(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の領域を有する基板と該複数の領域においてそれぞれ設けられ電子回路として機能する機能部とを有する被加工物を前記領域を単位として個片化することによって複数の電子部品を製造する際に使用され、前記被加工物が固定されるテーブルと、回転軸を有するスピンドルと、前記回転軸に固定された回転刃と、前記テーブルと前記スピンドルとを水平方向に相対的に移動させる水平移動手段と、前記テーブルと前記スピンドルとを垂直方向に相対的に移動させる垂直移動手段と、前記回転刃と前記被加工物とに向かって第1の液体を噴射する第1の噴射手段と、前記回転軸の回転と前記垂直移動手段による移動と前記第1の噴射手段による噴射とを少なくとも制御する制御部とを備え、前記垂直移動手段は前記スピンドルを含む運動系を垂直方向に移動させる電子部品製造用の切削装置であって、
前記第1の噴射手段が固定された取付部材と、
前記テーブルにおける垂直方向の基準点と前記第1の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離からなる第1の高さを、前記基準点と前記回転軸の中心との間における垂直方向の距離からなる回転軸高さとは独立して設定する設定手段と、
前記第1の高さが変わらないようにして前記取付部材を固定する固定手段と、
前記回転刃を使用して前記被加工物を切削する工程を進めることによって前記回転刃が磨耗した磨耗量を計測する計測手段とを備え、
計測された前記磨耗量に等しい距離だけ、前記テーブルに対して前記回転刃を相対的に下降させ、
計測された前記磨耗量に等しい距離だけ、前記テーブルに対して前記第1の噴射手段の噴射口を上昇させることを特徴とする電子部品製造用の切削装置。
複数の領域を有する基板及び該複数の領域においてそれぞれ設けられ電子回路として機能する機能部を有する被加工物と回転軸に固定された回転刃とを水平方向に相対的に移動させることによって、前記被加工物を前記領域を単位として個片化することによって複数の電子部品を製造する際に使用され、前記被加工物をテーブルに固定する工程と、前記回転刃を回転させる工程と、前記テーブルと前記回転刃とが水平方向に相対的に移動する方向と前記複数の領域の境界線とが重なるように前記テーブルと前記回転刃とを位置合わせする工程と、前記回転刃の下端が前記被加工物の下面から所定の距離だけ離れて位置するように前記テーブルと前記回転刃とを垂直方向に位置合わせする工程と、前記テーブルと前記回転刃とを水平方向に相対的に移動させることによって前記回転刃と前記被加工物とが接触する被加工点を少なくとも含む範囲に向かって第1の噴射手段によって第1の液体を噴射する工程と、前記テーブルと前記回転刃とを水平方向に相対的に移動させることによって前記境界線において前記被加工物を切削する工程とを備える電子部品製造用の切削方法であって、
前記テーブルにおける垂直方向の基準点と前記第1の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離からなる第1の高さを、前記基準点と前記回転軸の中心との間における垂直方向の距離からなる回転軸高さとは独立して設定する工程と、
前記回転刃を使用して前記被加工物を切削する工程を進めることによって前記回転刃が磨耗した磨耗量を計測する工程と、
前記回転刃が前記磨耗量だけ磨耗した場合において前記第1の高さを維持する工程とを備え、
前記第1の高さを維持する工程は次の工程を備えることを特徴とする電子部品製造用の切削方法。
(1)計測された前記磨耗量に等しい距離だけ、前記テーブルに対して前記回転刃を相対的に下降させる工程。
(2)計測された前記磨耗量に等しい距離だけ、前記テーブルに対して前記第1の噴射手段の噴射口を上昇させる工程。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1は、新品の回転刃を使用して封止済基板を切断する工程を示し、
図1(1)は回転軸とは反対の側から回転刃を見た概略断面図、
図1(2)は
図1(1)の右側から見た概略断面図である。なお、本出願書類におけるいずれの図についても、わかりやすくするために適宜省略し又は誇張して、模式的に描かれている。同一の構成要素には同一の符号を付して、説明を適宜省略する。
【0007】
図1に示されるように、封止済基板1は、切削されて最終的に切断される被加工物(切断対象物)である。封止済基板1は、基板2と、基板2が有する複数の領域3に装着された複数のチップ状部品(図示なし。以下「チップ」という。)と、複数の領域3が一括して覆われるようにして形成された封止樹脂4とを有する。基板2が有する複数の領域3は仮想的な境界線5によって矩形状に区切られている。
図1に示された例においては、基板2はプリント基板である。基板2は、チップの電極に対して電気的に接続される内部電極(図示なし)、及び、封止済基板1が切断されて形成された複数の電子部品において外部に対して電気的に接続されるための外部電極(図示なし)からなる電極部を、有する。
【0008】
図1を参照して切削装置を説明する。粘着テープ6は片面(図では上面)に粘着層を有するテープである。粘着テープ6の上面に封止済基板1の封止樹脂4が貼り付けられる。上面に封止済基板1が貼り付けられた粘着テープ6が、テーブル7の上面に吸着される。このことによって、テーブル7の上面に封止済基板1が固定される。切削装置の回転刃8が、切削装置のスピンドル(図示なし)の回転軸9に固定される。回転刃8は、新品の状態においては磨耗前の外縁10を有し、使用できる限界まで磨耗した状態においては磨耗後の外縁11を有する。
図1に示された切削装置は新品の回転刃8を有する。
【0009】
スピンドルと1個の切削水用ノズル12と2個の冷却水用ノズル13とが同じ運動系に対して固定される。したがって、X方向とY方向とZ方向とのそれぞれにおいて、回転刃8と切削水用ノズル12と冷却水用ノズル13とが一体的に運動する。これにより、第1に、回転軸9の中心〜切削水用ノズル12の開口14の中心C間における垂直方向(Z方向)の距離が初期値LDに維持される。第2に、回転軸9の中心〜冷却水用ノズル13の開口15の中心間における垂直方向の距離が初期値LCに維持される。新品の回転刃8を使用する場合において、テーブル7の上面〜切削水用ノズル12の開口14の中心C間における垂直方向の距離は、第1の高さL1である。テーブル7の上面〜冷却水用ノズル13の開口15の中心間における垂直方向の距離は、第2の高さL2である。
【0010】
被加工点Pは、回転する回転刃8の外縁と封止済基板1とが最初に接触する地点(回転刃8の外縁が封止済基板1に切り込む点)を意味する。
図1(1)に示されるように、切削水用ノズル12は、中心線CLと回転刃8の厚さ方向における中心線とが同一面内に位置して、かつ、中心線CLが被加工点Pに向かうようにして、配置される。
図1(2)に示されるように、2個の冷却水用ノズル13は回転刃8を挟むようにして配置される。各冷却水用ノズル13は、回転刃8の側面と封止済基板1の上面とに対して平行になるようにして、それぞれ配置される。平行は実質的に平行であることを意味し、ほぼ平行であることを意味する。例えば、被加工点Pに対していっそう多い冷却水を噴射するために、被加工点Pに近い側(
図1(1)の右側)を下げて冷却水用ノズル13を配置してもよい。また、加工直後における回転刃8に対していっそう多い冷却水を噴射するために、被加工点Pから遠い側(
図1(1)の左側)を下げて冷却水用ノズル13を配置してもよい。
【0011】
切削水用ノズル12が、被加工点Pに向かって切削水16を噴射する。切削水16は、主に、回転刃8の側面における目詰まりを防止することによって回転刃8と封止済基板1との間における摩擦を低減することという機能を有する。加えて、切削水16は、被加工点Pにおける回転刃8と封止済基板1とを冷却することという機能を有する。更に、切削水16は、封止済基板1の上面に切削水16を流動させることによってその上面から切り屑を除去することという機能を有する。冷却水用ノズル13が、回転刃8の側面を含む所定の部分に向かって冷却水17を噴射する。冷却水17は、主に、回転刃8と封止済基板1とを冷却することという機能を有する。加えて、冷却水17は、切断溝(
図3における切断溝31参照)に切削水16を流動させることによって切断溝から切り屑を除去するという機能を有する。更に、封止済基板1の上面から切り屑を除去することという機能を有する。
【0012】
回転刃8が新品の状態においては、テーブル7の上面〜スピンドルの回転軸9の中心間における垂直方向の距離、言い換えれば回転軸高さの初期値が、所定の初期値Hに設定される。このことによって、
図1(2)に示されているように、回転刃8の下端を封止樹脂6の下面から一定の長さ(切り込み深さd)だけ離れた(下げた)位置にすることができる。
【0013】
図1を参照して、封止済基板1を切断する工程を説明する。まず、粘着テープ6を使用してテーブル7に封止済基板1を固定する。次に、回転刃8をX方向(+X方向と−X方向との双方を含む。以下同じ。)に適当な長さだけ移動させ、かつ、テーブル7をθ方向に適当な角度だけ回転させる。これらのことによって、回転刃8と封止済基板1における境界線5の1本(
図1(2)においては左から2本目の境界線5)とを位置合わせする。次に、切削装置のスピンドル(図示なし)を−Z方向に移動させて、テーブル7の上面〜スピンドルの回転軸9の中心間における垂直方向の距離(回転軸高さ)を初期値Hに設定する。これらにより、
図1(2)に示されているように、境界線5の1本に重なる位置において、回転刃8の下端を封止樹脂6の下面から一定の切り込み深さdだけ離れた(下げた)位置にすることができる。
【0014】
次に、回転軸9に固定された回転刃8を、所定の回転数で回転させる。次に、回転刃8が封止済基板1を切断することを想定した場合における被加工点Pに相当する位置に向かって、切削水用ノズル12から切削水16を噴射する。併せて、回転刃8の側面に向かって冷却水用ノズル13から冷却水17を噴射する。次に、テーブル7を−Y方向に送り速度vで移動させる。このことによって、封止済基板1を境界線5に沿って切断する。この過程において、封止樹脂6の下面から一定の切り込み深さdだけ回転刃8の下端を粘着テープ6に切り込ませる。
【0015】
図1と
図2とを参照して、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態における、従来の切削装置を使用した切断を説明する。
図2は、使用できる限界まで磨耗した回転刃を使用して従来の切削装置によって封止済基板を切断する工程を示し、
図2(1)は回転軸とは反対の側から回転刃を見た概略断面図、
図2(2)は
図2(1)の右側から見た概略断面図である。
【0016】
回転刃8を使用して封止済基板1を切断する工程を進めると、回転刃8の磨耗が進行する。基板2が鉄−ニッケル合金等の金属からなるリードフレームである場合(特に銅からなるリードフレームである場合)には、回転刃8の磨耗がいっそう速く進行する。回転刃8が限界まで磨耗した状態において回転刃8が半径方向に限界磨耗量aだけ磨耗したと仮定する。この場合には、一定の切り込み深さdを維持するためにスピンドル(図示なし)の回転軸9を−Z方向に限界磨耗量aに等しい長さだけ移動させる。言い換えれば、スピンドル(図示なし)が固定された運動系をZ方向に−aだけ移動させる。スピンドルと切削水用ノズル12と冷却水用ノズル13とは同じ運動系に対して固定されるので、切削水用ノズル12と冷却水用ノズル13とが限界磨耗量aに等しい長さだけ下降する。このことから、Z方向に関して、回転軸9の中心〜切削水用ノズル12の開口14の中心C間における垂直方向の距離は一定の距離LDに、回転軸9の中心〜冷却水用ノズル13の開口15の中心間における垂直方向の距離は一定の距離LCに、それぞれ維持される。
【0017】
以上説明したことから、次の事態が発生する。まず、
図2(1)に示されるように、切削水用ノズル12が下降することによって、封止済基板1において切削水16が直接噴射される位置が被加工点Pから離れる方向に(図の右方向に)移動する。次に、
図2(2)に示されるように、冷却水用ノズル13が下降することによって、封止済基板1において冷却水17が直接噴射される位置が被加工点Pから離れる方向に(回転刃8の左側においては左方向に、右側においては右方向に)移動する。これら2つのことに起因して、次の諸機能が低下する。第1に、回転刃8の側面における目詰まりを防止することによって回転刃8と封止済基板1との間における摩擦を低減する機能である。第2に、回転刃8と封止済基板1とを冷却する機能である。第3に、切断溝(
図3における切断溝31参照)に切削水16を流動させることによって切り屑を除去する機能である。第4に、封止済基板1の上面に切削水16を流動させることによって切り屑を除去する機能である。これらにより、回転刃8における欠けや異常な磨耗、個片化された電子部品におけるチッピング、電極部のばりの発生等による切断品位の低下、個片化された電子部品の表面に対する切り屑の付着、基板2の電極部(図示なし)におけるはんだめっきの溶融等の不具合が発生する。
【0018】
上述した課題に鑑み、本発明は、被加工物に対して切削水が直接噴射される位置が被加工点から離れることに起因する回転刃における欠け等の不具合の発生を抑制する、電子部品製造用の切削装置及び切削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決するために、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、複数の領域を有する基板と該複数の領域においてそれぞれ設けられ電子回路として機能する機能部とを有する被加工物を領域を単位として個片化することによって複数の電子部品を製造する際に使用され、被加工物が固定されるテーブルと、回転軸を有するスピンドルと、回転軸に固定された回転刃と、テーブルとスピンドルとを水平方向に相対的に移動させる水平移動手段と、テーブルとスピンドルとを垂直方向に相対的に移動させる垂直移動手段と、回転刃と被加工物とに向かって第1の液体を噴射する第1の噴射手段と、回転軸の回転と垂直移動手段による移動と第1の噴射手段による噴射とを少なくとも制御する制御部とを備え、垂直移動手段はスピンドルを含む運動系を垂直方向に移動させる電子部品製造用の切削装置であって、第1の噴射手段が固定された取付部材と、テーブルにおける垂直方向の基準点と第1の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離からなる第1の高さを、基準点と回転軸の中心との間における垂直方向の距離からなる回転軸高さとは独立して設定する設定手段と、第1の高さが変わらないようにして取付部材を固定する固定手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、上述の切削装置において、第1の高さにおいて、回転刃と被加工物とが接触する被加工点を少なくとも含む範囲に向かって第1の噴射手段が第1の液体を噴射することを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、上述の切削装置において、回転軸よりも下方における回転刃の側面と被加工物の上面とに対して平行になるようにして配置された第2の噴射手段を備え、第1の高さが変わらないようにして取付部材が固定された状態において、基準点と第2の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離が第2の高さになり、第1の噴射手段と第2の噴射手段とは同じ運動系に属し、第2の高さにおいて、回転軸よりも下方における回転刃の側面、回転刃の側面と被加工物の上面とが接する線、又は、被加工物の上面の少なくともいずれか1つに向かって第2の噴射手段が第2の液体を噴射することを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、上述の切削装置において、第3の噴射手段を備え、第1の高さが変わらないようにして取付部材が固定された状態において、基準点と第3の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離が第3の高さになり、第1の噴射手段と第2の噴射手段と第3の噴射手段とは同じ運動系に属し、第3の高さにおいて、被加工物の上面に向かって第3の噴射手段が第3の液体を噴射することを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、上述の切削装置において、水平移動手段によって移動する運動系において固定された固定部材を備え、取付部材は固定部材に固定され、設定手段は、固定部材において開けられた長穴と該長穴を通るねじと取付部材に設けられたねじ穴とを有し、固定手段は、ねじ穴と、長穴を通った状態においてねじ穴に対してねじ止めされたねじとを有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、上述の切削装置において、設定手段は、取付部材を昇降させるマイクロメータヘッドを有し、固定手段は、マイクロメータヘッドが有するロック機構であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、上述の切削装置において、設定手段は、サーボモータと、該サーボモータによって回転する回転部材と、該回転部材に組み合わせられ取付部材に固定された直動部材とを有し、固定手段は、サーボモータにおけるサーボ制御であることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削装置は、上述の切削装置において、第1の噴射手段の噴射口と被加工点との間における水平方向の距離を変えることができるように取付部材を移動させる移動手段を備えることを特徴とする。
【0027】
上述した課題を解決するために、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、複数の領域を有する基板及び該複数の領域においてそれぞれ設けられ電子回路として機能する機能部を有する被加工物と回転軸に固定された回転刃とを水平方向に相対的に移動させることによって、被加工物を領域を単位として個片化することによって複数の電子部品を製造する際に使用され、被加工物をテーブルに固定する工程と、回転刃を回転させる工程と、テーブルと回転刃とが水平方向に相対的に移動する方向と複数の領域の境界線とが重なるようにテーブルと回転刃とを位置合わせする工程と、回転刃の下端が被加工物の下面から所定の距離だけ離れて位置するようにテーブルと回転刃とを垂直方向に位置合わせする工程と、テーブルと回転刃とを水平方向に相対的に移動させることによって回転刃と被加工物とが接触する被加工点を少なくとも含む範囲に向かって第1の噴射手段によって第1の液体を噴射する工程と、テーブルと回転刃とを水平方向に相対的に移動させることによって境界線において被加工物を切削する工程とを備える電子部品製造用の切削方法であって、テーブルにおける垂直方向の基準点と第1の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離からなる第1の高さを、基準点と回転軸の中心との間における垂直方向の距離からなる回転軸高さとは独立して設定する工程と、回転軸高さが変わった場合において第1の高さを維持する工程とを備えることを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、上述の切削方法において、回転刃が磨耗した場合において、所定の距離を維持することを目的として回転軸高さを小さくする工程を備えることを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、上述の切削方法において、回転軸よりも下方における回転刃の側面と被加工物の上面とに対して平行になるようにして配置され第2の液体を噴射する第2の噴射手段を準備する工程と、基準点と第2の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離からなる第2の高さを、回転軸高さとは独立して設定する工程と、回転軸よりも下方における回転刃の側面、回転刃の側面と被加工物の上面とが接する線、又は、被加工物の上面の少なくともいずれか1つに向かって第2の液体を噴射する工程とを備え、第1の高さを維持する工程において第2の高さを維持することを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、上述の切削方法において、第3の液体を噴射する第3の噴射手段を準備する工程と、基準点と第3の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離からなる第3の高さを、回転軸高さとは独立して設定する工程と、被加工物の上面に向かって第3の液体を噴射する工程とを備え、第1の高さを維持する工程において第3の高さを維持することを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、上述の切削方法において、第1の噴射手段と第2の噴射手段と第3の噴射手段との少なくともいずれか1つが取り付けられた取付部材と、該取付部材を固定する固定部材とを準備する工程を備え、独立して設定する工程では、固定部材において開けられた長穴と、該長穴を通るねじと、取付部材に設けられたねじ穴とを使用して、ねじを緩めた状態において固定部材に対して取付部材を昇降させ、維持する工程では、ねじを締めることによって固定部材に対して取付部材を固定することを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、上述の切削方法において、第1の噴射手段と第2の噴射手段と第3の噴射手段との少なくともいずれか1つが取り付けられた取付部材と、該取付部材を固定する固定部材とを準備する工程と、取付部材に取り付けられたマイクロメータヘッドを備え、独立して設定する工程では、マイクロメータヘッドを使用して取付部材を昇降させ、維持する工程では、マイクロメータヘッドが有するロック機構を使用して固定部材に対して取付部材を固定することを特徴とする。
【0033】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、上述の切削方法において、第1の噴射手段と第2の噴射手段と第3の噴射手段との少なくともいずれか1つが取り付けられた取付部材と、該取付部材を固定する固定部材とを準備する工程と、サーボモータと、該サーボモータによって回転する回転部材と、該回転部材に組み合わせられ取付部材に固定された直動部材とを準備する工程とを備え、独立して設定する工程では、サーボモータを使用して取付部材を昇降させ、維持する工程では、サーボモータにおけるサーボ制御を使用して固定部材に対して取付部材を固定することを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る電子部品製造用の切削方法は、上述の切削方法において、第1の噴射手段の噴射口と被加工点との間における水平方向の距離を変えるために取付部材を移動させる工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
電子部品製造用の切削装置に、被加工物が固定されるテーブルと、回転軸に固定された回転刃と、被加工点に向かって第1の液体を噴射する第1の噴射手段と、第1の噴射手段が固定された取付部材と、垂直方向の基準点と第1の噴射手段の噴射口との間における垂直方向の距離からなる第1の高さを、基準点と回転軸の中心との間における垂直方向の距離からなる回転軸高さとは独立して設定する設定手段と、第1の高さが変わらないようにして取付部材を固定する固定手段とを備える。これにより、回転刃が新品の状態における第1の高さは、回転刃が使用できる限界まで磨耗した状態においても維持される。したがって、回転刃が使用できる限界まで磨耗した状態においても、回転刃が新品の状態におけると同様に、回転刃と被加工物とが接触する被加工点に向かって切削水を噴射することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
複数の領域3を有する基板2と領域3においてそれぞれ設けられ電子回路として機能する機能部とを有する封止済基板1を領域3を単位として個片化することによって複数の電子部品を製造する際に使用される電子部品製造用の切削装置に、封止済基板1が固定されるテーブル7と、回転軸9に固定された回転刃8と、回転刃8と封止済基板1とに向かって切削水16を噴射する切削水用ノズル12と、切削水用ノズル12が固定されたノズル取付板21と、Z方向の基準点になるテーブル7の上面と切削水用ノズル12の開口14との間におけるZ方向の距離からなる第1の高さL1を、基準点と回転軸9の中心との間におけるZ方向の距離からなる回転軸高さとは独立して設定する設定手段と、第1の高さL1が変わらないようにしてノズル取付板21を固定する固定手段とを備える。
【0038】
[実施例1]
図1と
図3〜
図6とを参照して、本発明の実施例1に係る電子部品製造用の切削装置を説明する。
図3は、本実施例に係る切削装置の要部を示す概略斜視図である。本実施例に係る切削装置の特徴は、被加工物を切削する際に被加工点に向かって切削水を噴射する切削水用ノズルの高さ位置が、回転刃の高さ位置とは独立して手動で設定され、かつ、維持されることである。なお、本出願書類においては、「切削する」という文言は、「厚さ方向の一部分を切削する」こと(ハーフカット)及び「厚さ方向の全ての部分を切削する」こと(フルカット)の双方を意味する。
【0039】
図3に示されるように、切削装置が有する切削機構18が、X方向に延びるX軸用レール19に沿って移動可能に取り付けられる。切削機構18は、X軸用レール19に沿って移動する第1の運動系である。切削機構18が有する固定板20が、固定板20に固定された直動部材であるボールナット(図示なし)を介してX軸用レール19に取り付けられる。固定板20は、回転部材であるボールねじ(図示なし)を介して、X軸用レール19に案内されてX方向に直線運動(linear motion )を行う。ノズル取付板21が、ねじ止めなどによって固定板20に固定される。切削水用ノズル12が、ノズル取付板21に固定される。固定板20とノズル取付板21とは、切削機構18において固定された第2の運動系に含まれる。本発明において、切削水用ノズル12が固定される部材は、ノズル取付板21の他に、ノズル取付板21が属する運動系における別の部材を含む。
【0040】
切削水用配管22が、ノズル取付板21に固定される。切削水用配管22は、水の供給源(図示なし)と切削水用ノズル12とに接続され、切削水用ノズル12に切削水を供給する。回転刃用カバー23がノズル取付板21に固定される。
【0041】
切削機構18は、回転刃8を含む回転刃用昇降部24を昇降させるための、サーボモータからなるZ軸用モータ25を有する。Z軸用モータ25は固定板20に固定される。Z軸用モータ25は回転部材であるボールねじ26を回転させる。Z軸用レール27が固定板20に固定される。回転刃用昇降部24には直動部材であるボールナット(図示なし)と直動部材である直動ブロック28とが固定される。Z軸用モータ25によって回転する回転部材であるボールねじ26が、ボールナットとZ軸用レール27に案内された直動部材である直動ブロック28とを介して、回転刃用昇降部24を昇降させる。回転刃用昇降部24は、Z軸用レール27に沿って移動する第3の運動系である。
【0042】
回転刃用昇降部24の下部において、スピンドル29がスピンドル取付部材30に取り付けられ、かつ、スピンドル取付部材30によって覆われる。スピンドル29の回転軸9には、回転刃8が固定される。被加工点Pに向かって、切削水用ノズル12の開口14から、切削水(
図1(1)の切削水16を参照)が噴射される。制御部CTLは、少なくとも、回転刃8の回転方向及び回転数と、テーブル7とスピンドル29との相対的な移動方向及び移動速度と、切削水用ノズル12からの切削水の噴射とを制御する、制御手段である。
【0043】
図1と
図3とを参照して、封止済基板1を切断する工程を説明する。まず、封止済基板1のうち封止樹脂4が下側になるようにして、粘着テープ6によってテーブル7の上面に封止済基板1を固定する。これにより、封止済基板1は、封止樹脂4が下側で基板2が上側になるようにしてテーブル7の上面に固定される。なお、基板2が下側で封止樹脂4が上側になるようにして、テーブル7の上面に封止済基板1を固定してもよい。
【0044】
次に、回転刃8と封止済基板1とを、X方向とY方向とθ方向とにおいて位置合わせする。具体的には、回転刃8の厚さ方向における中心線と封止済基板1における境界線5の1本(例えば、
図1(2)においては左から2本目の境界線5)とを位置合わせする。次に、回転刃用昇降部24を昇降させる。このことによって、フルカットの場合には、回転刃8の下端の位置が封止樹脂6の下面から一定の切り込み深さだけ下がった位置になるように設定する(
図1の切り込み深さd参照)。ハーフカットの場合には、回転刃8の下端の位置が封止樹脂6の下面から一定の長さだけ上がった位置になるように設定する。
【0045】
次に、回転刃8を適当な回転数(例えば、25000〜35000rpm)で回転させる。加えて、回転刃8が封止済基板1を切断することを想定した場合における被加工点Pに相当する位置に向かって、切削水用ノズル12の開口14から切削水16を噴射する。次に、回転刃8を回転させた状態でテーブル7を−Y方向に速度vで移動させる。このことによって、封止済基板1には切断溝31が形成され、最終的に封止済基板1が境界線5に沿って切断される。
【0046】
図3と
図4とを参照して、切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置を設定する機構、及び、その高さ位置を維持するためにノズル取付板21を固定板20に固定する機構を説明する。
図4は、
図3に示された切削装置における、ノズル取付板の高さ位置の設定とノズル取付板の固定とを示す概略斜視図である。開口14の中心Cの高さ位置を設定する場合には、例えば、六角穴付ボルトからなるねじ32と、固定板20に設けられた長穴33と、ノズル取付板21に設けられたねじ穴34とを使用する。長穴33は、長穴33の長手方向がZ方向に沿うように設けられる。固定板20の側面には位置合わせマーク35が設けられる。ノズル取付板21の側面であって位置合わせマーク35に対向する部分には目盛36が設けられる。位置合わせマーク35と目盛36とは、例えば、切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置がテーブル7の上面に等しい状態において位置合わせマーク35が目盛36における「0」を示すようにして、設けられる。
【0047】
切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置を設定する方法と、その高さ位置を維持する方法とを、説明する。まず、
図4において、長穴33に通したねじ32の先端をねじ穴34にねじ込んで、固定板20にノズル取付板21を仮固定する。次に、開口14の中心Cの高さ位置が所定の高さ位置になるように、ノズル取付板21の高さ位置を調整した後に、ねじ32をねじ穴34に更にねじ込む。これによって、開口14の中心Cの高さ位置が所定の高さ位置になった状態で固定板20にノズル取付板21が固定される。したがって、
図3に示された開口14の高さ位置は、回転刃用昇降部24の昇降とは独立して設定され維持される。
【0048】
開口14の中心Cの所定の高さ位置は、封止済基板1の厚さ及び回転刃8の半径に応じて予め定められる。例えば、開口14の中心Cの所定の高さ位置として、
図1に示されたテーブル7の上面〜切削水用ノズル12の開口14の中心C間における垂直方向の距離である第1の高さL1を使用することができる。この場合には、テーブル7の上面が、高さ位置の基準になる点(テーブル7における高さ方向の(垂直方向の)基準点)として機能する。なお、開口14の中心Cの所定の高さ位置の基準は、テーブル7が属する運動系における別の高さ位置であってもよい。本発明においては、高さ位置に関する「テーブルにおける高さ方向の基準点」は、テーブル7が属する運動系における別の高さ位置における点を含む。
【0049】
封止済基板1の品種が変更されて封止済基板1の厚さが変わった場合には、ねじ32を緩め、開口14の高さ位置を設定し直した後に、ねじ32をねじ込んでノズル取付板21を固定板20に固定する。
図1(1)から容易に理解されるように、封止済基板1の厚さが大きくなった場合には、開口14の中心Cの高さ位置を+Z方向に移動させる。一方、封止済基板1の厚さが小さくなった場合には、開口14の中心Cの高さ位置を−Z方向に移動させる。
【0050】
本実施例によれば、ねじ32と長穴33とねじ穴34とが、切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置を設定する設定手段として機能する。加えて、上述した設定手段には、位置合わせマーク35と目盛36とが含まれる。ねじ穴34と、長穴33を通った状態においてねじ穴34にねじ止めされたねじ32とは、切削水用ノズル12の開口14の中心cの高さ位置を固定して維持する固定手段として機能する。
【0051】
図5を参照して、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態における、本発明に係る切削装置を使用した切断を説明する。
図5は、使用できる限界まで磨耗した回転刃を使用して本発明に係る切削装置によって封止済基板を切断する工程を示し、
図5(1)は回転軸とは反対の側から回転刃を見た概略断面図、
図5(2)は
図5(1)の右側から見た概略断面図である。
【0052】
回転刃8が半径方向に限界磨耗量aだけ磨耗して、使用できる限界まで磨耗した状態を想定する。この状態は
図2に示された状態と同じである。
図5に示されるように、一定の切り込み深さdを維持するために、回転軸9を−Z方向にaだけ移動させる。言い換えれば、スピンドル(図示なし)が固定された運動系をZ方向に−aだけ移動させて、回転刃8を限界磨耗量aに等しい長さだけ下降させる。したがって、テーブル7の上面とスピンドルの回転軸9の中心との間における垂直方向の距離(回転軸高さ)は、H−aになる。この場合には、回転軸9の中心〜切削水用ノズル12の開口14の中心C間における垂直方向の距離がLD−aになり、かつ、回転軸9の中心〜冷却水用ノズル13の開口15の中心間における垂直方向の距離がLC−aになる。
【0053】
図3に示されるように、切削水用ノズル12はノズル取付板21に固定され、ノズル取付板21は、Z方向に関してスピンドルとは独立した運動系に属する固定板20に固定される。これらのことによって、
図5に示された回転刃8が限界磨耗量aに等しい長さだけ下降した場合において、切削水用ノズル12は下降しない。切削水用ノズル12が下降しないので、切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置は、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても回転刃8が新品の状態と同様に維持される。言い換えれば、切削水用ノズル12が下降しないので、回転刃8が新品の状態におけるテーブル7の上面〜開口14の中心C間における垂直方向の距離である第1の高さL1(
図1(1)参照)は、
図5に示された回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても第1の高さL1に維持される。したがって、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても、回転刃8が新品の状態におけると同様に、被加工点Pに向かって切削水16を噴射することができる。
【0054】
被加工点Pに向かって切削水16を噴射することによって、切削水16が噴射される位置が被加工点Pから離れることに起因して発生する次の不具合を抑制することができる。第1に、回転刃8の側面における目詰まりの発生によって回転刃8と封止済基板1との間における摩擦が低減されにくくなることに起因する、回転刃8における欠けや異常な磨耗等の発生である。第2に、被加工点Pにおける回転刃8と封止済基板1とが冷却されにくくなることに起因する、基板2の電極部(図示なし)におけるはんだめっきの溶融等である。第3に、封止済基板1の上面に切削水16が流動しにくくなることに起因する、個片化された電子部品の表面に対する切り屑の付着である。
【0055】
図5(2)及び
図6に示されるように、本実施例に係る切削装置において、1個の切削水用ノズル12に加えて、2個の冷却水用ノズル13をノズル取付板21(
図3参照)に固定してもよい。
図6は、本発明に係る切削装置が有する各ノズルを示し、
図6(1)は回転刃周辺の平面図、
図6(2)は回転軸とは反対の側から回転刃を見た概略断面図である。
【0056】
2個の冷却水用ノズル13は回転刃8を挟むようにして配置される。2個の冷却水用ノズル13は、それらの開口(図示なし)から噴射された冷却水17が回転刃8の側面に向かうようにして配置される。2個の冷却水用ノズル13は、回転刃8の側面であって基板2の上面に近い部分、回転刃8の側面と基板2の上面とが接する部分、又は、基板2の上面であって回転刃8の側面に近い部分のうち少なくともいずれかからなる所定の部分に向かって、それぞれ冷却水17を噴射する。
【0057】
各冷却水用ノズル13がノズル取付板21(
図3参照)に固定されることによって、回転刃8がaだけ下降した場合において冷却水用ノズル13は下降しない。冷却水用ノズル13が下降しないので、回転刃8が新品の状態におけるテーブル7の上面〜冷却水用ノズル13の開口15の中心間における垂直方向の距離である第2の高さL2(
図1(2)参照)は、
図5に示された回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても第2の高さL2に維持される。したがって、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても、回転刃8が新品の状態におけると同じ所定の部分に向かって冷却水17を噴射することができる。このことにより、冷却水17が噴射される位置が所定の部分から離れることに起因して発生する不具合を抑制することができる。
【0058】
図6に示されるように、本実施例に係る切削装置において、1個の切削水用ノズル12と2個の冷却水用ノズル13とに加えて、2個の洗浄水用ノズル37をノズル取付板21(
図3参照)に固定することができる。各洗浄水用ノズル37は、基板2の上面であって回転刃8の側面に近い所定の部分に向かって、それぞれ開口38から洗浄水39を噴射する。洗浄水39は、発生した切り屑を除去することという機能を有する。切り屑には、粉状や粒状の物質の他に、
図3に示された封止済基板1における最も端の境界線5に沿って封止済基板1を切断した場合に発生する細長い端材が含まれる。
【0059】
各洗浄水用ノズル37がノズル取付板21(
図3参照)に固定されることによって、回転刃8がaだけ下降した場合において各洗浄水用ノズル37は下降しない。洗浄水用ノズル37が下降しないので、回転刃8が新品の状態におけるテーブル7の上面〜洗浄水用ノズル37の開口38の中心間における垂直方向の距離である第3の高さL3(
図6(2)参照)は、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても第3の高さL3に維持される。したがって、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても、回転刃8が新品の状態におけると同じ所定の部分に向かって洗浄水39を噴射することができる。このことにより、洗浄水39が噴射される位置が所定の部分から離れることに起因して発生する不具合を抑制することができる。不具合には、例えば、個片化された電子部品の表面に対する切り屑の付着が含まれる。
【0060】
本実施例については、次の変形例を採用することができる。この変形例においては、
図3に示されたノズル取付板21を、ノズル取付板21に固定した直動部材である直動ブロックと固定板20に固定したZ軸用レール(
図3には図示なし)とを介して、固定板20に取り付ける。手動による駆動手段を使用して、ノズル取付板21を昇降させる。駆動手段としては、例えば、マイクロメータヘッドを使用する。マイクロメータヘッドが、
図5に示された切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置を設定する設定手段として機能する。マイクロメータヘッドのロック機構(クランプ機構)が、切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置を固定して維持する固定手段として機能する。
【0061】
なお、本実施例によれば、1個の切削水用ノズル12と2個の冷却水用ノズル13と2個の洗浄水用ノズル37とを、同じノズル取付板21に固定した。これに限らず、1個の切削水用ノズル12と2個の冷却水用ノズル13と2個の洗浄水用ノズル37とのうちの少なくとも一部を、同じ運動系に属する別々の部材(ノズル取付板21を含む)に固定することができる。
【0062】
[実施例2]
図7を参照して、本発明の実施例2に係る電子部品製造用の切削装置を説明する。
図7は、本実施例に係る切削装置の要部を示す概略斜視図である。本実施例に係る切削装置の特徴は、被加工物を切削する際に被加工点に向かって切削水を噴射する切削水用ノズルの高さ位置が、回転刃の高さ位置とは独立して駆動機構によって設定され、かつ、維持されることである。
【0063】
図7に示されるように、切削水用昇降部40が、昇降できるようにして回転刃用昇降部24に取り付けられる。サーボモータからなるZ軸用モータ41が、回転刃用昇降部24に固定され、回転部材であるボールねじ42を回転させる。Z軸用レール43が回転刃用昇降部24に固定される。切削水用昇降部40には直動部材である直動ブロック44が固定される。制御部CTLは、Z軸用モータ25によって回転刃用昇降部24を昇降させる動作に加えて、Z軸用モータ41によって切削水用昇降部40を昇降させる動作を制御する。
【0064】
図5と
図7とを参照して、本実施例における制御部CTLによる制御を説明する。
図5に示されるように回転刃8が使用できる限界まで磨耗した場合には、
図7の制御部CTLがZ軸用モータ25とZ軸用モータ41とを次のように制御する。第1に、Z軸用モータ25に信号を供給して、回転刃用昇降部24をaだけ下降させる。このことによって、回転刃8の下端が一定の切り込み深さdを維持する。第2に、Z軸用モータ41に信号を供給して、回転刃用昇降部24に取り付けられた切削水用昇降部40をaだけ上昇させる。これらのことにより、
図5に示されるように、回転刃8の下端の切り込み深さdと、テーブル7の上面〜開口14の中心C間における垂直方向の距離である第1の高さL1とを、回転刃8の昇降とは独立して維持することができる。
【0065】
本実施例によれば、回転刃用昇降部24の昇降とは独立して、切削水用ノズル12の開口14の中心Cの高さ位置を、制御部CTLによって制御されるZ軸用モータ41によって設定する。したがって、Z軸用モータ41は、開口14の中心Cの高さ位置を設定する設定手段として機能する。制御部CTLによって制御されるZ軸用モータ41におけるサーボ制御によって、開口14の中心Cの高さ位置を維持する。したがって、Z軸用モータ41におけるサーボ制御は、開口14の中心Cの高さ位置を固定して維持する固定手段として機能する。
【0066】
本実施例においては、回転刃8における磨耗量を適当な時点において計測することができる。計測された磨耗量に等しい距離だけ、回転刃用昇降部24を下降させ、かつ、切削水用昇降部40を上昇させる。これらのことによって、計測された磨耗量が限界磨耗量aに満たない場合においても、回転刃8の下端の切り込み深さdと、テーブル7の上面〜開口14の中心C間における垂直方向の距離である第1の高さL1とを、回転刃8の昇降とは独立して維持することができる。なお、回転刃8の磨耗量を計測する方法として、第1に、基準になる高さに設けられた基準面を有する金属製のブロックと回転刃8の下端との接触の有無を電気的に検出する方法がある。第2に、回転刃8の下端を光学的に非接触の状態で検出する方法がある。
【0067】
本実施例については、次の変形例を採用することができる。この変形例においては、
図7に示されたZ軸用レール43を固定板20に固定する。加えて、Z軸用レール43を介して切削水用昇降部40を固定板20に取り付ける。固定板20に取り付けられた切削水用昇降部40は、Z軸用レール43を介して昇降する。この変形例によれば、回転刃用昇降部24とは独立して昇降する切削水用昇降部40に1個の切削水用ノズル12を固定する。このことにより、
図5に示されるように、テーブル7の上面〜切削水用ノズル12の開口14の中心C間における垂直方向の距離である第1の高さL1を、回転刃8の昇降とは独立して維持することができる。
【0068】
[実施例3]
図8を参照して、本発明の実施例3に係る電子部品製造用の切削装置を説明する。
図8は、本実施例に係る切削装置の要部を示す概略斜視図である。本実施例に係る切削装置の特徴は、第1に、被加工物を切削する際に被加工点に向かって切削水を噴射する切削水用ノズルが回転刃とは独立して固定されることである。第2に、切削水用ノズルの開口の高さ位置が、回転刃の高さ位置とは独立して駆動機構によって設定され、かつ、維持されることである。第3に、被加工点に対する切削水用ノズルの開口の水平方向における相対的な位置(Y方向の位置)が、回転刃の位置とは独立して駆動機構によって設定されて維持されることである。
【0069】
本実施例は、回転刃8が磨耗した場合において、被加工点Pに対する切削水用ノズル12の開口14の中心Cの水平方向における相対的な距離(Y方向の距離)が大きくなるという状況に対応して採用される。被加工点Pに対する開口14の中心Cの水平方向における相対的な距離は、回転刃8の厚さ方向における中心線に沿う距離である。
【0070】
以下、
図5を参照して、被加工点Pに対する開口14の中心Cの水平方向における相対的な距離が大きくなるという状況を説明する。
図5に示されるように、回転刃8が新品の状態におけるテーブル7の上面〜切削水用ノズル12の開口14の中心C間の距離である第1の高さL1(
図1(1)参照)は、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態においても第1の高さL1に維持される(
図5(1)参照)。
【0071】
しかし、回転刃8が磨耗したことに対応して、回転刃8が新品の状態であった場合に比較して被加工点Pの位置は−Y方向に移る。回転刃8について許容される最大の限界磨耗量aが大きい場合には、被加工点Pが−Y方向に移る量が大きくなる。このことにより、封止済基板1において切削水16が直接噴射される位置と被加工点Pとの水平方向における距離が大きくなるという状況が発生する。この状況が回転刃8における欠け等、個片化された電子部品における切断品位の低下、個片化された電子部品の表面に対する切り屑の付着、基板2の電極部(図示なし)におけるはんだめっきの溶融等の不具合を発生させるおそれがある。
【0072】
以下、
図8を参照して本実施例に係る切削装置を説明する。
図8に示されるように、切削水用昇降部40が有するZ軸用レール43がスライダ45に固定される。直動部材であるボールナット46がスライダ45に固定される。サーボモータからなるY軸用モータ47が回転刃用昇降部24に固定され、回転部材であるボールねじ48を回転させる。2個のY軸用レール49が回転刃用昇降部24に固定される。スライダ45に固定された2個のガイド(図示なし)が、各Y軸用レール49によって案内される。スライダ45とボールナット46とY軸用モータ47とボールねじ48と2個のY軸用レール49と2個のガイド(図示なし)とは、切削水用Y方向移動部に含まれる。
【0073】
制御部CTLは、Z軸用モータ25によって回転刃用昇降部24を昇降させる動作と、Z軸用モータ41によって切削水用昇降部40を昇降させる動作とに加えて、Y軸用モータ47によって切削水用昇降部40をY方向に移動させる動作を制御する。制御部CTLによって制御されるY軸用モータ47におけるサーボ制御により、開口14の中心C(
図5参照)のY方向に沿う位置を維持する。したがって、Y軸用モータ47は、開口14の中心CのY方向に沿う位置を設定する設定手段として機能する。加えて、Y軸用モータ47におけるサーボ制御は、開口14の中心CのY方向に沿う位置を固定して維持する固定手段として機能する。
【0074】
本実施例によれば、回転刃8が使用できる限界まで磨耗した状態において、Y軸用モータ47がボールねじ48を回転させることによって切削水用昇降部40を−Y方向に適当な距離だけ移動させる。これにより、被加工点Pに対する切削水用ノズル12の開口14の水平方向における相対的な位置を、新品の回転刃8を使用する場合における位置と同じ位置に維持する。したがって、封止済基板1において切削水16が直接噴射される位置と被加工点Pとの水平方向における距離が大きくなることに起因する回転刃8における欠けや封止済基板1における切断品位の低下等の不具合の発生を、抑制することができる。
【0075】
本実施例は、封止済基板1の品種が変更されて封止済基板1の厚さが変わった場合においても適用される。この場合には、開口14の中心CのY方向の位置を適宜移動させる。開口14の中心CのY方向の位置とZ方向の位置との双方を移動させてもよい。
【0076】
本実施例において、次の変形例を採用することができる。第1に、Z軸用モータ41を含む切削水用昇降部40に代えて、マイクロメータヘッドを有する手動の切削水用昇降部を使用する。第2に、Y軸用モータ47を含む切削水用Y方向移動部に代えて、マイクロメータヘッドを有する手動の切削水用Y方向移動部を使用する。第3に、手動の切削水用昇降部と手動の切削水用Y方向移動部とを使用する。
【0077】
なお、ここまで説明した実施例において、封止済基板1をテーブル7に固定する方式として、粘着テープ6を使用せずに封止済基板1を吸着することができる(特許文献1の段落[0015]参照)。この場合には、平面視して各境界線5に重なるようにして、テーブル7の上面に、又は、テーブル7の上部に設けられた治具の上面に、回転刃8の外周部が収容される溝を形成する。
【0078】
ここまで説明した実施例において、回転刃用昇降部24とは独立して昇降する切削水用昇降部40に、1個の切削水用ノズル12に加えて、2個の冷却水用ノズル13と2個の洗浄水用ノズル37との少なくとも一方を固定することができる。
【0079】
ここまで説明した実施例において、被加工物(切断対象物)として封止済基板1を挙げて説明した。これらの場合には、各領域において、増幅、記憶、論理演算、発光、検出等の何らかの機能を有する機能部としてのチップ状部品(受動素子又は能動素子を含む)が装着される。これに限らず、増幅、記憶、論理演算、発光、検出等の何らかの機能を有する機能部としての電子回路がシリコンウェーハ等の各領域において作成された(作り込まれた)ウェーハを被加工物にして、本発明を適用することができる。
【0080】
ここまで説明した実施例において、回転部材としてボールねじ26等を、直動部材としてボールナット等を、それぞれ使用する構成を説明した。これに限らず、直動部材としてリニアガイドを使用してもよく、回転部材及び直動部材としてボールスプラインを使用してもよい。
【0081】
ここまで説明した実施例において、モータとしてサーボモータからなるZ軸用モータ25等を使用する構成を説明した。サーボモータに代えて、ステッピングモータ(stepper motor )のような他の種類のモータを使用してもよい。
【0082】
ここまで説明した実施例において、1個の切削水用ノズル12を使用する構成を説明した。これに限らず、被加工点Pに向かって切削水16を噴射することができる構成であれば、2個以上の切削水用ノズル12を使用することもできる。
【0083】
ここまで説明した実施例において、切削水16として純水を使用することができる。切削水14としては、純水の他に、純水に添加剤を加えた液体、被加工物が静電気に帯電することを防止するために純水に二酸化炭素(CO
2)のガスを溶け込ませた液体等を使用することができる。
【0084】
各実施例は、厚手の封止済基板1を切断する場合において特に有効である。なぜなら、第1に、厚手の封止済基板1を切断する場合には、薄手の封止済基板1を切断する場合よりも、回転刃8の外縁と封止済基板1とが接触する距離が長いからである。第2に、厚手の封止済基板1を切断する場合には、薄手の封止済基板1を切断する場合よりも、回転刃8の側面と封止済基板1とが重なり合う面積が大きいからである。これらによって、厚手の封止済基板1を切断する場合には、切削水16が噴射される位置が被加工点Pから離れること、及び、冷却水17が噴射される位置が回転刃8と封止済基板1とから離れることに起因する悪影響が、薄手の封止済基板1を切断する場合よりも大きい。したがって、厚手の封止済基板1を切断する場合において、被加工点Pに向かって切削水16を噴射すること、及び、所定の位置に向かって冷却水17を噴射することができる本発明の各実施例は、特に有効である。大きな厚さを有する封止済基板1として、電力制御用の半導体素子(トランジスタ、IC等)、輸送機器を対象とした内燃機関制御用、電動機制御用、制動システム制御用のIC等が挙げられる。
【0085】
また、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。