特許第6039419号(P6039419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039419
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】シリコンウェーハ用研磨液組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20161128BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20161128BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550D
   C09K3/14 550Z
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-288932(P2012-288932)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-130966(P2014-130966A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三浦 穣史
(72)【発明者】
【氏名】古高 佑季
【審査官】 梶尾 誠哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−61089(JP,A)
【文献】 特開2012−15462(JP,A)
【文献】 特開2012−44197(JP,A)
【文献】 特開2002−329688(JP,A)
【文献】 特開2001−110760(JP,A)
【文献】 特開2010−16341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子と、
含窒素塩基性化合物と
下記一般式(1)で表される構成単位を75質量%以上含み、重量平均分子量が15万以上150万以下の水溶性高分子化合物と、
重量平均分子量が500以上25万以下の、多価アルコールアルキレンオキシド付加物と、
水系媒体と、を含み、
前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基を含む、
シリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化1】
ただし、一般式(1)において、R1は炭素数1〜2のヒドロキシアルキル基である。
【請求項2】
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物における前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物の含有量が、0.00001質量%以上0.005質量%以下である、請求項1に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項3】
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物における前記水溶性高分子化合物の含有量が、0.001質量%以上0.05質量%以下である、請求項1又は2に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項4】
前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加重合させて得られたものであり、前記多価アルコールは1分子内に水酸基を3つ以上有する、請求項1から3のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項5】
前記シリカ粒子の平均一次粒子径が5nm以上50nm以下である、請求項1から4のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む半導体基板の製造方法。
【請求項7】
前記研磨工程において、濃縮された前記シリンウェーハ用研磨液組成物を希釈してから前記シリコンウェーハの研磨に使用する、請求項6に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかの項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む、シリコンウェーハの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンウェーハ用研磨液組成物およびこれを用いた半導体基板の製造方法ならびにシリコンウェーハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体メモリの高記録容量化に対する要求の高まりから半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このため半導体装置の製造過程で行われるフォトリソグラフィーにおいて焦点深度は浅くなり、シリコンウェーハ(ベアウェーハ)の表面欠陥(LPD:Light point defects)や表面粗さ(ヘイズ:Haze)の低減に対する要求はますます厳しくなっている。
【0003】
シリコンウェーハの品質を向上する目的で、シリコンウェーハの研磨は多段階で行われている。特に研磨の最終段階で行われる仕上げ研磨は、表面粗さ(ヘイズ:Haze)の低減と研磨後のシリコンウェーハ表面のぬれ性向上(親水化)によるパーティクルやスクラッチ、ピット等の表面欠陥(LPD)の低減とを目的として行われている。
【0004】
下記特許文献1〜6には、シリコンウェーハの研磨に用いられる研磨液組成物が開示されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2は、表面粗さ(ヘイズ:Haze)低減を目的として、コロイダルシリカ、水、及び水溶解性の高分子化合物(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC))を含むシリコンウェーハの研磨用組成物を開示している。
【0006】
特許文献3は、コロイダルシリカ、水、及び特定の構造のブロック型ポリエーテルを含むシリコンウェーハの研磨用組成物を開示している。
【0007】
特許文献4は、コロイダルシリカ、水、水溶性高分子化合物(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))、および表面粗さ(ヘイズ:Haze)低減に寄与する特定の環状有機化合物(例えば、分子量が80以上500未満のクラウンエーテル)を含むシリコンウェーハの研磨用組成物を開示している。
【0008】
特許文献5は、コロイダルシリカ、水、HECおよびPVAからなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子化合物、および特定の構造のブロック型ポリエーテルを含むシリコンウェーハの研磨用組成物を開示している。
【0009】
特許文献6は、コロイダルシリカ、水、水溶性高分子化合物(HEC等の水溶性多糖類)、およびブロック型ポリエーテルが結合されたジアミン化合物を含むシリコンウェーハの研磨用組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−128070号公報
【特許文献2】特開2011−181765号公報
【特許文献3】特開2001―110760号公報
【特許文献4】特開2011―119405号公報
【特許文献5】特開2005―85858号公報
【特許文献6】特開2011―97050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、HECを用いる研磨液組成物は、HECが天然物であるセルロースを原料としているため、セルロース由来の水不溶物が含まれ、当該水不溶物が核となってシリカ粒子が凝集する等により、研磨液組成物の保存安定性が低下することがある。そして、シリカ粒子の凝集体や当該水不溶物自体の存在によって、表面欠陥(LPD)の増大を生じさせる場合がある。
【0012】
特許文献4に記載の研磨液組成物は、表面粗さ(ヘイズ:Haze)の低減を解決課題としているが、表面粗さ(ヘイズ:Haze)低減と表面欠陥(LPD)低減の両立が不十分である。
【0013】
そこで、本発明では、保存安定性に優れ、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)を低減できる、シリコンウェーハ用研磨液組成物、及び当該シリコンウェーハ用研磨液組成物を用いた半導体基板の製造方法、並びにシリコンウェーハの研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のシリコンウェーハ用研磨液組成物は、
シリカ粒子と、
含窒素塩基性化合物と、
下記一般式(1)で表される構成単位を75質量%以上含み、重量平均分子量が15万以上150万以下の水溶性高分子化合物と、
重量平均分子量が500以上25万以下の、多価アルコールアルキレンオキシド付加物と、
水系媒体と、を含み、
前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基を含む。
【化1】

ただし、前記一般式(1)において、R1は炭素数1〜2のヒドロキシアルキル基である。
【0015】
本発明の半導体基板の製造方法は、本発明のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程と、前記研磨されたシリコンウェーハを洗浄する工程を含む。
【0016】
本発明シリコンウェーハの研磨方法は、本発明のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、保存安定性に優れ、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)を低減できる、シリコンウェーハ用研磨液組成物、及び当該シリコンウェーハ用研磨液組成物を用いた半導体基板の製造方法、並びにシリコンウェーハの研磨方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、上記一般式(1)で表される構成単位を75質量%以上含み、重量平均分子量が15万以上150万以下の水溶性高分子化合物と、重量平均分子量が500以上25万以下の多価アルコールアルキレンオキシド付加物とが、シリコンウェーハ用研磨液組成物(以下、「研磨液組成物」と略称する場合もある。)に含まれ、前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物が、エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基を含むと、研磨液組成物の保存安定性が向上し、且つ、研磨液組成物で研磨されたシリコンウェーハの表面(研磨面)における表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)の双方を低減できる、という知見に基づく。
【0019】
保存安定性が高く、且つ、研磨液組成物を用いて研磨された研磨対象物の表面粗さ(ヘイズ:Haze)及び表面欠陥(LPD)の低減効果が高いという、本発明の効果の発現機構の詳細は明らかではないが、出願人は、以下のように推定している。
【0020】
本発明では、重量平均分子量が15万以上150万以下の水溶性高分子化合物が上記一般式(1)で表される構成単位を75質量%以上含み、その構成単位中に、シリカ粒子と相互作用する部位であるアミド基と、シリコンウェーハと相互作用する部位である水酸基の両方を含む。そのため、水溶性高分子化合物がシリコンウェーハ表面に適度に吸着して含窒素塩基性化合物によるウェーハ表面の腐食を抑制するとともに、良好なぬれ性を発現し、ウェーハ表面の乾燥により生じると考えられるウェーハ表面へのパーティクルの付着を抑制する。また、本発明の研磨液組成物は、原料由来の水不溶物を含まないので、水不溶物を核とするシリカ粒子の凝集等は起こらず、保存安定性が高い。更に、本発明では、多価アルコールアルキレンオキシド付加物がシリカ粒子表面およびシリコンウェーハ表面に各々適切な強度で吸着する。そのため、多価アルコールアルキレンオキシド付加物がシリカ粒子表面にさらに吸着してシリカ粒子の分散性を向上する。また、多価アルコールアルキレンオキシド付加物が、ウェーハ表面に補助的に吸着することで上記水溶性高分子化合物による効果を補完することができる。
【0021】
このように、本発明では、水溶性高分子化合物及び多価アルコールアルキレンオキシド付加物の共存により、研磨液組成物の保存安定性の向上と、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)および表面粗さ(ヘイズ:Haze)の低減が実現されているものと推定している。但し、本発明はこれらの推定に限定されるものではない。
【0022】
[水溶性高分子化合物(成分A)]
本発明の研磨液組成物は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、下記一般式(1)で表される構成単位Iを75質量%以上含み、重量平均分子量が15万以上150万以下の水溶性高分子化合物(成分A)を含有する。尚、本発明において、水溶性高分子化合物の「水溶性」とは、水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいう。また、「下記一般式(1)で表される構成単位を75質量%以上含み」とは、水溶性高分子化合物の1分子中における構成単位Iの質量が、水溶性高分子化合物の重量平均分子量(Mw)の75%以上であることを意味する。また、下記一般式(1)において、R1は炭素数1〜2のヒドロキシアルキル基である。シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、上記一般式(1)において、R1は、ヒドロキシエチル基が好ましい。
【化2】
【0023】
一般式(1)で表される構成単位Iの供給源である単量体としては、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)またはN−ヒドロキシメチルアクリルアミド(HMAA)であるが、これらは、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの単量体のなかでも、表面欠陥の観点からHEAAが好ましい。
【0024】
水溶性高分子化合物(成分A)の全構成単位中における前記構成単位Iの割合は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、75質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%がさらにより好ましい。
【0025】
水溶性高分子化合物(成分A)は、本発明の効果が奏される限りにおいて、前記構成単位I以外の構成単位を含んでいてもよい。構成単位I以外の構成単位(構成単位IIともい
う。)は、前記構成単位Iと共重合できる化合物であればよいが、シリコンウェーハ表面
の表面欠陥低減の観点から、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、ビニルピロリドン(VP),ジメチルアクリルアミド(DMAA)およびジエチルアクリルアミド(DEAA)からなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマーに由来する構成単位IIが好ましく、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)がより好ましい。
【0026】
尚、水溶性高分子化合物(成分A)が、一般式(1)で表される構成単位Iと構成単位I以外の構成単位とを含む共重合体である場合、構成単位Iと構成単位I以外の構成単位の共重合体における配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0027】
水溶性高分子化合物(成分A)の具体例としては、例えば、HEAA単独重合体、HMAA単独重合体、HEAAとHMAAの共重合体、HEAAとNIPAMの共重合体、HMAAとNIPAMの共重合体、HEAAとHMAAとNIPAMの共重合体、HEAAとMAAの共重合体、HEAAとAAの共重合体、HEAAとVPの共重合体、HEAAとDMAAの共重合体、HEAAとDEAAの共重合体、HMAAとMAAの共重合体、HMAAとAAの共重合体、HMAAとVPの共重合体、HMAAとDMAAの共重合体、HMAAとDEAAの共重合体が挙げられるが、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、HEAA単独重合体、HMAA単独重合体、HEAAとHMAAの共重合体がより好ましく、HEAA単独重合体が更に好ましい。
【0028】
水溶性高分子化合物(成分A)の重量平均分子量はシリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、15万以上150万以下であるが、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、20万以上が好ましく、25万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、シリコンウェーハ表面の表面欠陥及び表面粗さの低減の観点及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、120万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、80万以下が更に好ましく、50万以下がより更に好ましい。尚、水溶性高分子化合物(成分A)の重量平均分子量は後の実施例に記載の方法により測定される。
【0029】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子化合物(成分A)の含有量は、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)の低減の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上がより更に好ましい。また、水溶性高分子化合物(成分A)の含有量は、シリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ:Haze)の低減および保存安定性の向上の観点から、0.05質量%以下が好ましく、0.035質量%以下がより好ましく、0.025質量%以下が更に好ましく、0.015質量%以下がより更に好ましい。
【0030】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子化合物(成分A)とシリカ粒子(成分D)の質量比(水溶性高分子化合物(成分A)の質量/シリカ粒子(成分D)の質量)は、シリカ粒子の分散性向上、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましく、0.025以上が更により好ましく、0.035以上が更により好ましく、また、0.20以下が好ましく、0.14以下がより好ましく、0.10以下が更に好ましく、0.08以下が更により好ましく、0.06以下が更により好ましい。
【0031】
[多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)]
多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、多価アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加重合させて得られる多価アルコール誘導体である。本発明の研磨液組成物は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、重量平均分子量が500以上25万以下の、多価アルコールアルキレンオキシド付加物を含む。多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基を含む。
【0032】
多価アルコールエチレンオキシド付加物(成分B)の重量平均分子量は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、500以上であるが、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、2000以上が更に好ましく、4000以上が更により好ましく、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減および、研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、25万以下であるが、22万以下が好ましく、18万以下がより好ましく、5万以下が更に好ましく、3万以下が更により好ましく、1万以下が更により好ましい。
【0033】
多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)の元(原料)となる多価アルコールの水酸基数は、シリコンウェーハ表面への多価アルコールアルキレンオキシド付加物の吸着強度を高める観点、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、2個以上が好ましく、研磨速度の確保の観点から、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましく、6個以下が更により好ましく、4個以下が更により好ましい。
【0034】
多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)は、具体的には、エチレングリコールアルキレンオキシド付加物、グリセリンアルキレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールアルキレンオキシド付加物等が挙げられるが、これらの中でも、分岐鎖を有することによって分子サイズが小さく、それ故にシリコンウェーハ表面への吸着速度が大きいと考えられる、グリセリンアルキレンオキシド付加物、及びペンタエリスリトールアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0035】
多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、エチレンオキシ基(EO)およびプロピレンオキシ基(PO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基を含むが、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、多価アルコールアルキレンオキシド付加物に含まれるアルキレンオキシド基は、EOおよびPOからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基からなると好ましく、EOからなるとより好ましい。多価アルコールアルキレンオキシド付加物が、EOとPOの両方を含む場合、EOとPOの配列はブロックでもランダムでもよい。シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、EOの平均付加モル数は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、50以上が更に好ましく、100以上が更により好ましく、また、5000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、800以下が更に好ましく、200以下が更により好ましく、POの平均付加モル数は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、50以上が更に好ましく、また、5000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、800以下が更に好ましく、200以下が更により好ましい。
【0036】
本発明の研磨液組成物に含まれる多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)の含有量は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、0.00001質量%以上が好ましく、0.0003質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上が更に好ましい。また、多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)の含有量は、研磨速度の確保の観点から、0.005質量%以下が好ましく、0.0020質量%以下がより好ましく、0.0018質量%以下が更に好ましい。
【0037】
本発明の研磨液組成物に含まれる多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)とシリカ粒子(成分D)の質量比(多価アルコールアルキレンオキシド付加物の質量/シリカ粒子の質量)は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、0.00004以上が好ましく、0.0012以上がより好ましく、0.002以上が更に好ましく、また、0.02以下が好ましく、0.0080以下がより好ましく、0.0072以下が更に好ましい。
【0038】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子化合物(成分A)と多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)の質量比(水溶性高分子化合物の質量/多価アルコールアルキレンオキシド付加物の質量)は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、また、200以下が好ましく、100以下がより好ましく、60以下が更に好ましく、40以下がより更に好ましい。
【0039】
[含窒素塩基性化合物(成分C)]
本発明の研磨液組成物は、研磨液組成物の保存安定性の向上、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、水溶性の塩基性化合物を含有する。水溶性の塩基性化合物としては、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物である。ここで、「水溶性」とは、水に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいい、「水溶性の塩基性化合物」とは、水に溶解したとき、塩基性を示す化合物をいう。
【0040】
アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N一ジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、および水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。これらの含窒素塩基性化合物は2種以上を混合して用いてもよい。本発明の研磨液組成物に含まれ得る含窒素塩基性化合物としては、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、アンモニアがより好ましい。
【0041】
本発明の研磨液組成物に含まれる含窒素塩基性化合物の含有量は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減、研磨液組成物の保存安定性の向上、及び研磨速度の確保の観点から、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上がより更に好ましい。また、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が更に好ましく、0.03質量%以下が更により好ましい。
【0042】
[シリカ粒子(成分D)]
本発明の研磨液組成物には、研磨材としてシリカ粒子が含まれる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられるが、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
【0043】
シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状が好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれる研磨材がコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコンウェーハの汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
【0044】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保の観点から、5nm以上が好ましくは、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、30nm以上が更により好ましい。また、シリカ粒子の平均一次粒子径は、研磨速度の確保と、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。
【0045】
特に、シリカ粒子としてコロイダルシリカを用いた場合には、研磨速度の確保、およびシリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、平均一次粒子径は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、30nm以上が更により好ましく、また、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。
【0046】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて算出される。比表面積は、例えば、実施例に記載の方法により測定
できる。
【0047】
シリカ粒子の会合度は、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、1.1以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、また、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.3以下がさらに好ましい。シリカ粒子の形状はいわゆる球型といわゆるマユ型であることが好ましい。シリカ粒子がコロイダルシリカである場合、その会合度は、研磨速度の確保、およびシリコンウェーハ表面の表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、1.1以上が好ましく、1.8以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましく、また、3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.3以下がさらに好ましい。
【0048】
シリカ粒子の会合度とは、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出される。平均二次粒子径は、動的光散乱法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
【0049】
シリカ粒子の会合度の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平6−254383号公報、特開平11−214338号公報、特開平11−60232号公報、特開2005−060217号公報、特開2005−060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
【0050】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、研磨速度の確保の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましい。また、経済性の観点から10質量%以下が好ましく、7.5質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下が更により好ましい。
【0051】
[水系媒体(成分E)]
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体(成分E)としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒との混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。本発明の成分Eが、水と溶媒との混合媒体である場合、成分Eである混合媒体全体に対する水の割合は、特に限定されるわけではないが、経済性の観点から、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましく、100質量%が更により好ましい。
【0052】
本発明の研磨液組成物における水系媒体の含有量は、特に限定されるわけではなく、成分A〜成分D、及び、後述する任意成分の残余であってよい。
【0053】
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、研磨速度の確保の観点、シリコンウェーハの表面欠陥及び表面粗さの低減の観点から、8.0以上が好ましく、9.0以上がより好ましく、9.5以上が更に好ましく、また、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましく、11.0以下が更に好ましい。pHの調整は、pH調整剤(例えば、アンモニア)を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0054】
[任意成分]
本発明の研磨液組成物には、本発明の効果が妨げられない範囲で、さらに水溶性高分子化合物(成分A)以外の水溶性高分子化合物、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤および非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
【0055】
〈防腐剤〉
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、(5−クロロ−)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
【0056】
〈アルコール類〉
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2−メチル−2−プロパノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるアルコール類の含有量は、0.1質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0057】
〈キレート剤〉
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるキレート剤の含有量は、0.01質量%以上1質量%以下が好ましい。
【0058】
〈非イオン性界面活性剤〉
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0059】
なお、上記において説明した各成分の含有量は、使用時における含有量であるが、本発明の研磨液組成物は、経済性、操作性の観点から、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストをさらに低くできる点で好ましい。濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用すればよい。濃縮倍率としては、希釈した後の研磨時の濃度を確保できれば、特に限定するものではないが、経済性、操作性の観点から、2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、20倍以上が更に好ましく、30倍以上がさらにより好ましく、また、80倍以下が好ましく、60倍以下がより好ましく、50倍以下が更に好ましく、45倍以下がさらにより好ましい。
【0060】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における水溶性高分子化合物(成分A)の含有量は、経済性、操作性の観点から、0.08質量%以上が好ましく、0.16質量%以上がより好ましく、0.28質量%以上が更に好ましいく、0.3質量%以上が更により好ましく、0.35質量%以上が更により好ましい。また、濃縮液中における水溶性高分子化合物(成分A)の含有量は、保存安定性の向上の観点から、5.0質量%以下が好ましく、1.4質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下が更に好ましく、0.6質量%以下が更により好ましい。
【0061】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)の含有量は、経済性、操作性の観点から、0.0004質量%以上が好ましく、0.004質量%以上がより好ましく、0.012質量%以上が更に好ましく、0.02質量%以上が更により好ましい。また、濃縮液中における多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)の含有量は、保存安定性の向上の観点から0.2質量%以下が好ましく、0.080質量%以下がより好ましく、0.072質量%以下が更に好ましい。
【0062】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液における含窒素塩基性化合物(成分C)の含有量は、経済性、操作性の観点から、0.04質量%以上が好ましく、0.12質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましく、0.28質量%以上が更により好ましい。また、濃縮液中における含窒素塩基性化合物(成分C)の含有量は、保存安定性の向上の観点から、保存安定性の向上の観点から、40質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましく、1.2質量%以下が更により好ましい。
【0063】
本発明の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、濃縮液におけるシリカ粒子(成分D)の含有量は、経済性、操作性の観点から、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。また、濃縮液中におけるシリカ粒子の含有量は、保存安定性の向上の観点から、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0064】
次に、本発明の研磨液組成物の製造方法の一例について説明する。
【0065】
本発明の研磨液組成物の製造方法の一例は、何ら制限されず、例えば、水溶性高分子化合物(成分A)と、多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)と、含窒素塩基性化合物(成分C)と、シリカ粒子(成分D)と、水系媒体(成分E)と、必要に応じて任意成分とを混合することによって調製できる。
【0066】
シリカ粒子の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。シリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去すると好ましい。シリカ粒子の水系媒体への分散は、水溶性高分子化合物(成分A)および多価アルコールアルキレンオキシド付加物(成分B)の存在下で行うと好ましい。
【0067】
本発明の研磨液組成物は、例えば、ベアウェーハ等の半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハを研磨する研磨工程や、シリコンウェーハを研磨する研磨工程を含むシリコンウェーハの研磨方法に用いられる。
【0068】
前記シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平坦化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本発明の研磨液組成物は、上記仕上げ研磨工程で用いられるとより好ましい。
【0069】
前記半導体基板の製造方法や前記シリコンウェーハの研磨方法では、シリコンウェーハを研磨する研磨工程の前に、本発明の研磨液組成物(濃縮液)を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、水系媒体(成分E)を用いればよい。
【0070】
前記希釈工程で希釈される濃縮液は、製造および輸送コスト低減、保存安定性の向上の観点から、例えば、成分Aを0.35質量%以上0.6質量%以下、成分Bを0.02質量%以上0.072質量%以下、成分Cを0.28質量%以上1.2質量%以下、成分Dを8質量%以上15質量%以下含んでいると好ましい。
【0071】
本発明は、更に以下<1>〜<20>を開示する。
【0072】
<1>
シリカ粒子と、
含窒素塩基性化合物と
下記一般式(1)で表される構成単位を75質量%以上含み、重量平均分子量が15万以上150万以下の水溶性高分子化合物と、
重量平均分子量が500以上25万以下の、多価アルコールアルキレンオキシド付加物と、
水系媒体と、を含み、
前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基を含む、
シリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化3】

ただし、一般式(1)において、R1は炭素数1〜2のヒドロキシアルキル基である。
<2>
前記水溶性高分子化合物の全構成単位中における前記構成単位Iの割合は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましく、100質量%がさらにより好ましい、前記<1>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<3>
前記水溶性高分子化合物が、前記構成単位I以外の構成単位IIとして、好ましくはN−
イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、ビニルピロリドン(VP),ジメチルアクリルアミド(DMAA)およびジエチルアクリルアミド(DEAA)からなる群から選ばれる少なくとも一種のモノマーに由来する構成単位、より好ましくはN−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を含む、前記<1>又は<2>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<4>
前記水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、20万以上が好ましく、25万以上がより好ましく、30万以上が更に好ましく、120万以下が好ましく、100万以下がより好ましく、80万以下が更に好ましく、50万以下がより更に好ましい、前記<1>から<3>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<5>
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物における前記水溶性高分子化合物の含有量は、好ましくは0.001質量%以上0.05質量%以下であって、0.002質量%以上がより好ましく、0.004質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上がより更に好ましく、0.035質量%以下がより好ましく、0.025質量%以下が更に好ましく、0.015質量%以下がより更に好ましい、前記<1>から<4>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<6>
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物に含まれる前記水溶性高分子化合物とシリカ粒子の質量比(水溶性高分子化合物の質量/シリカ粒子の質量)は、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.02以上が更に好ましく、0.025以上が更により好ましく、0.035以上が更により好ましく、0.20以下が好ましく、0.14以下がより好ましく、0.10以下が更に好ましく、0.08以下が更により好ましく、0.06以下が更により好ましい、前記<1>から<5>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<7>
前記多価アルコールエチレンオキシド付加物の重量平均分子量は、1000以上が好ましく、1200以上がより好ましく、2000以上が更に好ましく、4000以上が更により好ましく、22万以下が好ましく、18万以下がより好ましく、5万以下が更に好ましく、3万以下が更により好ましく、1万以下が更により好ましい、前記<1>から<6>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<8>
前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物は、多価アルコールにアルキレンオキシドを付加重合させて得られたものであり、好ましくは前記多価アルコールは1分子内に水酸基を3つ以上有し、10個以下が好ましく、8個以下がより好ましく、6個以下が更により好ましく、4個以下が更により好ましい、前記<1>から<7>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<9>
多価アルコールアルキレンオキシド付加物に含まれるアルキレンオキシド基は、エチレンオキシ基(EO)およびプロピレンオキシ基(PO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシド基からなると好ましく、EOからなるとより好ましい、前記<1>から<8>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<10>
多価アルコールアルキレンオキシド付加物に含まれるアルキレンオキシド基はEOからなり、EOの平均付加モル数は、10以上が好ましく、20以上がより好ましく、50以上が更に好ましく、100以上が更により好ましく、また、5000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、800以下が更に好ましく、200以下が更により好ましい、前記<9>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<11>
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物における前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物の含有量が、好ましくは0.00001質量%以上0.005質量%以下であって、0.0003質量%以上がより好ましく、0.0005質量%以上が更に好ましく、0.0020質量%以下がより好ましく、0.0018質量%以下が更に好ましい、前記<1>から<10>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<12>
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物に含まれる、前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物と前記シリカ粒子の質量比(多価アルコールアルキレンオキシド付加物の質量/シリカ粒子の質量)は、0.00004以上が好ましく、0.0012以上がより好ましく、0.002以上が更に好ましく、0.02以下が好ましく、0.0080以下がより好ましく、0.0072以下が更に好ましい、前記<1>から<11>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<13>
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物に含まれる、前記水溶性高分子化合物と前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物の質量比(水溶性高分子化合物の質量/多価アルコールアルキレンオキシド付加物の質量)は、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、200以下が好ましく、100以下がより好ましく、60以下が更に好ましい、前記<1>から<12>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<14>
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物における前記含窒素塩基性化合物の含有量は、0.001質量%以上が好ましく、0.003質量%以上がより好ましく、0.005質量%以上が更に好ましく、0.007質量%以上がより更に好ましく、1質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以下が更に好ましく、0.03質量%以下が更により好ましい、前記<1>から<13>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<15>
前記シリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上50nm以下であって、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、30nm以上が更により好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい、前記<1>から<14>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<16>
前記<1>から<15>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する工程を含む半導体基板の製造方法。
<17>
前記研磨工程において、濃縮された前記シリンウェーハ用研磨液組成物を希釈してから
前記シリコンウェーハの研磨に使用する、前記<16>に記載の半導体基板の製造方法。
<18>
濃縮された前記シリンウェーハ用研磨液組成物の希釈倍率は、2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、20倍以上が更に好ましく、30倍以上がさらにより好ましく、80倍以下が好ましく、60倍以下がより好ましく、50倍以下が更に好ましく、45倍以下がさらにより好ましい、前記<17>に記載の半導体基板の製造方法。
<19>
濃縮された前記シリンウェーハ用研磨液組成物は、前記水溶性高分子化合物を0.35質量%以上0.6質量%以下、前記多価アルコールアルキレンオキシド付加物を0.02質量%以上0.072質量%以下、前記含窒素塩基性化合物を0.28質量%以上1.2質量%以下、前記シリカ粒子を8質量%以上15質量%以下含む、前記<17>または<18>に記載の半導体基板の製造方法。
<20>
前記<1>から<15>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いてシリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む、シリコンウェーハの研磨方法。
【実施例】
【0073】
〈水溶性高分子化合物(成分A)の合成〉
下記の実施例1〜39、比較例1〜12で用いた水溶性高分子化合物は下記のようにして合成した。
【0074】
(水溶性高分子化合物No.1)
[HEAA単独重合体、重量平均分子量138万]
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形テフロン製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を65℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500gを得た。
【0075】
(水溶性高分子化合物No.2)
[HEAA単独重合体、重量平均分子量43万]
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形テフロン製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入た後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を75℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。
【0076】
(水溶性高分子化合物No.3)
[HEAA単独重合体、重量平均分子量72万]
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形テフロン製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。
【0077】
(水溶性高分子化合物No.4)
[HEAA単独重合体、重量平均分子量24万]
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形テフロン製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を82℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。
【0078】
(水溶性高分子化合物No.5)
[HEAA単独重合体、重量平均分子量11万]
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol 興人製)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.175g(重合開始剤、V-50 6.50 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形テフロン製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を75℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。
【0079】
(水溶性高分子化合物No.6)
[HEAA単独重合体、重量平均分子量150万以上]
500mlのビーカーにて、ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)15g(0.13mol 興人製)と2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.035g(重合開始剤、V-50 0.13mmol 和光純薬製)を、285gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。温度計および5cm三日月形テフロン製撹拌翼を備えた500mlセパラブルフラスコ内を窒素置換した後、モノマー水溶液の10分の1をセパラブルフラスコ内に入れ、オイルバスを用いてイオン交換水の温度を55℃に昇温して、反応溶液を得た。反応溶液の増粘を確認した後、残りのモノマー溶液を前記反応溶液に対して5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、1時間撹拌を行い、さらに65℃に昇温後2時間撹拌を行った。以上より、無色透明の5%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液300gを得た。
【0080】
また、水溶性高分子化合物(成分A)の比較対象として、比較例13〜17で用いた水溶性高分子化合物の詳細は下記のとおりである。
(水溶性高分子化合物No.7)
HEC(ヒドロキシエチルセルロース):Mw120万(カタログ値)(住友精化(株)製)
(水溶性高分子化合物No.8)
HEC(ヒドロキシエチルセルロース):Mw25万(カタログ値)(ダイセル(株)製)
(水溶性高分子化合物No.9)
PVA(ポリビニルアルコール):Mw1700(カタログ値)(和光純薬製、試薬)
(水溶性高分子化合物No.10)
HEC(ヒドロキシエチルセルロース):Mw80万(カタログ値)(住友精化(株)製)
【0081】
また、下記の実施例1〜39、比較例1〜14で用いた多価アルコールアルキレンオキシド付加物及の詳細は下記のとおりである。尚、表1及び表2に記載の「アルコール構造」は、多価アルコールアルキレンオキシド付加物の元(原料)となる多価アルコールの構造を意味し、「PE」はペンタエリスリトールを、「Gly」はグリセリンを、「EG」はエチレングリコールを意味している。
(No.1)
ペンタエリスリトールのEO付加物
(EO平均付加モル数=140、日本乳化剤(株)製)
(No.2)
ペンタエリスリトールのEO付加物
(EO平均付加モル数=20、日本乳化剤(株)製)
(No.3)
ペンタエリスリトールのEO付加物
(EO平均付加モル数=450、日本乳化剤(株)製)
(No.4)
グリセリンのEO付加物(EO平均付加モル数=20、花王(株)製)
(No.5)
グリセリンのEO付加物(EO平均付加モル数=26、花王(株)製)
(No.6)
グリセリンのEO付加物(EO平均付加モル数=120、花王(株)製)
(No.7)
エチレングリコールのEO付加物
(EO平均付加モル数=25、ポリエチレングリコール、Mw1000(カタログ値)、和光一級、和光純薬工業製)
(No.8)
エチレングリコールのEO付加物
(EO平均付加モル数=150、ポリエチレングリコール、Mw6000(カタログ値)、和光一級、和光純薬工業製)
(No.9)
エチレングリコールのEO付加物
(EO平均付加モル数=500、ポリエチレングリコール、Mw20000(カタログ値)、和光一級、和光純薬工業製)
(No.10)
エチレングリコールのEO付加物(EO平均付加モル数=5000、ポリエチレンオキシド、Mw200000(カタログ値)、アルドリッチ製)
(No.11)
エチレングリコールのEO付加物(EO平均付加モル数=7.5、ポリエチレングリコール、Mw300(カタログ値)、和光一級、和光純薬工業製)
(No.12)
エチレングリコールのEO付加物(EO平均付加モル数=12500、ポリエチレングリコール、Mw300000〜500000(カタログ値)、400000(中央値)、和光一級、和光純薬工業製)
【0082】
また、多価アルコールアルキルオキシド付加物(成分B)の比較対象として、比較例15〜17で用いた水溶性高分子化合物の詳細は下記のとおりである。
(No.13)
18クラウン6エーテル(東京化成(株)製、試薬)
(No.14)
ブロック型ポリエーテル 「プルロニックF−68」(BASF社製、数平均分子量 9600(カタログ値)、ポリオキシプロピレン部の数平均分子量1920(カタログ値)、ポリオキシエチレン部の割合80%(カタログ値))
(No.15)
EG+ブロック型ポリエーテルが結合されたジアミン化合物
前記No.8の化合物と特許文献6の(7)式(下記式参照)の化合物(下記式参照)の混合物、質量比1:1
【化4】
【0083】
〈水溶性高分子化合物及び多価アルコールアルキレンオキシド付加物の重量平均分子量の測定〉
水溶性高分子化合物(No.1〜10)、多価アルコールアルキレンオキシド付加物(No.1〜12)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の測定条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づいて算出した。
〈測定条件〉
装置:HLC-8320 GPC(東ソー株式会社、検出器一体型)
カラム:GMPWXL+GMPWXL(アニオン)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:0.5ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:ポリエチレングリコール
【0084】
<研磨材(シリカ粒子)の平均一次粒子径の測定>
研磨材の平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
研磨材の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0085】
[前処理]
(a)スラリー状の研磨材を硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の研磨材をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(砥粒)をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
【0086】
<研磨材(シリカ粒子)の平均二次粒子径の測定>
研磨材の平均二次粒子径(nm)は、研磨材の濃度が0.25質量%となるように研磨材をイオン交換水に添加した後、得られた水溶液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて測定した。
【0087】
(1)研磨液組成物の調製
水溶性高分子化合物、多価アルコールアルキレンオキシド付加物、29%アンモニア水(関東化学(株))及び超純水の混合物とシリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径38nm、平均二次粒子径78nm、会合度2.1)と混合し、これらを攪拌して、実施例1〜39、比較例1〜17の研磨液組成物(pH10.6±0.2(25℃))を得た。各研磨液組成物中のシリカ粒子の含有量、水溶性高分子化合物の含有量、多価アルコールアルキレンオキシド付加物、アンモニアの含有量が、各々表1及び表2に示した値の40倍の濃縮となるように添加し、研磨液組成物の40倍濃縮液を得た。残余は超高純水である。なお表1及び表2に記載のシリカ粒子、水溶性高分子化合物、多価アルコールアルキレンオキシド付加物又はその比較対象物、アンモニアの量は、濃縮液の超純水による希釈後の値である。(希釈倍率;40倍)。希釈後の研磨液組成物のpHは、10.3±0.2(25℃)である。
【0088】
上記の通り得られた研磨液組成物の40倍濃縮液を表1又は表2の濃度となるように40倍希釈して、下記の研磨条件でシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ、伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率1Ω・cm以上100Ω・cm未満)に対して仕上げ研磨を行った。当該仕上げ研磨に先立ってシリコンウェーハに対して市販の研磨剤組成物を用いてあらかじめ下記条件で粗研磨を実施した。祖研磨後のシリコンウェーハ基板表面の表面欠陥はLPD:20個(0.15μm以上のもの)、10000個以上(50nm以上のもの)、表面粗さはHaze(DWO):1.722、Haze(DNN):6.251であった。
【0089】
(粗研磨の条件)
研磨機:片面8インチ研磨機TRCP-541(テクノライズ社製)
研磨パッド:スエードパッド(FILWEL社製 アスカー硬度66 厚さ 1.10mm ナップ長375um 開口径65um)
シリコンウェーハ研磨圧力:150g/cm2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:7分
研磨剤組成物の供給速度:200g/cm2
研磨剤組成物の温度:20℃
キャリア回転速度:60rpm
【0090】
(2)研磨方法
研磨液組成物を研磨直前にフィルター「コンパクトカートリッジフィルター MCP−LX−C10S」(アドバンテック株式会社)にてろ過を行い、下記の研磨条件で下記の粗研磨された上記シリコンウェーハに対して仕上げ研磨を行った。
【0091】
<仕上げ研磨条件>
研磨機:片面8インチ研磨機GRIND-X SPP600s(岡本工作製)
研磨パッド:スエードパッド(東レ コーテックス社製 アスカー硬度64 厚さ 1.37mm ナップ長450um 開口径60um)
シリコンウェーハ研磨圧力:100g/cm2
定盤回転速度:100rpm
研磨時間:10分
研磨剤組成物の供給速度:200g/cm2
研磨剤組成物の温度:20℃
キャリア回転速度:100rpm
【0092】
(3)洗浄−乾燥方法(仕上げ研磨後)
仕上げ研磨後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ純水をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ純水をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
【0093】
<シリコンウェーハ表面の表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)の評価>
シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)は、下記の評価条件によって求めることができる。
【0094】
洗浄後のシリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ:Haze)は、表面粗さ測定装置「Surfscan SP1」(KLA Tencor社製)を用いて測定される、暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値と、暗視野ナローノーマル入射チェンネル(DNN)での値を用いた。表面粗さに関する評価として、Haze(DWO)とHaze(DNN)の両方の測定を行ったが、Haze(DWO)は比較的短波長の表面粗さの測定に有効であり、Haze(DNN)は比較的長波長の表面粗さを測定することに向いている。そのため二種類のモードで測定することによって、幅広くシリコンウェーハの表面粗さを評価することができる。また、表面欠陥(LPD)はHaze測定時に同時に測定され、シリコンウェーハ表面の最大長さが50nm以上のパーティクル数を測定することによって評価した。その結果を表1に示した。表面欠陥(LPD)の評価結果は、数値が小さいほど表面欠陥が少ないことを示す。また、Haze(DWO)及びHaze(DNN)の数値は小さいほど表面の平坦性が高いことを示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
表1及び表2に示されるように、研磨されたシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ:Haze)及び表面欠陥(LPD)は、比較例1〜17の研磨液組成物を用いるよりも実施例1〜39の研磨液組成物を用いた方が、ともに小さく、良好であった。比較例9については、保存安定性が悪く、目視にて凝集物が観察された。故に、表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)の評価結果が悪いことは明らかであることから、表面粗さ(ヘイズ:Haze)および表面欠陥(LPD)の評価は行わなかった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の研磨液組成物を用いれば、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ:Haze)を低減できる。よって、本発明の研磨液組成物は、様々な半導体基板の製造過程で用いられる研磨液組成物として有用であり、なかでも、ベアウェーハの製造過程における、シリコンウェーハの仕上げ研磨用の研磨液組成物として有用である。