特許第6039553号(P6039553)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6039553エンドモルフィンのμオピオイド受容体アゴニスト類似体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039553
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】エンドモルフィンのμオピオイド受容体アゴニスト類似体
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20161128BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20161128BHJP
   G01N 33/566 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   C07K7/64ZNA
   A61K37/24
   A61P25/04
   A61P1/04
   A61P25/36
   G01N33/566
【請求項の数】17
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-519718(P2013-519718)
(86)(22)【出願日】2011年7月8日
(65)【公表番号】特表2013-533890(P2013-533890A)
(43)【公表日】2013年8月29日
(86)【国際出願番号】US2011043306
(87)【国際公開番号】WO2012006497
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】61/363,039
(32)【優先日】2010年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502137178
【氏名又は名称】ザ アドミニストレイターズ オブ ザ テューレイン エデュケイショナル ファンド
(73)【特許権者】
【識別番号】513007398
【氏名又は名称】ユナイテッド ステイツ デパートメント オブ ヴェテランズ アフェアーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(72)【発明者】
【氏名】ザディナ ジェームズ イー
(72)【発明者】
【氏名】ハックラー ラズロ
【審査官】 田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−507748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K 38/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの環状ペプチドであって:
(I) H−Tyr−c[X1−X2−X3−X4]−X5
式中、X1及びX4は、各々独立に、酸性アミノ酸又は塩基性アミノ酸であり、X1がD−アミノ酸であり、
2は、Trp、Phe又はN−メチル−Pheであり;
3は、Phe又はp−Cl−Pheであり;
5は、Ala−NHR、Gly−NHR、Ile−NHR、Leu−NHR、又はVal−NHRであり、ここで、Rは、H又はアルキル基であり;かつアミノ酸X1及びX4の側鎖上のアミノ基とカルボン酸基の間にアミド結合があり;
但し、X1が酸性アミノ酸である場合、X4は塩基性アミノ酸であり;X1が塩基性アミノ酸である場合、X4は酸性アミノ酸であることを特徴とする、環状ペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドであって:
(i)X1が、D−Lys及びD−Ornらなる群から選択され;かつX4が、D−Asp、D−Glu、Asp、及びGluからなる群から選択されるか;又は
(ii)X1が、D−Asp及びD−Gluらなる群から選択され;かつX4が、D−Lys、D−Orn、Lys、及びOrnからなる群から選択される、ペプチド。
【請求項3】
3D−Phe又はp−Cl−Pheである、請求項1又は2に記載のペプチド。
【請求項4】
2がN−メチル−Pheである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
3がp−Cl−Pheである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
RがHであり、X5が、Ala−NH2、Gly−NH2、Ile−NH2、Leu−NH2、又はVal−NH2である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項7】
前記アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、又はイソヘプチル基である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項8】
式:Tyr−c[D−Orn−Phe−p−Cl−Phe−Asp]−Val−NH2(配列番号:7)を有するペプチド。
【請求項9】
薬学的に許容される担体及び請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項10】
試料中のμオピオイド受容体の量を測定する方法であって:
(i)μオピオイド受容体を含有すると考えられる試料を、請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドと接触させて、化合物−受容体複合体を形成させること;
(ii)工程(i)で形成される複合体を検出すること;及び
(iii)工程(ii)で検出される複合体の量を定量すること
を含む、方法。
【請求項11】
μオピオイド受容体に結合する分子の存在を検出する競合アッセイ法であって:
(i)μオピオイド受容体に結合する分子を含有すると考えられる試料を、μオピオイド受容体及び請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドと接触させ、前記ペプチド及び受容体が、化合物−受容体複合体を形成すること;
(ii)工程(i)で形成される複合体の量を測定すること;並びに
(iii)工程(ii)で測定される複合体の量を、前記試料の非存在下で前記μオピオイド受容体と前記ペプチドの間で形成される複合体の量と比較すること
を含む、競合アッセイ法。
【請求項12】
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドを含む、疼痛を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドを含む、薬物依存を治療するための医薬組成物。
【請求項14】
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドを含む、胃腸障害を治療するための医薬組成物。
【請求項15】
疼痛を治療するための医薬の調製のための請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドの使用。
【請求項16】
薬物依存を治療するための医薬の調製のための請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドの使用。
【請求項17】
胃腸障害を治療するための医薬の調製のための請求項1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8記載のペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2010年7月9日に出願された米国仮特許出願第61/363,039号の恩典を主張する。
【0002】
政府支援の声明
本明細書に記載の研究の一部は、シニアキャリア研究科学者賞(Senior Career Research Scientist Award)及びJames E.Zadinaに対する退役軍人省(Department of Veteran Affairs)の競争的メリットレビュープログラム(Competitive Merit Review Program)助成金による支援を受けた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、μ(モルヒネ)オピオイド受容体に結合するペプチドアゴニスト、並びに急性及び慢性疼痛の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
μオピオイド受容体の活性化は、幅広い疼痛疾患を軽減する最も有効な手段の1つである。最近クローニングされたオピオイド受容体、例えば、μ(3,19,20)、δ(6,9)、及びκ(12−14)のうち、臨床的に使用されているオピオイドの圧倒的多数は、μ受容体で作用する。遺伝子改変「ノックアウト」マウスで示されているように、μ受容体の不在は、モルヒネの鎮痛効果を消失させ(8)、これは、オピオイド誘導性疼痛緩和におけるその中心的役割を示している。μアゴニストの独特の有効性は、痛みの処理と、痛みの伝達を制限する(例えば、末梢神経系からの興奮性神経伝達物質の放出を阻害する、及び中枢神経系における細胞の興奮性を減少させる)複数の機構の活性化とを調節する神経系の多くの領域におけるその存在を含む、いくつかの要因によるものとすることができる。
【0005】
オピオイドの使用の制限は、乱用傾向、呼吸抑制、並びに認知及び運動障害を含む、負の副作用によるものである。鎮痛性を維持しながら、負の副作用を軽減する化合物を開発する多くの努力は、限られた成功しか収めていない。これは、近頃の処方薬の乱用の流行から明白である。疼痛緩和の代わりの機構を標的にして、これらの副作用を回避しようとする幾多の試みは、通常、同様の問題、すなわち、オピオイドとは異なるが、多くの場合、市場からの撤去(例えば、COX阻害剤)又は市場参入への承認の欠如(例えば、TRP受容体アンタゴニスト)を正当化するのに十分重篤である有害作用の側面に直面する。米国では年間1億人を超える患者が急性又は慢性疼痛を経験し、また、限られた効力又は過度の副作用のために、既存薬による十分な緩和を得ないことが多い。
【0006】
高齢患者は、激しい痛みに対してより大きい感受性を示す傾向があり、米国老年医学会の最近のガイドラインは、オピオイドの一層の使用と非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)の縮小を提案している(10)。運動及び認知機能の障害は、特に、骨折のリスクの増加のために、若年患者よりも高齢者で身体を衰弱させるものとなり得る(7)。それゆえ、運動及び認知障害の低下を伴うオピオイドは、高まりつつある、満たされていないニーズである。
【0007】
δ又はκ受容体と比べてμオピオイド受容体に極めて選択的であるウシ及びヒト脳由来の天然の内在性ペプチドが記載されている(22、及びその全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,303,578号)。これらのペプチドは、強力な鎮痛薬であり、齧歯類の研究で測定されたように、乱用傾向(21)及び呼吸抑制(4,5)の低下の可能性を示した。天然ペプチドの限られた代謝安定性は、末梢投与後に齧歯類で強い鎮痛を生じさせるのに十分な代謝安定性の、エンドモルフィンの環化した、D−アミノ酸含有テトラペプチド類似体(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,885,958号)の開発につながった。この群に由来するリード化合物は、神経因性疼痛を軽減する上でモルヒネよりも3倍強力であり、乱用の可能性と関連付けられる動物モデルでの報酬特性の低下を示すことが報告された。これらの結果は前途有望であるが、同等又はそれよりも良好な特性を示すさらなる化合物の開発が望ましい。本発明は、これまでに記載されている材料よりも予想外に優れた溶解度及び副作用プロファイルを有するペプチド類似体を提供することによって、このニーズに対処するものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態は、(i)アミド化された親水性アミノ酸によるカルボキシ末端伸張、(ii)アミノ酸位置2における置換;又は(iii)(i)と(ii)の組合せを有することにより、これまでに記載されているテトラペプチド類似体とは異なっているエンドモルフィンのペンタペプチド及びヘキサペプチド類似体に関する。本発明のペンタペプチド及びヘキサペプチド類似体は、テトラペプチドと比べて溶解度の増加を示すと同時に、鎮痛対副作用の望ましい治療比を維持する。
【0009】
本発明の化合物は、高い親和性を有するμオピオイド受容体アゴニストとして作用する環状ペプチドである。これらの化合物は、急性疼痛、慢性疼痛、又は両方の緩和を提供し、かつ式Iの化合物を含むか、又はそれからなる:
(I) H−Tyr−c[X1−X2−X3−X4]−X5
【0010】
1及びX4は、各々独立に、酸性アミノ酸(すなわち、カルボン酸置換側鎖を含むアミノ酸)又は塩基性アミノ酸(すなわち、アミノ置換側鎖を含むアミノ酸)であり、但し、X1が、酸性アミノ酸(例えば、D−Asp又はD−Glu)である場合、X4は、塩基性アミノ酸(例えば、Lys、Orn、Dpr、又はDab)であり、逆もまた同じである。好ましくは、X1は、D−Asp、D−Glu、D−Lys、D−Orn、D−Dpr、又はD−Dabであり;一方、X4は、好ましくは、Asp、Glu、Lys、Orn、Dpr、又はDabである。X2及びX3は、各々独立に、芳香族アミノ酸(すなわち、その側鎖中に芳香族基を含むアミノ酸)である。例えば、X2は、好ましくは、Trp、Phe、又はN−アルキル−Pheであり、ここで、アルキル基は、好ましくは、1〜約6個の炭素原子、すなわち、(C1〜C6)アルキル基を含む。X3は、好ましくは、Phe、D−Phe、又はp−Y−Pheであり、ここで、Yは、NO2、F、Cl、又はBrである。X5は、−NHR、Ala−NHR、Arg−NHR、Asn−NHR、Asp−NHR、Cys−NHR、Glu−NHR、Gln−NHR、Gly−NHR、His−NHR、Ile−NHR、Leu−NHR、Met−NHR、Orn−NHR、Phe−NHR、Pro−NHR、Ser−NHR、Thr−NHR、Trp−NHR、Tyr−NHR、及びVal−NHRからなる群から選択され;ここで、Rは、H又はアルキル基(例えば、(C1〜C10)アルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、又はイソヘプチル)である。式Iのペプチドは、アミノ酸残基X1及びX4の側鎖のカルボン酸とアミノ置換基の間のアミド結合のために環状である(式中、「c[X1−X2−X3−X4]」として示される)。例えば、結合は、D−Lys、D−Orn、D−Dpr、D−Dab、Lys、Orn、Dpr、又はDabの側鎖アミノ基とD−Asp、D−Glu、Asp、又はGluの側鎖カルボキシル基との間で形成されるアミド結合であることができる。
【0011】
式Iのペプチドに関する本発明の一実施形態では、X5はNHRであり、RはHであり、かつX5は−NH2であることができる(すなわち、ペプチドは、アミド化されたペンタペプチドである)か、又はAla−NH2、Arg−NH2、Asn−NH2、Asp−NH2、Cys−NH2、Glu−NH2、Gln−NH2、Gly−NH2、His−NH2、Ile−NH2、Leu−NH2、Met−NH2、Orn−NH2、Phe−NH2、Pro−NH2、Ser−NH2、Thr−NH2、Trp−NH2、Tyr−NH2、若しくはVal−NH2であることができる(すなわち、ペプチドは、アミド化されたヘキサペプチドである)。特定の一実施形態では、X5はNH2である。他の特定の実施形態では、X5は、Ala−NH2、Arg−NH2、Asn−NH2、Asp−NH2、Cys−NH2、Glu−NH2、Gln−NH2、Gly−NH2、His−NH2、Ile−NH2、Leu−NH2、Met−NH2、Orn−NH2、Phe−NH2、Pro−NH2、Ser−NH2、Thr−NH2、Trp−NH2、Tyr−NH2、又はVal−NH2である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、X1が、D−Asp、D−Glu、D−Lys、又はD−Ornであり;かつX4が、Asp、Glu、Lys、又はOrnである、式Iのペプチドに関する。
【0013】
本発明の別の実施形態は、X5がNHRであり、Rが(C1〜C10)アルキルである、式Iの化合物に関する。
【0014】
本発明の別の実施形態は、X2の芳香族アミノ酸が、Trp、Phe、又はN−アルキル−Pheであり、N−アルキル−Pheのアルキル基が(C1〜C6)アルキルである、式Iのペプチドに関する。特定の一実施形態では、X2はN−メチル−Phe(N−Me−Phe)である。
【0015】
本発明の別の実施形態は、X2又はX3のいずれかの芳香族アミノ酸残基が、Phe、D−Phe、Trp、D−Trp、D−Tyr、N−アルキル−Pheであり、N−アルキル−Pheのアルキル基が、(C1〜C10)アルキル又はp−Y−Pheであり、式中、Yが、NO2、F、Cl、又はBrである、式Iのペプチドに関する。
【0016】
本発明の別の実施形態は、X3の芳香族アミノ酸が、Phe、D−Phe、又はp−Y−Pheであり、式中、Yが、NO2、F、Cl、又はBrである、式Iのペプチドに関する。特定の一実施形態では、X3はp−Cl−Pheである。
【0017】
本発明の別の実施形態は、以下からなる群から選択される式Iのペプチドに関する:
Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe−Glu]−NH2(配列番号:1);
Tyr−c[D−Glu−Phe−Phe−Lys]−NH2(配列番号:2);
Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe−Glu]−Gly−NH2(配列番号:3);
Tyr−c[D−Glu−Phe−Phe−Lys]−Gly−NH2(配列番号:4);
Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe−Asp]−NH2(配列番号:5);
Tyr−c[D−Glu−N−Me−Phe−Phe−Lys]−NH2(配列番号:6);及び
Tyr−c[D−Orn−Phe−p−Cl−Phe−Asp]−Val−NH2(配列番号:7)。
【0018】
本発明の別の態様は、式Iのペプチド及び薬学的に許容される担体(例えば、希釈剤又は賦形剤)を含む薬学的組成物に関する。
【0019】
本発明の更に別の態様は、オピオイドに応答する状態、又はオピオイド治療が当技術分野において標準的である状態を有する患者の治療方法における式Iのペプチドの使用に関する。そのような方法は、患者に、有効量の本発明の式Iのペプチドを投与することを含むか、又は有効量の本発明の式Iのペプチドを投与することからなる。(i)鎮痛(疼痛緩和)、(ii)下痢などの胃腸障害の緩和、(iii)オピオイド薬物依存のための治療、及び(iv)オピオイドの適応がある任意の状態の治療から選択される少なくとも1つの効果を提供する目的で、この方法の特定の実施形態に従うことができる。いくつかの実施形態では、式Iのペプチドを用いて、急性又は慢性疼痛を治療することができる。式Iのペプチドの用途としては、抗片頭痛薬、免疫調節薬、免疫抑制薬、又は抗関節炎薬としての用途も挙げられるが、これらに限定されない。疼痛又はオピオイド薬物依存の治療などの、本発明の方法の特定の実施形態は、オピオイド薬物乱用の病歴を有する患者に対するものである。本方法の特定の実施形態では、ペプチドは、非経口的に(例えば、静脈内に)投与される。本発明はまた、該治療方法のうちの1つにおいて使用するための式Iのペプチドに関する。
【0020】
本発明の別の態様は、μ−オピオイド受容体を本発明の化合物と接触させることによってμ−オピオイド受容体を活性化又は調節する方法、及びそのような治療における式Iのペプチドの使用に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、式Iのペプチドを用いて試料中のμオピオイド受容体の量を測定する方法に関する。本方法は、以下の工程を含むか、又は以下の工程からなることができる:(i)μオピオイド受容体を含有すると考えられる試料を式Iのペプチドと接触させて、化合物−受容体複合体を形成させること、(ii)この複合体を検出すること、及び(iii)形成された複合体の量を定量すること。
【0022】
本発明の別の態様は、μオピオイド受容体に結合する分子の存在を検出する競合アッセイ法を実施するための式Iのペプチドの使用に関する。本方法は、以下の工程を含むか、又は以下の工程からなることができる:(i)μオピオイド受容体に結合する分子を含有すると考えられる試料を、μオピオイド受容体及び式Iのペプチドと接触させること、ここで、この化合物と受容体は、化合物−受容体複合体を形成する;(ii)工程(i)で形成される複合体の量を測定すること;並びに(iii)工程(ii)で測定される複合体の量を、該試料の非存在下でμオピオイド受容体とペプチドの間で形成される複合体の量と比較すること。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】以下の開示で「化合物1」と記載される、Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe−Glu]−NH2(配列番号:1)を示す。化合物1について、構造式及び基本分子式、並びに分子量(MW)が示されている。
図2】以下の開示で「化合物2」と記載される、Tyr−c[D−Glu−Phe−Phe−Lys]−NH2(配列番号:2)を示す。化合物2について、構造式及び基本分子式、並びに分子量(MW)が示されている。
図3】以下の開示で「化合物4」と記載される、Tyr−c[D−Glu−Phe−Phe−Lys]−Gly−NH2(配列番号:4)を示す。化合物4について、構造式及び基本分子式、並びに分子量(MW)が示されている。
図4】化合物1のオピオイド受容体結合活性を示す。(A)「化合物1」(三角)又はDAMGO(四角)のμ受容体結合。(B)SNC80のδ受容体への結合に対する化合物1のアンタゴニスト活性。
図5】痛覚抑制及び呼吸に対する化合物の効果を示す。(A)モルヒネと比較した場合の痛覚抑制に対する化合物1及び2の効果。**=p<0.01。(B)モルヒネと比較した場合の20分間にわたる毎分呼吸量(MV)に対する化合物1及び2の効果。*p<0.05。***p<0.001。
図6】痛覚抑制及び運動障害に対する化合物2の効果を示す。(A)痛覚抑制に対する化合物2(黒塗りの三角)及び硫酸モルヒネ(MS、黒塗りの四角)の効果をテールフリック(TF)試験で測定した。また、運動行動に対する化合物2(白塗りの三角)及び硫酸モルヒネ(白塗りの四角)の効果を測定した。(*=p<0.05)。(B)棒グラフは、パーセント痛覚抑制のAUCに対するパーセント運動障害の曲線下面積(AUC)の比を示す。この比は、化合物2の場合よりもモルヒネの場合に有意に大きく(*p<0.05)、モルヒネでは、鎮痛と比べて運動障害がより大きいことと一致している。
図7】薬物乱用傾向に対する化合物の効果を示す。(A)痛覚抑制に対する化合物1(黒塗りの三角)、モルヒネ(黒塗りの四角)、及びビヒクル(黒塗りの丸)の効果をテールフリック(TF)試験で測定した。*p<0.05。(B)(A)に示したような最大痛覚抑制をもたらすことが示されたモルヒネ又は化合物1のいずれかの累積用量を、条件付け場所嗜好性(CPP)を誘導する能力について試験した。***p<0.01。
図8】モルヒネで処置した又は鎮痛薬で処置していないラットと比較した、化合物2で処置したラットの神経部分損傷(spared nerve injury)手術の前の時点と後の時点での足引っ込め応答(paw withdrawal response)を誘発するのに必要とされる足圧力のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
エンドモルフィン−1(Tyr−Pro−Trp−Phe−NH2、配列番号:8)及びエンドモルフィン−2(Tyr−Pro−Phe−Phe−NH2、配列番号:9)の環状ペンタペプチド及びヘキサペプチド類似体である式Iのペプチドを調製した。式Iの組成を有するペプチドの非限定的な例としては、配列中のアミノ酸残基2(X1)及び5(X4)の側鎖が、これらの側鎖間のアミド結合によって連結されている、下の化合物1〜7が挙げられる。化合物1〜7の式を表1に示す。
【表1】
【0025】
いくつかの実施形態では、式Iのペプチドは、位置3(X2)にN−アルキル化フェニルアラニンを有するペプチドを含む。本発明のペプチドにおいて好適なアルキル基としては、(C1〜C10)アルキル基、好ましくは(C1〜C6)アルキル基(例えば、メチル又はエチル)が挙げられる。化合物6は、その線状一次アミノ酸配列が位置3にN−メチル化フェニルアラニンを含有する環状類似体を示す。本発明の他のペプチドには、受容体結合及び効力を増強するために、位置4(X3)のアミノ酸がp−Y−フェニルアラニンであり、式中、Yが、NO2、F、Cl、又はBrである、化合物が含まれる。その線状一次アミノ酸配列が配列番号:7に提供されている例示的なペプチド(化合物7)は、位置4にp−クロロフェニルアラニン(p−Cl−Phe)を有する。
【0026】
化合物1(図1)、化合物2(図2)、化合物5、及び化合物6は、環状ペンタペプチドの例であり、化合物3、化合物4(図3)、及び化合物7は、本発明の環状ヘキサペプチドの例である。
【0027】
参考までに、本明細書に記載のアミノ酸の略語としては、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、バリン(Val)、オルニチン(Orn)、ナフチルアラニン(Nal)、2,3−ジアミノプロピオン酸(Dpr)、及び2,4−ジアミノ酪酸(Dab)が挙げられる。これらのアミノ酸及び他のアミノ酸のL−又はD−エナンチオマー形態を式Iのペプチドに含めることができる。他のアミノ酸、又はこれらの誘導体若しくは非天然形態、例えば、2009/2010 Aldrich Handbook of Fine Chemicalsに記載されているもの(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、特に、アミノ酸誘導体及び非天然アミノ酸を記載しているその中の節)を、本発明の化合物を調製する際に用いることができる。
【0028】
式Iにおいて、X1は、例えば、D−Asp、D−Glu、D−Lys、D−Orn、D−Dpr、又はD−Dabであることができ、X4は、例えば、Asp、Glu、Lys、Orn、Dpr、又はDabであることができる。一般に、アミノ酸又はその誘導体は、それがその側鎖にアミノ基又はカルボキシル基のいずれかを含有する場合、X1又はX4として用いることができる。いくつかの実施形態では、X1に用いられるアミノ酸は、そのようなアミノ酸のD−エナンチオマー形態であることができる。
【0029】
式I中のX2及びX3は、芳香族アミノ酸である。そのようなアミノ酸の例は、フェニルアラニン、ヘテロアリールアラニン、ナフチルアラニン(Nal)、ホモフェニルアラニン、ヒスチジン、トリプトファン、チロシン、アリールグリシン、ヘテロアリールグリシン、チロキシン、アリール−β−アラニン、及びヘテロアリール−β−アラニンからなる群から選択される非置換又は置換芳香族アミノ酸である。これらの芳香族アミノ酸の置換型の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,629,319号に開示されている。本明細書で使用される場合、「芳香族アミノ酸」は、その側鎖に芳香族基(芳香族炭化水素及び芳香族複素環基を含む)を含むα−アミノ酸を指す。
【0030】
いくつかの実施形態では、式I中のX2は、N−アルキル−Pheであることができ、その場合、アルキル基は、1〜約6個の炭素原子を含む。或いは、アルキル基は、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個の炭素を含むことができる。アルキル基は、例えば、メチル(すなわち、X2はN−Me−Pheである)、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、若しくはイソヘプチル基、又はこれらの任意の他の分岐形態であることができる。定義により、N−アルキル−Pheのアルキル基は、フェニルアラニンのα−アミノ基に連結されている。このアルファアミノ基は、本発明の特定のペプチド中のX1残基とのアミド結合に関与しており;それゆえ、X2のアルファアミノ基(N−アルキル−Pheの場合)は、それがそのようなペプチド中に存在するとき、三級アミドである。
【0031】
いくつかの実施形態では、式I中のX3は、パラ−Y−Phe(p−Y−Phe)であり、その場合、例えば、Yは、NO2、F、Cl、又はBrである。例えば、X3は、p−Cl−Pheであることができる。或いは、NO2、F、Cl、又はBr基は、Pheのフェニル環のオルト位又はメタ位で連結されることができる。本発明の化合物に、例えば、X2又はX3で組み込まれる任意の芳香族アミノ酸は、オルト位、メタ位、又はパラ位でそれに連結した上記の基を有することができる。
【0032】
溶解度
式Iのペプチドの溶解度(例えば、生理食塩水又は生理的緩衝液中)は、通常、エンドモルフィンの従来技術のテトラペプチド類似体と比べて増強されている。比較的疎水性のテトラペプチド配列Tyr−c−[D−Lys−Trp−Phe](配列番号:10)及びTyr−c−[D−Lys−Phe−Phe](配列番号:11)への親水性アミノ酸及びアミド化されたC−末端の付加は、予想外に高い溶解度の向上をもたらした一方で、機能性を維持又は改善した。例えば、化合物1は、これまでに記載されている化合物での約2mg/mL未満と比較して、水、生理食塩水、及び20%PEG/生理食塩水に、それぞれ、約43、21、及び90mg/mLで溶けた。溶解度の増加は、薬学的送達特性の改善と関連するが、その一方で、より高い溶解度は、親油性に依存し得る機能的活性(例えば、受容体結合)の低下と関連することも多い。しかしながら、驚くことに、下の実施例に記載されているように、本発明の化合物の機能的特性は損なわれず、実際には、通常改善される。
【0033】
式Iのペプチドの調製方法
式Iのペプチドは、適切な保護基及びカップリング剤を用いて、従来の溶液相法(2)又は固相法(18)により調製することができ;参考文献2及び20は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような方法は、通常、ペプチドの様々なアミノ酸残基上で様々な保護基を利用する。好適な脱保護法を用いて、特定の保護基又は全ての保護基を除去し、これには、固相合成を適用する場合に、樹脂を切り離すことが含まれる。ペプチドは、例えば、下記のように合成することができる。
【0034】
式Iのペプチドを、Fmoc化学によってRinkアミド樹脂上に合成した。t−ブチル基をTyr、Glu、Asp側鎖保護に用い、BocをLys、Orn、及びTrp側鎖保護に用いた。材料は全て、EMD Biosciences,Inc(San Diego,CA)から入手した。ペプチドを、Fmoc保護基の反復除去及び保護アミノ酸のカップリングによって、Rinkアミド樹脂上で組み立てた。HBTU(O−ベンゾトリアゾール−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート;CAS#94790−37−1)及びHOBT(N−ヒドロキシベンゾトリアゾール;CAS#2592−95−2)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中でカップリング試薬として用い、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を塩基として用いた。側鎖保護基の切断及び除去のために、樹脂をトリフルオロ酢酸及びトリイソプロピルシランの水性カクテル(TFA/TIS/H2Oカクテル)で処理した。粗ペプチドをジエチルエーテルで沈殿させ、濾過により回収した。
【0035】
線状Fmoc−Tyr−c[X1−X2−X3−X4]−X5前駆体の環化:約1mmolのペプチドを約1000mLのDMFに溶解させ、この溶液に、約2mmolのDIPEA、次いで、約100mLのHBTU(約1.1mmol)及びHOBT(約1.1mmol)のDMF溶液を添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空中で除去した。得られた固体残渣を5%クエン酸、飽和NaCl、飽和NaHCO3、及び水で洗浄した。最終的な固体をジエチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥させた。
【0036】
Tyr−c[X1−X2−X3−X4]−X5ペプチドの調製。上で得られた固体を20%ピペリジン/DMFに溶解させた。この混合物を室温で約1時間撹拌した。溶媒を真空中で除去した。残渣を10%水性アセトニトリル(MeCN/H2O)に溶解させ、凍結乾燥させた。
【0037】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて、粗凍結乾燥ペプチドの精製を行なった。プログラム可能な溶媒モジュール126及びダイオードアレイ検出器モジュール168からなるHPLCシステムGold 32 Karat(Beckman)をペプチドの精製及び純度制御に用いた。2つの溶媒:(A)水中の0.1%TFA及び(B)アセトニトリル中の0.1%TFAから作られた勾配を用いて逆相HPLCを行なった。分取実行のために、VYDAC(登録商標)218TP510カラム(250×10mm;Alltech Associates,Inc.)を、10分間にわたる溶媒A中の5〜20%の溶媒B、30分間にわたる20〜25%のB、1分間にわたる25〜80%のBという勾配、及び約4mL/分の流速の9分間にわたるアイソクラティック溶出にして用い、吸収を214nmと280nmの両方で測定した。同じ勾配を、約1mL/分の流速のVYDAC(登録商標)218TP54カラム(250×4.6mm)上での分析実行に用いた。
【0038】
薬学的調製物
本発明はまた、薬学的に許容される担体(例えば、希釈剤、錯化剤、添加剤、賦形剤、補助剤など)中に薬学的に有効な量のペプチドを含有する薬学的調製物を提供する。ペプチドは、例えば、塩形態、微結晶形態、ナノ結晶形態、共結晶形態、ナノ粒子形態、マイクロ粒子形態、又は両親媒性形態で存在することができる。担体は、外用、腸内適用、又は非経口適用に好適である有機又は無機の担体であることができる。本発明のペプチドは、例えば、錠剤、ペレット、カプセル剤、リポソーム、坐剤、鼻腔内スプレー、溶液、乳濁液、懸濁液、エアロゾル、標的化された化学送達系(15)、及び使用に好適な任意の他の形態のための通常の無毒な薬学的に許容される担体と組み合わせることができる。使用することができる担体の非限定的な例としては、水、グルコース、ラクトース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイド状シリカ、ジャガイモデンプン、尿素、及び固体形態、半固体形態、液体形態、又はエアロゾル形態の調製物を製造する際の使用に好適な他の担体が挙げられる。更に、補助剤、安定化剤、増粘剤、及び着色剤、並びに香料を用いることができる。本発明はまた、本明細書に記載されるような、疼痛及び関連疾患を治療するのに有用な薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、ビヒクル、又は希釈剤、例えば、生理的に許容し得るpH(例えば、pH7〜8.5)の水性緩衝剤、ポリマーベースのナノ粒子ビヒクル、リポソームなどと組み合わせた少なくとも1つの式Iのペプチドを含む。薬学的組成物は、任意の好適な剤形、例えば、液体剤形、ゲル剤形、固体剤形、クリーム剤形、又はペースト剤形で送達することができる。一実施形態では、組成物を、ペプチドの持続放出を生じるように適合させることができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、薬学的組成物としては、経口、直腸、鼻腔、局所(口腔及び舌下を含む)、経皮、膣、非経口(筋肉内、皮下、及び静脈内を含む)、脊髄(硬膜外、髄腔内)、並びに中枢(脳室内)投与に好適な形態が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、適切な場合には、個別の投薬単位で好都合に提供することができる。本発明の薬学的組成物は、薬学分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。いくつかの好ましい投与様式としては、静脈内(iv)、局所、皮下、経口、及び脊髄が挙げられる。
【0040】
経口投与に好適な薬学的製剤としては、各々、所定量のペプチドの1つ又は複数を散剤又は顆粒剤として含む、カプセル剤、カシェー剤、又は錠剤が挙げられる。別の実施形態では、経口組成物は、溶液、懸濁液、又は乳濁液である。或いは、ペプチドは、急速静注薬、舐剤、又はペーストとして提供することができる。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、従来の賦形剤、例えば、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、香味剤、防腐剤、又は湿潤剤を含有することができる。錠剤は、望ましい場合、当技術分野で周知の方法に従ってコーティングすることができる。経口液体調製物としては、例えば、水性又は油性の懸濁液、溶液、乳濁液、シロップ、又はエリキシルが挙げられる。或いは、組成物は、使用前に水又は別の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することができる。そのような液体調製物は、従来の添加剤、例えば、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含み得る)、防腐剤などを含有することができる。添加剤、賦形剤などは、通常、組成物中でのその意図される使用又は機能に好適で、かつ薬学的製剤技術において周知である濃度の範囲内で、経口投与用の組成物に含まれる。本発明のペプチドは、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約0.01ナノモル〜約1モル、好ましくは、少なくとも約1ナノモル〜約100ミリモルの範囲の濃度でペプチドの1つ又は複数を含むことができる。
【0041】
非経口、脊髄、若しくは中枢投与(例えば、ボーラス注射若しくは連続注入によるもの)又は羊水への注射のための薬学的組成物は、単位用量形態で、アンプル、充填済みシリンジ、少量の注入器に入れて、又は複数用量容器に入れて提供することができ、好ましくは、添加された防腐剤を含むことができる。非経口投与用の組成物は、懸濁液、溶液、又は乳濁液であることができ、かつ賦形剤、例えば、懸濁剤、安定化剤、及び分散剤を含有することができる。或いは、ペプチドは、滅菌固体の無菌的単離によるか、又は溶液からの凍結乾燥によって得られる、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水で構成するための粉末形態で提供することができる。添加剤、賦形剤などは、通常、組成物中でのその意図される使用又は機能に好適で、かつ薬学的製剤技術において周知である濃度の範囲内で、非経口投与用の組成物に含まれる。本発明のペプチドは、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約0.01ナノモル〜約100ミリモル、好ましくは、少なくとも約1ナノモル〜約10ミリモルの範囲の濃度でペプチドの1つ又は複数を含むことができる。
【0042】
表皮(粘膜表面又は皮膚表面)へのペプチドの局所投与用の薬学的組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ゲルとして、又は経皮パッチとして製剤化することができる。そのような経皮パッチは、浸透促進剤、例えば、リナロオール、カルバクロール、チモール、シトラール、メントール、t−アネトールなどを含有することができる。軟膏及びクリームは、例えば、好適な増粘剤、ゲル化剤、着色剤などを添加した、水性又は油性の基材を含有することができる。ローション及びクリームは、水性又は油性の基材を含有することができ、通常、1以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、着色剤なども含有する。ゲルは、好ましくは、水性担体基材を含み、かつゲル化剤、例えば、架橋ポリアクリル酸ポリマー、誘導体化多糖(例えば、カルボキシメチルセルロース)などを含む。添加剤、賦形剤などは、通常、組成物中でのその意図される使用又は機能に好適で、かつ薬学的製剤技術において周知である濃度の範囲内で、表皮への局所投与用の組成物に含まれる。本発明のペプチドは、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約0.01ナノモル〜約1モル、好ましくは、少なくとも約1ナノモル〜約100ミリモルの範囲の濃度でペプチドの1つ又は複数を含むことができる。
【0043】
口内での局所投与(例えば、口腔又は舌下投与)に好適な薬学的組成物としては、風味の付いた基材、例えば、スクロース、アカシア、又はトラガカントの中にペプチドを含むロゼンジ;不活性基材、例えば、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシアの中にペプチドを含むトローチ;並びに好適な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュが挙げられる。口内での局所投与用の薬学的組成物は、望ましい場合、浸透促進剤を含むことができる。添加剤、賦形剤などは、通常、組成物中でのその意図される使用又は機能に好適で、かつ薬学的製剤技術において周知である濃度の範囲内で、局所経口投与の組成物に含まれる。本発明のペプチドは、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約0.01ナノモル〜約1モル、好ましくは、少なくとも約1ナノモル〜約100ミリモルの範囲の濃度でペプチドの1つ又は複数を含むことができる。
【0044】
直腸投与に好適な薬学的組成物は、固体又は半固体(例えば、クリーム若しくはペースト)の担体又はビヒクルと組み合わせた本発明のペプチドを含む。例えば、そのような直腸組成物は、単位用量坐剤として提供することができる。好適な担体又はビヒクルとしては、ココアバター及び当技術分野で一般に用いられる他の材料が挙げられる。添加剤、賦形剤などは、通常、組成物中でのその意図される使用又は機能に好適で、かつ薬学的製剤技術において周知である濃度の範囲内で、直腸投与の組成物に含まれる。本発明のペプチドは、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約0.01ナノモル〜約1モル、好ましくは、少なくとも約1ナノモル〜約100ミリモルの範囲の濃度でペプチドの1つ又は複数を含むことができる。
【0045】
一実施形態によれば、膣投与に好適な本発明の薬学的組成物は、当技術分野で公知であるような担体と組み合わせた本発明のペプチドを含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレーとして提供することができる。或いは、膣投与に好適な組成物は、液体又は固体剤形で送達することができる。添加剤、賦形剤などは、通常、組成物中でのその意図される使用又は機能に好適で、かつ薬学的製剤技術において周知である濃度の範囲内で、膣投与の組成物に含まれる。本発明のペプチドは、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約0.01ナノモル〜約1モル、好ましくは、少なくとも約1ナノモル〜約100ミリモルの範囲の濃度でペプチドの1つ又は複数を含むことができる。
【0046】
鼻腔内投与に好適な薬学的組成物も本発明によって包含される。そのような鼻腔内組成物は、ビヒクル中の本発明のペプチドと、液体スプレー、分散性粉末、又は液滴を送達する好適な投与装置とを含む。液滴は、1以上の分散剤、可溶化剤、又は懸濁剤も含む水性又は非水性基材とともに製剤化してもよい。液体スプレーは、加圧パック、吹送器、噴霧器、又はペプチドを含むエアロゾルを送達する他の好都合な手段から好都合に送達される。加圧パックは、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は当技術分野で周知であるような他の好適なガスを含む。エアロゾルの投薬量は、一定量のペプチドを送達するバルブを提供することによって制御することができる。或いは、吸入又は吹送による投与用の薬学的組成物は、乾燥粉末形態、例えば、ペプチドと好適な粉末基材、例えば、ラクトース又はデンプンの粉末混合物の形態で提供することができる。そのような粉末組成物は、単位剤形、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチンパック、又はブリスターパックに入れて提供することができ、それらから、吸入器又は吹送器の助けを借りて、粉末を投与することができる。添加剤、賦形剤などは、通常、組成物中でのその意図される使用又は機能に好適で、かつ薬学的製剤技術において周知である濃度の範囲内で、鼻腔内投与の組成物に含まれる。本発明のペプチドは、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。例えば、典型的な組成物は、少なくとも約0.01ナノモル〜約1モル、好ましくは、少なくとも約1ナノモル〜約100ミリモルの範囲の濃度でペプチドの1つ又は複数を含むことができる。
【0047】
任意に、本発明の薬学的組成物は、例えば、併用療法として、1以上の他の治療剤を含むことができる。追加の治療剤は、医学及び薬学分野で周知であるルーチンの方法によって決定されるような、治療的に有用かつ有効な濃度範囲内で組成物中に含まれる。任意の特定の追加の治療剤の濃度は、単剤療法としてのその薬剤の使用に典型的なものと同じ範囲であってもよいし、又は濃度は、本発明のペプチドと組み合わせたときに相乗作用がある場合、典型的な単剤療法の濃度より低くてもよい。
【0048】
別の態様では、本発明は、疼痛の治療、胃腸障害と関連する不快感の治療、及び薬物依存の治療のための式Iのペプチドの使用を提供する。患者、例えば、ヒトを含む哺乳動物において、鎮痛(疼痛の軽減又は低減)、下痢などの胃腸障害の緩和、及び薬物依存の治療を提供するための方法は、前述の状態のうちの1つを患う患者に有効量の式Iのペプチドを投与することを含む。下痢は、感染性疾患、コレラ、又は癌療法に用いられるものを含む様々な薬物若しくは療法の作用若しくは副作用などの、いくつかの原因によって引き起こされ得る。好ましくは、ペプチドを非経口的又は経腸的に投与する。有効量のペプチドの投薬量は、治療すべき各々の個々の患者の年齢及び状態によって様々に異なり得る。しかしながら、好適な単位投薬量は、通常、約0.01〜約100mgの範囲である。例えば、単位用量は、約0.2mg〜約50mgの範囲であることができる。そのような単位用量は、1日に2回以上、例えば、1日に2回又は3回投与することができる。
【0049】
式Iのペプチドの実施形態は全て、「単離された」状態にあることができる。例えば、「単離された」ペプチドは、完全に又は部分的に精製されたペプチドである。場合によっては、単離された化合物は、より大きな組成物、緩衝系、又は試薬混合物の一部である。状況によっては、単離されたペプチドは、均一になるまで精製されていてもよい。組成物は、同じくその中に存在する他の全ての種の(モルベース又は質量ベースで)少なくとも約50、80、90、又は95%のレベルでペプチド又は化合物を含んでいてもよい。式Iのペプチドの混合物は、本発明によって提供される方法を実施する際に用いることができる。
【0050】
本発明の追加の実施形態は、本明細書で開示された式Iのペプチドを、例えば、薬学的製剤中で又は治療剤として使用する方法に関する。これらの方法は、単一のペプチド、又は組み合わせた複数のペプチド(すなわち、混合物)の使用を含んでいてもよい。従って、本発明の特定の実施形態は、式Iのペプチドを含む医薬、及びそのような医薬を製造する方法に取り入れられる。
【0051】
本明細書で使用される場合、「低下させる」、「阻害する」、「阻止する」、「防止する」、「軽減する」、又は「緩和する」という用語は、化合物(例えば、ペプチド)に関する場合、疾患、事象、又は活性が、化合物又は化合物を含む組成物の適用なしで通常存在するあり方と比較して、化合物が、疾患、事象、又は活性の発生、重症度、大きさ、量、又は関連症状を、少なくとも約7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、又は100%減少させることを意味する。「増加させる」、「上昇させる」、「増強する」、「上方調節する」、「改善する」、又は「活性化する」という用語は、化合物に関する場合、疾患、事象、又は活性が、化合物又は化合物を含む組成物の適用なしで通常存在するあり方と比較して、化合物が、疾患、事象、又は活性の発生又は活性を、少なくとも約7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、400%、500%、750%、又は1000%増加させることを意味する。
【0052】
以下の実施例は、本発明の特定の態様を示すために含まれている。本発明を実施する際に十分に機能することが知られている技術の典型となる、本実施例で開示された技術は、その実施の好ましい様式を構成するものとみなすことができることが当業者に理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、特定の開示された実施形態において多くの変更を行ない、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、同様の又は類似の結果をなおも得ることができることを理解すべきである。本実施例は、例示目的で提供されるものに過ぎず、限定するものであることを意図するものではない。
【実施例】
【0053】
実施例1:ヒトオピオイド受容体の結合及び活性化
式Iのペプチドは、ヒトμオピオイド受容体に対する驚くほど高い親和性(サブナノモル)を示し、δ及びκオピオイド受容体と比べて選択的結合を有していた。3H−DAMGO(トリチウム化された[D−Ala2、N−Me−Phe4、Gly−オール]−エンケファリン;CAS#78123−71−4)、3H−DPDPE(CAS#88373−73−3)、及び3H−U69593(CAS#96744−75−1)を用いて、ヒトのクローン化受容体を発現するCHO細胞由来の膜中で、それぞれ、μ、δ、及びκ受容体を標識をする標準的な結合アッセイで、化合物を試験した。表2に示すように、エンドモルフィン−1(EM1、配列番号:8)及びエンドモルフィン−2(EM2、配列番号:9)は、以前に報告されている最も選択的な内在性μアゴニストである。これらの天然オピオイドに基づく類似体は、選択性はあまり高くないが、μ受容体に対するより大きい親和性を示す。以前に記載されているテトラペプチドエンドモルフィン類似体(米国特許第5,885,958号;ck1、Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe](配列番号:10);ck2、Tyr−c[D−Lys−Phe−Phe](配列番号:11))は、試験した化合物の中で最も高い親和性を示した。親水性アミノ酸及びアミド化されたカルボキシ末端を含む式Iのペプチド(化合物1、2、5)は、高い親和性結合を保持したが、μ受容体に対する選択性を増加させた。
【表2】
【0054】
受容体活性化:GTPγS機能アッセイ。非加水分解性GTP類似体の35S−GTPγSを用いて、細胞膜に発現したクローン化ヒトオピオイド受容体の活性化を定量する標準的なアッセイで、3つのオピオイド受容体の機能的活性化を試験した。図4Aは、化合物1が、参照化合物のDAMGOよりも有意に大きい潜在能力を有する完全効力アゴニストであることを示している。図4Bは、化合物1がδアンタゴニストとしての予想外の完全効力を示すことを示している;すなわち、それは、参照δアゴニストのSNC80(CAS#156727−74−1)のED80用量によってもたらされるδ活性化を阻害することができる。表3は、試験した全てのアゴニストが、低ナノモルからサブナノモル濃度のEC50(有効濃度中央値)値を有する、μ受容体の強力な活性化因子であることを示している。全ての化合物は、μ受容体での完全効力(>90%)アゴニストであることが分かった。エンドモルフィン及び本発明の式Iの化合物は、受容体活性化に対する顕著な選択性を示し、δ活性化は、最大10μMの濃度で50%未満であり、>100000の選択性を示した。しかしながら、化合物1及び3は、完全効力δアンタゴニズムを示し;化合物1は、比較的低い濃度でこのアンタゴニズムを示した。
【表3】
a硫酸モルヒネ
【0055】
受容体活性化:β−アレスチン動員。β−アレスチンは、アゴニストによる活性化の後に、μオピオイド受容体に動員される細胞内タンパク質である。それは、多くの場合、周知のG−タンパク質介在性経路から独立している細胞内シグナル伝達経路を活性化することが示されている。β−アレスチンノックアウトマウスは、鎮痛の増加、並びに耐性、呼吸抑制、及び便秘などの副作用の減少を含む、モルヒネに対する応答性の変化を示すことが最近示された(16)。これらの結果は、モルヒネの鎮痛作用及び副作用が、細胞シグナル伝達プロセスの操作によって分離可能であることを示している。これらの知見は、「機能的選択性」、「偏ったアゴニズム」、「アゴニスト指向性シグナル伝達」、及び他の表現として様々に知られる最近の概念を支持する。この概念によれば、所与の受容体で異なるシグナル伝達カスケードを生じさせることができるアゴニストは、その受容体の他のアゴニストと比べて、異なるプロファイルの望ましい効果及び望ましくない効果をもたらすことができる。本発明の類似体のうちの3つを試験し、これらは、互いに異なりかつモルヒネとは異なるβ−アレスチン動員のパターン(低い効力を有する高い潜在能力から顕著な効力を有する中等度の潜在能力の範囲に及ぶ)を示した。先の実施例に記載された、モルヒネと比べた示差鎮痛作用/副作用プロファイルと合わせて、βアレスチンの結果は、これらの化合物が、有害副作用よりも鎮痛に有利に働く「機能的選択性」を示すことを示唆している。
【0056】
高いμアゴニスト選択性の有用性(すなわち、複数の受容体の活性化に起因する潜在的副作用の排除)を超えて、δアンタゴニズムは、オピオイド誘発性の耐性、依存性、及び報酬を減弱させると考えられる。1991年に初めて示され(1)、それ以降、数多くの研究で裏付けられたように、δアンタゴニストは、モルヒネ誘発性の耐性及び依存性を低下させる一方で、鎮痛を維持又は増強することができる。最近の研究(11)は、下記の条件付け場所嗜好性(CPP)試験で示されるような、μアゴニスト/δアンタゴニストの報酬特性の低下も示した。μアゴニスト/δアンタゴニストとしての及びμ/δ受容体二量体における式Iのペプチド(例えば、化合物1)の活性は、このペプチドが、耐性、依存性、及び報酬の低下を伴って、効果的な鎮痛を生じさせることを示している(18)。
【0057】
実施例2:モルヒネと比べて、静脈内投与後の持続期間はより長いが、呼吸抑制の低下を伴う鎮痛の提供
呼吸抑制は、オピオイドの使用における主な安全性の問題である。モルヒネによって生じるのと同じぐらい効果的な鎮痛を提供するが、呼吸抑制をあまり伴わないオピオイドは、オピオイド鎮痛薬の安全な使用にとって大きな進歩となるであろう。静脈内(i.v.)注射などの全身投与の後の有効性は、ペプチドベースの化合物にとっては稀であり、その臨床的有用性にとって重要なものとなるであろう。2つのペプチド(化合物1及び2)を、モルヒネと比べた、呼吸(分時換気量)及び痛覚抑制の持続期間に対するそれらの効果について試験した。留置頸静脈カテーテルを有するラットを、複数の呼吸パラメータを測定するためのBUXCO(商標)全身プレチスモグラフ装置内に入れた。ビヒクル(生理食塩水)のi.v.注射後20分間、ベースライン分時換気量を測定した。その後、動物にモルヒネ又は試験化合物を注射し、全ての化合物による分時換気量の最大阻害の期間である20分間、ベースラインからの変化を測定した。標準的なテールフリック(TF)試験を用いて、痛覚抑制を測定した。ベースライン試験を実施した後、20分の呼吸試験の最後に、及びその後は、TF潜伏期間が2×ベースラインTF未満に戻るまで20分毎に、動物をBUXCO(商標)チャンバー内に入れた。ベースライン潜伏期間は3〜4秒であり、カットオフ時間(「最大痛覚抑制」)は、組織損傷を避けるために、9秒に設定された。
【0058】
図5Aは、10mg/kg用量の化合物1及び2が、他の全ての処理よりも有意に長い痛覚抑制をもたらし(**=p<0.01)、5.6mg/kg用量が、10mg用量のモルヒネと同様の痛覚抑制をもたらしたことを示している。化合物1及び2のより大きな抗侵害受容作用にもかかわらず、呼吸の有意に(*p<0.05)小さい阻害が、両方の用量の化合物1、及び5.6mg/kg用量の化合物2で認められた(図5B)。これらの結果は、現在の標準的オピオイド鎮痛薬に優る予想外のかつ明らかにより安全な式Iのペプチドの治療プロファイルを示している。
【0059】
実施例3:神経運動協調及び認知機能の障害の低下を伴うモルヒネよりも持続期間が長い鎮痛の提供
神経運動及び認知障害は、2つの集団、すなわち、軍の戦闘部隊(この場合、差し迫った危機からの逃避が、障害のない運動及び認知技能を必要とし得る)、並びに高齢者(この場合、これらの障害は、骨折のリスクの増加をもたらし得るバランス障害を含む機能障害を悪化させ得る)において特に重要であるオピオイドの特徴である。
【0060】
実施例3a:神経運動協調
図6Aは、化合物2が、モルヒネ(MS)と比べて、有意により大きい痛覚抑制をもたらすが、有意に低下した運動障害をもたらすことを示している。両方の化合物をラットにおいて累積的静脈内(i.v.)用量で投与した。増加する4分の1対数用量を20分毎に投与し、テールフリック(TF)試験(尾部を熱光線から外すまでの潜伏期間の試験)、次いで、ロータロッド試験を、各々の注射の約15分後に実施した。各動物が、[(TFまでの潜伏期間−ベースライン潜伏期間)/(組織損傷を回避するための9秒の最大(カットオフ)時間)−ベースライン)]×100によって決定される、TF試験に対する90%を超える最大可能効果(%MPE)を示すまで、漸増用量を投与した。その後、動物を、3分間にわたって1分間に13回転(RPM)まで上昇する速度で回転するロッドの上に置き、ロッドから落下するまでの潜伏期間を測定した。薬物未投与状態で訓練する間の全180秒間、ロッドの上に一貫して留まり続けている動物のみを試験した。運動協調の%最大可能阻害(%MPI)を、100−(落下するまでの潜伏期間/180×100)として決定した。
【0061】
これら2つの化合物は、よく似た最大痛覚抑制の発現を示したが、135分及び155分でのモルヒネ群のTF潜伏期間よりも有意に(*=p<0.05)長いTF潜伏期間によって示されるように、化合物2は、有意に長い痛覚抑制をもたらした(図6A)。このより大きい痛覚抑制にもかかわらず、運動障害は、モルヒネの運動障害よりも有意に小さかった(図6B*p<0.05)。モルヒネによる運動行動の障害は、ビヒクル対照の運動行動の障害よりも有意に大きかったが(*p<0.05)、化合物2の運動行動の障害は、そうではなかった。
【0062】
実施例3b:認知障害
広く用いられている標準的な認知機能試験は、モリス水迷路(MWM)である。訓練中、ラットは、空間記憶に基づいて、隠れた避難台を探す方法を習得する。台までの平均潜伏期間、及び台からの平均距離(泳ぐスピードによって影響を受けない尺度)は、課題を習得するにつれて減少し、空間記憶の指標を提供する。訓練4日後、台までの潜伏期間、及び台からの平均距離の有意な増加によって示されるように、モルヒネの注射は、空間記憶の障害をもたらした。対照的に、モルヒネと同等又はそれよりも大きい痛覚抑制を提供する用量の化合物2は、有意な障害をもたらさなかった。これらの結果は、現在の標準的なオピオイド鎮痛薬と比べて、認知機能に関する式1のペプチドの予想外でかつ優れた治療プロファイルを示している。
【0063】
実施例4:モルヒネと比べて、持続時間はより長いが、報酬は低下している鎮痛の提供
オピオイドは、依然として、激しい痛みを緩和するための標準治療であるが、鎮痛薬の疼痛以外の用途への転用は、深刻な国家の問題になっている(oas.samhsa.gov/2k9/painRelievers/nonmedicalTrends.pdfというワールド・ワイド・ウェブのサイトで見られる、米国保健社会福祉省薬物乱用精神衛生管理局を参照されたい)。学界及び産業界における多大な努力は、「不正開封防止」型のオピオイド薬に重点が置かれているが、乱用の可能性を最小限に抑えて極めて効果的な鎮痛を提供するオピオイドを開発するのにほとんど成功していない。条件付け場所嗜好性(CPP)パラダイムは、薬物の報酬特性を示すための広く受け入れられているモデルであり、モルヒネ及びヘロインなどのオピオイドを含む、主要な種類の乱用薬物は全て、CPPを生じる。簡潔に述べると、まず第1日目に、動物に、1つの小さい「スタートボックス」と、知覚的に異なる2つのより大きいコンパートメントとからなる3つのコンパートメントの装置(この実施例では、グレーと、黒及び白のストライプ)を自由に探索させる。次の3日間、動物に、薬物のi.v.注射を投与し、1つのコンパートメントに閉じ込め、ビヒクルをもう一方に投与する。薬物が投与されるコンパートメント(ベースライン試験の間に決定される、好ましいか又は好ましくない)と同様に、薬物又はビヒクルを投与する時間(午前又は午後)を調整する。この偏りのない設計によって、薬物選好と薬物嫌悪の両方の検出が可能になる。3日間の条件付け(2日、3日、及び4日)の後、5日目に、動物を、薬物を処置しない状態で全てのコンパートメントに自由に出入りさせ、薬物対応コンパートメント(drug−paired compartment)内で費やされる絶対時間及びその時間の割合の変化を測定した。条件付け前のベースライン試験における薬物対応コンパートメント内で費やされる時間又は時間の割合の有意な増加と比べた、条件付け後の試験日における薬物対応コンパートメント内で費やされる時間又は時間の割合の有意な増加を、報酬特性及び潜在的乱用傾向を反映する条件付け場所嗜好性と解釈する。
【0064】
最大痛覚抑制をもたらすことが示されているモルヒネ又は化合物1のいずれかの累積用量(図7A)を、CPPを誘導する能力について試験したとき(図7B)、モルヒネは、薬物側で費やされる時間の有意な(***p<0.01)増加をもたらしたが、化合物1はそのような増加をもたらさず、それにもかからわず、化合物1では、その注射後140〜180分の間、有意に(*p<0.05)より大きい痛覚抑制(図7A)が認められた。これらの知見は、モルヒネと比べた、新規の類似体のより小さい乱用傾向と一致している。
【0065】
実施例5:慢性疼痛の軽減
慢性疼痛は、人口の大部分に影響を及ぼしている。慢性疼痛の一形態である神経因性疼痛は、治療が特に難しい。図8は、化合物2が、ラットの神経部分損傷(SNI)モデルによって誘導される神経因性疼痛の予想外に強力な緩和を提供することを示している。SNI手術の前(「手術前」)、足引っ込め応答を誘発するためには、Randall−Selitto装置を用いて後肢に適用される約177gの平均圧力が必要であった。手術の約7〜10日後、動物は、引っ込めを誘発するのに必要な平均圧力の低下(〜約70g)によって示される、痛覚過敏を示した。モルヒネ及び化合物2を、痛覚過敏の完全な軽減をもたらすために選ばれた用量で髄腔内送達により投与した。累積投与は、手術前ベースライン応答への回帰を表すED50が、モルヒネについては約1.4μg、化合物2については約0.018μgであることを示した。モルベースでは、化合物2は、神経因性疼痛に対して、モルヒネよりも160倍強力であった。同様の結果は、切開後(手術後)の疼痛及びフロイントの完全アジュバント(CFA)によって誘導される炎症性疼痛を含む、他の形態の慢性疼痛の後に認められた。上記の実施例は、式Iのペプチドが効果的である急性又は慢性疼痛の種類に関して、例示的ではあるが、網羅的ではない。
【0066】
モルヒネの慢性投与は、グリア細胞(アストログリア及びミクログリア)の活性化の増加及び「オピオイド誘発性痛覚過敏」によって示される、脊髄での炎症応答を生じさせることがいくつかの研究において示されている。初回投与後に同様の痛覚抑制をもたらす用量のモルヒネ及び化合物1を2回/日で3日間投与したとき、モルヒネは、化合物1よりも大きいグリア活性化をもたらした。これらの結果は、式1の化合物が、モルヒネと比較して、炎症応答と関連したより少ない副作用を誘発することを示唆している。
【0067】
本明細書で引用された刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各々の参考文献が参照により組み込まれることが個別的かつ具体的に示され、かつその全体が本明細書に示される場合と同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明者らによって知られている本発明を実施するための最良の形態を含む本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載されている。これらの好ましい態様の変形は、上記の説明を読めば当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、当業者が必要に応じてそのような変形を利用することを予期しており、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されているものとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、準拠法により認められるものとして、本明細書に添付されている特許請求の範囲に記載されている主題の全ての変更及び等価物を含む。本明細書で別途指示されない限り、或いは文脈と明らかに矛盾しない限り、これらの全ての可能な変形における上記の要素の任意の組合せが、本発明に包含される。
本発明の態様として、例えば以下のものがある。
〔1〕式Iの環状ペプチドであって:
(I) H−Tyr−c[X1−X2−X3−X4]−X5
式中、X1及びX4は、各々独立に、酸性アミノ酸又は塩基性アミノ酸であり;
2及びX3は、各々独立に、芳香族アミノ酸であり;
5は、NHR、Ala−NHR、Arg−NHR、Asn−NHR、Asp−NHR、Cys−NHR、Glu−NHR、Gln−NHR、Gly−NHR、His−NHR、Ile−NHR、Leu−NHR、Met−NHR、Orn−NHR、Phe−NHR、Pro−NHR、Ser−NHR、Thr−NHR、Trp−NHR、Tyr−NHR、又はVal−NHRであり、ここで、Rは、H又はアルキル基であり;かつアミノ酸X1及びX4の側鎖上のアミノ基とカルボン酸基の間にアミド結合があり;
但し、X1が酸性アミノ酸である場合、X4は塩基性アミノ酸であり;X1が塩基性アミノ酸である場合、X4は酸性アミノ酸であることを特徴とする、環状ペプチド。
〔2〕前記〔1〕に記載のペプチドであって:
(i)X1が、D−Lys、D−Orn、Lys、及びOrnからなる群から選択され;かつX4が、D−Asp、D−Glu、Asp、及びGluからなる群から選択されるか;又は
(ii)X1が、D−Asp、D−Glu、Asp、及びGluからなる群から選択され;かつX4が、D−Lys、D−Orn、Lys、及びOrnからなる群から選択される、ペプチド。
〔3〕前記〔1〕に記載のペプチドであって:
2が、Trp、Phe、及びN−アルキル−Pheからなる群から選択され、ここで、N−アルキル−Pheのアルキル基が、1〜約6個の炭素原子を含み;かつ
3が、Phe、D−Phe、及びp−Y−Pheからなる群から選択され、ここで、Yが、NO2、F、Cl、又はBrである、ペプチド。
〔4〕X2がN−メチル−Pheである、前記〔3〕に記載のペプチド。
〔5〕X3がp−Cl−Pheである、前記〔3〕に記載のペプチド。
〔6〕RがHであり、X5がNH2である、前記〔1〕に記載のペプチド。
〔7〕RがHであり、X5が、Ala−NH2、Arg−NH2、Asn−NH2、Asp−NH2、Cys−NH2、Glu−NH2、Gln−NH2、Gly−NH2、His−NH2、Ile−NH2、Leu−NH2、Met−NH2、Orn−NH2、Phe−NH2、Pro−NH2、Ser−NH2、Thr−NH2、Trp−NH2、Tyr−NH2、又はVal−NH2である、前記〔1〕に記載のペプチド。
〔8〕前記アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、又はイソヘプチル基である、前記〔1〕に記載のペプチド。
〔9〕前記〔1〕に記載のペプチドであって:
Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe−Glu]−NH2(配列番号:1)、
Tyr−c[D−Glu−Phe−Phe−Lys]−NH2(配列番号:2)、
Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe−Glu]−Gly−NH2(配列番号:3)、
Tyr−c[D−Glu−Phe−Phe−Lys]−Gly−NH2(配列番号:4)、
Tyr−c[D−Lys−Trp−Phe−Asp]−NH2(配列番号:5)、
Tyr−c[D−Glu−N−Me−Phe−Phe−Lys]−NH2(配列番号:6)、及び
Tyr−c[D−Orn−Phe−p−Cl−Phe−Asp]−Val−NH2(配列番号:7)からなる群から選択される、ペプチド。
〔10〕薬学的に許容される担体及び前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドを含む薬学的組成物。
〔11〕患者を治療する方法であって、前記患者に、有効量の前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドを投与することを含む、方法。
〔12〕鎮痛を提供するためか、胃腸障害の緩和を提供するためか、又は薬物依存の治療を提供するためのものである、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記胃腸障害が下痢である、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記患者が薬物乱用の病歴を有する、前記〔11〕に記載の方法。
〔15〕前記ペプチドが非経口的に投与される、前記〔11〕に記載の方法。
〔16〕μ−オピオイド受容体を活性化する方法であって、前記μ−オピオイド受容体を前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドと接触させることを含む、方法。
〔17〕試料中のμオピオイド受容体の量を測定する方法であって:
(i)μオピオイド受容体を含有すると考えられる試料を、前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドと接触させて、化合物−受容体複合体を形成させること;
(ii)工程(i)で形成される複合体を検出すること;及び
(iii)工程(ii)で検出される複合体の量を定量すること
を含む、方法。
〔18〕μオピオイド受容体に結合する分子の存在を検出する競合アッセイ法であって: (i)μオピオイド受容体に結合する分子を含有すると考えられる試料を、μオピオイド受容体及び前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドと接触させ、前記ペプチド及び受容体が、化合物−受容体複合体を形成すること;
(ii)工程(i)で形成される複合体の量を測定すること;並びに
(iii)工程(ii)で測定される複合体の量を、前記試料の非存在下で前記μオピオイド受容体と前記ペプチドの間で形成される複合体の量と比較すること
を含む、競合アッセイ法。
〔19〕疼痛の治療に使用するための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチド。
〔20〕薬物依存の治療に使用するための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチド。
〔21〕胃腸障害の治療に使用するための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチド。
〔22〕疼痛を治療するための医薬の調製のための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドの使用。
〔23〕薬物依存を治療するための医薬の調製のための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドの使用。
〔24〕胃腸障害を治療するための医薬の調製のための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドの使用。
〔25〕疼痛を治療するための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドの使用。
〔26〕薬物依存を治療するための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドの使用。
〔27〕胃腸障害を治療するための前記〔1〕又は〔2〕又は〔3〕又は〔4〕又は〔5〕又は〔6〕又は〔7〕又は〔8〕又は〔9〕に記載のペプチドの使用。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1'〕式Iの環状ペプチドであって:
(I) H−Tyr−c[X1−X2−X3−X4]−X5
式中、X1及びX4は、各々独立に、酸性アミノ酸又は塩基性アミノ酸であり;
2及びX3は、各々独立に、芳香族アミノ酸であり;
5は、Ala−NHR、Gly−NHR、Ile−NHR、Leu−NHR、又はVal−NHRであり、ここで、Rは、H又はアルキル基であり;かつアミノ酸X1及びX4の側鎖上のアミノ基とカルボン酸基の間にアミド結合があり;
但し、X1が酸性アミノ酸である場合、X4は塩基性アミノ酸であり;X1が塩基性アミノ酸である場合、X4は酸性アミノ酸であることを特徴とする、環状ペプチド。
〔2'〕前記〔1'〕に記載のペプチドであって:
(i)X1が、D−Lys、D−Orn、Lys、及びOrnからなる群から選択され;かつX4が、D−Asp、D−Glu、Asp、及びGluからなる群から選択されるか;又は
(ii)X1が、D−Asp、D−Glu、Asp、及びGluからなる群から選択され;かつX4が、D−Lys、D−Orn、Lys、及びOrnからなる群から選択される、ペプチド。
〔3'〕前記〔1'〕に記載のペプチドであって:
2が、Trp、Phe、及びN−アルキル−Pheからなる群から選択され、ここで、N−アルキル−Pheのアルキル基が、1〜6個の炭素原子を含み;かつ
3が、Phe、D−Phe、及びp−Y−Pheからなる群から選択され、ここで、Yが、NO2、F、Cl、又はBrである、ペプチド。
〔4'〕X2がN−メチル−Pheである、前記〔3'〕に記載のペプチド。
〔5'〕X3がp−Cl−Pheである、前記〔3'〕に記載のペプチド。
〔6'〕X1がD−アミノ酸である、前記〔1'〕に記載のペプチド。
〔7'〕RがHであり、X5が、Ala−NH2、Gly−NH2、Ile−NH2、Leu−NH2、又はVal−NH2である、前記〔1'〕に記載のペプチド。
〔8'〕前記アルキル基が、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、又はイソヘプチル基である、前記〔1'〕に記載のペプチド。
〔9'〕式:Tyr−c[D−Orn−Phe−p−Cl−Phe−Asp]−Val−NH2(配列番号:7)を有するペプチド。
〔10'〕薬学的に許容される担体及び前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は5又は6又は7又は8又は9に記載のペプチドを含む薬学的組成物。
〔11'〕試料中のμオピオイド受容体の量を測定する方法であって:
(i)μオピオイド受容体を含有すると考えられる試料を、前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は5又は6又は7又は8又は9に記載のペプチドと接触させて、化合物−受容体複合体を形成させること;
(ii)工程(i)で形成される複合体を検出すること;及び
(iii)工程(ii)で検出される複合体の量を定量すること
を含む、方法。
〔12'〕μオピオイド受容体に結合する分子の存在を検出する競合アッセイ法であって:
(i)μオピオイド受容体に結合する分子を含有すると考えられる試料を、μオピオイド受容体及び前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は5又は6又は7又は8又は9に記載のペプチドと接触させ、前記ペプチド及び受容体が、化合物−受容体複合体を形成すること;
(ii)工程(i)で形成される複合体の量を測定すること;並びに
(iii)工程(ii)で測定される複合体の量を、前記試料の非存在下で前記μオピオイド受容体と前記ペプチドの間で形成される複合体の量と比較すること
を含む、競合アッセイ法。
〔13'〕前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は〔5'〕又は〔6'〕又は〔7'〕又は〔8'〕又は〔9'〕に記載のペプチドを含む、疼痛を治療するための医薬組成物。
〔14'〕前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は〔5'〕又は〔6'〕又は〔7'〕又は〔8'〕又は〔9'〕に記載のペプチドを含む、薬物依存を治療するための医薬組成物。
〔15'〕前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は〔5'〕又は〔6'〕又は〔7'〕又は〔8'〕又は〔9'〕に記載のペプチドを含む、胃腸障害を治療するための医薬組成物。
〔16'〕疼痛を治療するための医薬の調製のための前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は〔5'〕又は〔6'〕又は〔7'〕又は〔8'〕又は〔9'〕に記載のペプチドの使用。
〔17'〕薬物依存を治療するための医薬の調製のための前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は〔5'〕又は〔6'〕又は〔7'〕又は〔8'〕又は〔9'〕に記載のペプチドの使用。
〔18'〕胃腸障害を治療するための医薬の調製のための前記〔1'〕又は〔2'〕又は〔3'〕又は〔4'〕又は〔5'〕又は〔6'〕又は〔7'〕又は〔8'〕又は〔9'〕に記載のペプチドの使用。
【0069】
参考文献


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]