特許第6039488号(P6039488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039488迅速に結晶化する相転移インクおよびその作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039488
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】迅速に結晶化する相転移インクおよびその作成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/34 20140101AFI20161128BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20161128BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161128BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   C09D11/34
   C09D11/38
   B41J2/01 501
   !B41M5/00 E
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-83579(P2013-83579)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2013-227564(P2013-227564A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2016年3月30日
(31)【優先権主張番号】13/456,679
(32)【優先日】2012年4月26日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・エル・ベレリー
(72)【発明者】
【氏名】ダリル・ダブリュ・ヴァンベシエン
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル・イフタイム
(72)【発明者】
【氏名】コリー・エル・トレーシー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・エム・ベイムシー
(72)【発明者】
【氏名】キャロライン・エム・トゥーレク
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン・チョプラ
(72)【発明者】
【氏名】ケンタロウ モリミツ
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−064556(JP,A)
【文献】 特開2012−233171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00〜11/54
B41J 2/01〜 2/21
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アモルファス化合物、結晶性化合物、及び有機顔料を含む相転移インクであって:
アモルファス化合物は、下記式Iの酒石酸のエステルからなる群より選択され、
【化1】

各R、Rは、独立してアルキル基であり、前記アルキルは、炭素原子を1〜16個含み、直鎖状でも、分枝鎖状でも環状でもよく、飽和でも不飽和でもよく、置換でも非置換でもよいアルキル基、またこれらの混合物であってもよく;
結晶性化合物は、下記式(VII)を有するジウレタンを含み
【化2】

式中:Qは、アルカンジイルであり;各R15及びR16は、独立して、1個以上のアルキルで置換されていてもよいフェニルであり;iは、0又は1であり;jは、0又は1であり;pは、1〜4であり;qは、1〜4である
【請求項2】
染料着色剤を更に含む、請求項1に記載の相転移インク。
【請求項3】
合計結晶化時間、前記結晶性化合物単独の合計結晶化時間の5倍を超えない、請求項1又は請求項2に記載の相転移インク。
【請求項4】
前記結晶性化合物は、相転移インクの合計重量の60重量%〜95重量%の量で存在する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項5】
前記アモルファス化合物は、相転移インクの合計重量の5重量%〜40重量%の量で存在する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項6】
前記アモルファス化合物に対する前記結晶性化合物の重量比は、65:35〜95:5である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項7】
前記有機顔料は、シアン、マゼンタ、ブルー、イエロー、ブラック、及びこれら混合物からなる群より選択される、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項8】
前記有機顔料は、相転移インクの合計重量の0.1重量%〜10重量%の量で存在する、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項9】
前記有機顔料は、平均粒径が10〜200nmである、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項10】
140℃の温度において粘度6〜22cpである、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項11】
140℃の温度において粘度15cpよりも小さい、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項12】
室温において粘度10cpより大きい、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項13】
分散剤を更に含む、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の相転移インク。
【請求項14】
アモルファス化合物、結晶性化合物、及び有機顔料を含む相転移インクであって:
アモルファス化合物は、下記式Iの酒石酸のエステルからなる群より選択され、
【化3】

各R、Rは、独立してアルキル基であり、前記アルキルは、炭素原子を1〜16個含み、直鎖状でもよく、分枝鎖状でも環状でもよく、飽和でも不飽和でもよく、置換でも非置換でもよいアルキル基であってもよく、またこれらの混合物であってもよく;
結晶性化合物は、下記式(VII)を有するジウレタンを含み
【化4】

式中:Qは、アルカンジイルであり;各R15及びR16は、独立して、1個以上のアルキルで置換されていてもよいフェニルであり;iは、0又は1であり;jは、0又は1であり;pは、1〜4であり;qは、1〜4であり;及び、
相転移インクの合計結晶化時間は、前記結晶性化合物単独の合計結晶化時間の5倍を超えない、相転移インク
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、室温で固体であり、高温で溶融し、この状態で溶融インクを基材に塗布することを特徴とする固体インク組成物に関する。これらの固体インク組成物をインクジェット印刷に使用することができる。本実施形態は、アモルファス化合物と、結晶性化合物と、場合により着色剤とを含む新規個体インク組成物、およびこれを製造する方法に関する。相溶性が低いアモルファス化合物と結晶性化合物との組み合わせを含む本発明に記載に特定の配合物は、コーティング紙の上に高品質の画像を形成するか、または印刷する、迅速に結晶化するインク組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷プロセスは、室温で固体であり、高温で液体であるインクを使用してもよい。このようなインクは、固体インク、ホットメルトインク、相転移インクなどと呼ばれることがある。例えば、米国特許第4,490,731号(参照することで、この開示内容は、全体的に本明細書に組み込まれる)は、紙のような記録媒体に印刷するための固体インクを分注する装置を開示する。ホットメルトインクを使用するピエゾインクジェット印刷プロセスでは、印刷装置中の加熱器によって固体インクを溶融し、従来のピエゾインクジェット印刷の場合と同様の様式で液体として利用する(吐出させる)。印刷記録媒体と接触したら、溶融したインクは迅速に固化し、着色剤が、毛管作用によって記録媒体(例えば、紙)に保持されるのではなく、記録媒体の表面にかなりの量がとどまり、それによって、一般的に液体インクを用いて得られるよりも高い印刷密度を可能にすることができる。したがって、インクジェット印刷における相転移インクの利点は、取扱い中にインクが漏れる可能性がないこと、広範囲にわたる印刷密度および品質、紙のしわまたは歪みが最低限であること、ノズルにふたをしなくても、ノズルが目詰まりする危険性がなく、期間を決めずに印刷しない期間が可能になることである。
【0003】
一般的に、相転移インク(「ホットメルトインク」または「固体インク」と呼ばれることがある)は、周囲温度で固相であるが、インクジェット印刷デバイスの高温での操作温度では液相で存在する。吐出温度で、液体インクの液滴が印刷デバイスから吐出され、インクの液滴が記録媒体表面と直接的に、または加熱した中間転写ベルトまたはドラムを介して接触すると、インクの液滴は迅速に固化し、あらかじめ定められた模様の固化したインク液滴を生成する。
【0004】
カラー印刷のための相転移インクは、典型的には、相転移インクと相溶性の着色剤と組み合わせた相転移インク担体組成物を含む。具体的な実施形態では、インク担体組成物と、相溶性の減法混色の着色剤とを合わせることによって、一連のカラー相転移インクを作成することができる。減法混色のカラー相転移インクは、4要素の染料または顔料(つまり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)を含んでいてもよいが、インクは、これら4種類の色に限られない。1種類の染料または顔料、または染料または顔料の混合物を用いることによって、これらの減法混色のカラーインクを作成することができる。
【0005】
相転移インクは、運搬、長期間にわたる保存などの間、室温で固相のままであるため、インクジェット印刷に望ましい。それに加え、液体インクジェットインクからインクが蒸発した結果起こるノズルの目詰まりに関連する問題は、大部分がなくなり、そのため、インクジェット印刷の信頼性が上がる。さらに、インクの液滴を最終的な記録基材(例えば、紙、透明材料など)に直接塗布する相転移インクジェップリンタにおいて、記録媒体と接触すると、液滴はすぐに固化し、その結果、インクが印刷媒体に沿って移動するのが防がれ、ドット品質が向上する。
【0006】
上の従来の固体インク技術は、一般的に、鮮明な画像をうまく生成し、多孔性の紙に対する吐出部の使用の経済性および基材の自由度を与えるが、このような技術は、コーティング基材にとって満足がいくものではない。したがって、これらの意図する目的のために既知の組成物およびプロセスが適しているが、コーティングした紙基材の上で画像を作成するか、または印刷するさらなる手段が依然として必要である。このように、固体インク組成物の代替となる組成物を見つけ、あらゆる基材の上で優れた画質を顧客に提供する将来的な印刷技術を見つけることが必要である。さらに、製品の印刷のような迅速な印刷環境に適する相転移インク組成物を提供することが必要である。
【0007】
上述の米国特許および特許明細書は、参照することでそれぞれ本明細書に組み込まれる。さらに、上述の米国特許および特許明細書それぞれの適切な要素およびプロセスの態様を、本開示の実施形態のために選択してもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に示す実施形態によれば、相溶性が制限されたアモルファス材料および結晶性材料と、有機顔料とを含み、コーティング紙基材への印刷のようなインクジェット高速印刷に適した新規固体インク組成物が提供される。特に、相転移インクは、有機顔料またはアモルファス要素および結晶性要素(このアモルファスと結晶性要素は、相溶性が制限されている)のいずれかを含まない同じ組成物よりも、液体状態から迅速に結晶化する。
【0009】
特に、本実施形態は、少なくとも1つの官能基を有し、少なくとも1つのアモルファス末端基に接続しているアモルファスコア部分を含み、アモルファス末端基が、アルキル基を含み、アルキルが、炭素原子を1〜16個含む直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和、置換または非置換である、アモルファス化合物と、少なくとも1つの官能基を有し、少なくとも1つの結晶性末端基に接続している結晶性コア部分を含み、結晶性末端基が芳香族基を含む、結晶性化合物と、有機顔料と、任意要素の染料着色剤とを含み、アモルファスコア部分の官能基は、どれも結晶性コア部分の任意の官能基と同じではない、相転移インクを提供する。
【0010】
さらなる実施形態では、式Iの酒石酸エステル、
【化1】
式IIのクエン酸エステル、
【化2】
からなる群から選択されるアモルファス化合物で、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、炭素原子を1〜16個含む直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和、置換または非置換であるアルキル基、およびこれらの混合物であり、少なくとも1つの官能基を有し、少なくとも1つの結晶性末端基に接続している結晶性コア部分を含み、いずれの官能基も−OHではない結晶性化合物と、有機顔料とを含み、相転移インクの合計結晶化時間が、結晶性化合物単独の合計結晶化時間の5倍を超えない相転移インクが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態の結晶化オンセットから結晶化終了までのインク基剤中の結晶生成の画像を示すTROMプロセスを示す図である。
図2図2は、本発明の一実施形態によるTROMプロセスのフローチャートである。
図3図3は、本実施形態によって作られた着色インクのレオロジーデータを示すグラフである。
図4図4は、本実施形態によって作られたインク基剤および着色インクの粘度データを示すグラフである。
図5A図5Aは、本実施形態によって作られたアモルファス化合物の構造を示す図である。
図5B図5Bは、本実施形態によって作られた結晶性化合物の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明者らは、結晶性要素およびアモルファス要素から作られる組成物の迅速な結晶化が、この組成物に固有の性質ではないことを発見した。結晶性/アモルファス混合物の結晶加速度は、独立して結晶性要素およびアモルファス要素の関数であるだけではなく、もっと重要なことに、結晶性材料とアモルファス材料の対の選択によって影響を受ける。例えば、所与の結晶性要素は、アモルファス要素と混合すると、迅速に結晶化する組成物を与える場合があるが、同じ結晶性要素を、異なるアモルファス要素と混合すると、ゆっくりと結晶化する組成物を得ることができる。結晶性要素とアモルファス要素の対の化学構造の関係によって、与えられる混合物の結晶加速度が制御される。しかし、従来技術では、結晶性要素とアモルファス要素の対をどのように選択し、迅速に結晶化するインクを得るかという方法は記載されていない。迅速に結晶化する結晶性−アモルファスインクを提供するこれらの方法は知られておらず、したがって、このような方法が必要である。
【0013】
本実施形態は、一般的にそれぞれ60:40〜95:5の重量比の(1)結晶性化合物および(2)アモルファス化合物のブレンドを含む、新しい種類のインクジェット固体インク組成物を提供する。さらに具体的な実施形態では、結晶性化合物とアモルファス化合物の重量比は、65:35〜95:5、または70:30〜90:10、または70:30〜80:20である。他の実施形態では、結晶性化合物およびアモルファス化合物を、それぞれ1.5〜20、または2.0〜10の重量比でブレンドする。
【0014】
それぞれの化合物または要素は、固体インクに特殊な性質を付与し、これらのアモルファス化合物と結晶性化合物のブレンドを組み込んで得られたインクは、未コーティング基材およびコーティング基材の上で優れた堅牢性を示す。インク配合物中の結晶性化合物は、冷却すると迅速に結晶化することによって転相する。結晶性化合物は、最終的なインク膜の構造も決め、アモルファス化合物の粘着性を下げることによって、硬いインクを作り出す。アモルファス化合物は、印刷したインクに粘着性に与え、堅牢性を付与する。
【0015】
結晶性要素とアモルファス要素の相溶性が制限されている組成物を用いることによる迅速に固化するインクが開示されている。これは、相溶性が制限されていることによって、この2つの要素が溶融状態から冷却すると迅速に相分離する傾向があることを意味する。制限された相溶性は、迅速に結晶化する能力を与えるために、結晶性要素とアモルファス要素の選択された対のそれぞれの化学構造中に存在する官能基間の関係に関する一連の設計ルールを満足するように結晶性要素およびアモルファス要素を選択することによって達成される。この設計ルールを以下に記載する。
(1)相転移インク組成物は、アモルファス化合物と結晶性化合物とを含む。
(2)アモルファス化合物は、少なくとも1つの官能基を有し、少なくとも1つのアモルファス末端基に接続しているアモルファスコア部分を含み、アモルファス末端基は、アルキル基を含み、アルキルは、炭素原子を1〜16個含む直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和、置換または非置換である。(図5Aに示されるようなアモルファス化合物構造を示す図)。
(3)結晶性化合物は、少なくとも1つの官能基を有し、少なくとも1つの結晶性末端基に接続している結晶性コア部分を含み、結晶性末端基は、芳香族基を含む。(図5Bに示されるような結晶性化合物の構造を示す図)。
(4)アモルファスコア部分の官能基は、どれも結晶性コア部分の任意の官能基と同じではない。
【0016】
具体的な実施形態では、アモルファス化合物は、以下の構造を有し、少なくとも1つのアモルファス末端基に接続しているアモルファスコア部分、
【化3】
と、少なくとも1つの官能基を有し、少なくとも1つの結晶性末端基に接続している結晶性コア部分を含み、いずれの官能基も−OHではない結晶性化合物とを含む。
【0017】
本開示において、相溶性が低い選択した結晶性化合物とアモルファス化合物と、有機顔料の組み合わせによって相乗効果を与え、上述の方法よりも迅速に結晶化が達成されることが発見された。例えば、いくつかの実施形態では、相溶性が低い結晶性化合物およびアモルファス化合物または有機顔料のいずれかを単独で用いる場合と比較して、組み合わせて使用すると、結晶化時間がほぼ65%短くなることがわかった。この2種類の手法の組み合わせを用いることによって、結晶化時間は25%〜65%短くなることがわかった。具体的な実施形態では、この組み合わせによって、結晶化時間が、14秒(相溶性ではない基剤要素)から、両手法を組み合わせて使用した場合には7秒(顔料組み込み)〜5秒まで短くなった。
【0018】
上によって配合された無色および染料系インクは、両方とも迅速な結晶化を示す。主成分のインク組成物に着色剤(例えば、染料)を加えると、典型的には、インクの結晶化速度が遅くなるため、このような発見は、インクの設計に重要な進歩を示す。
【0019】
迅速な印刷のために試験インクの適合性を評価するために、結晶性要素を含有する相転移インクの結晶加速度を測定するための定量的な方法を開発した。時間分解光学顕微鏡(TROM)は、さまざまなサンプル間の比較を与え、その結果、迅速に結晶化するインクの設計に関してなされた進歩をモニタリングする有用なツールである。
【0020】
TROMは、偏光光学顕微鏡(POM)を用い、結晶の概観および成長を監視する。サンプルを、顕微鏡の交差する偏光板の間に置く。結晶性材料は、複屈折であるため、目に見える。光を透過しないアモルファス材料または液体(例えば、溶融状態のインク)は、POMでは黒色に見える。したがって、POMは、結晶性要素を見ると、画像のコントラストを与え、溶融状態から設定温度まで冷却すると、結晶性−アモルファスインクの結晶化動力学を追跡することができる。この現象は、食卓塩(NaCl)結晶について図1に例示され、非常に明るく見え、周囲は黒色である。偏光光学顕微鏡(POM)によって、結晶性要素を見ると、並外れた画像のコントラストが可能になる。
【0021】
異なるサンプルおよびさまざまなサンプルの間の比較を可能にするデータを得るために、標準化されたTROM実験条件を設定し、その目標は、実際の印刷プロセスに関連する多くのパラメータとして含む。加熱装置を用いて材料(例えば、インク)を溶融する(205)ことによって、インクサンプルを調製する。溶融したインクまたはインク基剤を、厚み0.2mm〜0.5mmの16〜25mmの薄い円形ガラス板で挟む。インク層の厚みを5〜25μmに維持し(ガラスファイバースペーサーで制御)、この厚みは、実際に印刷されたインク層に近い。結晶化の測定のために、オフラインのホットプレートによってサンプルを予想吐出温度(粘度10〜12cp)まで加熱し(207)、次いで、光学顕微鏡に接続した冷却ステージに移す(208)。本発明の一実施形態では、インクサンプルを偏光光学顕微鏡の下に置く(209)。冷却ステージは、あらかじめ設定した温度で恒温状態にあり、熱および液体窒素を制御しつつ供給することによって維持される。この実験の設定は、現実の印刷プロセスでインク液滴が上に吐出されると予想されるドラム/紙の温度をモデリングする(本開示で報告する実験の場合、40℃)。結晶の生成および成長をカメラ210で記録する。例えば、サンプルホルダに配置された冷却したインクサンプルについて、ビデオまたは画像を2分間捕捉するように、カメラシステムを設定してもよい。カメラシステムは、結晶化の概観および時間変化を記録し、モニタリングする。カメラシステムは、動画ファイルまたは一連の画像(例えば、捕捉した画像)を作成し、これをコンピュータに移すか、または送信し、次いで、非一時的な記録媒体に格納する。コンピュータのプロセッサによって実行される場合、TROMプロセスソフトウエアは、カメラシステムによって捕捉されたビデオを分析することによって、サンプルの結晶化データの主要なパラメータを抽出する(211)。
【0022】
いくつかの実施形態では、TROMプロセスの主要なプロセスが図2に示され、アモルファス要素および結晶性要素を含有する(染料または顔料を含まない)主要なインク基剤を用いる測定プロセスの主要な工程を強調している。POMで見ると、溶融状態であり、ゼロ時に、結晶性−アモルファスインクは、まったく光が通過しないため黒色に見える。サンプルが結晶化するにつれて、結晶領域は明るく見える。TROMによって報告される数は、最初の結晶(結晶化オンセット)から最後の結晶(結晶化終了)までの時間を含む。
【0023】
TROMプロセスの主要な測定されるパラメータを以下に記載する。
ゼロ時(T=0秒)=溶融サンプルを顕微鏡の下にある冷却ステージに置く。
Tオンセット=最初の結晶が現れた時間。
T成長=最初の結晶(Tオンセット)から結晶化終了(T合計)までの結晶成長時間。
T合計=Tオンセット+T成長。
【0024】
選択したインクについてTROM方法を用いて得られた結晶化時間は、実際の印刷デバイス中でのインク液滴の結晶化時間と思われる時間と同じではないことを理解されたい。プリンタのような実際の印刷デバイスでは、インクは、もっと迅速に固化する。TROM方法によって測定されるような合計結晶化時間と、プリンタ中のインクの固化時間との間に良好な相関関係があることが決定された。上述の標準化された条件において、TROM方法によって決定される場合、インクが20秒以内、15秒以内、または10秒以内に固化することも決定され(すなわち、合計結晶化時間<20秒、<15秒、または<10秒)、迅速な印刷、典型的には、100フィート/分またはそれより速い速度での印刷に適している。したがって、本開示の目的のために、15秒よりも低い結晶加速度は、迅速な結晶化と考えられる。しかし、500フィート/分またはそれ以上の程度での非常に高速の印刷は、標準化されたTROM条件で、TROMによって測定された結晶加速度が7秒未満であるインクを必要とする。結晶を含有する配合物と、結晶性−アモルファス混合物の配合物の結晶加速度を明らかに比較するために、結晶性−アモルファス混合物の配合物について、結晶化比(CR)という用語を以下のように定義する。
CR=T合計(結晶性およびアモルファスの混合物)/T合計(結晶性)
式中、T合計(結晶性およびアモルファスの混合物)は、結晶性化合物とアモルファス化合物の混合物を含むサンプルの合計結晶化時間をあらわし、T合計(結晶性)は、結晶性化合物のみを含有するサンプルの合計結晶化時間をあらわす。
【0025】
任意の所与の純粋な結晶性材料の結晶化時間(T合計)は、アモルファス材料を含む同じ結晶性材料の混合物と比較すると短いと予想される。いかなる理論によっても束縛されないが、結晶性−アモルファス混合物中の結晶性要素は、アモルファス分子との相互作用から分離したときにのみ結晶化すると考えられる。その結果、CRの値は、本実施形態で開示されているすべての結晶性−アモルファスインクの1よりも大きいと予想される。
【0026】
CRの値が大きいことは、結晶性要素単独の場合と比較したとき、ゆっくりと結晶化する混合物であることを示し、一方、値が小さいことは、迅速に結晶化する混合物であることを示す。例えば、結晶性材料単独で3秒で結晶化し(すなわち、T合計(結晶性)=3秒)、結晶およびアモルファスの混合物は、同じ実験的なTROM測定条件によって30秒で結晶化するとき(すなわち、T合計(結晶性およびアモルファス)=30秒)、これにより、この混合物の結晶化比CR=30/3=10が得られる。例えば、T合計(結晶性)=20秒であり、T合計(結晶性およびアモルファス)=60秒である場合、これにより、CR=60/20=3が得られる。定義されているように、CRは、所与のアモルファスと混合したとき、結晶性要素の結晶化速度に及ぼす影響を計算したものである。
【0027】
実際に、CR<5は、迅速に結晶化する結晶性−アモルファス配合物であることを示し、結晶性要素単独の場合よりも迅速に結晶化する。CR>5は、ゆっくりと結晶化する結晶性−アモルファス配合物であることを示し、結晶性要素単独の場合よりもゆっくりと結晶化する。
【0028】
実際に、本願発明者らは、TROM試験でT合計(結晶性およびアモルファス)が15秒以下であるインクが、100フィート/分以上の迅速な印刷に適していることを発見した。言い換えると、この要求事項を満たすインクは、この印刷速度または印刷スピードよりも速い速度で固化する。これは、3秒で結晶化する結晶(すなわちT合計(結晶性))の場合、CR=5と言い換えられる。
【0029】
ある実施形態では、相転移インクの合計結晶化時間は、結晶性化合物単独の合計結晶化時間の5倍を超えない。さらなる実施形態では、相転移インクの合計結晶化時間は、結晶性化合物単独の合計結晶化時間の4倍を超えない。なおさらなる実施形態では、相転移インクの合計結晶化時間は、結晶性化合物単独の合計結晶化時間の3倍を超えない。
【0030】
1つ以上の有機材料を核化剤として組み込んでも、迅速な結晶化を与えることが示された。いかなる理論によっても束縛されないが、有機顔料が結晶性化合物の核化および成長の中心として作用するため、アモルファス化合物からの分離が促進さされると考えられる。相分離が促進されると、結晶化が促進される。このような有機顔料は、一般的に、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの有機顔料を含んでいてもよい。
【0031】
さらなる実施形態では、結晶性−アモルファスインク組成物中に有機顔料が含まれると相乗効果が得られる。相溶性の制限と顔料の添加という概念を一緒に組み合わせて本インク組成物を作ることによって、いずれかの概念のみを用いたインク組成物よりも速く結晶化させることが可能なインク組成物が得られる。
【0032】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、式Iの酒石酸第1エステルまたは式IIのクエン酸第1エステル、
【化4】
【化5】
を含み、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立してアルキル基であり、アルキルは、炭素原子を1〜16個含む直鎖、分枝鎖または環状の飽和または不飽和、置換または非置換であってもよい。ある実施形態では、R、R、R、R、Rは、それぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1個以上のアルキル基で場合により置換されたシクロヘキシル基である。ある実施形態では、R、R、R、R、Rは、それぞれ、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。ある実施形態では、アモルファス化合物は、式IIのクエン酸エステルである。
【0033】
酒石酸の骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸、これらの混合物から選択される。酒石酸のR基および立体化学に依存して、エステルは、結晶または安定なアモルファス化合物を生成することができる。具体的な実施形態では、アモルファス化合物は、ジ−L−メンチル L−酒石酸エステル、ジ−DL−メンチル L−酒石酸エステル(DMT)、ジ−L−メンチル DL−酒石酸エステル、ジ−DL−メンチル DL−酒石酸エステル、およびこれらの任意の立体異性体およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0034】
特に、ジ−DL−メンチル L−酒石酸エステル(DMT)は、本発明のインクの実施形態においてアモルファス化合物として使用するのに特に適していることがわかった。
【0035】
インクのアモルファス成分に適したクエン酸エステルは、例えば、米国特許出願第13/095,795号に開示されており、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。この明細書では、アモルファストリ−DL−メンチルクエン酸エステル(TMC)を試験し、コーティング紙の上で堅牢性のある印刷を示した。TMCは、印刷画像に適切な熱特性およびレオロジー特性を与え、かつ堅牢性を付与する望ましいアモルファス候補物質である。
【0036】
アモルファス化合物は、酒石酸のエステル化反応によって合成される。
【0037】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物は、以下の式を有するジウレタン化合物、
【化6】
を含んでいてもよく、Zは、
【化7】
からなる群から選択され、Zは、ジウレタンの式の窒素原子のいずれかの側に*がつけられた結合を介して接続していてもよく、R、Rは、それぞれ、(i)炭素原子を1〜8個含む直鎖または分枝鎖であってもよいアルキル基、または(ii)アリール基であり、但し、Zが−(CH−である場合、RもRもベンジルではない。
【0038】
、Rは、メチル、エチル、プロピル、(n−、iso−、sec−およびt−)ブチル、(n−、iso−、t−などの)ペンチル、(n−、iso−、t−などの)ヘキシル、(n−、iso−、t−などの)ヘプチル、または(n−、iso−、t−などの)オクチルを含む任意の直鎖または分枝鎖のアルキルであってもよい。
【0039】
ある実施形態では、R、Rは、独立して、
【化8】
からなる群から選択される。
【0040】
ある実施形態では、zは、−(CH−であり、R、Rは、両方とも、
【化9】
である。
【0041】
これらの材料は、吐出温度付近(≦140℃、または100〜140℃、または105〜140℃)で相対的に低い粘度を示す(<10センチポイズ(cp)、または1〜100cp、または5〜95cp)が、室温では非常に高い粘度を示す(>10cp)。
【0042】
いくつかの実施形態では、アモルファス化合物を結晶性化合物と一緒に配合し、固体インク組成物を作成する。このインク組成物は、良好なレオロジープロフィールを示す。K−proofにより、固体インク組成物によってコーティング紙の上に作られた印刷サンプルは、優れた堅牢性を示す。さらに、エステルとして酒石酸を用いると、低コストであり、潜在的に生体由来(「環境に優しい」)供給源から得られるというさらなる利点を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、酒石酸と少なくとも1つのアルコールのエステル交換反応から合成される新規アモルファス化合物を用い、固体インク組成物が得られる。固体インク組成物は、結晶性化合物および着色剤と組み合わせてアモルファス化合物を含む。本実施形態は、所望なレベルの粘度を維持しつつ、液体状態からの鋭敏な相転移を実現し、硬く、堅牢性の高い印刷画像を得やすくするために、あるバランスのアモルファス化合物と結晶性化合物を含む。このインクで作られる印刷物は、市販のインクと比べ、例えば、引っ掻きに対する堅牢性が良好という利点を示した。したがって、固体インクのためのアモルファス化合物を与える本発明の酒石酸エステルは、望ましいレオロジープロフィールを有し、インクジェット印刷のための多くの要求事項を満たす堅牢性の高いインクを作ることが発見された。
【0044】
いくつかの実施形態では、アモルファス材料は、インク組成物の合計重量の5重量%〜40重量%、または5重量%〜35重量%、または10重量%〜30重量%の量で存在する。
【0045】
いくつかの実施形態では、結晶性化合物は、少なくとも1つの官能基を有し、少なくとも1つの結晶性末端基に接続している結晶性コア部分を含み、結晶性末端基が芳香族基を含み、アモルファスコア部分の官能基は、どれも結晶性コア部分の任意の官能基と同じではない結晶性化合物である。
【0046】
特に、結晶性材料は、鋭敏な結晶化、140℃では比較的低い粘度(≦10センチポイズ(cp)、または0.5〜20cp、または1〜15cp)を示すが、室温では非常に高い粘度(>10cp)を示す。これらの材料は、融点(Tmelt)が150℃未満、または65〜150℃、または66〜145℃であり、結晶化温度(Tcrys)が60℃より大きく、または60〜140℃、または65〜120℃である。TmeltとTcrysのΔTは、55℃未満である。
【0047】
いくつかの実施形態では、結晶性材料は、インク組成物の合計重量の60重量%〜95重量%、または65重量%〜95重量%、または70重量%〜90重量%の量で存在する。
【0048】
結晶性要素は、アミド、芳香族エステル、直鎖ジエステル、ウレタン、スルホン、またはこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0049】
適切な結晶性要素としては、以下の構造を含む材料、
【化10】
が挙げられ、RとRは、同じであってもよく、異なっていてもよく、R、Rは、それぞれ独立して、(i)直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、場合により、アルキル基の中にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を1〜40個、1〜20個、または1〜10個含むアルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、場合により、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を4〜40個、7〜20個、または7〜12個含むアリールアルキル基、および(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基は、直鎖、分枝鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、場合により、芳香族基にヘテロ原子が存在していてもよく、炭素原子を3〜40個、6〜20個、または6〜10個含む芳香族基からなる群から選択される。
【0050】
適切な結晶性要素としては、以下の構造を含む材料、
【化11】
10とR11は、同じであってもよく、異なっていてもよく、R10、R11は、それぞれ独立して、(i)直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、場合により、アルキル基の中にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を1〜40個、1〜20個、または1〜10個含むアルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、場合により、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を4〜40個、7〜20個、または7〜12個含むアリールアルキル基、および(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基は、直鎖、分枝鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、場合により、芳香族基にヘテロ原子が存在していてもよく、炭素原子を3〜40個、6〜20個、または6〜10個含む芳香族基からなる群から選択されるが、この数は、これらの範囲から外れていてもよい、およびこれらの混合物が挙げられ、但し、R10およびR11のうち、少なくとも1つは芳香族基であり、pは、0または1である。
【0051】
結晶性芳香族エーテルの非限定的な例としては、
【化12】
およびこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
適切な結晶性要素としては、以下の構造を有する脂肪族直鎖二酸のエステルを含む材料、
【化13】
が挙げられ、R12は、置換または非置換のアルキル鎖であってもよく、−(CH−から−(CH12−からなる群から選択され、R13、R14は、それぞれ互いに独立して、置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基からなる群から選択され、置換基はアルキル基を含み、アルキル部分が、直鎖、分枝鎖または環状であってもよい。
【0053】
適切な結晶性要素としては、以下の構造を有するジウレタンを含む材料、
【化14】
が挙げられ、Qは、アルカンジイルであり、R15、R16は、それぞれ独立して、1個以上のアルキルで場合により置換されたフェニルまたはシクロヘキシルであり、iは、0または1であり、jは、0または1であり、pは、1〜4であり、qは、1〜4である。このような実施形態のうち、特定のものでは、R15およびR16は、それぞれ、独立して、1個以上のメチルまたはエチルで場合により置換されたフェニルまたはシクロヘキシルである。このような実施形態のうち、特定のものでは、R15およびR16は、フェニルである。ある実施形態では、Qは、−(CH−であり、nは、4〜8である。このような実施形態のうち、特定のものでは、nは6である。ある実施形態では、R15およびaR16は、それぞれ独立して、ベンジル、2−フェニルエチル、2−フェノキシエチル、C(CH−、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、3−フェニルプロパニル、3−メチルシクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−メチルシクロヘキシルメチル、3−メチルシクロヘキシルメチル、4−メチルシクロヘキシルメチル、4−エチルシクロヘキサニルから選択される。
【0054】
適切な結晶性要素としては、以下の構造を有するスルホン化合物、
【化15】
であって、R17とR18は、同じであってもよく、異なっていてもよく、R17およびR18は、それぞれ互いに独立して、(i)直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和のアルキル基であってもよく、場合により、アルキル基の中にヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を1〜40個、1〜20個、または1〜10個含むが、この数は、これらの範囲から外れていてもよい、アルキル基、(ii)置換または非置換のアリールアルキル基であってもよく、アリールアルキル基のアルキル部分は、直鎖または分枝鎖、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であってもよく、場合により、アリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかにヘテロ原子が存在していてもよく、いくつかの実施形態では、炭素原子を4〜40個、7〜20個、または7〜12個含むが、この数は、これらの範囲から外れていてもよい、アリールアルキル基、および(iii)置換または非置換の芳香族基であってもよく、置換基は、直鎖、分枝鎖、環状または非環状のアルキル基であってもよく、場合により、芳香族基にヘテロ原子が存在していてもよく、炭素原子を3〜40個、6〜20個、または6〜10個含むが、この数は、これらの範囲から外れていてもよい、芳香族基からなる群から選択され、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0055】
ある実施形態では、R17およびR18は、それぞれ独立して、1個以上のハロ基、アミノ基、ヒドロキシ基またはシアノ基で場合により置換されたアルキルまたはアリールであるか、または、R17およびR18と、これらが接続しているS原子とを合わせてヘテロ環を形成する。このような実施形態のうち、特定のものでは、R17およびR18は、それぞれ独立して、場合により置換されたアルキル、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチルまたはt−ブチルである。このような実施形態のうち、特定のものでは、R17およびR18は、それぞれ独立して、場合により置換されたアリール、例えば、フェニルまたはベンジルである。ある実施形態では、R17およびR18は、それぞれ独立して、1個以上のアミノ、クロロ、フルオロ、ヒドロキシ、シアノまたはこれらの組み合わせで置換される。アリール基の置換基は、フェニル基のオルト位、メタ位またはパラ位に作られてもよく、これらの組み合わせの位置に作られてもよい。ある実施形態では、R17およびR18は、それぞれ独立して、2−ヒドロキシエチルまたはシアノメチルである。
【0056】
ある実施形態では、結晶性要素は、ジフェニルスルホン、ジメチルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、2−ヒドロキシフェニル−4−ヒドロキシフェニルスルホン、フェニル−4−クロロフェニルスルホン、フェニル−2−アミノフェニルスルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ジベンジルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、メチルイソプロピルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、ジ−n−ブチルスルホン、ジビニルスルホン、メチル−2−ヒドロキシメチルスルホン、メチルクロロメチルスルホン、スルホラン、3−スルホランおよびこれらの混合物を含んでいてもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合、「アルキル」との用語は、脂肪族炭化水素基を指す。アルキル部分は、「飽和アルキル」基であってもよく、飽和アルキル基とは、アルケン部分またはアルキン部分を含まないことを意味する。また、アルキル部分は、「不飽和アルキル」部分であってもよく、不飽和アルキル部分とは、少なくとも1つのアルケン部分またはアルキン部分を含むことを意味する。「アルケン」部分とは、少なくとも2個の炭素原子と、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合からなる基を指し、「アルキン」部分とは、少なくとも2個の炭素原子と、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合からなる基を指す。アルキル部分は、飽和または不飽和のいずれであっても、分枝鎖、直鎖または環状であってもよい。
【0058】
アルキル基は、炭素原子を1〜40個含んでいてもよい(本明細書でこうあらわされる場合はいつでも、「1〜40」のような数値範囲は、与えられている範囲に中にあるそれぞれの整数を指す。例えば、「炭素原子を1〜40個」は、そのアルキル基が、炭素原子1個、2個、3個などから、最大40個の炭素原子からなっていてもよいことを意味するが、この定義は、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の場合も包含する)。また、アルキル基は、炭素原子を1〜10個含む中鎖アルキルであってもよい。また、アルキル基は、炭素原子を1〜4個含む低級アルキルであってもよい。本発明の化合物のアルキル基は、「C〜Cアルキル」または同様の記号表示によって指定されていてもよい。単なる例として、「C〜Cアルキル」は、アルキル鎖に炭素原子が1〜4個存在することを示し、すなわち、アルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルからなる群から選択される。
【0059】
アルキル基は、置換または非置換であってもよい。置換されている場合、水素以外の任意の基が置換基であってもよい。置換されている場合、置換基は、個々に独立して、以下の非限定的な例示リストから選択される1つ以上の基である。アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロ、アミノ(一置換アミノ基または二置換アミノ基を含む)。典型的なアルキル基としては、いかなる様式にも限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。それぞれの置換基がさらに置換されていてもよい。
【0060】
「アリール」との用語は、本明細書で使用する場合、単独または組み合わせて、1個、2個または3個の環を含み、この環が側鎖の様式で一緒に接続していてもよく、または縮合していてもよい炭素環芳香族系を意味する。「アリール」との用語は、ベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ビフェニルのような芳香族基を包含する。
【0061】
「ハロ」または「ハロゲン」との用語は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0062】
いくつかの実施形態では、結晶性材料は、インク組成物の合計重量の60重量%〜95重量%、または65重量%〜95重量%、または70重量%〜90重量%の量で存在する。
【0063】
この実施形態では、固体インク組成物は、着色剤と組み合わせて、結晶性材料およびアモルファス材料も含んでいてもよい。この実施形態は、所望なレベルの粘度を維持しつつ、液体状態からの鋭敏な相転移を実現し、硬く、堅牢性の高い印刷画像を得やすくするために、あるバランスのアモルファス化合物と結晶性化合物を含む。このインクで作られる印刷物は、市販のインクと比べ、例えば、引っ掻きに対する堅牢性が良好という利点を示した。したがって、あるバランスのアモルファス化合物と結晶性化合物を含んで得られたインク組成物は、良好なレオロジープロフィールを示し、インクジェット印刷のための多くの要求事項を満たす。
【0064】
この実施形態のインク組成物は、有機顔料を含む。有機顔料は、転送インクに適した着色剤でもあり、Color Index publication by the Society of Dyers and Colourists and the American Association of Textile Chemists and Coloristsに列挙されているものが挙げられる。
【0065】
一実施形態では、インクは、1種類の有機顔料を含んでいてもよい。別の実施形態では、インクは、少なくとも2種類の異なる有機顔料の混合物を含んでいてもよい。
【0066】
具体的な実施形態では、顔料は、インク組成物の合計重量の少なくとも0.1重量%〜50重量%、または少なくとも0.2重量%〜20重量%、0.5重量%〜10重量%、1重量%〜8重量%の量で存在する。
【0067】
典型的には、本開示にしたがって使用するのに適した有機顔料粒子は、平均粒径が10nm〜400nm、さらに具体的には、粒径が50〜300nm、または80〜250nmである。
【0068】
いくつかの実施形態では、有機顔料は、シアン顔料、例えば、Clariant製のシアン顔料Hostaperm Blue B4Gである。他の実施形態では、顔料は、イエロー顔料、例えば、イエロー顔料155、イエロー顔料180またはイエロー顔料139である。
【0069】
従来の相転移インク染料着色材料と組み合わせて、転相担体組成物を使用してもよい。ポリマー染料を使用することもできる。
【0070】
さらなる染料着色剤が、相転移インク中に、望ましい色または色相を得るのに望ましい任意の量または有効な量で、例えば、インクの少なくとも0.1重量%〜50重量%、少なくとも0.2重量%〜20重量%、少なくとも0.5重量%〜10重量%の量で存在していてもよい。
【0071】
インクは、画像が酸化しないように保護するために、場合により酸化防止剤を含んでいてもよく、また、インク容器内で加熱した溶融物として存在している間にインク成分が酸化しないように保護してもよい。酸化防止剤が存在する場合、酸化防止剤は、インク中に望ましい任意の量または有効な量で、例えば、インクの0.25重量%〜10重量%、または1重量%〜5重量%の量で存在していてもよい。
【0072】
インク基剤中の顔料分散物は、分散剤によって安定化されていてもよい。また、顔料を液体媒剤に分散させるために、場合により、1種類の分散剤または分散剤の組み合わせを提供してもよい。典型的には、インク媒剤中で粒子を安定化するために、分散剤を使用してもよい。分散剤は、一般的に、分散剤を顔料粒子に固定する第1の官能基と、インク媒剤と相溶性である第2の官能基とを含む。第1の官能基は、顔料粒子を任意の適切な様式で(例えば、水素結合、化学結合、酸塩基反応、ファンデルワールス相互作用など)顔料分子に適切に固定または吸着することができる。
【0073】
したがって、分散剤を顔料粒子に固定する適切な第1の官能基の例としては、エステル、アミド、カルボン酸、ヒドロキシル基、酸無水物、ウレタン、尿素、アミン、アミド、塩(例えば、四級アンモニウム塩)などの官能基が挙げられる。第1の官能基は、分散剤を着色剤粒子に固定し、その結果、分散剤は、例えば、顔料粒子に吸着し、接続するか、またはグラフト接合する。同様に、インク媒剤と相溶性である第2の官能基の例としては、アルキル基のような基が挙げられ、直鎖または分枝鎖、飽和または不飽和などであってもよい。
【0074】
分散剤は、固体インク中に任意の有効な量で、例えば、インクの0.5重量%〜40重量%、例えば、5重量%〜25重量%、または8重量%〜13重量%の量で存在していてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、溶融状態で、相転移インクのインク担体は、吐出温度での粘度が1〜22cp、または4〜15cp、または6〜12cpであってもよい。吐出温度は、典型的には、100℃〜140℃の範囲に含まれる。いくつかの実施形態では、固体インクは、室温での粘度は10cpより大きい。いくつかの実施形態では、固体インクは、DSCによって10℃/分の速度で測定した場合、Tmeltが65〜140℃、または70〜140℃、80〜135℃であり、Tcrysが40〜140℃、または45〜30℃、50〜120℃である。
【0076】
インク組成物は、任意の望ましい方法または適切な方法で調製することができる。例えば、インク担体のそれぞれの要素を一緒に混合した後、混合物を少なくともその融点まで、例えば、60℃〜150℃、80℃〜145℃、85℃〜140℃まで加熱してもよい。インク成分を加熱する前、またはインク成分を加熱した後に着色剤を加えてもよい。顔料が所定の着色剤である場合、溶融した混合物をアトライタまたはボールミル装置または他の高エネルギー混合装置で研磨し、顔料をインク担体に分散させてもよい。次いで、加熱した混合物を5秒〜30分間またはそれ以上撹拌し、実質的に均質で均一な溶融物を得た後、インクを周囲温度(典型的には20℃〜25℃)まで冷却する。このインクは、周囲温度で固体である。具体的な実施形態では、生成プロセス中に、溶融状態のインクを型に注ぎ、冷却して固化させ、インクスティックを作成する。
【0077】
直接的に印刷するインクジェットプロセスおよび間接的に(オフセットで)印刷するインクジェット用途のための装置にこのインクを使用してもよい。
【0078】
任意の適切な基材または記録シートを、普通紙、コーティング紙、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマー膜、無機記録媒体(例えば、金属および木材など)を含む、プロセスで使用することができる。
【実施例】
【0079】
(実施例1)
ジ−フェネチル L−酒石酸エステル(DPT)80gおよびジ−DL−メンチル L−酒石酸エステル(DMT)20gを表1に示す比率で用い、インク基剤1を調製した。この混合物を140℃で1時間撹拌した後、室温まで冷却した。
【表1】
【0080】
(実施例2)
ジベンジル ヘキサン−1,6−ジイルジカルバメート(80g)およびDMT(20g)を表1に示す比率で用い、インク基剤2を調製した。この混合物を140℃で1時間撹拌した後、室温まで冷却した。インク基剤1とインク基材2の唯一の違いは、結晶性化合物である。
【0081】
インク基剤2は、インク基剤1の3倍速く結晶化する。この促進は、ジベンジル ヘキサン−1,6−ジイルジカルバメートとDMTの相溶性が制限されており、溶融した溶液から結晶性材料を迅速に結晶化させることができることに起因する。
【0082】
SOLSPERSE 32000(0.2g、2.0%)、DPT(7.68g、76.8%)およびDMT(1.92g、19.2%)を合わせ、140℃で30分間撹拌することによってインクサンプル2を製造した。この溶液にB4G顔料(0.2g、2.0%)を滴下し、混合物を140℃で2時間撹拌した後、13000rpmで20分間均質化した。
【0083】
ジベンジル ヘキサン−1,6−ジイルジカルバメート(3.92g、78.4%)、DMT(0.98g、19.6%)およびSolvent Blue 101(0.1g、2.0%)を合わせ、140℃で1時間撹拌することによってインクサンプル4を製造した。
【0084】
SOLSPERSE 32000(0.2g、2.0%)、ジベンジル ヘキサン−1,6−ジイルジカルバメート(7.68g、76.8%)およびDMT(1.92g、19.2%)を合わせ、140℃で30分間撹拌することによってインクサンプル5を製造した。この溶液にB4G顔料(0.2g、2.0%)を滴下し、混合物を140℃で2時間撹拌した後、13000rpmで20分間均質化した。
【0085】
表2は、本実施形態の異なるインク配合物に関するTROMの結果を示す。
【表2】
【0086】
インクサンプル1および2は、顔料を加えると、結晶化速度を高めることができることを示す。もっとも重要なことに、インクサンプル3および5によって示されるように、制限された相溶性および原料の添加という概念は、相乗的に作用し、相溶性が低い結晶性/アモルファス要素または有機顔料を用いる個々の手法のそれぞれよりも迅速に結晶化するインクを与える。
【0087】
インクサンプル5のレオロジー分析は、図3に示されるように、このインクが140℃でニュートン性挙動を示し、図4に示されるように125℃で吐出可能である(すなわち、吐出粘度が約11cp)であったことを示した。
【0088】
次いで、K−印刷プルーファ(RK Print Coat Instrument Ltd.,Litlington、Royston、Heris、SG8 0OZ、U.K.によって製造)を用い、Xerox digital Color Elite Gloss、120gsm(DCEG)にインクサンプル5をコーティングし、基材から簡単に外すことができない堅牢性の高い画像を作成した。
【0089】
先端が鉛直方向から15°の角度で湾曲した引っ掻き/丸い指状部に528gの重りをつけ、画像全体にわたって約13mm/秒の速度で引きずったとき、目で見て画像からインクははがれていなかった。引っ掻き/丸い先端は、曲率が約12mmの半径を有する先端を旋盤で丸めた切断辺と類似している。
図2
図3
図4
図5A
図5B
図1