(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039475
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】検体分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20161128BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20161128BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/04 G
G01N35/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-57905(P2013-57905)
(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公開番号】特開2014-182067(P2014-182067A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】正村 美樹夫
【審査官】
山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−251638(JP,A)
【文献】
特開2001−165936(JP,A)
【文献】
特開2011−027731(JP,A)
【文献】
特開2008−014638(JP,A)
【文献】
特開2007−127436(JP,A)
【文献】
特開2007−071575(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/004653(WO,A1)
【文献】
特開2011−059082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引管を垂直方向に上下移動させる第1の駆動手段と、
表面がシールにより封止された検体分析に用いるセルを有する試薬カートリッジを保持するホルダを、第1の線分上をこの第1の線分の方向に往復運動させる第3の駆動手段と、
前記吸引管を垂直方向と直交する平面において前記第1の線分と直交する第2の線分との交点を通るように回転させる第2の駆動手段と、
前記回転の回転中心から前記交点まで延びる前記第2の線分を基準線として、前記吸引管と前記回転中心とを結ぶ線が前記基準線となす旋回角度が第1の角度となるように前記第2の駆動手段を制御すると共に、前記試薬カートリッジのセルが前記吸引管の直下に位置付けられるように前記第3の駆動手段を制御し、更に、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて圧抜孔を穿孔し、前記第2の駆動手段及び前記第3の駆動手段を制御して前記吸引管の直下位置を前記セルの前記圧抜孔と異なる位置に位置付け、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて作業孔を穿孔する制御手段と
を具備したことを特徴とする検体分析装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記旋回角度が前記第1の角度と異なる第2の角度となるように前記第2の駆動手段を制御すると共に、前記試薬カートリッジの前記セルが前記吸引管の直下に位置付けられるように前記第3の駆動手段を制御し、更に、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて前記圧抜孔とは異なる位置に前記作業孔を穿孔することを特徴とする請求項1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記作業孔を穿孔する前に全てのセルにおいて前記圧抜孔を穿孔することを特徴とする請求項2に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記作業孔を前記セルのシール表面中央位置に穿孔し、前記圧抜孔をセルのシール表面中央位置から外れた位置に穿孔することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記第2の角度がゼロ度の位置において作業孔を穿孔することを特徴とする請求項2または3に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記圧抜孔を穿孔する際の前記吸引管による前記セルへの侵入距離を、前記作業孔を穿孔する際の前記吸引管による前記セルへの侵入距離よりも短くすることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面がシールにより封止された検体分析に用いるセルを有する試薬カートリッジを用いて検体の分析を行う検体分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試薬カートリッジには、通常複数のセルが設けられており、各セルには分析に用いる試薬が入れられ、或いは空室だったりする。いずれにしても、セルの表面がシールにより封止されており、検体を吐出し或いは試薬を吸引するためには、シールに対する穿孔が必要である。
【0003】
従来においては、検体を吐出し或いは試薬を吸引する作業の際に上記シールに対する穿孔を行っている。しかしながら、この手法によるとシールに穿孔された孔と吸引管との間は密となることが多く、試薬セル内の内圧が変動するため正確に吐出・吸引を行うことが難しいものであった。
【0004】
上記に対する対策としてセルのシールに複数の孔を穿設したものが知られている(特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1に記載の装置では、試薬カートリッジにおけるセルが並んだ方向に複数か所の孔を穿設するものである。このため、セルの並び方向にセルを大きくする必要が生じ、セルが大型化しセル容量が増加せざるを得なかった。このため、セル容量が増加して充填する試薬の量も多くなり、コスト高となる不具合があった。また、試薬カートリッジを長くする必要があり、試薬カートリッジの大型化を招来し、試薬カートリッジを保管する保管スペースが大型となるばかりか、試薬カートリッジをセットする装置も大型化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−14638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来の検体分析装置の問題点を解決せんとしてなされたもので、その目的は、検体の吐出や試薬吸引などの場合に正確に作業を行うことが可能な検体分析装置を提供することである。また、セルの容量が増加することがなく、充填する試薬を増加する必要がなく、コスト高となることがないようにすることを目的とする。更に、試薬カートリッジが大型化することなく、試薬カートリッジの保管スペースや装置の大型化が不要となる検体分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に係る検体分析装置は、吸引管を垂直方向に上下移動させる第1の駆動手段と、表面がシールにより封止された検体分析に用いるセルを有する試薬カートリッジを保持するホルダを、
第1の線分上をこの第1の線分の方向に往復運動させる第3の駆動手段と、前記吸引管を垂直方向と直交する平面において
前記第1の線分と直交する第2の線分との交点を通るように回転させる第2の駆動手段と、前記回転の回転中心から
前記交点まで延びる
前記第2の線分を基準線として、前記吸引管と前記回転中心とを結ぶ線
が前記基準線となす旋回角度が第1の角度となるように前記第2の駆動手段を制御すると共に、前記試薬カートリッジのセルが前記吸引管の直下に位置付けられるように前記第3の駆動手段を制御し、更に、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて圧抜孔を穿孔
し、前記第2の駆動手段及び前記第3の駆動手段を制御して前記吸引管の直下位置を前記セルの前記圧抜孔と異なる位置に位置付け、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて作業孔を穿孔する制御手段とを
具備したことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る検体分析装置では、制御手段は、前記旋回角度が第1の角度と異なる第2の角度となるように前記第2の駆動手段を制御すると共に、前記試薬カートリッジのセルが前記吸引管の直下に位置付けられるように前記第3の駆動手段を制御し、更に、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて圧抜孔とは異なる位置に作業孔を穿孔することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る検体分析装置では、制御部は、作業孔を穿孔する前に全てのセルにおいて圧抜孔を穿孔することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る検体分析装置は、作業孔をセルのシール表面中央位置に穿孔し、圧抜孔をセルのシール表面中央位置から外れた位置に穿孔することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る検体分析装置は、第2の角度がゼロ度の位置において作業孔を穿孔することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る検体分析装置では、圧抜孔を穿孔する際の吸引管によるセルへの侵入距離を、作業孔を穿孔する際の吸引管によるセルへの侵入距離よりも短くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る検体分析装置は、吸引管を垂直方向に上下移動させる第1の駆動手段と、前記吸引管を垂直方向と直交する平面において回転させる第2の駆動手段と、表面がシールにより封止された検体分析に用いるセルを有する試薬カートリッジを保持するホルダを、前記回転により前記吸引管が描く円弧に対する法線方向を往復運動させる第3の駆動手段と、前記回転の回転中心から延び前記法線に直交する線分を基準線として、前記吸引管と前記回転中心とを結ぶ線と前記基準線がなす旋回角度が第1の角度となるように前記第2の駆動手段を制御すると共に、前記試薬カートリッジのセルが前記吸引管の直下に位置付けられるように前記第3の駆動手段を制御し、更に、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて圧抜孔を穿孔する制御手段とを具備しているので、吸引管の回転と試薬カートリッジを保持するホルダの直線運動とが交差する位置において穿孔を行うことができ、試薬カートリッジの移動方向に交差する方向へ圧抜孔を設けることが可能である。このため、セルの容量が多くなることがなく、充填する試薬量を少なくできるので、コスト高となることがない。更に、試薬カートリッジが大型化することなく、試薬カートリッジの保管スペースや装置の大型化が不要となる
【0014】
本発明に係る検体分析装置では、前記旋回角度が第1の角度と異なる第2の角度となるように前記第2の駆動手段を制御すると共に、前記試薬カートリッジのセルが前記吸引管の直下に位置付けられるように前記第3の駆動手段を制御し、更に、前記第1の駆動手段を制御して前記吸引管を下降させて圧抜孔とは異なる位置に作業孔を穿孔するので、作業孔を穿孔するときには既に圧抜孔が存在し、セル内の内圧変動を生じることなく、検体の吐出や試薬吸引などの場合に正確に作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る検体分析装置の実施形態の要部を示す斜視図。
【
図2】本発明に係る検体分析装置の実施形態における圧抜孔の穿孔動作を示す要部平面図。
【
図3】本発明に係る検体分析装置の実施形態における作業孔の穿孔動作を示す要部平面図。
【
図4】本発明に係る検体分析装置の実施形態にセットされる試薬カートリッジを示す図であり、(a)は平面図、(b)は斜視図。
【
図5】本発明に係る検体分析装置の実施形態における動作を示すフローチャート。
【
図6】本発明に係る検体分析装置の実施形態における圧抜孔の穿孔動作を示す要部断面図。
【
図7】本発明に係る検体分析装置の実施形態における作業孔の穿孔動作を示す要部断面図。
【
図8】本発明に係る検体分析装置の実施形態にセットされる試薬カートリッジにおいて、圧抜孔及び作業孔の穿孔が行われた後の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照して本発明に係る検体分析装置の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。本発明の実施形態に係る検体分析装置の要部の、斜視図が
図1に示され、平面図が
図2、
図3に示されている。この検体分析装置には、検体や試薬の吸引・吐出を行うためのポンプなどに接続された吸引管11が備えられている。この吸引管11は、超弾性金属により構成することができる。
【0017】
吸引管11は、垂直方向に長い状態でアームやリニアブッシュなどにより保持されている。アームやリニアブッシュなどは、吸引管11を保持した状態で上下移動される。この上下移動の駆動源は、第1の駆動手段としてのステッピングモータなどにより構成することができる。また、吸引管11の上下移動した位置を検出するための幾つかのセンサが設けられている。
【0018】
上記アームやリニアブッシュなどは、吸引管11を保持した状態で垂直方向と直交する平面において回転される。このため、吸引管11も上記平面において回転する。この回転の駆動源は、第2の駆動手段としてのステッピングモータなどにより構成することができる。吸引管11の回転した位置を検出するための幾つかのセンサが設けられている。
【0019】
検体分析装置には、上記回転により上記吸引管11が描く円弧に対する法線方向
(第1の線分の方向)に直線状に延びるスライドレール12が設けられている。スライドレール12上には、スライドレール12において摺動するキャリア13が設けられている。キャリア13の上には試薬カートリッジ20を収容保持するためのセルホルダ14が載置され固定されている。セルホルダ14にはリニアステッピングモータ15が接続されている。このリニアステッピングモータ15はスライドレール12上でセルホルダ14を往復運動させる第3の駆動手段として機能する。
【0020】
キャリア13には結合部材を介してセンサ板16が設けられている。このセンサ板16は、先端が鉤状に形成され、外側に突出した突起部16Aを備える。このセンサ板16における突起部16Aを検出し、セルホルダ14の位置検出を行うためのフォトセンサ17、18が、突起部16Aが通過する所定位置に設けられている。フォトセンサ17はセルホルダ14のイニシャル位置を検出するためのセンサである。フォトセンサ18はセルホルダ14に収納された試薬カートリッジ20におけるセルに対するイジェクト位置を検出するためのセンサである。
【0021】
試薬カートリッジ20は、例えば、
図4(b)に示すように4槽のセル21〜24を備える。第1槽のセル21、第2槽のセル22、第3槽のセル23、第4槽のセル24は、試薬カートリッジ20の長手方向に並べられて結合されており、それぞれの横幅(試薬カートリッジ20の長手方向)の寸法がそれぞれの縦幅方向の寸法よりも短く形成されている。また
図4(a)に示すように、第1槽のセル21の横幅の寸法d1と第4槽のセル24の横幅の寸法d4とは異なる。これに対応して、セルホルダ14の第1槽のセル21と第4槽のセル24が収納される孔部の寸法が設定されているため、セルホルダ14に試薬カートリッジ20を収納する際に左右の向きの取り違えを防止することができる。
【0022】
第1槽のセル21、第2槽のセル22、第3槽のセル23には、それぞれ試薬が所要量入れられ、第4槽のセル24は反応槽とされるため、空室とされる(
図6、
図7)。第1槽のセル21、第2槽のセル22、第3槽のセル23、第4槽のセル24は、表面がシール25により封止されている。
【0023】
上記試薬カートリッジ20は、
図1に示されるようにセルホルダ14に収容される。セルホルダ14の両側面には、少なくとも第1槽のセル21、第2槽のセル22、第3槽のセル23、第4槽のセル24に対応する位置に上下に2箇所ずつの孔1a、1b、・・・、4a、4bが形成されている。
図1では、一側面の孔1a、1b、・・・、4a、4bが現れている。これらの孔1a、1b、・・・、4a、4bの高さに対応して、表側面側には発光素子28a、28bが設けられ、裏側面側には受光素子29a、29bが設けられている。発光素子28a、28bから射出された光が上記孔1a、1b、・・・、4a、4bを介してセル内を通過し受光素子29a、29bにおいて受光されたときの光電変換信号に基づいて、各セルにおける作業監視や測光による分析などが行われる。
【0024】
スライドレール12上において最先端側にセルホルダ14が押し出されたイジェクト位置では、セルホルダ14は、当該検体分析装置の筐体の図示しないドア近傍まで移動した状態となる。この状態において、オペレータはドアを開けて試薬カートリッジ20をセルホルダ14に収納保持させることができる。また、
図2、
図3の検体吸引位置Pは、当該検体分析装置の筐体の外側であり、吸引管11の先端部が露出される位置である。この検体吸引位置Pでは、検体が入れられた検体容器をオペレータが持って筐体から露出した吸引管11の先端を検体容器内に導き、検体の吸引を行わせることができる。
【0025】
制御手段30は、CPUなどにより構成することができる。この制御手段30は、前述のセンサなどからの信号に基づき
図5に示されるフローチャートにより各部を制御する。以下、このフローチャートを参照して動作を説明する。電源が投入されオペレータによりインジェクトキーが押されると、制御手段30はリニアステッピングモータ15を制御してセルホルダ14を前方へ移動させインジェクト位置へ位置付けてドアを開閉する(S11)。オペレータは未使用の試薬カートリッジ20を用意し、当該検体分析装置のセルホルダ14へセットし、ドアを閉成する。
【0026】
上記ドアの閉成を検出して制御手段30は、試薬カートリッジ20がセットされたセルホルダ14をイニシャル位置に移動させる(S12)。次に、制御手段30は、リニアステッピングモータ15を制御してセルホルダ14を圧抜孔位置へ移動し、ステッピングモータなどを制御して吸引管11を回転させて圧抜孔位置の上方へ位置付ける(S13)。次に、吸引管11を下降させて一番目のセル(第1槽のセル21)におけるシール25に圧抜孔51を穿設させる(S14)。このとき、吸引管11の先端は
図6に示すように試薬まで到達しない距離まで下降させる。このように、圧抜孔を穿孔する際の吸引管11によるセルへの侵入距離を、作業孔を穿孔する際の吸引管11によるセルへの侵入距離よりも短くする。
【0027】
この状態の平面図が
図2に示されている。この状態では、回転の回転中心Oから延び回転円の法線
(第1の線分)に直交する線分
(第2の線分)を基準線Lとして、吸引管11と上記回転中心Oとを結ぶ線L1と上記基準線Lがなす旋回角度αが第1の角度となるように回転駆動のステッピングモータ(第2の駆動手段)を制御する。また、
図2では、検体吸引位置Pと上記回転中心Oとを結ぶ線分を基準として、この基準の線から回転した角度をθ1として表している。
【0028】
ここでは、線L1が基準線Lと重なるとき、セルのシール25表面中央位置に吸引管11の先端により孔を穿孔できるようになっている。圧抜孔の穿孔の際には、線L1と基準線Lとが第1の角度である旋回角度αを有するように制御しており、圧抜孔はセルのシール表面中央位置から外れた位置に穿孔される。
【0029】
次に、吸引管11を上昇させて、セルホルダ14を前方へ移動させて、二番目のセル(第2槽のセル22)を圧抜孔の穿孔位置へ位置付け、吸引管11を下降させて二番目のセル(第2槽のセル22)におけるシール25に圧抜孔52を穿設させ、以下同様に全てのセルにおけるシール25に圧抜孔53,54を穿設させる(S15)。
【0030】
全てのセルにおけるシール25に圧抜孔51〜54を穿設し終わると、制御手段30は、吸引管11を上昇させて回転させて検体吸引位置Pに位置付け、ここで吸引管11を下降させてその先端部を検体分析装置の筐体の外部へ露出させ、検体の吸引を行う(S16)。即ち、検体が入れられた検体容器をオペレータが持ち、筐体から露出した吸引管11の先端を検体容器内に導き、スイッチを操作して検体の吸引を行わせる。
【0031】
検体の吸引が終了すると、制御手段30は吸引管11を上昇させて回転させて、吸引管11と上記回転中心Oとを結ぶ線L1と上記基準線Lがなす旋回角度αが第2の角度となるように回転駆動のステッピングモータ(第2の駆動手段)を制御し、吸引管11を作業孔穿孔位置へ位置付ける(S17)。この第2の角度はゼロ度であり、
図3に平面図が示される通りである。
図3では、検体吸引位置Pと上記回転中心Oとを結ぶ線分を基準として、この基準の線から回転した角度をθ2として表している。
【0032】
制御手段30は上記の旋回角度αが第2の角度となると吸引管11の回転を停止させ、吸引管11を下降させて一番目のセル(第1槽のセル21)におけるシール25に作業孔41を穿孔し(
図3)、更に吸引管11を試薬に漬かるまで
図7に示すように下降させて検体を吐出させる(S18)。これにより
図3に示されるように、セルの中央位置に作業孔41が穿孔され、作業が行われる。この作業孔41の穿孔のときには、既に圧抜孔51が穿設されており、セル内の圧力の変化がなく適切に検体の吐出を行うことができる。
【0033】
更に、制御手段30は吸引管11により当該第1槽のセル21内において吸引と吐出を行って攪拌させた後、混合液を吸引させて吸引管11を上昇させ、第4槽のセル24の中央が吸引管11の直下に位置するようにセルホルダ14を移動させて、吸引管11を下降させて作業孔41の穿孔を行い、反応槽に分注する(S19)。第2槽のセル22、第3槽のセル23においても作業孔42、43の穿孔と、試薬の吸引を行い、第4槽に分注して混合液を吸引、吐出して攪拌させる。このときにも、既に圧抜孔52、53,54が穿設されており、セル内の圧力の変化がなく適切に試薬の吸引と吐出を行うことができる。
【0034】
反応槽において発光素子28a、28b及び受光素子29a、29bを用いて測光による分析を行う(S20)。
【0035】
上記の処理により、圧抜孔51〜54と作業孔41〜44が
図8に示されるように並んで穿孔される。即ち、圧抜孔51〜54は長手方向に一列に並んで穿孔され、また作業孔41〜44も長手方向に一列に並んで穿孔される。各セルに穿孔される作業孔と圧抜孔のペア(41、51)、(42、52)、(43、53)、(44、54)は長手方向(セルホルダ14の移動方向)と直交する方向に並んで穿孔される。なお、上記では全てのセルにおいて圧抜孔を穿孔させる処理を先行したが、各セルにおいて作業孔を穿孔する前に圧抜孔を穿孔するようにしても良い。
【0036】
以上の通り制御手段30は、回転中心Oから延びセルホルダ14の移動方向と一致する吸引管11の回転による円の法線に直交する線分を基準線Lとして、吸引管11と回転中心Oとを結ぶ線L1と上記基準線Lがなす旋回角度αが第1の角度となるように第2の駆動手段であるステッピングモータを制御する。また制御手段30は、上記試薬カートリッジ20のセルが上記吸引管11の直下に位置付けられるように第3の駆動手段であるリニアステッピングモータ15を制御し、更に、第1の駆動手段であるステッピングモータなどを制御して上記吸引管11を下降させて圧抜孔を穿孔する。
【0037】
また、制御手段30は、上記旋回角度が第1の角度と異なる第2の角度となるように上記第2の駆動手段を制御すると共に、上記試薬カートリッジ20のセルが上記吸引管11の直下に位置付けられるように上記第3の駆動手段であるリニアステッピングモータ15を制御し、更に、上記第1の駆動手段であるステッピングモータなどを制御して上記吸引管11を下降させて圧抜孔とは異なる位置に作業孔を穿孔する。
【0038】
このようにして、圧抜孔を設けることができ、検体の吐出や試薬吸引などの場合に正確に作業を行うことが可能となる。各セルに穿孔される作業孔と圧抜孔のペア(41、51)、(42、52)、(43、53)、(44、54)は長手方向(セルホルダ14の移動方向)と直交する方向に並んで穿孔されるので、セルの容量が増加することがなく、充填する試薬量を少なくできるので、コスト高となることがない。更に、試薬カートリッジが大型化することなく、試薬カートリッジの保管スペースや装置の大型化が不要となる。
【符号の説明】
【0039】
21〜24 セル
41〜44 作業孔
51〜54 圧抜孔
11 吸引管
12 スライドレール
13 キャリア
14 セルホルダ
15 リニアステッピングモータ
16 センサ板
17、18 フォトセンサ
20 試薬カートリッジ
30 制御手段