特許第6039469号(P6039469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039469
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】金属窒化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/06 20060101AFI20161128BHJP
   C01B 21/00 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C01B21/06 B
   C01B21/00
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-49774(P2013-49774)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-172813(P2014-172813A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将治
(72)【発明者】
【氏名】初森 智紀
(72)【発明者】
【氏名】常世田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松井 克己
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4585043(JP,B1)
【文献】 特表2012−524141(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0037941(US,A1)
【文献】 特開2003−012309(JP,A)
【文献】 特表2012−512119(JP,A)
【文献】 特表2012−515802(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0018774(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0226532(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B15/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属のアミド(A)と、グネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属(B)とからなり、前記金属アミド(A)と前記金属(B)とのモル比(A:B)が1:0.01〜1:2である組成物を、8001100℃に加熱することを特徴とする、グネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属の窒化物の製造方法。
【請求項2】
前記金属アミド(A)と前記金属(B)とのモル比(A:B)が1:0.25〜1:2である請求項1記載の金属窒化物の製造方法。
【請求項3】
加熱を、窒素ガス又は不活性ガス雰囲気下で行なう請求項1又は2記載の金属窒化物の製造方法。
【請求項4】
加熱を、窒素ガス雰囲気下で行なう請求項1〜3のいずれかに記載の金属窒化物の製造方法。
【請求項5】
用いる前記金属アミド(A)が、粒子径0.001〜100μmの粒子であり、前記金属(B)が、粒子径0.1mm〜200mmの粒子又は塊である請求項1〜4のいずれかに記載の金属窒化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属窒化物、特にリチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる金属の窒化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属窒化物は、半導体装置に用いる窒化アルミニウムの原料、金属摺動部材、電極構成材料等の材料の1つとして注目されている。また、金属窒化物を用いた蛍光体も多数見出され、その原料としての需要も高まってきている。このような用途に使用される金属窒化物は、高純度品が求められる。
【0003】
従来の金属窒化物の製造方法としては、カルシウム等のアルカリ土類金属を窒素気流中で加熱する方法が挙げられる(非特許文献1、2)。
しかしながら、この方法では、金属の表面だけが窒化するにすぎず、内部まで窒化させることは困難であった。また、得られる金属窒化物は、強固に凝集してしまい(特許文献1)、回収が困難であった。さらに、凝集物を粉砕すると、過度の粉砕により、微量成分が混入するおそれがある。従って、この方法で得られた金属窒化物は、前記半導体装置等の高純度品が要求される用途には使用できなかった。
また、カルシウムをアンモニアと熱する方法があるが、この方法によると水素化カルシウムが副生するという問題があり(非特許文献3)、さらに、4窒化三カルシウムを250℃に熱する方法もあるが、爆発性や毒性の問題があった(非特許文献4)。
また、溶融した亜鉛−カルシウム合金を、加熱、加圧された窒素のジェットと反応させる窒化カルシウムの合成方法が開示されているが(特許文献1)、この方法には、特別な装置が必要であり、工業的に有利な方法とは言い難い。
また、本発明者らは、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属水素化物から得られるアルカリ土類金属アミドを、800〜1300℃で熱分解することによりアルカリ土類金属窒化物が得られることを報告した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−531483号公報
【特許文献2】特許第4585043号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大木道則他編、「化学大辞典」第1版、東京化学同人、第1版1413頁、1989年
【非特許文献2】日本化学会編、「新実験化学講座8、無機化合物の合成I」丸善(株)、第414頁、1976)
【非特許文献3】「化学大辞典5」縮刷版、共立出版(株)、第880頁、1987年
【非特許文献4】「無機化合物・錯体辞典」中原勝儼著、講談社、第476頁、1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記のアルカリ土類金属アミドを原料とする場合、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属水素物からアルカリ土類金属アミドを製造する必要があることから、コストが高くなるという問題がある。
【0007】
従って本発明の課題は、上記の問題点が無く、容易な方法で収率良く、安価かつ高純度の金属窒化物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、アルカリ土類金属等の金属アミドと、それらと同じ金属とを一定のモル比で併用し、それらを100〜1500℃に加熱すれば、全く意外にも、アルカリ土類金属等のアミドだけでなく、アルカリ土類金属等も凝集することなく、より内部まで窒素化が進行し、安価に高純度の金属窒化物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
【0010】
[1]リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属のアミド(A)と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属(B)とからなり、前記金属アミド(A)と前記金属(B)とのモル比(A:B)が1:0.01〜1:5である組成物を、100〜1500℃に加熱することを特徴とする、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属の窒化物の製造方法。
[2]前記金属アミド(A)と前記金属(B)とのモル比(A:B)が1:0.01〜1:2である[1]記載の金属窒化物の製造方法。
[3]加熱を、窒素ガス又は不活性ガス雰囲気下で行なう[1]又は[2]記載の金属窒化物の製造方法。
[4]加熱を、窒素ガス雰囲気下で行なう[1]〜[3]のいずれかに記載の金属窒化物の製造方法。
[5]用いる前記金属アミド(A)が、粒子径0.001〜100μmの粒子であり、前記金属(B)が、粒子径0.1mm〜200mmの粒子又は塊である[1]〜[4]のいずれかに記載の金属窒化物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易な方法で、安価かつ収率良く、高純度の金属窒化物を製造することができる。得られる金属窒化物は、強固に凝集することがないので、回収も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1により得られた窒化カルシウムのXRD結果を示す図である。
図2】実施例2により得られた窒化カルシウムのXRD結果を示す図である。
図3】実施例3により得られた窒化カルシウムのXRD結果を示す図である。
図4】実施例4により得られた窒化ストロンチウムのXRD結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明方法においては、原料として、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属のアミド(A)と、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属(B)とからなり、前記金属アミド(A)と前記金属(B)とのモル比(A:B)が1:0.01〜1:5である組成物を用いる。前記金属アミド(A)に加えて、前記金属(B)をこのモル比で用いることにより、製造コストは安価になる。
【0014】
本発明の原料の1種であるリチウムアミドは、公知の化合物であり、公知の方法、例えば、リチウムに高温でアンモニアを作用させる方法等により製造することができる。
【0015】
本発明の原料であるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムの金属アミドは、水素貯蔵材料等の用途がある公知の化合物であり、公知の方法により製造することができる。例えば、カルシウム金属とアンモニウムからヘキサアンミンカルシウム(0)を製造し、これを接触の存在下分解する方法(「化学大辞典」縮刷版、共立出版(株)カルシウムアミドの項)、これらの金属水素化物とアンモニアとを反応させる方法(特開2006−8440号公報)等が挙げられる。
【0016】
本発明においては、これらの金属アミド(A)は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
前記金属アミド(A)は、通常粉末として入手できるので、粒子径0.001〜100μmの粒子を用いるのが好ましく、粒子径0.05〜50μmの粒子を用いるのがより好ましく、粒子径0.1〜10μmの粒子を用いるのがさらに好ましい。
【0018】
もう一方の原料であるリチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムから選ばれる1種又は2種以上の金属(B)は、通常、市販品として粒子又は塊の状態で入手できるので、そのまま使用することができる。凝集せずに高純度の金属窒化物を得る点から、粒子径0.1〜200mmの粒子又は塊を用いるのが好ましく、粒子径0.5〜50mmの粒子又は塊を用いるのがより好ましく、粒子径1〜10mmの粒子又は塊を用いるのがさらに好ましい。
【0019】
金属アミド(A)と金属(B)とは、いずれも1種又は2種以上を用いることができるが、金属アミド(A)の金属と、金属(B)とは同一であることが望ましい。
【0020】
金属アミド(A)と金属(B)との使用モル比(A:B)は、凝集せずに高純度の金属窒化物を得る点及び経済性の点から1:0.01〜1:5であり、1:0.01〜1:3が好ましく、1:0.01〜1:2がより好ましい。さらに高純度の金属窒化物を得る点から、1:0.1〜1:3がより好ましく、1:0.25〜1:2がさらに好ましい。
【0021】
金属アミド(A)と金属(B)とは、粒子径が大きく相違するので均一に混合することは困難であり、両者が反応系中に存在していればよく、例えば金属アミドの上に金属を載せるだけでもよい。
【0022】
金属アミド(A)と金属(B)とからなる組成物の加熱温度は、金属窒化物が分解せず、反応炉や経済性を考慮し、高純度の金属窒化物を得る点から、100〜1500℃が好ましく、200〜1300℃がより好ましく、300〜1300℃がさらに好ましい。
また、リチウムアミド及びリチウムを原料とする場合の加熱温度は、100〜700℃が好ましく、200〜500℃がより好ましく、300〜500℃がさらに好ましい。一方、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムのアミドと、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムとを原料とする場合の加熱温度は、510〜1500℃が好ましく、600〜1300℃がより好ましく、800〜1200℃がさらに好ましい。
【0023】
出発原料の前記金属アミド(A)は、空気中で酸化しやすいので、反応は、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下に行なうことが好ましく、さらにより内部まで窒素化が進行し、安価に高純度の金属窒化物が得られるため窒素ガス雰囲気下に行なうのがより好ましい。また、窒素ガス雰囲気下で反応を行なう場合、金属アミド(A)と金属(B)との使用モル比(A:B)を1:0.01〜1:2とすると、金属が残留することなくすべてが窒化物として得ることができる。
また、ガス雰囲気下で反応を行う場合その圧力は特に制限はないが、常圧で行うのが経済的で好ましい。また、反応は、バッチ式でも連続式でも良いが、量産する場合は、連続式が有利である。
【0024】
反応時間は、装置、反応温度、原料量により適宜決定すればよいが、通常10分〜48時間とすることが好ましく、1時間〜24時間がさらに好ましく、特に3時間〜12時間が好ましい。
【0025】
反応装置は、1500℃程度の熱に耐えられる装置であればよく、例えば、管状炉、電気炉、バッチ式キルン、ロータリーキルンを用いればよい。
【0026】
反応終了後は、例えばバッチ式の場合には、反応装置内には目的とする金属窒化物のみが粉体状で残存するので、回収は極めて容易である。
一方、連続式の場合には、例えば、N2やArで内部が満たされたロータリーキルンを用いれば、容易に金属窒化物が連続的に回収される。
【0027】
金属アミド(A)と金属(B)との使用モル比や反応温度、時間等の条件によっては金属が残存する場合がある。しかし、本発明方法を用いることで、凝集することなく容易に金属窒化物と残存した金属を回収することができる。得られた金属窒化物と残存した金属は、粉砕を適度に行うことで金属窒化物は粉体となり、残存した金属は粒状のままとなり、純粋な金属窒化物を得ることができる。分離は、例えば、篩い分け、比重分離、気流分級装置等の一般的な分級装置で行うことができる。分離された金属は、再度原料である金属(B)として用いることができ、本発明方法により金属窒化物とすることができる。
【0028】
本発明方法により得られる金属窒化物は、前記金属アミド(A)の熱分解反応により容易に内部まで反応が進行するため、高純度である。また、前記金属(B)を塊で用いても内部まで窒化される理由は明らかではないが、金属アミドの熱分解により生じたアンモニアが金属(B)の還元及び窒化に利用されるものと推定される。また、本発明により得られる金属窒化物は、Li3N、Mg32、Ca32、Ca2N、Sr32、Sr2N及びBa2Nから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【実施例】
【0029】
以下実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
カルシウム金属:カルシウムアミドを0.4mol:1molの条件で実験を行った。5mm塊のカルシウム金属10gに粒子径0.5μmのカルシウムアミド粉末50gを混合したものを、窒素フロー下で1000℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は、グローブボックス内設置した炉心管(内径50mm、長さ600mm)のアルミナボードに載せ、炉心管をシリコンキャップで密閉、グローブボックスから取り出した炉心管を管状炉にセットし、室温から最高温度まで300℃/時間で昇温して行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。処理後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化カルシウムであり、カルシウム金属のピークは確認されなかった(図1)。
【0031】
実施例2
カルシウム金属:カルシウムアミドを0.6mol:1molの条件で実験を行った。5mmの塊のカルシウム金属10gに粒子径0.5μmのカルシウムアミド粉末30gを混合したものを、窒素フロー下で1000℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。処理後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化カルシウムであり、カルシウム金属のピークは確認されなかった(図2)。
【0032】
実施例3
カルシウム金属:カルシウムアミドを1.8mol:1molの条件で実験を行った。10mm塊のカルシウム金属216gに粒子径0.5μmのカルシウムアミド粉末216gを混合したものを、窒素フロー下で1100℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。処理後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化カルシウムであり、カルシウム金属のピークは確認されなかった(図3)。
【0033】
実施例4
ストロンチウム金属:ストロンチウムアミドを0.3mol:1molの条件で実験を行った。20mm塊のストロンチウム金属10gに粒子径0.5μmのストロンチウムアミド50gを混合したものを、窒素フロー下で900℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。処理後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化ストロンチウムであり、ストロンチウム金属のピークは確認されなかった(図4)。
【0034】
実施例5
カルシウム金属:カルシウムアミドを0.6mol:1molの条件で実験を行った。5mm塊のカルシウム金属10gに粒子径0.5μmのカルシウムアミド粉末30gを混合したものを、アルゴンガス下で1000℃にて加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。回収後、XRD測定のため、メノウ乳鉢で粉砕分級すると、約0.5gのカルシウム金属が残っていた。カルシウム金属除去後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化カルシウムであった。
【0035】
実施例6
ストロンチウム金属:ストロンチウムアミドを1mol:1molの条件且つ、ストロンチウム金属とストロンチウムアミドの混合を行わず、ストロンチウムアミドの上にストロンチウム金属を載せた状態で実験を行った。20mm塊のストロンチウム金属7.3gの下に粒子径0.5μmのストロンチウムアミド10gを敷き詰めたものを、窒素フロー下で800℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。処理後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化ストロンチウムであり、ストロンチウム金属のピークは確認されなかった。
【0036】
実施例7
カルシウム金属:カルシウムアミドを2.1mol:1molの条件で実験を行った。10mm塊のカルシウム金属11.6gに粒子径0.5μmのカルシウムアミド粉末10gを混合したものを、窒素フロー下で1100℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。回収後、XRD測定のため、メノウ乳鉢で粉砕分級すると、約0.8gのカルシウム金属が残っていた。カルシウム金属除去後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化カルシウムであった。残存したカルシウム金属を再度カルシウムアミドと1mol:1molで混合し窒素フロー下で1100℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。回収したものにはカルシウム金属はなく、焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化カルシウムであり、カルシウム金属のピークは確認されなかった。
【0037】
実施例8
ストロンチウム金属:ストロンチウムアミドを2.2mol:1molの条件で実験を行った。20mm塊のストロンチウム金属16.1gに粒子径0.5μmのストロンチウムアミド10gを混合したものを、窒素ガス下で1000℃にて加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。回収後、XRD測定のため、メノウ乳鉢で粉砕分級すると、約1.5gのストロンチウム金属が残っていた。ストロンチウム金属除去後の焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化ストロンチウムであった。残存したストロンチウム金属を再度ストロンチウムアミドと混合し窒素フロー下で900℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。回収したものにはストロンチウム金属はなく、焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化ストロンチウムであり、ストロンチウム金属のピークは確認されなかった。
【0038】
実施例9
ストロンチウム金属:ストロンチウムアミドを3mol:1molの条件で実験を行った。20mm塊のストロンチウム金属11.0gに粒子径0.5μmのストロンチウムアミド5gを混合したものを、窒素ガス下で900℃にて加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。回収後、XRD測定のため、メノウ乳鉢で粉砕分級すると、約2.5gのストロンチウム金属が残っていた。ストロンチウム金属除去後の焼成品の鉱物層をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化ストロンチウムであった。残存したストロンチウム金属を再度ストロンチウムアミドと1mol:1molで混合し窒素フロー下で800℃にて4時間加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収した。回収したものにはストロンチウム金属はなく、焼成品の鉱物相をXRDを用いて同定を行ったところ、全相窒化ストロンチウムであり、ストロンチウム金属のピークは確認されなかった
【0039】
比較例1
カルシウム金属:カルシウムアミドを10mol:1molの条件で実験を行った。5mm塊のカルシウム金属11.2gに粒子径0.5μmのカルシウムアミド粉末2gを混合したものを、窒素ガス下で1000℃にて加熱処理を行った。加熱は実施例1と同様に行った。熱処理したものをグローブボックス内で回収を行ったところ。カルシウム金属およびカルシウムアミドの凝集物が固着し、回収することができなかった。また、焼成用ボートに用いたアルミナボートにカルシウム金属が侵食し割れていた。
【0040】
上記のように、本発明による金属窒化物の製造方法は、原料として粒状の金属を用いても凝集することなく、高純度の金属窒化物を得ることができた。また、金属アミド(A)と金属(B)とのモル比(B/A)が2以下では、全相金属窒化物を得ることができた。
図1
図2
図3
図4