特許第6039489号(P6039489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社関西モリッツの特許一覧 ▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6039489-印刷用治具 図000002
  • 特許6039489-印刷用治具 図000003
  • 特許6039489-印刷用治具 図000004
  • 特許6039489-印刷用治具 図000005
  • 特許6039489-印刷用治具 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039489
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】印刷用治具
(51)【国際特許分類】
   B05C 13/02 20060101AFI20161128BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20161128BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20161128BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   B05C13/02
   B41J2/01 109
   B05C5/00 101
   B05D1/26 Z
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-85502(P2013-85502)
(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公開番号】特開2014-205125(P2014-205125A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】513095085
【氏名又は名称】株式会社関西モリッツ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109472
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 直之
(72)【発明者】
【氏名】森川 浩光
(72)【発明者】
【氏名】大西 啓介
【審査官】 富永 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−184112(JP,A)
【文献】 特開2001−191514(JP,A)
【文献】 特開平05−318715(JP,A)
【文献】 特開昭56−013171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00−21/00
B05D
B41J2/01;2/165−2/20;2/21−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の搬送台と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドとを備えた装置に用いる印刷用治具であって、
上記印刷媒体の搬送方向に延びるように搬送台の上に固定されるラックギアと、
上記ラックギアにかみ合って回転するピニオンギアと、
上記ピニオンギアに連動してピニオンギアと反対方向に回転する反転ギアと、
上記反転ギアに連動して回転し、外周側面を印刷面とする印刷対象物を支持するための支持部と、
を備えていることを特徴とする印刷用治具。
【請求項2】
上記ピニオンギアと反転ギアは、支持部に支持されて回転する印刷対象物の周速が、搬送台による印刷媒体の搬送速度と実質的に等しくなるように設定されている
請求項1記載の印刷用治具。
【請求項3】
上記印刷対象物は、印刷面である外周側面が円錐状または切頭円錐状である
請求項1または2記載の印刷用治具。
【請求項4】
上記支持部の回転軸は、上記印刷対象物の印刷面である外周側面が上記印刷ヘッドの往復方向と平行になるよう設定されている
請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項5】
上記印刷ヘッドの往復方向に沿うように配置されて、印刷ヘッドにおける一部のノズルから吐出されるインクをマスクするマスキング部材をさらに備えた
請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷用治具。
【請求項6】
印刷媒体の搬送台と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドとを備えた印刷装置であって、
上記印刷媒体の搬送方向に延びるように搬送台の上に固定されるラックギアと、
上記ラックギアにかみ合って回転するピニオンギアと、
上記ピニオンギアに連動してピニオンギアと反対方向に回転する反転ギアと、
上記反転ギアに連動して回転し、外周側面を印刷面とする印刷対象物を支持するための支持部と、
を備えていることを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
印刷媒体の搬送台と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドとを備えた装置を用いた印刷物の製造方法であって、
上記印刷媒体の搬送方向に延びるように搬送台の上にラックギアを固定し、
上記ラックギアにピニオンギアをかみ合わせて回転させ、
上記ピニオンギアに連動させてピニオンギアと反対方向に反転ギアを回転させ、
上記反転ギアに連動させて外周側面を印刷面とする印刷対象物を支持するための支持部を回転させ、
上記支持部に支持されて回転している印刷対象物の外周側面に対して上記印刷ヘッドで印刷を行うことを特徴とする印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてインクジェットプリンタに使用することができる印刷用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
曲面への印刷を可能とする装置は各種のものが提案されている。円錐体等の回転体からなる被印刷体に対して印刷しうる曲面印刷装置として、例えば、下記の特許文献1の装置が提案されている。
【0003】
特許文献1の装置は、被印刷体(10)に対する印刷のための主走査と副走査を行なうために、被印刷体(10)の回転支持機構と、インクジェットプリントヘッド(30)の副走査支持機構と、プリントヘッドアーム(20)の傾斜角度を調整する機構とを備えたものである。
【0004】
すなわち、支持治具(13)を有する下部回転台(12)と上部押え盤(17)とを備えた回転支持機構により被印刷体(10)をその軸を中心に回転可能に支持する。一方、リードスクリュー(21)およびガイドレールなどからなる副走査支持機構により、インクジェットプリントヘッド(30)を上下動可能に支持する。さらに、プリントヘッドアーム(20)の傾斜角度を調整する機構により、被印刷体(10)の印刷面に対するインクジェットプリントヘッド(30)の対向間隔を一定に保持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−318715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の装置は、回転支持機構は、支持治具(13)を有する下部回転台(12)と上部押え盤(17)とを備え、垂直軸を中心に被印刷体(10)を回転させる複雑なものである。また、副走査支持機構は、垂直軸を中心に回転する被印刷体(10)に沿ってインクジェットプリントヘッド(30)を上下動可能に支持するもので、複雑かつ大掛かりである。さらに、被印刷体(10)の印刷面に対するインクジェットプリントヘッド(30)の対向間隔を一定に保持させるために、プリントヘッドアーム(20)の傾斜角度を調整する機構まで備えたものである。このように、極めて大掛かりで複雑な装置を特別に製作しなければならない。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、汎用の印刷装置を利用して、容易かつ安価に曲面印刷を実現できる印刷用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の印刷用治具は、印刷媒体の搬送台と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドとを備えた装置に用いる印刷用治具であって、
上記印刷媒体の搬送方向に延びるように搬送台の上に固定されるラックギアと、
上記ラックギアにかみ合って回転するピニオンギアと、
上記ピニオンギアに連動してピニオンギアと反対方向に回転する反転ギアと、
上記反転ギアに連動して回転し、外周側面を印刷面とする印刷対象物を支持するための支持部と、
を備えていることを要旨とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の印刷装置は、
印刷媒体の搬送台と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドとを備えた印刷装置であって、
上記印刷媒体の搬送方向に延びるように搬送台の上に固定されるラックギアと、
上記ラックギアにかみ合って回転するピニオンギアと、
上記ピニオンギアに連動してピニオンギアと反対方向に回転する反転ギアと、
上記反転ギアに連動して回転し、外周側面を印刷面とする印刷対象物を支持するための支持部と、
を備えていることを要旨とする。
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の印刷物の製造方法は、
印刷媒体の搬送台と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドとを備えた装置を用いた印刷物の製造方法であって、
上記印刷媒体の搬送方向に延びるように搬送台の上にラックギアを固定し、
上記ラックギアにピニオンギアをかみ合わせて回転させ、
上記ピニオンギアに連動させてピニオンギアと反対方向に反転ギアを回転させ、
上記反転ギアに連動させて外周側面を印刷面とする印刷対象物を支持するための支持部を回転させ、
上記支持部に支持されて回転している印刷対象物の外周側面に対して上記印刷ヘッドで印刷を行うことを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、搬送台が印刷媒体の搬送方向に移動すると、そこに固定されたラックギアがその方向に移動する。このラックギアの移動によってピニオンギアが回転する。このとき、ピニオンギアは、印刷ヘッド側の外周の移動方向がラックギアの移動方向(すなわち印刷媒体の搬送方向)と反対になる。ピニオンギアの回転により、それに連動して反転ギアが回転する。反転ギアの回転方向は、ピニオンギアと反対方向である。したがって、反転ギアは、印刷ヘッド側の外周の移動方向がラックギアの移動方向(すなわち印刷媒体の搬送方向)と同様になる。そして、外周側面を印刷面とする印刷対象物は、上記反転ギアに連動して回転する支持部に支持されている。このため、搬送台が印刷媒体の搬送方向に移動することにより、外周側面を印刷面とする印刷対象物は、上記支持部に支持されて、印刷ヘッド側の外周の移動方向がラックギアの移動方向(すなわち印刷媒体の搬送方向)と同様になるように回転する。したがって、印刷ヘッドと対面する外周側面である印刷面が、印刷媒体の搬送方向と同様の方向に移動する印刷対象物に対して、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドにより印刷が行われる。
【0012】
このように、印刷媒体の搬送台と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッドとを備えた汎用の印刷装置を利用して、外周側面を印刷面とする印刷対象物に容易かつ安価に曲面印刷を実現できる。
【0013】
本発明において、上記ピニオンギアと反転ギアは、支持部に支持されて回転する印刷対象物の外周側面の周速が、搬送台による印刷媒体の搬送速度と実質的に等しくなるように設定されている場合には、
搬送台で搬送される印刷媒体に印刷するのと同様にして、支持部に支持されて回転する印刷対象物の外周側面に対する曲面印刷を実現できる。
【0014】
本発明において、上記印刷対象物は、印刷面である外周側面が円錐状または切頭円錐状である場合には、
円錐状または切頭円錐状の印刷面を有する印刷対象物に対して、汎用の印刷装置を利用して、その外周側面に容易かつ安価に曲面印刷を実現できる。例えば、紙コップやカップ状容器等の印刷対象物への印刷を実現できる。
【0015】
本発明において、上記支持部の回転軸は、上記印刷対象物の印刷面である外周側面が上記印刷ヘッドの往復方向と平行になるよう設定されている場合には、
印刷ヘッドが往復移動したときに、印刷ヘッドと印刷対象物の印刷面との距離が一定に保たれる。したがって、汎用の印刷装置を利用して、外周側面を印刷面とする印刷対象物に容易かつ安価に曲面印刷を実現できる。
【0016】
本発明において、上記印刷ヘッドの往復方向に沿うように配置されて、印刷ヘッドにおける一部のノズルから吐出されるインクをマスクするマスキング部材をさらに備えた場合には、
印刷ヘッドにおけるノズルは、印刷ヘッドの往復方向と直行する方向に並ぶ列をなすよう形成されている。したがって、曲面印刷をするときに、列の端部寄りのノズルでは、中央付近のノズルに比べて印刷面とノズルとの距離が長くなる。このため、列の端部寄りのノズルから吐出されたインクによる印刷では、印刷された画像の解像度が低下する。したがって、その部分のノズルから吐出されるインクを上記マスキング部材によってマスクすることにより、鮮明な画像の曲面印刷を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の印刷用治具の第1実施形態を示す図であり、ラックギアとピニオンギアと反転ギアの位置関係を説明するための平面図である。
図2】上記第1実施形態を示す図であり、ラックギアとピニオンギアと反転ギアの位置関係を説明するために側面から見た図である。
図3】上記第1実施形態を示す図であり、反転ギアと支持部と印刷対象物の位置関係を説明するために正面から見た図である。
図4】上記第1実施形態を示す図であり、反転ギアと印刷対象物の寸法関係を説明するための図である。
図5】本発明の印刷用治具の第2実施形態を示す図であり、マスキング部材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
つぎに、本発明を実施するための形態を説明する。
【0019】
図1図4は、本発明が適用される印刷用治具の第1実施形態を示す。
【0020】
この印刷用治具は、印刷媒体の搬送台1と、印刷媒体の搬送方向に直交する方向に往復する印刷ヘッド2とを備えた印刷装置に用いる印刷用治具である。
【0021】
上記印刷装置としては、一般にインクジェットプリンタと呼ばれるものを用いることができる。
【0022】
上記搬送台1は、紙や樹脂フィルム等の印刷媒体(図示していない)を搭載し、上記印刷媒体を搬送方向(図示の矢印X方向)に搬送するためのものである。
【0023】
上記印刷ヘッド2は、ガイドバー3に沿って、印刷媒体の搬送方向(X)に直交する方向(図示の矢印Y方向)に往復移動する。上記印刷ヘッド2は、印刷媒体と対面する下面にインクを吐出するノズルが形成されている。上記ノズルから吐出するインクは、図示しないインクカートリッジから供給を受ける。
【0024】
上記印刷装置は、一般的な使用方法としては、搬送台1に印刷媒体を搭載してX方向に搬送しながら、印刷ヘッド2をY方向に往復動させながらノズルからインクを吐出する。この動作により、紙のような平面の印刷媒体における印刷ヘッド2と対面した上面に画像や文字等を印刷することが行われる。
【0025】
この印刷用治具は、上記のような印刷装置を利用して、例えば紙コップやカップ状物のように、印刷面15である外周側面が円錐状または切頭円錐状の印刷対象物8に対して曲面印刷を実現するものである。
【0026】
上記印刷用治具は、上記印刷媒体の搬送方向に延びるように搬送台1の上に固定されるラックギア5と、上記ラックギア5にかみ合って回転するピニオンギア6と、上記ピニオンギア6に連動してピニオンギア6と反対方向に回転する反転ギア7とを備えている。また、上記反転ギア7に連動して回転し、外周側面を印刷面15とする印刷対象物8を支持するための支持部9をさらに備えている。
【0027】
以下、詳しく説明する。
【0028】
上記ラックギア5は、搬送台1の上における印刷ヘッド2が往復動する印刷領域を外れたところに、ギア面を上にして固定される。また、上記ラックギア5は、上記印刷媒体の搬送方向(X)に延びるように配置される。
【0029】
上記ピニオンギア6は、ラックギア5にかみ合って回転する円形のギアである。上記ピニオンギア6は、第1回転軸13によって第1軸支台11に軸支される。また、ラックギア5にかみ合うよう、搬送台1の上における印刷ヘッド2が往復動する印刷領域を外れたところに配置される。
【0030】
上記反転ギア7は、この例では、上記ピニオンギア6にかみ合ってピニオンギア6と反対方向に回転する円形のギアである。上記反転ギア7は、第2回転軸14によって第2軸支台12に軸支される。また、ピニオンギア6にかみ合うよう、搬送台1の上における印刷ヘッド2が往復動する印刷領域を外れたところに配置される。
【0031】
上記支持部9は、上記反転ギア7に連動して回転し、外周側面を印刷面15とする印刷対象物8を支持する。この例では、印刷対象物8がカップ状物であり、支持部9はカップ状物の開口部分に内嵌する円錐台形状をしている。この円錐台形状の支持部9は、広いほうの底面が反転ギア7の盤面に対して同軸状に取り付けられている。これにより、反転ギア7が第2回転軸14を軸に回転すると、支持部9も第2回転軸14を軸に回転する。
【0032】
上記支持部9を回転させる回転軸である第2回転軸14は、上記印刷対象物8の印刷面である外周側面が上記印刷ヘッド2の往復方向(Y)と平行になるよう設定されている。すなわち、支持部9に印刷対象物8を取り付けた状態で、印刷対象物8の外周側面の上側(印刷ヘッド2のノズル面と対面する側)が、上記印刷ヘッド2の往復方向(Y)と平行になる。このように第2回転軸14は、少し斜めに傾くように第2軸支台12に取り付けられている。
【0033】
円錐台状の支持部9に対して、カップ状の印刷対象物8を被せて装着するようになっている。この装着構造によって、カップ状の印刷対象物8は支持部9に対して同軸状に取り付けられる。
【0034】
上記支持部9に対して印刷対象物8が取り付けられた状態で、印刷対象物8は、印刷ヘッド2が往復移動する印刷可能領域の中に配置される。また、この状態で、カップ状の印刷対象物8の中心軸が、平面視で印刷ヘッド2の往復方向(Y)と平行になる。さらに、印刷ヘッド2が、カップ状の印刷対象物8の中心軸に沿って往復動する。また、印刷面15である印刷対象物8の外周側面の上側稜線部が、往復移動する印刷ヘッド2のノズル面と対面する。このような位置関係を実現するように、支持部9と反転ギア7が配置され、他の部材もそれに合わせたところに配置される。
【0035】
そして、上記ピニオンギア6と反転ギア7は、支持部9に支持されて回転する印刷対象物8の周速が、搬送台1による印刷媒体の搬送速度と実質的に等しくなるように設定されている。
【0036】
図4は、反転ギア7と印刷対象物8の寸法関係を説明する図である。
【0037】
このように、反転ギア7のピッチ円直径(図示の寸法R1)が、カップ状の印刷対象物8の印刷面15である外周側面の高さ方向における中央部の外径(R2)と等しくなるように設定されている。
【0038】
また、ピニオンギア6と反転ギア7は、同じ直径で同じ歯数のものを用いる。これにより、ピニオンギア6から反転ギア7への回転の伝達は、回転方向が反転するだけで、回転数および回転速度は同じになる。
【0039】
このような構成において、印刷対象物8への印刷はつぎのようにして行われる。
【0040】
まず、円錐台状の支持部9に対して、カップ状の印刷対象物8を被せて装着する。印刷が開始されると、印刷ヘッド2がY方向に往復動しながら搬送台1がX方向に移動する。このとき、印刷ヘッド2が印刷対象物8の上を通過するときに、印刷ヘッド2のノズルからインクが下方向に吐出される。
【0041】
搬送台1がX方向に移動すると、搬送台1に固定されたラックギア5がX方向(ラックギア5自体の長手方向である)に移動する。このラックギア5の移動によって、これにかみ合うピニオンギア6が回転する。ピニオンギア6の回転方向は、第1回転軸13の上側が搬送台1の移動方向(矢印X)と反対に動く方向(図示の矢印P)である。
【0042】
ピニオンギア6が回転すると、それにかみ合った反転ギア7が回転する。反転ギア7の回転方向は、ピニオンギア6の回転方向(P)と逆である。すなわち、反転ギア7は、第2回転軸14の上側が搬送台1の移動方向(矢印X)に動く方向(図示の矢印T)である。
【0043】
反転ギア7が回転すると、それに取り付けられた支持部9が同じ方向に回転する。また、支持部9に取り付けられた印刷対象物8も同じ方向に回転する。したがって、印刷対象物8の回転方向は、印刷ヘッド2と対面する外周側面である印刷面15が、搬送台1の移動方向(矢印X)に動く方向(T)である。
【0044】
この状態で、印刷ヘッド2のノズルから印刷面15に対してインクが吐出され、印刷対象物8の外周側面である印刷面15に文字や画像等が印刷される。
【0045】
このとき、支持部9に支持されて回転する印刷対象物8の周速が、搬送台1による印刷媒体の搬送速度と実質的に等しくなるように設定されていることから、搬送台1に印刷媒体を搭載して印刷するのと同様にして、カップ状の印刷対象物8の外周側面である印刷面15に印刷を行うことができる。
【0046】
以上のように、本実施形態の印刷用治具では、搬送台1が印刷媒体の搬送方向(X)に移動すると、そこに固定されたラックギア5がその方向(X)に移動する。このラックギア5の移動によってピニオンギア6が回転する。このとき、ピニオンギア6は、印刷ヘッド2側の外周の移動方向(P)がラックギア5の移動方向(すなわち印刷媒体の搬送方向;X)と反対になる。ピニオンギア6の回転により、それに連動して反転ギア7が回転する。反転ギア7の回転方向(T)は、ピニオンギア6と反対方向である。したがって、反転ギア7は、印刷ヘッド2側の外周の移動方向(T)がラックギア5の移動方向(すなわち印刷媒体の搬送方向;X)と同様になる。そして、外周側面を印刷面15とする印刷対象物8は、上記反転ギア7に連動して回転する支持部9に支持されている。このため、搬送台1が印刷媒体の搬送方向(X)に移動することにより、外周側面を印刷面15とする印刷対象物8は、上記支持部9に支持されて、印刷ヘッド2側の外周の移動方向(T)がラックギア5の移動方向(すなわち印刷媒体の搬送方向;X)と同様になるように回転する。したがって、印刷ヘッド2と対面する外周側面である印刷面15が、印刷媒体の搬送方向(X)と同様の方向(T)に移動する印刷対象物8に対して、印刷媒体の搬送方向に直交する方向(Y)に往復する印刷ヘッド2により印刷が行われる。
【0047】
このように、印刷媒体の搬送台1と、印刷媒体の搬送方向(X)に直交する方向(Y)に往復する印刷ヘッド2とを備えた汎用の印刷装置を利用して、外周側面を印刷面15とする印刷対象物8に容易かつ安価に曲面印刷を実現できる。
【0048】
また、上記ピニオンギア6と反転ギア7は、支持部9に支持されて回転する印刷対象物8の外周側面の周速が、搬送台1による印刷媒体の搬送速度と実質的に等しくなるように設定されているため、
搬送台1で搬送される印刷媒体に印刷するのと同様にして、支持部9に支持されて回転する印刷対象物8の外周側面に対する曲面印刷を実現できる。
【0049】
また、上記印刷対象物8は、印刷面15である外周側面が円錐状または切頭円錐状であるため、
円錐状または切頭円錐状の印刷面15を有する印刷対象物8に対して、汎用の印刷装置を利用して、その外周側面に容易かつ安価に曲面印刷を実現できる。例えば、紙コップやカップ状容器等の印刷対象物8への印刷を実現できる。
【0050】
また、上記支持部9の第2回転軸14は、上記印刷対象物8の印刷面15である外周側面が上記印刷ヘッド2の往復方向(Y)と平行になるよう設定されているため、
印刷ヘッド2が往復移動したときに、印刷ヘッド2と印刷対象物8の印刷面15との距離が一定に保たれる。したがって、汎用の印刷装置を利用して、外周側面を印刷面15とする印刷対象物8に容易かつ安価に曲面印刷を実現できる。
【0051】
図5は、第2実施形態を示す。
【0052】
この例では、上記印刷ヘッド2の往復方向に沿うように配置されて、印刷ヘッド2における一部のノズルから吐出されるインクをマスクするマスキング部材10をさらに備えている。
【0053】
このため、印刷ヘッド2におけるノズルは、印刷ヘッド2の往復方向(Y)と直行する方向(X)に並ぶ列をなすよう形成されている。したがって、曲面印刷をするときに、列の端部寄りのノズルでは、中央付近のノズルに比べて印刷面15とノズルとの距離が長くなる。このため、列の端部寄りのノズルから吐出されたインクによる印刷では、印刷された画像の解像度が低下する。したがって、その部分のノズルから吐出されるインクを上記マスキング部材10によってマスクすることにより、鮮明な画像の曲面印刷を実現できる。それ以外は上記第1実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0054】
本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、下記の変形例を包含する趣旨である。
【0055】
上記各実施形態では、上記反転ギア7は、上記ピニオンギア6にかみ合ってピニオンギア6と反対方向に回転するようにしたが、これに限定するものではない。例えば、ピニオンギア6と反転ギア7の間にさらに複数のギアを経由して回転を伝達することもできる。また、ピニオンギア6と反転ギア7の間をベルト等で繋いで回転を伝達することもできる。
【0056】
上記各実施形態において、ギア比を変更することにより、搬送台1の搬送速度に対する印刷対象物8の回転速度を自由に変えて印刷するようにしてもよい。
【0057】
上述した説明では、ラックギア5、ピニオンギア6および反転ギア7を一組だけ図示して一個の印刷対象物8を印刷する状態を示したが、ラックギア5、ピニオンギア6および反転ギア7を複数組印刷ヘッド2の移動方向Yに並べて複数個の印刷対象物8を同時に印刷するようにすることもできる。
【0058】
上述した説明では、第2回転軸14を少し斜めに傾くように第2軸支台12に取り付けて円錐台状の印刷対象物8の外周面に印刷するようにしたが、第2回転軸14を印刷ヘッド2の移動方向Yと平行に配置することにより、軸方向で外径が変わらない円筒状の印刷対象物8の外周面に印刷するようにすることもできる。
【符号の説明】
【0059】
1:搬送台
2:印刷ヘッド
3:ガイドバー
5:ラックギア
6:ピニオンギア
7:反転ギア
8:印刷対象物
9:支持部
10:マスキング部材
11:第1軸支台
12:第2軸支台
13:第1回転軸
14:第2回転軸
15:印刷面
図1
図2
図3
図4
図5