特許第6039436号(P6039436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039436
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】プラズマジェット点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20161128BHJP
   F02P 3/01 20060101ALI20161128BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20161128BHJP
   H01T 13/52 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   H01T13/54
   F02P3/01 A
   H01T13/20 B
   H01T13/52
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-6303(P2013-6303)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-137920(P2014-137920A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】中野 悌丞
(72)【発明者】
【氏名】笠原 大輔
(72)【発明者】
【氏名】向山 直志
【審査官】 出野 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210709(JP,A)
【文献】 特開昭50−072034(JP,A)
【文献】 特開2008−277284(JP,A)
【文献】 特開2010−086881(JP,A)
【文献】 特開2010−116910(JP,A)
【文献】 米国特許第01998158(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
F02P 3/01
H01T 13/20
H01T 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
先端が前記絶縁体の先端よりも後端側に位置するようにして前記軸孔内に挿設される棒状の中心電極と、
前記絶縁体の先端よりも先端側に配設される接地電極と、
前記軸孔の内周面及び前記中心電極の先端側表面により形成され、先端側に向けて開口するキャビティ部と、
前記接地電極に形成され、前記キャビティ部と外部とを連通させる貫通孔とを備えるプラズマジェット点火プラグにおいて、
前記中心電極は、
自身の外径が、前記軸孔の内径と同一とされた本体部と、
当該本体部の先端から先端側に向けて延び、自身の外径が前記本体部の外径よりも小さくされた小径部とを有し、
前記軸線と直交する平面に対して、前記接地電極と前記貫通孔と前記小径部の先端とを前記軸線に沿って投影したとき、前記貫通孔の投影部分の中心が前記小径部先端の投影部分の中心からずれた位置に存在するとともに、前記小径部先端の投影部分の少なくとも一部が前記接地電極の投影部分と重なり、
前記小径部の先端から前記接地電極までの最短距離をA(mm)とし、前記本体部の先端から前記軸孔の先端までの前記軸孔の最短距離をB(mm)とし、前記小径部の先端から前記軸孔の内周面までの最短距離をC(mm)とし、前記軸孔の内周面のうち前記小径部の先端との間で前記最短距離Cを形成する部位から前記軸孔の先端までの前記軸孔の最短距離をD(mm)としたとき、
B>2A、及び、2C+D>2A
を満たすことを特徴とするプラズマジェット点火プラグ。
【請求項2】
前記軸線と直交する平面に対して、前記貫通孔と前記小径部の先端とを前記軸線に沿って投影したとき、前記貫通孔の投影部分の一部が前記小径部先端の投影部分と重なることを特徴とする請求項1に記載のプラズマジェット点火プラグ。
【請求項3】
前記貫通孔が複数設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマジェット点火プラグ。
【請求項4】
前記接地電極は、柱体のチップを備えており、
前記軸線と直交する平面に対して、前記チップと前記小径部の先端とを前記軸線に沿って投影したとき、前記チップの投影部分の少なくとも一部が前記小径部先端の投影部分と重なることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマジェット点火プラグ。
【請求項5】
前記接地電極は、柱体のチップを備えており、
前記チップの少なくとも一部は、前記接地電極の後端側面のうち、前記軸線に沿って前記軸孔の開口が投影された際に前記開口の投影部分と重なる部位よりも後端側に突出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプラズマジェット点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを形成して混合気等への着火を行うプラズマジェット点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関等の燃焼装置においては、火花放電により混合気等へと着火する点火プラグが使用されている。また近年では、燃焼装置の高出力化や低燃費化の要求に応えるべく、燃焼の広がりが速く、着火限界空燃比のより高い希薄混合気に対してもより確実に着火可能な点火プラグとして、プラズマジェット点火プラグが提案されている。
【0003】
一般にプラズマジェット点火プラグは、軸孔を有する筒状の絶縁体と、先端面が絶縁体の先端面よりも没入した状態で前記軸孔内に挿設される中心電極と、絶縁体の外周に配置される主体金具と、前記主体金具の先端部に接合される円環状の接地電極とを備える。また、プラズマジェット点火プラグは、前記中心電極の先端面及び前記軸孔の内周面によって形成された空間(キャビティ部)を有しており、当該キャビティ部は接地電極に形成された貫通孔を介して外部に連通されるようになっている。
【0004】
加えて、このようなプラズマジェット点火プラグにおいては、次のようにして混合気等への着火が行われる。まず、中心電極と接地電極との間に電圧を印加して、両電極間で火花放電を生じさせる。その上で、両電極間に高エネルギーの電流を流すことによって放電状態を遷移させて、前記キャビティ部の内部にプラズマを発生させる。そして、発生したプラズマをキャビティ部の開口から噴出させることで、混合気等への着火が行われる。
【0005】
また近年では、中心電極の先端部をテーパ状とすることで、中心電極と接地電極との間において、気中にて火花放電を生じさせる技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。当該技術によれば、火花放電によって火花放電経路上に位置する絶縁体が削られてしまう現象(いわゆる、チャンネリング)を抑制することができ、チャンネリングに伴うキャビティ部の容積増大を抑制することができる。その結果、着火性の低下防止を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−210709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記技術では、火花放電に伴い接地電極や中心電極が消耗した際に、両電極間を気中にて結ぶ経路(気中にて火花放電が発生する際の火花放電経路)が増大してしまう。従って、気中にて火花放電を生じさせるために必要な電圧が増大してしまい、ひいては気中ではなく、絶縁体の表面を這う形で両電極間にて火花放電(沿面放電)が生じてしまう。その結果、チャンネリングが生じてしまい、着火性の低下を招いてしまうおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、気中での火花放電を長期間に亘ってより確実に生じさせることにより、少なくとも接地電極等の消耗が進んだ段階において良好な着火性を得ることができるプラズマジェット点火プラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0010】
構成1.本構成のプラズマジェット点火プラグは、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状の絶縁体と、
先端が前記絶縁体の先端よりも後端側に位置するようにして前記軸孔内に挿設される棒状の中心電極と、
前記絶縁体の先端よりも先端側に配設される接地電極と、
前記軸孔の内周面及び前記中心電極の先端側表面により形成され、先端側に向けて開口するキャビティ部と、
前記接地電極に形成され、前記キャビティ部と外部とを連通させる貫通孔とを備えるプラズマジェット点火プラグにおいて、
前記中心電極は、
自身の外径が、前記軸孔の内径と同一とされた本体部と、
当該本体部の先端から先端側に向けて延び、自身の外径が前記本体部の外径よりも小さくされた小径部とを有し、
前記軸線と直交する平面に対して、前記接地電極と前記貫通孔と前記小径部の先端とを前記軸線に沿って投影したとき、前記貫通孔の投影部分の中心が前記小径部先端の投影部分の中心からずれた位置に存在するとともに、前記小径部先端の投影部分の少なくとも一部が前記接地電極の投影部分と重なり、
前記小径部の先端から前記接地電極までの最短距離をA(mm)とし、前記本体部の先端から前記軸孔の先端までの前記軸孔の最短距離をB(mm)とし、前記小径部の先端から前記軸孔の内周面までの最短距離をC(mm)とし、前記軸孔の内周面のうち前記小径部の先端との間で前記最短距離Cを形成する部位から前記軸孔の先端までの前記軸孔の最短距離をD(mm)としたとき、
B>2A、及び、2C+D>2A
を満たすことを特徴とする
尚、「本体部の外径が、軸孔の内径と同一」とあるのは、本体部の外径が軸孔の内径と同一である場合(尚、本体部は軸孔に挿通されるため、厳密には本体部の外径と軸孔の内径とは同一とはならない)場合のみならず、本体部の外径が軸孔の内径よりも若干(例えば、0.2mm以下だけ)小さい場合も含む。また、小径部の先端は、平坦状であってもよいし、先鋭状であってもよい。
【0011】
上記構成1によれば、中心電極の先端部に小径部が設けられるとともに、B>2A及び2C+D>2Aを満たすように構成されている。従って、中心電極及び接地電極間を気中で結ぶ経路(気中経路)における抵抗値を、両電極間において絶縁体の内周面を這う経路(沿面経路)を含む経路における抵抗値よりも小さくすることができる。これにより、気中にて火花放電を積極的に生じさせることができる。
【0012】
さらに、上記構成1によれば、軸線と直交する平面に対して、接地電極と貫通孔と小径部の先端とを投影したとき、小径部先端の投影部分の少なくとも一部が接地電極の投影部分と重なるように構成されている。すなわち、小径部の先端上に接地電極が位置するように構成されている。従って、中心電極や接地電極が消耗した場合でも両電極間における気中経路の長さはさほど変化せず、ひいては気中にて火花放電を生じさせるために必要な電圧(以下、「気中放電電圧」と称す)の増大を効果的に抑制することができる。これにより、接地電極等がある程度消耗した段階においても、気中において火花放電をより確実に生じさせることができる。その結果、チャンネリングに伴うキャビティ部の容積増大を抑制することができ、接地電極等の消耗が進んだ段階において良好な着火性を得ることができる。
【0013】
また、上記構成1によれば、前記平面において、貫通孔の投影部分の中心が小径部先端の投影部分の中心からずれた位置に存在するように構成されている。従って、小径部の先端上に接地電極が位置するように構成しつつ、貫通孔の内径を十分に大きなものとすることができる。従って、貫通孔からプラズマを勢いよく噴出させることができ、一層優れた着火性を得ることができる。
【0014】
構成2.本構成のプラズマジェット点火プラグは、上記構成1において、前記軸線と直交する平面に対して、前記貫通孔と前記小径部の先端とを前記軸線に沿って投影したとき、前記貫通孔の投影部分の一部が前記小径部先端の投影部分と重なることを特徴とする。
【0015】
上記構成2によれば、小径部の先端上に貫通孔の一部が位置するように構成されている。従って、生成されたプラズマをスムーズに貫通孔から外部へと噴出させることができる。その結果、接地電極等の消耗が進んだ段階だけでなく、初期段階においても良好な着火性を得ることができる。
【0016】
構成3.本構成のプラズマジェット点火プラグは、上記構成1又は2において、前記貫通孔が複数設けられることを特徴とする。
【0017】
上記構成3によれば、火花放電に伴い、接地電極のうち1の貫通孔を形成する部位(「第1貫通孔形成部」と称す)や中心電極のうち前記第1貫通孔形成部との間で火花放電を生じる部位の消耗が進んだ際に、接地電極のうちその他の貫通孔を形成する部位(「第2貫通孔形成部」と称す)と、中心電極のうち前記第2貫通孔形成部との間で最短距離を形成する部位との間で気中における火花放電を生じさせることができる。つまり、両電極のうちさほど消耗が進んでいない部位同士の間で火花放電を積極的に生じさせることができる。従って、気中放電電圧の増大を効果的に抑制することができ、気中においてより長期間に亘って火花放電を生じさせることができる。その結果、チャンネリングの発生を一層効果的に抑制することができ、良好な着火性をより長期間に亘って維持することができる。
【0018】
構成4.本構成のプラズマジェット点火プラグは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、前記接地電極は、柱体のチップを備えており、
前記軸線と直交する平面に対して、前記チップと前記小径部の先端とを前記軸線に沿って投影したとき、前記チップの投影部分の少なくとも一部が前記小径部先端の投影部分と重なることを特徴とする。
【0019】
上記構成4によれば、火花放電に伴うチップ及び中心電極間における気中経路の増大を効果的に抑制することができる。従って、接地電極(チップ)及び中心電極間において、より一層長期間に亘って気中にて火花放電を生じさせることができる。その結果、良好な着火性をさらに長期間に亘って維持することができる。
【0020】
また、貫通孔の内周に環状のチップを設ける場合には、チップの加工が難しく、生産性に劣るが、上記構成4によれば、チップが柱体とされている。従って、チップの加工が容易となり、生産性の向上を図ることができる。
【0021】
構成5.本構成のプラズマジェット点火プラグは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、記接地電極は、柱体のチップを備えており、
前記チップの少なくとも一部は、前記接地電極の後端側面のうち、前記軸線に沿って前記軸孔の開口が投影された際に前記開口の投影部分と重なる部位よりも後端側に突出することを特徴とする。
【0022】
上記構成5によれば、チップ及び中心電極間において火花放電を一層確実に生じさせることができる。これにより、チップを設けることによる耐消耗性の向上効果をより確実に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】点火プラグの構成を示す一部破断正面図である。
図2】点火プラグの先端部の構成を示す拡大断面図である。
図3】小径部先端の投影部分や接地電極の投影部分等を示す投影図である。
図4】(a)は、貫通孔の別例を示す拡大断面図であり、(b)は、貫通孔の別例を示す投影図である。
図5】(a)は、貫通孔の別例を示す拡大断面図であり、(b)は、貫通孔の別例を示す底面図である。
図6】放電電圧の時間変化を示すグラフである。
図7】別の実施形態における貫通孔を示す底面図である。
図8】別の実施形態における貫通孔を示す底面図である。
図9】別の実施形態における貫通孔を示す底面図である。
図10】別の実施形態において、接地電極に設けられたチップを示す図であり、(a)は、点火プラグの先端部の拡大断面図であり、(b)は、チップの投影部分等を示す投影図である。
図11】別の実施形態において、接地電極に設けられたチップ等を示す拡大断面図である。
図12】別の実施形態における小径部を示す拡大断面図である。
図13】別の実施形態において、中心電極に設けられた中心電極側チップ等を示す拡大断面図である。
図14】別の実施形態における小径部を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、プラズマジェット点火プラグ(以下、単に「点火プラグ」と称す)1を示す一部破断正面図である。尚、図1では、点火プラグ1の軸線CL1方向を図面における上下方向とし、下側を点火プラグ1の先端側、上側を後端側として説明する。
【0025】
点火プラグ1は、筒状をなす絶縁体としての絶縁碍子2、これを保持する筒状の主体金具3などから構成されるものである。
【0026】
絶縁碍子2は、周知のようにアルミナ等を焼成して形成されており、その外形部において、後端側に形成された後端側胴部10と、当該後端側胴部10よりも先端側において径方向外向きに突出形成された大径部11と、当該大径部11よりも先端側においてこれよりも細径に形成された中胴部12と、当該中胴部12よりも先端側においてこれより細径に形成された脚長部13とを備えている。加えて、絶縁碍子2のうち、大径部11、中胴部12、及び、脚長部13は、主体金具3の内部に収容されている。そして、中胴部12と脚長部13との連接部にはテーパ状の段部14が形成されており、当該段部14にて絶縁碍子2が主体金具3に係止されている。
【0027】
さらに、絶縁碍子2には、軸線CL1に沿って軸孔4が貫通形成されており、当該軸孔4の先端側には、棒状の中心電極5が挿設されている。中心電極5は、熱伝導性に優れる金属〔例えば、銅や銅合金、純ニッケル(Ni)等〕からなる内層5A、及び、Niを主成分とする合金〔例えば、インコネル(商標名)600や601等〕からなる外層5Bにより構成されている。さらに、中心電極5は、全体として棒状(円柱状)をなし、その先端が絶縁碍子2の先端よりも後端側に位置している。
【0028】
また、軸孔4の後端側には、絶縁碍子2の後端から突出した状態で端子電極6が挿入、固定されている。
【0029】
さらに、軸孔4の中心電極5と端子電極6との間には、円柱状のガラスシール部9が配設されている。ガラスシール部9により、中心電極5と端子電極6とがそれぞれ電気的に接続されるとともに、絶縁碍子2に固定されている。
【0030】
加えて、前記主体金具3は、低炭素鋼等の金属により筒状に形成されており、その外周面には点火プラグ1を燃焼装置(例えば、内燃機関や燃料電池改質器等)の取付孔に取付けるためのねじ部(雄ねじ部)15が形成されている。また、ねじ部15よりの後端側には鍔状の座部16が形成され、ねじ部15後端のねじ首17にはリング状のガスケット18が嵌め込まれている。さらに、主体金具3の後端側には、主体金具3を前記燃焼装置に取付ける際にレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部19が設けられるとともに、後端部において絶縁碍子2を保持するための加締め部20が設けられている。併せて、主体金具3の先端部外周には、軸線CL1方向先端側に向けて突出するように形成された環状の係合部21が形成されており、当該係合部21に対して後述する接地電極27が接合されるようになっている。
【0031】
また、主体金具3の内周面には、絶縁碍子2を係止するためのテーパ状の段部22が設けられている。そして、絶縁碍子2は、主体金具3に対してその後端側から先端側に向かって挿入され、自身の段部14が主体金具3の段部22に係止された状態で、主体金具3の後端側開口部を径方向内側に加締めること、つまり上記加締め部20を形成することによって固定されている。尚、段部14,22間には、円環状の板パッキン23が介在されている。これにより、燃焼室内の気密性が保持され、絶縁碍子2の脚長部13と主体金具3の内周面との隙間に入り込む燃料ガスが外部に漏れないようになっている。
【0032】
さらに、加締めによる密閉をより完全なものとするため、主体金具3の後端側においては、主体金具3と絶縁碍子2との間に環状のリング部材24,25が介在され、リング部材24,25間にはタルク(滑石)26の粉末が充填されている。すなわち、主体金具3は、板パッキン23、リング部材24,25及びタルク26を介して絶縁碍子2を保持している。
【0033】
また、主体金具3の先端部には、Niを主成分とする合金により形成されるとともに、円板状をなす接地電極27が設けられている。接地電極27は、前記主体金具3の係合部21に係合された状態で、自身の外周部分が前記係合部21に対して溶接されることで接合されている。尚、接地電極27は、絶縁碍子2の先端面から若干離間した状態で主体金具3に接合されている。
【0034】
さらに、絶縁碍子2の先端部には、軸孔4の内周面と中心電極5の先端側表面とにより形成され、先端側に向けて開口するキャビティ部31が形成されている。本実施形態では、中心電極5及び接地電極27間に電圧を印加し、両電極5,27間で火花放電を生じさせた状態で、両電極5,27間に短時間に大電流を投入することにより、キャビティ部31内においてプラズマが生成されるようになっている。
【0035】
また、接地電極27には、接地電極27の板厚方向に貫通する円柱状の貫通孔28が形成されており、前記キャビティ部31は貫通孔28を介して外部へと連通されている。そして、キャビティ部31内において生成されたプラズマは、貫通孔28を通って外部へと噴出するようになっている。尚、本実施形態において、キャビティ部31は、その内径(本実施形態では、1.0mm以上3.0mm以下)が軸線CL1方向に沿って一定とされているが、必ずしもキャビティ部31の内径を軸線CL1方向に沿って一定とする必要はない。従って、例えば、キャビティ部31が先端側に向かって先細り形状、又は、先端側に向かって先太り形状をなし、キャビティ部31を形成する軸孔4の内周面が軸線CL1に対して若干(例えば、±5°程度)傾いていてもよい。
【0036】
加えて、本実施形態においては、図2に示すように、中心電極5の先端部には、自身の外径が軸孔4の内径と同一とされた本体部5Lと、本体部5Lの先端部から先端側に延びる小径部5Sとが形成されている。小径部5Sは、本体部5Lの先端の外径よりも小さくされており、本実施形態では、先端側に向けて先細るテーパ状とされている。また、本実施形態において、小径部5Sの先端は、平坦状とされており、小径部5Sの先端から軸孔4の内周面までの最短距離は、周方向全域において同一となるように構成されている。
【0037】
さらに、小径部5Sの先端から接地電極27までの最短距離をA(mm)とし、本体部5Lの先端から軸孔4の先端までの軸孔4の最短距離をB(mm)としたとき、B>2Aを満たすように構成されている。すなわち、中心電極5及び接地電極27間に電圧を印加したとき、火花放電は、両電極5,27間を気中で結ぶ経路(以下、「気中経路」と称し、当該気中経路の長さが前記最短距離Aである)や、両電極5,27間において絶縁碍子2の内周面を這う経路(以下、「沿面経路」と称し、当該沿面経路の長さが前記最短距離Bである)にて生じる。ここで、経路の長さを同一としたとき、一般に気中経路における抵抗値は、沿面経路における抵抗値の約2倍となる。従って、本実施形態のように、B>2Aとすることで、両電極5,27間において、気中経路の抵抗値を沿面経路の抵抗値よりも小さくすることができ、その結果、気中において火花放電を積極的に生じさせることができる。
【0038】
加えて、小径部5Sの先端から軸孔4の内周面までの最短距離をC(mm)とし、軸孔4の内周面のうち前記小径部5Sの先端との間で最短距離Cを形成する部位4Sから軸孔4の先端までの軸孔4の最短距離をD(mm)としたとき、2C+D>2Aを満たすように構成されている。すなわち、両電極5,27間に電圧を印加したとき、火花放電は、両電極5,27間において、前記最短距離Cを形成する経路と前記最短距離Dを形成する経路とからなる経路(以下、「気中沿面経路」と称す)にて生じ得る。ここで、上述の通り、経路の長さを同一としたとき、気中経路の抵抗値は沿面経路の抵抗値の約2倍となるため、本実施形態のように、2C+D>2Aとすることで、両電極5,27間において、気中経路の抵抗値を気中沿面経路の抵抗値よりも小さくすることができる。その結果、気中にて火花放電をより確実に生じさせることができる。
【0039】
また、図3に示すように、軸線CL1と直交する平面VS1に対して、接地電極27と貫通孔28と小径部5Sの先端とを投影する。このとき、貫通孔28の投影部分28X(図3中、格子模様を付した部位)の中心CP1が、小径部5S先端の投影部分5SX(図3中、斜線模様を付した部位)の中心CP2からずれた位置に存在するとともに、小径部5S先端の投影部分5SXの少なくとも一部が、接地電極27の投影部分27X(図3中、散点模様を付した部位)と重なるようになっている。すなわち、小径部5Sの中心からずれた位置に貫通孔28の中心が位置するように構成することで、貫通孔28の内径を過度に小さくすることなく〔貫通孔28の内径を所定値(例えば、0.3mm)以上としつつ〕、軸線CL1方向先端側から見たときに、小径部5Sの先端の少なくとも一部が接地電極27で覆われるように構成されている。尚、本実施形態では、小径部5Sの先端の投影部分5SXの少なくとも半分以上が、接地電極27の投影部分27Xと重なるように構成されている。
【0040】
加えて、本実施形態では、貫通孔28の投影部分28Xの一部が、小径部5S先端の投影部分5SXと重なるように構成されている。すなわち、軸線CL1方向先端側から見たとき、小径部5Sの先端の一部が接地電極27で覆われることなく構成されている。
【0041】
尚、必ずしも貫通孔28の投影部分28Xが、小径部5S先端の投影部分5SXと重なる必要はない。例えば、図4(a),(b)に示すように、貫通孔41の内径や中心位置を調節することで、貫通孔41の投影部分41Xが、小径部5S先端の投影部分5SXと重ならないように構成してもよい。すなわち、軸線CL1方向先端側から見たとき、小径部5Sの先端の全域が接地電極27で覆われるように構成してもよい。
【0042】
さらに、貫通孔28の個数は、必ずしも1つでなくてもよい。従って、例えば、図5(a),(b)に示すように、接地電極27に2つの貫通孔42,43が形成されていてもよい。
【0043】
以上詳述したように、本実施形態によれば、中心電極5の先端部に小径部5Sが設けられるとともに、B>2A及び2C+D>2Aを満たすように構成されている。従って、両電極5,27間を気中で結ぶ経路(気中経路)における抵抗値を、両電極5,27間において絶縁碍子2の内周面を這う経路を含む経路(沿面経路や気中沿面経路)における抵抗値よりも小さくすることができる。これにより、気中にて火花放電を積極的に生じさせることができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、小径部5S先端の投影部分5SXの少なくとも一部が接地電極27の投影部分27Xと重なるように構成されており、小径部5Sの先端上に接地電極27が位置するように構成されている。従って、中心電極5や接地電極27が消耗した場合でも両電極5,27間における気中経路の長さ(最短距離A)はさほど変化せず、ひいては気中放電電圧の増大を効果的に抑制することができる。これにより、接地電極27等がある程度消耗した段階においても、気中において火花放電をより確実に生じさせることができる。その結果、チャンネリングに伴うキャビティ部31の容積増大を抑制することができ、接地電極27等の消耗が進んだ段階において良好な着火性を得ることができる。
【0045】
また、貫通孔28の投影部分28Xの中心CP1が小径部5S先端の投影部分5SXの中心CP2からずれた位置に存在するように構成されている。従って、小径部5Sの先端上に接地電極27が位置するようにしつつ、貫通孔28の内径を十分に大きなものとすることができる。従って、貫通孔28からプラズマを勢いよく噴出させることができ、一層優れた着火性を得ることができる。
【0046】
特に本実施形態では、小径部5Sの先端の投影部分5SXの少なくとも半分以上が、接地電極27の投影部分と重なるように構成されているため、気中放電電圧の増大を極めて効果的に抑制することができる。その結果、気中においてより一層長期間に亘って火花放電を生じさせることができ、良好な着火性を極めて長期間に亘って維持することができる。
【0047】
さらに、本実施形態では、貫通孔28の投影部分28Xの一部が小径部5S先端の投影部分5SXと重なる(つまり、小径部5Sの先端上に貫通孔28の一部が位置する)ように構成されている。従って、生成されたプラズマをスムーズに貫通孔28から外部へと噴出させることができる。その結果、接地電極27等の消耗が進んだ段階だけでなく、初期段階においても良好な着火性を得ることができる。
【0048】
また、貫通孔を複数設けた場合には、火花放電に伴い、接地電極27のうち1の貫通孔を形成する部位(第1貫通孔形成部)や中心電極5のうち第1貫通孔形成部との間で火花放電を生じる部位の消耗が進んだ際に、接地電極27のうちその他の貫通孔を形成する部位(第2貫通孔形成部)と、中心電極5のうち第2貫通孔形成部との間で最短距離を形成する部位との間で火花放電を生じさせることができる。つまり、両電極5,27のうちさほど消耗が進んでいない部位同士の間で火花放電を生じさせることができる。従って、気中放電電圧の増大を効果的に抑制することができ、気中においてより長期間に亘って火花放電を生じさせることができる。その結果、チャンネリングの発生を一層効果的に抑制することができ、良好な着火性を長期間に亘って維持することができる。
【0049】
次いで、上記実施形態によって奏される作用効果を確認すべく、軸線方向先端側から見たとき、小径部の先端が接地電極で覆わることなく、小径部の中心と貫通孔の中心とが一致するように構成した点火プラグのサンプル(比較例サンプル)と、軸線方向先端側から見たとき、小径部の先端の少なくとも一部が接地電極で覆われるとともに、小径部の中心からずれた位置に貫通孔の中心が位置するように構成した点火プラグのサンプル(実施例サンプル)とを作製し、両サンプルについて耐久性評価試験を行った。耐久性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、サンプルを所定のチャンバーに取付けるとともに、チャンバー内の圧力を0.4MPaに設定した。その上で、印加電圧の周波数を60Hzとして(すなわち、毎分3600回の割合で)、大気雰囲気にてサンプルにおいて火花放電を生じさせるとともに、出力81mJのプラズマ電源から電流を流し込み、プラズマを発生させた。そして、所定時間経過ごとに放電電圧を測定した。尚、放電電圧が増大しにくいサンプルほど、沿面経路における火花放電ひいてはチャンネリングが生じにくく、使用に伴う着火性の低下が生じにくいといえる。
【0050】
図6に、当該試験の結果を示す。尚、図6では、比較例サンプルの試験結果を丸印で示し、実施例サンプルの試験結果を三角印で示す。
【0051】
図6に示すように、実施例サンプルは、放電電圧の増大が効果的に抑制され、着火性の低下をより確実に防止できることが明らかとなった。これは、小径部の先端の少なくとも一部が接地電極で覆われるように構成したことで、接地電極等の消耗が生じた場合であっても、両電極間における気中経路の長さがほとんど変化しなかったためであると考えられる。
【0052】
次いで、最短距離A〜D(mm)、貫通孔の個数(孔数)、中心電極の先端部の形状、中心電極の先端の外径(mm)、貫通孔の内径(mm)、小径部先端の中心と貫通孔の中心との間の軸線と直交する方向に沿った距離(中心間ずれ距離;mm)と、キャビティ部の内径(mm)とを変更することで、小径部先端上における接地電極の有無と、2A及びBの大小関係と、2A及び2C+Dの大小関係と、小径部先端上における貫通孔の有無とを種々変更した点火プラグのサンプルを作製した。そして、各サンプルについて、耐久後着火性評価試験、及び、初期着火性評価試験を行った。
【0053】
耐久後着火性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、上述の耐久性評価試験の条件によりサンプルにおいて100時間に亘ってプラズマを発生させた。その後、各サンプルを排気量1.5L、直列4気筒エンジンに取付けた上で、吸気圧−320mmHgにてエンジンを回転数1600rpmで動作させた。そして、空燃比を増大(燃料を薄く)させつつ、各空燃比ごとにエンジントルクの変動率を測定し、エンジントルクの変動率が5%を上回ったときの空燃比を限界空燃比として特定した。さらに、火花放電により混合気等に着火するタイプのスパークプラグ(新品状態)において、電源としてフルトラ式点火装置を用いた際の前記限界空燃比を基準値として求め、特定された限界空燃比が前記基準値よりも1以上大きかったサンプルは、長期間の使用後において優れた着火性を有するとして「○」の評価を下すこととした。一方で、特定された限界空燃比が前記基準値に1を足した値よりも小さかったサンプルは、長期間の使用後における着火性が不十分となるとして「×」の評価を下すこととした。
【0054】
また、初期着火性評価試験の概要は次の通りである。すなわち、新品状態のサンプルについて、上述の手法により限界空燃比を特定した。そして、特定された限界空燃比が前記基準値よりも1以上大きかったサンプルは、初期状態において非常に優れた着火性を有するとして「◎」の評価を下し、特定された限界空燃比が前記基準値に0以上1未満だけ大きかったサンプルは、初期状態における着火性が良好であるとして「○」の評価を下すこととした。一方で、特定された限界空燃比が前記基準値よりも小さかったサンプルは、着火性に劣るとして「×」の評価を下すこととした。
【0055】
表1に、両試験の試験結果を示す。尚、表1の「中心電極先端部形状」の欄において、「テーパ」とあるのは、上記実施形態のように、中心電極の先端部にテーパ状の小径部が形成されていることを示す。一方で、「ストレート」とあるのは、中心電極の先端部が円柱状をなし、前記小径部が形成されていないことを示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、小径部の先端上に接地電極が存在しないように構成したサンプル(サンプル1〜10)は、接地電極等の消耗後における着火性が不十分となることが明らかとなった。これは、長期間の使用に伴い気中放電電圧が増大した結果、沿面経路における火花放電が生じやすくなり、ひいてはチャンネリングが発生したためであると考えられる。
【0058】
また、小径部の先端上に接地電極が存在するものの、B>2A及び2C+D>2Aの少なくとも一方を満たさないサンプル(サンプル11〜16)も、長期間の使用後における着火性が不十分となることが分かった。これは、使用開始時から沿面経路にて火花放電が生じてしまい、チャンネリングが発生してしまったためであると考えられる。
【0059】
加えて、小径部の先端上に接地電極が存在し、かつ、B≦2A及び2C+D≦2Aの双方を満たすものの、中心間ずれ距離を0.00mmとした(つまり、軸線方向先端側から見たとき、小径部先端の中心と貫通孔の中心とが一致する)サンプル(サンプル17)は、長期間の使用後における着火性が不十分となってしまうことが確認された。これは、貫通孔の内径が過度に小さく、貫通孔からプラズマが噴出しにくくなったためであると考えられる。
【0060】
これに対して、小径部の先端上に接地電極が存在するとともに、B>2A及び2C+D>2Aの双方を満たし、かつ、小径部先端の中心に対して貫通孔の中心がずれるように構成されたサンプル(サンプル18〜22)は、長時間の使用後において良好な着火性を有することが分かった。これは、次の(1)〜(3)が相乗的に作用したことによると考えられる。
(1)B>2A及び2C+D>2Aを満たすように構成したことで、接地電極等の消耗がほとんど生じていない初期段階において、気中経路における火花放電を生じさせることができ、チャンネリングの発生を抑制できたこと。
(2)小径部の先端上に接地電極が存在するように構成したことで、接地電極等が消耗した場合でも気中放電電圧がさほど変化せず、その結果、接地電極等が消耗した段階においても、気中における火花放電をより確実に生じさせることができたこと。
(3)貫通孔の中心を小径部先端の中心に対してずらしたことで、上記(1)及び(2)を満たしつつ、貫通孔の内径を十分に大きくすることができ、貫通孔からプラズマを勢いよく噴出させることができたこと。
【0061】
さらに、サンプル18〜22のうち、小径部の先端上に貫通孔が存在するように構成したサンプル(サンプル20〜22)は、初期状態において非常に優れた着火性を有することが分かった。これは、生成されたプラズマが貫通孔からスムーズに外部へと噴出したためであると考えられる。
【0062】
上記試験の結果より、少なくとも長期間の使用後において良好な着火性を得るという観点から、小径部先端の中心に対して貫通孔の中心がずれるとともに、小径部の先端上に接地電極が存在し(換言すれば、貫通孔の投影部分の中心が小径部先端の投影部分の中心からずれた位置に存在するとともに、小径部先端の投影部分の少なくとも一部が接地電極の投影部分と重なり)、かつ、B>2A及び2C+D>2Aを満たすように構成することが好ましいといえる。
【0063】
また、初期段階における着火性を向上させるべく、小径部の先端部上に貫通孔の一部が存在する(換言すれば、貫通孔の投影部分の一部が小径部先端の投影部分と重なる)ように構成することがより好ましいといえる。
【0064】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0065】
(a)上記実施形態において、貫通孔は断面円形状に構成されているが、貫通孔の形状は特に限定されるものではない。従って、例えば、図7に示すように、貫通孔44が断面扇形状をなしていてもよい。また、図8に示すように、貫通孔45が断面矩形状をなしていてもよい。
【0066】
(b)上記実施形態において、貫通孔は1つ又は2つ設けられているが、貫通孔の個数は特に限定されるものではない。従って、例えば、図9に示すように、4つの貫通孔46,47,48,49を設けてもよい。
【0067】
(c)図10(a),(b)に示すように、小径部5Sの先端上に、接地電極27に接合された、耐消耗性に優れる金属(例えば、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、W、Pd、又は、これらの少なくとも一種を主成分とする合金など)からなる柱体(尚、図10では、円柱状)のチップ61を設けることとしてもよい。すなわち、接地電極27に柱体のチップ61を設けるとともに、軸線CL1と直交する平面VS1に対して、チップ61と小径部5Sの先端とを軸線CL1に沿って投影したとき、チップ61の投影部分61X〔図10(b)中、散点模様を付した部位〕の少なくとも一部が小径部5S先端の投影部分5SX〔図10(b)中、斜線を付した部位〕と重なるように構成してもよい。
【0068】
この場合には、耐消耗性に優れるチップ61と中心電極5(小径部5S)の先端との間で火花放電をより確実に生じさせることができる。従って、火花放電に伴うチップ61及び中心電極5間における気中経路の増大を効果的に抑制することができ、より一層長期間に亘って気中にて火花放電を生じさせることができる。その結果、良好な着火性をさらに長期間に亘って維持することができる。
【0069】
また、耐消耗性の向上を図るために、貫通孔の内周に環状のチップを設ける手法が考えられるが、当該手法ではチップの加工が難しく、生産性に劣る。この点、本別例では、チップ61が柱体とされている。従って、チップの加工が容易となり、生産性の向上を図ることができる。
【0070】
尚、チップ61は円柱状とされているが、チップは柱体であればよく、その形状は円柱状に限られるものではない。従って、チップを直方体状や三角柱状、多角柱状としてもよい。
【0071】
さらに、図11に示すように、チップ62の少なくとも一部が、接地電極27の後端側面のうち、軸線CL1に沿って軸孔4の開口が投影された際に前記開口の投影部分と重なる部位よりも後端側に突出するに構成してもよい。この場合には、耐消耗性に優れるチップ62と中心電極5(小径部5S)との間で火花放電をより一層確実に生じさせることができる。これにより、チップ62を設けることによる耐消耗性の向上効果をより確実に発揮させることができる。
【0072】
(d)上記実施形態において、小径部5Sの先端は平坦状とされているが、図12に示すように、小径部5Sの先端が先鋭状となっていてもよい。また、図13に示すように、小径部5Sが、その先端に耐消耗性に優れる金属(例えば、Ir、Pt、Rh、Ru、Re、W、Pd、又は、これらの少なくとも一種を主成分とする合金など)からなる中心電極側チップ63を有することとしてもよい。この場合には、火花放電に伴う中心電極5の消耗をより効果的に抑制することができ、ひいては良好な着火性をより一層長期間に亘って維持することができる。
【0073】
(e)上記実施形態において、小径部5Sはテーパ状とされているが、小径部5Sは、本体部5Lの先端から先端側に向けて延び、自身の外径が本体部5Lの外径よりも小さいものであればよく、その形状はテーパ状に限定されるものではない。従って、例えば、図14に示すように、小径部5Sを、先端側ほど外径が小さい複数の円柱状部位が積み重なってなる形状としてもよい。また、例えば、小径部が、軸線CL1方向に一定の外径を有する円柱状であってもよい。
【0074】
(f)上記実施形態では、絶縁碍子2の先端面から接地電極27が若干離間するように構成されているが、絶縁碍子2の先端面に接地電極27が接触するように構成してもよい。この場合には、接地電極27の熱を絶縁碍子2へと効率よく伝導させることができ、接地電極27の耐消耗性を向上させることができる。
【0075】
(g)上記実施形態では、工具係合部19は断面六角形状とされているが、工具係合部19の形状に関しては、このような形状に限定されるものではない。例えば、Bi−HEX(変形12角)形状〔ISO22977:2005(E)〕等とされていてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…点火プラグ(プラズマジェット点火プラグ)、2…絶縁碍子(絶縁体)、3…主体金具、4…軸孔、5…中心電極、5L…本体部、5S…小径部、27…接地電極、28…貫通孔、31…キャビティ部、61…チップ、CL1…軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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