(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039494
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/6591 20110101AFI20161128BHJP
【FI】
H01R13/6591
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-92437(P2013-92437)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-216181(P2014-216181A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】内藤 丈晴
【審査官】
前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/131124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/6581−13/6599
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続相手に離脱方向で引っ掛かるためのロック穴を有する導電性のシェルと、前記シェルの内側に収められたインシュレータと、前記インシュレータに保持された導電性のコンタクトとを含む電気コネクタにおいて、
前記電気コネクタの後部に配置された導電性のシールド部品を含み、
前記ロック穴は前記電気コネクタの前部に位置しており、
前記インシュレータと前記シェルとの間に、前記シールド部品と一体に形成されて前記ロック穴を覆う導電性のシールド板を備え、前記シールド板によって、前記ロック穴からは前記インシュレータが視認できないことを特徴とする電気コネクタ。
【請求項2】
前記インシュレータには、接続方向からは視認できない窪みが形成されており、前記シールド板は、前記窪みの内部に配置されており、前記シールド板の表面は、前記インシュレータの前記シェルに接する面よりも内側にある、請求項1に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気コネクタに関し、詳しくは、接続状態をロックするロック機構を備えた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気コネクタの一例としてはUSBコネクタが知られている。USBコネクタにおいても高速信号伝送が求められている。USBコネクタにおける伝送速度の向上には、特許文献1にも開示されているようにEMI特性の改善が必要である。ここで
図7及び
図8を参照して、特許文献1に開示された技術を簡単に説明する。
【0003】
図7(特許文献1に従来例として開示されているコネクタ)を参照すると、ケーブル側コネクタ1のシェル2はフリクションロック穴3を備え、一方、接続相手となる基板側コネクタ4のシェル5はバネ片6とバネ片7とを備えている。ケーブル側コネクタ1が基板側コネクタ4に接続されると、バネ片6の一部がフリクションロック穴3に嵌合し、接続状態がロックされるが、バネ片6はシェル2には接触しない。そこでもうひとつのバネ片7がシェル2に接触することで、はじめてシェル2とシェル5とが電気的に接続され、その結果として、EMI特性の改善を期待できる。
【0004】
図8(特許文献1に発明として開示されているコネクタの要部)を参照すると、ケーブル側コネクタのシェル2は、フリクションロック穴の代わりに、シェル2の切欠きによって形成された凹部であるフリクションロック溝8を有している。フリクションロック溝8は、シェル板面よりも内方に窪んで形成された底片9を備えている。ケーブル側コネクタ1が基板側コネクタ4に接続されると、基板側コネクタ4のバネ片6が、フリクションロック溝8に嵌合して接続状態をロックすると同時に、底片9に接触することでEMI特性の改善を期待できる。
【0005】
なお、上述したようにバネ片6をロック穴3又はロック溝8に嵌合させるロック機構はフリクションロック機構と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−103249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図7に示す構造では、フリクションロック穴3とばね片6との間に隙間が残るので、電磁シールドが不十分であり、EMI特性に問題がある。
【0008】
図8に示す構造では、フリクションロック溝8が底片9によって覆われることで、隙間が少なくなる。しかし、シェル2の切欠きによってフリクションロック溝8を形成するので、わずかな隙間の発生は製造技術上不可避であり、EMI特性に問題がある。
【0009】
それ故に本発明の課題は、フリクションロック機構を備えた電気コネクタのEMI特性をさらに改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、接続相手に離脱方向で引っ掛かるためのロック穴を有する導電性のシェルと、前記シェルの内側に収められたインシュレータと、前記インシュレータに保持された導電性のコンタクトとを含む電気コネクタにおいて、
前記電気コネクタの後部に配置された導電性のシールド部品を含み、前記ロック穴は前記電気コネクタの前部に位置しており、前記インシュレータと前記シェルとの間に、
前記シールド部品と一体に形成されて前記ロック穴を覆う導電性のシールド板を備え、前記シールド板によって、前記ロック穴からは前記インシュレータが視認できないことを特徴とする電気コネクタが得られる。
【0012】
前記インシュレータには、接続方向からは視認できない窪みが形成されており、前記シールド板は、前記窪みの内部に配置されており、前記シールド板の表面は、前記インシュレータの前記シェルに接する面よりも内側にあってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様による電気コネクタは、フリクションロック機構を備えているにも拘わらず、EMI特性がさらに改善される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電気コネクタ(USBプラグコネクタ)の斜視図。
【
図2】
図1の電気コネクタを接続相手に接続させた状態を示す要部のみの拡大断面図。
【
図3】
図1の電気コネクタの製造工程を説明するための斜視図。
【
図4】
図3のIV−IV線に沿って得られた要部のみの拡大断面図。
【
図5A】
図1の電気コネクタに含まれた部品の斜視図。
【
図7】特許文献1(特開2007−103249号公報)に従来例として開示されているコネクタの斜視図。
【
図8】特許文献1に発明として開示されている他のコネクタの要部のみの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る電気コネクタの概略構成を説明する。
【0016】
図1は、電気コネクタとしてUSBコネクタ・プラグ(以下、単に「プラグ」と呼ぶ)10を示す。プラグ10は、導電性のシェル11と、シェル11の内側に収められたインシュレータ12とを含んでいる。シェル11の後部は、インサート成形された樹脂フード13で覆われている。樹脂フード13で覆われることなく外部に露出しているシェル11の前部には、二つのロック穴14が形成されている。
【0017】
シェル11とインシュレータ12との間には、ロック穴14を覆う導電性のシールド板15が備えられている。こうして、シールド板15によって、ロック穴14からはインシュレータ12が視認できないように構成している。なお、インシュレータ12には、後で明らかになるように導電性のコンタクトが保持されている。
【0018】
図2は、プラグ10を接続相手となるUSBレセプタクルコネクタ(以下、単に「レセプタクル」と呼ぶ)16に嵌合させたときの要部のみを示す。レセプタクル16の導電性のシェル17にはシェルバネ18が一体形成されている。
【0019】
プラグ10がレセプタクル16に嵌合すると、シェルバネ18の一部18Aがロック穴14に落ち込み、ロック穴14の縁14Aに離脱方向19で引っ掛かる。この結果、プラグ10はレセプタクル16に所謂フリクションロックされる。即ち、フリクションロック機構が備えられている。また、それと共に、シェルバネ18の一部18Aがシールド板15に接触する。この結果、シールド板15は、シェルバネ18を介してレセプタクル16のシェル17に電気的に接続される。シールド板15はロック穴14を覆ってロック穴14からインシュレータ12を視認できないようにしたものなので、EMI特性をさらに改善することができる。
【0020】
図3から
図6を参照して、プラグ10の製造工程を説明する。
【0021】
図4に示すように導電性のコンタクト21を固定保持したインシュレータ12を用意する。コンタクト21の前部には接触部21Aが形成されている。接触部21Aはインシュレータ12の下面側に露出している。またインシュレータ12の上面側の比較的前部には、接続方向22からは視認できないように主面12Aに対し窪んだ窪み12Bが形成されている。
【0022】
図3(a)及び
図4に示すように、インシュレータ12に対し、シールド板15とシールド部品23とを一体形成した導電部材24を上方から装着する。このとき、シールド板15をインシュレータ12の比較的前部の窪み12Bの内部に配置し、シールド部品23をインシュレータ12の比較的後部に配置する。ここで、シールド板15の表面は、インシュレータ12の主面12Aと同等若しくはそれよりも内側にあるように、窪み12Bの深さとシールド板15の厚みとを設計する。なお、シールド部品23は側面に爪23Aを備えている。
【0023】
次に、
図3(b)に示すように、インシュレータ12に対し、シェル11を前方から装着し、シェル11の引っ掛け穴11Aに爪23Aを引っ掛ける。
【0024】
図5A及び
図5Bに示すように、シールド板15のシールド部品23とは反対側の端面に面取り15Aを施すことにより、シェル11の装着作業を容易にすることができる。
【0025】
こうして、インシュレータ12に対し、導電部材24及びシェル11を装着して固定する。この状態では、インシュレータ12の主面12Aにシェル11が接触する。なお、ケーブル(図示せず)を保持すると共にその保持状態をロックする後端部25で、シェル11とシールド板15とが接触して電気的に確実に接続される。
【0026】
次に、
図3(c)に示すように、樹脂フード13をインサート成形し、プラグ10が完成する。
【0027】
上述したプラグ10では、樹脂フードの内側のシールド部品23にシールド板15を一体形成し、シェル11の内側でロック穴14を隙間なく覆っているので、電磁シールド効果が高まり、したがってEMI特性が改善される。
【0028】
特に、製造公差を考慮した設計公差を、シールド板15の表面がインシュレータ12の主面12Aよりも必ず内側になるように設定することで、シェル11とインシュレータ12との間の隙間を無くすことができる。したがって、プラグ10とレセプタクル16との嵌合時に引っかかることはなく破損の原因とはならない。
【0029】
また、シールド板15の表面をインシュレータ12の主面12Aよりも内側にあるように設計し、プラグがレセプタクルに嵌合した際には、フリクションロック機構のシェルバネ18が確実にシールド板15の表面に接触するようにシェルバネ18の変位量を設計することで、ロック穴14により深く引っ掛かることになる。したがって、ロック穴14の電磁シールド効果を得ながら、フリクションロック機構のロック力も強くなるという付加的効果も有する。
【0030】
上述ではいくつかの実施形態を用いて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、例えば
図6に示すように、シールド板15の表面がインシュレータ12の主面12Aよりも高くなるように実施することもできる。
【符号の説明】
【0031】
1 ケーブル側コネクタ
2 シェル
3 フリクションロック穴
4 基板側コネクタ
5 シェル
6 バネ片
7 バネ片
8 フリクションロック溝
9 底片
10 USBコネクタ・プラグ
11 シェル
11A 引っ掛け穴
12 インシュレータ
12A 主面
12B 窪み
13 樹脂フード
14 ロック穴
14A 縁
15 シールド板
16 USBレセプタクルコネクタ
17 シェル
18 シェルバネ
18A シェルバネの一部
19 離脱方向
21 コンタクト
21A 接触部
22 接続方向
23 シールド部品
23A 爪
24 導電部材
25 後端部