特許第6039563号(P6039563)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許6039563-ナノ粒子引き抜き成形加工助剤 図000012
  • 特許6039563-ナノ粒子引き抜き成形加工助剤 図000013
  • 特許6039563-ナノ粒子引き抜き成形加工助剤 図000014
  • 特許6039563-ナノ粒子引き抜き成形加工助剤 図000015
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039563
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】ナノ粒子引き抜き成形加工助剤
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/14 20060101AFI20161128BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20161128BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20161128BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20161128BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20161128BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20161128BHJP
   B29K 101/00 20060101ALN20161128BHJP
【FI】
   B29B15/14
   C08L63/00 C
   C08L67/00
   C08K7/02
   C08K3/36
   C08K9/04
   B29K101:00
【請求項の数】1
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2013-529228(P2013-529228)
(86)(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公表番号】特表2013-537124(P2013-537124A)
(43)【公表日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】US2011051277
(87)【国際公開番号】WO2012037046
(87)【国際公開日】20120322
【審査請求日】2014年9月16日
(31)【優先権主張番号】61/383,906
(32)【優先日】2010年9月17日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100098486
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 憲一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン エル.サンホースト
(72)【発明者】
【氏名】エミリー エス.ゴーナー
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−505567(JP,A)
【文献】 特開平09−227693(JP,A)
【文献】 特開2009−061701(JP,A)
【文献】 特開2006−328425(JP,A)
【文献】 特開昭61−083651(JP,A)
【文献】 特開2001−181406(JP,A)
【文献】 特開平8−1804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 15/08−15/14
C08K 3/36
C08K 7/02
C08K 9/04
C08L 63/00
C08L 67/00
B29K 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化ポリマー複合材料を形成する方法であって、
液状の硬化性樹脂とナノ粒子とを含む樹脂系を連続繊維含浸させる工程と、
ダイを通して前記樹脂含浸繊維を引張する工程と、
前記ダイ内で前記樹脂系を少なくとも部分的に凝固させる工程と、
を含み、
前記樹脂系が0.5〜8重量%の前記ナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が、コア及び前記コアと組み合わされた反応性表面改質剤を含んでなる表面改質されたシリカナノ粒子及び表面改質されたカルサイトナノ粒子から選択されるものであり、
前記樹脂系を凝固させる工程が、前記液状の硬化性樹脂を前記反応性表面改質剤と反応させる工程を含むものであり、前記繊維強化ポリマー複合材料が少なくとも66体積%の前記連続繊維を含むものである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、引き抜き成形加工助剤に関する。より具体的には、表面改質ナノ粒子を含むナノ粒子、加工助剤、及び引き抜き成形プロセスでのそのようなナノ粒子の使用が記載される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡潔に、一態様では、本開示は、液状樹脂と、ナノ粒子とを含む樹脂系を用いて、連続繊維を含浸させる工程と、ダイを通して樹脂含浸繊維を引張する工程と、ダイ内で樹脂系を少なくとも部分的に凝固させる(例えば、架橋させる)工程と、を含む、繊維強化ポリマー複合材料を形成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、予形成機(preformer)を通して樹脂含浸繊維を引張し、繊維を減量する工程を更に含む。好適な繊維には、アラミド繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維が挙げられる。好適な樹脂には、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、及びポリエステル樹脂等の架橋性樹脂が挙げられる。
【0003】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、コア及びコアと組み合わされた少なくとも1つの表面改質剤を含む、例えば、シリカコア及びコアと共有結合した表面改質剤を含む、シリカナノ粒子、並びにカルサイト(calcite)コア及びコアとイオン的に会合した表面改質剤を含む、カルサイトナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、コア及びコアと会合した反応性表面改質剤を含む、反応性表面改質ナノ粒子を含み、樹脂を凝固させる工程は、樹脂を反応性表面改質剤と反応させる工程を含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力は、ナノ粒子を伴わないこと以外は同一の条件で同一の繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力と比較して、少なくとも30%低減される。いくつかの実施形態では、基準ライン速度を少なくとも20%超えるライン速度で繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力は、ナノ粒子を伴わずに基準速度で同一の繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力より小さい。
【0005】
別の態様では、本開示は、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法に従って作製された、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料を提供する。
【0006】
更に別の態様では、本開示は、硬化樹脂とナノ粒子とを含む樹脂系に埋め込まれた連続繊維を含む、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料を提供する。いくつかの実施形態では、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料は、少なくとも66体積%の連続繊維を含む。いくつかの実施形態では、連続繊維は、グラファイト繊維及び/又はガラス繊維を含む。
【0007】
上記の本開示の概要は、本発明のそれぞれの実施形態を説明することを目的としたものではない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明文においても記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、その説明文から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】代表的な引き抜き成形プロセス。
図2】代表的な引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
図3】ナノ粒子を含有する、引き抜き成形部品のSEM画像。
図4】ナノ粒子を含有する、引き抜き成形部品の別のSEM画像。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般に、「押出成形」は、材料が、例えばダイを通ってバレルを出る前に、相当量の剪断力及び混合を提供する、1つ以上の加熱されたスクリューを備えるバレルを通して、材料を押すことを伴う。対照的に、「引き抜き成形」プロセスでは、材料は、ダイを通して引張される。引き抜き成形は、均一な断面を有する、連続する繊維強化ポリマー複合材料を形成するためによく使用される。典型的な引き抜き成形プロセスでは、連続繊維及び樹脂は、複合材料部品が形状化され、樹脂が硬化される、加熱されたダイを通して引張される。次いで、引き抜き成形部品を生産するために、得られる繊維強化ポリマー複合材料を、冷却し、所望の長さに切断することができる。代表的な引き抜き成形部品には、ポール、柱、ハンドル、ロッド、チューブ、梁、例えばI形梁、甲板材、アローシャフト、支柱等が挙げられる。
【0010】
1つの代表的な引き抜き成形プロセスを図1に図示する。繊維105のリール104は、例えば、クリール102上に支持される。それぞれの繊維105は、多くの場合、繊維の束、例えば、トウ又は粗紡である。図示されていないが、また、繊維は、連続及び/又は不連続繊維を含有するマットとして提供することもできる。いくつかの実施形態では、繊維は、追加の繊維層、例えば、連続ストランドマット106と組み合わせられる。
【0011】
繊維がガイド110を通して引張される際、それらは、特定の引き抜き成形部品に所望されるように整合され、分布される。次いで、繊維105は、それらが樹脂系130で飽和される、又は「湿潤される」、樹脂浴120に入る。樹脂浴を出ると、繊維は、飽和した平らな繊維シートが予形成される、予形成機140に入り、「減量」と称されるプロセスで、余分な樹脂が除去される。
【0012】
いくつかの実施形態では、例えば、引き抜き成形部品の強度及び/又は表面特性を改善するために、樹脂浴の後、連続ストランドマット及び/又は表面ベールが適用されてもよい。一般に、追加される表面ベールは、余分な樹脂の部分で、それが予形成機140内で飽和した繊維から搾出される際に飽和される。いくつかの実施形態では、樹脂の温度を上昇させ、粘度を下げるために、予熱器、例えば高周波予熱器が、予形成機140とダイ150との間に置かれてもよい。
【0013】
整合及び減量の後、樹脂が浸透した繊維は、形成ダイ150を容易に通過する。一般に、ダイは、繊維及び樹脂が、所望の完成断面に一致するよう圧密されるように、精密に機械加工される。ダイ150は、樹脂系を硬化ないしは別の方法で硬くするために所望される温度プロファイルを提供するために、典型的に、1つ以上の区域内で加熱される。したがって、樹脂は、樹脂及び繊維が加熱されたダイを通過する際、硬化し、体積が減少する。
【0014】
いくつかの実施形態では、予形成機が存在せず、減量及び任意の表面ベールの飽和が、ダイへの入口で生じてもよい。加えて、材料が予形成されない際、材料のそれらの最終形状への変換は、ダイ内で生じてもよい。
【0015】
硬化され、引き抜き成形繊維強化ポリマー(「FRP」)複合材料160は、ダイを出た後、「把持部」セクション170に入る前に、冷却ないしは別の方法で処理されてもよい。引き抜き成形ダイを通して材料を連続して引張するために、例えば、キャタピラートラック175、油圧式クランプ、往復式引張ブロック等を含む、様々な把持手法が使用されている。把持セクションに続き、FRP複合材料は、例えば、切断鋸180を用いて、完成部品200として所望の長さに切断されてもよい。
【0016】
この引き抜き成形の概要に対する種々の修正が、十分に理解される。例えば、繊維を樹脂浴内で飽和させる代替えとして、樹脂は、典型的に、射出引き抜き成形と称されるプロセスにおいて、ダイに射出されてもよい。一般に、繊維は、クリールから巻き出され、所望するように整合され、分布され、ダイを通過させられる。ダイへの入口の近くで、樹脂が射出され、繊維が樹脂射出領域を通して引張される際、繊維が飽和され、樹脂がダイ内で硬化され、部品に切断することができる状態のFRP複合材料が生産される。
【0017】
代表的な引き抜き成形部品300を図2に図示する。引き抜き成形部品300は、繊維305と、十分に分散したナノ粒子340を含有する硬化樹脂330と、を含む。一般に、全ての繊維305が、引き抜き成形部品の長さ方向に整合される。ダイの適切な設計によって、図2に図示される代表的な長方形の断面に加えて、任意の既知の、又は所望の断面が生成されてもよい。
【0018】
多くの製造プロセスにおいて見られるように、引き抜き成形部品の機械的特性を向上させることが望まれる。典型的に、製造業者は、部品内の繊維体積分率を増加させることによって、これを達成することを試みる。しかしながら、周知であるように、繊維体積分率のわずかな増加でさえ、引張力、すなわち、ダイを通して樹脂及び繊維を引張するために要求される力の大幅な増加をもたらす可能性がある。また、処理速度及び処理量も決定的に重要であるため、達成することができる最大繊維装填に対する重大な実際的制限が存在する。
【0019】
一般に、複合材料内の繊維体積分率が低いほど、ダイ内での硬化中の樹脂の収縮によって生じる複合材料部品の体積の減少が大きくなる。得られる複合材料部品が、減少したダイ表面との接触を有するため、摩擦が低減され、より低い引張力が要求される。繊維体積が増加するにつれて、より少ない樹脂が存在し、より少ない収縮、より大きい摩擦、及びより大きい引張力がもたらされる。
【0020】
また、樹脂粘度も引張力に影響を及ぼす。一般に、粘度が増加するにつれて、より大きい引張力が要求される。いくつかの用途では、樹脂は、一部においてその粘度を低減するために、ダイに入る前に予熱されてもよい。
【0021】
本発明者は、いくつかの実施形態では、樹脂系へのわずかな量のナノ粒子の混入でさえ、固定の繊維装填での引張力の飛躍的かつ予期されぬ低減をもたらすことができることを発見した。この効果を利用して、最大所望引張力を超過することなく、繊維体積装填及び/又は処理速度を増加させることができる。これらの結果は、樹脂系へのナノ粒子の追加が、粘度を上昇させ、収縮を低減することで知られており、これらの両方は、一般に、要求される引張力を増加させるだけに尚更驚きである。
【0022】
引張力をある所望の最大値未満に維持することに加えて、また、安定した引張力を維持することも望ましい。多くの場合、突然、又は緩やかでさえ、引張力の増加は、通常、ダイへの入口での、又はダイ内での処理問題を示す。これは、ダイが清掃されるか、又は他の変数が調整される際の生産の中断をもたらす可能性がある。また、そのようなプロセスの一時的な中断又は停止は、ラインの移動が再開される際に引張力の急上昇を引き起こす可能性もある。したがって、より低く、不安定な引張力より、より高く、安定した引張力がより望まれることがある。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明者は、わずかな量のナノ粒子の追加でさえ、安定した引張力をもたらすことができることを発見した。引張力の低減は、ほとんどの場合に望まれるが、平均引張力がナノ粒子を伴わない同様の系より高いときでさえ、より高いが安定した引張力は、許容可能であり、繊維体積装填、ライン速度、及び樹脂粘度等の他のパラメータの選択におけるより高い柔軟性を提供する。
【0024】
樹脂系
本明細書で使用されるとき、用語「樹脂系」は、表面改質ナノ粒子、樹脂成分、並びに硬化剤(hardener)、硬化剤(curative)、開始剤、促進剤、架橋剤、強化剤、及び充填剤(例えば、粘土)等の任意の追加要素の組み合わせを指す。本明細書で使用されるとき、用語「樹脂成分」は、樹脂と反応性希釈剤を集合的に指す。
【0025】
樹脂
一般に、本開示の様々な実施形態では、任意の既知の樹脂が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、硬化性樹脂が、好ましいことがある。一般に、引き抜き成形プロセスと適合性のある任意の既知の硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、及びビニルエステル樹脂が使用されてもよい。
【0026】
エポキシ樹脂は、当該技術分野において周知であり、1つ以上のエポキシ基を含有する化合物、又はこれら化合物の混合物を含む。この化合物は、飽和若しくは不飽和であってもよく、脂肪族、脂環式、芳香族、若しくは複素環式であってもよく、又はこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、2つ以上のエポキシ基を含有する化合物(すなわち、ポリエポキシド)が好ましい。
【0027】
使用できるポリエポキシドとして、例えば、脂肪族ポリエポキシド及び芳香族ポリエポキシドの両方が挙げられるが、高温用途においては芳香族ポリエポキシドが好ましい場合がある。芳香族ポリエポキシドは、少なくとも1つの芳香環構造、例えばベンゼン環と、2つ以上のエポキシ基と、を含有する化合物である。代表的な芳香族ポリエポキシドには、多価フェノールのポリグリシジルエーテル(例えば、ビスフェノールA誘導体樹脂、エポキシクレゾール−ノボラック樹脂、ビスフェノールF誘導体樹脂、エポキシフェノール−ノボラック樹脂)、芳香族カルボン酸のグリシジルエステル、及び芳香族アミンのグリシジルアミンが挙げられる。代表的なエポキシ樹脂には、ビスフェノールA及びビスフェノールFを主成分とするもの、例えば、Hexion Specialty Chemicals,Inc.(Houston,Texas)から商標名EPON(商標)で入手可能なもののうちのいくつかが挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態では、硬化性樹脂は、エチレン性不飽和硬化性樹脂であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂を使用してもよい。いくつかの実施形態では、不飽和ポリエステル樹脂は、1つ以上のアルコール(例えば、多価アルコール)との、1つ以上のカルボン酸又はこれらの誘導体(例えば、無水物及びエステル)の縮合生成物である。
【0029】
他の実施形態では、ビニルエステル樹脂が使用されてもよい。本明細書で使用するとき、用語「ビニルエステル」は、エチレン性不飽和モノカルボン酸とのエポキシ樹脂の反応生成物を指す。代表的なエポキシ樹脂には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,Ohio)から入手可能なEPON 828)が挙げられる。モノカルボン酸の例としては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。このような反応性生成物はアクリル性又はメタクリル性エステルであるが、用語「ビニルエステル」は、ゲルコート産業で一貫して使用されている。(例えば、Handbook of Thermoset Plastics(Second Edition),William Andrew Publishing,page122(1998)を参照のこと。)
更に他の実施形態では、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(マルチ)(メタ)アクリレート、及びエポキシ(マルチ)(メタ)アクリレートを含め、(メタ)アクリレート樹脂を使用してもよい。本明細書で使用するとき、用語(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを指し、すなわち、エチル(メタ)アクリレートは、エチルアクリレート及び/又はエチルメタクリレートを指す。
【0030】
反応性希釈剤
硬化性樹脂の選択に応じて、いくつかの実施形態では、樹脂システムは更に反応性希釈剤を含んでもよい。代表的な反応性希釈剤として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、メチルメタクリレート、ジアリルフタレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、並びにその他モノ−及び多官能基(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂の反応性希釈剤には、例えば、Hexion Specialty Chemicals(Columbus,Ohio)から商標名HELOXYで入手可能なもののうちのいくつかを含む、単官能及び多官能脂肪族並びに芳香族グリシジルエーテルが挙げられる。代表的な反応性希釈剤には、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、p−第三級ブチルフェニルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、及びシクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0032】
表面改質ナノ粒子
一般に、「表面改質ナノ粒子」は、コアの表面に貼着された表面処理剤を含む。いくつかの実施形態では、コアは実質的に球状である。いくつかの実施形態では、コアは主要粒径が比較的均一である。いくつかの実施形態では、コアは狭い粒径分布を有する。いくつかの実施形態では、コアは実質的に完全に縮合している。いくつかの実施形態では、コアは非晶質である。いくつかの実施形態では、コアは等方性である。いくつかの実施形態では、コアは少なくとも部分的に結晶質である。いくつかの実施形態では、コアは実質的に結晶質である。いくつかの実施形態では、粒子は実質的に非凝集性である。いくつかの実施形態では、粒子は、例えばヒュームドシリカ又は焼成シリカとは対称的に、実質的に非凝集性である。
【0033】
本明細書で使用するとき、「集塊した」とは、通例、電荷又は極性により互いに保持し合っている主要粒子の弱い結合を表現する。集塊した粒子は、典型的に、例えば、集塊した粒子が液体に分散する際に遭遇した剪断力により、より小さな塊に分解され得る。広くは、「凝集した」及び「凝集体」とは、例えば、化学的残基処理、化学的共有結合、又は化学的イオン結合でしばしば互いに結合し合った主要粒子が強く組み合わされていることを意味する。凝集体の、より小さな存在物への更なる分解は、達成するのが非常に困難である。典型的に、凝集粒子は、例えば、液体中の凝集粒子の分散中に遭遇した剪断力で、より小さな存在物に分解されない。
【0034】
シリカナノ粒子
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、シリカナノ粒子を含む。本明細書で使用されるとき、用語「シリカナノ粒子」は、シリカ表面を有するコアを有するナノ粒子を指す。これには、実質的に全てのシリカ、並びにシリカ表面を有する他の無機(例えば、金属酸化物)又は有機コアを含むナノ粒子コアが挙げられる。いくつかの実施形態では、コアは金属酸化物を含む。任意の既知の金属酸化物が使用できる。代表的な金属酸化物として、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、バナジア、クロミア、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化亜鉛、セリア、及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、コアは、非金属酸化物を含む。
【0035】
市販のシリカは、Nalco Chemical Company(Naperville,Illinois)から入手可能なもの(例えば、NALCO 1040、1042、1050、1060、2326、2329);Nissan Chemical America Company(Houston,Texas)から入手可能なもの(例えば、SNOWTEX−ZL、―OL、−O、−N、−C、−20L、−40、及び−50);及びAdmatechs Co.,Ltd.(Japan)から入手可能なもの(例えば、SX009−MIE、SX009−MIF、SC1050−MJM及びSC1050−MLV)が挙げられる。
【0036】
シリカナノ粒子の表面処理剤
一般に、シリカナノ粒子の表面処理剤は、ナノ粒子の表面に共有結合によって化学的に付着することができる第1の官能基を有する有機化学種であり、付着された表面処理剤は、ナノ粒子の1つ又は複数の特性を変化させる。いくつかの実施形態では、表面処理剤は、コアに付加するために、3つ以下の官能基を有する。いくつかの実施形態では、表面処理剤は、例えば平均分子量1000gm/モル未満の低い分子量を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、表面改質ナノ粒子は反応性であり、すなわち、本開示のナノ粒子を表面改質するために使用する少なくとも1つの表面処理剤は、1つ以上の硬化性樹脂及び/又は樹脂系の1つ以上の反応性希釈剤と反応することのできる第2の官能基を含んでもよい。清澄性のために、ナノ粒子は、反応性のときでも、樹脂系の樹脂成分の構成要素とは考えられない。
【0038】
表面処理剤は、多くの場合、ナノ粒子の表面に付着することができる1つ以上の複数の第1の官能基を含む。例えば、アルコキシ基は、シリカナノ粒子の表面上のシラノール基と反応して表面処理剤とシリカ表面との間に共有結合を形成することができる共通の第1官能基である。複数のアルコキシ基を有する表面処理剤の例には、トリアルコキシアルキルシラン(例えば、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリルレート)とトリアルコキシアリールシラン(例えば、トリメトキシフェニルシラン)が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、カルサイトナノ粒子を含む。カルサイトは、炭酸カルシウムの結晶形であり、典型的に、菱面体晶を形成する。いくつかの実施形態では、カルサイトコアの少なくとも70%、例えば、少なくとも75%は、400nm未満の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、カルサイトコアの少なくとも90%、いくつかの実施形態では、少なくとも95%、又は更には少なくとも98%が、400nm未満の平均粒径を有する。
【0040】
カルサイトナノ粒子の表面改質剤
一般に、表面改質剤は、少なくとも結合基と、相溶化セグメントと、を含む。
【0041】
Comp.Seg.−結合基;
(式中、「Comp.Seg.」は、表面改質剤の相溶化セグメントを指す。)
相溶化セグメントは、カルサイトナノ粒子の硬化性樹脂との相溶性を改善するように選択される。概して、相溶化基の選択は、硬化性樹脂の性質、ナノ粒子の濃度、及び所望の相溶性の度合いを含む、多くの要因によって決まる。エポキシ樹脂系に対して、有用な相溶化剤としては、ポリアルキレンオキシド、例えば、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
結合基がカルサイトに結合し、表面改質剤をカルサイトコアに結びつける。表面改質剤がシリカに共有結合される多くのシリカ系ナノ粒子系とは異なり、本開示の表面改質剤は、カルサイトにイオン結合される(例えば、会合する)。
【0043】
組成物の処理中にカルサイトコアと表面改質剤を保持するために、カルサイトに対して高結合エネルギーを有する結合基を選択することが望ましい場合がある。結合エネルギーは、密度汎関数理論計算を使用して予測することができる。いくつかの実施形態では、計算された結合エネルギーは、少なくとも0.6、例えば、少なくとも0.7電子ボルトであり得る。概して、結合エネルギーが大きくなるほど、結合基が粒子表面とイオン的に会合した状態のままでいる可能性は大きくなる。いくつかの実施形態では、少なくとも0.8、例えば、少なくとも0.9、又は更には少なくとも0.95の電子ボルトの結合エネルギーが有用であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、結合基は、ホスホン酸及び/又はスルホン酸を含む。いくつかの実施形態では、表面改質剤はまた、反応基、すなわち、例えば、硬化プロセス中に硬化性樹脂と反応することが可能な基を含む。これは、樹脂マトリックスに強く結合されるナノカルサイト粒子をもたらすことができ、得られた硬化ナノ複合材料の物理的特性の改善をもたらし得る。概して、反応基は、硬化性樹脂の性質に基づき選択される。いくつかの実施形態では、反応基は、相溶化セグメントの末端部に位置してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、連結基が存在し、相溶化セグメントを結合基と結びつける。
【0046】
Comp.Seg.−連結基−結合基。
【0047】
例えば、いくつかの実施形態では、表面改質剤は、ポリエーテルアミンを含む。代表的なポリエーテルアミンとしては、Huntsman Corporation(The Woodlands,Texas)から商品名JEFFAMINE(登録商標)で入手可能なものが挙げられる。ポリエーテルが相溶化セグメントとしての役割を果たす一方で、アミンは、相溶化セグメントを結合基と連結する連結基である。
【0048】
いくつかの実施形態では、表面改質剤は、両性イオン、すなわち、ゼロの正味荷電を帯びるが、異なる原子上で形式的な正及び負電荷を帯びることが可能である、化合物を含む。いくつかの実施形態では、形式的な負電荷は、結合基により担持される。いくつかの実施形態では、形式的な正電荷は、アミンの窒素原子、例えば、アミン連結基上で担持される。そのような実施形態では、アミンは、連結基及び反応基の両方としての役割を果たし得る。
【0049】
多モード粒径分布(Multimodal Particle Size Distribution)
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、多モード粒径分布を達成するように選択される。一般に、多モード分布は、2つ以上のモードを有する分布であり、すなわち、2モード分布は2つのモードを呈し、3モードは、3つのモードを呈する。
【0050】
いくつかの実施形態では、多モード分布の表面改質ナノ粒子は、50ナノメートル(nm)以上250nm以下の数平均粒径を有する第1モード(TEMによって決定された)を有する。いくつかの実施形態では、第1モードの平均粒径は、少なくとも50nm、少なくとも60nm、又は少なくとも70nmである。いくつかの実施形態では、第1モードの平均粒径(「D1」)は、150nm以下、例えば、100nm以下、更には80nm以下である。
【0051】
いくつかの実施形態では、多モード分布の表面改質ナノ粒子は、第2モードを有する。第2モードでのナノ粒子の数平均径は、第1モードのナノ粒子の平均径より小さい。いくつかの実施形態では、第2モードの平均粒径(D2)は、50nm以下、例えば、30nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下である。いくつかの実施形態では、D2は、少なくとも3nm、例えば、少なくとも5nm、例えば、少なくとも10nm、更には少なくとも20nmである。いくつかの実施形態では、D2は、3nm以上10nm以下である。いくつかの実施形態では、D2は、20nm以上50nm以下である。
【0052】
繊維
一般に、繊維強化ポリマー複合材料で使用するのに好適な任意の繊維が使用されてもよい。代表的な繊維には、炭素(例えば、グラファイト)繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、ポリイミド繊維、ポリアミド繊維、及びポリエチレン繊維が挙げられる。また、材料の組み合わせが使用されてもよい。概して、繊維の形態は、特に限定されない。代表的な繊維形態には、個々の連続繊維、撚糸、粗紡、及び編組構造の一方向アレイが挙げられる。また、織布及び不織布マットも挙げられる。
【0053】
いくつかの実施形態では、また、本開示の樹脂系は、任意の数の周知の添加剤も含む。代表的な添加剤には、硬化剤(hardener)、硬化剤(curative)、開始剤、促進剤、架橋剤、強化剤、及び充填剤(例えば、粘土)が挙げられる。一般に、少なくとも1マイクロメートル、例えば、少なくとも2マイクロメートル、又は更には少なくとも5マイクロメートルの平均粒径を有する、大きい充填剤が使用されてもよい。
【実施例】
【0054】
【表1】
【0055】
試験手順
粒径手順
ナノ粒子の粒径は、HORIBA LA−950を使用して、レーザー回析によって測定した。ナノ粒子分散物をアセトンで約1%固体に希釈した。次いで、透過性が85%〜95%の推奨レベルの間になるまで、サンプルをアセトンで充填された測定セルに添加した。計算のための光学模型は、カルサイトに1.6000、及びアセトンに1.3591の屈折率を使用し、球形粒子であると推定した。平滑化のために第2の差動法が使用され、150回の反復に基づいた。粒径の報告値は、体積分率平均及び静的光散乱に基づいた。
【0056】
ガスクロマトグラフィー(GC)手順
ガスクロマトグラフィーは、残留溶媒の分析に使用されていた。ガスクロマトグラフィーは、HP−5MSカラムを備えたAGILENT 6890Nガスクロマトグラフを使用して行われた(長さ30メートルと内径320マイクロメートルを有する(5%フェニル)−メチルポリシロキサン(クロマトグラフとカラムは両方とも、Agilent Technologies,Incorporated(Santa Clara,California)から入手可能))。以下のパラメータ、1マイクロリットルアリコートの10%サンプル溶液(GC等級テトラヒドロフラン中)を注入、250℃、9.52psi(66kPa)、及び111mL/分の総流入量の分離流入モード設定、9.52psi(66kPa)のカラム定圧モード設定、速度を34センチメートル/秒に設定、総ガス流量は2.1mL/分、検出器及び注入器温度は250℃、並びに40℃の平衡で5分間、続いて260℃まで20℃/分の上昇速度の温度シーケンス、を採用した。熱伝導性検出器を使用した。
【0057】
熱重量分析手順
熱重量分析を使用して、樹脂系のシリカ又はカルサイト含有量を測定した。TA Instruments Model Q500 TGA及びその関連ソフトウェア(TA Instruments(New Castle,Delaware)から入手可能)を使用し、空気中で35℃から900℃まで摂氏20度(℃)/分の温度上昇速度を採用して、サンプルを分析した。シリカ含有サンプルについて、850℃で残っているサンプルの重量(初期重量の割合としての)を、不燃性材料の重量%として取得し、シリカ固体である生成物の重量%として報告した。カルサイト含有サンプルについて、残重量は、カルサイトから全ての有機物及び二酸化炭素を揮発させた後にサンプル中に残るCaOであると推定した。重量%のCaO残留物を0.56で割ることにより、元のサンプル中のカルサイト濃度を計算した。
【0058】
粘度手順
20rpmのRVスピンドル#4を伴うBrookfield DVII(Brookfield,Middleboro,MA)を使用して、樹脂粘度を測定した。粘度をパスカル秒で報告した。
【0059】
1157グラムのNALCO 2326シリカナノ粒子ゾル(水分散液中に16.1重量%の5nmのシリカ)をガラス容器内に定置することによって、表面改質シリカナノ粒子を調製した。別個の容器に、2265グラムの1−メトキシ−2−プロパノール、及び64.5グラムのトリメトキシフェニルシランをかき混ぜながら添加した。1−メトキシ−2−プロパノール混合物を、約5分間にわたり、NALCO 2326ゾルに連続してかき混ぜながら添加した。得られた均一な溶液を、80℃のオーブンで16時間加熱した。このプロセスを数回繰り返し、1つのバッチに組み合わせた。得られたゾル(ゾル−1)は、水及びメトキシプロパノールの混合物中に、5.3重量%の表面改質シリカを含有した。
【0060】
1.689重量部のNALCO 2329Kシリカナノ粒子ゾル(水分散液中に40.8重量%の70〜95nmのシリカ)を、上部が開放されたステンレススチール混合器内に定置することによって、追加の表面改質シリカナノ粒子を調製し、1重量部の1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで、0.0197重量部のトリメトキシフェニルシランを、混合物にゆっくりと添加した。混合物を空気圧駆動式インペラーで30分間攪拌した。
【0061】
熱反応器手順
PCT公開番号WO2009/120846(A2)に記載されたような27リットルの連続流水熱反応器を使用して、シリカ微粒子を表面官能化した。27リットル水熱反応器は、18.3メートルの外径(OD)1.27cmと内径(ID)1.09cmのステンレス鋼管、それに続く12.2メートルのOD 0.95cmとID 0.77cmのステンレス鋼管、それに続く198.1メートルのID 1.27cmの高強度304ステンレス鋼編外装のPTFE滑腔内側管を備えていた。水熱反応器内の油温度を、155℃に維持し、TESCOM背圧調整器(TESCOM(Elk River,MN))を、2.14MPa(310psig)に維持した。隔膜ポンプ(LDC1 ECOFLOW,American Lewa(Holliston,MA))を使用して、流量を制御して滞留時間を制御し、それにより水熱反応器内の流量が770mL/分になり、滞留時間が35分になるようにした。連続流水熱反応器からの流出液をHDPEドラムに収集した。得られたゾル(ゾル−2)は、水及びメトキシプロパノールの混合物中に、25.4重量%の表面改質シリカを含有した。
【0062】
14.6kgのEPON 828エポキシ樹脂を3.6kgのHELOXY 107エポキシ樹脂と組み合わせることによって、第1の樹脂系(「RS−1」)を調製した。
【0063】
12.4kgのゾル−1、90.9kgのゾル−2、19.1kgのEPON 826エポキシ樹脂、4.8kgのHELOXY 107エポキシ樹脂、及び16.9kgのメトキシプロパノールを、380リットルケトルに撹拌しながら添加することによって、第2の樹脂系(「RS−2」)を調製し、供給混合物を形成した。ケトルを25℃に維持し、成分を最低14時間攪拌した。
【0064】
WFE手順
BLBシリーズロータリー外平歯車、及び化学デューティギアポンプ(Zenith Pumps(Sanford,NC))を使用する、1平方メートルのBUSS FILTRUDER向流高分子加工機を使用して、混合物を、米国仮出願第61/181052号(2009年5月26日に出願、代理人整理番号65150US002)に記載されるワイプドフィルムエバポレーター(WFE)の上入口に計量供給した。WFEロータ(BUSS Filmtruder型)を25馬力、340rpmに設定した。2.6〜2.8kPaのレベルの真空を適用した。供給混合物は、69kg/時の速度で供給され、以下の、区域1 108℃、区域2 108℃、区域3 150℃、及び区域4 134℃の蒸気区域温度を有した。得られた生成物、RS−2は、WFEの出口で121℃の温度を有した。RS−2樹脂系は、TGAで判定して、49.4重量%のシリカ含有量を有し、その表面改質ナノ粒子の97重量%は、ゾル−2(70〜95nm)から得られ、3重量%は、ゾル−1(5nm)から得られた。
【0065】
20.68kgのゾル−1、3.81kgのRS−1樹脂、及び約1kgの1−メトキシ−2−プロパノールを組み合わせることによって、第3の樹脂系(「RS−3」)を調製した。回転蒸発(真空及び穏やかな加熱)を使用して、9.8重量%の濃度の1−メトキシ−2−プロパノール(及び残留水なし)に水及び1−メトキシ−2−プロパノールを除去するように、混合物を揮散した。次いで、混合物を、0.06mの表面積、内部凝縮器、及びステンレススチールジャケットを有するロールドフィルムエバポレーター(RFE)(Chem Tech Inc(Rockdale,IL,USA))上で走らせた。ロータリーエバポレーターからの部分的に揮散されたサンプルを、ガラス容器内に定置し、蠕動ポンプ(Masterflex L/S,Cole−Parmer Instrument Company(Vernon Hills,Illinois,USA))を用いて、18グラム/分の速度でRFEにポンプ送出した。RFEジャケットを、150℃の温度に維持し、系を、約2500パスカルの真空下に置いた。生成物排出ラインを、120℃の温度に維持した。凝縮器温度を、−10℃に維持した。ロータを、354rpmの速度で動作させた。RFE(RS−3)からの産出物は、エポキシ及び十分に分散した官能化ナノ粒子からなり、メトキシプロパノールは伴わなかった(GCで測定して)。RS−3中の表面改質ナノ粒子の最終濃度(TGAで測定して)は、23.1重量%であった。
【0066】
表2に集約される種々の量の樹脂系RS−1、RS−2、及びRS−3を組み合わせることによって、一連の実験用の樹脂系を調製した。
【0067】
【表2】
【0068】
1.18kgのEPON 828エポキシ樹脂、1.12kgのLS81K無水物硬化剤、及び0.12kgのASP 400粘土を組み合わせることによって、典型的な引き抜き成形樹脂系(「R−REF1」)を調製した。
【0069】
0.97kgのRS−1樹脂、0.95kgのLS−81K硬化剤、及び0.10kgのASP400粘土を組み合わせることによって、ナノ粒子を伴わない対照樹脂(「R−CTL1」)を調製した。得られた樹脂系は、5.0重量%の粘土を含有し、0.58Pa・秒の粘度を有した。
【0070】
引き抜き成形プロセス
商用の引き抜き成形機で、引き抜き成形実験を実施した。68トウの12Kグラファイト繊維(Grafil Inc.からのGRAFIL 34−700繊維)を、ベアリング及び外部張力デバイスを伴わないクリール上に取り付けた。表3に集約されるように、58〜68トウのグラファイト繊維を、クリールから引張し、樹脂系を含有する開放液状樹脂浴に誘導した。ダイを通して湿潤繊維を引張し、ダイへの入口で減量を実施した。38.1cm/分のライン速度で、得られた完全に硬化した繊維強化ポリマー複合材料を引張するために、往復式引張ブロックからなる把持セクションを使用した。切断鋸を用いて、完成部品を長さに切断した。
【0071】
ダイは、長さが91cmであり、幅1.32cm×高さ0.33cmの長方形の断面を有した。ダイは、160℃の第1の加熱区域設定を有し、182℃の第2の区域設定が続いた。樹脂の硬化中に生じた発熱は、例えば、複合材料部品の温度が、加熱区域の間で測定して168℃であったというように、プロセスにおける温度に寄与した。
【0072】
引き抜き成形ラインのフレームの一部上にダイを支持したが、フレームにしっかりとは取り付けなかった。ダイを通して材料を引張した際、ダイを、引張方向に移動し、引張力を与えるロードセルに押し当てた。引張力結果を表3に集約する。より大きい引張力は、引張力の突発的な増加及びラインの停止を含む不規則な性能をもたらす傾向があるため、この機器及びダイ形状では、約160kg重以下の安定した引張力が望まれた。広くは、引張力の狭い変動は、プロセスが制御下であることを示し、一方、大きい変動は、不安定なプロセスを示した。したがって、材料を短時間かつより高い引張力で処理することがきるが、そのような高い引張力は、持続不可能である場合があり、生産には実用的ではない場合がある。広くは、任意の特定の樹脂系について、安定したプロセスによって示されるように、許容可能な最大引張力で、最大繊維装填レベルが到達されるまで繊維装填を増加して、実験を実施した。
【0073】
【表3】
【0074】
)R−REF1及びR−CTL1は、5.0重量%の粘土を含有する。
【0075】
表3に示されるように、38.1cm/分のライン速度で、参照樹脂を使用した最大繊維装填は、多くの商用引き抜き成形作業の典型である、62トウの12Kグラファイト繊維であった。典型的な粘土充填剤、並びに樹脂粘度を0.58Pa・秒に低減するために反応性希釈剤を含んだ対照樹脂では、60トウより多く含むことはできなかった。しかしながら、たった60トウでさえ、プロセスは、不安定であり、引張力は、不規則であり、529kg重で急増した。58トウで、引張力は、依然としてわずかに不規則であり、167kg重の最大引張力を伴った。
【0076】
対照的に、R−CTL1樹脂とほぼ同一の粘度を有したR−EX4樹脂系では、66トウでの引張力は、たった107kg重であり、安定していた。したがって、0.5重量%と少ないシリカを含むことによって、R−CTL1サンプルと比較して、トウ数をほぼ14%(66トウ対58トウ)増加させ、一方、同時に、最大引張力を35%(107kg対167kg)以上低減することができる。事実、樹脂系中に表面改質シリカナノ粒子を含むことによって、211kg重と低い安定した引張力で、70体積%を超える繊維体積分率を、引き抜き成形部品に装填することができる。160kgの所望の最大を超過する引張力でさえ、引張力は安定しており、十分に制御されたプロセスであることを示した。
【0077】
同一の手順を使用し、R−EX4樹脂系(0.5重量%のシリカナノ粒子)及び64トウの繊維を使用して、追加の引き抜き成形試験を実施した。ライン速度を、45.7cm/分に増加させた。得られた引張力は、たった99〜119kg重であり、ナノ粒子を、繊維装填及びライン速度の両方を同時に増加させる加工助剤として使用することができることを実証した。
【0078】
カルサイトナノ粒子のための表面改質配位子の調製
第1のポリエーテルアミンスルホネート配位子(JAS配位子A)を、以下のように調製した。100部のポリエーテルアミン(Huntsmanから取得したJEFFAMINE M−600、Mn=600)に、17.88部の溶融プロパンスルトン(TCI Americaから購入)を添加した。混合物を80℃に加熱し、16時間かき混ぜた。1H NMRスペクトルは、プロパンスルトンの完全な消費を示す。スルホン酸配位子を赤茶色の液体として単離し、更なる精製なしで使用した。
【0079】
第2のポリエーテルアミンスルホネート配位子(JAS配位子B)を、以下のように調製した。40℃の3.78kg(6.3モル)のポリエーテルアミン(Huntsmanから取得したJEFFAMINE M−600、Mn=600)に、0.769kg(6.3モル)の溶融1,3−プロパンスルトン(HBC Chem(USA)から購入)を2回に分けて添加した。プロパンスルトンを導入すると、反応は、115℃に発熱する。混合物を90℃に冷却し、かき混ぜながら90℃で4時間保持した。4時間後、0.031kgのシクロヘキシルアミン(0.31モル、Alfa Aesarから購入)を添加した。混合物を、更に1時間かき混ぜた。1H NMRスペクトルは、残留プロパンスルトンを示さない。スルホン酸配位子を赤茶色の液体として単離し、更なる精製なしで使用した。
【0080】
エポキシ樹脂中のカルサイトナノ粒子
硬化性エポキシ樹脂(106.7kgのEPON 828)を、ステンレススチール容器内に定置した。取り扱いを容易にするために、JAS配位子B(15kg)を90℃に予熱し、容器に添加した。D−Blade(Hockmeyer Equipment Corporation(Elizabeth City,NC))を容器内に下げ、混合を開始させた。次いで、容器にナノカルサイト(200kgのSOCAL 31)を徐々に添加し、均一な混合物が生成されるまで混合を継続した。混合物をジャケット付きのケトルに移した。
【0081】
バスケットミル(浸漬ミルとしても知られる)をケトル内に下げた。バスケットミルは、4.4Lの0.3mmのイットリウム−安定化ジルコニアビーズを含有するHCNS−5浸漬ミル(Hockmeyer(Harrison,New Jersey))であった。ミルを最大で969rpmの速度で稼働させ、0.1mmの分離スクリーンを使用した。ミルを6時間30分稼働させた。
【0082】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、カルサイト粒径手順で測定して、265nmの平均粒径、及び296nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ全て(少なくとも98体積%)の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。TGAは、樹脂中に62.8重量%のカルサイトを測定した。
【0083】
上記のナノカルサイトを粉砕した樹脂(16kg)を、EPON 828エポキシ樹脂(2.02kg)及びHELOXY 107エポキシ樹脂(1.79kg)と組み合わせ、Cowlesミキサー(DISPERMAT CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を用いて、混合物が均質になるまで混合することによって、樹脂系(「RS−4」)を調製した。TGAは、樹脂系中に50.7重量%のカルサイトを測定した。
【0084】
80重量部のEPON 828エポキシ樹脂及び20重量部のHELOXY 107エポキシ樹脂を組み合わせることによって、別の樹脂系(「RS−5」)を調製した。
【0085】
表4に集約される種々の量の樹脂系RS−4、RS−5、及びLS81K無水物硬化剤を組み合わせることによって、一連の実験用の樹脂系を調製した。
【0086】
【表4】
【0087】
38.1cm/分のライン速度で、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。R−REF1、R−CTL1樹脂系、並びに実験用の樹脂系R−EX6からR−EX9を使用して得られた結果を、表5に集約する。
【0088】
【表5】
【0089】
同一の手順を使用し、R−EX9樹脂系(0.5重量%のカルサイトナノ粒子)及び60トウ(62.2体積%)の12Kグラファイト繊維を使用して、追加の引き抜き成形試験を実施した。表6に集約されるように、カルサイトナノ粒子は、繊維装填及びライン速度の両方を同時に増加させる加工助剤として使用することができる。
【0090】
【表6】
【0091】
以下のように調製されたより大きいカルサイト粒子を使用して、表面処理済みカルサイトを含有する追加のサンプルを実施した。硬化性エポキシ樹脂(96kgのEPON 828及び24kgのHELOXY 107)を、ステンレススチール容器内に定置した。取り扱いを容易にするために、JAS配位子A(13.5kg)を90℃に予熱し、容器に添加した。Cowelsブレード(Dispensermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を容器内に下げ、混合を開始した。次いで、容器にナノカルサイト(180kgのSOCAL 31)を徐々に添加し、均一な混合物が生成されるまで混合を継続した。混合物をジャケット付きのケトルに移した。
【0092】
バスケットミル(浸漬ミルとしても知られる)をケトル内に下げた。バスケットミルは、4.4Lの0.5〜0.7mmのイットリウム−安定化ジルコニアビーズを含有するHCNS−5浸漬ミル(Hockmeyer(Harrison,New Jersey))であった。ミル速度を955〜1273rpmに設定し、0.27mmの分離スクリーンを使用した。ミルを13時間23分稼働させた。
【0093】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、385nmの平均粒径、及び296nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ82%の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。TGAは、樹脂中に57.6重量%のカルサイトを測定した。
【0094】
上記のナノカルサイトを粉砕した樹脂(16kg)を、EPON 828エポキシ(1.744kg)及びHELOXY 107エポキシ(0.436kg)と組み合わせ、Cowlesミキサー(Dispermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を用いて、混合物が均質になるまで混合することによって、樹脂系「RS−6」を調製した。TGAは、樹脂系中に50.7重量%のカルサイトを測定した。
【0095】
硬化性エポキシ樹脂(1600gのEPON 828及び400gのHELOXY 107)を、ステンレススチール容器内に定置した。容器にDISPERBYK−111分散剤(225g)を添加した。Cowlesミキサー(DISPERMAT CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を容器内に下げ、混合を開始した。次いで、容器にナノカルサイト(3000gのSOCAL 31)を徐々に添加し、均一な混合物が生成されるまで混合を継続した。混合物をジャケット付きのケトルに移した。
【0096】
バスケットミル(浸漬ミルとしても知られる)をケトル内に下げた。バスケットミルは、150ミリリットルの0.5mmのイットリウム−安定化ジルコニアビーズを含有するHCP−1/4浸漬ミル(Hockmeyer(Harrison,New Jersey))であった。ミル速度を、その最大設定である「10」に設定し、0.2mmの分離スクリーンを使用した。
【0097】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、粒径手順で測定して、285nmの平均粒径、及び296nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ全て(少なくとも98%)の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。TGAは、樹脂中に57.2重量%のカルサイトを測定した。
【0098】
上記のナノカルサイトを粉砕した樹脂(3593g)を、EPON 828エポキシ(408g)及びHELOXY 107エポキシ(102g)と組み合わせ、Cowlesミキサー(Dispermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を用いて、混合物が均質になるまで混合することによって、樹脂系「RS−7」を調製した。TGAは、樹脂系中に50.1重量%のカルサイトを測定した。
【0099】
広口瓶内で、6マイクロメートルの報告される粒径を有するHUBERCARB Q6カルサイト(Huber Engineered Materials(Quincy,IL))(1538.3g)を、EPON 828エポキシ樹脂(1006.9g)及びHELOXY 107エポキシ樹脂(251.7g)と組み合わせた。Cowelsブレードを用いて、サンプルを約30分間混合した。
【0100】
上記のカルサイト分散(2239g)を、均質になるまでEPON 828エポキシ樹脂(131.2g)及びHELOXY 107エポキシ樹脂(32.8g)と組み合わせることによって、樹脂系「RS−8」を調製した。TGAは、樹脂系中に51.7重量%のカルサイトを測定した。
【0101】
表7に集約される種々の量の粒子含有樹脂系、RS−5、及び無水物硬化剤を組み合わせることによって、一連の実験用の樹脂系を調製した。
【0102】
【表7】
【0103】
38.1cm/分のライン速度で、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。樹脂系R−EX10、R−EX11、及びR−CE1を使用して得られた結果を、R−EX8の結果と共に表8に集約する。
【0104】
【表8】
【0105】
シリカナノ粒子を含有するビニルエステル樹脂系
クオートサイズの広口瓶に、NALCO TX10693シリカナノ粒子(1500g)を添加した。別個の広口瓶内で、1−メトキシ−2−プロパノール(1500g)、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(A174、8.30g)、及びポリアルキレンオキシドアルコキシシラン(SILQUEST A1230、16.73g)を組み合わせた。次いで、水性シリカゾルに、1−メトキシ−2−プロパノール混合物をかき混ぜながら添加した。合計で13個のクオートサイズの広口瓶を作製した。広口瓶を80℃に16時間加熱した。次いで、広口瓶をアルミニウムパンに注ぎ、100℃で乾燥させた。
【0106】
VE−1398−5ビニルエステル樹脂(7643g)を、4リットルステンレススチールケトル内に定置した。ビニルエステルを含有するケトルに、スチレン(1320g)及びヒンダードアミンニトロキシド(1.53g)を添加した。ケトルにCowlesミキサー(DISPERMAT CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を取り付け、内容物を混合した。混合しながら、上記の乾燥した表面改質シリカ(5535g)を、ケトルに徐々に添加した。完全に混合した時点で、内容物を、水平ミル(Netzsch LABSTAR)に取り付けられた別の4リットルケトルに移し、0.5mmのYTZ媒体を90%負荷で使用した。ナノ複合材料混合物を、蠕動ポンプを使用して、250mL/分で、ミルを通して165分間循環させた。
【0107】
ビニルエステル樹脂中に分散した、得られた表面改質シリカナノ粒子を、1L丸底フラスコに添加することによって、樹脂系「RS−9」を調製し、回転蒸発を使用して、スチレンの最終濃度がGCで測定して19.1重量%になるまで、スチレンを除去した。得られた樹脂系が39.1重量%のシリカを含有することを判定するために、TGAを使用した。
【0108】
VE−1398−5ビニルエステル(6500g)を、4リットルステンレススチールケトル内に定置した。ビニルエステルを含有するケトルに、スチレン(1721g)を添加した。JAS配位子A(532g)を90℃に予熱し、ケトルに添加した。ケトルにCowlesミキサー(Dispermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を取り付け、内容物を混合した。混合しながら、ケトルにSOCAL 31ナノカルサイト(5318g)を徐々に添加した。完全に混合した時点で、内容物を、水平ミル(Netzsch LABSTAR)に取り付けられた別の4リットルケトルに移し、0.5mmのYTZ媒体を90%負荷で使用した。ナノ複合材料混合物を、蠕動ポンプを使用して、250mL/分で、ミルを通して5時間循環させた。
【0109】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、粒径手順で測定して、278nmの平均粒径、及び259nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ全て(少なくとも98%)の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。
【0110】
ビニルエステル樹脂中の得られたナノ粒子を、1L丸底フラスコに添加することによって樹脂系「RS−10」を調製し、回転蒸発を使用して、スチレンの最終濃度がGCで測定して18.9重量%になるまで、スチレンを除去した。TGAは、樹脂系中に42.7重量%のカルサイトを測定した。
【0111】
3.30kgのVE−1398−5ビニルエステル樹脂を、0.165kgのASP400粘土と組み合わせることによって、参照樹脂系(「RS−REF2」)を調製した。
【0112】
1.97kgのVE−1398−5ビニルエステル樹脂を、0.59kgのASP400粘土と組み合わせることによって、別の参照樹脂系(「RS−REF3」)を調製した。
【0113】
表9に集約されるように、一連の実験用の樹脂系を調製した。開始剤(P−16、T−121、及びT−C)をスチレンと組み合わせ、樹脂系に共に添加した。
【0114】
【表9】
【0115】
12K及び24Kの両方のトウグラファイト繊維(Grafil Inc.からのGRAFIL 34−700繊維)を使用したことを除き、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。複合材料部品中に約58.5体積%の繊維(湿量基準)を達成するために、最大で28トウの24K繊維を使用した。58.5体積%を超える繊維体積については、最大で65.8体積%(湿量基準)の最大の繊維体積が達成されるまで、追加の12KのGRAFIL 34−700グラファイト繊維のトウを個々に添加した。誘導及び重ね継ぎ作業におけるプロセス摂動を最小限にするために、12Kのトウとして追加の繊維を追加した。R−CTL2、及びR−CTL3樹脂系、並びに実験用の樹脂系R−EX12からR−EX15を使用して得られた結果を、表10にまとめる。
【0116】
【表10】
【0117】
)24K繊維の28トウを、12K繊維のトウと組み合わせた。12K繊維のそれぞれのトウを、24K繊維の0.5トウとして報告する。
【0118】
グラファイト繊維の代わりにHYBON 2026ガラス繊維を使用したことを除き、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。複合材料部品中に約51.2体積%繊維(湿量基準)を達成するために、28トウのガラス繊維を使用した。R−CTL3、R−EX14、及びR−EX15を使用して、40.6cm/分で試験を実施した。R−CTL3(ナノ粒子を伴わない)の引張力は、8.2〜11.8kg重であった。ビニルエステル樹脂中に、シリカナノ粒子(R−EX14)又はカルサイトナノ粒子(R−EX−15)のいずれかが存在した際、引張力は、読み取り値を得ることができないくらいに低かった。
【0119】
HITACHI S−4700電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)を使用する走査型電子顕微鏡を使用して、樹脂R−EX12及び58トウの12Kグラファイト繊維を使用して調製された、研磨したサンプルの画像を取得した。ExBフィルタを使用する後方散乱電子画像化(BSEI)を使用して、全ての画像を収集した。ExBフィルタは、低ビーム電圧でのBSEI画像化を可能にし、高平均原子番号の領域は、BSEI画像内に明るく現れる。
【0120】
10ミリアンプのプラズマ電流を用いて、サンプルの研磨した断面を、Au/Pdで10秒間スパッタコーティングし、炭素導電性テープを用いて、FESEMスタブホルダに取り付けた。画像化条件:2.0KV 5.5mWD、UHR−A、傾き=0°、ExBモード、及び10マイクロアンプのビーム電流を使用して、5000倍及び15,000倍の倍率で画像を収集した。図3は、このサンプルの5000倍の倍率での断面を図示し、微小粒子が、繊維を包囲する樹脂中に十分に分散していることを示す。15,000倍の倍率では、図4は、繊維の間の樹脂にわたるナノ粒子の均一な分布を更に図示する。
【0121】
顕微鏡:Hitachi S−4700電界放射走査型電子顕微鏡。全ての顕微鏡写真は、ExBフィルタを使用した後方散乱電子画像化(BSEI)であった。ExBフィルタは、低ビーム電圧でのBSEI画像化を可能にする。高平均原子番号の領域は、BSEI画像内に明るく現れる。
【0122】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[28]に記載する。
[1]
繊維強化ポリマー複合材料を形成する方法であって、液状樹脂と、ナノ粒子とを含む樹脂系を用いて、連続繊維を含浸させる工程と、ダイを通して前記樹脂含浸繊維を引張する工程と、前記ダイ内で前記樹脂系を少なくとも部分的に凝固させる工程と、を含む、方法。
[2]
予形成機を通して前記樹脂含浸繊維を引張し、前記繊維を減量する工程を更に含む、項目1に記載の方法。
[3]
前記連続繊維が、アラミド繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維からなる群から選択される繊維を含む、項目1又は2に記載の方法。
[4]
前記樹脂が、架橋性樹脂を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
[5]
前記樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、及びポリエステル樹脂のうちの少なくとも1つを含む、項目4に記載の方法。
[6]
前記ナノ粒子が、コアと、前記コアと会合した少なくとも1つの表面改質剤と、を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[7]
前記ナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[8]
前記シリカナノ粒子が、シリカコアと、前記コアと共有結合した表面改質剤と、を含む、項目7に記載の方法。
[9]
前記ナノ粒子が、カルサイトナノ粒子を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
[10]
前記カルサイトナノ粒子が、カルサイトコアと、前記コアとイオン的に会合した表面改質剤と、を含む、項目9に記載の方法。
[11]
前記樹脂系を凝固させる工程が、前記樹脂を架橋させる工程を含む、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記ナノ粒子が、コア及び前記コアと会合した反応性表面改質剤を含む、反応性表面改質ナノ粒子を含み、前記樹脂を凝固させる工程が、前記樹脂を前記反応性表面改質剤と反応させる工程を含む、項目11に記載の方法。
[13]
前記樹脂系が、45重量%以下のナノ粒子を含む、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
[14]
前記樹脂系が、エポキシ樹脂と、0.5〜5重量%のナノ粒子と、を含む、項目13に記載の方法。
[15]
前記樹脂系が、ビニルエステル樹脂と、5〜40重量%のナノ粒子と、を含む、項目13に記載の方法。
[16]
前記樹脂系が、多モード分布のナノ粒子を含む、項目1〜15のいずれか一項に記載の方法。
[17]
前記樹脂系が、少なくとも1マイクロメートルの平均粒径を有する充填剤を更に備える、項目1〜16のいずれか一項に記載の方法。
[18]
前記ダイの後に前記樹脂を後硬化する工程を更に含む、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
[19]
前記繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力が、前記ナノ粒子を伴わないこと以外は同一の条件で同一の繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力と比較して、少なくとも30%低減される、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
[20]
基準ライン速度を少なくとも20%超えるライン速度で前記繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される前記引張力が、前記ナノ粒子を伴わずに前記基準速度で同一の繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力より小さい、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
[21]
項目1〜20のいずれか一項に記載の方法に従って作製された、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[22]
硬化樹脂とナノ粒子とを含む樹脂系に埋め込まれた連続繊維を含む、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[23]
少なくとも66体積%の前記連続繊維を含む、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[24]
前記連続繊維が、グラファイト繊維を含む、項目22又は23に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[25]
前記連続繊維がガラス繊維を含む、項目22〜24のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[26]
少なくとも1つの樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される、項目22〜25のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[27]
前記ナノ粒子が表面改質シリカナノ粒子を含む、項目22〜26のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[28]
前記ナノ粒子が表面改質カルサイトナノ粒子を含む、項目22〜26のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
図1
図2
図3
図4