。
【0031】
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部基準で、(B)ポリカーボネート樹脂が20〜50質量部であり、好ましくは25質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、好ましくは45質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。上記下限値を下回ると、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の耐衝撃性や靭性の改良効果が小さく、さらに、成形品において内反りが大きくなるため寸法特性が悪化する。また、上記下限値を上回ると流動性が悪くなり成形性が悪化する。
【0032】
[(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤]
本発明で用いる(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤としては、少なくともブタジエン成分を含有するゴム性重合体にこれと反応する単量体化合物を共重合させたものを用いる。(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤のガラス転移温度は0℃以下、特に−20℃以下であるのが好ましい。
【0033】
(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤の具体例としては、例えばアクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル・ブタジエンゴム、また、これらゴム性重合体に単量体化合物を重合した共重合体が挙げられる。この単量体化合物としては例えば、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物等が挙げられる。また、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物;マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸化合物やそれらの無水物(例えば無水マレイン酸等)も挙げられる。これらの単量体化合物は単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0034】
(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良の点から、コア/シェル型グラフト共重合体タイプのものが好ましく、少なくともブタジエン成分を含有するゴム性重合体をコア層とし、その周囲にアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物から選ばれる少なくとも1種の単量体を共重合して形成されたシェル層からなる、コア/シェル型グラフト共重合体が特に好ましい。
【0035】
コア/シェル型グラフト共重合体の例としては、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン重合体(MBS)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン重合体(MABS)、メチルメタクリレート−ブタジエン重合体(MB)、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム共重合体、メチルメタクリレート−アクリル・ブタジエンゴム−スチレン共重合体等が挙げられる。これらのゴム性重合体は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤中のブタジエン成分の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは70〜85質量%ある。ブタジエン成分の含有量が50質量%未満であると、耐衝撃性に劣る傾向となり、90質量%を超えると、難燃性や耐候性が悪化する傾向となるため好ましくない。
【0037】
(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、5〜15質量部である。(C)ブタジエン成分を含有する耐衝撃性改良剤の含有量が5質量部未満では、耐衝撃性の改良効果が小さく、15質量部を超えると耐熱性や剛性、更には流動性、難燃性が低下する。好ましい(C)耐衝撃性改良剤の含有量は、7質量部以上であり、13質量部以下、さらには11質量部以下である。
【0038】
[(D)難燃剤]
本発明の樹脂組成物は、(D)臭素化エポキシ又は臭素化ポリカーボネートから選択される少なくとも1種を含む難燃剤を含有する。
臭素化エポキシ系難燃剤としては、具体的には例えば、テトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型臭素化エポキシ化合物が挙げられる。
【0039】
臭素化エポキシ系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、質量平均分子量(Mw)で3000〜100000であり、中でも15000〜30000であることが好ましい。
臭素化エポキシ系難燃剤は、そのエポキシ当量が3000〜40000g/eqであることが好ましく、特に4000〜10000g/eqであることが好ましい。
【0040】
また、臭素化エポキシ系難燃剤として臭素化エポキシオリゴマーを併用することもできる。この際、例えばMwが5000以下のオリゴマーを0〜50質量%程度用いることで、難燃性、離型性および流動性を適宜調整することができる。臭素化エポキシ化合物における臭素原子含有量は任意だが、十分な難燃性を付与する上で、通常10質量%以上であり、中でも20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましく、その上限は60質量%、中でも55質量%以下であることが好ましい。
【0041】
臭素化ポリカーボネート系難燃剤としては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
【0042】
臭素化ポリカーボネート系難燃剤における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常、2〜30である。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時に(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても(B)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。よってこの繰り返し単位数の平均は、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。
【0043】
臭素化ポリカーボネート系難燃剤の分子量は任意であり、適宜選択して決定すればよいが、好ましくは、粘度平均分子量で1000〜20000、中でも2000〜10000であることが好ましい。なお、臭素化ポリカーボネート系難燃剤の粘度平均分子量は、(B)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定と同様の方法で求めることができる。
【0044】
上記臭素化ビスフェノールAから得られる臭素化ポリカーボネート系難燃剤は、例えば、臭素化ビスフェノールとホスゲンとを反応させる通常の方法で得ることができる。末端封鎖剤としては芳香族モノヒドロキシ化合物が挙げられ、これはハロゲン又は有機基で置換されていてもよい。
【0045】
(D)難燃剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、20〜40質量部であり、好ましくは23質量部以上であり、より好ましくは25質量部以上であり、好ましくは36質量部以下であり、より好ましくは34質量部以下であり、さらに好ましくは33質量部以下である。(D)難燃剤の含有量が少なすぎると本発明の樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
【0046】
[(E)五酸化アンチモン化合物]
本発明の樹脂組成物は、(E)五酸化アンチモン化合物を含有する。
アンチモン系難燃剤としては、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、四酸化アンチモン(Sb
2O
4)、五酸化アンチモン(Sb
2O
5)等があるが、本発明においては、五酸化アンチモン化合物を使用する。これは五酸化アンチモン化合物が、他のアンチモン化合物に比べてポリブチレンテレフタレート系樹脂への影響が小さく、樹脂の分解が抑えられる為である。このため、ポリブチレンテレフタレート系樹脂の結晶化温度(Tc)の低下を抑制でき、射出成形においても離型抵抗力が増加し難く、例えばエジェクターピン痕等の発生を抑制した、表面外観の良好な樹脂成形体が提供できる。
【0047】
また(E)五酸化アンチモン化合物は、五酸化アンチモンと他の金属酸化物との複塩でもよく、五酸化アンチモンと他の金属酸化物との複塩は、GWIT性能(グローワイヤー特性)が優れている点でも好ましい。五酸化アンチモンと他の金属酸化物との複塩としては、具体的には例えば下記の一般式(1)〜(3)で示される複塩が好ましい。尚、これらは任意の割合で併用して用いてもよい。
【0048】
n(X
2O)・Sb
2O
5・m(H
2O) ・・・(1)
n(YO)・Sb
2O
5・m(H
2O) ・・・(2)
n(Na
2O)・Sb
2O
5 ・・・(3)
(これらの式中、Xは1価のアルカリ金属元素、Yは2価のアルカリ土類金属元素、nは0〜1.5、mは0〜4を示す。mおよびnは式(1)及び式(2)においてそれぞれ独立して決定される)
【0049】
上記の式(1)〜(3)において、Xとしてはリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられ、Yとしてはカルシウム、マグネシウム、バリウム等が挙げられる。nは、0より大きく、通常0.3以上、特に0.65〜1.5が好ましい。nが小さすぎると吸着水の脱離速度が小さいために、溶融粘度が変化しやすい傾向にあり、逆にnが大きすぎると相対的にアンチモンの量が低下することにより難燃助剤としての効果が低減する。
mは0〜4であり、好ましくは0〜2である。mが大きすぎるとポリブチレンテレフタレート系樹脂の加水分解が著しくなるので好ましくない。
【0050】
(E)五酸化アンチモン化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、1〜15質量部であり、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記下限値を下回ると、本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物の難燃性が低下する。また、上記下限値を上回ると、結晶化温度が低下し離型性が悪化したり、耐衝撃性等の機械的物性が低下する。
【0051】
[(F)ドリップ防止剤]
本発明の樹脂組成物は、(F)ドリップ防止剤を含有する。
(F)ドリップ防止剤としては、フルオロポリマーが好ましい。
フルオロポリマーとしては、フッ素を有する公知のポリマーを任意に選択して使用できるが、中でもフルオロオレフィン樹脂が好ましい。
フルオロオレフィン樹脂としては、例えば、フルオロエチレン構造を含む重合体や共重合体が挙げられる。その具体例を挙げると、ジフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合樹脂等が挙げられる。中でもテトラフルオロエチレン樹脂等が好ましい。このフルオロエチレン樹脂としては、フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂が好ましい。
フィブリル形成能を有するフルオロエチレン樹脂としては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製、テフロン(登録商標)6J、ダイキン工業社製、ポリフロン(登録商標)F201L、ポリフロンF103、等が挙げられる。
【0052】
また、フルオロエチレン樹脂の水性分散液として、例えば、三井・デュポンフロロケミカル社製のテフロン(登録商標)30J、ダイキン化学工業社製フルオンD−1、住友スリーエム社製TF1750等も挙げられる。さらに、ビニル系単量体を重合してなる多層構造を有するフルオロエチレン重合体も、フルオロポリマーとして使用することができる。その具体例を挙げると、三菱レイヨン社製メタブレン(登録商標)A−3800等が挙げられる。
【0053】
(F)ドリップ防止剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、0.05〜1質量部であり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.12質量部以上、さらに好ましくは0.15質量部以上であり、好ましくは0.6質量部以下、より好ましくは0.45質量部以下、さらに好ましくは0.40質量部以下、特に好ましくは0.35質量部以下である。(F)ドリップ防止剤の含有量が少なすぎると本発明の樹脂組成物の難燃性が不十分となり、逆に多すぎても本発明の樹脂組成物の成形体の外観不良や機械的強度の低下が生ずる。
【0054】
[その他含有成分]
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、安定剤、離型剤(滑剤)、核剤、強化充填材、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0055】
<安定剤>
本発明の樹脂組成物は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、透明性や色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤、イオウ系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
【0056】
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物又は有機ホスホナイト化合物が好ましい。
【0057】
有機ホスフェート化合物としては、好ましくは、下記一般式:
(R
1O)
3−nP(=O)OH
n ・・・(4)
(式中、R
1は、アルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。nは0〜2の整数を示す。)
で表される化合物である。より好ましくは、R
1が炭素原子数8〜30の長鎖アルキルアシッドホスフェート化合物が挙げられる。炭素原子数8〜30のアルキル基の具体例としては、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、トリアコンチル基等が挙げられる。
【0058】
長鎖アルキルアシッドホスフェートとしては、例えば、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、オクタデシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、オクタデシルアシッドホスフェートが好ましく、このものはADEKA社の商品名「アデカスタブ AX−71」として、市販されている。
【0059】
有機ホスファイト化合物としては、好ましくは、好ましくは、下記一般式:
R
2O−P(OR
3)(OR
4) ・・・(5)
(式中、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基または炭素原子数6〜30のアリール基であり、R
2、R
3及びR
4のうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0060】
有機ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましい。
【0061】
有機ホスホナイト化合物としては、好ましくは、下記一般式:
R
5−P(OR
6)(OR
7) ・・・(6)
(式中、R
5、R
6及びR
7は、それぞれ水素原子、炭素原子数1〜30のアルキル基又は炭素原子数6〜30のアリール基であり、R
5、R
6及びR
7のうちの少なくとも1つは炭素原子数6〜30のアリール基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0062】
有機ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0063】
イオウ系安定剤としては、従来公知の任意のイオウ原子含有化合物を用いることが出来、中でもチオエーテル類が好ましい。具体的には例えば、ジドデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、チオビス(N−フェニル−β−ナフチルアミン)、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、テトラメチルチウラムモノサルファイド、テトラメチルチウラムジサルファイド、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルイソプロピルキサンテート、トリラウリルトリチオホスファイトが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)が好ましい。
【0064】
フェノール系安定剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−ネオペンチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
【0065】
安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0066】
安定剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0.001〜1質量部である。安定剤の含有量が0.001質量部未満であると、樹脂組成物の熱安定性や相溶性の改良が期待しにくく、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、1質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。安定剤の含有量は、より好ましくは0.001〜0.7質量部であり、更に好ましくは、0.005〜0.6質量部である。
【0067】
<離型剤>
本発明における樹脂組成物は、金型からの離型性をさらに高めるという点から、離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、ポリブチレンテレフタレート系樹脂に通常使用される既知の離型剤が利用可能であるが、中でも、ブリードアウトしにくく高い離型性を発現するいう点で、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物から選ばれる1種以上の離型剤が好ましい。
【0068】
ポリオレフィン系化合物としては、パラフィンワックス及びポリエチレンワックスから選ばれる化合物が挙げられ、中でも、ポリオレフィン系化合物の分散が良好であるという点から、質量平均分子量が、700〜10000、更には900〜8000のポリエチレンワックスが好ましい。
また、ポリオレフィン系化合物は、カルボキシル基(カルボン酸(無水物)基、即ちカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を表す。以下同様。)、ハロホルミル基、エステル基、カルボン酸金属塩基、水酸基、アルコシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等の、ポリブチレンテレフタレートと親和性のある官能基を付与することが好ましい。この濃度は、ポリオレフィン系化合物の酸価として、5mgKOH/gを超えて50mgKOH/g未満が好ましく、中でも10〜40mgKOH/g、さらには15〜30mgKOH/g、特に20〜28mgKOH/gであることが好ましい。
また、揮発分が少なく、同時に離型性の改良効果も著しい点で、ポリオレフィン系化合物としては、酸化ポリエチレンワックスが好ましい。
なお、酸価は、0.5mol KOHエタノール溶液による電位差滴定法(ASTM D1386)に従って測定することができる。
【0069】
脂肪酸エステル系化合物としては、グリセリン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等の脂肪酸エステル類やその部分鹸化物等が挙げられ、中でも、炭素数11〜28、好ましくは炭素数17〜21の脂肪酸で構成されるモノ又はジ脂肪酸エステルが好ましい。具体的には、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンジベヘネート、グリセリン−12−ヒドロキシモノステアレート、ソルビタンモノベヘネート、ぺンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリストールジステアレート等が挙げられる。
【0070】
また、シリコーン系化合物としては、ポリブチレンテレフタレート系樹脂との相溶性等の点から、変性されている化合物が好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖に有機基を導入したシリコーンオイル、ポリシロキサンの両末端および/または片末端に有機基を導入したシリコーンオイル等が挙げられる。導入される有機基としては、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基、カルビノール基、メタクリル基、メルカプト基、フェノール基等が挙げられ、好ましくはエポキシ基が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ポリシロキサンの側鎖にエポキシ基を導入したシリコーンオイルが特に好ましい。
【0071】
離型剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは、0.05〜2質量部である。0.05質量部未満であると、溶融成形時の離型不良により表面外観が低下する傾向があり、一方、2質量部を超えると、樹脂組成物の練り込み作業性が低下し、また成形品表面に曇りが見られる場合がある。離型剤の含有量は、好ましくは0.07〜1.5質量部、さらに好ましくは0.1〜1.2質量部である。
【0072】
<核剤>
本発明における樹脂組成物は、成形性をさらに高めるという点から、核剤を配合することも好ましい。核剤としては、有機物、無機物の何れも使用することができる。無機物としては、タルク、亜鉛粉末、アルミ粉末等の単体や、窒化アルミ、窒化チタン、ボロンナイトライド等の窒化物を単独、または2種以上混合して使用することができる。有機物としては、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩等の有機塩類、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子、高分子の架橋物等を単独又は2種以上混合して使用することができる。このなかでも特に好ましいものはタルクであり、核剤なかでも特に成形性を向上させる効果に優れる。
【0073】
核剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは、0.05〜2質量部である。このような範囲で核剤を配合することにより、成形性が向上しやすい傾向にあり好ましい。核剤のの含有量は、好ましくは0.07〜1.5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
【0074】
<強化充填材>
本発明の樹脂組成物は強化充填材を含有していてもよい。強化充填材としては、樹脂に配合することにより得られる樹脂組成物の機械的性質を向上させる効果を有するものであり、常用のプラスチック用無機充填材を用いることができる。好ましくはガラス繊維、炭素繊維、玄武岩繊維、ウォラストナイト、チタン酸カリウム繊維等の繊維状の充填材を用いることができる。また炭酸カルシウム、酸化チタン、長石系鉱物、クレー、有機化クレー、ガラスビーズ等の粒状または無定形の充填材;タルク等の板状の充填材;ガラスフレーク、マイカ、グラファイト等の鱗片状の充填材を用いることもできる。
なかでも、機械的強度、剛性および耐熱性の点からガラス繊維を用いるのが好ましい。
【0075】
強化充填材は、カップリング剤等の表面処理剤によって、表面処理されたものを用いることがより好ましい。表面処理剤が付着したガラス繊維は、耐久性、耐湿熱性、耐加水分解性、耐ヒートショック性に優れるので好ましい。
【0076】
表面処理剤としては、従来公知の任意のものを使用でき、具体的には、例えば、アミノシラン系、エポキシシラン系、アリルシラン系、ビニルシラン系等のシラン系カップリング剤が好ましく挙げられる。
これらの中では、アミノシラン系表面処理剤が好ましく、具体的には例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい例として挙げられる。
【0077】
また、表面処理剤として、ノボラック型等のエポキシ樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂等も好ましく挙げられる。中でもノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
シラン系表面処理剤とエポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いても複数種で用いてもよく、両者を併用することも好ましい。
【0078】
強化充填材の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の合計100質量部に対し、好ましくは0〜100質量部である。強化充填材の含有量が100質量部を上回ると、流動性が低下するので好ましくない。強化充填材のより好ましい含有量は、5〜90質量部であり、中でも15〜80質量部、さらに好ましくは30〜80質量部、特には40〜70質量部である。
【0079】
また、本発明の樹脂組成物には、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂以外の他の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドエチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン等が挙げられる。
【0080】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、樹脂組成物調製の常法に従って行うことができる。通常は各成分及び所望により添加される種々の添加剤を一緒にしてよく混合し、次いで一軸又は二軸押出機で溶融混練する。また各成分を予め混合することなく、ないしはその一部のみを予め混合し、フィーダーを用いて押出機に供給して溶融混練し、本発明の樹脂組成物を調製することもできる。さらには、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂又は(B)ポリカーボネート樹脂の一部に他の成分の一部を配合したものを溶融混練してマスターバッチを調製し、次いでこれに残りの他の成分を配合して溶融混練してもよい。
なお、ガラス繊維等の繊維状の強化充填材を用いる場合には、押出機のシリンダー途中のサイドフィーダーから供給することも好ましい。
【0081】
溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜300℃の範囲から適宜選ぶことができる。温度が高すぎると分解ガスが発生しやすく、不透明化の原因になる場合がある。それ故、剪断発熱等に考慮したスクリュー構成の選定が望ましい。混練り時や、後行程の成形時の分解を抑制する為、酸化防止剤や熱安定剤の使用が望ましい。
【0082】
[成形体]
本発明のポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物を用いて成形体を製造する方法は、特に限定されず、ポリエステル樹脂組成物について一般に採用されている成形法を任意に採用できる。その例を挙げると、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、二色成形法、ガスアシスト等の中空成形法、断熱金型を使用した成形法、急速加熱金型を使用した成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法、ブロー成形法等が挙げられる。中でも射出成形が好ましい。
【0083】
成形体の形状、大きさ、厚み等は任意であり、その用途としては、電気電子機器部品、自動車等の輸送機器用部品、産業機械用部品、その他民生用部品等に特に好適である。
特に、例えばパーソナルコンピューター、サーバー、シーケンサー等の電子機器の筺体又は台座部品等に好適であり、好ましくは射出成形にて成形される。