【実施例】
【0019】
(第1実施例)
実施例では、外歯歯車が内歯歯車と噛み合いながら偏心回転するタイプの歯車伝動装置について説明する。本明細書が開示する技術は、他のタイプの歯車伝動装置、例えば、内歯歯車が外歯歯車と噛み合いながら偏心回転するタイプの歯車伝動装置に適用することもできる。なお、以下の説明では、リテーナが第1部材を介してケースに接触することを単に「リテーナがケースに接触する」と表現し、リテーナが第2部材を介してキャリアに接触することを単に「リテーナがキャリアに接触する」と表現することがある。
【0020】
図1は、歯車伝動装置100の断面図を示す。歯車伝動装置100は、偏心揺動型の減速装置である。外歯歯車22は、内歯歯車24と噛み合いながら偏心回転する。外歯歯車22の歯数は、内歯歯車24の歯数と異なる。歯車伝動装置100は、外歯歯車22の歯数と内歯歯車24の歯数との差を利用し、キャリア10を回転させる。すなわち、歯車伝動装置100は、外歯歯車22と内歯歯車24の歯数差を利用し、クランクシャフト16に伝達されたトルクを増大して(回転を減速して)、キャリア10から出力する。なお、キャリア10は、歯車伝動装置100の出力部に相当する。軸線30は、キャリア10の回転軸線に相当する。軸線30は、内歯歯車24の中心軸にも相当する。また、軸線30は、歯車伝動装置100の軸線にも相当する。さらに、軸線30は、後述する円筒ころ軸受2の軸受中心軸にも相当する。
【0021】
歯車伝動装置100は、内歯歯車24と、キャリア10と、外歯歯車22と、クランクシャフト16を備えている。内歯歯車24は、ケース4と複数の内歯ピン5を備えている。ケース4は、小径部4aと大径部4bを有する。小径部4aは、大径部4bの両端から軸線30に沿って延びている。内歯歯車24は、ケース4の大径部4bに形成されている。小径部4aには、一対の円筒ころ軸受2が配置されている。小径部4aの一部に、リング状の第1部材52が取り付けられている。第1部材52の詳細については後述する。
【0022】
軸線30方向において、内歯歯車24は、一対の円筒ころ軸受2の間に配置されている。上記したように、外歯歯車22は、内歯歯車24と噛み合っている。そのため、軸線30方向において、外歯歯車22が、一対の円筒ころ軸受2の間に配置されているということもできる。一対の円筒ころ軸受2は、キャリア10がアキシャル方向及びラジアル方向に移動することを規制している。一対の円筒ころ軸受2は、歯車伝動装置100の主軸受ということができる。円筒ころ軸受2の詳細については後述する。
【0023】
キャリア10は、一対の円筒ころ軸受2によって、ケース4に支持されている。キャリア10は、第1プレート10aと第2プレート10cを備えている。第1プレート10aは、柱状部10bを備えている。柱状部10bは、第1プレート10aから第2プレート10cに向けて延びており、第2プレート10cに固定されている。第1フランジ10dが、第1プレート10aの端部に形成されている。第1フランジ10dは、径方向(軸線30に直交する方向)に延びている。第2フランジ10eが、第2プレート10cの端部に形成されている。第2フランジ10eは、径方向に延びている。円筒ころ軸受2は、第1フランジ10d及び第2フランジ10eに配置されている。第1フランジ10dは、第1プレート10aの突出部ということもできる。また、第2フランジ10eは、第2プレート10cの突出部ということもできる。第1フランジ10dの一部、及び第2フランジ10eの一部に、リング状の第2部材50が取り付けられている。第2部材50の詳細については後述する。なお、キャリア10とケース4は金属製である。具体的には、キャリア10の材料はJIS G 5502で規定されているFCD450又はJIS G 4051で規定されているS55Cであり、ケース4の材料はFCD450である。
【0024】
クランクシャフト16は、一対の円錐ころ軸受19によって、キャリア10に支持されている。一対の円錐ころ軸受19は、クランクシャフト16がアキシャル方向及びラジアル方向に移動することを規制している。クランクシャフト16は、軸線30からオフセットした位置で、軸線30に平行に延びている。クランクシャフト16は、入力歯車28と偏心体18を備えている。入力歯車28は、一対の円錐ころ軸受19の外側でクランクシャフト16に固定されている。偏心体18は、一対の円錐ころ軸受19の間に位置している。外歯歯車22には貫通孔14が形成されている。偏心体18は、円筒ころ軸受20を介して貫通孔14に係合している。外歯歯車22は、クランクシャフト16を介してキャリア10に支持されている。軸線30方向において、外歯歯車22は、一対の円錐ころ軸受19の間に配置されている。
【0025】
モータ(図示省略)のトルクが入力歯車28に伝達されると、クランクシャフト16が回転する。クランクシャフト16の回転に伴って、偏心体18が偏心回転する。偏心体18は、クランクシャフト16の軸線(図示省略)の周りを偏心回転する。偏心体18の偏心回転に伴って、外歯歯車22が、内歯歯車24と噛み合いながら偏心回転する。外歯歯車22は、軸線30の周りを偏心回転する。外歯歯車22の歯数と内歯歯車24の歯数(内歯ピン5の数)は異なる。そのため、外歯歯車22が偏心回転すると、外歯歯車22と内歯歯車24の歯数差に応じて、外歯歯車22を支持しているキャリア10が、内歯歯車24(ケース4)に対して回転する。
【0026】
図2を参照し、円筒ころ軸受2について詳細に説明する。円筒ころ軸受2は、インナーレース46と、アウターレース40と、ローラ42(円筒ころ)と、リテーナ44を備えている。インナーレース46は、リング形状である。インナーレース46の外周面46bは、テーパー状である。すなわち、インナーレース46の外周面46bは、軸線30(
図1を参照)に対して傾斜している。軸線30方向において、外周面46bの径は、歯車伝動装置100の内部に向かうに従って小さくなっている。インナーレース46の外周面46bには、ローラ42の移動を規制するリブが設けられていない。インナーレース46は、キャリア10の第2プレート10cの外側に圧入されている。インナーレース46の内周面46aは、第2プレート10cの外周面に接触している。インナーレース46の軸線30方向の端面46cは、第2フランジ10eに接触している。インナーレース46の軸線30方向の端面46cは、第2部材50に接触していない。インナーレース46は、キャリア10に取り付けられており、キャリア10に対して軸線30方向にも径方向にも不動である。インナーレース46は、キャリア10と一体化しているということもできる。
【0027】
アウターレース40は、リング形状である。アウターレース40の内周面40bは、テーパー状である。アウターレース40の内周面40bは、軸線30に対して傾斜している。軸線30方向において、内周面40bの径は、歯車伝動装置100の内部に向かうに従って大きくなっている。アウターレース40の内周面40bには、ローラ42の移動を規制するリブが設けられていない。アウターレース40の内周面40bは、インナーレース46の外周面46bに対向している。軸線30に対する内周面40bの傾斜角と、軸線30に対する外周面46bの傾斜角は等しい。すなわち、アウターレース40の内周面40bとインナーレース46の外周面46bとの隙間(ローラ42が配置される隙間)は、ローラ42の回転軸方向において一定である。アウターレース40は、ケース4の小径部4aの内側に圧入されている。アウターレース40の外周面40aは、ケース4(小径部4a)の内周面に接触している。アウターレース40の外周面40aは、第2部材50に接触していない。アウターレース40の軸線30方向の端面40cは、ケース4の大径部4bに接触している。アウターレース40は、ケース4に取り付けられており、ケース4に対して軸線30方向にも径方向にも不動である。アウターレース40は、ケース4と一体化しているということもできる。
【0028】
ローラ(円筒ころ)42は、インナーレース46とアウターレース40の間に配置されている。ローラ42の回転軸は、軸線30(
図1を参照)に対して傾斜している。複数のローラ42が、インナーレース46とアウターレース40の間で等間隔に並んでいる。すなわち、複数のローラ42が、軸線30の周りに等間隔に並んでいる。ローラ42の形状は円柱状である。ローラ42の回転軸方向の長さは、インナーレース46の外周面46b及びアウターレース40の内周面40bの長さよりも短い。ローラ42の外周面が、インナーレース46の外周面46b及びアウターレース40の内周面40bに接している。なお、上記したように、インナーレース46の外周面46b、及び、アウターレース40の内周面40bにはリブが設けられていない。そのため、ローラ42の回転軸方向の端面42aは、インナーレース46及びアウターレース40に接しない。
【0029】
リテーナ44は、インナーレース46とアウターレース40の間に配置されている。リテーナ44の材料は樹脂である。
図3に示すように、リテーナ44はリング形状であり、直径の大きな第1端部44aと、第1端部44aよりも直径の小さな第2端部44bを有する。リテーナ44は、周方向に並ぶ複数のポケット44cを有する。ポケット44c内には、ローラ42が挿入される。リテーナ44は、隣り合うローラ42の間隔を維持する。また、ローラ42はポケット44c内に挿入されるので、ローラ42の回転軸方向の両端42aは、リテーナ44によって拘束される(
図2も参照)。すなわち、ローラ42は、リテーナ44に対して、軸方向に移動することが規制されている。別言すると、リテーナ44が、ローラ42の回転軸方向への移動を規制する。なお、
図3は、リテーナ44の全体形状を簡単に説明するための図であり、リテーナ44の形状を正確に示すものではない。リテーナ44の詳細な形状については後述する。
【0030】
図2に示すように、リテーナ44の第1端部44aには、ケース4に接触するケース接触面44dと、キャリア10に接触するキャリア接触面44eが形成されている。ケース接触面44dは、軸線30に直交する方向に形成されている(
図1を参照)。ケース接触面44dは、リテーナ44の外周面であり、第1部材52を介してケース4(小径部4a)の内周面に接触する。リテーナ44とケース4との接触面は、軸受中心軸30と同心の円筒状である。キャリア接触面44eは、軸線30方向の端部に形成されている。キャリア接触面44eは、リテーナ44の軸受中心軸30方向の端面である。キャリア接触面44eは、第2部材50を介してキャリア10(第2プレート10c)の第2フランジ10eに接触する。リテーナ44とキャリア10との接触面は軸線30に直交する。
【0031】
図4,5を参照し、リテーナ44について詳細に説明する。ケース接触面44dは、軸受中心軸30と同心の円周上(リテーナ44の外周面)に形成されている。ケース接触面44dには、複数の外周溝44fが形成されている。外周溝44fは、軸受中心軸30に沿って延びており、軸受中心軸30の周りに等間隔に形成されている。ケース接触面44dが、隣り合う外周溝44fの間に形成されていると表現することもできる。ケース接触面44dがケース4(第1部材52)に接触しても、外周溝44fはケース4に接触しない。すなわち、ケース接触面44dがケース4に接触しても、リテーナ44とケース4との間に隙間が確保される。
【0032】
キャリア接触面44eは、軸受中心軸30に直交する平面上に形成されている。キャリア接触面44eには、複数の端面溝44gが形成されている。端面溝44gは、リテーナ44の径方向に沿って延びており、軸受中心軸30の周りに等間隔に形成されている。キャリア接触面44eが、隣り合う端面溝44gの間に形成されていると表現することもできる。端面溝44gは、リテーナ44の内側と外側を連通している。キャリア接触面44eがキャリア10(第2部材50)に接触しても、端面溝44gはキャリア10に接触しない。すなわち、キャリア接触面44eがキャリア10に接触しても、リテーナ44とキャリア10との間に隙間が確保される。
【0033】
外周溝44fと端面溝44gは、リテーナ44の周方向に交互に形成されている。別言すると、リテーナ44の周方向において、外周溝44fが隣り合う端面溝44gの間に形成されており、端面溝44gが隣り合う外周溝44fの間に形成されている。外周溝44fと端面溝44gの数は等しい。なお、ケース接触面44dの面積は、キャリア接触面44eの面積とほぼ等しい。すなわち、
図2に示すリテーナ44とケース4の接触面の面積W1は、リテーナ44とキャリア10の接触面の面積W2とほぼ等しい。
【0034】
なお、
図2では、ケース接触面44dがケース4に接触しており、キャリア接触面44eがキャリア10に接触している状態を示している。すなわち、リテーナ44の第1端部44aが、軸受中心軸30に直交する方向(リテーナ44の径方向)でケース4に接触し、軸受中心軸30方向でキャリア10に接触している状態を示している。しかしながら、歯車伝動装置100を駆動していないときは、ケース接触面44dとキャリア接触面44eは、ケース4とキャリア10に接触していなくてもよい。重要なことは、ローラ42に外側に移動する力が加わったときは、ケース接触面44dとキャリア接触面44eが夫々ケース4とキャリア10に接触することである。
【0035】
歯車伝動装置100の利点を説明する。
図6は、静止しているケース4に対してキャリア10が回転するときの、ローラ42及びリテーナ44の動作を説明するための図である。なお、
図6は、ローラ42及びリテーナ44の動作の概念を説明するための図であり、歯車伝動装置100の構造を正確に現しているものではない。また、上記したように、円筒ころ軸受2のインナーレース46は、キャリア10と一体化しているといえる。同様に、アウターレース40は、ケース4と一体化しているといえる。そのため、
図6では、インナーレース46とキャリア10を一つの部品として示し、アウターレース40とケース4を一つの部品として示している。また、
図6に示すローラ42は、回転軸方向に直交する断面を現している。
【0036】
キャリア10が矢印A1方向に回転すると、ローラ42は、矢印A2方向に回転しながら、矢印A3方向に移動する。すなわち、ローラ42は、キャリア10の外周面とケース4の内周面を転がりながら、矢印A3方向に移動する。リテーナ44は、ローラ42の移動とともに、矢印A3方向に回転する。この場合、ローラ42とキャリア10の間、及び、ローラ42とケース4の間の摩擦が小さければ、リテーナ44は、キャリア10の回転速度Vのおよそ半分の速度(回転速度0.5V)で回転する。ローラ42とキャリア10の間の摩擦が大きくなると、ローラ42の速度はキャリア10の速度に近づく。反対に、ローラ42とケース4の間の摩擦が大きくなると、ローラ42の速度はケース4の速度(ゼロ)に近づく。
【0037】
上記したように、リテーナ44の第1端部44aは、ケース4とキャリア10の双方に接触する(
図2も参照)。リテーナ44がケース4とキャリア10の双方に接触すると、リテーナ44とケース4の間には、矢印A4方向に摩擦力F1が生じる。また、リテーナ44とキャリア10の間には、矢印A5方向に摩擦力F2が生じる。上記したように、リテーナ44とケース4の接触面積W1は、リテーナ44とキャリア10の接触面積W2とほぼ等しい。そのため、摩擦力F1は、摩擦力F2とほぼ等しい。摩擦力F1と摩擦力F2が打ち消し合うので、リテーナ44は、回転速度0.5Vに近い速度で矢印A3方向に回転する。ローラ42も、回転速度0.5Vに近い速度で矢印A3方向に移動する。
【0038】
ローラ42が回転速度0.5Vに近い速度で矢印A3方向に移動するということは、ローラ42とキャリア10の間、及び、ローラ42とケース4の間の摩擦が小さいことを意味する。別言すると、キャリア10及びケース4に対するローラ42の摺動が小さい。そのため、ローラ42の磨耗(円筒ころ軸受2の劣化)が抑制される。なお、上述した特許文献1のようにリテーナをケースのみに接触させると、
図6の摩擦力F1方向の摩擦力のみが生じ、摩擦力F2方向の摩擦力が得られない。そのため、リテーナの回転速度が遅くなり、ローラとキャリアの間、及び、ローラとケースの間の摩擦が大きくなる。ローラの磨耗が促進され、歯車伝動装置の耐久性が低下する。本実施例に示す歯車伝動装置100は、キャリア10とケース4の双方にリテーナ44を接触させることにより、ローラ42の軸方向への移動を拘束しながら、ローラ42の磨耗を抑制することができる。
【0039】
上記したように、リテーナ44は、第1部材52を介してケース4に接触する。すなわち、リテーナ44は、ケース4に直接接触しない。第1部材52は、第1部材52とリテーナ44の間に生じる摩擦を、仮にリテーナ44が第1部材52を介することなくケース4に接触するときに生じる摩擦よりも小さくする。また、リテーナ44は、第2部材50を介してキャリア10に接触し、キャリア10に直接接触しない。第2部材50は、第2部材50とリテーナ44の間に生じる摩擦を、仮にリテーナ44が第2部材50を介することなくキャリア10に接触するときに生じる摩擦よりも小さくする。
【0040】
第1部材52と第2部材50は、リンク状に加工したPTFE樹脂であり、各々ケース4とキャリア10に嵌め込まれている。軸線30方向において、第1部材52の長さは、ケース接触面44dの長さよりも長い。リテーナ44が、ケース4と直接接触することを規制することができる。第1部材52の軸線30方向の長さは、径方向(軸線30に直交する方向)の長さよりも長い。径方向において、第2部材50の長さが、キャリア接触面44の長さよりも長い。リテーナ44が、キャリア10と直接接触することを規制することができる。第2部材50の径方向の長さは、軸線30方向の長さよりも長い。なお、第1部材52の表面粗さは、第1部材52が配置される位置のケース4の表面粗さよりも小さい。第2部材50の表面粗さは、第2部材50が配置される位置のキャリア10の表面粗さよりも小さい。
【0041】
上記したように、ケース4の材料の材料はFCD450であり、キャリア10の材料はFCD450またはS55Cである。リテーナ44とケース4が接触するときに両者の間に生じる摩擦よりも、リテーナ44と第1部材(PTFE樹脂)52が接触するときに両者の間に生じる摩擦の方が小さい。また、リテーナ44とキャリア10が接触するときに両者の間に生じる摩擦よりも、リテーナ44と第2部材(PTFE樹脂)50が接触するときに両者の間に生じる摩擦の方が小さい。なお、ケース4及びキャリア10の材料として、FC,FCD等の鋳鉄、SC等の機械構造用炭素鋼、SNCM,SCM,SCr等の機械構造用合金鋼、アルミニウム、プラスチック等を用いることができる。また、第1部材52及び/又は第2部材50として、リング状に加工したPTFE,API,黄銅,焼結金属,セラミックス等を用いることができる。あるいは、第1部材52及び/又は第2部材50を、PTFE,API,硬質クロムをケース4及び/又はキャリア10の一部にコーティングして形成することもできる。
【0042】
なお、ケース4と第1プレート10aの間に配置されている円筒ころ軸受2は、ケース4と第2プレート10cの間に配置されている円筒ころ軸受2と同じ特徴を有している(
図1を参照)。そのため、ケース4と第1プレート10aの間に配置されている円筒ころ軸受2についての説明は省略する。
【0043】
歯車伝動装置100の他の利点を説明する。上記したように、リテーナ44とケース4の接触面は、軸線30と同心の円筒状である。また、リテーナ44とキャリア10の接触面は、軸線30に直交する。このような特徴を有することにより、リテーナ44の移動が、直交する2つの方向(歯車伝動装置100の軸方向と径方向)で規制される。リテーナ44(ローラ42)が歯車伝動装置100から外れることを、確実に防止することができる。
【0044】
上記したように、リテーナ44は、ケース4とキャリア10の両方に接触する。そのため、リテーナ44によって、歯車伝動装置100の外部からケース4内に異物が混入することを抑制できる。なお、ケース4と第1プレート10aの間にオイルシール6が配置されており、ケース4の第2プレート10cに対向する位置に溝26が設けられている(
図1を参照)。溝26は、小径部4aの外周を一巡している。歯車伝動装置100に他の部品(例えばモータ)を取り付けるときに、Oリング(図示省略)が溝26に配置される。
【0045】
オイルシール6と溝26に配置されるOリングとによって、歯車伝動装置100内に封止された潤滑剤が、歯車伝動装置100外に漏れることを防止することができる。さらに、リテーナ44のケース接触面44dに外周溝44fが形成されており、リテーナ44のキャリア接触面44eに端面溝44gが形成されている。そのため、リテーナ44がケース4とキャリア10の両方に接触しても、円筒ころ軸受2の外部に存在する潤滑剤が、円筒ころ軸受2の内部に導入され得る。円筒ころ軸受2内の潤滑剤が枯渇(オイル切れ)することを抑制できる。より具体的には、オイルシール6の近傍に存在する潤滑剤が、外周溝44fと端面溝44gを通って、円筒ころ軸受2の内部に導入され得る。
【0046】
ローラ42に対してローラ42を外側へ移動させようとする力が作用すると、リテーナ44が、ケース4とキャリア10に押し付けられる。上記したように、リテーナ44は樹脂製であり、ケース4とキャリア10は金属製である。すなわち、リテーナがキャリア及びケースよりも剛性が低い材料で形成されている。リテーナ44の剛性がケース4とキャリア10の剛性よりも低いので、リテーナ44がケース4とキャリア10に押し付けられると、リテーナ44が変形し得る。その結果、リテーナ44の周方向の全体が、ケース4とキャリア10に均一に接触する。すなわち、ケース接触面44dとケース4の間、及びキャリア接触面44eとキャリア10の間に隙間が形成されにくい。
【0047】
歯車伝動装置100の中央に、軸線30方向に沿った中心貫通孔12が形成されている。中心貫通孔12を利用し、配線,配管等を、歯車伝動装置100内を通過させることができる。
【0048】
(第2実施例)
図7,8を参照し、第2実施例の歯車伝動装置について説明する。本実施例の歯車伝動装置は、リテーナの形状が歯車伝動装置100と異なるだけである。具体的には、本実施例のリテーナ144は、ケース接触面に形成されている外周溝とキャリア接触面に形成されている端面溝との位置関係がリテーナ44と異なる。リテーナ144とリテーナ44で共通する特徴は、同一又は下二桁が同じ番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0049】
リテーナ144の周方向において、外周溝44fと端面溝44gは、同じ位置に形成されている。そのため、外周溝44fと端面溝44gが連続している。円筒ころ軸受2の外部に存在する潤滑剤は、外周溝44fと端面溝44gを通って、円筒ころ軸受2の内部に導入される。リテーナ144を用いることにより、円筒ころ軸受2の内部に潤滑剤が一層導入されやすくなる。
【0050】
(第3実施例)
図9,10を参照し、第3実施例の歯車伝動装置について説明する。本実施例の歯車伝動装置は、リテーナの形状が歯車伝動装置100と異なるだけである。具体的には、本実施例のリテーナ244は、ケース接触面に形成されている外周溝の形状とキャリア接触面に形成されている端面溝の形状とがリテーナ44と異なる。リテーナ244とリテーナ44で共通する特徴は、同一又は下二桁が同じ番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0051】
図9に示すように、キャリア接触面244eには、複数の端面溝244gが形成されている。端面溝244gを軸受中心軸30方向から見ると、端面溝244gが延びる向きは、保持器244の外周面(ケース接触面244d)と軸受中心軸30を結ぶ直線に対して傾いている(
図4を比較して参照)。複数の端面溝244gの夫々は、同じ方向に傾いている。また、
図10に示すように、ケース接触面244dには、複数の外周溝244fが形成されている。外周溝244fを軸受中心軸30に直交する方向から見ると、外周溝244fが延びる向きは、軸受中心軸30に対して傾いている(
図5を比較して参照)。複数の外周溝244fの夫々は、同じ方向に傾いている。なお、端面溝244gと外周溝244fは、リテーナ44の周方向に交互に形成されている。すなわち、端面溝244gが隣り合う外周溝244fの間に形成されており、外周溝244fが隣り合う端面溝244gの間に形成されている。
【0052】
歯車伝動装置が駆動すると、リテーナ244は、キャリア10及びケース4に対して回転する。端面溝244gが傾いていると、潤滑剤は、リテーナ244の回転に伴って、端面溝244g内をスムーズに移動することができる。同様に、外周溝244fが傾いていると、潤滑剤は、リテーナ244の回転に伴って、外周溝244f内をスムーズに移動することができる。なお、リテーナ144のように、端面溝244gと外周溝244fは、連続していてもよい。
【0053】
(第4実施例)
図11を参照し、歯車伝動装置300について説明する。歯車伝動装置300は歯車伝動装置100の変形例であり、歯車伝動装置100と同じ部品には、同一又は下二桁が同じ番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0054】
歯車伝動装置300では、第1プレート310a及び第2プレート310cの径方向端部に、傾斜部346が設けられている。傾斜部346が、円筒ころ軸受302のインナーレースを兼ねている。すなわち、円筒ころ軸受302のインナーレースが、キャリア310と一体化している。このような形態も、インナーレースが、キャリア310に取り付けられているといえる。軸線30方向において、第1プレート310aの傾斜部346の外側に、フランジ310dが形成されている。軸線30方向において、第2プレート310cの傾斜部346の外側に、フランジ310eが形成されている。リテーナ44は、歯車伝動装置100で用いているリテーナ44と同一である。そのため、リテーナ44は、フランジ210d及びフランジ210eの双方に接触する。
【0055】
上記実施例では、キャリア接触面とケース接触面の双方に溝が形成されているリテーナを用いた歯車伝動装置について説明した。しかしながら、本明細書で開示する技術は、キャリア接触面とケース接触面の一方に溝が形成されているリテーナを用いた歯車伝動装、及び、キャリア接触面とケース接触面のいずれにも溝が形成されていないリテーナを用いた歯車伝動装置にも適用することができる。
【0056】
上記実施例では、リテーナとケースの接触面積と、リテーナとキャリアの接触面積が等しい例について説明した。しかしながら、例えば、リテーナとケースの接触面積が、リテーナとキャリアの接触面積より大きくてもよい。反対に、リテーナとキャリアの接触面積が、リテーナとケースの接触面積より大きくてもよい。このような形態であっても、リテーナがケースにのみ接触する従来の歯車伝動装置よりもローラの摩擦を小さくすることができる。リテーナが、ケースとキャリアの双方に接していれば、従来の歯車伝動装置よりもローラの磨耗を抑制することができる。
【0057】
上記実施例では、ケースにアウターレースが取り付けられており、キャリアにインナーレースが取り付けられている例について説明した。ケースにインナーレースを取り付け、キャリアにアウターレースを取り付けてもよい。
【0058】
上記実施例では、ケースが静止しており、キャリアがケースに対して回転する例について説明した。本明細書に開示する技術は、キャリアが静止しており、ケースがキャリアに対して回転する歯車伝動装置にも適用することができる。また、本明細書が開示する技術は、クランクシャフトがキャリアの軸線と同軸に配置されている歯車伝動装置にも適用することができる。さらに、本明細書が開示する技術は、偏心揺動型とは異なる歯車伝動装置に適用することも可能である。
【0059】
第4実施例では、キャリアがインナーレースを兼ねている例について説明した。ケースがアウターレースを兼ねていてもよい。また、キャリアがインナーレースを兼ねているとともに、ケースがアウターレースを兼ねていてもよい。重要なことは、ケースとキャリアの間に円筒ころ軸受が設けられており、円筒ころ軸受のローラの回転軸がキャリアの軸線に対して傾いており、ローラを保持するリテーナがケースとキャリアの双方に接触することである。
【0060】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。