(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0038】
図1は本発明の第一実施形態のリン酸カルシウム成形体10を示す写真である。
図2は第一実施形態のリン酸カルシウム成形体10の焼成前の状態を示す写真である。
図3は第二実施形態のリン酸カルシウム成形体10の焼成前の状態を示す写真である。
【0039】
第一および第二実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、リン酸カルシウムからなる多数の繊維20同士が部分的に融着して形成された骨梁状の三次元構造をなしている。
【0040】
図1から
図3に示すように、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は人骨の骨梁のように全体に海綿状をなし繊維20は相互に連結した網目状をなしている。このリン酸カルシウム成形体10は、リン酸カルシウムを主成分とする多数の繊維が互いに交絡しかつ部分的に融着した繊維群からなる海綿状の多孔材料である。
【0041】
繊維20は、第一繊維22と、この第一繊維22よりも細径の第二繊維24と、を含んでいる。繊維20は多数の第一繊維22および第二繊維24の集合体である。主として第一繊維22同士が融着して連続気泡を内包する骨梁状をなし、第二繊維24の少なくとも一部は連続気泡の内部で互いに非融着に交絡している。以下、第一繊維22により構成される群を第一繊維群といい、第二繊維24により構成される群を第二繊維群という。
【0042】
すなわち、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を構成する多数の繊維20は、平均繊維径が互いに異なる第一繊維群および第二繊維群を含む。第一繊維群は、平均繊維径が互いに略等しい多数の第一繊維22により構成されている。第二繊維群は、平均繊維径が互いに略等しい多数の第二繊維24により構成されている。さらにリン酸カルシウム成形体10は、第一繊維22および第二繊維24とは平均繊維径が異なる第三繊維群を含んでもよい。
【0043】
第一繊維群(第一繊維22)の平均繊維径は20μm以上200μm以下が好ましい。第二繊維群(第二繊維24)の平均繊維径は、第一繊維群(第一繊維22)の平均繊維径よりも小さく、かつ5μm以上50μm未満が好ましい。より好ましくは、第一繊維群(第一繊維22)の平均繊維径は50μm以上100μm以下であり、第二繊維群(第二繊維24)の平均繊維径は10μm以上40μm以下である。第二繊維群(第二繊維24)の平均繊維径は5μm以上15μm以下としてもよい。繊維20(第一繊維22および第二繊維24)の直径は、リン酸カルシウム成形体10の表面または断面の写真の画像処理により求めることができる。より具体的には、
図1に例示される写真において複数箇所(例えば50箇所)の繊維の幅寸法を測定して統計処理をすることで、本実施形態の繊維20が太径の第一繊維22と細径の第二繊維24を包含すること、およびそれぞれの平均繊維径を求めることができる。
【0044】
本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、平均繊維径が大小に異なる第一繊維群(第一繊維22)と第二繊維群(第二繊維24)を含んでいる。したがって、このリン酸カルシウム成形体10を骨補填材とした場合には、以下の効果が発揮される。すなわち、細い繊維群(第二繊維群)がマクロファージの食作用により比較的早期に分解され、その空孔に骨芽細胞がトラップされる時点で、太い繊維群(第一繊維群)は未分解で骨補填材の骨格構造を安定的に維持することができる。その後、たとえば血管新生が開始する時点では、第一繊維群もマクロファージに分解される。このため、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を用いることで、血管新生およびその後の骨再生が良好に行われる。すなわち、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を用いた骨補填材によれば、第一繊維群と第二繊維群が分解されるまでの時間差を活用して、骨芽細胞の均一かつ迅速な成長を十分に促すことができる。
【0045】
本実施形態の骨補填材は、上記のリン酸カルシウム成形体を主成分とする。この骨補填材は、骨欠損部や歯槽堤の抜歯窩などに埋入して用いられる。骨補填材は粘膜下または粘膜骨膜下でマクロファージまたは破骨細胞に分解されて骨組織に吸収および置換される材料である。本実施形態の骨補填材は一種または二種以上のリン酸カルシウムを主成分として含む繊維交絡体からなる。繊維交絡体は、軟質の海綿状でもよく、またはブロック状やタブレット状等の塊状に加圧成形されたものでもよい。
【0046】
繊維20は、実質的にリン酸カルシウムからなる。繊維20に用いられるリン酸カルシウムは、ハイドロキシアパタイトに代表されるアパタイト、α−第3リン酸カルシウム(α−TCP)、β−第3リン酸カルシウム(β−TCP)、リン酸4カルシウム(TTCP)からなる群から選択される少なくとも1種である。ハイドロキシアパタイト(HAp:Hydroxy Apatite)はリン酸カルシウム系のバイオマテリアルであり、化学式はCa
10(PO
4)
6(OH)
2で表される。なお、バイオマテリアルとは医療分野においてヒトの生体に移植することを目的とした材料をいう。
【0047】
繊維20は、炭化水素や無機抗菌剤などリン酸カルシウム以外の副成分を含んでもよい。任意で抗菌剤や成長因子成分(Growth Factor)などを補助的に添加してもよい。成長因子成分としては、線維芽細胞増殖因子(FGF:fibroblast growth factor)、血小板由来増殖因子(PDGF:platelet-derived growth factor)、骨形成蛋白質(rBMP:recombinant-bone morphogenetic protein)、ベータ型変異増殖因子(TGF−β:transforming growth factor-beta)、表皮増殖因子(rEGF:recombinant-epidermal growth factor)またはスタチンが例示される。リン酸カルシウム成形体10は、繊維20以外の要素として、繊維交絡体に内包された薬剤や、繊維交絡体を被覆する包装剤を備えてもよい。
【0048】
本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、リン酸カルシウムからなる多数の繊維20同士が部分的に融着して形成された骨梁状の三次元構造をなしている。
図1に示す第一実施形態に顕著なように、第一繊維22同士、および第一繊維22と第二繊維24とは互いに交差し、また交差部26で互いに融着して骨梁状の三次元構造をなしている。第一実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、第一繊維22同士が融着して連続気泡を内包する骨梁状をなし、一部の第二繊維24はこの連続空間の内部で互いに交絡している。
【0049】
図1において、連続空間を構成する気泡28の一部を波線で示している。第二繊維24は、骨梁状の三次元構造をなす第一繊維22に対して融着して一体化し、かつ気泡28の内部で第二繊維24同士は実質的に非融着のウェブ状(網状)をなしている。第二繊維24同士が実質的に非融着であるとは、所定の検査体積内における第二繊維24同士の交差部のうち、互いに一体化している個所よりも非融着である個所の方が多いことをいう。
【0050】
第一繊維22および第二繊維24は長繊維である。実質的にすべての第一繊維22は一個所または複数個所で他の第一繊維22と交差して一体化していることが好ましい。一部の第二繊維24は第一繊維22と交差して一体化し、また他の一部の第二繊維24は更に他の第二繊維24に対して非融着に交絡しているとよい。
【0051】
なお、第一繊維22および第二繊維24に長繊維を用いることで、リン酸カルシウム成形体10が体内に吸収されるまでの間、リン酸カルシウム成形体10が多数個に崩壊することが抑制され、粘膜下または粘膜骨膜下における位置ずれが生じにくい。ここで長繊維とは繊維径に対する繊維長の比が100倍以上である繊維をいい、短繊維とは当該比が100倍未満である繊維をいう。
【0052】
気泡28の内部において細径の第二繊維24が互いに非融着に交絡していることで、かかる第二繊維24が早期に分解されて生体に吸収される。第二繊維24が分解された跡の細孔に骨芽細胞がトラップされる。すなわち、骨梁状の第一繊維22の内部に骨芽細胞がトラップされた状態で、かかる骨梁状の第一繊維22は生体の内部で所定期間に亘って保形性を維持する。そして、第一繊維22が徐々に分解されて生体に吸収されると、その分解された跡の比較的太い通孔を通じて血液が流通するため血管新生および続く骨再生が良好に行われる。
第二繊維24の平均繊維径が10μm以上40μm以下であることで、その分解後の通孔径が30μm〜50μm程度となり、骨芽細胞のトラップおよび保持に優れる。また、第一繊維22の平均繊維径が50μm以上100μm以下であると、複数本の第一繊維22同士が融着した骨梁状の三次元構造が分解された跡の通孔径が300μm〜400μm程度となり、その内部を血液が十分に流動する。
【0053】
第一繊維22と第二繊維24の繊維本数比率は特に限定されないが、第一繊維22の繊維本数を第二繊維24の繊維本数の0.5倍以上5倍以下にするとよい。骨補填材が適用される症例に応じて、細径の第二繊維24の本数を半数以上としてリン酸カルシウム成形体10の吸収速度を高めてもよく、逆に太径の第一繊維22の本数を半数以上としてリン酸カルシウム成形体10の吸収速度を抑制してもよい。具体的には、第一繊維群を支配的とする場合は、第一繊維22の繊維本数を第二繊維24の1.1倍以上5倍以下とするとよい。また、第二繊維群を支配的とする場合は、第一繊維22の繊維本数を第二繊維24の0.5倍以上0.9倍以下にするとよい。
【0054】
図1(焼成後)、
図2(未焼成)および
図3(未焼成)に示すリン酸カルシウム成形体10は軟質の海綿状をなしている。
【0055】
図1に示すように、第一繊維22同士の融着部分(交差部26)は板状をなしている。第一繊維22における、融着部分を除く繊維部分は、当該繊維方向に沿って形成された筋状の凹部を有する縊れ形状をなしている(後述する実施例を参照)。
【0056】
図3に示す第二実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、縦横寸法(紙面上下方向寸法)よりも小さな厚さ寸法(紙面前後方向寸法)をもつ削片形状をなしている。第一繊維22は削片形状の内部で連続的に延在している。削片状とは、リン酸カルシウム成形体10の自重では変形しない程度の保形性をもつ板形状をいう。
【0057】
かかる削片状のリン酸カルシウム成形体10は、第一繊維22と第二繊維24の繊維交絡体を板状に形成し、第一繊維22同士、第二繊維24同士および第一繊維22と第二繊維24を融着させることにより作成することができる。すなわち、第一繊維22および第二繊維24をブロック状に加圧成形した後に所定の厚さ寸法にスライスした場合、第一繊維22は多数に分断されることとなる。これに対し、リン酸カルシウム成形体10の縦横寸法よりも長い長繊維として第一繊維22が連続的に存在することにより、粘膜下などの埋入位置におけるリン酸カルシウム成形体10の形態保持性が良好となる。
【0058】
(用途)
本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、種々の用途、および当該用途に適した形状とすることができる。たとえば、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、骨補填材、再生治療材料用のスキャホールド、人工骨または人工歯などの生体インプラント材料に用いることができる。このほか、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、歯磨き剤の基材、香料の担体、抗菌剤、吸着剤または充填材としても有用である
【0059】
これらの用途に供するにあたっては、リン酸カルシウム成形体10を種々の形態に成形することが好ましい。たとえば、上記実施形態では海綿状または削片状のリン酸カルシウム成形体10を骨補填材に用いることを例示した。これに代えて、リン酸カルシウム成形体10を塊状に加圧成形してもよい。塊状とは、所定の厚みと医療手技中に変形しない程度の保形性とを有することをいう。具体的には、塊状にはブロック状、棒状、タブレット状を含む。
【0060】
塊状のリン酸カルシウム成形体10は、リン酸カルシウムの繊維を三次元交絡させたのちにプレス成形して作製することができる。このほか、リン酸カルシウムのシート状の長繊維不織布を折り重ねまたは巻回して塊状に成形することも可能である。
【0061】
また、海綿状、塊状または削片状に成形されたリン酸カルシウム成形体を顆粒状に破砕してもよい。このような顆粒状リン酸カルシウム成形体を種々の溶媒に配合することで、歯磨き剤の組成物(歯磨き組成物)、歯科用複合材料、骨用または歯科用セメントなどを作製することができる。
【0062】
本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、たんぱく質、アミノ酸、脂質、ウイルス等の細菌類、アルデヒドやアンモニア類等の臭気物質を吸着する吸着剤として用いることができる。具体的には、カラムクロマトグラフィー用充填材、触媒担体、マスク、空気洗浄剤、フィルター、衣料用繊維の充填剤、食品添加物、歯磨き剤等に用いられる。リン酸カルシウム成形体10は、その特異な形状と表面性状から、このような吸着体としての特異な特性の発現が期待される。
【0063】
特に、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を錠剤状またはシート状に加工して吸着剤を作製してもよい。吸着剤としては、被濾過物を流通させて不純物を吸着するカラム吸着剤が例示される。ここで、板状、針状または粉末状のリン酸カルシウムを吸着剤に用いた場合は、すぐに目詰まりして被濾過物の流通性が低下する。また、粉末状のリン酸カルシウムは保形性が悪く、錠剤状に成形することが困難である。これに対し、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、繊維20が交絡および結着してなるため保形性に優れるため、繊維交絡体を圧縮することで綺麗な錠剤状に成形することができる。また、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、繊維20同士が骨梁状をなしているため機械強度に優れている。このため、繊維交絡体を錠剤状に圧縮成形したときに、繊維20の交絡および結着状態を維持することができる。このため、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10で作製された吸着剤(濾過剤)は長期間の使用が可能である。
【0064】
また、本実施形態の吸着剤は、水棲生物を飼育する循環型濾過槽に特に好適に用いられる。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10はデッドエンドが実質的に存在しない連続気泡タイプの多孔材料であるため、これ生物濾過の基材とすることで好気性菌類の繁殖に適する。本実施形態の吸着剤を水棲生物用の濾過剤として用いる場合は、上記のように錠剤状とするほか、平坦なシート状として広い吸着面積を実現してもよい。または海綿状の吸着剤としてもよい。
【0065】
また、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10からなる不織布と、この不織布に吸着させた組織再生因子と、を含む徐放性製剤を作製してもよい。組織再生因子としては、上述した成長因子成分(Growth Factor)を用いることができる。この不織布を含む徐放性製剤は、傷口に塗布する軟膏として用いてよく、またはパッド状に成形して絆創膏における傷接触部に被着して用いてもよい。これにより、リン酸カルシウム成形体10が生体組織で分解されるに従って、徐々に組織再生因子が生体に吸収される。
【0066】
本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を、内服薬の基材としてもよい。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は消化器系で緩やかに分解されて吸収され、また機械強度が高く外力によって崩壊しにくい。このため、内服薬の薬効成分をリン酸カルシウム成形体10の表面に固着するか、またはリン酸カルシウム成形体10で包埋するとよい。
【0067】
本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を、細胞培養の基材としてもよい。特に立体的な細胞培養に好適に用いられる。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は保形性に優れるため、培養された組織を基材ごと移植したり組織充填(組織補填)に使用したりすることができる。
【0068】
また、樹脂材料にリン酸カルシウム成形体10を充填剤として配合した複合材料を作製してもよい。従来のリン酸カルシウム成形体は保形性が低いため、複合材料に充填したとしても補強効果があまり得られなかったところ、本実施形態のように骨梁状の三次元構造をなすリン酸カルシウム成形体10を充填剤とすることで、その特異構造によりこれまでにない補強効果をもたらし、複合材料の機械的強度が好適に向上する。一般に、有機樹脂と無機材料とからなる複合材料に破壊応力が加わった場合、その破壊は、有機樹脂と無機材料との界面に沿って生じる。これに対し本実施形態の場合は、その破壊応力に対して、骨梁状構造が寄与して繊維の変形が抑えられ、さらに骨梁構造の部位にて、有機樹脂と繊維との界面に生じる破壊に対して大きな抵抗を発揮する。一方、短繊維や単純な織物状繊維が有機樹脂に配合された複合材料では、このような、繊維界面で生じる破壊に対して大きな抵抗を持ち得ない。即ち、本発明のリン酸カルシウム成形体が配合された樹脂組成物は、機械的強度や破壊靱性、耐衝撃性、耐摩耗性に優れている。
【0069】
また、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は骨梁状をなし人体の硬組織材料に類似した組成であることから、生態親和性に優れる複合材料とすることができる。
【0070】
リン酸カルシウム成形体10を充填剤として用いる場合は、有機樹脂との親和性を上げるために繊維20に表面処理が施されることが望ましい。表面処理剤としては、シランカップリング剤、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、脂肪酸、有機リン酸化合物が用いられる。有機樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂が用いられる。
【0071】
歯科用複合材料として、繊維状のリン酸カルシウム成形体を重合性材料に配合して用いてもよい。同様に、骨用または歯科用セメントについても、繊維状のリン酸カルシウム成形体を溶媒に混合して用いてもよい。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を用いた骨用セメントは骨欠損部に充填して使用される。この骨用セメントは1〜2週間程度で体組織に吸収され、早期に骨組織を再生させることができる。
【0072】
歯科用複合材料として特に好ましい実施形態は、重合性単量体に配合して重合性組成物とする形態である。かかる重合性単量体としては公知の重合性単量体が用いられ、ラジカル重合性単量体が好適に用いられる。重合性単量体におけるラジカル重合性単量体の具体例としては、α−シアノアクリル酸、(メタ)アクリル酸、α−ハロゲン化アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸などのエステル類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、モノ−N−ビニル誘導体、スチレン誘導体などが挙げられる。これらの中では、(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。なお、上記説明において(メタ)アクリルの表記はメタクリルとアクリルの両者を包含する意味である。
【0073】
かかる歯科用複合材料としては、歯科用セメント(レジンセメント、レジン強化型グラスアイオノマーセメント、グラスアイオノマーセメント)、歯科用接着剤、プライマー、義歯床用レジン、根管充填材、硬質レジン、歯科充填修復材料、支台築造用材料等があげられる。また、外科用途として骨セメントとしても有用である。
【0074】
リン酸カルシウムセメントやカルシウムシリケートセメントのような水硬化性セメントとしてもリン酸カルシウム成形体10を用いることができる。リン酸カルシウムセメントとしては、リン酸四カルシウムや無水リン酸水素カルシウムを例示することができる。カルシウムシリケートセメントとしては、プロルートMTA(デンツプライタルサ社製)を例示することができる。さらに、ヒドロキシアパタイトとリン酸化糖カルシウムからなる、う蝕治療材料にリン酸カルシウム成形体10を配合してもよい。
【0075】
図4(a)から
図4(c)は、塊状に成形された第三実施形態のリン酸カルシウム成形体10の使用状態を説明する模式図である。以下は、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10を骨補填材として用いることを例示する。この骨補填材は、インプラント治療に先だって歯槽骨126を再生させるために用いられる。
【0076】
図4(a)は、歯120の歯根部122が粘膜骨膜弁124に覆われて歯槽骨126に生えている状態を示している。
図4(b)は、歯(図示せず)が欠損して歯槽骨126が後退した状態を示している。この状態で、粘膜骨膜弁124に切開創128を形成して歯槽骨126を露出させ、
図4(c)に示すように歯槽骨126の上部にリン酸カルシウム成形体10(骨補填材)を装着する。
図4(c)は、粘膜骨膜弁124を引き延ばし、歯槽骨126に装着されたリン酸カルシウム成形体10を粘膜骨膜弁124で覆って縫合糸129で縫合した状態を示している。
【0077】
かかる状態で所定期間(例えば数週間から数ヶ月)が経過することにより、リン酸カルシウム成形体10は、細径の第二繊維24に次いで、骨梁状の三次元構造の骨格を為す太径の第一繊維22(
図1、
図3を参照)が分解されて歯槽骨126に置換されていく。リン酸カルシウム成形体10は粘膜骨膜弁124の内部で分解されて繊維芽細胞および骨芽細胞が成長する。これにより、歯槽骨126が再生され、インプラント治療が良好に施術可能となる。
【0078】
図5(a)および
図5(b)は、同じく塊状に成形された第四実施形態のリン酸カルシウム成形体10(骨補填材)の使用状態を説明する模式図である。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、
図5(b)に示すように、歯120の歯根部122を模した二股形状の根尖部14を有していることを特徴とする。
図5(a)に示す歯120は臼歯である。歯120の二股の歯根部122は歯槽骨126に埋設されている。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、臼歯(歯120)が欠損した空洞に根尖部14を挿入して用いられる。リン酸カルシウム成形体10の上面が粘膜骨膜弁124と同等の高さ位置となるようリン酸カルシウム成形体10の高さ寸法は定められている。歯槽骨126に立設されたリン酸カルシウム成形体10の上面に吸収性膜130をさらに載置した状態で、粘膜骨膜弁124を引き延ばして縫合糸129で縫合する。これにより、臼歯をインプラント治療するに先だって歯槽骨126を十分に再生することができる。吸収性膜130としては、多血小板フィブリン(PRF:Platelet-rich fibrin)膜、コラーゲン膜、ポリ乳酸(PLLA)膜などを用いることができる。
【0079】
図5(c)は、同じく塊状に成形された第五実施形態のリン酸カルシウム成形体10(骨補填材)の使用状態を説明する模式図である。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は円柱状をなしている。
図5(c)は、歯120のある歯根部122の周囲にリン酸カルシウム成形体10を埋め込み、切開創128を縫合糸129で縫合する様子を示している。リン酸カルシウム成形体10は、歯120が欠損していない患部に対しても用いられ、骨芽細胞の成長の促進により歯根部122を成長させて太径化することができる。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、粘膜骨膜弁124に形成した切開創128を通じて歯根部122の近傍に挿入して用いられる。
【0080】
図5(d)は同じく塊状に成形された第六実施形態のリン酸カルシウム成形体10(骨補填材)の使用状態を説明する模式図である。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は伏椀型のドーム状に成形されている。かかるリン酸カルシウム成形体10を、歯(図示せず)の欠損により生じた空洞部127に留置し、粘膜骨膜弁124で包摂する。リン酸カルシウム成形体10の下面と歯槽骨126との間に残る空洞部127は、空隙として残してもよく、または生体吸収性の材料からなる充填材料で埋めてもよい。
【0081】
図6(a)から
図6(d)は、第七実施形態のリン酸カルシウム成形体10(骨補填材)の使用状態を説明する模式図である。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10に関しても、インプラント治療のために歯槽骨126を再生させる場合を例に説明する。
【0082】
図6(a)は歯120の歯根部122が粘膜骨膜弁124に覆われて歯槽骨126に生えている状態を示しており、
図4(a)と共通である。
図6(b)および
図6(c)は、歯(図示せず)が欠損し、歯槽骨126が吸収されて後退した状態を示している。
図6(b)は中等度吸収の状態を示し、
図6(c)は高度吸収の状態を示している。中等度吸収の場合は、歯根部122の痕跡がU字状の凹部として歯槽骨126に残るが、高度吸収の場合は、その痕跡は消失して歯槽骨126は上に凸形状となる。
【0083】
図6(b)または
図6(c)の状態で、粘膜骨膜弁124に切開創128を形成して歯槽骨126を露出させ、歯槽骨126の上部にリン酸カルシウム成形体10を装着する。
【0084】
図6(d)に示す本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、歯槽骨126の上面の全体的な凹凸形状に係合する形状に形成されていることを特徴とする。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10は、歯槽骨126の中等度吸収または高度吸収の典型的な症例ごとに、歯槽骨126の上面と係合する凸形状や凹形状に形成されている。
図6(d)のリン酸カルシウム成形体10は、その下面に凸部12が形成されている。また、リン酸カルシウム成形体10は、歯槽骨126の骨頂を覆う寸法および形状をなしている。凸部12は、歯槽骨126の上面のU字状の凹部に嵌合する。
図6(d)に示すように、粘膜骨膜弁124を引き延ばし、歯槽骨126に装着されたリン酸カルシウム成形体10を粘膜骨膜弁124で覆って縫合糸129で縫合する。
【0085】
以下、第一から第七実施形態(以下、本実施形態)のリン酸カルシウム成形体10の製造方法(以下、本方法)を説明する。本実施形態のリン酸カルシウム成形体10の製造方法は、ブロー工程、乾燥工程、融着工程および焼成工程を含む。
ブロー工程では、リン酸カルシウムを溶媒に分散させたスラリーを、複数のダイから吐出しながらスラリーブロー法により長繊維状に成形する。融着工程では、長繊維同士の交絡部に残留する溶媒により交絡部における長繊維を互いに融着させる。焼成工程では、交絡部が融着した長繊維を焼成して溶媒を除去して実質的にリン酸カルシウムのみからなる骨梁状の三次元構造を形成する。
【0087】
リン酸カルシウムを繊維状に成形する方法として、リン酸カルシウムを溶媒に分散させたスラリーをダイから噴射して繊維状に成形するスラリーブロー(溶液紡糸)法が挙げられる。このとき、炭化水素材料からなるバインダー成分をスラリーに配合することで、成形された繊維におけるリン酸カルシウムが安定するとともに、焼成工程によってバインダー成分を除去することが可能である。バインダー成分としては、可食性の水溶性多糖類が好ましく、特にプルランが好ましい。このほか、本実施形態に用いられる多糖類の例として、寒天、カラギナン、アルギン酸、アルギン酸塩類、キサンタンガム、デキストラン、グアーガム、ペクチン、グルコマンナン、デンプン、ゼラチン、カラヤガム、キチン、キトサン、メチルセルロース、タマリンドガム、アラビアガムを挙げることができる。
【0088】
スラリーに多糖類を混合することで、脆性の高いリン酸カルシウムの繊維を加圧成形しても繊維が細かく破砕してしまうことがない。言い換えると、多糖類からなるバインダー成分を含む繊維を紡糸して交絡体を作成し、これを加圧成形することにより、長繊維を維持したままリン酸カルシウム成形体10を塊状に成形することができる。
【0089】
すなわち、本方法においては、スラリーに水溶性かつ可食性の多糖類が分散されており、交絡部が融着した長繊維を塊状に加圧成形したのちに焼成して多糖類を除去する。
【0090】
また、本方法においては、成形されたリン酸カルシウム成形体10を顆粒状に破砕する破砕工程を更に行ってもよい。顆粒状のリン酸カルシウム成形体10は、そのまま使用してもよく、または溶媒に混合して例えばペースト状にして用いてもよい。
【0091】
スラリーに配合するバインダー成分の量および噴射速度を調整することで、焼成後のリン酸カルシウム成形体10における繊維長と繊維径を可変に調整することができる。
溶媒の質量に対するリン酸カルシウムの質量比は0.2以上0.4以下が好ましい。また、溶媒の質量に対するバインダー成分の質量比は0.1以上0.4以下が好ましい。スラリーの粘度は、1万ポアズ(1×10
3パスカル秒)以上かつ10万ポアズ(1×10
4パスカル秒)以下が好ましい。
【0092】
スラリーには、水系分散剤を添加してもよい。水系分散剤としては、ポリカルボン酸系分散剤、ポリスルホン酸系分散剤、ポリリン酸系分散剤、アニオン系分散剤などを用いることができる。
【0093】
ブロー工程と同時に、吐出された複数の長繊維から、溶媒の一部を空中で除去しながら長繊維同士を互いに交絡させる乾燥工程を行う。
【0094】
図7(a)は、リン酸カルシウム成形体10の製造装置200を示す模式図である。
図7(b)はダイ204の断面模式図である。製造装置200は、スラリーブロー法により長繊維を成形するとともにこれを互いに交絡させて不織布29を製造し、さらに不織布29を成形および焼成してリン酸カルシウム成形体10を得る装置である。本実施形態では、不織布29をロール状に巻回したうえで焼成してリン酸カルシウム成形体10とすることを例示するが、ロール成形部220に代えて、不織布29をブロック状やタブレット状に加圧成形するプレス成形部を用いてもよい。
【0095】
本実施形態の製造装置200は、ホッパー202、ダイ204、ドラムロール206、加熱部208、引取部210、ロール成形部220および焼成部230を備えている。ホッパー202は、プルランなどの多糖類と、ハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウムと、を水などの溶媒に分散させた高分子原料(スラリー)を貯留する容器である。多糖類は溶媒溶解性を有するものを使用する。高分子原料には、所定濃度の抗菌剤が含有されていてもよい。
【0096】
図7(b)に示すように、ダイ204は多数の微小なノズル240、250を備えている。ダイ204とホッパー202とは給液管203で連通している。給液管203はダイ204の内部で分岐して個々のノズル240、250と接続している。
図7(b)では一部の給液管203のみを図示している。給液管203の流路上には、ホッパー202とダイ204との間に、定量ポンプ205を設けるとよい。定量ポンプ205としては、ギアポンプやベーンポンプなどの回転式ポンプや、プランジャーポンプなどの往復式ポンプを用いることができる。定量ポンプ205を設けることで、スラリーを所定の流量で安定的にノズル240、250から吐出することができる。定量ポンプ205の出力流量を増加方向に調整することで、ノズル240、250から吐出される繊維状のスラリーの径を増大させることができる。
【0097】
ダイ204の上流側にはブロア214が設けられ、両者は給気管213で接続されている。ノズル240、250は先細テーパー状または直管状などの管状をなし、その周囲にブロー開口260が個別に設けられている。ブロア214から給気管213を通じてダイ204に加圧空気が供給され、この加圧空気は高速でブロー開口260から噴射される。このためノズル240、250の先端部(
図7(b)における下端部)の近傍には負圧が形成される。ホッパー202からダイ204に供給された高分子原料は、負圧に吸引されてノズル240、250から高速で吐出されて繊維状となる(ブロー工程)。ブロア214の流量を増減調整することで、吐出される繊維径を調整することができる。溶媒に多糖類を溶解させることで、高粘度の高分子原料が繊維状に成形されるとともに、この繊維内にリン酸カルシウムが分散して存在することとなる。
【0098】
図7(b)に示すように、ダイ204は、第一ノズル240と、この第一ノズル240よりも小さな開口径の第二ノズル250と、を含む。上記の融着工程において、第一ノズル240から吐出される未焼成の第一繊維22同士を融着させる。
【0099】
第一ノズル240および第二ノズル250の開口径は、直径0.05mm以上1.0mm以下の円形とするとよい。第一ノズル240の開口径は第二ノズル250よりも大径である。これにより、第一ノズル240から吐出され、乾燥工程および焼成工程を経て作成される第一繊維22は、同じく第二ノズル250から吐出されて乾燥工程および焼成工程を経て作成される第二繊維24よりも大径となる。
【0100】
第一ノズル240および第二ノズル250の個々の本数および配置は特に限定されない。
図7(b)では第一ノズル240の本数が第二ノズル250の本数よりも多い場合を例示している。より具体的には、このダイ204では、複数本の第一ノズル240が連続的に配置され、また複数本の第二ノズル250が連続的には配置され、かつ第一ノズル240の群と第二ノズル250の群とが交互に配置されている。隣接する第一ノズル240同士の中心間距離w1と、隣接する第二ノズル250同士の中心間距離w2は、互いに等しくてもよく、また相違してもよい。
【0101】
第一ノズル240および第二ノズル250は、直線状に一次元的に配置してもよく、または格子状や千鳥状に二次元的に配置してもよい。
【0102】
本実施形態のダイ204に代えて、開口径が異なる第一ノズル240と第二ノズル250とを一本ずつ交互に配置してもよい。また、太径の第一ノズル240同士の間に、細径の第二ノズル250を連続して複数本(たとえば2本)配置してもよい。
【0103】
ノズル240、250からの噴射方向の前方にはドラムロール206が配置されている。ドラムロール206の表面に噴射された繊維20は長繊維であり、また互いに交絡して不織布29となる。
【0104】
ノズル240、250より噴射された繊維20は、筒状の筐体216の内部において空中で加熱されて溶媒が除去される(乾燥工程)。本実施形態の加熱部208はセラミックヒータであり、ダイ204からの噴射方向(同図の上下方向)に複数段に並設されている。加熱部208は赤外線(遠赤外線を含む)を繊維20に照射して、繊維20を輻射乾燥させる。この繊維20は、多糖類(プルラン)とリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)と水性溶媒との混合材料からなる。
【0105】
加熱部208の背後には送風部209が設けられている。送風部209は、ダイ204から噴射された繊維20に対して側方から冷風(常温を含む)を吹き付ける。これにより、繊維20から除去された溶媒を筐体216から排除し、繊維20の乾燥を促進する。また、筐体216の内部には、ダイ204からドラムロール206に向かって先細形状となるガイド218が対向して設けられている。ガイド218は金属メッシュなどの多孔材料からなり、加熱部208が放射した赤外線と送風部209からの冷風を、ともに通過させる。そして、ダイ204から噴射された繊維20は、ガイド218に沿って束状に収束し、互いに交絡してドラムロール206の表面に至る。ここで、繊維20に対して送風部209が側方から冷風を吹き付けることで、繊維20は好適に収束し、また互いに交絡する。
【0106】
本方法は融着工程を含むことを特徴とする。第一繊維22の繊維径と、溶媒・バインダー比率、加熱部208の加熱温度、ブロー速度などのパラメータを調整して、未焼成の第一繊維22における含水率を、未焼成の第二繊維24における含水率よりも顕著に高くすることを特徴とする。これにより、ブロー工程および乾燥工程を経た第一繊維22に残存する溶媒は、隣接する他の第一繊維22および第二繊維24を溶解させ、繊維同士の交差部26(
図1を参照)が融着する。一方、ブロー工程および乾燥工程を経た第二繊維24に残存する溶媒は僅かであるため、第二繊維24同士の交差部においては実質的に融着が発生しない。このため、第一繊維22同士、および第一繊維22と第二繊維24とは交差部26において骨梁状の三次元構造をなし、これに内包される気泡28の内部においては、第二繊維24同士は非融着のウェブ状に交絡する。
【0107】
ドラムロール206は回転機構(図示せず)によって軸回転し、成形された不織布29を引取部210に送る。ドラムロール206の回転速度は可変に調整可能であり、その調整により不織布29の目付を変化させることができる。繊維20からなる不織布29は、引取部210により所定の速度で引き取られて所定の厚さに成形される。不織布29には、ドラムロール206上および引取部210上において融着工程が施される。
【0108】
第一繊維22同士が融着した繊維交絡体(不織布29)は、所定の保形性を有する削片状をなしている。かかる削片状の状態で骨補填材として使用してもよく、または不織布29を所望の形状に成形して骨補填材を作製してもよい。
【0109】
以下、具体例として不織布29をロール状に成形して棒状のリン酸カルシウム成形体10を作成する方法を説明する。ロール成形部220は、不織布29を所定径のロール状に巻回する装置である。ロール成形部220は、不織布29を予め切断してからロール状に巻回してもよい。ロール成形部220は、不織布29の送り方向の先端を制止する制止部221と、不織布29を切断する刃部222とを備えている。制止部221と刃部222は引取部210に対して昇降自在である。制止部221が不織布29の先端を制止することで、引取部210の搬送力により不織布29は巻回されてゆく。不織布29が所定径に巻回されたところで刃部222が下降してこれを切断する。不織布29は多糖類(プルラン)を含有していて粘着性を有するため、巻回された不織布29は一体に固着する。
【0110】
巻回および切断されてロール状となった不織布29は、ヒーター231を備える焼成部230で焼成され、さらに必要に応じて切断および切削されてリン酸カルシウム成形体10となる。不織布29を焼成することにより、繊維20に含まれていた多糖類が熱分解されて消失し、リン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)のみが繊維形状を維持したまま残留する。また、多糖類が消失することで不織布29の巻径(ロール径)と繊維径はともに減少し、リン酸カルシウムは凝集する。これにより、焼成後のリン酸カルシウム成形体10は、リン酸カルシウムが緻密に凝集した長繊維の繊維交絡体となる。
【0111】
以上、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10の製造方法は、
(1)水性溶媒と水溶性の可食性多糖類とリン酸カルシウムとの混合物をダイスから噴射して長繊維とする繊維化工程と、
(2)噴射された長繊維を加熱して水性溶媒を除去しながら長繊維同士を互いに交絡させて繊維交絡体とする乾燥工程と、
(3)繊維交絡体を焼成して多糖類を除去する焼成工程と、を含む。
なお、上記(1)から(3)の一部または全部の工程は、互いに重複するタイミングで行ってもよい。
【0112】
本実施形態では、上記(2)の乾燥工程によってシート状の長繊維不織布を作製した後、上記(3)の焼成工程の前に、
(4)繊維交絡体を塊状に成形する成形工程をさらに行う。成形工程では、一例として、上述のようにシート状の長繊維不織布を折り重ねまたは巻回して、所定の厚さを有する板状またはブロック状に成形する。以上の工程により、本実施形態のリン酸カルシウム成形体10が作製される。
【0113】
図6(d)に示した第七実施形態のように、歯槽骨126の上面に沿う形状のリン酸カルシウム成形体10を作成する場合は、リン酸カルシウムの繊維交絡体を所望の形状に曲げ加工したうえで焼成するとよい。この場合、曲げ加工時に繊維20が破砕されないよう、交差部26が融着した長繊維(繊維20)をプルランなどの水溶性かつ可食性の多糖類で被覆したうえで成形し、成形後の長繊維(繊維20)を焼成して多糖類を除去してもよい。具体的には、多糖類の繊維で作成された袋体に繊維20を収容して、袋体ごと所望の形状に曲げ成形してから焼成工程を施し、袋体を加熱分解により除去してもよい。または、多糖類の分散液を繊維交絡体の表面にスプレー塗布し、これを乾燥させることにより繊維20を多糖類でコーティングしてもよい。コーティング厚さは特に限定されないが、10μm以上かつ50μm以下とするとよい。
【0114】
図8は骨補填材(リン酸カルシウム成形体10)を粘膜下などの患部に適量ずつ供給するための骨補填材供給装置300を示す断面模式図である。本実施形態の骨補填材供給装置300は、塊状、具体的には棒状に成形された骨補填材を所定長ずつ切断して供給する。骨補填材供給装置300は、リン酸カルシウム成形体10を収容する外套部310、およびこのリン酸カルシウム成形体10を保持するとともに外套部310に対して移動可能に設けられたホルダ部320を含む。骨補填材供給装置300は、ホルダ部320を操作することでリン酸カルシウム成形体10が外套部310から繰り出される。リン酸カルシウム成形体10は連続的に繰り出されてもよく、または所定長ずつ離散的に繰り出されてもよい。
【0115】
外套部310は円筒状をなし、少なくとも先端が開口している。外套部310の側周にはスリット312が形成されている。スリット312は外套部310の軸方向に延在する直線状でもよく、または外套部310の軸心を回転軸とする螺旋状でもよい。ホルダ部320は、リン酸カルシウム成形体10の基端を保持する保持部322と、ホルダ部320から外套部310の径方向の外側に突出するスライダ部324とを備えている。スライダ部324は外套部310のスリット312に対して摺動可能に嵌合している。ユーザはスライダ部324に指を掛けて、これをスリット312の延在方向に摺動させる。スライダ部324の摺動に伴って、リン酸カルシウム成形体10の先端が外套部310から突出する。
【0116】
骨補填材供給装置300は、外套部310から突出したリン酸カルシウム成形体10を切断する切断部330を備えている。本実施形態の切断部330は、外套部310の先端に設けられた環状部材であって、内周面に刃部332が内向きに立設されている。切断部330は外套部310の先端に対して外套部310の中心軸回りに回転可能に接続されている。切断部330は可撓性を有し、ユーザが切断部330を圧搾することにより刃部332がリン酸カルシウム成形体10に突き当てられる。この状態で切断部330を回転させることで、刃部332がリン酸カルシウム成形体10の周面にV溝が削成される。焼成後のリン酸カルシウム成形体10は脆性を有するため、刃部332の先端がリン酸カルシウム成形体10を径方向に貫通せずとも、所定の深さのV溝を設けることでリン酸カルシウム成形体10の先端部を容易に折り取ることができる。
【0117】
(実施例)
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0118】
スラリーの調整は、ハイドロキシアパタイト(HAp)の乾燥微粒子:42g、水:58g、プルラン乾燥粉末(日本薬局方):14.5g、分散剤(サンノプコ製 SNディスパーサント2060):2gを混合して常温で行った(実施例1〜3に共通)。
【0119】
HApの乾燥微粒子の粒度分布は以下であった。
・体積平均繊維径(MV:Mean Volume Diameter):1.7μm
・面積平均繊維径(MA:Mean Area Diameter):1.1μm
・球形近似した数平均粒子径(MN:Mean Number Diameter):0.39μm
・比表面積(CS:Calculated Specific Surfaces Area):5.5m
2/cc
・標準偏差(SD):0.98μm
【0120】
ただし、この標準偏差は、累積カーブが84%となる粒子径(μm)であるd84%と、累計カーブが16%となる粒子径(μm)であるd16%と、を用いて、下式(1)で表される数値である。
SD=(d84%−d16%)/2 ・・・(1)
【0121】
このスラリーを、
図7(a)に示したダイ204からスラリーブロー法により噴射するとともに加熱部208で加熱乾燥させて水を除去して、HApおよびプルランからなる長繊維(アパタイト繊維)をそれぞれ成形した。
【0122】
(実施例1)
図7(b)に示したダイ204において、第一ノズル240の円形の開口径を0.9mmとし、第二ノズル250の円形の開口径を0.5mmとした。ブロー開口260からの吹出速度を300m/secとした。吐出時の第一繊維22および第二繊維24の線径は、第一ノズル240および第二ノズル250の開口径とそれぞれ略等しくなった。第一繊維22同士、第二繊維24同士、および第一繊維22と第二繊維24とを互いに交絡させてなる繊維交絡体を成形した。乾燥後(焼成前)の第一繊維22の繊維径は70μm以上120μm以下であり、第二繊維24の繊維径は30μm以上50μm以下であった。
【0123】
かかる繊維交絡体を下記の条件で焼成した。焼成条件としては、常温から320℃まで昇温速度13.3℃/時間で昇温しながら24時間に亘って加熱(第一焼成工程)し、続けて320℃で1時間保持した。その後、320℃から1100℃まで昇温速度50.0℃/時間でさらに昇温しながら17.6時間に亘って加熱(第二焼成工程)し、続けて1200℃で2時間焼成(第三焼成工程)した。
【0124】
第一焼成工程では、アパタイト繊維の残留水分を除去するとともに、炭化水素材料からなるバインダー(本実施例ではプルラン)の分子内および分子間結合が切断される。
第一焼成工程よりも高温でアパタイト繊維を焼成する第二焼成工程では、バインダーを二酸化炭素および水に分解してアパタイト繊維から除去する。かかる第二焼成工程を昇温しながら行うことで、HApが繊維形状を保ったまま繊維径が徐々に小さくなっていく。言い換えると、本実施例のような第一焼成工程および第二焼成工程をとることで、焼成後の繊維交絡体はHApが繊維形状のまま焼き締まるため、比表面積が大きな多孔体が作製される。
【0125】
図9(a)は、実施例1のリン酸カルシウム成形体10の電子顕微鏡写真である。
図9(b)は、
図9(a)にて矩形波線で示した部分の拡大写真である。
図9(a)の倍率は200倍であり、
図9(b)の倍率は1000倍である。
【0126】
リン酸カルシウム成形体10は、第一繊維22同士が部分的に融着して形成された骨梁状の三次元構造をなしている。第一繊維22同士の融着部分(交差部26)は板状をなしている。第一繊維22における、交差部26を除く繊維部分は、当該繊維方向に沿って形成された筋状の凹部を有する縊れ形状をなしていることが分かった(
図9(b)を参照)。これは、焼成により水分とバインダーが除去されたことで、繊維が周長を保持したままで断面積が小さくなったことに起因すると考えられる。また、第二繊維24は気泡28の内部において互いに実質的に非融着にてウェブ状に交絡していることが分かった。
【0127】
焼成後の第一繊維22の繊維径は50μm以上90μm以下であり、第二繊維24の繊維径は20μm以上35μm以下であった。
【0128】
(実施例2)
実施例1と同じ条件にてリン酸カルシウム成形体10の他のサンプルを作成した。
図10(a)は、実施例2のリン酸カルシウム成形体10の電子顕微鏡写真である。
図10(b)は、
図10(a)にて矩形波線で示した部分の拡大写真である。
図10(a)の倍率は200倍であり、
図10(b)の倍率は1000倍である。
【0129】
実施例2のリン酸カルシウム成形体10は、第一繊維22同士および第一繊維22と第二繊維24とが一体化して交差部26が形成されていることが分かった。
【0130】
乾燥後(焼成前)および焼成後の第一繊維22および第二繊維24の繊維径は、それぞれ実施例1と略同等であった。
【0131】
実施例2のリン酸カルシウム成形体10においては、気泡28の内部で多数の第二繊維24aが終端していることが分かった。終端している第二繊維24aは端面が気泡28に露出しているためマクロファージとの接触面積が大きく、早期に分解される。したがって、骨梁状の第一繊維22と第二繊維24aとで分解速度を顕著に相違させることができた。
【0132】
以上より、多数の繊維同士が部分的に融着して形成された骨梁状の三次元構造をなすリン酸カルシウム成形体10を好適に製造できることが明らかとなった。
【0133】
(実施例3)
ブロー開口260からの吹出速度を350m/secとした点を除き実施例1と同様の条件で繊維交絡体を成形した。乾燥後(焼成前)の第一繊維22の繊維径は40μm以上70μm以下であり、第二繊維24の繊維径は20μm以上30μm以下であった。
【0134】
実施例1と同じ条件で第一から第三焼成工程を行い、HApの繊維交絡体からなる多孔体を作製した。
【0135】
図11(a)は、実施例3のリン酸カルシウム成形体10の電子顕微鏡写真である。
図11(b)は、
図11(a)にて矩形波線で示した部分の拡大写真である。
図11(a)の倍率は200倍であり、
図11(b)の倍率は1000倍である。
【0136】
本実施例のリン酸カルシウム成形体10は、第一繊維22同士が部分的に融着して形成された骨梁状の三次元構造をなしている。第一繊維22同士の融着部分(交差部26)は板状をなしている。第一繊維22における、交差部26を除く繊維部分は、当該繊維方向に沿って形成された筋状の凹部を有する縊れ形状をなしていることが分かった(
図11(b)を参照)。これは、焼成により水分とバインダーが除去されたことで、繊維が周長を保持したままで断面積が小さくなったことに起因すると考えられる。
【0137】
焼成後の第一繊維22の繊維径は50μm以上70μm以下であり、第二繊維24の繊維径は10μm以上20μm以下であった。
【0138】
(実施例4)
実施例3と同じ条件にてリン酸カルシウム成形体10の他のサンプルを作成した。
図12(a)は、実施例4のリン酸カルシウム成形体10の電子顕微鏡写真である。
図12(b)は、
図12(a)にて矩形波線で示した部分の拡大写真である。
図12(a)の倍率は200倍であり、
図12(b)の倍率は1000倍である。
【0139】
実施例4のリン酸カルシウム成形体10は、第一繊維22同士および第一繊維22と第二繊維24とが一体化して交差部26が形成されていることが分かった。
【0140】
乾燥後(焼成前)および焼成後の第一繊維22および第二繊維24の繊維径は、それぞれ実施例3と略同等であった。
【0141】
(実施例5)
顆粒状に破砕されたリン酸カルシウム成形体を粉材として含み、メタクリレートモノマーを液剤として含む、粉液型の重合性組成物を製造した。この組成物は骨セメントとして有用である。以下、具体的に説明する。
【0142】
・粉材
実施例3で製造したリン酸カルシウム繊維を回転ボールミルで破砕後、得られた粉末を篩がけにより分級して、粒度範囲が90μmから9μmの範囲にあり、平均粒度が22μmの顆粒状粉末を得た。この粉末に対して、有機リン酸化合物を用いて表面処理を行って、表面処理リン酸カルシウム顆粒状粉末を得た。有機リン酸化合物としては、10−メタクリロキシデシルジハイドロジェンフォスフェート(10-Methacryloyloxy dihydrogen phosphate:MDP)を用いた。この粉末50質量部、メチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合体50質量部、シリカ微粉末(商品名:アエロジル200)0.5質量部、過酸化ベンゾイル0.3質量部を均一に混合して、粉材とした。
【0143】
・液剤
メチルメタクリレートモノマー70質量部、ウレタンジメタクリレート(2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート1モルとヒドロキシエチルメタクリレート2モルとの付加物で、通称、UDMA)15質量部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート15質量部、ジメチル−p−トルイジン1質量部を均一に混合溶解して液剤とした。
【0144】
この液剤1質量部に対して、上記の粉材1.9質量部を混合すると、骨セメントとして良好な粘ちょう度を有する組成物が得られた。該ペーストを37℃24時間エージング後に、硬化物から2×2×25mmの棒状試験片を成型した。該試験片の曲げ強度を測定すると、86MPaであり、骨セメントとしては良好な強度を有していた。
【0145】
(実施例6)
以下の組成で、歯磨き材として適切な組成物を得た。実施例3で製造したリン酸カルシウム繊維を回転ボールミルで破砕後、得られた粉末を篩がけにより分級して、粒度範囲が55μmから5μmの範囲にあり、平均粒度が18μmの粉末を得た。この粉末を以下の成分と共に均一に混合して、歯磨き剤として適切な組成物を得た。
【0146】
リン酸カルシウム粉末 10質量部
エリスリトール 30質量部
濃グリセリン 25質量部
キサンタンガム 0.5質量部
シリカ粉末 3質量部
カルボキシメチルセルロース 0.3質量部
フッ化ナトリウム 0.2質量部
ラウリル硫酸ナトリウム 0.6質量部
サッカリンナトリウム 0.1質量部
水 30.3質量部
(合計:100質量部)
【0147】
(実施例7)
実施例6で製造したリン酸カルシウムの粉末を含む、リン酸四カルシウムと無水リン酸一水素カルシウムを主成分とする水硬化性リン酸カルシウムセメントを調製した。
【0148】
平均粒径21μmのリン酸四カルシウム粉末145.8g、平均粒径1.2μmの無水リン酸一水素カルシウム54.2g、シリカ微粉末(商品名:アエロジル200)0.5g、実施例6で用いたリン酸カルシウム粉末25gを均一に混合して、粉材を作成した。
【0149】
一方、リン酸水素二ナトリウムを2質量%含む蒸留水を液剤とした。上記の粉材4質量部に対して液剤1.5質量部を加えて錬和することで、リン酸カルシウムセメントとして良好な粘ちょう度を持ったペーストが得られた。また、このペーストは、37℃、100%湿度雰囲気下で、12分30秒で硬化した。
【0150】
以上より、本発明のリン酸カルシウム成形体を種々の用途に好適に用いられることが確認された。
【0151】
上記実施形態および実施例は、以下の技術的思想を包含する。
(1)リン酸カルシウムからなる多数の繊維同士が部分的に融着して形成された骨梁状の三次元構造をなす骨補填材。
(2)前記繊維が、第一繊維と、前記第一繊維よりも細径の第二繊維と、を含み、前記第一繊維同士が融着して連続気泡を内包する骨梁状をなし、前記第二繊維が前記連続気泡の内部で互いに非融着に交絡していることを特徴とする上記(1)に記載の骨補填材。
(3)前記第一繊維同士の融着部分が板状をなし、前記第一繊維における前記融着部分を除く繊維部分は、当該繊維方向に沿って形成された筋状の凹部を有する縊れ形状をなしている上記(2)に記載の骨補填材。
(4)塊状に加圧成形されてなる上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の骨補填材。
(5)前記塊状が棒状である上記(4)に記載の骨補填材と、前記骨補填材を収容する外套部、および前記骨補填材を保持するとともに前記外套部に対して移動可能に設けられたホルダ部を含み、前記ホルダ部を操作することで前記骨補填材を前記外套部から繰り出すディスペンサと、を備える骨補填材供給装置。
(6)縦横寸法よりも小さな厚さ寸法をもつ削片形状をなし、前記削片形状の内部で前記第一繊維が連続的に延在している上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の骨補填材。
(7)リン酸カルシウムを溶媒に分散させたスラリーを複数のダイから吐出しながらスラリーブロー法により長繊維状に成形する工程と、成形された複数の前記長繊維から前記溶媒の一部を乾燥除去しながら前記長繊維同士を互いに交絡させる工程と、前記長繊維同士の交絡部に残留する前記溶媒により前記交絡部における前記長繊維を互いに融着させる工程と、前記交絡部が融着した前記長繊維を焼成して前記溶媒を除去して実質的にリン酸カルシウムのみからなる骨梁状の三次元構造を形成する工程と、を含む骨補填材の製造方法。
(8)前記ダイが、第一ノズルと、前記第一ノズルよりも小さな開口径の第二ノズルと、を含み、前記長繊維を互いに融着させる工程において、前記第一ノズルから吐出される第一繊維同士を融着させることを特徴とする上記(7)に記載の骨補填材の製造方法。
(9)前記スラリーに水溶性かつ可食性の多糖類が分散されており、前記交絡部が融着した前記長繊維を塊状に加圧成形したのちに焼成して前記多糖類を除去することを特徴とする上記(7)または(8)に記載の骨補填材の製造方法。
(10)前記交絡部が融着した前記長繊維を水溶性かつ可食性の多糖類で被覆したうえで成形する工程と、成形された前記長繊維を焼成して前記多糖類を除去する工程と、を更に含む上記(7)から(9)のいずれか1つに記載の骨補填材の製造方法。
【0152】
また、上記実施形態および実施例は、更に以下の技術的思想を包含する。
(11)リン酸カルシウムからなる多数の繊維を互いに交絡させた骨補填材であって、前記繊維が、平均繊維径の異なる第一繊維群および第二繊維群を含むことを特徴とする骨補填材。
(12)前記第一繊維群の平均繊維径が20μm以上200μm以下であり、前記第二繊維群の平均繊維径が前記第一繊維群の平均繊維径よりも小さくかつ5μm以上50μm未満である上記(11)に記載の骨補填材。
(13)前記第一繊維群の繊維本数が前記第二繊維群の繊維本数の0.5倍以上5倍以下である上記(11)または(12)に記載の骨補填材。
(14)塊状に加圧成形されてなる上記(11)から(13)のいずれか1つに記載の骨補填材。
(15)前記塊状が棒状である上記(14)に記載の骨補填材と、前記骨補填材を収容する外套部、および前記骨補填材を保持するとともに前記外套部に対して移動可能に設けられたホルダ部を備え、前記ホルダ部を操作することで前記骨補填材が前記外套部から繰り出されることを特徴とする骨補填材供給装置。
(16)前記外套部から突出した前記骨補填材を切断する切断部を更に備える上記(14)に記載の骨補填材供給装置。
(17)上記(11)に記載の骨補填材の製造方法であって、リン酸カルシウムを溶媒に分散させたスラリーを、第一ノズル、および前記第一ノズルよりも小さな開口径の第二ノズルから吐出しながらスラリーブロー法により長繊維状に成形する工程と、成形された複数の前記長繊維から前記溶媒の一部を除去しながら前記長繊維同士を互いに交絡させる工程と、交絡した前記長繊維を焼成する工程と、を含む骨補填材の製造方法。
(18)前記スラリーに水溶性かつ可食性の多糖類が分散されており、交絡した前記長繊維を塊状に加圧成形したのちに焼成して前記多糖類を除去することを特徴とする上記(17)に記載の骨補填材の製造方法。
(19)交絡した前記長繊維を水溶性かつ可食性の多糖類で被覆したうえで成形する工程と、成形された前記長繊維を焼成して前記多糖類を除去する工程と、を更に含む上記(17)または(18)に記載の骨補填材の製造方法。