特許第6039430号(P6039430)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039430
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ヘッダー固定具
(51)【国際特許分類】
   F16L 3/10 20060101AFI20161128BHJP
   F16L 3/02 20060101ALI20161128BHJP
   F24D 3/10 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F16L3/10 Z
   F16L3/02 Z
   F24D3/10 N
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-657(P2013-657)
(22)【出願日】2013年1月7日
(65)【公開番号】特開2014-132187(P2014-132187A)
(43)【公開日】2014年7月17日
【審査請求日】2015年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596066530
【氏名又は名称】宇都宮工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082773
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(72)【発明者】
【氏名】土井 昌司
(72)【発明者】
【氏名】高井 克典
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 信之
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−209971(JP,A)
【文献】 特開2006−336411(JP,A)
【文献】 特開2005−233327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00 − 3/26
F24D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主管部から分岐するように設けられた複数の分岐管部を有するヘッダーを固定する固定具であって、適宜間隔を有して略平行に配置された二つの長尺な基部と、この両基部のうち一方の基部から他方の基部に向かって突出するように該一方の基部に設けられた複数の第一の支持部と、他方の基部から一方の基部に向かって突出するように該他方の基部に設けられた第二の支持部と、この両支持部の突出方向に対して所定角度を有して前記両基部のそれぞれに立設してなる複数の押圧部とを備え、前記両基部に設けられた第一および第二の支持部が相互に近接する任意の位置において回動自在に軸着するとともに、前記両基部に立設された前記押圧部の先端を相互に対向するように湾曲させたことを特徴とするヘッダー固定具。
【請求項2】
主管部から分岐するように設けられた複数の分岐管部を有するヘッダーに保温部材を被覆してなるヘッダーを固定する固定具であって、適宜間隔を有して略平行に配置された二つの長尺な基部と、この両基部のうち一方の基部から他方の基部に向かって突出するように該一方の基部に設けられた複数の第一の支持部と、他方の基部から一方の基部に向かって突出するように該他方の基部に設けられた第二の支持部と、この両支持部の突出方向に対して所定角度を有して前記両基部のそれぞれに立設してなる複数の押圧部とを備え、前記両基部に設けられた第一および第二の支持部が相互に近接する任意の位置において回動自在に軸着するとともに、前記両基部に立設された前記押圧部の先端を相互に対向するように湾曲させたことを特徴とするヘッダー固定具。
【請求項3】
前記押圧部の基端は、前記両基部のそれぞれの長手方向に適宜間隔を有し、かつ前記両基部において相互に対向して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッダー固定具。
【請求項4】
前記第一および第二の支持部は、前記基部のそれぞれにおいて隣接する前記押圧部の間に配置されていることを特徴とする請求項3に記載のヘッダー固定具。
【請求項5】
前記第一および第二の支持部は、前記基部のそれぞれにおいて隣接する前記押圧部の間に各1個配置され、隣接する該押圧部の中間においてそれぞれ一組ずつの支持体を形成するとともに、各組の支持体を構成する第一および第二の支持部の先端縁が相互に近接するように配置してなることを特徴とする請求項4に記載のヘッダー固定具。
【請求項6】
前記第一の支持部と第二の支持部は、全体として千鳥状に配置されている請求項4または5に記載のヘッダー固定具。
【請求項7】
前記支持部は、前記ヘッダーの分岐管部が位置する部分を支持するものであり、前記押圧部は、前記ヘッダーの主管部が位置する部分を押圧するものである請求項1ないし6に記載のヘッダー固定具。
【請求項8】
前記基部は、相互に外向きに折曲して設けられた平面状のベース部を備えている請求項1ないし7のいずれかに記載のヘッダー固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主管部から分岐するように設けられた複数の分岐管部を有するヘッダーを固定するための固定具に関し、また、主管部および分岐管部に保温部材を被覆してなるヘッダー(以下、保温部材被覆ヘッダーという)を固定する固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、住宅等における給水用または給湯用の配管に使用されるヘッダーは、床下または床スラブ表面などに設置されるが、当該ヘッダーは、当該床下における地面や床スラブの表面などに直接設置されるものではなく、適宜な高さに持ち上げられた状態で設置されるものであった(特許文献1参照)。
【0003】
ところが、ヘッダーは樹脂製であることから、当該ヘッダーを数カ所で支持する場合、その上部に重量物が載せられ、または作業者が接触することなどによって、破損するおそれがあった。そこで、ヘッダーの長手方向に沿った補強部材を使用することが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
他方、給水用または給湯用に使用されるヘッダーは、その内部を通過する水または湯の温度が外気温によって大きく変化しないために、断熱材等によって構成された保温部材を被覆していた。しかしながら、ヘッダーは、上述のように主管部から複数の分岐管部が分岐する構造であるため、保温部材によって全体を被覆することが容易ではなく、また、一度固定したヘッダーに対して後に保温部材によって被覆することは容易ではなかった。そこで、被覆する前のヘッダーを固定した状態において、容易に被覆することができる保温部材が開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−225858号公報
【特許文献2】特開2011−27242号公報
【特許文献3】特開2007−321808号公報
【特許文献4】特開2011−27242号公報(図10図11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヘッダーを固定するために開発された上記特許文献2に開示される技術は、ヘッダーの主管部を挟持する挟持部が固定部材に設けられ、この固定部材には基部が設けられ、この基部を設置位置に固定することによりヘッダーを持ち上げた状態で支持するものであり、長尺な補強部材は、当該補強部材を構成するフランジ部が前記挟持部とヘッダーの主管部とに挟まれることによって固定される構成となっていた。すなわち、固定部材が補強部材を支持すると同時に、ヘッダーの主管部をも支持するように構成されたものであった。
【0007】
しかしながら、固定部材と補強部材とは個別に設けられていることから、固定部材を設けるべき位置は、ヘッダーの分岐管部を避けるように調整する必要があり、また、補強部材は、固定部材によるヘッダーの固定時に、フランジ部を固定部材の挟持部によって支持されるようにしなければならず、これらの設置作業が繁雑ならざるを得なかった。
【0008】
他方、保温部材により被覆されるヘッダーに関し、上記特許文献3に開示される技術は、主管部と分岐管部とを一つの部材で被覆することができるように、割面を介して二分割された本体で構成され、それぞれにおいて、主管部を収容する収容空間と、分岐管部を収容する管用通孔とを備えており、さらに、ヘッダーを固定するための固定具が本体を通過できるように、固定用通孔を備えた構成となっている。そして、主管部を収容する収容空間と、分岐管部を収容する管用通孔とが、予め本体を切欠いて構成されており、二分割された本体の割面同士を当接させることによって、主管部および分岐管部を同時にかつ一体として被覆することができるものであった。
【0009】
しかしながら、上記技術は、二分割された本体を合わせることによって、主管部および分岐管部が収容できる空間を形成されるものであることから、主管部から分岐する分岐管部の方向が予め決定するものであった。すなわち、分岐管の向きを変化させることができる構造のヘッダー(特許文献4参照)には使用できないものであった。このような場合には、断熱材を有する筒状部材(いわゆる保温筒と称されるもの)によってヘッダーを被覆していたが、ヘッダーの固定部材の存在により、十分な被覆が行えなかった。
【0010】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、容易にヘッダーを固定できる固定具を提供し、また、いわゆる保温筒によって被覆した状態のヘッダー(保温部材被覆ヘッダー)についても容易に固定できる固定具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、主管部から分岐するように設けられた複数の分岐管部を有するヘッダー、または上記主管部および分岐管部に保温部材を被覆してなる保温部材被覆ヘッダーを固定する固定具であって、適宜間隔を有して略平行に配置された二つの長尺な基部と、この両基部のうち一方の基部から他方の基部に向かって突出するように該一方の基部に設けられた複数の第一の支持部と、他方の基部から一方の基部に向かって突出するように該他方の基部に設けられた第二の支持部と、この両支持部の突出方向に対して所定角度を有して前記両基部のそれぞれに立設してなる複数の押圧部とを備え、前記両基部に設けられた第一および第二の支持部が相互に近接する任意の位置において回動自在に軸着するとともに、前記両基部に立設された前記押圧部の先端を相互に対向するように湾曲させたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、基部の長手方向をヘッダーの軸線方向(主管部の軸線方向)に平行に配置することにより、第一および第二の支持部が、両基部の間に跨がるように配置され、この両支持部の上部にヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを設置することが可能となる。また、立設される押圧部は、その先端が対向するように湾曲されていることから、この対向する状態の押圧部によってヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの表面を押圧し、前記支持部との間にヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを挟むようにして掴持させることができる。そして、前記第一および第二の支持部は、任意の位置で回動自在に軸着されていることから、両支持部を回動させることにより、押圧部の対向する先端の距離の長短を調整することが可能となり、支持部にヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを設置する際には押圧部先端の距離を長くし、設置後において当該距離を短くすることにより、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの離脱を防止することができるものである。
【0013】
上記発明においては、押圧部の基端が、前記両基部のそれぞれの長手方向に適宜間隔を有し、かつ前記両基部において相互に対向して配置される構成とすることができる。
【0014】
このような構成の場合、基部の長手方向に押圧部が設けられていない領域に分岐管部を配置することができ、当該押圧部によって主管部またはこれを被覆する保温部材の外側表面を掴持させることが可能となる。そして、両基部の対向位置に押圧部が配置されることから、前記支持部の回動により、これらの押圧部両端の距離を接近させることによって、主管部を押圧させ、または、主管部を被覆する保温部材の表面から当該主管部を含む全体を押圧させることができる。
【0015】
また、上記構成において、第一および第二の支持部が、前記基部のそれぞれにおいて隣接する前記押圧部の間に配置されている構成とすることができる。
【0016】
このような構成の場合には、ヘッダーまたはこれを被覆する保温部材に対して複数の場所で当接させることができ、ヘッダーの長手方向(主管部の軸線方向)の複数の適宜箇所において、当該ヘッダーの表面または保温部材の表面を押圧することが可能となり、ヘッダーを好適な状態で掴持させることができる。さらに、保温部材被覆ヘッダーについては、ヘッダーを被覆する保温部材がヘッダーから離脱することを抑制させることができるものである。
【0017】
さらに、上記構成において、第一および第二の支持部が、前記基部のそれぞれにおいて隣接する前記押圧部の間に各1個配置され、隣接する該押圧部の中間においてそれぞれ一組ずつの支持体を形成するとともに、各組の支持体を構成する第一および第二の支持部の先端縁が相互に近接するように配置してなる構成とすることができる。
【0018】
上記構成によれば、一組の支持体によって、ヘッダーの両側から同時に支持することが可能となり、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの支持状態を安定させることができる。また、支持体による支持と、押圧部による押圧とによって、規則的にかつ交互にヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを押圧することとなり、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの固定状態をも安定させることができる。
【0019】
そして、上記構成の第一の支持部と第二の支持部が、全体として千鳥状に配置されている構成とすることができる。
【0020】
このように両支持部を全体として千鳥状とすることにより、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを支持すべき位置が分散されることとなり、所定の位置(高さ)にヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを配置させることが容易となる。また、支持する当接面を広くするために、両支持部を帯状に形成する場合であっても、近接する支持部同士が接触または衝突することがなく、好適な位置に配置することが可能となる。
【0021】
さらに、上記各構成において、基部が、相互に外向きに折曲して設けられた平面状のベース部を備えているように構成してもよい。
【0022】
この場合には、第一および第二の支持部によって支持されるヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの位置は、当該両支持部によって決定されることとなり、取り付け面(地面や床スラブの表面等)から所定の距離を有してヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを固定すべき場合に、当該ベース部を取り付け面に設置することによって、当該ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの位置を所望の状態とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の固定具によれば、第一および第二の支持部が任意の位置で回動可能であることから、その回動を操作することのみによって押圧部の押圧状態を変化させることができることとなり、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの設置後に押圧部による押圧が容易となる。すなわち、支持部を回動させて対向する押圧部の先端の距離を長くすることによって、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを支持部に当接させ、また、支持部の回動により押圧部先端の距離を短くすることによって、当該押圧部により同時に複数の箇所において、支持部に載置されるヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを掴持することが可能となる。そして、保温部材によって被覆された保温部材被覆ヘッダーに対して、当該保温部材の表面に支持部および押圧部を当接させて掴持することができることから、ヘッダーに保温部材を装着した後の状態で固定することが可能となる。
【0024】
また、押圧部による押圧位置が主管部または当該主管部を被覆する部分であることから、分岐管部の向きを自在に変化させることができる。従って、分岐管の向きを変化させることができる構造のヘッダー(以下、可変型ヘッダーという)を固定する場合においても支障なく使用することができる。
【0025】
さらに、可変型ヘッダーに保温筒を装着する場合には、当該分岐管ごとに切断した短尺の保温筒によって個別に被覆することとなるが、適宜離れた複数の場所において保温筒の表面に対し、押圧部または第一および第二の支持部が当接することとなり、当該保温筒を外側表面からヘッダーに対して押圧することができ、当該保温筒の離脱を防止できるという効果をも奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態を示す分解斜視図である。
図2】支持部の軸着部分の詳細および回動態様を示す説明図である。
図3】実施形態の可動状態を示す説明図である。
図4】実施形態の使用態様を示す説明図である。
図5】実施形態の使用態様を示す説明図である。
図6】設置面に対する実施形態の設置状態を示す説明図である。
図7】ヘッダーと保温部材との関係を示す説明図である。
図8】保温部材を有しないヘッダーの固定状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態の概略を示す図である。この図に示すように、本実施形態は、適宜間隔を有して略平行に配置された二つの長尺な基部1,2と、一方の基部1から突出して設けられた複数の第一の支持部3と、他方の基部2から突出して設けられた第二の支持部4と、両基部1,2に立設された複数の押圧部5,6とを備えている。これらの各部材は一体的に形成されており、例えば、金属製の板状部材を適宜折曲して形成することができる。また、基部1,2の下端を外向きに折曲し、平面状のベース部7,8を形成してなる構成とする場合がある。
【0028】
ここで、基部1,2は、長手方向Xに向かって長尺な板状に構成され、また、支持部3,4および押圧部5,6を所定の位置に配置すべく、高さ方向Zに適宜な寸法で形成されている。この両基部1,2を対向するように配置するとき、その幅方向Yに向かって、相互に第一および第二の支持部3,4が突出する状態となるように設けられている。すなわち、支持部3,4は、対向する両支持部1,2に向かってそれぞれ突出するように設けられているのである。
【0029】
この支持部3,4は、上記基部1,2を所定の間隔で配置するとき、その先端縁31,41が両基部1,2のほぼ中央付近に達する程度の突出長となるように構成されている。また、一方の基部1から突出する第一の支持部3と、他方の基部2から突出する第二の支持部4とが、長手方向Xに僅かに逸れた位置となるように配置されることにより、両先端縁31,41は相互に近接する位置となるが、相互に接触しないようになっている。さらに、近接する一部(図は長手方向Xの両端)の両支持部3,4の先端縁31,41の近傍において、回動可能に軸着できるように構成されており、この軸着により、基部1,2の間隔を一定にするとともに、当該軸着位置を中心に回動させることができるようになっている。
【0030】
ところで、これらの支持部3,4は、それぞれが所定の面積を有する帯状に構成されていることから、当該帯状の表面により支持領域を形成できるようになっている。また、複数の支持部3,4が長手方向Xに分散して配置されることにより、当該支持領域が長手方向Xの広範囲に形成されるものである。
【0031】
これに対し、押圧部5,6は、支持部3,4の突出方向から略直交方向に立設されている。図示の場合は、支持部3,4を幅方向Yに突出し、押圧部5,6を高さ方向Zに向かって立設している。そして、この押圧部5,6が両基部1,2の対向する位置に立設されることにより、両押圧部5,6の間隔は、当該基部1,2の所定間隔に一致することとなる。そこで、上記基部1,2の所定間隔をヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの外径と同程度に調整することにより、当該押圧部5,6の間隔はヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを挿入できる間隔とすることができる。また、これらの押圧部5,6の先端51,61の近傍は、その先端51,61が相互に対向する向きとなるように湾曲された湾曲部52,62が形成されている。この湾曲部52,62の曲率をヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの外周に近似させることにより、押圧部5,6の基端53,63から先端51,61に向かってヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの表面に当接させることが可能となる。そして、湾曲部52,62と支持部3,4との距離をヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの外径と同程度とすることによって、両者にヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの表面を当接させることできることとなる。なお、この押圧部5,6も適宜面積を有する帯状に構成されており、長手方向Xに複数設けられることにより、押圧領域を適宜形成することができるものとなっている。
【0032】
ところで、前記支持部3,4の軸着は、一部(長手方向Xの両端)の支持部3,4において行われるが、当該支持部3,4には、相互に当接面部32,42が設けられている。この当接面部32,42は、支持部3,4の先端縁31,41から下向きに折曲された端部30,40に連続して設けられており、長手方向Xに直交する平面上に構成されている。また、この当接面部32,42に貫通孔33,43が穿設されており、両当接面部32,42を当接させた状態で枢軸9を貫挿させることにより、軸着することができるものである。
【0033】
ここで、図2に示すように、両当接面部32,42は、支持部3,4の側縁から僅かな間隙34,44を有して設けられており(図2(a)参照)、この間隙34,44は、ちょうど他方の当接面部32,42が係入できる程度となっている。従って、両当接面部32,42を相互に当接する場合は、外側表面を当接させるのではなく、内側表面を相互に当接させることができるようになっているのである(図2(b)参照)。このように、当接面部32,42の内側表面を当接させる場合には、当該当接面部32,42は、支持部3,4から適宜間隔L3,L4を有して設けることにより(図2(c)参照)、貫通孔33,43を枢軸9によって軸着したとき、両方の間隙34,44に位置する端部30,40の一部が相互に接触するまで回動が許容されることとなる(図2(d),(e)参照)。すなわち、端部30,40の一部が相互にストッパとして機能することとなるのである。このように、端部30,40によって回動が制限されることによって、不必要な回動を制限しているのである。
【0034】
そして、端部30,40により回動が制限される状態となるまで、両支持部3,4を回動する場合(図2(e)参照)には、図3(a)に示すように、押圧部5,6の先端51,61が対向する距離を長くさせることができるのである(この状態を開状態という)。このように、押圧部5,6の先端51,62の距離を長くさせることにより、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーは、押圧部5,6の存在を無視して支持部3,4に当接させることができるのである。さらに、上記支持部3,4を逆向きに回動させることにより、図3(b)に示すように、押圧部5,6の先端51,61の対向する距離を小さくすることも可能となるのである(この状態を閉状態という)。このような状態においては、押圧部5,6によって、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーは支持部3,4に到達することはできないが、支持部3,4にヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを支持させた後に閉状態とすれば、当該ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーは、支持部3,4と押圧部5,6によって掴持された状態となるものである。
【0035】
なお、他の支持部3,4においても先端縁31,41から下向きに折曲された端部30,40が設けられており、枢軸9の軸心を中心として回動するとき、各支持部3,4およびその端部30,40は、全ての位置で同じ状態となるようになっている。これは、開状態または閉状態において、各支持部3,4を同じ状態とすることにより、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの各部を同時に掴持することができるためであり、また、先端縁31,41から折曲した端部30,40が設けられることにより、開状態において両先端縁31,41の間に形成され得る間隙を、当該端部30,40によって閉塞することができるからである(図2(d)参照)。
【0036】
本実施形態は上記のような構成であるから、本実施形態により保温部材被覆ヘッダーを固定する場合には、図4に示すように、本実施形態の固定具100を開状態とすることにより、対向する押圧部5,6の両先端51,61は適宜距離を有することとなる。そこで、保温部材被覆ヘッダー200は、押圧部5,6の両先端51,61の間を通過させることが可能となる。そして、支持部3,4に到達した保温部材被覆ヘッダー200を当該支持部3,4の表面上に直接載置するのである。このとき、保温部材被覆ヘッダー200の主管部210の軸線を、固定具100の長手方向(基部1,2の長手方向)に一致させ、また、保温部材被覆ヘッダー200の複数の分岐管部220が、隣接する押圧部5,6の間に位置するように、当該保温部材被覆ヘッダー200を載置するのである。なお、保温部材被覆ヘッダー200は、主管部210および分岐管部220は、予め保温部材230によって被覆されており、この保温部材230によって被覆された状態を維持しつつ支持部3,4に載置するのである。
【0037】
その後、図5に示すように、固定具100を閉状態とすることにより、押圧部5,6の先端51,61の間の距離は短くなり、当該押圧部5,6が保温部材被覆ヘッダー200の表面に当接し、下位の支持部3,4とで保温部材被覆ヘッダー200を掴持させることができるのである。
【0038】
ここで、固定具100は、再び開状態に復元しないようにして、上記掴持状態(固定具100の閉状態)を維持させるものである。そのための方法としては、図5中に示すように、保持プレート300を使用することが可能である。この保持プレート300は、矩形板状の金属プレートの一辺に適宜間隔を有するスリット部301,302が設けられており、このスリット部301,302に閉状態の固定具100の基部1,2を挿入するものである。つまり、スリット部301,302の間隔が、固定具100を閉状態としたときの基部1,2の間隔となるように、その位置が調整されており、当該保持プレート300を基部1,2に装着することにより、基部1,2の状態を保持し、固定具100の閉状態を維持させるのである。
【0039】
また、このような保持プレート300によらず、ベース部7,8を設置面(地面または床スラブの表面など)に固定することによっても固定具100の閉状態を維持させることができる。図5中にも示しているが、ベース部7,8には、貫通孔71,81が設けられており、この貫通孔71,81を使用して、設置面にベース部7,8を固定することにより、基部1,2の配置状態を維持させることができ、これによって固定具100の閉状態を維持させることができるのである。
【0040】
このとき、図6(a)に示すように、ベース部7,8の平面部分を設置面Aの表面に一致させるように固定ネジB,Cによって固定することにより、ベース部7,8が所定の位置において所定角度に維持されることとなり、その結果、基部1,2が固定されて固定具100を閉状態に維持させることができるのである。
【0041】
また、図6(b)に示すように、本実施形態のベース部7,8には、長手方向両端付近には、二つの大きい径を連結してなる形状の第一の貫通孔71,81と、単純な丸穴とした第二の貫通孔72,82とが設けられている。そして、ベース部7,8の固定にはこれらの中から選択して使用すればよいのであるが、第一の貫通孔71,81を使用する場合には、ベース部7,8の着脱を可能にしている。すなわち、この貫通孔71,81は、大径の円形孔71a,71b,81a,81bが溝部71c,81cによって連結された構成となっており、この溝部71c,81cの幅寸法は、第二の貫通孔72,82の内径と同程度に設けられている。従って、第二の貫通孔72,82を使用して固定する場合の固定ネジと同種の固定ネジを溝部71c,81cに挿通させることによって、ベース部7,8を固定することができるようになっている。他方、大径の円形孔71a,71b,81a,81bの各径を、固定ネジの頭部の径よりも大きくすることによって、当該円形孔71a,71b,81a,81bの位置においては、固定ネジによって固ベース部7,8を固定することはできないものとしている。そこで、溝部71c,81cの中央に固定ネジを挿通させ、ベース部7,8を固定するとき、当該ベース部7,8(固定具全体)を、その長手方向に移動させることにより、固定ネジの挿通する位置を円形孔71a,71b,81a,81bに移動させることができ、これによって固定状態を解除させることができるのである。なお、このときの固定ネジは、予め設置面に適宜な距離で装着しておくこともでき、また、ベース部7,8を固定する際に溝部71c,81cの中央に装着してもよい。いずれにしても、ベース部7,8を固定した(固定具を設置した)後に、その固定を解除し、固定具による保温部材被覆ヘッダーの固定の解除を容易にすることができるものである。
【0042】
なお、本実施形態は、可変型ヘッダーを使用する場合の固定具であることから、図7に示すように、分岐管部220の向きは、主管部210の径方向に任意に調整可能となっている。そのため、保温部材230は、主管部210を被覆するための筒状の空間部231が設けられ、また、その筒状空間部231の径方向に貫通した分岐管挿通口232を開口させている。さらに、保温部材230は、合成樹脂をスポンジ状にしてなる断熱材によって変形容易に構成されており、分岐管挿通口232の中心を通る母線に沿った切断部233を設けており、この切断部233から保温部材230を開くことによって、分岐管部220を含む主管部210を空間部231の内側に配置でき、これにより全体を被覆することができるものである。すなわち、個々の分岐管部220ごとに、個別の保温部材230を装着することによって、その分岐管部220の向きに合致させつつ、それぞれ被覆することができるようになっているのである。従って、上述したように、押圧部5,6によって保温部材被覆ヘッダー200を掴持することは、同時に、上記保温部材230の切断部233が開口しないように押圧する効果をも有するものとなっている。なお、上記切断部233が開口しないために、テープ等で切断部233を固定することは常時行われているが、経年変化等によってテープ等が剥離した場合であっても、上記保温部材230の被覆状態を維持させることができるものである。
【0043】
また、本実施形態の固定具100は、保温部材によって被覆されていないヘッダーを固定する場合にも使用することができる。この場合においても、固定具100を開状態とし、押圧部5,6の先端51,61の間からヘッダーを支持部3,4に載置し、その後、閉状態とするのである。
【0044】
このとき、図8に示すように、ヘッダー400の主管部410の軸線は、固定具100の長手方向(基部1,2の長手方向)に一致されており、また、ヘッダー400の複数の分岐管部420は、隣接する押圧部5,6の間に配置されている。これにより、分岐管部420が支持部3,4の上面に載置され、主管部410の側部から上部が、押圧部5,6によって押圧されることとなる。この状態において、ヘッダー400は全体として支持部3,4と押圧部5,6により掴持されることとなるのである。
【0045】
なお、当然のことながら、上述の保温部材被覆ヘッダー200を固定する固定具100(図5参照)と、保温部材によって被覆されていないヘッダー400を固定する固定具100とは、同様に構成されている。しかし、両者の支持部3,4および押圧部5,6の寸法は、それぞれ掴持すべきヘッダー200,400の状態によって調整されている。すなわち、保温部材被覆ヘッダー200を固定する固定具100は、当然保温部材230を含む全体を掴持できる大きさに構成されているが、保温部材によって被覆されないヘッダー400を固定する固定具100は、ヘッダー400の表面を直接掴持できる大きさに構成されているのである。
【0046】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、これは本発明の一例を示すものであって、上記形態に限定する趣旨ではない。従って、上記実施形態を種々の形態に変形することは可能である。例えば、支持部3,4は、適宜間隔で配置すればよいが、図1および図2において示すように、隣接する押圧部5,6の間に各1個配置され、一組の支持部を構成させるように配置することが好ましい。このように、隣接する押圧部5,6の間にそれぞれ一組の支持部を形成させることにより、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを安定して支持することができるものとなる。
【0047】
また、支持部3,4は、基部1,2が対向する側に向かって突出させ、その先端縁31,41が相互に隣接する位置となるように構成されていれば、ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを支持することが可能であるが、この突出方向を所定の方向にすることができる。すなわち、例えば、図6(a)に示すように、基部1,2の表面から垂直方向に突出するものではなく、僅かに鋭角となる方向を所定方向として設けることができる。このような角度で突出させることにより、固定具100を閉状態とするとき(図3(b)参照)、支持部3,4は、先端縁31,41が隣接する位置に向かって、基部1,2から徐々に低位置に向かって傾斜することとなり、当該隣接部分を最下位とすることができることから、断面形状略円形の外形を有するヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーを載置する際には、これらが当該最下位に向かって自然に移動(転動)することとなり、当該ヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの位置決めを容易にすることができる。
【0048】
さらに、支持部3,4を全体として千鳥状としてもよい(図6(b)参照)。このように、一方の基部1から突出する第一の支持部3と、他方の基部2から突出する第二の支持部4とを、交互に配置することにより、第一の支持部3が隣接する距離、および第二の支持部4が隣接する距離を、一定にすることができることとなり、これらによって支持されるヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーに対して偏った負荷を与えることが回避され得ることとなる。また、押圧部5,6との間隔をも規則的にすることにより、支持部3,4と押圧部5,6とで掴持されたヘッダーまたは保温部材被覆ヘッダーの押圧状態を適当に分配させることができるものである。
【0049】
また、上記実施形態においては、第一の支持部3と第二の支持部4とを、長手方向両側において回動自在に軸着した状態を例示したが、両支持部3,4は複数設けられていることから、これらの支持部3,4の先端縁31,41が隣接する箇所のうち任意の位置で軸着すればよく、また、二箇所に限定されるものではなく、それ以上の位置で軸着してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1,2 基部
3 第一の支持部
4 第二の支持部
5,6 押圧部
7,8 ベース部
9 枢軸
30,40 先端部
31,41 先端縁
32,42 当接面部
33,43 貫通孔
34,44 間隙
51,61 押圧部先端
52,62 湾曲部
53,63 押圧部基端
71,72 第一の貫通孔
71a,71b,81a,81b 円形孔
71c,81c 溝部
72,82 貫通孔
100 固定具
200 保温部材被覆ヘッダー
210,410 主管部
220,420 分岐管部
230 保温部材
231 空間部
232 分岐管挿通口
233 切断部
400 ヘッダー
A 設置面
B,C 固定ネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8