(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース部は、前記第1レールと交差する方向に延びる第2レールと、前記第2レールに係合し、前記第2レールに対してスライド移動可能であるとともに、前記第1レールが固定される第2スライダとを有し、
前記ガイドは、前記第2スライダまたは前記第1レールに固定されていることを特徴とする請求項3に記載の乗物用シート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明において、前後、左右および上下は、乗物用シートに座る人を基準とする。
【0030】
図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用シートSは、リクライニング可能であるとともに、車体のフロアに対して前後左右にスライド移動可能に構成されたシートである。車両用シートSは、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3と、オットマンS4と、サイドカバーS5とを主に備えている。
【0031】
シートクッションS1およびシートバックS2は、
図2に示すような第1スライドレール機構SL1を介してベース部1に支持されるシートフレーム2に、ウレタンフォームなどのクッション材からなるクッションパッドと、合成皮革や布地などからなる表皮材を被せることで構成されている。
【0032】
オットマンS4は、乗員の足を支えるためのクッションであり、図示しない公知のフレームにクッションパッドおよび表皮材を被せることで構成されている。そして、オットマンS4は、図示しない公知のオットマン作動機構によって、シートクッションS1よりも前側に突出して乗員の足を支える支持位置(2点鎖線参照)と、当該支持位置よりも下方の収納位置(実線参照)との間で変位可能となっている。
【0033】
サイドカバーS5には、オットマンS4を動作させるための第1操作レバーL1と、車両用シートSを左右方向にスライド動作させるための第2操作レバーL2と、車両用シートSの高さを調整するための第3操作レバーL3と、シートバックS2を傾動させるための第4操作レバーL4とが設けられている。また、各レバーL1,L2,L3,L4は、シートフレーム2に支持されており、サイドカバーS5は、シートフレーム2がベース部1に対してスライド移動するときに、シートフレーム2とともに移動する。
【0034】
図2に示すように、ベース部1は、第2スライドレール機構SL2を備えている。第2スライドレール機構SL2は、第2レールの一例としての縦レール11と、第2スライダの一例としての縦スライダ12とを主に有している。
【0035】
縦レール11は、前後に長く延びた形状を有し、左右に離れて同様のものが2つ平行に設けられている。各縦レール11は、フロントブラケット15とリアブラケット16により、車体のフロアに固定されている。
【0036】
縦スライダ12は、前後に長く延びた形状を有し、縦レール11に係合し、縦レール11に対してスライド移動可能に構成されている。縦スライダ12は、
図3に示すように、幅狭部12Aと、幅狭部12Aよりも左右の幅が広い幅広部12Bを有し、後側半分が前側半分よりも太くなっている。また、幅広部12Bには、後述するガイド100のクリップ122が固定される貫通孔12C(
図4(a)参照)が形成されている。
【0037】
図2に戻り、第1スライドレール機構SL1は、第1レールの一例としての横レール13と、第1スライダの一例としての横スライダ14とを主に有している。
【0038】
横レール13は、縦レール11と交差する方向、すなわち、左右に長く延びた形状を有し、前後に離れて同様のものが2つ平行に設けられている。各横レール13は、縦スライダ12の上面、すなわち、ベース部1に固定されている。
【0039】
横スライダ14は、左右に長く延びた形状を有し、横レール13に係合し、横レール13に対してスライド移動可能に構成されている。
【0040】
そして、横スライダ14は、
図7(a)に示すように、横スライダ14を横レール13に対してロックするためのスライドロック部材17を有している。スライドロック部材17は、公知の構成を有し、スライドロック部材17に設けられている係合突起が横レール13に設けられている複数の係合溝に係合することで、横スライダ14を横レール13に対しロックするようになっている。
【0041】
このスライドロック部材17は、ケーブルCによってサイドカバーS5の第2操作レバーL2に接続されており、第2操作レバーL2を操作することで、横スライダ14のロックを解除するように構成されている。具体的には、ケーブルCは、ワイヤC1と、ワイヤC1を被覆するとともに内部でワイヤC1を移動可能に保持するシースC2とからなり(
図4参照)、ワイヤC1の一端がスライドロック部材17に固定され、もう一端が第2操作レバーL2に固定されている。そして、第2操作レバーL2を操作すると、ワイヤC1がスライドロック部材17を引っ張って、係合突起が横レール13の係合溝から外れるようになっている。
【0042】
なお、ケーブルCは、右側の縦スライダ12に設けられているガイド100に保持されて、シースC2がシートフレーム2のエッジに触れないように配線されている。ガイド100の構成については後で詳述する。
【0043】
図2に示すように、シートフレーム2は、シートクッションS1を構成する着座フレーム3と、シートバックS2を構成するシートバックフレーム4を有している。
【0044】
着座フレーム3は、左右方向において対向する一対のサイドフレームの一例としての側壁31を有する略矩形の枠状に形成されたフレームである。着座フレーム3は、一対の側壁31を連結する連結部材の一例としての連結パイプ32および表皮取付部材33を有している。連結パイプ32は、円筒状のパイプであり、一対の側壁31の後端部同士を繋いでいる。表皮取付部材33は、円柱状の金属製部材であり、一対の側壁31の前後方向における中央部同士を繋いでおり、シートクッションS1の表皮材の一端に設けられた図示しないフックが係合している。
【0045】
また、着座フレーム3の右側の側壁31には、第2操作レバーL2が取り付けられている(
図7(a)参照)。
【0046】
この着座フレーム3は、横スライダ14の上面に固定されており、ベース部1に対し最も右へ寄った第1位置と最も左へ寄った第2位置との間で水平移動可能となっている。また、着座フレーム3は、縦スライダ12が縦レール11に対して前後に移動することで、ベース部1に対して前後にも水平移動可能となっている。
【0047】
シートバックフレーム4は、略矩形の枠状に形成されたフレームであり、公知の機構により、サイドカバーS5に設けられている第4操作レバーL4を操作することで、着座フレーム3に対して回動可能、すなわち、リクライニング動作が可能に設けられている。
【0048】
シートバックフレーム4は、
図5に示すように、左側の下端に、突起、具体的にはリブ41を有している。リブ41は、シートバックフレーム4の側面から左右方向外側に突出しており、後端縁に沿って上下に延びている。リブ41の下端は、シートバックフレーム4が着座フレーム3に対して起きた状態で、シートバックフレーム4の回動軸42の真下よりも後方に配置されており、シートバックフレーム4を後方へ倒すことで、回動軸42を中心に前斜め下方へ回動する。
【0049】
そして、車両用シートSは、シートバックフレーム4の後方への倒れを規制するロック部材5と、着座フレーム3が第1位置から第2位置に移動するのに連動してロック部材5によるロックを解除するロック解除機構6とを備えている。
【0050】
ロック部材5は、着座フレーム3の左側の側壁31の後部に回動可能に支持されている部材である。ロック部材5は、側壁31の左右方向外側に配置される操作部51と、側壁31の左右方向内側に配置されるロック部52とからなり、操作部51とロック部52は、側壁31を挟むようにして回転軸53で連結されている(
図7(a)参照)。
【0051】
操作部51は、回転軸53が固定され、略円形状に形成される中心部51Aと、中心部51Aから下方へ延びるケーブル固定部51Bと、中心部51Aから上方へ延びるバネ固定部51Cを有している。
【0052】
ロック部52は、基端部に回転軸53が固定され、回転軸53から後方へ延びる板状に形成されている。ロック部52の先端面52Aは、当該先端面52Aにシートバックフレーム4のリブ41の先端41Aが当接したときに、ロック部材5が回転してしまうのを抑制することができるように、リブ41の先端41Aがロック部52を押す力が回転軸53へ向かうように形成されている。
【0053】
このように構成されたロック部材5は、シートバックフレーム4が後方へ倒れたときに、ロック部52の先端がシートバックフレーム4のリブ41の先端41Aと当接可能な位置に配置されるロック位置(
図5の位置)と、ロック位置から
図5における時計回りに回動して、シートバックフレーム4が後方へ倒れたときに、シートバックフレーム4のリブ41が干渉しない位置にロック部52が配置される非ロック位置(
図9の位置)とに移動可能となっている。つまり、ロック部材5は、ロック位置に位置するとき、シートバックフレーム4が後方へ倒れるのを規制し、非ロック位置に位置するとき、シートバックフレーム4が後方へ倒れるのを許容することが可能となっている。
【0054】
そして、ロック部材5は、第1引張バネA1によって、非ロック位置からロック位置に向けて付勢されている。第1引張バネA1は、一端がロック部材5の前方で着座フレーム3の側壁31から左右方向外側に突出する支持部31Aに係止され、他端がロック部材5のバネ固定部51Cに係止されている。そして、第1引張バネA1は、バネ固定部51Cを前方へ引っ張って、ロック部材5を
図5における反時計回りに回転するように付勢している。
【0055】
ロック解除機構6は、着座フレーム3に支持されるケーブル7と、
図7(b)に示すような前側の横レール13に支持される固定板8および係合部材9とを備えている。
【0056】
ケーブル7は、
図7(a)に示すように、着座フレーム3の側壁31の外面に沿って前後に延びている。ケーブル7は、後端71がロック部材5のケーブル固定部51Bに繋がれており、前端72が着座フレーム3の枠内に入り込んで、着座フレーム3の一対の側壁31間の左右方向略中央まで延びている。そして、ケーブル7の前端72には、ケーブル7の径よりも大きいリング状の係止部73が設けられている。このように設けられるケーブル7は、第3引張バネA3によって、前端72が後端71とは反対側へ向けて付勢されている。具体的には、第3引張バネA3は、左端がケーブル7の係止部73に係止されており、右端が後述する係合部材9よりも右側で横レール13の後面13Aに固定されたバネ支持板13Bに係止されている。そして、第3引張バネA3は、ケーブル7の係止部73を右方へ引っ張っている。これにより、ケーブル7の前端72が上下や前後にぶれにくくなっている。
【0057】
また、
図7(b)に示すように、リング状の係止部73とケーブル7の前端72との接合部73Aは、ケーブル7の前端72や係止部73の厚みよりも膨らんだ丸みを帯びた形状(拡大部)となっている。これにより、係止部73が回転してしまっても、接合部73Aが後述する係合部93の溝93Aの縁に引っ掛かるので、係止部73を溝93Aから抜けにくくすることが可能となっている。
【0058】
固定板8は、略L字状に形成された板であり、横レール13の後面13Aに沿って左右方向に延びる第1板部81と、第1板部81の左端から後方へ延びる第2板部82とを有している。第1板部81は、左右方向における略中央に、左右に並んだ二つの図示しない貫通孔を有している。また、第2板部82は、後端に、前方へ向けて凹む溝82Aを有している。
【0059】
係合部材9は、ケーブル7の先端(より詳細には、係止部73や接合部73A)と係合可能な板状の部材である。係合部材9は、固定板8の第1板部81と重なる被支持部91と、被支持部91の下端から後方へ延びる連結部92と、連結部92の左端から上方へ延びる係合部93と、連結部92の右端に設けられるバネ支持部94とを有している。
【0060】
被支持部91は、固定板8の第1板部81に沿って左右方向に長く形成されており、前後方向に貫通し、左右方向に長い長孔91Aを有している。
【0061】
連結部92は、左右の大きさが被支持部91と略同じに形成され、後端が固定板8の第2板部82の後端と略同じ位置まで延びている。
【0062】
係合部93は、連結部92の後部に設けられ、固定板8の溝82Aと対向する位置に、上端から下方へ(つまり、溝82Aと異なる方向に)凹む溝93Aが形成されている。この溝93Aは、左右の幅が、ケーブル7の係止部73や接合部73Aよりも小さく設定されている。
【0063】
バネ支持部94は、連結部92の右端から右方へ突出し、先端が上方へ向けて屈曲している。そして、バネ支持部94は、先端に、左右方向に貫通した孔(符号省略)を有している。
【0064】
以上のように構成された固定板8と係合部材9は、横レール13の後面13Aに固定板8の第1板部81、係合部材9の被支持部91の順で重なるように配置されている。
【0065】
また、係合部材9は、係合部93が、ケーブル7の係止部73よりも左側、より詳細には、第1位置から第2位置へ移動する着座フレーム3が第2位置に位置する直前に、ケーブル7の係止部73と係合可能な位置に配置され、係合部93の溝93Aでケーブル7の前端72を前後方向から挟んでいる。固定板8は、第2板部82が、ケーブル7の係止部73が係合部材9の係合部93に係合する位置から第2位置までの着座フレーム3の移動距離と同じ距離以上に係合部93から左側に離れた位置に配置されており、第2板部82の溝82Aでケーブル7の前端72を上下方向から挟んでいる。
【0066】
そして、固定板8は、第1板部81に形成されている貫通孔に挿通された二つのフランジ付ピンBにより、横レール13に固定されている。また、係合部材9は、被支持部91に形成されている長孔91Aが二つのフランジ付ピンBに係合しており、これにより、横レール13(ベース部1)や固定板8に対して左右方向に移動可能となっている。
【0067】
そして、係合部材9は、第2引張バネA2によって、ケーブル7の係止部73が係合部材9の係合部93に係合したときに、係合部93が係止部73から受ける力の向きとは逆方向、つまり、右方向に向けて付勢されている。
【0068】
第2引張バネA2は、左端が係合部材9のバネ支持部94に係止され、
図7(a)に示すように、右端がバネ支持板13Bに係止されている。この第2引張バネA2は、係合部材9を右方へ向けて引っ張っている。
【0069】
また、第2引張バネA2の付勢力は、無理なく着座フレーム3を左右に動かすための力よりも小さく、ロック部材5をロック位置から非ロック位置へ移動させるのに必要な力よりも大きく設定されている。これにより、係合部材9は、ケーブル7から第2引張バネA2の付勢力以上の力が加わっていないときには、最も右に寄ってフランジ付ピンBが長孔91Aの左端に当接した状態となっており、ケーブル7から第2引張バネA2の付勢力以上の力が加わったとき、第2引張バネA2の付勢力に抗してケーブル7とともに左方へ移動することが可能となっている。
【0070】
次に、ケーブルCのシースC2を保持するガイド100について詳しく説明する。
ガイド100は、
図4に示すように、シースC2が挿通されるガイド本体110と、ガイド本体110を支持する支持部材120とから構成されている。
【0071】
ガイド本体110は、両端が開放された円筒状に形成されている。つまり、ガイド本体110は、両端に一対の開口111を有し、この一対の開口111の間に、一対の開口111を繋ぐ通路112が形成されている。このガイド本体110は、内径がシースC2の外径よりも大きくなっており、シースC2が通路112に沿ってガイド本体110内を移動可能となっている。
【0072】
また、ガイド本体110は、通路112の外側に向かうにつれて開口111が広がるように形成されている。これにより、シースC2がガイド本体110の縁に引っ掛かりにくいため、シースC2が移動しやすく、また、シースC2がガイド本体110の縁に当たって傷つくのを低減することができるようになっている。
【0073】
支持部材120は、ガイド本体110に巻かれるバンド121と、クリップ122とを有している。なお、支持部材120は、後述するクリップ122のフック124が可撓性を有するために、樹脂から形成されているのが望ましい。
【0074】
バンド121は、クリップ122と一体に形成された結束バンドであり、シースC2が通されたガイド本体110に巻かれて、ガイド本体110をクリップ122に固定している。
【0075】
クリップ122は、上下に延びる頸部123と、頸部123の下端に設けられる一対のフック124と、頸部123の上端に設けられるフランジ125とを有している。
【0076】
頸部123は、縦スライダ12に設けられている貫通孔12Cよりも細く形成されている。
【0077】
一対のフック124は、頸部123を挟んだ位置にそれぞれ設けられ、頸部123の下端から径方向外側に向かうにつれて上方に延びる板状に形成されている。このフック124は、可撓性を有しており、ガイド100を縦スライダ12に取り付ける際に撓んでクリップ122の先端が縦スライダ12の貫通孔12Cを通過できるように形成されている。
【0078】
フランジ125は、頸部123の径方向外側に延び、縦スライダ12の貫通孔12Cよりも大きくなっている。そして、フランジ125は、上面にバンド121が一体に形成されている。なお、一対のフック124の上端とフランジ125の下面の距離は、縦スライダ12の板厚と略同じに設定されている。
【0079】
このように形成されたガイド100は、
図3および
図4(a)に示すように、ガイド本体110の一対の開口111を通るようにシースC2がガイド本体110に通されており、保持しているシースC2が延びる方向に通路112が延びるように、縦スライダ12に設けられている。
【0080】
具体的には、
図4(a)に示すように、ガイド100は、縦スライダ12の貫通孔12Cにクリップ122が挿通された状態で縦スライダ12に支持されている。縦スライダ12に保持されているガイド100は、フランジ125とフック124の上端で縦スライダ12を挟んでいるので、縦スライダ12から外れにくくなっている。また、ガイド100は、頸部123と縦スライダ12の貫通孔12Cの間にあそびがあるため、縦スライダ12に対し、ガイド本体110の通路112が延びる方向に直交する軸、より詳細には、上下に延びる軸を中心に回動可能となっている。
【0081】
なお、ガイド100は、
図2に示すように、着座フレーム3の連結パイプ32や表皮取付部材33から前後方向にずれた位置に配置されているのが望ましい。このように配置することで、ガイド100を縦スライダ12に取り付ける際に、連結パイプ32や表皮取付部材33が邪魔にならないので、取り付け作業がしやすい。
【0082】
以上のように構成された車両用シートSの作用および効果について説明する。
図7(a)に示すように、車両用シートSが最も右側へ位置するとき、着座フレーム3は第1位置に位置し、ロック部材5は、
図5に示すようなロック位置に位置している。このとき、第4操作レバーL4を操作してシートバックフレーム4を後方へ倒すと、
図6に示すように、シートバックフレーム4のリブ41の先端41Aがロック部材5のロック部52の先端面52Aに当接し、シートバックフレーム4の後方への回動が規制される。
【0083】
このように着座フレーム3が第1位置に位置するときにシートバックフレーム4の後方への回動を規制することで、車両用シートSの後方に、例えば、ホイールハウスなどの車体の一部がある場合であっても、シートバックフレーム4が当該車体の一部と干渉するのを抑制することができる。
【0084】
そして、シートバックフレーム4を起こした状態で第2操作レバーL2を操作して着座フレーム3を左方へ移動させると、
図8に示すように、第2位置に位置する直前に、ケーブル7の係止部73が係合部材9の係合部93(溝93Aの縁)に引っ掛かって係合する。つまり、着座フレーム3が第1位置から第2位置に移動する間に、係合部93がケーブル7の係止部73と係合する。
【0085】
この状態で、着座フレーム3が第2位置に向けてさらに左方へ移動すると、ケーブル7の係止部73から係合部93に左方へ向かう力が働くが、係合部材9を右方へ引っ張る第2引張バネA2の付勢力が、この力よりも大きいため、係合部材9は固定板8に対し移動しない。これにより、係合部93がケーブル7を引っ張るので、
図8に示すように、ケーブル7がロック部材5を回転させて、ロック位置から非ロック位置へ向けて移動させ、ロック部材5によるロックを解除する。
【0086】
そして、着座フレーム3が第2位置に位置するときには、
図10に示すように、第4操作レバーL4を操作してシートバックフレーム4を後方へ倒しても、シートバックフレーム4のリブ41がロック部材5と干渉しないので、シートバックフレーム4を大きく倒すことができる。
【0087】
そして、
図8に示すように、着座フレーム3を第1位置から第2位置へ向けて移動させているとき、ケーブルC全体が着座フレーム3と一緒に移動する。このとき、ケーブルCのシースC2は、ガイド100の通路112を通ってガイド100に対して移動することができるので、ケーブルCがガイド100に引っ掛からない。これにより、着座フレーム3をスムーズにスライド移動させることができる。そして、このとき、移動するシースC2がガイド100に引っ張られないので、シースC2が変形するのを抑制することができる。
【0088】
また、着座フレーム3が縦スライダ12(ガイド100)に対して移動することで、ガイド100の位置におけるケーブルCの曲がり方が変わっても、ガイド100が縦スライダ12に対して回動可能であるため、ケーブルCの曲がり方に合わせて、ガイド100の開口111の向きを変えることができる。これにより、シースC2の可動領域が広がり、シースC2の変形をより抑制することができる。
【0089】
また、ガイド100は、縦スライダ12の幅広部12B、つまり、剛性の高い部分に設けられているので、ガイド100がシースC2から力を受けても、安定してガイド100を支持することができる。
【0090】
そして、車両用シートSを第2位置から第1位置へ戻すときには、第4操作レバーL4を操作してシートバックフレーム4を起こしてから第2操作レバーL2を操作して移動させる。着座フレーム3が第2位置から第1位置へ向けて移動すると、ケーブル7の係止部73が右方へ移動するため、係合部材9の係合部93とケーブル7の係合が解除される。これにより、ケーブル7が係合部93に引っ張られなくなるので、ロック部材5が第1引張バネA1の付勢力により非ロック位置からロック位置へ移動する。
【0091】
なお、この着座フレーム3を第2位置から第1位置へ移動するときも、ケーブルCのシースC2は、ガイド100に案内されて移動することができるので、シースC2がガイド100に引っ掛からない。これにより、着座フレーム3をスムーズにスライド移動させることができる。そして、このとき、シースC2がガイド100に引っ張られないので、シースC2が変形するのを抑制することができる。
【0092】
ところで、着座フレーム3が第1位置に位置するときに、シートバックフレーム4に力をかけて後方に無理矢理倒した場合、ロック部材5がリブ41に引っ掛かって回転しなくなってしまうことがある。この状態のまま着座フレーム3を第2位置へ向けて移動させると、ケーブル7の係止部73が係合部材9の係合部93に係合したときに、ロック部材5が回転しないため、係合部93がケーブル7を引っ張ることができず、ケーブル7が突っ張った状態となってケーブル7から係合部93に第2引張バネA2の付勢力(所定の力)よりも大きな力が加わる。これにより、
図11(a),(b)に示すように、ケーブル7が係合部材9を第2引張バネA2の付勢力よりも大きい力で引っ張って、係合部材9を左方へ移動させる。
【0093】
このようにロック部材5が動かなくなってしまった場合は、係合部材9がケーブル7を引っ張らず、ケーブル7とともに固定板8に対し移動するので、ケーブル7の突っ張りを抑制することができる。
【0094】
そして、着座フレーム3を第1位置へ戻すと、ケーブル7の係止部73が係合部93から離間するので、係合部材9が第2引張バネA2の付勢力によって、元の位置(右へ寄った位置)に戻る。
【0095】
着座フレーム3が前後方向、すなわち、ガイド本体110の通路112が延びる方向とは異なる方向に移動するときには、縦スライダ12が縦レール11に対して移動すると、着座フレーム3とガイド100が縦スライダ12と一緒に移動する。つまり、シースC2とともにガイド100も移動するので、シースC2がガイド100に引っ張られない。これにより、着座フレーム3をスムーズにスライド移動させることができる。そして、このとき、シースC2がガイド100に引っ張られないので、シースC2が変形するのを抑制することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0097】
前記実施形態では、ガイド100のガイド本体110が円筒状に形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ガイド本体は、断面が多角形となる筒状に形成されていてもよい。また、
図12(a)に示すように、ガイド本体210は、筒の側壁の一部が切りかかれた断面視C字状に形成されていてもよい。この場合、ガイド本体210を支持部材120と一体、つまり、樹脂で形成すれば、側壁の切欠を広げてシースC2を挟み込むことができるので、ガイド100を縦スライダ12に取り付けた後に、シースC2をガイド100に保持させることができる。これにより、シースC2をガイド本体に取り付けてからガイド100を縦スライダ12に取り付ける場合に比べて、ガイド100の取り付け作業が簡単になる。
【0098】
そして、前記実施形態では、ガイド100のガイド本体110が筒状に形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図12(b)に示すように、ガイド本体310は、支持部材120のフランジ125の上面に固定された一対のリング311によって構成されていてもよい。一対のリング311は、シースC2の延びる方向に離れた位置に配置され、シースC2が通る開口を有している。そして、ガイド本体310は、シースC2が一対のリング311の開口を通ることで、一対のリング311の開口を繋ぐ経路に沿ってシースC2が移動するのを案内可能となっている。
【0099】
前記実施形態では、ガイド100が縦スライダ12に対して上下に延びる軸を中心に回動するように設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ガイド100は、球面ジョイントなどを利用して、ガイド本体110の通路112が延びる方向および上下方向の両方に直交する方向に延びる軸を中心に回動するように構成されていてもよい。つまり、ガイド本体110は、両端が上下動するように回動可能となっていてもよい。
【0100】
このようにガイド100を構成することで、シースC2の可動領域が広がるので、シースC2の変形をより抑制することができる。
【0101】
前記実施形態では、ガイド100は、クリップ122の頸部123が縦スライダ12の貫通孔12C内を回転することで、縦スライダ12に対して回動可能となっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ガイド本体は、クリップに対して回動可能に設けられており、ガイド本体がクリップに対して回動することで、ガイドが縦スライダ12に対して回動するように構成されていてもよい。
【0102】
これによれば、クリップの頸部が縦スライダ12の貫通孔12Cの縁に当たって削れてしまうのを低減することができる。
【0103】
前記実施形態では、ガイド100が縦スライダ12に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ガイド100は、ベース部1を構成する他の部材や横レール13に設けられていてもよい。具体的には、ガイド100は、縦レール11の側面、または、横レール13の下面に設けることができる。
【0104】
前記実施形態では、ガイド100が、第2操作レバーL2とスライドロック部材17を接続するケーブルCのシースC2を保持していたが、本発明はこれに限定されるものではない。ガイド100は、シートフレーム2に設けられているケーブル、例えば、電源供給や信号通信等に用いられるハーネスに対して設けられていてもよい。