【実施例】
【0054】
【表1】
【0055】
試験手順
粒径手順
ナノ粒子の粒径は、HORIBA LA−950を使用して、レーザー回析によって測定した。ナノ粒子分散物をアセトンで約1%固体に希釈した。次いで、透過性が85%〜95%の推奨レベルの間になるまで、サンプルをアセトンで充填された測定セルに添加した。計算のための光学模型は、カルサイトに1.6000、及びアセトンに1.3591の屈折率を使用し、球形粒子であると推定した。平滑化のために第2の差動法が使用され、150回の反復に基づいた。粒径の報告値は、体積分率平均及び静的光散乱に基づいた。
【0056】
ガスクロマトグラフィー(GC)手順
ガスクロマトグラフィーは、残留溶媒の分析に使用されていた。ガスクロマトグラフィーは、HP−5MSカラムを備えたAGILENT 6890Nガスクロマトグラフを使用して行われた(長さ30メートルと内径320マイクロメートルを有する(5%フェニル)−メチルポリシロキサン(クロマトグラフとカラムは両方とも、Agilent Technologies,Incorporated(Santa Clara,California)から入手可能))。以下のパラメータ、1マイクロリットルアリコートの10%サンプル溶液(GC等級テトラヒドロフラン中)を注入、250℃、9.52psi(66kPa)、及び111mL/分の総流入量の分離流入モード設定、9.52psi(66kPa)のカラム定圧モード設定、速度を34センチメートル/秒に設定、総ガス流量は2.1mL/分、検出器及び注入器温度は250℃、並びに40℃の平衡で5分間、続いて260℃まで20℃/分の上昇速度の温度シーケンス、を採用した。熱伝導性検出器を使用した。
【0057】
熱重量分析手順
熱重量分析を使用して、樹脂系のシリカ又はカルサイト含有量を測定した。TA Instruments Model Q500 TGA及びその関連ソフトウェア(TA Instruments(New Castle,Delaware)から入手可能)を使用し、空気中で35℃から900℃まで摂氏20度(℃)/分の温度上昇速度を採用して、サンプルを分析した。シリカ含有サンプルについて、850℃で残っているサンプルの重量(初期重量の割合としての)を、不燃性材料の重量%として取得し、シリカ固体である生成物の重量%として報告した。カルサイト含有サンプルについて、残重量は、カルサイトから全ての有機物及び二酸化炭素を揮発させた後にサンプル中に残るCaOであると推定した。重量%のCaO残留物を0.56で割ることにより、元のサンプル中のカルサイト濃度を計算した。
【0058】
粘度手順
20rpmのRVスピンドル#4を伴うBrookfield DVII(Brookfield,Middleboro,MA)を使用して、樹脂粘度を測定した。粘度をパスカル秒で報告した。
【0059】
1157グラムのNALCO 2326シリカナノ粒子ゾル(水分散液中に16.1重量%の5nmのシリカ)をガラス容器内に定置することによって、表面改質シリカナノ粒子を調製した。別個の容器に、2265グラムの1−メトキシ−2−プロパノール、及び64.5グラムのトリメトキシフェニルシランをかき混ぜながら添加した。1−メトキシ−2−プロパノール混合物を、約5分間にわたり、NALCO 2326ゾルに連続してかき混ぜながら添加した。得られた均一な溶液を、80℃のオーブンで16時間加熱した。このプロセスを数回繰り返し、1つのバッチに組み合わせた。得られたゾル(ゾル−1)は、水及びメトキシプロパノールの混合物中に、5.3重量%の表面改質シリカを含有した。
【0060】
1.689重量部のNALCO 2329Kシリカナノ粒子ゾル(水分散液中に40.8重量%の70〜95nmのシリカ)を、上部が開放されたステンレススチール混合器内に定置することによって、追加の表面改質シリカナノ粒子を調製し、1重量部の1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながらゆっくりと添加した。次いで、0.0197重量部のトリメトキシフェニルシランを、混合物にゆっくりと添加した。混合物を空気圧駆動式インペラーで30分間攪拌した。
【0061】
熱反応器手順
PCT公開番号WO2009/120846(A2)に記載されたような27リットルの連続流水熱反応器を使用して、シリカ微粒子を表面官能化した。27リットル水熱反応器は、18.3メートルの外径(OD)1.27cmと内径(ID)1.09cmのステンレス鋼管、それに続く12.2メートルのOD 0.95cmとID 0.77cmのステンレス鋼管、それに続く198.1メートルのID 1.27cmの高強度304ステンレス鋼編外装のPTFE滑腔内側管を備えていた。水熱反応器内の油温度を、155℃に維持し、TESCOM背圧調整器(TESCOM(Elk River,MN))を、2.14MPa(310psig)に維持した。隔膜ポンプ(LDC1 ECOFLOW,American Lewa(Holliston,MA))を使用して、流量を制御して滞留時間を制御し、それにより水熱反応器内の流量が770mL/分になり、滞留時間が35分になるようにした。連続流水熱反応器からの流出液をHDPEドラムに収集した。得られたゾル(ゾル−2)は、水及びメトキシプロパノールの混合物中に、25.4重量%の表面改質シリカを含有した。
【0062】
14.6kgのEPON 828エポキシ樹脂を3.6kgのHELOXY 107エポキシ樹脂と組み合わせることによって、第1の樹脂系(「RS−1」)を調製した。
【0063】
12.4kgのゾル−1、90.9kgのゾル−2、19.1kgのEPON 826エポキシ樹脂、4.8kgのHELOXY 107エポキシ樹脂、及び16.9kgのメトキシプロパノールを、380リットルケトルに撹拌しながら添加することによって、第2の樹脂系(「RS−2」)を調製し、供給混合物を形成した。ケトルを25℃に維持し、成分を最低14時間攪拌した。
【0064】
WFE手順
BLBシリーズロータリー外平歯車、及び化学デューティギアポンプ(Zenith Pumps(Sanford,NC))を使用する、1平方メートルのBUSS FILTRUDER向流高分子加工機を使用して、混合物を、米国仮出願第61/181052号(2009年5月26日に出願、代理人整理番号65150US002)に記載されるワイプドフィルムエバポレーター(WFE)の上入口に計量供給した。WFEロータ(BUSS Filmtruder型)を25馬力、340rpmに設定した。2.6〜2.8kPaのレベルの真空を適用した。供給混合物は、69kg/時の速度で供給され、以下の、区域1 108℃、区域2 108℃、区域3 150℃、及び区域4 134℃の蒸気区域温度を有した。得られた生成物、RS−2は、WFEの出口で121℃の温度を有した。RS−2樹脂系は、TGAで判定して、49.4重量%のシリカ含有量を有し、その表面改質ナノ粒子の97重量%は、ゾル−2(70〜95nm)から得られ、3重量%は、ゾル−1(5nm)から得られた。
【0065】
20.68kgのゾル−1、3.81kgのRS−1樹脂、及び約1kgの1−メトキシ−2−プロパノールを組み合わせることによって、第3の樹脂系(「RS−3」)を調製した。回転蒸発(真空及び穏やかな加熱)を使用して、9.8重量%の濃度の1−メトキシ−2−プロパノール(及び残留水なし)に水及び1−メトキシ−2−プロパノールを除去するように、混合物を揮散した。次いで、混合物を、0.06m
2の表面積、内部凝縮器、及びステンレススチールジャケットを有するロールドフィルムエバポレーター(RFE)(Chem Tech Inc(Rockdale,IL,USA))上で走らせた。ロータリーエバポレーターからの部分的に揮散されたサンプルを、ガラス容器内に定置し、蠕動ポンプ(Masterflex L/S,Cole−Parmer Instrument Company(Vernon Hills,Illinois,USA))を用いて、18グラム/分の速度でRFEにポンプ送出した。RFEジャケットを、150℃の温度に維持し、系を、約2500パスカルの真空下に置いた。生成物排出ラインを、120℃の温度に維持した。凝縮器温度を、−10℃に維持した。ロータを、354rpmの速度で動作させた。RFE(RS−3)からの産出物は、エポキシ及び十分に分散した官能化ナノ粒子からなり、メトキシプロパノールは伴わなかった(GCで測定して)。RS−3中の表面改質ナノ粒子の最終濃度(TGAで測定して)は、23.1重量%であった。
【0066】
表2に集約される種々の量の樹脂系RS−1、RS−2、及びRS−3を組み合わせることによって、一連の実験用の樹脂系を調製した。
【0067】
【表2】
【0068】
1.18kgのEPON 828エポキシ樹脂、1.12kgのLS81K無水物硬化剤、及び0.12kgのASP 400粘土を組み合わせることによって、典型的な引き抜き成形樹脂系(「R−REF1」)を調製した。
【0069】
0.97kgのRS−1樹脂、0.95kgのLS−81K硬化剤、及び0.10kgのASP400粘土を組み合わせることによって、ナノ粒子を伴わない対照樹脂(「R−CTL1」)を調製した。得られた樹脂系は、5.0重量%の粘土を含有し、0.58Pa・秒の粘度を有した。
【0070】
引き抜き成形プロセス
商用の引き抜き成形機で、引き抜き成形実験を実施した。68トウの12Kグラファイト繊維(Grafil Inc.からのGRAFIL 34−700繊維)を、ベアリング及び外部張力デバイスを伴わないクリール上に取り付けた。表3に集約されるように、58〜68トウのグラファイト繊維を、クリールから引張し、樹脂系を含有する開放液状樹脂浴に誘導した。ダイを通して湿潤繊維を引張し、ダイへの入口で減量を実施した。38.1cm/分のライン速度で、得られた完全に硬化した繊維強化ポリマー複合材料を引張するために、往復式引張ブロックからなる把持セクションを使用した。切断鋸を用いて、完成部品を長さに切断した。
【0071】
ダイは、長さが91cmであり、幅1.32cm×高さ0.33cmの長方形の断面を有した。ダイは、160℃の第1の加熱区域設定を有し、182℃の第2の区域設定が続いた。樹脂の硬化中に生じた発熱は、例えば、複合材料部品の温度が、加熱区域の間で測定して168℃であったというように、プロセスにおける温度に寄与した。
【0072】
引き抜き成形ラインのフレームの一部上にダイを支持したが、フレームにしっかりとは取り付けなかった。ダイを通して材料を引張した際、ダイを、引張方向に移動し、引張力を与えるロードセルに押し当てた。引張力結果を表3に集約する。より大きい引張力は、引張力の突発的な増加及びラインの停止を含む不規則な性能をもたらす傾向があるため、この機器及びダイ形状では、約160kg重以下の安定した引張力が望まれた。広くは、引張力の狭い変動は、プロセスが制御下であることを示し、一方、大きい変動は、不安定なプロセスを示した。したがって、材料を短時間かつより高い引張力で処理することが
できるが、そのような高い引張力は、持続不可能である場合があり、生産には実用的ではない場合がある。広くは、任意の特定の樹脂系について、安定したプロセスによって示されるように、許容可能な最大引張力で、最大繊維装填レベルが到達されるまで繊維装填を増加して、実験を実施した。
【0073】
【表3】
【0074】
(
*)R−REF1及びR−CTL1は、5.0重量%の粘土を含有する。
【0075】
表3に示されるように、38.1cm/分のライン速度で、参照樹脂を使用した最大繊維装填は、多くの商用引き抜き成形作業の典型である、62トウの12Kグラファイト繊維であった。典型的な粘土充填剤、並びに樹脂粘度を0.58Pa・秒に低減するために反応性希釈剤を含んだ対照樹脂では、60トウより多く含むことはできなかった。しかしながら、たった60トウでさえ、プロセスは、不安定であり、引張力は、不規則であり、529kg重で急増した。58トウで、引張力は、依然としてわずかに不規則であり、167kg重の最大引張力を伴った。
【0076】
対照的に、R−CTL1樹脂とほぼ同一の粘度を有したR−EX4樹脂系では、66トウでの引張力は、たった107kg重であり、安定していた。したがって、0.5重量%と少ないシリカを含むことによって、R−CTL1サンプルと比較して、トウ数をほぼ14%(66トウ対58トウ)増加させ、一方、同時に、最大引張力を35%(107kg対167kg)以上低減することができる。事実、樹脂系中に表面改質シリカナノ粒子を含むことによって、211kg重と低い安定した引張力で、70体積%を超える繊維体積分率を、引き抜き成形部品に装填することができる。160kgの所望の最大を超過する引張力でさえ、引張力は安定しており、十分に制御されたプロセスであることを示した。
【0077】
同一の手順を使用し、R−EX4樹脂系(0.5重量%のシリカナノ粒子)及び64トウの繊維を使用して、追加の引き抜き成形試験を実施した。ライン速度を、45.7cm/分に増加させた。得られた引張力は、たった99〜119kg重であり、ナノ粒子を、繊維装填及びライン速度の両方を同時に増加させる加工助剤として使用することができることを実証した。
【0078】
カルサイトナノ粒子のための表面改質配位子の調製
第1のポリエーテルアミンスルホネート配位子(JAS配位子A)を、以下のように調製した。100部のポリエーテルアミン(Huntsmanから取得したJEFFAMINE M−600、Mn=600)に、17.88部の溶融プロパンスルトン(TCI Americaから購入)を添加した。混合物を80℃に加熱し、16時間かき混ぜた。1H NMRスペクトルは、プロパンスルトンの完全な消費を示す。スルホン酸配位子を赤茶色の液体として単離し、更なる精製なしで使用した。
【0079】
第2のポリエーテルアミンスルホネート配位子(JAS配位子B)を、以下のように調製した。40℃の3.78kg(6.3モル)のポリエーテルアミン(Huntsmanから取得したJEFFAMINE M−600、Mn=600)に、0.769kg(6.3モル)の溶融1,3−プロパンスルトン(HBC Chem(USA)から購入)を2回に分けて添加した。プロパンスルトンを導入すると、反応は、115℃に発熱する。混合物を90℃に冷却し、かき混ぜながら90℃で4時間保持した。4時間後、0.031kgのシクロヘキシルアミン(0.31モル、Alfa Aesarから購入)を添加した。混合物を、更に1時間かき混ぜた。1H NMRスペクトルは、残留プロパンスルトンを示さない。スルホン酸配位子を赤茶色の液体として単離し、更なる精製なしで使用した。
【0080】
エポキシ樹脂中のカルサイトナノ粒子
硬化性エポキシ樹脂(106.7kgのEPON 828)を、ステンレススチール容器内に定置した。取り扱いを容易にするために、JAS配位子B(15kg)を90℃に予熱し、容器に添加した。D−Blade(Hockmeyer Equipment Corporation(Elizabeth City,NC))を容器内に下げ、混合を開始させた。次いで、容器にナノカルサイト(200kgのSOCAL 31)を徐々に添加し、均一な混合物が生成されるまで混合を継続した。混合物をジャケット付きのケトルに移した。
【0081】
バスケットミル(浸漬ミルとしても知られる)をケトル内に下げた。バスケットミルは、4.4Lの0.3mmのイットリウム−安定化ジルコニアビーズを含有するHCNS−5浸漬ミル(Hockmeyer(Harrison,New Jersey))であった。ミルを最大で969rpmの速度で稼働させ、0.1mmの分離スクリーンを使用した。ミルを6時間30分稼働させた。
【0082】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、カルサイト粒径手順で測定して、265nmの平均粒径、及び296nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ全て(少なくとも98体積%)の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。TGAは、樹脂中に62.8重量%のカルサイトを測定した。
【0083】
上記のナノカルサイトを粉砕した樹脂(16kg)を、EPON 828エポキシ樹脂(2.02kg)及びHELOXY 107エポキシ樹脂(1.79kg)と組み合わせ、Cowlesミキサー(DISPERMAT CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を用いて、混合物が均質になるまで混合することによって、樹脂系(「RS−4」)を調製した。TGAは、樹脂系中に50.7重量%のカルサイトを測定した。
【0084】
80重量部のEPON 828エポキシ樹脂及び20重量部のHELOXY 107エポキシ樹脂を組み合わせることによって、別の樹脂系(「RS−5」)を調製した。
【0085】
表4に集約される種々の量の樹脂系RS−4、RS−5、及びLS81K無水物硬化剤を組み合わせることによって、一連の実験用の樹脂系を調製した。
【0086】
【表4】
【0087】
38.1cm/分のライン速度で、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。R−REF1、R−CTL1樹脂系、並びに実験用の樹脂系R−EX6からR−EX9を使用して得られた結果を、表5に集約する。
【0088】
【表5】
【0089】
同一の手順を使用し、R−EX9樹脂系(0.5重量%のカルサイトナノ粒子)及び60トウ(62.2体積%)の12Kグラファイト繊維を使用して、追加の引き抜き成形試験を実施した。表6に集約されるように、カルサイトナノ粒子は、繊維装填及びライン速度の両方を同時に増加させる加工助剤として使用することができる。
【0090】
【表6】
【0091】
以下のように調製されたより大きいカルサイト粒子を使用して、表面処理済みカルサイトを含有する追加のサンプルを実施した。硬化性エポキシ樹脂(96kgのEPON 828及び24kgのHELOXY 107)を、ステンレススチール容器内に定置した。取り扱いを容易にするために、JAS配位子A(13.5kg)を90℃に予熱し、容器に添加した。Cowelsブレード(Dispensermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を容器内に下げ、混合を開始した。次いで、容器にナノカルサイト(180kgのSOCAL 31)を徐々に添加し、均一な混合物が生成されるまで混合を継続した。混合物をジャケット付きのケトルに移した。
【0092】
バスケットミル(浸漬ミルとしても知られる)をケトル内に下げた。バスケットミルは、4.4Lの0.5〜0.7mmのイットリウム−安定化ジルコニアビーズを含有するHCNS−5浸漬ミル(Hockmeyer(Harrison,New Jersey))であった。ミル速度を955〜1273rpmに設定し、0.27mmの分離スクリーンを使用した。ミルを13時間23分稼働させた。
【0093】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、385nmの平均粒径、及び296nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ82%の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。TGAは、樹脂中に57.6重量%のカルサイトを測定した。
【0094】
上記のナノカルサイトを粉砕した樹脂(16kg)を、EPON 828エポキシ(1.744kg)及びHELOXY 107エポキシ(0.436kg)と組み合わせ、Cowlesミキサー(Dispermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を用いて、混合物が均質になるまで混合することによって、樹脂系「RS−6」を調製した。TGAは、樹脂系中に50.7重量%のカルサイトを測定した。
【0095】
硬化性エポキシ樹脂(1600gのEPON 828及び400gのHELOXY 107)を、ステンレススチール容器内に定置した。容器にDISPERBYK−111分散剤(225g)を添加した。Cowlesミキサー(DISPERMAT CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を容器内に下げ、混合を開始した。次いで、容器にナノカルサイト(3000gのSOCAL 31)を徐々に添加し、均一な混合物が生成されるまで混合を継続した。混合物をジャケット付きのケトルに移した。
【0096】
バスケットミル(浸漬ミルとしても知られる)をケトル内に下げた。バスケットミルは、150ミリリットルの0.5mmのイットリウム−安定化ジルコニアビーズを含有するHCP−1/4浸漬ミル(Hockmeyer(Harrison,New Jersey))であった。ミル速度を、その最大設定である「10」に設定し、0.2mmの分離スクリーンを使用した。
【0097】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、粒径手順で測定して、285nmの平均粒径、及び296nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ全て(少なくとも98%)の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。TGAは、樹脂中に57.2重量%のカルサイトを測定した。
【0098】
上記のナノカルサイトを粉砕した樹脂(3593g)を、EPON 828エポキシ(408g)及びHELOXY 107エポキシ(102g)と組み合わせ、Cowlesミキサー(Dispermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を用いて、混合物が均質になるまで混合することによって、樹脂系「RS−7」を調製した。TGAは、樹脂系中に50.1重量%のカルサイトを測定した。
【0099】
広口瓶内で、6マイクロメートルの報告される粒径を有するHUBERCARB Q6カルサイト(Huber Engineered Materials(Quincy,IL))(1538.3g)を、EPON 828エポキシ樹脂(1006.9g)及びHELOXY 107エポキシ樹脂(251.7g)と組み合わせた。Cowelsブレードを用いて、サンプルを約30分間混合した。
【0100】
上記のカルサイト分散(2239g)を、均質になるまでEPON 828エポキシ樹脂(131.2g)及びHELOXY 107エポキシ樹脂(32.8g)と組み合わせることによって、樹脂系「RS−8」を調製した。TGAは、樹脂系中に51.7重量%のカルサイトを測定した。
【0101】
表7に集約される種々の量の粒子含有樹脂系、RS−5、及び無水物硬化剤を組み合わせることによって、一連の実験用の樹脂系を調製した。
【0102】
【表7】
【0103】
38.1cm/分のライン速度で、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。樹脂系R−EX10、R−EX11、及びR−CE1を使用して得られた結果を、R−EX8の結果と共に表8に集約する。
【0104】
【表8】
【0105】
シリカナノ粒子を含有するビニルエステル樹脂系
クオートサイズの広口瓶に、NALCO TX10693シリカナノ粒子(1500g)を添加した。別個の広口瓶内で、1−メトキシ−2−プロパノール(1500g)、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(A174、8.30g)、及びポリアルキレンオキシドアルコキシシラン(SILQUEST A1230、16.73g)を組み合わせた。次いで、水性シリカゾルに、1−メトキシ−2−プロパノール混合物をかき混ぜながら添加した。合計で13個のクオートサイズの広口瓶を作製した。広口瓶を80℃に16時間加熱した。次いで、広口瓶をアルミニウムパンに注ぎ、100℃で乾燥させた。
【0106】
VE−1398−5ビニルエステル樹脂(7643g)を、4リットルステンレススチールケトル内に定置した。ビニルエステルを含有するケトルに、スチレン(1320g)及びヒンダードアミンニトロキシド(1.53g)を添加した。ケトルにCowlesミキサー(DISPERMAT CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を取り付け、内容物を混合した。混合しながら、上記の乾燥した表面改質シリカ(5535g)を、ケトルに徐々に添加した。完全に混合した時点で、内容物を、水平ミル(Netzsch LABSTAR)に取り付けられた別の4リットルケトルに移し、0.5mmのYTZ媒体を90%負荷で使用した。ナノ複合材料混合物を、蠕動ポンプを使用して、250mL/分で、ミルを通して165分間循環させた。
【0107】
ビニルエステル樹脂中に分散した、得られた表面改質シリカナノ粒子を、1L丸底フラスコに添加することによって、樹脂系「RS−9」を調製し、回転蒸発を使用して、スチレンの最終濃度がGCで測定して19.1重量%になるまで、スチレンを除去した。得られた樹脂系が39.1重量%のシリカを含有することを判定するために、TGAを使用した。
【0108】
VE−1398−5ビニルエステル(6500g)を、4リットルステンレススチールケトル内に定置した。ビニルエステルを含有するケトルに、スチレン(1721g)を添加した。JAS配位子A(532g)を90℃に予熱し、ケトルに添加した。ケトルにCowlesミキサー(Dispermat CN−10、BYK−Gardner(Columbia,MD,USA))を取り付け、内容物を混合した。混合しながら、ケトルにSOCAL 31ナノカルサイト(5318g)を徐々に添加した。完全に混合した時点で、内容物を、水平ミル(Netzsch LABSTAR)に取り付けられた別の4リットルケトルに移し、0.5mmのYTZ媒体を90%負荷で使用した。ナノ複合材料混合物を、蠕動ポンプを使用して、250mL/分で、ミルを通して5時間循環させた。
【0109】
得られた表面改質ナノ粒子は、樹脂系中に分散され、粒径手順で測定して、278nmの平均粒径、及び259nmのピーク粒径を有した。粒子分析は、ほぼ全て(少なくとも98%)の粒子がこのピーク内である、狭い粒径分布を示した。
【0110】
ビニルエステル樹脂中の得られたナノ粒子を、1L丸底フラスコに添加することによって樹脂系「RS−10」を調製し、回転蒸発を使用して、スチレンの最終濃度がGCで測定して18.9重量%になるまで、スチレンを除去した。TGAは、樹脂系中に42.7重量%のカルサイトを測定した。
【0111】
3.30kgのVE−1398−5ビニルエステル樹脂を、0.165kgのASP400粘土と組み合わせることによって、参照樹脂系(「RS−REF2」)を調製した。
【0112】
1.97kgのVE−1398−5ビニルエステル樹脂を、0.59kgのASP400粘土と組み合わせることによって、別の参照樹脂系(「RS−REF3」)を調製した。
【0113】
表9に集約されるように、一連の実験用の樹脂系を調製した。開始剤(P−16、T−121、及びT−C)をスチレンと組み合わせ、樹脂系に共に添加した。
【0114】
【表9】
【0115】
12K及び24Kの両方のトウグラファイト繊維(Grafil Inc.からのGRAFIL 34−700繊維)を使用したことを除き、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。複合材料部品中に約58.5体積%の繊維(湿量基準)を達成するために、最大で28トウの24K繊維を使用した。58.5体積%を超える繊維体積については、最大で65.8体積%(湿量基準)の最大の繊維体積が達成されるまで、追加の12KのGRAFIL 34−700グラファイト繊維のトウを個々に添加した。誘導及び重ね継ぎ作業におけるプロセス摂動を最小限にするために、12Kのトウとして追加の繊維を追加した。R−CTL2、及びR−CTL3樹脂系、並びに実験用の樹脂系R−EX12からR−EX15を使用して得られた結果を、表10にまとめる。
【0116】
【表10】
【0117】
(
*)24K繊維の28トウを、12K繊維のトウと組み合わせた。12K繊維のそれぞれのトウを、24K繊維の0.5トウとして報告する。
【0118】
グラファイト繊維の代わりにHYBON 2026ガラス繊維を使用したことを除き、引き抜き成形プロセスに従って、引き抜き成形実験を実施した。複合材料部品中に約51.2体積%繊維(湿量基準)を達成するために、28トウのガラス繊維を使用した。R−CTL3、R−EX14、及びR−EX15を使用して、40.6cm/分で試験を実施した。R−CTL3(ナノ粒子を伴わない)の引張力は、8.2〜11.8kg重であった。ビニルエステル樹脂中に、シリカナノ粒子(R−EX14)又はカルサイトナノ粒子(R−EX−15)のいずれかが存在した際、引張力は、読み取り値を得ることができないくらいに低かった。
【0119】
HITACHI S−4700電界放射型走査電子顕微鏡(FESEM)を使用する走査型電子顕微鏡を使用して、樹脂R−EX12及び58トウの12Kグラファイト繊維を使用して調製された、研磨したサンプルの画像を取得した。ExBフィルタを使用する後方散乱電子画像化(BSEI)を使用して、全ての画像を収集した。ExBフィルタは、低ビーム電圧でのBSEI画像化を可能にし、高平均原子番号の領域は、BSEI画像内に明るく現れる。
【0120】
10ミリアンプのプラズマ電流を用いて、サンプルの研磨した断面を、Au/Pdで10秒間スパッタコーティングし、炭素導電性テープを用いて、FESEMスタブホルダに取り付けた。画像化条件:2.0KV 5.5mWD、UHR−A、傾き=0°、ExBモード、及び10マイクロアンプのビーム電流を使用して、5000倍及び15,000倍の倍率で画像を収集した。
図3は、このサンプルの5000倍の倍率での断面を図示し、微小粒子が、繊維を包囲する樹脂中に十分に分散していることを示す。15,000倍の倍率では、
図4は、繊維の間の樹脂にわたるナノ粒子の均一な分布を更に図示する。
【0121】
顕微鏡:Hitachi S−4700電界放射走査型電子顕微鏡。全ての顕微鏡写真は、ExBフィルタを使用した後方散乱電子画像化(BSEI)であった。ExBフィルタは、低ビーム電圧でのBSEI画像化を可能にする。高平均原子番号の領域は、BSEI画像内に明るく現れる。
【0122】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。
本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[28]に記載する。
[1]
繊維強化ポリマー複合材料を形成する方法であって、液状樹脂と、ナノ粒子とを含む樹脂系を用いて、連続繊維を含浸させる工程と、ダイを通して前記樹脂含浸繊維を引張する工程と、前記ダイ内で前記樹脂系を少なくとも部分的に凝固させる工程と、を含む、方法。
[2]
予形成機を通して前記樹脂含浸繊維を引張し、前記繊維を減量する工程を更に含む、項目1に記載の方法。
[3]
前記連続繊維が、アラミド繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維からなる群から選択される繊維を含む、項目1又は2に記載の方法。
[4]
前記樹脂が、架橋性樹脂を含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
[5]
前記樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、及びポリエステル樹脂のうちの少なくとも1つを含む、項目4に記載の方法。
[6]
前記ナノ粒子が、コアと、前記コアと会合した少なくとも1つの表面改質剤と、を含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[7]
前記ナノ粒子が、シリカナノ粒子を含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[8]
前記シリカナノ粒子が、シリカコアと、前記コアと共有結合した表面改質剤と、を含む、項目7に記載の方法。
[9]
前記ナノ粒子が、カルサイトナノ粒子を含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
[10]
前記カルサイトナノ粒子が、カルサイトコアと、前記コアとイオン的に会合した表面改質剤と、を含む、項目9に記載の方法。
[11]
前記樹脂系を凝固させる工程が、前記樹脂を架橋させる工程を含む、項目1〜10のいずれか一項に記載の方法。
[12]
前記ナノ粒子が、コア及び前記コアと会合した反応性表面改質剤を含む、反応性表面改質ナノ粒子を含み、前記樹脂を凝固させる工程が、前記樹脂を前記反応性表面改質剤と反応させる工程を含む、項目11に記載の方法。
[13]
前記樹脂系が、45重量%以下のナノ粒子を含む、項目1〜12のいずれか一項に記載の方法。
[14]
前記樹脂系が、エポキシ樹脂と、0.5〜5重量%のナノ粒子と、を含む、項目13に記載の方法。
[15]
前記樹脂系が、ビニルエステル樹脂と、5〜40重量%のナノ粒子と、を含む、項目13に記載の方法。
[16]
前記樹脂系が、多モード分布のナノ粒子を含む、項目1〜15のいずれか一項に記載の方法。
[17]
前記樹脂系が、少なくとも1マイクロメートルの平均粒径を有する充填剤を更に備える、項目1〜16のいずれか一項に記載の方法。
[18]
前記ダイの後に前記樹脂を後硬化する工程を更に含む、項目1〜17のいずれか一項に記載の方法。
[19]
前記繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力が、前記ナノ粒子を伴わないこと以外は同一の条件で同一の繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力と比較して、少なくとも30%低減される、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
[20]
基準ライン速度を少なくとも20%超えるライン速度で前記繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される前記引張力が、前記ナノ粒子を伴わずに前記基準速度で同一の繊維強化ポリマー複合材料を形成するために要求される引張力より小さい、項目1〜18のいずれか一項に記載の方法。
[21]
項目1〜20のいずれか一項に記載の方法に従って作製された、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[22]
硬化樹脂とナノ粒子とを含む樹脂系に埋め込まれた連続繊維を含む、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[23]
少なくとも66体積%の前記連続繊維を含む、引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[24]
前記連続繊維が、グラファイト繊維を含む、項目22又は23に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[25]
前記連続繊維がガラス繊維を含む、項目22〜24のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[26]
少なくとも1つの樹脂が、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、及びポリエステル樹脂からなる群から選択される、項目22〜25のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[27]
前記ナノ粒子が表面改質シリカナノ粒子を含む、項目22〜26のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。
[28]
前記ナノ粒子が表面改質カルサイトナノ粒子を含む、項目22〜26のいずれか一項に記載の引き抜き成形繊維強化ポリマー複合材料。