特許第6039476号(P6039476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039476
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】水硬性粉体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/52 20060101AFI20161128BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20161128BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20161128BHJP
   C04B 103/52 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   C04B7/52
   C04B24/02
   C04B24/16
   C04B103:52
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-59900(P2013-59900)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185049(P2014-185049A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】下田 政朗
(72)【発明者】
【氏名】佐川 桂一郎
(72)【発明者】
【氏名】長澤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭介
【審査官】 宮崎 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/008092(WO,A1)
【文献】 特開2013−006738(JP,A)
【文献】 特開昭61−117142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B7/00−32/02,
40/00−40/06
103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法であって、
水硬性化合物が、クリンカー、又はクリンカー及び混合材である、
水硬性粉体の製造方法。
【請求項2】
前記グリセリンと前記ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計の存在量が、水硬性化合物100質量部に対して、0.001質量部以上、0.100質量部以下である、請求項1記載の水硬性粉体の製造方法。
【請求項3】
前記グリセリンと前記ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)が、5/95以上、55/45以下である、請求項1又は2に記載の水硬性粉体の製造方法。
【請求項4】
水硬性化合物が、クリンカーと、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の混合材とを含有し、前記クリンカーの含有量が、水硬性化合物中、20質量%以上、92質量%以下であり、前記混合材の含有量が、水硬性化合物中、8質量%以上、80質量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の水硬性粉体の製造方法。
【請求項5】
クリンカーと前記混合材との合計の含有量が、水硬性化合物中、70質量%以上、100質量%以下である、請求項4記載の水硬性粉体の製造方法。
【請求項6】
グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩とを含有し、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)が、5/95以上、55/45以下である、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物であって、
水硬性化合物が、クリンカー、又はクリンカー及び混合材である、
水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートの初期強度は、スリップフォーム工法における型枠滑動速度、凍害耐力、せき板の取り外し時期などコンクリートの初期における性状の判定に重要なものである。例えば、型枠の在置期間は、JASS5および建設省告示第110号に規定されているが、最小在置期間として気温15℃以上で2〜3日(基礎、柱、壁など)とされている。その要因は、脱型後のコンクリートの乾燥による長期強度の発現が著しく悪くなるためであり、特に3日以内の水分の蒸発が著しいと言われている。これを抑制するためには、セメントの水和反応を促進し、水分が乾燥(蒸発)しにくいセメント水和物に変換することが効果的であり、3日強度を高く発現させることは、コンクリート硬化体の乾燥による長期強度低下抑制の観点から重要である。
【0003】
また一方でセメント産業では、他産業等で発生した廃棄物(一般ゴミなど)・副産物を、原料、エネルギー源、製品の一部として積極的に活用してきているが、これによりセメント鉱物組成が変動しセメント強度が大きく変動する場合がある。セメントの品質の規格は、欧州や中国のように強度の観点から強さクラス(3ランクの28日強度と2ランクの初期強さ)が区別されており、これらを組合せてセメントの品質が規定されているが、特に初期強さで現される3日強度は、セメントの初期水和反応に依存しており、廃棄物などによる鉱物組成の変動が現れやすい。このため初期強さを高く発現させることは、セメントの安定生産の観点から重要である。また他産業の副産物である高炉スラグやフライアッシュなどは、セメント製品の混合材として使用されるが、初期強さの高い強度を発現することは、品質規格の範囲内で混合量を増やす、即ちクリンカー量を削減することが可能となる。そして、クリンカー量を削減することは、クリンカー製造時に発生する温室効果ガスの排出削減の観点から重要である。
【0004】
特許文献1には、セメント等の粉体の製造に関して、ジオール、トリオールまたはこれらの混合物から選択した少なくとも1種のバイオマス由来ポリオールを含有して成る粉砕助剤組成物を粒子に導入することを含んで成る粒子の粉砕効率の向上方法が開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、水硬セメント結合剤を含有するセメント組成物の硬化時間を短縮するための、硬化促進剤成分;および硬化促進剤成分の硬化促進性を増加させるのに有効な量で存在するC2ないしC6のグリコール成分よりなる混和剤が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、硬化促進されたセメント組成物として、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム及びチオシアン酸ナトリウムを含むセメント組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2008−542182号公報
【特許文献2】特開平6−199555号公報
【特許文献3】特開昭61−117142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、水硬性粉体の生産性の向上、コンクリート二次製品の生産性向上及びコンクリート硬化体の強度向上等の理由により、水硬性粉体の製造方法では、水硬性化合物の粉砕性と得られる水硬性粉体を用いた水硬性組成物の硬化時の圧縮強度、とりわけ初期強度の双方において、さらなる向上が望まれる。
【0009】
本発明の課題は、水硬性化合物の粉砕性を阻害することなく、初期強度の高い硬化体が得られる水硬性粉体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩とを含有し、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)が、5/95以上、55/45以下である、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水硬性化合物の粉砕性を阻害することなく、初期強度の高い硬化体が得られる水硬性粉体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水硬性粉体の製造方法は、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の存在下において、水硬性化合物を粉砕することに特徴を有し、水硬性化合物の粉砕性を阻害することなく、得られる水硬性組成物の硬化時の圧縮強度、特に初期強度を向上させるという効果を奏する。このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。
【0014】
本発明では、水硬性化合物の粉砕時にグリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩が存在することで、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩がグリセリンの粉砕効果を阻害せず、グリセリン同様、粉砕により生じる水硬性粉体表面を被覆することで、水硬性粉体の凝集を抑制するため、粉砕性を阻害しないものと推定される。
【0015】
粉砕後の水硬性粉体から水硬性組成物を調製した場合、本発明のヒドロキシメタンスルホン酸は、適度なキレート作用により水硬性粉体の鉱物の一成分であるC3S(エーライト)の水和生成物、例えば水酸化カルシウム等の結晶成長に作用することで結晶を微粒化すると推定される。また、グリセリンは、適度なキレート作用により水硬性粉体の鉱物成分であるC3A(カルシウムアルミネート)やC4AF(カルシウムアルミノフェライト)のイオン溶出を促進すると推定される。さらに混合材(高炉スラグやフライアッシュなど)を含有する場合には、ヒドロキシメタンスルホン酸が混合材のイオン溶出を促進すると推定される。本発明では、ヒドロキシメタンスルホン酸とグリセリンが共存することで、C3Sおよび混合材およびC3AやC4AFからのそれぞれの溶出イオンが複合化し、ポーラスな結晶構造の水和生成物となるために、水硬性粉体表面への水の進入が維持され、水和反応が阻害されることなく継続して進行するため、接水から3日後の圧縮強度を向上させると推定される。さらにこれら両者を粉砕時に存在させることで、水硬性粉体の表面近傍に存在することとなり、各鉱物や混合材に対して効率的に水和反応を促進し、水硬性化合物に対し非常に少ない添加量でも水和率向上効果、ひいては硬化体の初期強度向上効果が発現するものと推定される。
【0016】
グリセリンは、市販品を用いることができる。グリセリンとしては、市販品の精製グリセリン、例えば、ヤシ由来の油脂のエステル交換で得られたグリセリンを用いることができる。水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、精製グリセリンが好ましい。
【0017】
グリセリンの存在量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、水硬性化合物の粉砕性及び初期強度の観点から、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.003質量部以上、より更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.010質量部以上であり、そして、粉砕時の添加剤コストの観点から、好ましくは0.040質量部以下、より好ましくは0.035質量部以下、更に好ましくは0.020質量部以下、より更に好ましくは0.016質量部以下である。
【0018】
ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩は、市販品を用いることができる。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩が挙げられ、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、アルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩としてはナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられ、アルカリ土類金属塩としてはカルシウム塩が挙げられ、入手の容易性の観点からナトリウム塩が好ましい。
【0019】
ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の存在量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、水硬性化合物の粉砕性及び初期強度の観点から、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.010質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上であり、そして、粉砕時の添加剤コストの観点から、好ましくは0.060質量部以下、より好ましくは0.050質量部以下、更に好ましくは0.030質量部以下、より更に好ましくは0.024質量部以下である。
【0020】
グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計の存在量は、粉砕に用いられる原料の水硬性化合物100重量部に対して、0.001質量部以上、0.100質量部以下が好ましい。この存在量は、水硬性化合物の粉砕性及び初期強度の観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.004質量部以上、更に好ましくは0.010質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上、より更に好ましくは0.030質量部以上であり、そして、粉砕時の添加剤コストの観点から、好ましくは0.100質量部以下、より好ましくは0.085質量部以下、更に好ましくは0.050質量部以下、より更に好ましくは0.040質量部以下である。
【0021】
この量は、水硬性化合物を粉砕する工程で存在させる、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計の全量に基づくものであり、具体的には、水硬性化合物の粉砕が終了するまで、更には、後述するような目標とするブレーン値に到達するまでに存在させるグリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計の全量に基づくものである。
【0022】
また、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)は、5/95以上、55/45以下が好ましい。この質量比は、水硬性化合物の粉砕性および初期強度の観点から、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、より更に好ましくは25/75以上、より更に好ましくは35/65以上であり、そして、より好ましくは50/50以下、初期強度の観点から、更に好ましくは45/55以下である。
【0023】
グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩とを存在させて粉砕を行うには、水硬性化合物、例えばクリンカーを含む原料に、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩とを添加して行うことが好ましい。添加する方法としては、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩とを含有する液状物、好ましくは水溶液を、滴下、噴霧等により供給する方法が挙げられる。グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩は、それぞれを液状物、好ましくは水溶液として別々に水硬性化合物に添加しても良いし、両者を混合した後に水硬性化合物に添加してもよい。他の成分としては、消泡剤、水等が挙げられる。水硬性化合物を含む原料へのグリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の添加もしくはグリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩及びその他の成分の添加は、最終的に使用される全量を一括で添加してもよいし、分割して添加してもよい。また、連続的又は間欠的に添加してもよい。
【0024】
本発明の水硬性粉体の製造方法では水硬性化合物を粉砕し水硬性粉体を得る。水硬性化合物とは、クリンカーに代表される水と反応して硬化する性質をもつ物質と、フライアッシュや高炉スラグなどに代表される単独では硬化性を有しないが、水やアルカリ物質と反応して硬化する性質をもつ物質と組み合わせると、水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する物質の両者をいう。水と反応して硬化する性質をもつ物質としては、アルカリ土類金属の酸化物、SiO2、Al23、Fe23、TiO2、P25、ZnOなどの酸化物が挙げられる。これらは、一般に、常温又は水熱条件下で水和物を形成する。例えば、クリンカーでは、成分として3CaO・SiO2(C3S:エーライト)、2CaO・SiO2(C2S:ビーライト)、3CaO・Al23(C3A:カルシウムアルミネート)、4CaO・Al23・Fe23(C4AF:カルシウムアルミノフェライト)を含んでいる。また、単独では硬化性を有しないが、水やアルカリ物質と反応して硬化する性質をもつ物質と組み合わせると、水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する物質としては、例えば、ポゾラン作用のあるもの(フライアッシュ、シリカフューム、火山灰、珪酸白土)や、潜在水硬性のあるもの(高炉スラグ)などが挙げられる。本発明では、単独では硬化性を有しないが、水やアルカリ物質と反応して硬化する性質をもつ物質と組み合わせると、水を介して相互作用により水和物を形成し硬化する物質を「混合材」と定義する。
【0025】
水硬性化合物は、水やアルカリ物質と反応して硬化する性質をもつ物質を含有するものが好ましく、更に、水と反応して硬化する性質をもつ物質、なかでもクリンカーと、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の混合材〔以下、混合材(a)という〕とを含有するものが好ましい。混合材(a)の含有量は、3日強度における無添加からの強度向上率の観点から、水硬性化合物中、好ましくは8質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。この含有量の残余は、水と反応して硬化する性質をもつ物質であることが好ましい。従って、前記混合材(a)を含有する水硬性化合物は、クリンカーなどの水と反応して硬化する性質をもつ物質の含有量が、水硬性化合物中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは92質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは60質量%である。また、クリンカーなどの水やアルカリ物質と反応して硬化する性質をもつ物質と前記混合材(a)との合計の含有量は、水硬性化合物中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして100質量%以下が好ましく、100質量%であってもよい。本発明の製造方法は、混合セメント(例えばJIS R 5211〜5213)の製造方法として好適である。
【0026】
水硬性粉体としてポルトランドセメントを得る場合、例えば、ポルトランドセメントは、石灰石、粘土、鉄さい等の原料を焼成して得られた水硬性化合物であるクリンカー(セメントクリンカーとも言い、石膏が入っている場合もある。)を、予備粉砕し、適量の石膏を加え、仕上粉砕して、所定の比表面積、例えばブレーン値2500cm2/g以上、又はBET比表面積0.8m2/g以上の比表面積を有する粉体として製造される。クリンカーと前記混合材とを共に用いて同様に混合材を含有する水硬性粉体を製造することができる。
【0027】
本発明の水硬性粉体の製造方法では、原料、用途(セメントの強さクラス)等により、適当な粒径の粉体が得られるよう、粉砕の条件を調整すればよい。一般に、水硬性化合物がセメントクリンカーのような水と反応して硬化する性質をもつ物質単独の場合、ブレーン値が、好ましくは2500cm2/g以上、より好ましくは3000cm2/g以上、そして、好ましくは5000cm2/g以下、より好ましくは4000cm2/g以下となるまで、水硬性化合物の粉砕を行うことが好ましい。また、水硬性化合物がセメントクリンカーのような水と反応して硬化する性質をもつ物質と混合材とを含有する場合、水硬性化合物の密度(比重)が不明でブレーン値の測定が困難となることがある。この場合は、BET比表面積で代用することができる。BET比表面積とは、窒素(N2)などの気体粒子を固体粒子に吸着させ、吸着した量から表面積を測定する気体吸着法である。具体的には、圧力Pと吸着量Vとの関係からBET式(Brunauer,Emmet and Teller's equation)によって、単分子吸着量VMを測定することで、比表面積が求められるものである。セメントクリンカーのような水と反応して硬化する性質をもつ物質と混合材とを含有する水硬性化合物を粉砕する場合、BET比表面積が、好ましくは0.8m2/g以上、より好ましくは1.2m2/g以上、そして、好ましくは3.0m2/g以下、より好ましくは2.5m2/g以下の粉体となるまで、水硬性化合物の粉砕を行うことが好ましい。目的の比表面積は、ブレーン値、BET比表面積、何れの場合でも、例えば粉砕時間を調整することにより得ることができる。粉砕時間を長くすると比表面積が大きくなり、短くすると比表面積が小さくなる傾向がある。
【0028】
本発明において、水硬性化合物の粉砕に使用される粉砕装置は、特に限定されないが、例えばセメントなどの粉砕で汎用されているボールミルを挙げることができる。該装置の粉砕媒体(粉砕ボール)の材質は、被粉砕物(例えばセメントクリンカーの場合、カルシウムアルミネート)と同等又はそれ以上の硬度を有するものが望ましく、一般に入手可能な市販品では、例えば鋼、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、チタニア、タングステンカーバイド等を挙げることができる。
【0029】
水硬性組成物中の空気量の増大による強度低下を抑制する観点から、更に消泡剤を併用することができる。また、消泡剤を、水硬性化合物の粉砕時に存在させることで、得られる水硬性粉体の表面に消泡剤を均一に分布させ、前記抑制効果をより効果的に発現させることもできる。すなわち、グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩と消泡剤との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法により、所望の粒径に到達するまでの時間を短縮することができる。すなわち粉砕効率が良く、また、空気量の増大による水硬性組成物の圧縮強度低下を抑制できる。
【0030】
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤及びエーテル系消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤ではジメチルポリシロキサンがより好ましく、脂肪酸エステル系消泡剤ではポリアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、エーテル系消泡剤ではポリアルキレングリコールエーテルがより好ましい。
【0031】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いた水硬性組成物は硬化時の圧縮強度、なかでも初期強度が向上されたものとなる。水硬性粉体としては、ポルトランドセメント(JIS R 5210)、高炉セメント(JIS R 5211)、シリカセメント(JIS R 5212)、フライアッシュセメント(JIS R 5213)、アルミナセメント等が挙げられ、混合材が一定の割合で混合された、混合セメントが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法により得られた水硬性粉体は、コンクリート構造物やコンクリート製品の材料として用いることができる。本発明の製造方法により得られた水硬性粉体を用いたコンクリートは、接水から3日後といった初期圧縮強度が向上するので、例えば、本発明の製造方法により得られた水硬性粉体に、接水後の初期材齢強度が低い水硬性粉体(高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフューム、石灰石等)を配合・置換しても、本発明未実施の水硬性粉体を用いた場合と比較して、同等以上の、接水から3日後の圧縮強度を得ることが出来る、等の利点を有する。
【0033】
また、水硬性化合物の粉砕時の作業性を向上させる観点から、グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩とを含有し、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)が、5/95以上、55/45以下である、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物を用いることができる。水硬性粉体用強度向上剤組成物は、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)は、前述の比率の範囲であることが好ましい。
【0034】
水硬性粉体用強度向上剤組成物は、添加操作等の作業性を向上する観点から、形態が液体組成物であることが好ましい。水硬性粉体用強度向上剤組成物の形態が液体組成物とするために溶媒を含有することができる。溶媒としては水が好ましい。溶媒の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である。また、水硬性粉体用強度向上剤組成物は消泡剤等の他の添加剤を含有してもよい。
【0035】
水硬性粉体用強度向上剤組成物中のグリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計量は、水硬性組成物の3日強度を向上する観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、そして、添加操作等の作業性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0036】
本発明の水硬性粉体用強度向上剤組成物は、水硬性化合物の粉砕時に、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩のそれぞれ量及びそれらの合計量が、前述の存在量になるように水硬性組成物に添加することが好ましい。
【0037】
本発明の態様を以下に例示する。
<1> グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩との存在下で、水硬性化合物を粉砕する工程を有する、水硬性粉体の製造方法。
【0038】
<2> グリセリンの存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.003質量部以上、より更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.010質量部以上であり、そして、好ましくは0.040質量部以下、より好ましくは0.035質量部以下、更に好ましくは0.020質量部以下、より更に好ましくは0.016質量部以下である、前記<1>記載の水硬性粉体の製造方法。
【0039】
<3> ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.005質量部以上、より更に好ましくは0.010質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上であり、そして、好ましくは0.060質量部以下、より好ましくは0.050質量部以下、更に好ましくは0.030質量部以下、より更に好ましくは0.024質量部以下である、前記<1>又は<2>記載の水硬性粉体の製造方法。
【0040】
<4> グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計の存在量が、水硬性化合物100重量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.004質量部以上、更に好ましくは0.010質量部以上、より更に好ましくは0.020質量部以上、より更に好ましくは0.030質量部以上であり、そして、0.100質量部以下、より好ましくは0.085質量部以下、更に好ましくは0.050質量部以下、より更に好ましくは0.040質量部以下である、前記<1>〜<3>の何れか記載の水硬性粉体の製造方法。
【0041】
<5> グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)が、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、より更に好ましくは25/75以上、より更に好ましくは35/65以上であり、そして、55/45以下、好ましくは50/50以下、更に好ましくは45/55以下である、前記<1>〜<4>の何れか記載の水硬性粉体の製造方法。
【0042】
<6> 水硬性化合物が、水と反応して硬化する性質をもつ物質と、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカフュームからなる群から選ばれる1種以上の混合材とを含有し、
前記水と反応して硬化する性質をもつ物質の含有量が、水硬性化合物中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは92質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは60質量%であり、
前記混合材の含有量が、水硬性化合物中、好ましくは8質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である、
前記<1>〜<5>の何れか記載の水硬性粉体の製造方法。
【0043】
<7> 前記水と反応して硬化する性質をもつ物質と混合材の合計の含有量が、水硬性化合物中、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、そして100質量%以下である、更に100質量%である、前記<6>記載の水硬性粉体の製造方法。
【0044】
<8> 水硬性化合物が、水と反応して硬化する性質をもつ物質と混合材とを含有し、BET比表面積が、好ましくは0.8m2/g以上、より好ましくは1.2m2/g以上、そして、好ましくは3.0m2/g以下、より好ましくは2.5m2/g以下の粉体となるまで、水硬性化合物の粉砕を行う、前記<6>又は<7>記載の水硬性粉体の製造方法。
【0045】
<9> 粉砕に使用される粉砕装置がボールミルであり、粉砕ボールの材質が、鋼、ステンレス、アルミナ、ジルコニア、チタニア、タングステンカーバイドから選ばれる1種以上である、前記<1>〜<8>の何れか記載の水硬性粉体の製造方法。
【0046】
<10> グリセリンと、ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩とを含有し、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)が、5/95以上、55/45以下である、水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
【0047】
<11> 形態が液体組成物である、前記<10>記載の水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
【0048】
<12> 溶媒、好ましくは水を含有し、溶媒の含有量が、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下、より更に好ましくは60質量%以下である、前記<11>記載の水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
【0049】
<13> 水硬性粉体用強度向上剤組成物中のグリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計量が、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である、前記<10>〜<12>の何れか記載の水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物。
【実施例】
【0050】
(1)水硬性化合物
クリンカー、二水石膏、混合材を混合した、混合材含有量の異なる下記の水硬性化合物を用いた。
・混合材含有量0質量%の水硬性化合物:クリンカー95質量%、二水石膏5質量%を混合した。
・混合材含有量5質量%の水硬性化合物:クリンカー90質量%、二水石膏5質量%、高炉水砕スラグ5質量%を混合した。
・混合材含有量10質量%の水硬性化合物:クリンカー86質量%、二水石膏4質量%、高炉水砕スラグ5質量%、フライアッシュ5質量%を混合した。
・混合材含有量30質量%の水硬性化合物:クリンカー67質量%、二水石膏3質量%、高炉水砕スラグ15質量%、フライアッシュ15質量%を混合した。
・混合材含有量47質量%の水硬性化合物:クリンカー50質量%、二水石膏3質量%、高炉水砕スラグ25質量%、フライアッシュ22質量%を混合した。
・混合材含有量70質量%の水硬性化合物:クリンカー28質量%、二水石膏2質量%、高炉水砕スラグ35質量%、フライアッシュ35質量%を混合した。
【0051】
クリンカー、二水石膏は、高炉水砕スラグ、フライアッシュは、下記のものである。
・クリンカー:成分が、CaO:約65%、SiO2:約22%、Al23:約5%、Fe23:約3%、MgO他:約3%(質量基準)となるように、石灰石、粘土、けい石、酸化鉄原料等を組み合わせて焼成したものを、クラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得た、普通ポルトランドセメント用クリンカー(3.5mmふるい通過物)
・二水石膏:試薬特級、和光純薬工業株式会社製
・高炉水砕スラグ:高炉水砕スラグをクラッシャー及びグラインダーにより一次粉砕して得たもの(3.5mmふるい通過物)、表中、「Slag」と表記した。
・フライアッシュ:市販品、中部電力株式会社製、表中、「FA」と表記した。
【0052】
(2)水硬性化合物の粉砕用添加剤組成物の調製
表1〜5に示した混合比率でグリセリン及びヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムを混合し、固形分濃度(有効分濃度)が50質量%水溶液になるよう水を加えて濃度を調製した。いずれの粉砕用添加剤組成物も濁り等はなく、均一な水溶液が得られた。なお、グリセリン、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムは以下のものである。
・グリセリン:和光純薬工業株式会社製1,2,3−プロパントリオール
・ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウム:東京化成工業株式会社製
【0053】
(3)水硬性粉体のBET比表面積の測定
BET比表面積の測定は、Macsorb HM−model 1201(Mountech社製)を用い、以下の条件で行った。
・脱気:100℃×30分、冷却×4分
・測定ガス:キャリアガスとしてヘリウムを用い、冷却剤および吸着質として窒素を用いた。また、混合ガス濃度は30.4%、流量は25ml/min.とした。
【0054】
(4)水硬性組成物の調製及び圧縮強度試験
セメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に従って水硬性組成物を調製した。得られた水硬性組成物の圧縮強度を、セメントの物理試験方法(JIS R 5201)附属書2(セメントの試験方法−強さの測定)に従って評価した。
【0055】
<実施例1及び比較例1>
混合材含有量47質量%の水硬性化合物600gに、表1で示した添加剤を、粉砕用添加剤組成物の形態で表1に示した量で添加し、添加剤の存在下で、ボールミルで粉砕して水硬性粉体を製造した。
【0056】
ボールミルは、株式会社セイワ技研製AXB−15を用い、ステンレスポット容量は18リットル(外径300mm)とし、ステンレスボールは30mmφ(呼び1・3/16)を70個、20mmφ(呼び3/4)を70個、30mmφアルミナボールを35個の合計175個のボールを使用し、ボールミルの回転数は、45rpmとした。また、38分粉砕後のBET比表面積を測定した。
【0057】
38分粉砕後に得られた水硬性粉体を用いて、水硬性組成物調製後、3日後及び28日後の圧縮強度を測定した。結果を表1に示した。
【0058】
比較例1−1は、水硬性粉体の製造時(粉砕時)には、グリセリン及びヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムのいずれも添加せず、比較例1−2は、粉砕後に表に示す所定量の添加剤を粉砕用添加剤組成物の形態でモルタル調製時の練り水に添加した。また、比較例1−3は、水硬性粉体の製造時(粉砕時)には、グリセリンのみを水溶液の形態で添加し、比較例1−4は、水硬性粉体の製造時(粉砕時)には、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムのみを50質量%水溶液の形態で添加した。また、比較例1−5及び比較例1−6は、ヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムに代えて、特許文献2に記載された硬化促進剤成分である、重亜硫酸ナトリウム又は硝酸カルシウムを、粉砕用添加剤組成物の形態で粉砕時に用いた。
【0059】
【表1】
【0060】
*比較例1−1の結果を100とする相対値
【0061】
表1中、比較例1−2のように、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムとを粉砕後に添加剤として水硬性粉体に加えても、3日強度は大幅には向上しない。一方、実施例1−1では、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムの両方を、水硬性化合物の粉砕時に存在させることで、少量の添加で、粉砕性が良好となり、且つ3日強度に優れた硬化体が得られる水硬性粉体が製造できることがわかる。よって、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムの添加時期による効果の相違が明らかである。
【0062】
<実施例2及び比較例2>
実施例1−1において、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムの合計量が、水硬性化合物100質量部に対して0.080質量部となるように添加した以外は、実施例1−1と同様に実験を行った。また比較例1−2と同様に、比較例2−1、比較例2−2も粉砕後に表に示す所定量の添加剤を粉砕用添加剤組成物の形態でモルタル調製時の練り水に添加した。結果を表2に示した。
【0063】
【表2】
【0064】
*比較例1−1の結果を100とする相対値
【0065】
表2の結果からも、実施例2−1のように、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムの両方を、水硬性化合物の粉砕時に存在させることで、少量の添加で、粉砕性が良好となり、且つ3日強度に優れた硬化体が得られる水硬性粉体が製造できることがわかる。
【0066】
<実施例3〜7及び比較例3〜7>
実施例1−1において、混合材の含有量が異なる水硬性化合物を用いた以外は、実施例1−1と同様に実験を行った。また比較例も同様に、粉砕後に粉砕用添加剤組成物の形態でモルタル調製時の練り水に添加した。結果を表3に示した。表3には、実施例1−1、比較例1−1、1−2の結果も併記した。
【0067】
【表3】
【0068】
*「−1」の枝番の付いた各比較例の結果を100とする相対値
【0069】
表3から、水硬性化合物中の混合材の割合が増えるに従い、3日強度は低下する傾向にあるが、本発明の方法による実施例では、いずれの割合で混合材を含む水硬性化合物においても、粉砕性が良好となり、且つ初期強度に優れた硬化体が得られる水硬性粉体が製造できることがわかる。
【0070】
<実施例8>
実施例1−1において、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムの質量比を変えた以外は、実施例1−1と同様に実験を行った。結果を表4に示した。表4には、実施例1−1、比較例1−1の結果も併記した。
【0071】
【表4】
【0072】
*比較例1−1の結果を100とする相対値
【0073】
表4から、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の質量比(グリセリン/ヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩)には、より好適な範囲があることがわかる。
【0074】
<実施例9>
実施例1−1において、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸ナトリウムの合計添加量を変えた以外は、実施例1−1と同様に実験を行った。結果を表5に示した。表5には、実施例1−1、比較例1−1の結果も併記した。
【0075】
【表5】
【0076】
*比較例1−1の結果を100とする相対値
【0077】
表5から、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計の存在量には、より好適な範囲があることがわかる。とりわけ、グリセリンとヒドロキシメタンスルホン酸又はその塩の合計の存在量が、原料の水硬性化合物100重量部に対して、0.02質量部以上になると、粉砕性と初期強度がより向上することがわかる。