【文献】
Appl. Microbiol. Biotechnol., (2007), 76, [1], p.151-158
【文献】
Enzyme Microb. Technol., (1996), 18, [2], p.126-132
【文献】
Roitt, I.外著/多田富雄監訳, 「免疫学イラストレイテッド」, 原書第5版, 株式会社南江堂, (2000), p.93-10
【文献】
J. Immunol. Methods, (2007), 327, [1-2], p.40-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
当該技術分野において、改良された細胞選択法についての要請が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、所望のポリペプチド(例えば抗体又は抗体関連産物)の高力価を発現する個々の細胞株を同定及び選択するための改良された方法を提供する。本発明は、任意の段階で血清などの動物由来成分の使用を必要とせず、更に、最適な高産生クローンを同定するのに動物由来の抗血清及び標準的なプロトコルを用いる場合と同じか若しくはより効果的である、新規の直接的な染色法を提供する。従って、ヒトに使用するための生物製剤を発現する産生細胞株になり得る選択される細胞(複数も含む)(並びに細胞バンク及びその製造法)は、過度に外来性及び感染性因子に曝露されない。本発明は、細胞膜上の産物を直接染色することより高産生クローンを選択するために動物由来成分を含まないFACS選別プロトコルを用いる技術的課題を克服する。本発明はまた、半固体培地を使用する必要性及び細胞外「ハロ」形成に要する時間を克服する。
【0015】
本発明はまた、高産生細胞(複数も含む)/細胞株のより良い同定及びその後の単離を可能にする細胞の前方散乱(FSC)特性に基づいた新規ゲーティングストラテジーを提供する。
【0016】
加えて、本発明の結果として、細胞株作製の非常に初期の段階から、即ち96ウェル段階と同程度に初期の段階から高産生クローンが同定されるので、多数のクローンをスクリーニングする必要性を減少させる。この結果として、細胞株作製に関する労力が顕著に減少する。これは、単一細胞選別のために直接標識FACSアプローチを用いて96ウェル段階からでさえ高産生細胞株の同定の実現可能性を実証する最初の報告である。
【0017】
第1の態様において、目的のポリペプチドを発現する一つ又は複数の細胞をスクリーニングする方法であって、前記ポリペプチドを発現する少なくとも一つの細胞を含む細胞集団を提供する工程と、その細胞集団を、細胞の表面上の前記ポリペプチドに結合する標識と接触させる工程と、前記細胞の表面上のポリペプチドに対する前記標識の結合を検出する工程と、前記細胞の表面上のポリペプチドに結合した前記標識の存在に基づいて前記細胞を選択する工程とを含み、標識がポリクローナル抗体ではない方法を提供する。
【0018】
別の態様において、目的のポリペプチドを発現する一つ又は複数の細胞を選択する方法であって、前記ポリペプチドを発現する少なくとも一つの細胞を含む細胞の集団を提供する工程と、その細胞集団を、細胞の表面上の前記ポリペプチドに結合する標識と接触させる工程と、前記細胞の表面上のポリペプチドに対する前記標識の結合を検出する工程と、前記細胞表面上のポリペプチドに結合した前記標識の存在に基づいて前記細胞を選択する工程とを含み、標識が動物由来成分を含まない方法を提供する。
【0019】
別の態様において、異種ポリペプチドを発現する遺伝子操作した細胞の集団から高発現細胞を選択する方法であって、前記異種ポリペプチドを発現する細胞の集団を提供する工程と、集団内の特定の細胞に関して細胞の相対サイズを検出する工程と、集団から最も大きな一つ又は複数の細胞を選択する工程と、細胞の集団から前記選択した一つ又は複数の細胞を単離する工程とを含む方法を提供する。
【0020】
別の態様において、分泌された異種ポリペプチドを発現する細胞の集団から高発現細胞を選択する方法であって、前記異種ポリペプチドを発現する細胞の集団を提供する工程と、その細胞集団を、細胞の表面上の前記ポリペプチドに結合する標識と接触させる工程と、集団内の特定の細胞に関して、前記細胞の表面上のポリペプチドに結合した前記標識の相対量、その細胞の相対サイズを検出する工程と、前記細胞の表面上のポリペプチドに結合した前記標識の相対量及び/又はその細胞の相対量に基づいて集団から少なくとも一つの細胞を選択する工程と、細胞の集団から前記選択した少なくとも一つの細胞を単離する工程とを含む方法を提供する。
【0021】
選択する工程は、生細胞集団の平均FSC-A又はFSC-Wと比べて、より高い平均FSC-A又はより高いFSC-Wを有する細胞を選択することを含んでもよい。
【0022】
非ポリクローナル抗体標識の使用により、血清などの動物由来の成分、又は動物から誘導される成分を使用せずに所望のプロファイルを有する細胞を選択することができる。一実施形態において、標識は抗体ではない。本発明の一実施形態において、標識は、組換え型プロテインA、組換え型プロテインG又は組換え型プロテインLである。従って、標識は動物供給源から誘導されず、例えば、動物供給源の血清又は他の潜在的な外来性因子に曝露されていない。これにより、安全性に対する懸念が減少するので、ポリペプチドが生物製剤としての使用を目的とするタンパク質である場合、そのポリペプチド産物の下流の処理を改善する。
【0023】
標識は、細胞の表面に結合した標識の検出を容易にするためにマーカーにコンジュゲートされてもよい。好適なマーカーは蛍光マーカー、磁気マーカー、又はビオチンマーカーである。典型的に、マーカーは、FITC、RPE、DYLIGHT、ALEXA FLUOR、CYDYE、LI-COR、PE、Cy5、Cy7、PerCP及びAPCなどのFACS装置による検出に好適な蛍光マーカーである。誤解を避けるために、マーカーのコンジュゲーションは、直接的(例えば蛍光性プロテインAを用いる)であっても、又は間接的(例えば蛍光ストレプトアビジンにより結合され得るビオチンを用いる)であってもよい。従って、典型的な標識には蛍光性プロテインA、G又はLが含まれる。
【0024】
この方法は、細胞の表面に結合した標識、より具体的には、細胞の表面上のポリペプチドに結合した標識の相対量の検出を含んでもよい。FACSに対する抗産物抗体に基づいたアプローチ(Marder、P.前出を参照されたい)で示されているように、細胞の表面上に見られるポリペプチドに対する標識の結合は、その細胞により発現されるポリペプチドの量の指標を提供する。従って、細胞集団の他の細胞と比べて、細胞の表面に対する標識の相対結合を検出する工程は、細胞がポリペプチドの高発現体(expresser)である可能性があるという指標を提供できる。
【0025】
一実施形態において、検出する工程は、細胞の相対サイズを検出することを更に含む。本発明者らは、細胞(有糸分裂細胞であってもよい)の亜集団が、細胞集団内の他の細胞と比べて、より大きい(FSC及び/又はSSCの特徴により測定した場合、より体積が大きい)ことを発見した。この亜集団は、例えば、前方散乱幅(FSC-W)又は前方散乱領域(FSC-A)により分析した場合、主要集団とは異なる。この亜集団からの細胞が培養される場合、クローンは驚くべきことに、サイズが小さい(FSC及び/又はSSCの特徴により測定した場合)主要細胞集団の細胞より多くの目的のポリペプチドを発現する。この観察は特に、これらのより大きな細胞が、時間と共に平均細胞サイズに戻る動的な亜集団であるので驚くべきことである。この大きな細胞亜集団はまた、本明細書中でHFA細胞亜集団と称され(並びに前方散乱特性のFACS測定、即ちFSC-A及び/又はFSC-Wにより同定され得る)、より小さい(「通常の」)細胞亜集団はLFA細胞亜集団と称される。
【0026】
一実施形態において、選択する工程は、最も多い量の結合標識を示す集団から一つ又は複数の細胞を選択することを含む。選択する細胞の数は、最終的にクローニング及び/又は培養することを目的とする細胞数、及びそれによる利用可能な資源に依存する。当業者は、細胞に結合した標識を最も多くの量で有するこれらの細胞を選択するために選択基準を定義できる。例えば、標識が蛍光標識である場合、当業者は、最も強く蛍光を発する細胞を選択するために選択基準を定義できる。FACSプロトコルにおいて、当業者は、最も強い蛍光を発する細胞を選択するためにゲーティング基準を容易に定義できる。最も強い蛍光を発する細胞は細胞集団内で最も高発現する細胞である可能性がある。典型的な実施形態において、細胞集団内で最も多くの結合(例えば最も強い蛍光)の20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%若しくは1%又はそれより少ない細胞が選択される。
【0027】
一実施形態において、選択する工程は、集団から、より大きな又は最も大きな又は増殖している一つ又は複数の細胞を選択することを含む。選択する細胞の数は、最終的にクローニング及び/又は培養することを目的とする細胞数、及びそれによる利用可能な資源に依存する。当業者は、細胞集団内から、より大きな又は最も大きな細胞を選択するために選択基準を定義できる。例えば、FACSプロトコルにおいて、当業者は、より大きな又は最も大きな細胞を選択するためにゲーティング基準を定義できる。これは、FSC-H/FSC-Aプロット、FSC-W/FSC-Aプロット、FSC-Wヒストグラム又はFSC-A/SSC-Aプロットにより細胞集団の試料を分析した後、FACSのゲートを設定することを含んでもよい。本明細書で使用する場合、「より大きな」及び「最も大きな」という用語は、一つ又は複数の細胞がそれらの前方散乱特性、即ちFSC-A又はFSC-Wに基づいて選択されることを意味する。より大きな又は最も大きな一つ又は複数の細胞は、主要な生細胞亜集団より高い平均FSC-A(FSC-A/FSC-Hプロット又はFSC-A/SSC-Aプロットにおいて同定した場合)及びより高いFSC-W(FSC-A/FSC-Wプロット又はFSC-Wヒストグラムにおいて同定した場合)を有する生細胞の亜集団内の任意の細胞(複数も含む)である。同様に、本明細書で使用する場合、「最も高い」という用語は、細胞の前方散乱特性を説明し、細胞が、集団内の全生細胞の平均FSC-A又はFSC-Wより高いそれらのFSC-A又はFSC-Wに基づいて選択されることを意味する。典型的な実施形態において、細胞集団のうち最も大きな20%若しくはそれ以下、15%若しくはそれ以下、10%若しくはそれ以下、9%若しくはそれ以下、8%若しくはそれ以下、7%若しくはそれ以下、6%若しくはそれ以下、5%若しくはそれ以下、4%若しくはそれ以下、3%若しくはそれ以下、2%若しくはそれ以下、1%若しくはそれ以下が選択される。
【0028】
本明細書に記載されているものに加えて、多種多様の好適なゲーティングストラテジーが存在し、それらは、本明細書に記載されている同じ亜集団を区別し、選択するために使用されてもよいことは理解されるだろう。フローサイトメーターの熟練した操作者は、従って、本発明の教示に基づいて亜集団を同定し、ゲートできる。従って、HFA細胞亜集団(又はその小集団)又は強い蛍光を発する亜集団(又はその小集団)を選択するためのかかる代替のゲーティングストラテジーもまた、本発明に意図される。
【0029】
加えて、亜集団(又はその小集団)の選択及び/又は単離が得られる、異なる/追加の標識ストラテジーもまた、本発明に意図される。
【0030】
選択する工程は、典型的に、集団から生細胞のみを選択することを含む。集団内の細胞が生細胞であることを決定することは、当業者の通常の能力の範囲内である。従って、例えば、FACSプロトコルにおいて、当業者はサイトメーターの生ゲーティングを定義できる。これは典型的にFSC-A/SSC-Aプロットによって細胞の集団の試料を分析することを含む。例えばヨウ化プロピジウムを用いる更なる染色も使用されてもよい。
【0031】
この方法は更に、細胞の集団から前記選択した一つ又は複数の細胞を単離する工程を含む。典型的に、これは細胞集団からの個々の細胞の選択及び単離を含む。選択した個々の細胞を96ウェルプレートのウェルなどの別個の容器内に沈殿させてもよい。一つ又は複数の容器は通常、選択及び単離した細胞のクローン性増殖に好適な培地を含有する。典型的に、培地は血清を含まない培地である。
【0032】
一実施形態において、培地は動物由来の成分を含まない培地である。
【0033】
細胞間接触の欠如又は細胞集団から放出される必須因子に起因して、少数の細胞はかかる状態で増殖するのが困難であることは理解されている。従って、一実施形態において、培地は、馴化培地(非トランスフェクト細胞の培養物由来の濾過した上清)であるか、又は馴化及び新鮮な培地の混合物を含有してもよい。代替の実施形態において、容器は、本質的に自己由来(即ち、同じ種、同じ組織又は同じ遺伝的起源由来)であり得る支持細胞を含有する。代替の実施形態において、新鮮又は馴化培地は、(任意選択で組換え型)アルブミン、トランスフェリン又はインスリン増殖因子などの単一細胞増殖を支持する補足物(複数も含む)を含有する。
【0034】
一実施形態において、標識は、蛍光性プロテインA、プロテインG、又はプロテインL、典型的にはプロテインAである。検出する工程は典型的に、細胞の表面上のポリペプチドに結合した標識の相対蛍光を決定する工程を含み、ここで、比較的高い蛍光は、前記ポリペプチドのより高い相対発現を示す。選択する工程は典型的に、検出する工程に続いて、全体として細胞集団と比べて、検出する工程において検出した集団から、比較的高いレベルの蛍光を有する一つ又は複数の細胞を選択する工程を含む。単離する工程は典型的に、細胞集団から一つ又は複数の選択した細胞を分離する工程と、選択した細胞を別個の容器、通常96ウェルプレートのウェル内に各々独立して沈殿させる工程とを含む。これらの条件において、選択した高発現細胞はクローン条件下で増殖され得る。
【0035】
ポリペプチドは非ポリクローナルIgG又は非抗体標識で標識され得る任意のポリペプチドであってもよい。ポリペプチドは、例えば、限定されないが、合成であるか、又は天然であるかに関わらず、抗体、ホルモン、酵素、増殖因子、受容体、融合タンパク質、抗原、生物製剤又は任意の他のポリペプチドを含む、任意の好適な可溶性(分泌された)又は膜結合型ポリペプチド若しくは多量体ポリペプチドであってもよい。典型的に、ポリペプチドは治療用タンパク質である。
【0036】
一実施形態において、ポリペプチドは分泌されたポリペプチドである。一実施形態において、ポリペプチドは、免疫グロブリンCH1、CH2若しくはCH3ドメイン、CH2及びCH3ドメイン、又は免疫グロブリンFcドメイン(これは天然Fcドメインであってもよいか、又はその誘導体であってもよい)を含む。典型的に、ポリペプチドは抗体である。
【0037】
典型的に、ポリペプチドは組換え又は異種ポリペプチドである。組換え/異種ポリペプチドを発現する細胞を得るために、通常、発現される遺伝子をコードする好適な発現ベクターによる細胞のトランスフェクションを必要とする。ベクターは通常、目的のポリペプチドを発現する細胞の選択を可能にするために抗生物質耐性をコードする遺伝子などのマーカー遺伝子を含有する。代替として、マーカー遺伝子は、目的のポリペプチドをコードするベクターと同時に細胞内に導入される第2のベクターから発現されてもよい。典型的な実施形態において、細胞株はdhfr細胞株であり、細胞内にトランスフェクトされる一つ又は複数の発現ベクターはDHFR及び抗生物質耐性を含有する。しかしながら、他のトランスフェクション法(又は形質導入などの他の方法)及び選択手順も好適であり、当業者により任意に選択されてもよい。
【0038】
細胞の集団は、限定されないが、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、鳥細胞、魚細胞、又はそれらに基づいた不死化若しくは形質転換細胞集団を含む、それらの任意の誘導体などの任意の原核生物又は真核生物種であってもよい。一実施形態において、細胞は哺乳動物細胞、又は不死化若しくは形質転換細胞の哺乳動物細胞である。一実施形態において、細胞は、CHO、CHO K1、CHO DG44、NSO、COS-1、COS-7、HEK293、HeLa、HK21、PerC6、293T、Vero、AGE1.CR、HT1080、TE671、Namalwa又はSP2/0から選択される。典型的な細胞株は、限定されないが、CHO K1、CHO K1 Chk2、CHO DG44、CHO DXB-11を含む、CHO細胞株、又はそれら由来の細胞株である。CHO細胞株は、CHO DG44 dhfr株などのdhfr細胞株であってもよい。例えば修飾された糖鎖を発現するように操作された哺乳動物細胞株もまた、本発明における使用に好適である。かかる細胞株の例には、CHO FUT8ノックアウト細胞株(例えば米国特許第7,214,775号、米国特許第6,946,292号)又はGnTIIIの発現を上方制御するように操作された細胞株(例えばWO99/55342)が含まれる。一実施形態において、細胞集団は、CHROMOS由来のACE系(Lindenbaumら、Nucleic Acids Research、2004:32(21))などの人工染色体を含有する細胞からなってもよい。
【0039】
細胞の集団はバルクトランスフェクション由来の細胞であってもよいか、又は樹立/クローン細胞株であってもよい。
【0040】
一実施形態において、本発明の方法は、フローサイトメトリー法、より典型的には、蛍光活性化細胞選別(FACS)法である。典型的には、検出する工程は蛍光活性化細胞選別機又は分析装置において実施される。典型的には、選択する工程は蛍光活性化細胞選別機又は分析装置において実施される。典型的には、単離する工程は蛍光活性化細胞選別機において実施される。
【0041】
一実施形態において、この方法は、接触させる工程の前に細胞を洗浄する工程を更に含む。洗浄する工程は、周囲培地中に細胞により分泌されているポリペプチドを除去し、それによって、標識が細胞表面に発現したポリペプチドに結合することを確実にし、細胞特異的染色を増加させる。細胞を洗浄する工程は、典型的には、限定されないが、PBSなどの緩衝液中に細胞を懸濁することと、続いて細胞ペレットを生成するために細胞を遠心分離することと、上清から細胞ペレットを分離することとを含む。
【0042】
本発明はまた、フローサイトメトリーにより目的のポリペプチドを発現する一つ又は複数の細胞を選択する方法であって、蛍光結合標識で細胞を染色する工程を含み、動物由来成分を利用しない方法を提供する。
【0043】
本発明はまた、フローサイトメトリーにより、蛍光結合標識を用いて目的のポリペプチドを発現する一つ又は複数の細胞を選択する方法であって、利用される全ての成分が組換え及び非動物供給源由来である方法を提供する。
【0044】
本発明によれば、単一の選択した細胞を、その細胞の増殖及び分裂を可能にする条件で増殖又は培養してもよく、それにより、それらの細胞由来の第二の細胞集団(クローン集団)を生成する。本明細書中で、クローン集団から単一細胞を再クローニングする工程は、細胞の力価(即ち、生産性)を増加できることと示される。それ故、一実施形態において、この方法は、前記選択した細胞をクローン条件下で増殖させる工程を含む。この増殖させる工程は、本明細書中でクローン集団又は更なる細胞集団と称される、更なる細胞の集団を生成できる。この方法は、前記更なる細胞の集団から一つ又は複数の細胞を選択する工程と、更なる細胞の集団から前記一つ又は複数の細胞を単離する工程とを更に含んでもよい。このプロセスは、安定及び/又はより高い産生細胞株を生成するために所望又は必要な限り何度も反復してもよい。各場合において、更なるものから細胞を単離する工程は、高発現細胞を選択するために、本発明の方法に従って実施されてもよい。
【0045】
従って、別の態様において、本発明は、細胞をクローニングする方法であって、複数の細胞を含む集団から細胞を単離する工程と、クローン集団を生成するためにクローン条件下で前記単離した細胞を増殖させる工程とを含む方法を提供する。
【0046】
一実施形態において、増殖させる工程は馴化培地中で実施される。一実施形態において、細胞は異種遺伝子及びDHFR遺伝子でトランスフェクトしたdhfr細胞であり、増殖させる工程はメトトレキサートを含む培地中で実施される。一実施形態において、細胞はまた、ネオマイシン耐性遺伝子でトランスフェクトされ、増殖させる工程はG418を含む培地中で実施される。この実施形態において、培地はメトトレキサートを更に含んでもよい。
【0047】
本明細書中で、培地中の組換え型血清アルブミン及び/又は組換え型トランスフェリンの添加は、(培地が馴化培地の必要がない程度まで)クローニング効率を増加させることが見出されている。それ故、培地は、組換え型血清アルブミン及び/又は組換え型トランスフェリンを更に含んでもよい。血清アルブミンの濃度は、0.1〜10mg/mL、より典型的には、0.5〜5mg/mL、より典型的には更に0.75〜2.5mg/mL、最も典型的には約0.5〜1mg/mLであってもよい。トランスフェリン濃度も同様に変化されてもよいが、典型的にはmg/L範囲、最も典型的には約5mg/Lである。
【0048】
本明細書中で、単一細胞の単離(単一細胞選別)後、続いてクローン条件において増殖したその細胞株の生存能力及び/又は生産性が、一定の期間、選択圧を除去することによって改良され得ることが更に見出される。従って、一実施形態において、細胞は異種遺伝子及びDHFR遺伝子でトランスフェクトされたdhfr細胞である。この実施形態において、集団から細胞を単離する工程の後、単離した細胞を、メトトレキサート又はG418などの抗生物質を含まない馴化培地であってもよい培地中で第一の期間増殖させる。第一の期間に続いて、メトトレキサート及びG418が培地に加えられる第二の期間があってもよい。典型的には、第一の期間は12〜100時間、より典型的には24、26、48、64又は72時間である。
【0049】
それ故、別の態様において、本発明は、細胞をクローニングする方法であって、異種タンパク質を発現する細胞を単離する工程と、第一の増殖期の間は選択/増幅剤(複数も含む)、例えばメトトレキサート及び/又は抗生物質の非存在下の培地中で、第二の増殖期では選択/増幅剤(複数も含む)を含む培地中で、前記単離した細胞を増殖させる工程とを含む方法を提供する。
【0050】
本発明の方法は、万能細胞バンクを生成するためのクローン条件において前記選択した細胞を増殖させる工程を更に含んでもよい。この方法は、クローン条件において前記選択した細胞を増殖させる工程であって、細胞が前記ポリペプチドを発現する工程と、細胞からポリペプチドを分離する工程と、前記ポリペプチドを精製する工程とを更に含んでもよい。
【0051】
本発明はまた、本発明に係る方法によって選択した細胞と、かかる細胞によって生成されたポリペプチドを提供する。
【0052】
他の利点は、図面と併せて読んだ場合、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1A】細胞株作製フロー図及びベクター概略図である。(A)従来/標準の細胞株作製プロトコル。SCC:単一細胞クローニング;SF:振盪フラスコ;MTX:メトトレキサート;DHFR:ジヒドロ葉酸還元酵素;HC:重鎖;LC:軽鎖)
【
図1B】細胞株作製フロー図及びベクター概略図である。(B)新規の、FACSに基づいた細胞株作製プロトコルのフロー図。SCC:単一細胞クローニング;SF:振盪フラスコ;MTX:メトトレキサート;DHFR:ジヒドロ葉酸還元酵素;HC:重鎖;LC:軽鎖)
【
図1C】細胞株作製フロー図及びベクター概略図である。(C)重鎖及び軽鎖構築物についてのベクター概略図。SCC:単一細胞クローニング;SF:振盪フラスコ;MTX:メトトレキサート;DHFR:ジヒドロ葉酸還元酵素;HC:重鎖;LC:軽鎖)
【
図2】実施例に使用されるFACS分析及び選別ゲーティング論理を示す図である。フロー図はゲーティングの順序を示す。アスタリスクは、選別が実施され得る/された時点を示す。図の左側から開始して、生細胞を同定するために、細胞はそれらのFSC-A対SSC-A特性に基づいてまず選択される。必要ならば、死細胞の区別のためにヨウ化プロピジウムが更に使用されてもよい。生細胞がゲートされている場合、二つの異なる流れが以下のように続く。上部においてこの生細胞集団の蛍光も測定でき(以下の実施例に記載されているようにプロテインA又はIgGで染色することにより)、最も高い蛍光を発する細胞についてゲートを設定できる(生-高ゲート、通常上位2〜5%)。並行して下部において、生細胞は更に、それらのFSC特性に基づいて、実施例8に記載されているように高前方散乱領域(HFA)及び低前方散乱領域(LFA)細胞に区別され得る。HFA-高及びLFA-高亜集団をそれぞれ同定し、選択するために、HFA又はLFA細胞のいずれかの蛍光も測定でき、適用される生細胞集団について生-高蛍光ゲートを設定できる。
【
図3】細胞表面IgG発現についての染色無しの細胞選別 -既存の細胞株のサブクローニング、を示す図である。a.種々の計画のための親細胞株及びサブクローニングした娘細胞株のバッチ生産モデル。細胞株は、生細胞ゲートのみを用いたFACS(計画5d、7b及び10)により、又は限界希釈(計画6d)によりクローニングした単一細胞であった。7bの場合、FACSにより2ラウンドのクローニングを実施した。そのデータは、クローニング後、顕著に増加した力価を示す。b.単一細胞選別クローン(計画7b、株84-8#158-202)についての異なる継代(p10、21、31、41及び51)におけるバッチ生産モデルは細胞株安定性を実証している。
【
図4】FITC標識した抗ヒトウサギポリクローナルIgGを用いて生細胞ゲートしたバルクトランスフェクトCHO細胞における細胞表面IgG発現の検出を示す図である。非トランスフェクトCHO細胞又は計画10の抗体をコードするプラスミドでトランスフェクトされたCHO細胞についての蛍光ヒストグラム:a)非トランスフェクトCHO DG44細胞、b)G418選択後のトランスフェクトされた細胞、c)G418選択及びメトトレキサート増幅後のトランスフェクトされた細胞。点線は標識していない細胞であり、実線は抗ヒトIgG標識した細胞である。
【
図5-1】FACS分析及び選別についての細胞染色条件の最適化を示す図である。プロテインA Alexa647(列A)、FITC標識したウサギ抗ヒトIgG(列B)及びDyLight649標識したウサギ抗ヒトIgG(列C)を用いる、計画10の抗体をコードするプラスミドでトランスフェクトした親CHO-DG44細胞及びCHO-DG44細胞の染色。左側の欄のグラフは、異なる抗体/プロテインA濃度について得られた平均蛍光シグナルを示し、右側の欄のグラフは、対応するシグナル対ノイズ比、即ち同じ濃度におけるDG44親細胞の蛍光で除算したトランスフェクトした細胞の平均蛍光を示す。全てのグラフに関して、生ゲート細胞の蛍光を示す。
【
図5-2】FACS分析及び選別についての細胞染色条件の最適化を示す図である。プロテインA Alexa647(列A)、FITC標識したウサギ抗ヒトIgG(列B)及びDyLight649標識したウサギ抗ヒトIgG(列C)を用いる、計画10の抗体をコードするプラスミドでトランスフェクトした親CHO-DG44細胞及びCHO-DG44細胞の染色。左側の欄のグラフは、異なる抗体/プロテインA濃度について得られた平均蛍光シグナルを示し、右側の欄のグラフは、対応するシグナル対ノイズ比、即ち同じ濃度におけるDG44親細胞の蛍光で除算したトランスフェクトした細胞の平均蛍光を示す。全てのグラフに関して、生ゲート細胞の蛍光を示す。
【
図6A】対照(非トランスフェクト細胞)、バルクトランスフェクト細胞及び以前にクローニングした株の、IgG(DyLight649コンジュゲート化)標識及びプロテインA(Alexa647コンジュゲート化)標識の比較を示す図である。(A)親の非トランスフェクトCHO DG44細胞と、バルクトランスフェクトした(G418選択及びメトトレキサート増幅後t)計画14の細胞との比較。IgG(上パネル)及びプロテインA(下パネル)染色後の分析を示す。左側の欄は生細胞ゲート(FSC-SSCプロット)を示し、右側の欄は生染色細胞の蛍光ヒストグラムを示す。数は生細胞集団の平均蛍光強度を示す。
【
図6B】対照(非トランスフェクト細胞)、バルクトランスフェクト細胞及び以前にクローニングした株の、IgG(DyLight649コンジュゲート化)標識及びプロテインA(Alexa647コンジュゲート化)標識の比較を示す図である。(B)親の非トランスフェクトCHO DG44細胞と、以前にサブクローニングした細胞株(細胞株84、計画12)との比較。IgG(上パネル)及びプロテインA(下パネル)の両方を示す。左の欄は生細胞ゲート(FSC-SSCプロット)を示し、右の欄は生染色細胞の蛍光ヒストグラムを示す。数は生細胞集団の平均蛍光強度を示す。
【
図7】細胞選別ゲーティング基準と選別後のIgG発現の相関関係を示す図である。計画17についてのベクターで安定にトランスフェクトしたCHO-K1由来のCHROMOS ChK2細胞の4方向(four-way)選別を実施した。抗ヒトIgG又はプロテインAのいずれかでの染色後に細胞をFACS選別した。それぞれ生細胞の、(A)プロテインA(Alexa647コンジュゲート化)蛍光ヒストグラムにわたる、(B)抗ヒトIgG(DyLight649コンジュゲート化)蛍光ヒストグラムにわたる四方向ゲーティングを示す。各ゲート内の細胞の%は、約25%(P3及びP8)、50%(P4及びP9)、20%(P5及びP10)及び5%(P6及びP11)であった。(C)抗体力価を選別ゲートにつき100,000細胞の選別後、5日からの細胞数で除算した。
【
図8】従来の方法(計画13)由来のクローンと比べた場合のFACSで選別したクローンの初期の回収及びバッチ産生における供給に対するより良い反応を示す図である。(A)FACS(灰色)又は低密度播種(従来/標準のプロトコル(黒色))によるバルク及び単一細胞クローニングにおける選択/増幅のいずれか由来のクローンのT75cm
2静置組織培養フラスコ段階における細胞の生存率。(B)初期の振盪フラスコ(SF)段階において測定した同じクローンの生存率。(C)FACS(灰色のボックス)及び従来/標準のプロトコル(黒色のボックス)データを示す小規模増殖曲線(Duetz)モデルにおける同じクローンの14日目のIgG力価。
【
図9】HFA細胞についてのFSC測定及びゲーティングを示す図である。A>FSC-示した高さ、幅及び面積測定についてのレーザーシグナルの検出についての時間対電圧のヒストグラム。B>計画10の株MTX8についての生細胞ゲートを示すFSC-A/SSC-Aプロット。注記:分析/選別の大多数について、より広範囲のゲートを使用した(例えば
図6を参照されたい)。C>高前方散乱領域(HFA)細胞及び低前方散乱領域(LFA)細胞集団を示す上記のBの生ゲート由来のFSC-A/FSC-Hプロット
【
図10】HFA及びLFA細胞のFSC特性を比較する更なるフローサイトメトリーのプロットを示す図である(ここで示した代表的なデータは細胞株#15を用いて得た、計画12)。プロット(A)及び(B)は、LFA(濃い灰色)及びHFA(薄い灰色)集団のそれぞれについてのFSC-Wのヒストグラム又はFSC-W/FSC-Aのドットプロットを示し、二つの集団の間の明確な分離が観察される。(C) HFA及びLFA集団の両方に関する、FSC-Hについてのヒストグラムプロット。二つの集団の間で差異は観察されなかった。(D) 同様に両方の集団に関する、FSC-Aについてのヒストグラムプロット。LFA及びHFA細胞の部分的重複が観察される。
【
図11-1】バルクトランスフェクトした細胞(計画14)及び以前にクローニングした株(計画12、株#84)についてのIgG(DyLight649コンジュゲート化)対プロテインA(Alexa647コンジュゲート化)標識の比較を示す図である。左から右へ:生細胞ゲート(FSC/SSCプロット)、HFA及びLFAゲート(FSC-H/FSC-Aプロット)、示した平均蛍光値を有する生細胞の蛍光ヒストグラム、示した平均蛍光値を有するHFA細胞の蛍光ヒストグラム及び示した平均蛍光値を有するLFA細胞の蛍光ヒストグラム。上から下へ:ウサギ抗ヒトIgGで染色したバルク集団、プロテインAで染色したバルク集団、ウサギ抗ヒトIgGで染色したクローン細胞株、プロテインAで染色したクローン細胞株。
【
図11-2】バルクトランスフェクトした細胞(計画14)及び以前にクローニングした株(計画12、株#84)についてのIgG(DyLight649コンジュゲート化)対プロテインA(Alexa647コンジュゲート化)標識の比較を示す図である。左から右へ:生細胞ゲート(FSC/SSCプロット)、HFA及びLFAゲート(FSC-H/FSC-Aプロット)、示した平均蛍光値を有する生細胞の蛍光ヒストグラム、示した平均蛍光値を有するHFA細胞の蛍光ヒストグラム及び示した平均蛍光値を有するLFA細胞の蛍光ヒストグラム。上から下へ:ウサギ抗ヒトIgGで染色したバルク集団、プロテインAで染色したバルク集団、ウサギ抗ヒトIgGで染色したクローン細胞株、プロテインAで染色したクローン細胞株。
【
図12】バルク集団及び樹立細胞株のパネルについての統計的分析を示す図である。DyLight649-IgG又はAlexa647-プロテインAのいずれかで染色した、バルク集団(トランスフェクトし、選択し、5nM MTX増幅させた)(n=6)及び樹立細胞株(n=19)について得られたデータは以下のように分析される:(A)HFA細胞(黒)の%、生細胞と比較した上位5%の生蛍光細胞のHFA細胞における濃縮倍率、即ち、(HFAである上位5%の生ゲートの%)/(HFAである生細胞の%)(中間の灰色)を示す;生細胞と比較した上位2%の生蛍光細胞のHFA細胞における濃縮倍率-(濃い灰色);、生細胞と比較したHFA細胞の上位5%の生蛍光細胞における濃縮倍率、即ち、(上位5%の生ゲートにおけるHFA細胞の%)/(5)(薄い灰色)を示す;及び生細胞と比較したHFA細胞の上位2%の生蛍光細胞における濃縮倍率(白)。X軸は細胞の種類及び分析した染色の種類を示す。(B)標識したウサギ抗ヒトIgG又はプロテインAで染色後の親のバルクトランスフェクトした集団及び樹立細胞株について生細胞と比較した、HFA細胞の平均蛍光強度の増加倍率。
【
図13】樹立株についてのHFA単一細胞選別(計画10)は、増加したバッチ産生力価を有する安定なサブクローンを産生することを示す図である(親力価は1.6g/Lであった)。パネルAは用いた異なるクローニングアプローチを示し、パネルBは、HFA選別から得られた最良のサブクローン(MTX8-B7)についての異なる継代における安定な産生力価を示す。
【
図14A】計画3Mの細胞株(BP0044)の、FACSに基づいたHFA単一細胞サブクローニングから得られたクローンの増加した力価及び向上した安定性を示す図である。パネルAは、異なる継代数における親株のバッチ産生力価を示し、力価の劇的な減少が継代20の後に観察される。パネルBはHFA選別したサブクローン(B2)についての異なる継代におけるバッチ産生力価を示し、その力価は増加し、その株は少なくとも53継代の間、安定である。
【
図14B】計画3Mの細胞株(BP0044)の、FACSに基づいたHFA単一細胞サブクローニングから得られたクローンの増加した力価及び向上した安定性を示す図である。パネルAは、異なる継代数における親株のバッチ産生力価を示し、力価の劇的な減少が継代20の後に観察される。パネルBはHFA選別したサブクローン(B2)についての異なる継代におけるバッチ産生力価を示し、その力価は増加し、その株は少なくとも53継代の間、安定である。
【
図15】四つの異なる基準-計画3Mサブクローニング(細胞株BP0044)に基づいて選別した細胞クローンについての静置及び振盪培養の両方におけるIgG力価の比較を示す図である。DyLight649コンジュゲート化ウサギポリクローナル抗ヒトIgGを用いてBP0044細胞の染色後に選別を実施した。(A)FACSによる単一細胞サブクローニング後の6ウェル段階における個々の力価。クローンは、四つの異なる選別基準-1)生細胞ゲート(黒)、2)HFA細胞(白の四角)、3)強い蛍光細胞:上位1.5%蛍光を示す、生きているゲートした細胞(ウサギ抗ヒトIgG染色)(白の三角)及び4)HFA強蛍光細胞:上位1.5%の蛍光ゲート内のHFA細胞(黒の十字)を用いるFACS選別由来であった。(B)振盪フラスコ段階(継代1)における抗体力価及び細胞数。同じ色/形のスキームを適用する。このデータは、最も高い抗体力価を産生する多数のクローンの大多数及び最も高い特異的生産性(SPR)を有する大多数が、HFA及び強い蛍光選別基準(黒の十字)に由来することを実証する。
【
図16】HFAゲーティング及びIgG又はプロテインA染色/ゲーティングを用いるFACSによる計画10についてのクローン細胞株の作製を示す図である。CHO-DG44細胞を、計画10についての抗体をコードするベクターを用いてトランスフェクトし、その後、バルクで選択し、増幅させ、次いで四つの異なる基準:(i)ウサギ抗ヒトIgG染色細胞(FITCコンジュゲート化)の生細胞ゲーティング、(ii)ウサギ抗ヒトIgG染色細胞(FITCコンジュゲート化)の上位5%の蛍光及びHFAゲーティング、(iii)プロテインA染色細胞の生細胞ゲーティング、(iv)プロテインA染色細胞の上位5%の蛍光及びHFAゲーティングに基づいて単一細胞を選別した。パネル(A)は、96ウェル段階における選別後に達成したクローンの数及び平均力価を示し、示したデータはこの段階において1mg/L以上の力価を有するクローンについてのものである。パネル(B)は、異なる段階(96ウェル、6ウェル及びSF継代1及び2)における各々の副選別(sub-sort)基準からの上位のクローンのIgG力価を示す。パネル(C)は、上位のHFA高プロテインA選別細胞クローン(n=2)及び上位のHFA高抗ヒトIgG選別細胞クローン(n=3)についての15日目における平均バッチ産生IgG力価の比較を示す。
【
図17】HFA及びプロテインAゲーティングを用いるFACSによる計画14についてのクローン細胞株の作製を示す図である。CHO-DG44細胞を、計画14についての抗体をコードするベクターを用いてトランスフェクトし、その後、バルクで選択し、増幅させた。その後、バルク集団をプロテインAで染色し、単一細胞を選別した。左側に生細胞のFSC-H/FSC-Aプロットを、HFA及びLFA集団についてのゲーティングと共に示し、LFA及びHFA集団についてのプロテインA蛍光ヒストグラムを、単一細胞選別のために使用したゲートの概要と共に下に示す。右側のグラフは、96ウェル段階における異なる選別基準についてそれぞれ最上位、10番目、20番目、30番目の最も高く発現するクローンからの抗体力価を示す。
【
図18】抗IgG又はプロテインA染色のいずれかの後のFACSによる樹立細胞株の再クローニングを示す図である。連続再クローニング後のバッチ産生力価を全ての場合について示す。パネルAは、抗IgG染色後の計画3M(親株、BP0044株)についての樹立細胞株の再クローニングについてのデータを示す。1回目の再選別(株C1、生きている高DyLight649 IgG選別)、2回目の再選別(株#8、HFA高FITC IgG選別)及び3回目の再選別(株#8-41、HFA高Dylight649 IgG選別)後に示される最良の産生力価サブクローンデータ。パネルBは、(グラフに示すように)DyLight649コンジュゲートしたIgG又はAlexa647プロテインA染色後の計画12についての樹立株の再クローニングのデータを示す。再度、1回目の選別(株BH83、HFA高プロテインA選別)、2回目の選別(BH84、HFA高IgG選別)及び3回目の選別(BH87、HFA高プロテインA選別)後に示される最良の産生力価サブクローンデータ。
【
図19】「プロテインX」を発現するClonepix由来(灰色のバーで示す)及びFACS由来(黒色のバーで示す)クローンの比較を示す図である。Clonepix及びFACS由来のクローンを、PEコンジュゲートした抗「プロテインX」抗体で染色し、FACSにより分析した。各々の平均蛍光(MFI)をY軸に示し、それは発現レベルの指標である。
【
図20】HFA及びプロテインAゲーティングを用いるFACSによる計画14についてのクローン細胞株の作製-スケールアップデータを示す図である(選別ゲート及び96ウェルデータ分析について
図17を参照されたい)。各選別(HFA、LFA、HFA-高プロテインA及びLFA-高プロテインA)からの最良のクローンについての最良の振盪フラスコ産生力価を示す。Y軸:累積力価、mg/L。X軸:クローン数/選別種類。
【
図21】別のプロジェクト(M)についてのクローン細胞株の作製を示す図である。CHO-DG44細胞を、計画(M)について抗体をコードするベクターでトランスフェクトし、バルクで選択し、増幅させた。その後、バルク集団をプロテインAで染色し、単一細胞を選別した。HFA又はHFA高プロテインAゲートを使用した。結果は以下のように示される:上側パネル:96ウェル力価にて、最上位、10番目、20番目及び30番目の順位のクローンは、HFA(非染色)及びHFA-高プロテインA(HHA-高PrA)について示す。下側パネル:上位の二つのHFA(MU1及びMU5、点線)及びHFA-高プロテインA(MS1及びMS2、実線)についての振盪フラスコ産生/増殖曲線。
【
図22】プロテインA標識及びHFA集団を定義するための高FSC-A対SSC-Aゲートの使用後の最適なFACS選別ゲーティング基準の評価を示す図である。
図22は単一細胞を選別するのに使用されるゲーティングの概略図を示す。Alexa647コンジュゲートしたプロテインAで細胞表面を標識した後の蛍光%に基づく最適な選別ゲーティング基準を評価するために、生細胞(A-P1ゲート)を蛍光強度について分析し、上位10%、5%、2%及び1%のプロテインA染色細胞を定義するためのゲートはセット(B)であった。細胞のHFA亜集団を、FSC-A対FSC-Hドットプロット(C)を用いてゲートし、最終的に上位%はHFAゲート(D)からの蛍光ヒストグラムにコピーした(B)からゲートし、単一細胞選別のために使用する。FSC-A対SSC-Aドットプロットの範囲内からHFA細胞のゲーティングを評価するために、高いFSC-A及び高いSSC-A特性を示す細胞をゲート(A-P9ゲート)し、その後、プロテインA染色(E)のレベルについて分析した。生集団(B)からの上位5%のゲートを、高FSC-A対SSC-Aヒストグラム(E)にコピーし、このゲートを単一細胞選別のために使用した。
【
図23】プロテインA標識及びHFA集団を定義するための高FSC-A対SSC-Aゲートの使用後の最適なFACS選別ゲーティング基準の評価を示す図である。
図23は、96ウェル段階にて及びバッチ振盪フラスコ産生曲線において上記の基準で選別した単一細胞クローンからの生産性を示す。(A)96ウェル段階における平均及び最大力価は、上位10%(白色)、5%(中間の灰色)、2%(薄い灰色)及び1%(黒色)蛍光ゲートから選別した細胞に対して同等である。FSC-A対FSC-H又はFSC-A対SSC-A HFAゲートのいずれかから選別した上位5%のプロテインAで染色した細胞間で、この段階における生産性の差は観察されない。(B)選別基準の各々についての最も高発現のクローンについてのバッチ産生曲線後のIgG力価、振盪フラスコ培養までスケールアップ。生産性に関してわずかな差が選別基準の各々について観察されるが、データは表面染色のレベルと相関があるIgG産生のレベルについての傾向を示す。このデータはまた、HFA集団も、FSC-A対SSC-Aドットプロットを用いて高FSC-A細胞を直接ゲートすることによって同定され得ることを示す。
【
図24】プロテインG染色及びプロテインAとの比較を示す図である。親の非トランスフェクト細胞(上側の列)、バルクトランスフェクト/選択/増幅したプール(真ん中の列)及びクローン細胞株(下側の列)を染色し、示したように分析した。第一の欄:FSC-SSCプロット及び生細胞ゲート。第二の欄:生細胞のプロテインA染色。第三の欄:生細胞のプロテインG染色、第四の欄:HFA細胞のプロテインG染色。第五の欄:HFAゲート。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本明細書において、本発明は、明確且つ簡潔な明細書の記載を可能にするように実施形態を参照して記載されている。本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせ、又は分離させてもよいことを意図するものであり、またこのように理解されるものとする。
【0055】
他に定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術的及び科学的用語は、(例えば細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術及び生化学における)当業者により一般に理解されているものと同様の意味を有する。標準的な技術が、分子、遺伝及び生化学的方法(一般的に、本明細書に参照として組み込まれる、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2d ed. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, N.Y. and Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology (1999) 第4版、John Wiley & Sons, Inc.を参照されたい)並びに化学的方法に使用される。
【0056】
本方法は、産物特異的細胞膜染色のための動物由来の抗産生抗体の代わりに、組換え型プロテインA、プロテインG又はプロテインLなどの非動物由来の非抗体標識を利用する。本発明の方法に使用される成分の全ては、血清又はBSAなどの動物由来の物質を使用せずに産生したので、最終産物の細胞株の外来性及び感染性因子に対する曝露の危険性が顕著に減少される。
【0057】
CHO DG44細胞についての典型的な細胞株生成プロトコルを
図1Aに概説し、これによれば、細胞株はトランスフェクト細胞の低密度の播種により生成される。本明細書に使用されるベクターを
図1Cに示す。G418選択及び培養物増大後、低密度播種の更なる工程を、遺伝子増幅のためのメトトレキサートの添加により実施する。培養増殖後、初期の安定性試験を、最良のクローンの限界希釈又はFACS選別(あらゆる表面染色を用いない)によって単一細胞クローニングの前に実施する。他のCHO細胞株についても同様のプロトコルに従った(適切な選択圧を用いた。このプロセスは典型的に、100又は更に1000もの細胞の播種及び分析を含み得る(例えばWurm、2004、上述)。このプロセスは、抗体の商業的製造に好適な細胞株を首尾よく産生できるが、本発明者らは、表面発現について染色した細胞を選択することが、より高いIgG産生を有するクローンの選択につながる可能性を調査した。クローン株を産生することに加えて、本発明者らは、このプロセスが、より高い分泌株を同定するのに必要とされる時間及びスクリーニングするクローンの数を減少させ得ると考えた。
【0058】
本発明の一実施形態に係る改良されたプロトコルを
図1Bに概説し、これによれば、(G418添加及びヌクレオシド除去による)選択及びメトトレキサート遺伝子増幅をバルクトランスフェクト集団で実施し、かかるバルクトランスフェクト細胞培養物を静置培養から振盪フラスコに迅速に移動させる。次いで細胞を染色し、表面IgGを最も高発現するクローンをバルク集団から単一細胞選別する。あるいは、又はそれに加えて、細胞をまた、それらの前方散乱(FSC)特性に基づいて選別し、これにより、より高い平均FSC-Aを有する細胞を選択/選別する。最も高発現するクローンを単離する場合と同様に、この新規の方法により、後でバッチ産生培養物中で高レベルのIgGを産生するクローンの単離が可能となる。この方法は、96ウェル段階と同程度の早期から更なる開発のための高発現細胞の同定を可能にし、その結果として、100未満のクローンの分析、並びに24未満のクローン、及び多くの場合、わずか10クローンのスケールアップが得られる。
【0059】
以下の実施例は、動物由来のタンパク質標識法(ウサギポリクローナル抗ヒトIgG)を用いる典型的な方法によって生成されたデータを、動物由来のタンパク質/成分を完全に含まない新規方法(組換え型プロテインAで標識している)と比較する。加えて、それらは、より高いFSC-Aの特徴を有する細胞を選択/選別する利点を実証する。
【0060】
フローサイトメトリー装置は、その装置が利用可能なレーザー及び検出器の数に依存する最大数のパラメーターを用いて前方散乱(FSC)、側方散乱(SSC)及び蛍光(FL)などのいくつかのパラメーターを検出できる。FSC(小角度前方散乱としても知られている前方散乱)は、細胞サイズの尺度であり、小角度、典型的に0.5〜5°におけるレーザーからの光の散乱と定義される。より高いFSCはより大きな細胞又は事象と相関する。
【0061】
SSC(直交散乱、90°散乱、広角度散乱又は大角度散乱としても知られている側方散乱)は、15〜150°の間のレーザーからの光の偏向と定義され、細胞の粒度と関連付けられる。従って、選択した特徴を有する特定の細胞は、サイトメーターにより生成したデータプロットをゲートすることにより選択できる。
【0062】
フローサイトメトリーにおける各パラメーターは、三つの値:最も広範に使用される値である、シグナルの面積(A)、シグナルの高さ(H)及びシグナルの幅(W)により特徴付けられる。シグナルが時間に対してプロットされる場合、その面積、幅及び最大の高さは
図9Aに示すように決定される。FSCの例として、FSC-A(FSCとも述べられる)、FSC-H及びFSC-Wが存在する。本出願の目的のために、パラメーターの名称の隣に-A、-H又は-Wがない場合、それは面積の値を指す。
【0063】
本明細書で使用する場合、用語HFA又は(高前方散乱領域)とは、集団内のより大きな(より多量の)細胞(「事象」としても知られている)を指す。これらの細胞は顕微鏡により調査され、主に大きな単一細胞からなり、細胞は凝集しない。それらは有糸分裂/増殖細胞であり得る。本明細書において、この亜集団から高発現細胞を選択することは、集団内のより小さな細胞から選択する場合(又は単に産物に特異的な直接染色において高蛍光/シグナルに基づいて選択する場合)よりも高いポリペプチド産生を示す細胞を選択する可能性の増加をもたらすことを示す。これらの細胞の正確なサイズは、勿論、細胞の種類、増殖条件などに応じて変化する。HFA又は大きな細胞亜集団は、当業者により細胞の各々の特定の集団について確立され得る。このように、本明細書において、選択する工程は、生細胞集団内の別の細胞集団(HFA集団)を同定する工程と、この別の集団から細胞を選択するようにFACSサイトメーター又は分析器でゲートする工程と、この別の集団から細胞を選択する工程とを含んでもよい。上述のように、この亜集団の細胞が、サイトメーターにおいてゲートされ、選択され得る種々の方法が存在する。
【0064】
細胞の任意の特定の集団に関して、HFA細胞亜集団は、平均FSC-Wより高い、又は平均FSC-Aより高い生細胞である。前述のように、選択される細胞の数は、最終的にクローンし、培養することを目的とする細胞の数、並びにそれにより、利用可能な資源及び時間に依存する。当業者は細胞集団内から最も大きな細胞を選択するために選択基準を定義できる。
【0065】
しかしながら、典型的には、HFA亜集団は、生細胞集団の中で、最も高いFSC-W値を有する20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%又はそれ未満の細胞である。
【0066】
HFA細胞亜集団の平均FSC-Aもまた、集団内の全ての生細胞の平均FSC-Aより高い。典型的には、HFA亜集団は、生細胞亜集団の中で、最も高い平均FSC-A値を有する20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%又はそれ未満の細胞である。
【0067】
平均SSC-Aもまた、平均より高くなり得る。HFA亜集団はまた、多くのSSC-A細胞を含み得る。
【0068】
典型的には、HFA細胞亜集団のFSC-Hは、集団内の全ての生細胞のFSC-Hと実質的に同一である。一実施形態において、HFA細胞亜集団の平均FSC-Hは、生細胞集団中の細胞の残りの約100%(+/-)10%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%のFSC-Hである。
【0069】
一実施形態において、HFA細胞亜集団は、最も高いFSC-W及び最も高い平均FSC-Aを有する生細胞集団中の上位20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%の細胞であり、任意選択でその集団の平均と実質的に同一のFSC-Hを有する。
【0070】
生細胞集団は、FSC-A対SSC-Aのプロットによって当業者により決定され、ゲートされ得る。任意選択で、それらはまた、PI(ヨウ化プロピジウム)での染色時にPI陰性細胞としての追加のプロットにおいて決定され得る。生細胞のHFA亜集団は、FSC-H対FSC-Aプロット(
図9C)、FSC-Wヒストグラム(
図10A)、FSC-W対FSC-Aプロット(
図10B)、又は任意選択でFSC-A対SSC-Aプロット(
図22)によって決定され、ゲートされ得る。
【0071】
一実施形態において、HFA亜集団の平均FSC-AはLFA亜集団の1.8(+/-0.1)倍である。一実施形態において、HFA亜集団の平均FSC-HはLFA亜集団の1.1(+/-0.1)である。
【0072】
対照的にLFA(低前方散乱領域)という用語は、集団内のより小さな(より少量の)細胞を指す。上記と一致して、当業者は、任意の所与の細胞の集団に関して、LFA細胞集団を決定できる。
【0073】
本明細書で述べられる場合、「高」又は「最も高い」発現をする細胞は、細胞表面上の目的のポリペプチドのより多い又は最も多い量を発現する細胞集団内の細胞である。典型的には、かかる細胞は、それらが、大規模培養条件で増殖した場合、目的のポリペプチドの高力価を生じる可能性がより高いとみなされるので、クローニングのために選択される。
【0074】
集団内の細胞は更に、HFA及びLFA細胞に分けられてもよい。本発明の一実施形態によれば、HFA細胞もまた、培養条件で増殖した場合、目的のポリペプチドの高力価を生じることが観察されるので、かかる細胞が選択される。更なる実施形態において、高発現HFAが選択される。
【0075】
集団から「高発現体」として選択される細胞の数(又は割合)は、勿論、全体として集団中の細胞の数、その集団内の細胞の中のポリペプチド発現の範囲及び選別される細胞の数に依存する。典型的には、当業者は、細胞集団の最も高い発現の5〜20%、任意選択で細胞集団の最も高い発現の15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%を選択する。つまり、当業者は、細胞の表面上のポリペプチドに結合した最も多い量の標識を含む細胞集団の約20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%又は1%又は1%未満を選択する。
【0076】
(例えば細胞の表面上のポリペプチドに結合した標識の)「相対サイズ」又は「相対量」に関連して本明細書で使用される、「相対」という用語は、細胞の集団全体について推定されるその可変物の値と比べて、特定の細胞に対する可変物の値を意味することを意図する。通常、細胞の特定の割合は、細胞選別プロセスの前に、選択した細胞亜集団を選択するための適切なゲーティング値を定義するために、操作者が細胞サイズ又は蛍光などの集団内の選択した可変物を分析できるサイトメーターで分析される。選別プロセスの間、サイトメーターは、全体として細胞集団に対する可変物の値と比べて、特定の細胞についての可変物(即ち、サイズ又は蛍光)の値を決定する。FACS中の細胞は、フローサイトメーターにより記録され、表示される個々の事象として定義される。
【0077】
「抗体」という用語は、最も広い範囲の意味で本明細書において使用され、免疫グロブリン様ドメインを有する分子を指し、モノクローナル、組換え型、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、二重特異性及びヘテロコンジュゲート抗体;単一可変ドメイン、ドメイン抗体、抗原結合断片、免疫学的に有効な断片、一本鎖Fv、ダイアボディ、Tandabs(商標)など(代替の「抗体」の形式の概要に関しては、Holliger and Hudson、Nature Biotechnology、2005、Vol 23、No.9、1126-1136を参照されたい)を含む。反対に、本発明の方法に使用される標識を説明する「非抗体」という用語は、標識中に任意のかかる分子が存在しないことを示す。誤解を避けるために、プロテインA、プロテインG及びプロテインLは非抗体(及びそれ故また、非ポリクローナル抗体)標識である。
【0078】
「単一可変ドメイン」という語句は、異なる可変領域又はドメインとは独立して抗原又はエピトープを特異的に結合する抗原結合タンパク質可変ドメイン(例えば、V
H、V
HH、V
L)を指す。
【0079】
「ドメイン抗体」又は「dAb」は、抗原に結合できる「単一可変ドメイン」と同様とみなされ得る。単一可変ドメインは、ヒト抗体可変ドメインであってもよいが、また、齧歯動物(例えば、WO00/29004において開示されているように)、テンジクザメ及びラクダV
HH dAbsなどの他の種由来の単一抗体可変ドメインを含む。ラクダ類V
HHは、軽鎖を天然に欠いている重鎖抗体を産生する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、及びグアナコを含む種由来の免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。かかるV
HHドメインは、当該技術分野において利用可能な標準的な技術に従ってヒト化されてもよく、かかるドメインは「ドメイン抗体」とみなされる。本明細書で使用する場合、V
Hはラクダ類V
HHドメインを含む。
【0080】
本明細書で使用する場合、「ドメイン」という用語は、タンパク質の残部とは独立した三次構造を有するフォールドされたタンパク質構造を指す。一般に、ドメインはタンパク質の明確な機能特性に関わり、そして、多くの場合、タンパク質及び/又はドメインの残部の機能を喪失することなく、他のタンパク質に加えるか、除去するか、又は伝達することができる。「単一可変ドメイン」は抗体可変ドメインの特徴的な配列を含むフォールドされたポリペプチドドメインである。それ故に、単一可変ドメインには、完全な抗体可変ドメイン、並びに、例えば1又は複数のループが、抗体可変ドメインの特徴でない配列により置き換えられている修飾された可変ドメイン、或いは末端切断されているか又はN-若しくはC-末端伸長部を有する抗体可変ドメイン、並びに全長ドメインの少なくとも結合活性及び特異性を保持する可変ドメインのフォールドされた断片が含まれる。ドメインは異なる可変領域又はドメインとは独立して抗原又はエピトープに結合できる。
【0081】
クローン集団は、単一の共通の祖先の子孫である複数の細胞、例えば全ての他の細胞から単離された単一の起源細胞の子孫である細胞の集団である。本明細書で使用する場合、クローン条件は、クローン集団内で一つの細胞のみを首尾よく増加させ得ることを確実にするのに好適な条件である。典型的に、これは、その容器又はウェル中の培養環境がクローン性増殖を支持できる単一容器又はウェル内に一つの細胞のみを入れることによって行われる。
【0082】
後に記載した実施例において以下の方法を使用した。
【0083】
この研究に利用したベクター:哺乳動物細胞において(プロテインA、G又はLを結合できる)生物製剤抗体及び抗体に関連した種及び他のタンパク質を発現させるために、標準的な哺乳動物発現及び選択カセットをこの研究の全ての態様において利用した(ベクターの代表的な概略図に関して
図1Cを参照されたい)。標準的なオリゴヌクレオチド及び遺伝子合成、クローニング、サブクローニング及びシークエンシングの方法を、かかる発現カセットのための設計において利用した。タンパク質産物のORF設計の際、Kotsopoulouら(Kotsopoulou Eら J Biotechnol 2010;146(4):186-93及びWO2009/024567 A1)に記載されている方法に従ってコドン最適化を実施した。代表的なORF CAIが0.9より大きい、かかるコドン最適化は、発現が十分に高くなることを確実にするのに役立つ。
【0084】
発現カセットの細胞への送達:一つ又は複数の所望の発現カセットの所望の細胞宿主への送達に好適な当該技術分野における周知の多くの方法が存在する。一部のものはトランスフェクションを必要とするのに対して、他のものはウイルスベクター形質導入などの他の方法を利用する。任意のかかる方法が本発明の目的のために利用されてもよい。本明細書に典型的に記載される抗体及び抗体関連生物薬剤の発現のために、本発明者らは、プラスミドベースの発現カセットを利用し、次いでそれを脂質(例えばリポフェクタミン、Invitrogen)を用いて、又はエレクトロポレーション(例えばGene Pulser II、Biorad)により、又は最も好ましくはそれらの組合せ(例えばAmaxa、Lonza)によりトランスフェクトする。Amaxaの方法は、本発明者らにより、安定なポリクローナルプールの迅速な選択及び好適にはプロテインA染色試薬を用いる検出についての高発現を確保するための十分に高いトランスフェクション率を確保することが見出されているが、エレクトロポレーションもこれに関して成功裏に使用されている。
【0085】
細胞宿主及び組織培養:任意の哺乳動物細胞を本発明の目的のために利用できる。典型的には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、生物製剤を製造するのに長く且つ証明された実績を有するため、それらを、生物製剤タンパク質産物を発現させるために利用する。多くの異なる変異CHO亜株が存在するが、最も典型的には、CHO-DG44又はCHO-K1宿主が利用される。CHO細胞に加えて、生物製剤を作製するために利用される他の細胞には一般に、細菌細胞、酵母細胞、不死化ヒト細胞(例えば293細胞又はPerC6細胞)、及び不死化非ヒト哺乳動物細胞(例えばNS0)が含まれる。本明細書に記載しているこのような細胞の培養のために標準的なADCF培地を使用した。
【0086】
エレクトロポレーションによるトランスフェクション:
a.DNA調製:等量(15μg)の重鎖及び軽鎖発現ベクターを、200μl容量のエッペンドルフ反応中で(Not Iを用いて)完了するまで直鎖化し、次いでエタノール/酢酸ナトリウム沈殿した。次いでペレットを70%エタノール中で洗浄し、風乾し、50μLの分子生物学グレードの水に再懸濁した。
【0087】
b.トランスフェクション前のCHO DG44細胞の調製:健康な増殖中の細胞、1.2×10
7細胞(トランスフェクション当たり)を15又は50mlチューブ中で遠心(2〜10分間、1000rpm)し、15mlの氷冷PBS/スクロース中で洗浄し、再度遠心し、次いで800μlの氷冷PBSスクロース中に再懸濁した。次いでこの細胞懸濁液を、予め調製したDNAに添加し、15分間氷上に置き、その後、冷却したエレクトロポレーションキュベットに移した。
【0088】
c.エレクトロポレーション:調製したDNA及び細胞を含有するキュベットを、25μF及び0.38kVに設定したGene Pulser中でエレクトロポレーションし、次いで10分間氷に戻した。次いで細胞を取り出し、240mlの非選択培地に添加し、次いで40×96ウェルディッシュに非選択培地中で2〜5×10
3細胞/ウェル(即ち、50μL/ウェル)で播種した。次いでプレートを37℃及び5%CO
2で48時間インキュベートした。
【0089】
d.選択、増殖及びクローン同定:エレクトロポレーションの48時間後、150μLの選択培地を各ウェルに添加した。この選択培地はG418を含有し、ヌクレオシドを含有していない。任意選択で、その1週間後、140μlの培地を、定着した細胞層を崩さないように新鮮な選択培地と注意深く交換し、3〜4週間後、全ての増殖中のクローン(典型的には0.1コロニーの増殖/ウェル、即ち96ウェルプレートあたり10ウェルでの増殖)を、抗体産生について力価測定した。次いで同定した上位にランキングしたクローン(典型的には20〜100)を、同じ選択培地中で24ウェルディッシュから6ウェルディッシュまでスケールアップした。次いでこれらのクローンを96ウェルディッシュ(96ウェル/クローン)に1000細胞/ウェルで播種し、次いで200μl/ウェルの容量で5nMのメトトレキサートも含有する選択培地にて選択した。更なる2〜3週間後のインキュベーション後、最良クローンを再度スケールアップした。50nM及び150nMメトトレキサートを用いて第2及び時々第3ものラウンドの増幅を実施して、高力価細胞株を得た。発現させるORFがコドン適合化されている場合(Kotsopoulou Eら J Biotechnol 2010;146(4):186-93及びWO2009024567 A1に記載されている)、5nMでの単一ラウンドの増幅で十分であった。産生能について最終的なクローンを評価するために、次いで最後のメトトレキサート増幅工程における最良クローンをスケールアップし、生成される産物の力価及び質について振盪フラスコ産生モデルで評価した。
【0090】
Amaxaトランスフェクション:CHO DG44(又はCHO-K1)細胞をトランスフェクションの前日に継代した。トランスフェクションの日に、細胞をViCell(Beckman-Coulter)により計数し、5分間1000rpmにて遠心分離によりペレットにし、その細胞ペレットを滅菌PBSで一度洗浄した。次いでCHO細胞を、Amaxaヌクレオフェクション(nucleofection)緩衝液中に10
7〜10
8細胞/mLにて再懸濁し、次いで10
6〜10
7個の細胞を、等量の重鎖及び軽鎖プラスミドを用いて、典型的には、CHO細胞懸濁液用の製造業者により推奨されるプロトコルを使用して目的の抗体をコードする1〜6μgの軽鎖プラスミド及び1〜6μgの重鎖プラスミドを用いて滅菌キュベットにトランスフェクトした。
【0091】
バルク選択及び増幅:トランスフェクション直後、いくつかの別個のAmaxaトランスフェクション(合計30回まで)を1〜3つのプールでプールし、新鮮な培地に添加し、滅菌T75cm
2組織培養フラスコ中で増殖させた。エレクトロポレーションに関して、(上記のように)単一のエレクトロポレーションを細胞の単一のプールとして使用した。この段階で選択培地は使用しなかった。トランスフェクションの48〜64時間後、G418を含有し、ヌクレオシドを含まない培地をトランスフェクタントの選択のために添加した。続いて、培養物を一週間に二回計数し、必要に応じて培地を添加/交換して容量を調整することにより、可能な場合には、生存数を0.5e6より多い細胞/mlに維持した。可能な限り早く、通常、トランスフェクション後の5〜14日の間に、生存細胞数に応じて、細胞を振盪フラスコに移して37C、5%CO
2、130〜150rpmで増殖させた。70%より多くの生存細胞を回収後、通常、トランスフェクションの2.5〜4週間後、メトトレキサートを5nMの最終濃度まで培地に添加した。この段階で、培地中のG418の継続は任意選択である。10〜25日の間の期間のメトトレキサートに対する曝露後、表面抗体発現について細胞を分析し、続いて、FACS Aria I(Becton Dickinson)を使用して単一細胞を選別した。
【0092】
FACSに使用するための蛍光試薬(IgG及びプロテインA)の調製
・DyLight649-IgG:ウサギにおいて産生したアフィニティー精製したポリクローナル抗IgG(Rockland,カタログ番号#609-4102)を、市販のキットであるDyLight649 Thermoカタログ番号#53050を使用して以下のように標識した:50mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)中の抗体を、標識するためにDyLight649バイアルに添加し、10回、反転させることにより穏やかに混合した。結合していない色素を除去するためにフィルターカラムに通過させる前に、試料を、暗所で室温にて60分間インキュベートした。標識した試料を回収し、IgG濃度を測定し、その試料を-20℃にて保存するためにアリコートにした。
【0093】
・FITC-IgG:ウサギにおいて産生したアフィニティー精製したフルオレセイン(FITC)にコンジュゲートしたポリクローナル抗IgGをRockland(カタログ番号#609-4202)から購入した。
【0094】
・Alexa647-プロテインA:これはInvitrogen(カタログ番号P21462)から購入した。プロテインAは、1mg/mLまで滅菌PBS中で凍結乾燥したタンパク質から再構成し、使用前に-20℃にて凍結前に無菌でアリコートにした。使用当日に、凍結したアリコートを染色する直前に解凍し、追加の滅菌PBSを用いて0.1mg/mLの作業ストックに更に希釈し、その後、染色する細胞に適切な量まで添加した。
【0095】
・代替として、及び(Repligen プロテインAとして)以下の実施例に具体的に記載した場合、プロテインAはRepligenから購入し、製造業者の指示書のように、Invitrogen製のAlexaFluor647標識キット(カタログ番号A20173)を使用して標識した。
【0096】
・蛍光標識試薬を上記のように使用したが、間接標識も使用できる。例えば、ビオチン化試薬は、FACS分析/選別のための二次試薬として蛍光色素がコンジュゲートしたアビジン又はストレプトアビジンと共に使用できる。
【0097】
細胞染色プロトコル:
a.FITC又はDyLight649コンジュゲート化抗IgGを用いる染色: FACSの流れを遮断し得る細胞の集合を除去するために、染色する細胞を計数する前に滅菌ナイロンの40μm篩に通した。計数後、細胞を滅菌PBS中で一回又は二回洗浄し、その後、蛍光標識した抗産物IgGとインキュベートした。洗浄により、蛍光シグナルを減少させ得る、分泌された非細胞結合IgG産物を除去する。洗浄は、各FACSチューブ内に10
6細胞/チューブで細胞の正確な容量をピペット操作することにより実施し、次いで細胞にPBSを添加し、1000rpmにて5分間、細胞を遠心分離した。最終洗浄上清をデカントした後、抗ヒトIgG抗体を細胞ペレットに直接添加し、暗所で20分間、氷上でインキュベートした。これらのタンパク質を用いる細胞の最適な染色を、5〜10μgの抗ヒトIgG/10
6細胞で達成し(
図5を参照されたい)、非常に良好なシグナル対ノイズ比を得た。染色後、1〜2回の洗浄をPBS又は細胞増殖培地中で実施し、その後、増殖培地中で細胞ペレットを再懸濁し、分析及び/又は選別の準備ができるまで暗所にて氷上でチューブを保存した。
【0098】
b.Alexa647 プロテインAを用いる染色:FACSの流れを遮断し得る細胞の集団を除去するために、染色する細胞を計数する前に滅菌ナイロンの40μm篩に通した。計数後、細胞を滅菌PBS中で一回又は二回洗浄し、その後、蛍光標識したプロテインAとインキュベートした。洗浄により、蛍光シグナルを減少させ得る、分泌された非細胞結合IgG産物を除去する。洗浄は、各FACSチューブ内に10
6細胞/チューブで細胞の正確な容量をピペット操作することにより実施し、次いで細胞にPBSを添加し、1000rpmにて5分間、細胞を遠心分離した。二回目の洗浄上清をデカントした後、プロテインAを細胞ペレットに直接添加し、暗所で少なくとも20分間、氷上でインキュベートした。IgG試薬で達成したものより多くの低いシグナルを得た。より高いバックグラウンドに加えて、染色を観察し、結果として、シグナル対ノイズ比はIgGについてのものより低かった。しかしながら、0.25〜1μgのプロテインA/10
6細胞を使用した場合、細胞の最適染色を達成した(
図5を参照されたい)。染色後、二回の洗浄をPBS又は細胞増殖培地中で実施し、その後、600μlの増殖培地/チューブ中で細胞ペレットを再懸濁し、分析及び/又は選別の準備ができるまで暗所にて氷上でチューブを保存した。
【0099】
選別プロトコル:
・フローサイトメトリー:全てのFACSに基づいた選別に関して、本発明者らはFACS Aria(Becton Dickinson, Oxford, U.K.)を利用し、選別後のクローンの滅菌性を確実にするために70%エタノールを使用して滅菌サイクルを実施した。残留エタノールを除去するために滅菌PBSで機器をフラッシュした後、選別するための装置を最適化するためにBecton Dickinson Accudropビーズ及びDivaソフトウェアv5.0.3を使用して滴下遅延(drop delay)を設定した。FACS選別前に、細胞又は樹立細胞株の非染色及び/又は染色ポリクローナルプールを滅菌ナイロンの40ミクロンメッシュを通して篩にかけて、流れを遮断する細胞の大きな集団を除去した。非染色及び染色親(非トランスフェクト)CHO細胞を、検出電圧を設定するため、また、以下の節に記載したように正確なゲーティングのために使用した。
【0100】
・FACS Aria設定:試料を、単一細胞選別についての低い設定及び低いシース流圧(sheath fluid pressure)で100μmノズルを使用して選別した。レーザー光を、FSC-対SSCプロットにおいてCHO細胞の最良の分解能を得るために1.5中性密度フィルターに通過させた。488nm青色レーザーからのシグナルを、FITC及びPIのそれぞれについて530/30又は575/25バンドパスフィルターを用いて検出した。APCからの蛍光を、660/20バンドパスフィルターを用いて赤色ダイオード633nmレーザーからの励起後に捕捉した。選別するための安定にトランスフェクトした(選択し、又は選択し且つ増幅させたいずれかの)細胞を、保存データ上で最適化した選別のための試料データ及びゲートを読み取り、記録することにより分析した。選別する試料を、選別に必要とするまで、染色タンパク質の内在化及び蛍光シグナルの分解を最小化するために暗所で氷上に維持した。捕捉プレートは選別当日に準備し、必要とするまで、高湿度で37℃、5%CO
2に維持した。FACS Aria装置を、96ウェル捕捉プレートの各ウェルの中心に送達するために最適化した。プレートを選別し終えた直後、通常は1分以内に、選別したプレートをインキュベーターに戻した。
【0101】
本発明の所望の細胞集団を同定し、単離するための選別ゲーティングストラテジー:
図2は、以下の実施例において行ったゲーティングストラテジー決定のフロー図を提供する。
【0102】
適切な非染色又は染色対照細胞(非トランスフェクトCHO-DG44細胞及び/又は非染色試料)を使用してゲートを設定した。試料を記録し、最初に生細胞ゲートを確立した。細胞のヨウ化プロピジウム染色(Becton Dickinsonから購入した50μg/mL PIストックの7μl/チューブ)もまた、一部の場合において、生細胞集団と死細胞集団とを区別するために実施した。しかしながら、FSC-SSCゲーティングは、生細胞と死細胞とを区別するのに十分であることを見出したので、PI染色はほとんどの場合において行わなかった。FSC-A対FSC-Hの更なるドットプロットを一部の実験について設定し、実施例8に記載されるようにHFA亜集団を選択するためにゲートを描いた。次いでFITC-A又はAPC-Aヒストグラムを、生ゲート細胞について並びに一部の場合、HFA及びLFA細胞について設定した。ほとんどの場合において、上位5%又は2%の蛍光「生」細胞の間で選別ゲートを設定し、必要な場合、このゲートをLFA及びHFA細胞のFITC-A又はAPC-Aヒストグラム上にコピーした。
図11は一部の例示した選別プロットを示す。FSC-SSCゲーティングもまた、実施例14及び
図22に示すようにHFA亜集団を選択するのに好適である。
【0103】
IgG力価分析:以下に記載した二つの方法を、96ウェル及び一部の6ウェル力価分析に使用した:
a.IGEN:96ウェルプレートから得た培地試料に関して、抗体力価を、製造業者の推奨及び標準的な方法を用いてIGEN M-Series M8/384分析器(Bioveris, MaryLand, USA)で自動化96ウェルサンドイッチELISA様式の方法により決定した。サンドイッチは、ストレプトアビジンでコーティングした磁性コーティングビーズ、ビオチン化プロテインA及びルテニウムで標識したF(ab)2断片から構成された。次いで試験試料のために生成したシグナルを、抗体参照基準物の連続希釈物と比較した。96ウェル培養における細胞増殖変動性と組み合わせたアッセイの変動によって高感度アッセイであるが、アッセイ中間物の精度及び再現性は、高収率の増幅した細胞株についてのこのアッセイに関して比較的低い。
【0104】
b.MSD ELISA法:可溶性IgG測定を、プロテインAでコーティングしたELISAプレートを使用してMSDアッセイ(Mesoscale Discovery, U.S.A.)により実施した。アッセイは製造業者の指示書に従って実施した。手短に述べると、プレートを最初にブロックして、室温にて60分間、専用の遮断剤(3%のブロッカーA)を用いて非特異的結合を減少させた。次いでプレートを、3回連続して0.05% Tween-20を含有する150μl/ウェルのPBSで洗浄し、洗浄の間に紙タオルで吸い取った。IgG対照標準物を調製し、以下の濃度:5、4、3、2、1、0.5、0.25、0.125、0.0625、0.031、0.015及び0mg/Lで25μl/ウェルにて播種した。試験する試料もまた、25μl/ウェルに添加した。Tag-IgG検出抗体を、抗体希釈液中で0.255μg/mLに希釈し、75μl/ウェルで添加した。プレートを室温にて60分間、750rpmで振盪した。3回より多い洗浄を上記のように実施し、150μl/ウェルの1×リード緩衝液を添加し、プレートをMSD1200プレートリーダーで読み取った。未知の試料についてのIgG力価を、MSDプレートリーダーソフトウェアを使用して標準曲線から逆算した。
【0105】
c.フラスコを振盪している間に得た培地試料及びバイオリアクター産生モデルのために、Beckman Coulter画像システム(Buckinghamshire、英国)及び製造業者の推奨及び標準的な方法を使用して反応液中の不溶性免疫沈降素により光シグナルが散乱される比濁分析法を用いて抗体力価を測定した。試験試料について生成したシグナルは、再度、抗体参照基準の連続希釈物と比較される。
【0106】
バイオリアクター振盪フラスコ産生モデル(拡張バッチ産生モデル)もまた、増殖曲線と称される:典型的に、120mlの容量で通気口付きの蓋を備える標準的な250mlの組織培養振盪フラスコ又は60mlの容量で通気口付きの蓋を備える標準的な125mlの組織培養振盪フラスコのいずれかにおいて動物由来成分を含まない培地中で細胞を200,000〜800,000細胞/mlにて播種した。次いでそれらを二酸化炭素富化空気中で攪拌しながらインキュベートして、細胞増殖を促進し、維持する温度に設定した。各クローンを、種々の条件、例えば種々の温度条件で試験した。本明細書に報告した結果において、試験した(標準的な条件にわたって)各クローンについての最も高い力価を例示する。典型的には、本明細書に報告したように産生モデルエンドポイント力価を、標準的なVi-Cell CHOパラメーター設定及び製造業者の推奨したプロトコルを使用するVi-Cell(Beckman)でのトリパンブルー色素排除ベースのアッセイにより決定した場合、細胞生存が約50%まで落ちる時点で記録した。通常、このエンドポイント力価は10〜20日のインキュベーション後に生成される。
【0107】
小規模産生(Duetz)モデル(拡張バッチ産生モデル):上記のバイオリアクターモデルに関する。典型的に、24ウェルプレートにおいて1.5mLの最終容量で動物由来の成分を含まない培地中で細胞を800,000個の細胞/mlにて播種した。
【0108】
細胞株安定性評価:細胞株の関連増殖培地中で50継代まで細胞株を培養し、バッチ産物曲線を、生産性の傾向を評価するために上記の段落に記載したように約10継代ごとに設定した。
【0109】
単一細胞クローニング後のクローン増殖及び選択:種々の方法が哺乳動物細胞のクローニングに関する文献に存在する(例えば、Brezinsky 2003、同上又はHugin 1997、J Immunol Methods、205、211-212を参照されたい)。かかる方法は本発明の使用に好適である。哺乳動物細胞をクローニングするための更なる新規の方法は以下に記載され、本明細書で使用されている。以下の方法/条件を本発明の目的のために使用し、例示としてのみ使用する。
【0110】
実施例に記載するように、連続希釈又はFACS選別のいずれかにより単一細胞を96ウェルプレート中で個々のウェルに沈殿させた。プレートはあらかじめ、100〜200μl/ウェルの25〜50%の細胞を含まない馴化培地、非馴化培地、又は支持細胞を含有する培地のいずれかを含有していた。馴化培地は、新鮮な細胞増殖培地を、増殖中の非トランスフェクト親細胞の3〜4日の古い培養物から収集し、遠心分離し、0.2μmの濾過した培地と混合することにより生成した。非馴化培地は、実施例に記載したように、トランスフェリン又は組換え型アルブミンなどの補足物を添加した、又は添加していない、クローニング前に細胞を増殖させていた培地と同じ組成の新鮮な培地であった。使用する場合、支持細胞は、通常、クローニングの0〜24時間前に500〜2500細胞/ウェルで沈殿させた非トランスフェクト親CHO細胞であった。以下の実施例において、選択及び増幅剤である、400〜1000μg/mlのG418及び最終濃度5nMのメトトレキサートを、単一細胞の沈殿から0〜64時間後に添加し、その後、培地中に維持した。任意選択で、96ウェルプレート中での単一細胞の沈殿後、一週間に一度、140μlの培地を、定着した細胞層を崩さないように新鮮な培地と注意深く交換し、2〜4週間後、全ての増殖しているクローンを24ウェルにスケールアップした。一部の場合においてクローンを(主に樹立株について)無作為に選択し、他の場合において300までを抗体産生について96ウェルにて力価測定し、少量のみ、典型的に20〜100を24ウェルにスケールアップした。次いでクローンの評価は、スケールアップするための通常の細胞株作製プロトコル及び産生評価に従った。
【実施例1】
【0111】
細胞表面IgG発現のための染色がない細胞選別-既存細胞株のサブクローニング
(SCC/FSC)+/-(PI/FSC)プロット(計画5d、7b、10)に基づいて、もっぱら生細胞についてのゲーティングに関して、初期のFACS選別を、モノクローナル抗体を発現する樹立細胞株で実施した。標準的な単一細胞選別プロトコルを使用して細胞をクローニングし、
図3(a)の結果は、任意の抗IgG細胞表面染色の非存在下で高分泌型をクローンアウトする能力を示す。そのデータは、計画5dについて2倍の力価、計画10について1.5倍の増加、及び計画7bについて2回の連続選別後、力価の3.5倍の増加を示す。計画6dは限界希釈によりクローニングした。
【0112】
可能性のある高分泌型の選択を可能にすることに加えて、単一細胞選別はまた、計画7bについて
図3(b)に示すように50継代にわたって良好な安定性を有する株の誘導を導く。これらのFACS研究から生成したデータに勧められて、その後の研究は、安定にトランスフェクトした集団及び/又は樹立細胞株由来の最も高い分泌型に焦点を当て、それらをクローンアウトしようとして表面IgGについての染色を進めた。
【実施例2】
【0113】
バルクトランスフェクション/選択/増幅及び細胞表面IgG発現を染色することによる発現レベルの検出。
【0114】
抗体などの生物製剤を発現する高産生細胞株を同定及び選別するための最新の直接染色FACS選別プロトコルは動物由来の成分を利用する。典型的なプロトコルを以下に記載する。
【0115】
ウシ血清アルブミンを含有する緩衝液中のアフィニティー精製した抗ヒトIgG(H+L)(Rockland, Gilbertsville, PA 19525 USA)を利用した。この抗体は、最初は、ウサギ抗血清として生成させ、ウシ血清アルブミンを含有する緩衝液中での最終形成前にアガロースビーズに結合したヒトIgGを使用してイムノアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。抗体はFITC又はDyLight649にコンジュゲートさせた。
【0116】
上記の方法の節において記載したように、CHO DG44細胞を、Amaxaトランスフェクションレジームを使用して計画10の軽鎖及び重鎖をコードするプラスミドを用いてトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を選択し、バルクで増幅させた。
図4は、非トランスフェクト細胞の抗体染色後(
図4A)及びG418選択後にトランスフェクトした細胞(
図4B)並びに選択及びメトトレキサート(5nM)増幅の両方の後(
図4C)に達成した蛍光レベルを示す。この図は、細胞表面IgG発現が、この方法を用いてバックグラウンドレベルより上で検出可能であることを実証する。実際に、増幅前でさえ、蛍光の「シフト」は非トランスフェクト細胞からトランスフェクト細胞を分離するのに十分である。
【実施例3】
【0117】
プロテインA 対 抗血清染色
次に本発明者らは、プロテインA及び抗ヒトIgG(ポリクローナル)の両方を使用して表面染色を比較した。本発明者らは、プロテインAでの染色が減少したシグナル及びより低いシグナル対ノイズ比を生じることを観察した。このことは、標準的なIgG染色試薬に対するプロテインAの減少した親和性によると考えられた。しかしながら、本発明者らは染色プロトコルを最適化しようと試みた。この目的のために、樹立細胞株(計画10)を使用して、使用する最適量のプロテインAを定義した。細胞を染色前に2回洗浄して、トランスフェクトした細胞から可溶性の分泌抗体を除去し、次いで10
6個の細胞の試料を染色する、可変量の抗体又はプロテインAのいずれかを用いて染色し、その後、2回の更なる洗浄により過剰な抗体/プロテインAを洗い落とし、サイトメトリーを実施するまで氷上に維持した。この染色レジームを使用して検出した蛍光レベルを
図5に示す。染色のための最適量は、抗ヒトIgGについて5〜10μg/10
6個の細胞又はプロテインAについて0.25〜1μg/10
6個の細胞であると計算し、全ての場合において染色は暗所において氷上で20分間実施した。
【0118】
最適化の後でさえも、
図5におけるデータは、プロテインAがポリクローナル抗IgG抗体より低いレベルの蛍光を与えることを示す。このことに対する一つの説明は、そのポリクローナルの性質に起因して、抗体により認識されるより多くの数のエピトープが存在する可能性が高いことである。
【0119】
続いて、IgG対プロテインA染色により生成されるシグナルを樹立株及びバルクトランスフェクションの両方について分析した。計画12及び14のそれぞれについての実施例の結果を
図6に示す。それらはプロテインA染色が樹立株で容易に可視化できることを示す。驚くべきことに、バルク異種集団はより少ない程度に染色したが、プロテインAで達成した蛍光染色は、バックグラウンド染色から最も明るい染色細胞を分離するのに十分であった。抗血清について与えられた利点を考慮して、作業をバルク及び樹立細胞株で継続した。
【実施例4】
【0120】
高プロテインA蛍光と高レベルIgG分泌細胞の同定/選別との相関関係。
【0121】
抗ヒトIgG抗体で標識した後の高IgG分泌クローンの単離は、生物製剤細胞株作製のために既に使用していた方法(Bresinskyら、2003、同上を参照されたい)であり、それは、高い蛍光がより高い力価に対応することが示されている。本発明者らの染色プロトコルを検証するために、特に、実際に高産生細胞を同定するプロテインAを用いて、本発明者らは、dAb-Fc融合分子(計画17)を用いてトランスフェクトしたCHO-K1ベースのCHROMOS細胞(Lindenbaumら、NAR、32、e172、2004)で四方向選別を実施し、IgG染色とプロテインA染色とを比較した。
【0122】
可溶性抗体を洗い流し、細胞を、20分間、暗所において氷上で4μg/10
6個の細胞にて抗ヒトIgG又は0.5μg/10
6個の細胞にてプロテインAとインキュベートした。PBS中での2回の更なる洗浄後、細胞を選別した。四方向強化選別を、生細胞の蛍光ヒストグラムプロットにわたるゲーティングに基づいて実施した(
図7)。一つのゲート当たり10万個の細胞を選別し、続いて滅菌24ウェル培養プレート中で5日間増殖させた。次いで可溶性IgG力価をMSDにより測定し、読み取り値をウェル中の生細胞数で割って細胞産生当たりの指標を得た。プロテインA染色を用いて蛍光シグナルは約10倍低くなったが、このデータは、プロテインA染色のレベルと、抗ヒトIgG標識を用いて見られるものと同様の細胞のIgG分泌との間の明確な相関関係を実証する。
【0123】
方法の節において記載したように社内で標識した第二の供給源のプロテインA (RepligenプロテインA)もまた首尾よく使用した(データは示さず)。
【実施例5】
【0124】
IgGを用いる選別は成功したが、細胞を含まない捕捉プレートを使用した場合のメトトレキサートで増幅したバルクトランスフェクション 対 予めクローニングした株からのクローン増殖は減少した。
【0125】
一般に、プレートが支持細胞を含有する場合、細胞が捕捉プレート中で選別した単一細胞である時、その支持細胞は個々にクローニングした細胞の増殖を促進する(例えばHugin 1997、J Immunol Methods、205、211-212)。プロトコルを維持するために、単純で再生可能な細胞を含まない捕捉プレートを利用した。この目的のために、捕捉プレートのみが、G418及び適量のMTXを含有する50%馴化培地(即ち、新鮮培地50%及び非トランスフェクトCHO細胞の3〜4日の長期の培養の濾過上清50%からなる)を含有した。
【0126】
抗ヒトIgG染色後、抗体計画14についてのメトトレキサート(5nM)で増幅させたバルクトランスフェクションを単一細胞FACS選別に供した。同じ単一細胞選別プロトコルを、樹立株(計画3M、株D16)について使用し、結果を以下の表1に示す。プレート捕捉データは、条件が樹立細胞株を再クローニングするのに、及びバルクトランスフェクトした細胞を選別するのに好適であるが、バルクトランスフェクションから生成したクローン数を向上させるために最適化が所望され得ることを示唆する。
【表1】
【実施例6】
【0127】
選別後のクローン増殖についての捕捉プレート条件の最適化
バルクトランスフェクションからの単一細胞クローンの選別後に生成したクローンの数を増加させるために、本発明者らは、様々な捕捉プレート条件を、広範に使用される支持細胞標準物と比較した。CHO DG44細胞を、計画13についての抗体をコードするプラスミドを用いてトランスフェクトした。次いでトランスフェクトした細胞をG418選択及びヌクレオシド除去、次いで遺伝子増幅のための5nMメトトレキサートに供した。六つの異なる捕捉プレート条件を比較した:
1)選別の64時間後に添加したG418及びメトトレキサートを含む培地中の2000個の DG44 CHO細胞/ウェル;
2)選別前に存在するG418及びメトトレキサートを含む培地中の2000個の DG44 CHO細胞/ウェル
3)選別の64時間後に添加したG418及びメトトレキサートを含む50%馴化培地
4)選別前に存在するG418及びメトトレキサートを含む50%馴化培地
5)組換え型血清アルブミン及び組換え型トランスフェリンと共に選別前に存在するG418及びメトトレキサートを含む50%馴化培地;及び
6)組換え型血清アルブミン及び組換え型トランスフェリンと共に選別前に存在するG418及びメトトレキサートを含む新鮮培地。
【0128】
G418を400μg/mLにて使用し、メトトレキサートを5nMにて使用し、組換え型血清アルブミンを1mg/mLにて及び組換え型トランスフェリンを5μg/mLにて使用した。培地及びG418はInvitrogen, U.Kから供給された。メトトレキサートは固体(Sigma, U.K.)から50μMストックとして調製し、動物タンパク質を含まないままにし、組換え型アルブミン及びトランスフェリンの両方は、Novozyme, U.Kから組換え型タンパク質として供給された。五つのプレートを条件1〜4及び6について選別し、三つのプレートを条件番号5について選別した。一つのプレート当たりに生成したクローンの数を表2に示す。一つのプレート当たりに生成したコロニーの数を単一細胞選別の20日後に計数した。
【表2】
【0129】
このデータは、捕捉プレート培地中にG418及びメトトレキサートを含有することが、支持細胞プレートにおいて、及び細胞を含まない捕捉プレート条件下の両方でより少ないクローンを生じることを示す。馴化培地中に組換え型ヒト血清アルブミン及びトランスフェリンを含有することにより、その間中、クローン増殖の数の増加が生じた。支持細胞の非存在下で観察されたクローンの増殖は、細胞間接触が馴化培地に存在するものなどの可溶性要因より重要でないこと及び/又は組換え型アルブミン及びトランスフェリン捕捉物により置換されてもよいことを示す。プレート中の支持細胞の非存在は、96ウェルプレート中のクローンの視覚的同定を改善させ、それらのより早期の同定を可能にする。
【0130】
上記のデータは、捕捉プレートを含有する培地へのより多量のアルブミン及び/又はトランスフェリンの添加は、クローン数を増加させる可能性があり、馴化培地の使用の必要性を取り除くことを示す。以前の実施例と併せてこれらのデータは、種々の異なる条件が、その間中、細胞増殖の割合は様々ではあるが、CHO細胞の単一細胞クローニングを支持し得ることを示す。
【0131】
続いて、生成されたコロニーを抗体発現について分析した。表3に示す結果は、支持層を含まない培地を使用する場合、選択圧(G418及びMTX)が(条件3を4と比較して)クローニングの2日後に添加される場合により高い力価が得られることを示す。
【表3】
【0132】
クローニング条件を更に改良するため、及び上記で得られた有望な結果を考慮して、別の実験を設計し、それにより、CHO DG44細胞を、抗体をコードするプラスミドを用いてトランスフェクトした。次いでトランスフェクトした細胞をG418選択及びヌクレオシド除去、次いで遺伝子増幅のために5nMメトトレキサートに供した。三つの異なる捕捉プレート条件を比較した(細胞は生細胞ゲートに基づいて選別し、10個の96ウェルプレートを一つの条件につき使用した):
1)組換え型血清アルブミン及び組換え型トランスフェリンと共に選別前に存在するG418及びメトトレキサートを含む50%馴化培地;
2)選別後48時間に添加したG418及びメトトレキサートを含む並びに選別前に存在する組換え型血清アルブミン及び組換え型トランスフェリンを含む50%馴化培地;
3)選別後48時間に添加したメトトレキサート及びG418、選別前に存在する組換え型血清アルブミン及び組換え型トランスフェリンを含む50%馴化培地;
3週間後、単一細胞選別コロニーを計数し、また抗体力価を測定した。表4にまとめた結果は、選別の2日後に選択圧(G418及びMTX)を加える明確な利点を再び示す。
【表4】
【実施例7】
【0133】
従来の方法から誘導されるクローンと比較した場合のFACS選別したクローンの早期回収及びバッチ産生に供給するためのより良い反応
計画13に関して、本発明者らは、(a)低密度播種(従来のプロトコル、
図1(A))及び(b)染色した増幅したバルクプールから高蛍光を発する細胞の単一細胞選別(新規プロトコル、
図1(B))の後に選択した細胞の回収を比較した。本発明者らは、スケールアップでの生存能力を調べ、累積的IgG力価を、T75cmフラスコからバッチ小規模(Duetz)産生モデル設定において達成した。そのデータを
図8に示す。驚くべきことに、より多くの急速な回収が存在し、FACSプロトコルから誘導されるクローンの振盪培養に適合した(
図8(A)及び8(B)を参照されたい)。大多数のFACSクローンが、T75段階で80%より高い生存率で及び振盪フラスコにおいて最初の継代で90%より高くまで回収されたのに対して、振盪フラスコ段階でさえ、大多数の従来のプロトコル株はまだ80%より低い生存率であった。優れた細胞生存に加えて、FACSプロトコルから生成した細胞(灰色のボックス)は、
図8(C)に示すようにIgG産生に関してそれらの従来のプロトコルから誘導された同等のもの(黒色のボックス)より優れていた。
【0134】
加えて、(FACSにより)高蛍光細胞の単一細胞選別から誘導されたクローンを、バッチ産生振盪フラスコ法における供給に対するそれらの反応に関して従来の方法)から誘導されたクローンと比較した(それにより、5〜10%のイーストレート(yeastolate)の単一のボーラス供給を培養の7日目に加えた)。表5は、FACSクローンの96%が、従来のクローンの25%と比べて供給によりより高い力価を生成したことを示す。加えて、FACSクローンは、供給バッチ力価においてより多くの平均%の増加、45%対19%、及びより多くの最大の力価増加105%対34%を有した。これらのデータは、FACSクローニングが、生物製剤産生のためのより強力且つ供給反応性のクローンを生成するためのより良い方法であることを示唆している。
【表5】
【実施例8】
【0135】
細胞をそれらのFSC-A対FSC-Hプロファイルに従って分析した場合に観察された向上した蛍光
FSC-H対FSC-Aプロットにおいてより高いFSC-Aを有する生細胞事象の別々の亜集団をフローサイトメーターで観察した。この細胞亜集団は、より大きい細胞サイズの指標である、その高い前方散乱領域に起因して、HFA亜集団と命名した。この集団は、主要な細胞集団として同じFSC-H境界内にある。実際に、これらのHFA細胞のFSC-Hは、FSC-H境界(n=32)内の他の細胞のものの1.1(+/-0.1)倍であった。この「他の細胞」亜集団は、LFA(低前方散乱、より小さい細胞サイズの指標である)と命名した。FSC-Hの類似点にも関わらず、HFA亜集団の平均FSC-Aは、LFA亜集団(n=32)の1.8(+/-0.1)倍である。
【0136】
しかしながら、FSC-H対FSC-Aプロットにおいて、FSC-A軸においてHFAとLFA亜集団との間の重複が存在している。n=22に関して、71%(+/-25)のHFA細胞は、38%の最小及び100%の最大に関して、重複領域より高いFSC-Aを有する。それにもかかわらず、細胞のHFA亜集団は、フローサイトメトリーの当業者により明確に同定され得、各集団のゲーティングがそれに応じて決定され得る。代表的な例として、
図9Bにおける斜線は生細胞亜集団を二つの明確に異なる亜集団に分け、HFA細胞亜集団は、FSC-H(Y軸)対FSC-A(X軸)プロットにおける主要集団の底縁を追跡するように描かれている斜線の右側に存在する。同じデータがヒストグラムとしてプロットされている場合(
図10)、HFA細胞亜集団のFSC-W値は、LFA細胞亜集団のものより高い。従って、HFA細胞は、(FSC-A対SSC-Aプロットにおいてゲートした場合)FSC-H/FSC-Aプロット(
図9)又はFSC-Wヒストグラム(
図10A)、又はFSC-W/FSC-Aプロット(
図10B)のいずれかでゲートされ得る、より高いFSC-Wを有する生細胞の亜集団として定義される。実施例14に示すように、FSC-A対SSCプロット(
図22)においてHFA細胞を直接ゲートすることも可能である。
【0137】
(生細胞のFSC-H/FSC-Aプロットでゲートする)選別後の顕微鏡検査時に、細胞のこの亜集団は主により大きな単一細胞からなり、細胞凝集体/集団ではない。高FSC-W細胞(又は「事象」)は、それらが細胞二重性(doublet)を除去するためにゲーティングストラテジーの一部を形成する場合、慣例的に、分析選別から除外されることに留意されるべきである。これは例えばFSC-W又はFSC-H対FSC-Aプロットにおいて行われ得る。しかしながら、最近、かかる亜集団がむしろ高い活性/増殖細胞を含有するT細胞が示されている(Bohmerら、Cytometry part A、2011、00A:1-7)。
【0138】
(生細胞のFSC-H/FSC-Aプロットでゲーティングする)選別及びその後のこのHFA亜集団の培養は、それらのLFA亜集団と同等のものを超える強力な細胞増殖及び抗体力価を産生した。HFA集団は、生細胞の全集団の約2〜20%、より典型的には5〜10%を構成する。本発明者らは、この集団が、サンプリング時点に応じてその数を変化させる、生細胞集団の動的部分、恐らく活発に増殖する一部を表すと仮定する。
【0139】
加えて、選別後、HFA細胞は一般集団であるFSC-A対FSC-Hプロファイルに戻る。しかしながら、HFA亜集団は、一貫して、LFA亜集団より高いレベルの蛍光を生成した(ヒストグラムにおいて示す;
図11)。この集団のより高い蛍光を、使用した染色方法、プロテインA又は抗IgGに関わらず、観察した。バルクトランスフェクションに関して重要なことは、HFA亜集団のみからのクローニングは、陽性に染色したプロテインA細胞の明確な分離を可能にする(
図11)。
【0140】
上記に基づいて、異なる抗体計画を含む樹立株及びバルクトランスフェクションの数を、HFA%並びにHFA及びLFA細胞のIgG又はプロテインA染色について分析し、その結果を
図12に示す。それらは、蛍光標識したプロテインA又は抗ヒトIgGのいずれかで染色した場合、HFA亜集団がより多くの割合の上位蛍光細胞を形成することを示す。それらはまた、HFA亜集団における細胞の平均蛍光が、LFA亜集団のものと比較して顕著に高いことを示す。
【実施例9】
【0141】
HFA細胞の選別は、高産生体の選択の向上及び等しい又は高い安定性を有する細胞株の生成を生じる。
【0142】
以下に提示した二つの異なる選別を、高産生体のFACS選別によって同定及び単離するためにFSC-A対FSC-H特性を使用する価値を評価するために実施した:
1.樹立株、計画10-株MTX8は、三つの異なるアプローチを使用してクローニングした単一細胞であった(
図13A):(a)限界希釈(9X 96ウェルプレートを設定した)、(b)SSC対FSCプロット上で単に生ゲートした細胞のFACSクローニング(7X 96ウェルプレートを設定した)、並びに(c)FSC-H対FSC-Aプロット上で生及び次いでHFAでゲートする、HFA細胞のFACSクローニング(1X 96ウェルプレートを設定した)。
図13Bに示すように、最も高い産生クローンはHFAクローンのものであり、また、50継代後でさえ安定であることが証明された。
【0143】
2.樹立株、計画3M-FACS選別を実施し、HFA細胞亜集団を単一細胞レベルにて選別した。選別前の株は不安定であり、継代を多くするとバッチ力価は減少し、その減少は20継代後に顕著(noticable)になり始めた(
図14A)。得られたデータは、HFA由来のクローン株が、親と比べて非常に高いバッチ力価及び安定性を有することを示し、一つのクローンについての代表的なデータを
図14Bに示す。
【実施例10】
【0144】
HFA、又はHFA高細胞の選別は、高産生体の選択の向上を生じる。
【0145】
以下に提示した四つの異なる選別を、高産生体の同定のためにFSC-A対FSC-Hの特徴と併せてプロテインA(及びIgG)染色を使用して価値を評価するために実施した:
i.樹立株、計画3M、IgG選別-単一細胞選別を、「生」細胞、HFA細胞、高蛍光(上位1.5%の蛍光)を有する生細胞又は高蛍光を有するHFA細胞で蛍光抗ヒトIgGを用いる染色後に実施した。その結果(
図15A及びBに示す)は、高産生体を単離するために前方散乱特性(即ちHFA選別)及び高蛍光に基づいた選別の利点を示す。
図15Aは選別後の6ウェル段階における個々のクローン力価及びクローンの数を示す。このデータは、高蛍光を有するHFA細胞が、6ウェル段階において他の三つの選別基準より非常に高い力価を有すること、及びこの傾向が、これらのクローンが多数の最も高いSPR(特異的産生)クローンを形成する振盪フラスコ段階において抗体分泌の間、継続することを示す(
図15B)。全ての四つの選別由来の上位の少数のクローンは更に向上し、選別前の親株と比較してより高いバッチ力価及び安定性を示したことは留意されるべきである。
【0146】
ii.バルクトランスフェクション、計画10、IgG及びプロテインA選別-バルクトランスフェクション、選択、増幅及び染色を以前の実施例に記載したように実施した。バルクは、ポリクローナル抗ヒトIgG又はプロテインAのいずれかでの染色後に選別した。
図16(A)の結果は96ウェルプレート段階において産生したクローンの数及び分泌したIgGの平均レベルを示す。それらの生選別と同等のものと比較して、(抗IgG又はプロテインA染色のいずれかの後)高蛍光を有するHFA細胞の副選別により、より多くのクローン及び一貫してより高いレベルのIgG産生を生じた。細胞を細胞株作製の後期段階で調べた場合、この傾向は保持された(
図16(B)は示したように異なる段階における各条件についての最良クローンについての分泌した力価を示す)。また、上位の生細胞選別したクローン(クローン49、
図16B)は、その上位のHFA高蛍光の同等のものと比較して、2回目の振盪フラスコ継代において類似のIgG力価を産生したが、更に培養すると、増殖曲線段階となったクローンは「HFA、高蛍光」クローンのみであった。
図16(C)は、供給されていないバッチ産生モデルにした細胞についてのデータを示し、ここで力価は15日目に取得し、プロテインAが高産生クローンを選択するための抗IgG血清より潜在的に優れていることを示す。
【0147】
iii.第2のバルクトランスフェクション、計画14、プロテインA選別-バルクトランスフェクション、選択、増幅及び染色を、以前の実施例に記載したように実施した。染色はプロテインAを用いて実施した。HFA及びHFA高蛍光細胞集団の選別に加えて、LFA及びLFA、高蛍光集団はまた、クローニングした単一細胞であった。
図17は、関連FACSプロット及び選別ゲート(左側)を並びにこの選別の単一細胞クローンからの96ウェルプレートデータ(右側)を示す。このデータは、HFA細胞集団が、プロテインAで染色したか、又は染色していないかに関わらず、LFA細胞より高い発現クローンを生成することを実証する(類似データを抗IgGで染色して得た、データは示さず)。しかしながら、HFA細胞についてのゲーティングと併せて染色を使用した場合、非常により多くの割合のクローンは、(
図17における10位、20位及び30位の順位の力価と比較して)高レベルの分泌されたIgG産生を有した。その結果は、再び、プロテインAが、ポリクローナル動物由来の標識抗体の代わりに首尾よく使用され得ること、HFAゲートを適用することは高い力価を生じること及び「HFA-高蛍光」ゲートを適用することは一貫してより多くの高力価を生じることを実証する。続いて、クローンをスケールアップし、6ウェル及び振盪フラスコ産生段階で再分析し、ここで再び、HFAゲートを適用することが高い力価を生じること並びに「HFA-高蛍光」ゲートを適用することが多くの一貫した高力価及びより多くの数の高産生細胞株を生じることが明らかになった(表6及び
図20)。
【表6】
【0148】
iv.クローンをまた、上記の(iii)に記載したように別の計画のために生成し、ここでHFA及びHFA高プロテインAのみのクローンを選別し、分析し、スケールアップした。再び、両方であるが、96ウェルにおいてより、振盪フラスコ産生において多く、高産生細胞株を同定するためにHFA高蛍光ゲートを使用することに明確な利点が存在する(
図21)。
【実施例11】
【0149】
FACSプロトコルの実施後の生産性及び非常に少ない数のクローンをスケールアップする必要性の改良された予測可能性
これまでの全ての細胞株作製プロトコルは、生物製剤製造レジームに好適な細胞株を生成するための数千のクローンが存在しない場合、数百のスクリーニング及びスケールアップを必要とする。本発明者らは、バッチ産生モデルにおける最も高い産生クローンの単離を保証するために最も早期の96ウェルプレート段階からスケールアップするのに必要なクローンの数を決定しようとした。この目的のために、本発明者らは、以下に提示した四つの異なる実験を分析し、(産生曲線段階にて)上位4〜5位のクローンを順位付けし、次いで培養中の以前の段階にてそれらの順位を調べた。そのデータを以下に提示する。
【0150】
1)計画14、プロテインAで標識した細胞選別(上位2%染色[高蛍光]細胞について)
バルクトランスフェクション、選択、増幅及び染色を以前の実施例に記載したように実施した。そのバルクは、プロテインAでの染色後に選別された単一細胞であり、その結果を以下の表7及び8に示す。
【表7】
【表8】
【0151】
表7は、計画14のベクターでトランスフェクトした細胞をプロテインAで標識し、示した四つの選別基準で選別した後の96ウェル及び振盪フラスコ段階で評価したクローンの数を示す。このデータは、HFA又はHFA高選別から得たコロニーの数が、LFA又はLFA高選別についてのものより顕著に高いことを示す。表8は、異なる早期段階(96ウェル、6ウェル及びT75)にてクローンを達成する最も高いバッチ産生力価の順位付けを示す。驚くべきことに、これらのデータは、上位5個の産生クローンのうち4個が、96ウェル段階においてさえ上位5個のクローンから予測され得ることを実証する。
【0152】
2)計画14、IgG標識した細胞選別(上位2%のIgG染色細胞について)
バルクトランスフェクション、選択、増幅及び染色を以前の実施例に記載したように実施した。そのバルクはIgGでの染色後の単一細胞選別であり、その結果を以下の表9及び10に示す。
【表9】
【表10】
【0153】
表9は、計画14のベクターでトランスフェクトした細胞を抗IgGで標識し、それらを示した選別基準で選別した後の96ウェル及び振盪フラスコ段階で評価したクローンの数を示す。LFA高蛍光細胞に関して、(以前の節で記載したように)支持細胞を含む捕捉プレートを使用してクローニングを実施したのに対して、HFA高蛍光細胞に関して、二つの異なる条件を使用した:支持細胞又は馴化培地(CM)。このデータから、高蛍光の副選別を用いてHFA細胞から産生したクローンの数は再びより高かった。バッチ産生モデルにおいて上位5個のクローンのうちの4個(表10)も「HFA高」選別細胞であった。そのデータはまた、上位5個の増殖曲線産生クローンのうちの4個が96ウェル段階において上位5個のクローンから予測され得ることを実証する。これらのクローンのうちの3個に関して、この順位は、6ウェル及び振盪フラスコ段階(増殖前曲線分析)を通して保持される。
【0154】
3)計画10、IgG又はプロテインAで標識した細胞選別(上位5%のプロテインAで染色した細胞について)
バルクトランスフェクション、選択、増幅及び染色を以前の実施例に記載したように実施した。そのバルクはIgGでの染色後に選別し、その結果を以下の表11及び12に示す。
【表11】
【表12】
【0155】
表11は、計画10のベクターでトランスフェクトした抗IgG又はプロテインAで標識し、それらを二つの選別基準、「生ゲート」又は「高蛍光を有するHFA細胞」のいずれかで選別した後の96ウェル及び振盪フラスコ段階で評価したクローンの数を示す。これらのデータから、「高蛍光を有するHFA細胞」の副選別から生成したクローンの数は、やはり、生選別した細胞についてのものより多かった。加えて、増殖曲線における全ての上位5個のクローン(表12)は「HFA高」細胞由来であり、最も高いのものはHFA高-プロテインAで選別したクローンである。そのデータはやはり、96ウェル段階における上位8個のクローンからの予測が良好であり、それらのうちの4個が増殖曲線において上位5個に到達することを実証する。
【0156】
4)計画3M HFA細胞IgG又はプロテインAで標識した細胞選別(上位5%のプロテインAで染色した細胞について)
計画3Mの株BP0044の二つのサブクローンをFACSにより再クローニングした(a)細胞株C1(最初は親BP0044の生の上位1.5%IgG染色として選別した単一細胞)、及び(b)細胞株D16(最初は親BP0044のHFAの上位1.5%IgG染色として選別した単一細胞)。C1及びD16は、蛍光性プロテインA又は抗ヒトIgGのいずれかで細胞を標識した後、上位5%の蛍光及びHFA細胞集団から再選別されたた選択単一細胞であった。その結果を以下の表13及び14に示す:
【表13】
【表14】
【0157】
表13は、6ウェル及び振盪フラスコ段階で評価したクローンの数を示す。96ウェル力価データはこの場合得なかったので示していない。これらのデータから、増殖曲線段階において上位5個のクローンのうちの4個が6ウェル段階における上位10個のクローンに由来している(表14)。
【0158】
まとめると、上記のこれらの四つの例の知見は、本発明に係る新規プロトコルの結果、96ウェル段階ほどの早期から最も高い産生クローンが同定されることを実証する。これは、初期の96ウェルスクリーニングの上位5〜10以内からの最終細胞株の同定を記載しているCHOに基づいた生物製剤細胞株作製についての最初のプロトコルであると考えられる。
【0159】
加えて、合計で及び他の選別基準と比較して、高蛍光を有するHFA細胞が一貫して、バッチ産生モデルにおいて多数の最も高い産生クローンを生成する。
【0160】
更なる分析を、以前に使用した従来のCLDプロトコル(例えば国際公開第2009024567号及びKotsopoulouらJ Biotechnol, 2010に記載されているように)を用いて本明細書に記載したようにFACSベースのプロトコルを比較するために実施した。この目的のために、本発明者らは七つの異なる抗体計画を分析し、ここでバルクトランスフェクション/増幅及びFACS(HFA-高プロテインA)プロトコルによるクローニングを使用した。また、従来の播種/増幅プロトコルを使用した七つの計画を分析した。両方の場合において、振盪フラスコ産生モデルにおいて順位付けした上位1〜2個のクローンを追跡し、それらの順位をそれらの選択の96ウェル及び6ウェル段階で記録した。従来のプロトコルにおいてこれらの順位は最終増幅段階でのみ追跡しただけであった。表15に示す結果は、FACSプロトコル(及びHFA-高プロテインAゲーティング)を実施すると、クローン性能のより高い予測可能性が存在することを示し、少数のクローンのみが、製造に好適な高い産生細胞株を選択するためにスケールアップすることを必要とすることを示す。本発明者らはまた、多数の場合において従来のプロトコルについて考慮した場合、これは最初の順位付けではないが、以下に記録した最後のラウンドに先行した一つ又は複数の増幅/選択ラウンドであり、これらの結果はより印象的でさえある。
【表15】
【実施例12】
【0161】
抗IgG及びプロテインAを使用するクローンの再選別を通じたバッチ力価における改良
メトトレキサート増幅バルクトランスフェクションを用いて達成された染色は、プロテインAでは比較的低かったが、蛍光シグナルは単一細胞選別後に増加する。これは、高発現細胞の後の選択/再クローニングを容易にする。加えて、プロテインA染色で生成した蛍光シグナルの増加は、単一細胞クローニングの各分離工程を用いて増加する(データは示さず)。再選別は細胞株作製についてのプロトコルに対する時間を追加するが、それは、高い力価を有するだけでなく、それらの「親」より高い安定性も示す、クローンを産生する利点を有する(代表的な例のデータは
図14、実施例9に示す)。
図18は、(
図18の凡例に示したように抗IgG又はプロテインA染色を用いるか又は用いていない生又はHFA細胞ゲート実施後に選別した)複数の選別した細胞の増殖曲線研究からの可溶性IgGレベルにおいて観察された漸進的増加を示す。
【0162】
IgG力価の増加を計画3Mについて更に分析したところ、3〜5の別々の継代にわたって得られた平均SPR値の増加と対応することが示された。力価の増加が細胞数の増加に起因した最初の再選別を除いて以下の表16を参照されたい。
【表16】
【0163】
この実施例に記載したデータは、細胞株の生産性(及び必要な場合、安定性)を増加させるための複数の再クローニングラウンドの利点を実証する。それらはまた、3を超える及び3以上の追加の再クローニングが、更にもっと産生力価を増加させ得る可能性を支持する。
【実施例13】
【0164】
FACSの比較及び高発現細胞を選択するためのCLONEPIX(半固体培地)からの選択
ARH77細胞を、任意に本明細書で「プロテインX」と命名した膜タンパク質をコードするベクターを用いてAmaxaヌクレオフェクションキットを使用してバルクトランスフェクトした。安定な形質転換体は、続いて、(A)PEコンジュゲートした抗「プロテインX」抗体で標識した後に単一細胞FACS選別した(生-LFA細胞)か、又は(B)DyLight-649コンジュゲートした抗「プロテインX」検出抗体を含有する半固体培地から選択したクローンのいずれかであった。(A)に関して、細胞を抗「プロテインX」抗体で染色し、最も明るい、及び最も薄暗い陽性細胞の両方は、50%馴化培地中で96ウェルフォーマットにおいて選別した単一細胞であった。(B)に関して、1e5細胞を、補足物及びまた検出抗体を含有するGenetix半固体培地中でペトリ皿に播種した。最も明るいクローンを播種の7〜10日後に製造業者の指示書に従って選択した。
【0165】
Clonepixから選択したクローンの蛍光を、FACSクローニングから選択した低及び高発現クローンの両方と比較した。
図19は、FACS選別について以前に使用した同じ抗「プロテインX」抗体を使用してFACS分析により測定した場合の全てのクローンの平均蛍光強度(MFI)を示す。その結果は、FACS法が、非常に高発現クローンの同定/選択を生じることを実証する。実際に、最も高い発現FACS由来のクローンは、最も高い発現Clonepix由来のクローンより6倍高いMFIを有した。
【実施例14】
【0166】
FSC-Aゲートの使用、及びまた選別%ゲートの改良
最も高いレベルの蛍光強度を示すプロテインA染色細胞と得られたクローン生産性との相関関係を調べるため、及びそれにより、単一細胞選別についての最適ゲーティングパラメーターを定めるために、モノクローナル抗体をコードするプラスミドでバルクトランスフェクトした細胞を使用して選別を実施し、以前に記載したプロトコルを使用して選択し、増幅させた。バルクトランスフェクトした細胞を最初に生亜集団、次いでHFA亜集団(FSC-H対FSC-Aプロットにおいて)についてゲートし、その後、プロテインA細胞表面染色の%に従って選別した。それぞれ上位10%、5%、2%及び1%の蛍光を示す細胞は、96ウェルプレートでクローニングした単一細胞であった(
図22)。
【0167】
加えて、代替のゲーティング法として、サブゲートを、高いFSC-Aの特徴を有する全ての細胞を組み込むように生細胞集団内(FSC-A対SSC-Aプロットにおいて)で設定した。これは低及び高SSC-A細胞を含んだ。これらの高FSC-A細胞はHFA亜集団の細画分である。続いてこれらの細胞をプロテインA細胞表面染色について評価し、(生ゲートについて設定した場合)上位5%の蛍光の範囲内の蛍光を示す細胞は、96ウェルプレートで選別した単一細胞であった(
図22)。
【0168】
96ウェル段階における生産性の分析は、異なる%の蛍光強度ゲート又は高FSC-A及び上位5%のプロテインA染色ゲートのいずれかから選別した細胞クローンについて記録した平均及び最大力価に関してわずかな相違を表した(
図23)。最も高い産生クローンからなる補足したバッチ振盪フラスコ培養におけるIgG産生もまた、異なる選別基準の中でわずかな相違を表したが、産生収率と相関する細胞表面染色のレベルに関する傾向が観察された。このデータはまた、類似の生産性のクローンが、FSC-H対FSC-Aプロット又はFSC-A対SSC-Aプロットのいずれかから高FSC-Aに基づいてゲーティング細胞集団から単離され得ることを実証する。
【実施例15】
【0169】
プロテインGの使用
本発明者らは更に、高産生細胞の染色/同定/選別について他の試薬を使用する可能性を評価しようとした。この目的のために、本発明者らはプロテインGを評価した。プロテインG Alexa488は、Invitrogen(カタログ番号P11065)から購入し、力価測定後、最適な染色が、10
6個の細胞当たり0.25〜0.5μgのプロテインGで達成することを見出した。
図24に見られるように、良好な標識(及びプロテインAに匹敵する)をプロテインGで達成した。生成されたデータは、低産生バルク集団で観察された低レベルとは対照的に、標識したプロテインG(及びプロテインA)を用いて高レベルの蛍光を示すクローン細胞株(より高い産生体)を有する細胞から分泌された可溶性抗体レベルを維持している。以前の実施例におけるプロテインAと同様に、より高いプロテインG蛍光をHFAゲート集団において観察した。要約すれば、プロテインAと同様に、プロテインGは、標識試薬として使用するのに、及びバルク又は事前にクローニングした株から高IgG発現CHO細胞を選別するのに好適であるはずである。