特許第6039448号(P6039448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6039448-懸架装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039448
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20161128BHJP
   F16F 9/02 20060101ALI20161128BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   F16F9/32 K
   F16F9/02
   F16F9/32 V
   B62K25/08 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-16417(P2013-16417)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-148995(P2014-148995A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】久保 潔
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0049427(US,A1)
【文献】 実開昭60−139591(JP,U)
【文献】 特開昭58−093684(JP,A)
【文献】 特開2012−215190(JP,A)
【文献】 実公平02−044113(JP,Y2)
【文献】 実公平04−033175(JP,Y2)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されて気体が収容される緩衝器本体と、
上記緩衝器本体の一方側開口を塞ぐキャップ部材と、
上記キャップ部材に取り付けられて上記緩衝器本体内に気体を吸排するためのエアバルブと、
上記キャップ部材に取り付けられるアジャスタとを備えた
懸架装置において、
上記キャップ部材は、外気側に突出し上記キャップ部材が上記緩衝器本体に取り付けられた状態で外周を掴むことが可能な突起と、上記突起に形成されて上記エアバルブが挿入されるエアバルブ取付孔と、上記突起に形成されて上記アジャスタが挿入されるアジャスタ取付孔とを備え、
上記突起は、上記キャップ部材に上記エアバルブが取り付けられた状態で、上記エアバルブ以上の高さになるように設定され、
上記突起の外周には、相対向して起立する一対の垂直平面部が形成されており、
前記突起の外気側面は、上記緩衝器本体から最も離れた部分に位置する平らな水平端面と、上記水平端面の両側に配置される第一傾斜面及び第二傾斜面とを備えており、
上記第一傾斜面は、上記水平端面の一端から上記緩衝器本体の外周側へ向かうに従って上記緩衝器本体に近づくように傾斜しており、
上記第二傾斜面は、上記水平端面の他端から上記緩衝器本体の外周側へ向かうに従って緩衝器本体側に近づくように傾斜しており、
上記アジャスタ取付孔は、上記第一傾斜面に開口し、上記緩衝器本体の軸心線に対して斜めに配置されている
ことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
上記突起は、上記軸心線を軸に線対称形状を有している
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
上記第一傾斜面は、上記軸心線に直行する直径線上で、且つ、上記軸心線の一方側に配置され、
上記アジャスタ取付孔は、上記第一傾斜面の中央に開口するとともに、緩衝器本体側へ向かうに従って上記軸心線に近づくように傾斜している
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の懸架装置。
【請求項4】
上記エアバルブ取付孔は、上記直径線上で、且つ、上記軸心線の他方側に配置されるとともに、上記軸心線に沿って配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、懸架装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、懸架装置は、減衰力を発生する緩衝器と、この緩衝器を伸長方向に附勢する懸架ばねとを備えている。そして、上記懸架装置は、路面凹凸による衝撃を懸架ばねで吸収し、この衝撃吸収に伴う懸架ばねの伸縮運動を緩衝器で抑制して、路面凹凸による衝撃が車体に伝達されることを抑制する。
【0003】
例えば、特許文献1に開示の懸架装置は、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両において前輪を懸架するフロントフォークであり、前輪の両側に起立する一対の緩衝器を備えている。そして、各緩衝器は、アウターチューブとインナーチューブとからなりテレスコピック式に伸縮する緩衝器本体と、この緩衝器本体の上側開口を塞ぐキャップ部材とを備えている。
【0004】
さらに、上記緩衝器本体内には、気体が圧縮されながら封入されてエアばねとして機能しており、このエアばねが緩衝器を伸長方向に附勢する懸架ばねとして機能する。
【0005】
また、上記キャップ部材には、エアバルブと減衰力調整用のアジャスタが設けられている。そして、上記エアバルブを介して緩衝器本体内に気体を吸排することで、エアばねからなる懸架ばねの反力を調整することができ、上記アジャスタを操作することで緩衝器の減衰力を調整することができる。
【0006】
さらに、上記懸架装置においては、エアバルブをキャップ部材から上側に突出させない構造とすることで、エアバルブに外力が作用することを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−122699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の懸架装置では、エアバルブ及びアジャスタが緩衝器本体の軸心線に沿って略垂直に配置されるとともに、アジャスタがキャップ部材の中心に配置されている。このため、キャップ部材の外周部分にエアバルブを取り付ける必要があり、エアバルブの取り付けスペースが狭く、エアバルブとアジャスタが極めて接近した状態となる。したがって、取り付けスペースの都合上、エアバルブ及びアジャスタの配置が難しく、気体の給排作業やアジャスタの操作が難しい。
【0009】
そこで、本発明の目的は、エアバルブがキャップ部材から突出することを抑制したとしても、エアバルブ及びアジャスタの配置を容易にすることが可能になるとともに、気体の吸排作業やアジャスタの操作を従来よりも容易に行うことが可能な懸架装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための手段は、筒状に形成されて気体が収容される緩衝器本体と、上記緩衝器本体の一方側開口を塞ぐキャップ部材と、上記キャップ部材に取り付けられて上記緩衝器本体内に気体を吸排するためのエアバルブと、上記キャップ部材に取り付けられるアジャスタとを備えた懸架装置において、上記キャップ部材は、外気側に突出し上記キャップ部材が上記緩衝器本体に取り付けられた状態で外周を掴むことが可能な突起と、上記突起に形成されて上記エアバルブが挿入されるエアバルブ取付孔と、上記突起に形成されて上記アジャスタが挿入されるアジャスタ取付孔とを備え、上記突起は、上記キャップ部材に上記エアバルブが取り付けられた状態で、上記エアバルブ以上の高さになるように設定され、上記突起の外周には、相対向して起立する一対の垂直平面部が形成されており、前記突起の外気側面は、上記緩衝器本体から最も離れた部分に位置する平らな水平端面と、上記水平端面の両側に配置される第一傾斜面及び第二傾斜面とを備えており、上記第一傾斜面は、上記水平端面の一端から上記緩衝器本体の外周側へ向かうに従って上記緩衝器本体に近づくように傾斜しており、上記第二傾斜面は、上記水平端面の他端から上記緩衝器本体の外周側へ向かうに従って緩衝器本体側に近づくように傾斜しており、上記アジャスタ取付孔は、上記第一傾斜面に開口し、上記緩衝器本体の軸心線に対して斜めに配置されていることである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エアバルブがキャップ部材から突出することを抑制したとしても、エアバルブ及びアジャスタの配置を容易にすることが可能になるとともに、気体の吸排作業やアジャスタの操作を従来よりも容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る懸架装置の主要部を拡大して示した縦断面図であり、図2(b)の拡大図である。
図2】(a)は、本発明の一実施の形態に係る懸架装置を示した平面図である。(b)は、(a)のZZ線断面図であり、本発明の一実施の形態に係る懸架装置の主要部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の一実施の形態に係る懸架装置について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る懸架装置Fは、筒状に形成されて気体が収容される緩衝器本体1と、この緩衝器本体1の上側(一方側)開口を塞ぐキャップ部材2と、このキャップ部材2に取り付けられて上記緩衝器本体1内に気体を吸排するためのエアバルブ3と、上記キャップ部材2に取り付けられるアジャスタ4とを備えている。
【0015】
そして、上記キャップ部材2は、外気側に突出し上記キャップ部材2が上記緩衝器本体1に取り付けられた状態で外周を掴むことが可能な突起22と、この突起22に形成されて上記エアバルブ3が挿入されるエアバルブ取付孔と、上記突起22に形成されて上記アジャスタ4が挿入されるアジャスタ取付孔6とを備えている。
【0016】
さらに、上記突起22は、上記キャップ部材2に上記エアバルブ3が取り付けられたとき、上記エアバルブ3以上の高さに設定される。また、上記アジャスタ取付孔6は、上記緩衝器本体1の軸心線Xに対して斜めに配置されている。
【0017】
以下、詳細に説明すると、本実施の形態に係る懸架装置Fは、二輪車や三輪車等の鞍乗型車両において、その前輪を懸架するフロントフォークであり、前輪の両側に緩衝器D(一方の緩衝器Dの主要部のみを図示し、他方の緩衝器を省略する)を起立させている。そして、上記緩衝器Dの外郭となる緩衝器本体1は、筒状のアウターチューブ10と、このアウターチューブ10内に出没可能に挿入される筒状のインナーチューブ(図示せず)とからなり、テレスコピック式に伸縮することができる。
【0018】
さらに、上記懸架装置Fは、図示しないが、各緩衝器Dのアウターチューブ10をつなぐとともに車体の骨格となる車体フレームに連結する車体側ブラケットと、各緩衝器Dのインナーチューブを前輪の車軸に連結する車軸側ブラケットを備えおり、各緩衝器Dにおける緩衝器本体1の下側開口を上記車軸側ブラケットで塞いでいる。
【0019】
また、上記緩衝器Dの構成は周知であり、如何なる構成を採用してもよいため詳細に図示しないが、図1に示す緩衝器Dは、緩衝器本体1の軸心部に起立するシリンダ11と、このシリンダ11内に形成されて作動流体が充填される作動流体室と、緩衝器本体1の伸縮に伴い作動流体室内を軸方向に移動するピストンロッドと、このピストンロッドの先端に保持されて上記作動流体室を二つの部屋に区画するピストンと、上記二つの部屋を連通する流路と、この流路を通過する作動流体に抵抗を与える減衰力発生手段とを備えている。
【0020】
そして、緩衝器本体1(緩衝器D)が伸縮して懸架装置Fが伸縮するとき、シリンダ11内にピストンロッドが出没し、ピストンで加圧された一方の部屋の作動流体が上記流路を通過して他方の部屋に移動するため、緩衝器Dは、上記減衰力発生手段の抵抗に起因する減衰力を発生し、懸架装置Fの伸縮運動を抑制することができる。
【0021】
さらに、緩衝器Dは、詳細に図示しないが、減衰力を調整する減衰力調整手段を備えており、本実施の形態において、キャップ部材2に取り付けられる上記アジャスタ4は、キャップ部材2に保持される筒状の軸部材7内に移動可能に挿入されるプッシュロッド8とともに減衰力調整手段を構成する。
【0022】
尚、本実施の形態において、上記作動流体は、油、水、水溶液等の液体からなり、上記緩衝器Dは液圧緩衝器である。しかし、上記作動流体が気体からなり、上記緩衝器Dが空圧緩衝器であってもよい。また、上記シリンダ11が車体側に連結されるとともに、図示しないピストンロッドが車輪側に連結されており、上記緩衝器Dは倒立型に設定されている。しかし、シリンダ11が車輪側に連結されるとともに、ピストンロッドが車体側に連結されるとしてもよく、上記緩衝器Dが正立型に設定されて、軸部材7がピストンロッドであるとしてもよい。
【0023】
さらに、上記緩衝器Dは、シリンダ11内に出没するピストンロッド体積分のシリンダ内容積変化や、温度変化による作動流体の体積変化を補償するため、上記シリンダ11内に形成されて気体を収容するシリンダ内気室11aと、環状に形成されてシリンダ11の内周面及び軸部材7の外周面に摺接し上記作動流体室(図示せず)とシリンダ内気室11aとを区画するフリーピストン(図示せず)とを備えている。
【0024】
また、上記緩衝器Dは、上記シリンダ11の外側に形成されるリザーバRを備えており、シリンダ11をアウターチューブ10の上端部10aに吊り下げた状態に保持するシリンダ保持部材12に形成される孔12aを介して上記リザーバRと上記シリンダ内気室11aが連通している。そして、上記シリンダ11内の作動流体が過剰となったときには、上記作動流体室(図示せず)の作動流体を、上記孔12aを介してリザーバRに流出させることができる。
【0025】
上記リザーバRには、作動流体が貯留されてリザーバ内液室(図示せず)が形成されるとともに、このリザーバ内液室の液面を介して上側に気体が収容されてリザーバ内気室r1が形成されている。そして、リザーバ内気室r1は、シリンダ内気室11aと孔12aを介して連通し、シリンダ内気室11aとともに気室Aを構成している。また、この気室Aには、気体が圧縮されながら封入されており、緩衝器Dを常に伸長方向に附勢して、車体を弾性支持する懸架ばね(エアばね)として機能する。
【0026】
また、上記緩衝器Dは、緩衝器本体1の上側(一方側)開口を塞ぐ上記キャップ部材2と、アウターチューブ10の下側開口端部内周に保持されてインナーチューブの外周面に摺接するシール部材(図示せず)とを備えており、これらで緩衝器本体1内に収容される気体や作動流体が外気側に漏れることを抑制している。
【0027】
本実施の形態において、緩衝器本体1の上端部となるアウターチューブ10の上端部10aには、筒状のシリンダ保持部材12が螺合されており、このシリンダ保持部材12とアウターチューブ10の上端部10aとの隙間がシールs1で塞がれている。そして、本実施の形態において、キャップ部材2は、シリンダ保持部材12の内側を塞ぐことで、緩衝器本体1の上側開口を塞いでいる。
【0028】
上記キャップ部材2は、上記シリンダ保持部材12の内周に螺合する螺子部20と、この螺子部20から外気側(上側)に起立して外周に沿って断面コ字状の環状溝21aが形成される密接部21と、この密接部21から外気側(上側)に起立する突起22と、上記螺子部20の中心部から緩衝器本体側(下側)に突出する筒状の保持部23とを備えている。そして、上記キャップ部材2の環状溝21aには、シールs2が取り付けられており、密接部21とシリンダ保持部材12の間を上記シールs2で塞いでいる。
【0029】
また、上記キャップ部材2の螺子部20、密接部21及び保持部23は、外周をシリンダ保持部材12で囲われており、キャップ部材2がシリンダ保持部材12を介して緩衝器本体1に取り付けられた状態において、外周を手や工具等で掴むことができない。しかし、この取り付けられた状態において、上記キャップ部材2の突起22は、外周がシリンダ保持部材12で囲われておらず、外気側に突出しており、外周を手や工具で掴むことができる。
【0030】
さらに、上記キャップ部材2は、上記突起22に形成されて緩衝器本体1の内側(緩衝器本体側)と外側(外気側)を連通するエアバルブ取付孔5及びアジャスタ取付孔6を備えており、上記エアバルブ取付孔5にエアバルブ3が取り付けられ、上記アジャスタ取付孔6にアジャスタ4が取り付けられている。
【0031】
つづいて、キャップ部材2の上記突起22は、図2に示すように、緩衝器本体1の軸心線Xと直交する直径線Y上に起立し、図2(a)中下側から見たとき、略台形状となる柱状部材であり、緩衝器本体1の軸心線Xを軸に線対称形状を有している。
【0032】
そして、上記突起22の外周における正面及び背面は、上記緩衝器本体1の直径線Yを挟んで相対向して起立する垂直平面部22a,22bを備えている。
【0033】
また、突起22の外気側面となる上面は、緩衝器本体1の直径線Y上に配置されており、キャップ部材2において緩衝器本体1から最も離れた部分に位置し略水平に配置される水平端面22cと、この水平端面22cの右端から緩衝器本体側に傾斜する第一傾斜面22dと、上記水平端面22cの左端から緩衝器本体側に傾斜する第二傾斜面22eとを備えている。
【0034】
さらに、緩衝器本体1の軸心線Xは、水平端面22cの中心を通っている。さらに、第一、第二傾斜面22d,22eは、水平端面22cの両側に対称に配置されるとともに、第一、第二傾斜面22d,22eの反緩衝器本体側端となる上端が緩衝器本体1の軸心線側に配置され、第一傾斜面22d及び第二傾斜面22eの緩衝器本体側端となる下端が緩衝器本体1の外周側に配置されている。
【0035】
つづいて、エアバルブ3が取り付けられるエアバルブ取付孔5は、図1に示すように、緩衝器本体1の軸心線Xに沿って配置され、突起22の上面における軸心線Xの左側部分と、保持部23の外周に形成される螺子部20の下面20aに開口している。そして、エアバルブ取付孔5は、外気側に開口する大開口部50と、この大開口部50の緩衝器本体側(下側)に連なり大開口部50よりも小径な中央開口部51と、この中央開口部51の緩衝器本体側(下側)に連なり緩衝器本体1内に開口する螺子孔52とを備えている。また、キャップ部材2における大開口部5と中央開口部5との境界には、環状の段差面24が形成されている。
【0036】
上記エアバルブ取付孔5に取り付けられるエアバルブ3は、筒状のハウジング30と、このハウジング30内に収容されるエアバルブ本体31と、上記ハウジング30の外気側開口を塞ぐキャップ32とを備えている。さらに、上記ハウジング30は、外周側に張り出すフランジ30aを備えている。そして、エアバルブ3は、上記ハウジング30の先端部(符示せず)を外気側からエアバルブ取付孔5の螺子孔52に螺合し、ハウジング30のフランジ30aを段差面24に当接させることで位置決めされる。本実施の形態においては、この位置決めされた状態が、キャップ部材2にエアバルブ3が取り付けられた状態である。
【0037】
また、上記突起22は、キャップ部材2にエアバルブ3が取り付けられたとき、エアバルブ3の外気側端となるキャップ32の上端が、上記突起22の上端となる水平端面22cよりも低い位置にあり、突起22がエアバルブ3以上の高さになるように設定されている。
【0038】
もどって、アジャスタ4が取り付けられるアジャスタ取付孔6は、第一傾斜面22dに対して略垂直に配置され、緩衝器本体1の軸心線Xに対して傾斜し、緩衝器本体側(下側)を軸心線Xに向けており、上記第一傾斜面22dの中央と、保持部23の内側に開口している。そして、アジャスタ取付孔6は、外気側に開口する大開口部60と、この大開口部60の緩衝器本体側(下側)に連なり大開口部60よりも小径な中開口部61と、この中開口部61の緩衝器本体側(下側)に連なり緩衝器本体1内に開口する螺子孔62とを備えている。
【0039】
上記アジャスタ取付孔6に取り付けられるアジャスタ4は、筒状に形成されて内周に複数のディテント溝(符示せず)が形成されるケース40と、このケース40内に挿入されるアジャスタ本体41と、このアジャスタ本体41の側部に形成される横穴(符示せず)に収容されるばね42と、このばね42で上記ディテント溝に押し付けられるディテントボール43とを備えている。
【0040】
そして、アジャスタ4のケース40は、アジャスタ取付孔6の大開口部60に収容されている。また、アジャスタ本体41は、先端部(符示せず)を外気側からアジャスタ取付孔6の螺子孔62に螺合している。さらに、アジャスタ本体41の先端は、プッシュロッド8の円錐状端部8aに摺接している。このため、アジャスタ本体41を回転し、アジャスタ本体41をキャップ部材2に進入させたり、退出させたりすることで、プッシュロッド8を駆動し、緩衝器Dの減衰力を調整することができる。
【0041】
つまり、上記アジャスタ4は、本実施の形態において、減衰力調整用に利用されている。しかし、例えば、図示しないが、コイルばねからなる懸架ばねを緩衝器本体1内に収容する懸架装置において、上記アジャスタ4が上記コイルばねの初期荷重を調整するために利用されるとしてもよく、アジャスタ4の用途は適宜選択することが可能である。
【0042】
次に、本実施の形態に係る懸架装置Fの作用効果について説明する。本実施の形態において、懸架装置Fは、筒状に形成されて気体が収容される緩衝器本体1と、この緩衝器本体1の一方側開口を塞ぐキャップ部材2と、このキャップ部材2に取り付けられて上記緩衝器本体1内に気体を吸排するためのエアバルブ3と、上記キャップ部材2に取り付けられるアジャスタ4とを備えている。
【0043】
そして、上記キャップ部材2は、外気側に突出し上記キャップ部材2が上記緩衝器本体1に取り付けられた状態で外周を掴むことが可能な突起22と、この突起22に形成されて上記エアバルブ3が挿入されるエアバルブ取付孔と、上記突起22に形成されて上記アジャスタ4が挿入されるアジャスタ取付孔6とを備えている。
【0044】
さらに、上記突起22は、上記キャップ部材2に上記エアバルブ3が取り付けられたとき、上記エアバルブ3以上の高さに設定される。また、上記アジャスタ取付孔6は、上記緩衝器本体1の軸心線Xに対して斜めに配置されている。
【0045】
つまり、アジャスタ取付孔6を緩衝器本体1の軸心線Xに対して斜めに配置することで、突起22をエアバルブ3以上の高さに設定し、エアバルブ3がキャップ部材2から突出することを抑制したとしても、エアバルブ3の取り付けスペースを容易に確保することができる。したがって、エアバルブ3及びアジャスタ4の配置を容易にすることが可能になる。
【0046】
さらに、上記構成を備えることにより、エアバルブ3及びアジャスタ4の外気側端部(上端部)を離間させることができ、気体の給排作業やアジャスタ4の操作を従来よりも容易に行うことが可能になる。
【0047】
また、上記構成を備えることにより、エアバルブ3の外周が突起22で囲われるため、上及び前後左右の方向から外力が加わったとしても、この外力がエアバルブ3に作用することを抑制することができる。
【0048】
また、本実施の形態において、上記突起22は、その外周に、相対向して起立する一対の垂直平面部22a,22bを備えている。
【0049】
つまり、突起22は、二面幅形状を有しており、手や工具等で突起を掴む際、掴みやすく、キャップ部材2を回しやすい。したがって、キャップ部材2の取り付け作業を容易にすることが可能となる。
【0050】
また、本実施の形態において、上記突起22は、上記軸心線Xを軸に線対称形状を有している。
【0051】
したがって、特に、キャップ部材2の外形を鋳造で形成した後、エアバルブ取付孔5やアジャスタ取付孔6を切削で形成する場合、キャップ部材2の外形を形成しやすい。さらに、キャップ部材2の中心に突起22が起立しており、偏心していないため、キャップ部材2を回しやすく、キャップ部材2の取り付け作業を更に容易にすることが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態において、上記突起22は、その外気側面(上面)に、反緩衝器本体側から緩衝器本体側に傾斜する第一傾斜面22dを備えており、上記第一傾斜面22dは、上記軸心線Xに直行する直径線Y上で、且つ、上記軸心線Xの右側(一方側)に配置されている。さらに、上記第一傾斜面22dの緩衝器本体側端(上端)が軸心線側に配置されるとともに、上記第一傾斜面22dの緩衝器本体側端(下端)が上記緩衝器本体1の外周側に配置されている。
【0053】
また、上記アジャスタ取付孔6は、上記第一傾斜面22dの中央に開口するとともに、緩衝器本体側(下側)を上記軸心線Xに向けて傾斜している。
【0054】
したがって、アジャスタ4が先端部を軸心線Xに向けて配置されるため、緩衝器本体1の軸心線X上に配置されるプッシュロッド8を駆動する際、アジャスタ4で直接プッシュロッド8を駆動することが容易に可能となる。
【0055】
また、本実施の形態において、上記エアバルブ取付孔5は、上記直径線Y上で、且つ、上記軸心線Xの左側(他方側)に配置されるとともに、上記軸心線Xに沿って配置されている。
【0056】
したがって、アジャスタ取付孔6を第一傾斜面22dの中央に開口させるとともに、アジャスタ取付孔6の緩衝器本体側(下側)を上記軸心線Xに向けて傾斜させることによって突起22の上部にできた広いスペースを利用して、エアバルブ3のフランジ30aやキャップ32が挿入される大開口部50を形成することができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0058】
例えば、上記実施の形態において、懸架装置Fは、鞍乗型車両の前輪を懸架するフロントフォークであるが、後輪を懸架するリアクッションユニットや、鞍乗型車両以外の車両に利用されるとしてもよい。
【0059】
また、懸架装置Fの構成も上記の限りではなく、上記したように、倒立型に設定されたり、正立型の緩衝器を収容したりするとしてもよい。また、上記実施の形態において、懸架装置Fの懸架ばねは、エアばねからなるが、コイルばねからなるとしてもよい。
【0060】
また、キャップ部材2、エアバルブ3、アジャスタ4の構成や形状も上記の限りではなく、キャップ部材2にエアバルブ3が取り付けられたとき、突起22がエアバルブ3以上の高さに設定され、アジャスタ取付孔6が緩衝器本体1の軸心線Xに対して斜めに配置されている限りにおいて、適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
F 懸架装置
X 軸心線
Y 直径線
1 緩衝器本体
2 キャップ部材
3 エアバルブ
4 アジャスタ
5 エアバルブ取付孔
6 アジャスタ取付孔
22 突起
22a,22b 垂直平面部
22d 第一傾斜面
図1
図2