(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039571
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】腔内装置の配備
(51)【国際特許分類】
A61F 2/97 20130101AFI20161128BHJP
A61M 25/10 20130101ALN20161128BHJP
【FI】
A61F2/97
!A61M25/10 540
【請求項の数】21
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-538938(P2013-538938)
(86)(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公表番号】特表2014-502180(P2014-502180A)
(43)【公表日】2014年1月30日
(86)【国際出願番号】US2011060397
(87)【国際公開番号】WO2012065080
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/412,647
(32)【優先日】2010年11月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/293,933
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100147142
【弁理士】
【氏名又は名称】石森 昭慶
(72)【発明者】
【氏名】パトリック エム.ノリス
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ピー.ピーターソン
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー エム.ウォルシュ
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−518086(JP,A)
【文献】
特表平08−509899(JP,A)
【文献】
特表2003−521971(JP,A)
【文献】
特表2008−506459(JP,A)
【文献】
特表2007−534367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/97
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側にある近位端と遠位端とを有して、該近位端と該遠位端との間を伸びる管腔を有するカテーテルと;
該カテーテルの遠位端に配置されていて、完全に広げられた外周サイズへと膨張させることのできる膨張可能な装置と;
該装置のまわりに広がる可撓性スリーブと;
を備えていて、
該可撓性スリーブが、該装置を治療部位に腔内送達をするのに適した第1のサイズに、該スリーブを維持する解放可能な第1の縫い目と、該スリーブを、該第1のサイズよりも大きく、かつ、該完全に広げられた外周サイズよりも小さい第2のサイズに維持する解放可能な第2の縫い目とを有し、該第1の縫い目と該第2の縫い目とが該カテーテルに関して径方向に揃っており、該第2の縫い目が該カテーテルと該第1の縫い目との間に配設されている、カテーテル組立体。
【請求項2】
前記第1の縫い目と前記第2の縫い目のうちの少なくとも一方が、結合部材によって解放可能な状態で保持されている、請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項3】
前記第1の縫い目と前記第2の縫い目が、共通の結合部材によって解放可能な状態で保持されている、請求項2に記載のカテーテル組立体。
【請求項4】
前記第2の縫い目を作動させる前と後に、前記可撓性スリーブの内面の部分が前記装置と接触した状態に留まる、請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項5】
前記第1の縫い目を作動させる前と後の両方に、前記装置が前記可撓性スリーブによって拘束された状態に留まる、請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項6】
前記第1の縫い目と前記第2の縫い目が、一般に前記カテーテルの長軸に対して径方向に揃っている、請求項1に記載のカテーテル組立体。
【請求項7】
前記第2の縫い目が、前記カテーテルの長軸と前記第1の縫い目の間に配置されている、請求項6に記載のカテーテル組立体。
【請求項8】
前記可撓性スリーブが平坦なチューブから形成されて前記装置のまわりに広がる二重壁式管腔を形成している、請求項7に記載のカテーテル組立体。
【請求項9】
前記平坦なチューブがePTFEから形成されている、請求項8に記載のカテーテル組立体。
【請求項10】
互いに反対側にある近位端と遠位端とを有していて、該近位端と該遠位端との間を伸びる管腔を有するカテーテルと;
該カテーテルに解放可能に結合していて、完全に広げられた外周サイズへと膨張させることのできる膨張可能な装置と;
該装置のまわりに広がる可撓性スリーブと;
を備えていて、
該可撓性スリーブが、該装置を治療部位に腔内送達をして広げるのに適した第1の外周サイズに、該スリーブを維持する解放可能な第1の縫い目と、該解放可能な第1の縫い目を解放した後、該スリーブの膨張を、該第1の外周サイズよりも大きく、かつ、該完全に広げられた外周サイズよりも小さい第2の外周サイズに制限する解放可能な第2の縫い目とを有し、該第1の縫い目と該第2の縫い目とが該カテーテルに関して径方向に揃っており、該第2の縫い目が該カテーテルと該第1の縫い目との間に配設されている、カテーテル組立体。
【請求項11】
前記カテーテルの腔内を延びていてそのカテーテルに対して移動可能な細長い部材の少なくとも一部を含む、請求項10に記載のカテーテル組立体。
【請求項12】
前記細長い部材の一部が前記カテーテルの腔内を通って遠位壁開口部から外に出てそのカテーテルの外面に沿って延び、近位壁開口部から前記カテーテルの腔内に入る、請求項11に記載のカテーテル組立体。
【請求項13】
前記細長い部材の前記部分が、前記遠位壁開口部と前記近位壁開口部の間で前記装置と係合することにより、その装置と前記カテーテルを解放可能に結合している、請求項12に記載のカテーテル組立体。
【請求項14】
前記装置がステント・フレームを備えていて、前記細長い部材の前記部分がそのステント・フレームと係合することにより、前記装置と前記カテーテルを解放可能に結合している、請求項13に記載のカテーテル組立体。
【請求項15】
前記細長い部材の前記部分が、前記ステント・フレームの先端とグラフト壁部の間を延びることにより、前記装置と前記カテーテルを解放可能に結合している、請求項14に記載のカテーテル組立体。
【請求項16】
カテーテル組立体を形成する方法であって、該方法が、
膨張可能な装置とカテーテルを解放可能に結合させる段階と;
可撓性シートの互いに反対側の部分を解放可能に互いに接続することによって拘束部材を形成する段階であって、該拘束部材と該装置とを、該装置を治療部位に腔内送達をするのに適した第1の外周サイズに維持するために解放可能な縫い目を形成し、そして、該可撓性シートの別の互いに反対側の部分を解放可能に互いに接続することによって、該拘束部材と該装置とを、該第1の外周サイズよりも大きく、かつ、完全に広げられた外周サイズよりも小さい第2の外周サイズに維持するために別の解放可能な縫い目を形成する、拘束部材を形成する段階とを含んでおり;
該拘束部材を形成する段階において、該解放可能な縫い目の各々が該カテーテルに関して径方向に揃っており、該別の解放可能な縫い目が該カテーテルと第1の該解放可能な縫い目との間に配設される、
カテーテル組立体を形成する方法。
【請求項17】
前記可撓性シートの互いに反対側の部分に沿って形成された複数の開口部に沿って縫われた細長い部材を用いて前記解放可能な縫い目のそれぞれを維持する操作を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記装置を前記拘束部材の中にコンパクトな状態で装着し、その装置を前記第1の外周サイズに保持する操作を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記カテーテルの中と前記装置の一部の中を前記細長い部材を延ばすことにより、その装置とそのカテーテルを解放可能に結合する操作を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
グラフト壁部の一部と前記装置のステント・フレームの間で前記細長い部材を縫う操作を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細長い部材によって前記装置と前記カテーテルを解放可能に結合させた状態で、その装置を前記拘束部材の中にコンパクトな状態で装着し、その装置を前記第1の外周サイズに保持する操作を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルを通じて埋め込み可能な医用装置を送達して遠方で広げることに関するものであり、より詳細には、自己膨張タイプまたはバルーン膨張タイプの埋め込み可能な腔内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腔内療法は、一般に、埋め込み可能な人工器官を運ぶ送達用カテーテルを、離れた血管の経皮的にアクセスすることがしばしばある小さな部位を通じて血管系の中に挿入する操作を含んでいる。血管系へのアクセスが完了すると、その送達用カテーテルを用いて人工器官を腔内送達した後、いくつかある技術のうちの1つによって広げる。このようにして人工器官を遠方に埋め込んで治療効果を実現することができる。腔内治療は、 “侵襲が最少である”という性質によって従来の外科的療法と区別される。
【0003】
膨張可能な体内プロテーゼは一般にステント要素を備えており、そのステント要素は、ステントの隙間を覆うグラフトを備えている場合と備えていない場合がある。この体内プロテーゼは、送達時の直径から自発的に膨張(すなわち弾性的に復元)するかバルーンで膨張させて、ある範囲の中間的な直径を経て、機能する所定の最大直径になるように設計されている。膨張可能な体内プロテーゼを腔内送達して広げることには独自のいくつかの問題がある。第1に、血管系に挿入できるようにするため、体内プロテーゼそのものを径方向にコンパクトにして適切な導入サイズ(すなわち送達時の直径)にした後、そのコンパクトな状態に拘束して送達装置(例えばカテーテルのシャフト)に装着する必要がある。その後、その拘束を解放し、体内プロテーゼが膨張して機能する直径になり、望む治療結果を達成できるようにせねばならない。膨張可能な装置を拘束して解放するさまざまな方法がこれまでに知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステントまたはステント・グラフトを血管治療部位に腔内送達するための改良されたシステムを提供することが相変わらず望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】カテーテル組立体の側面図であり、カテーテルの近位端の近くにコンパクトな状態で拘束された医用装置を有する。
【
図2a】膨張可能な医用装置の一部を斜めから見た図であり、その医用装置を広げているさまざまな段階が示されている。
【
図2b】膨張可能な医用装置の一部を斜めから見た図であり、その医用装置を広げているさまざまな段階が示されている。
【
図2c】膨張可能な医用装置の一部を斜めから見た図であり、その医用装置を広げているさまざまな段階が示されている。
【
図3a】2つの解放可能な縫い目を有する拘束用可撓性スリーブを製造する方法を示す側面図と斜視図である。
【
図3b】2つの解放可能な縫い目を有する拘束用可撓性スリーブを製造する方法を示す側面図と斜視図である。
【
図3c】
図3c、
図3c’及び
図3c”は、2つの解放可能な縫い目を有する拘束用可撓性スリーブを製造する方法を示す側面図と斜視図である。
【
図4a】医用装置をカテーテルに解放可能に結合させるための固定用ワイヤの側面図と斜視図である。
【
図4b】医用装置をカテーテルに解放可能に結合させるための固定用ワイヤの側面図と斜視図である。
【
図4c】医用装置をカテーテルに解放可能に結合させるための固定用ワイヤの側面図と斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
当業者であれば、本発明のさまざまな特徴を、想定する機能を実行する構成にされた任意の数の方法と装置で実現できることが容易にわかるであろう。言い換えるならば、別の方法と装置を本発明に組み込んで想定する機能を実行することができる。この明細書で言及する添付の図面はすべてが縮尺通りには描かれておらず、本開示内容のさまざまな特徴を図示するために誇張してもよいことと、この点に関し、本発明が図面に限定されると見なしてはならないことにも注意すべきである。最後に、本開示内容はさまざまな原理および考え方との関連で説明できるが、理論にとらわれてはならない。
【0007】
この明細書と請求項の全体を通じ、“遠位” という用語は、腔内装置(例えばステンと-グラフト)が埋め込まれたときの位置またはその装置の一部で、血流に関してその装置の別の部分よりも下流にある位置または部分を意味する。同様に、“遠位” という用語は、血流の方向、または血流の方向でさらに下流も意味する。
【0008】
“近位”という用語は、腔内装置が埋め込まれたときの位置またはその装置の一部で、血流に関してその装置の別の部分よりも上流にある位置または部分を意味する。同様に、“近位” という用語は、血流の方向とは反対の方向、または血流の方向から上流も意味する。
【0009】
遠位と近位という用語に関してはさらに、本開示内容は末梢および/または中枢のアプローチに限定されていないため、これらの用語は狭く解釈されてはならない。そうではなく、この明細書に記載した装置と方法は、患者の解剖学的構造に合わせて変えること、および/または調節することができる。
【0010】
さまざまな実施態様には、単一の可撓性スリーブを利用したカテーテル組立体が開示されている。この可撓性スリーブは、膨張可能な装置(例えば膨張可能な腔内グラフト)を解放可能な状態で治療部位(例えば患者の体内の血管)に腔内送達するのに適したサイズに維持する。この可撓性スリーブはさらに、その装置の膨張を、非拘束状態の外周サイズ(すなわち完全に広げられた外周サイズ)よりも小さな外周サイズに制限することにより、治療部位においてその装置を膨張させて完全に広げて血管系の内壁に係合させる前に、その装置の軸方向および/または回転方向の選択的な位置決めを容易にする。
【0011】
さまざまな実施態様では、例えば
図1に示してあるように、全体を100で示してあるカテーテル組立体は、カテーテル102と、膨張可能な装置104と、拘束部材または可撓性スリーブ106を備えている。カテーテル102は長手方向に延びており、互いに反対側に近位端110と遠位端108を有する。カテーテル102は、近位端110と遠位端108の間を延びる管腔112も備えている。
【0012】
膨張可能な装置104は、カテーテル102の近位端110の位置またはその近くに配置されている。装置104は、治療部位において広げられるときにその装置104を膨張させる自己膨張式ニチノール製フレームを備えることができる。装置104は、バルーンで膨張させることもできる。
【0013】
さまざまな実施態様では、可撓性スリーブ106は装置104のまわりに広がっており、第1の外周サイズ208を有する。その外周サイズでは、可撓性スリーブ106が、装置104をつぶれた状態(すなわち腔内送達と、典型的な血管系の中での前進に適した小さな直径の送達用輪郭)に拘束するとともに、解放可能に維持する。スリーブ106を完全に開くことにより、装置104を完全に広げ、その装置が拘束されていない外周サイズ(すなわち完全に広げられた外周サイズ)にすることができる。そのとき装置104は完全に広げられていて、可撓性スリーブおよび/または血管系によって拘束されていない。治療部位において装置と血管系の内壁が係合しやすくなるよう、装置は、治療を想定する血管系よりも大きなサイズにできることに注意されたい。
【0014】
可撓性スリーブは、そのスリーブを拘束するさまざまな構成を取ることができる。さまざまな実施態様では、スリーブ106は、一般に、互いに向かい合った部分または縁部を備えていて、その部分それぞれが複数の開口部を有する。開口部は、スリーブ106の互いに向かい合った部分に沿って延びる縫合線を形成する配置にされている。
図2aに示してあるように、スリーブ106は装置104のまわりに広がることができ、互いに向かい合った部分が合わさって解放可能な縫い目206を形成する。解放可能な縫い目206は、開口部を通過して延びるか開口部を通過して縫われる細長い結合部材によって互いに保持することができる。結合部材の例として、制御用つなぎ綱、ワイヤ、糸などがある。制御部材は、カテーテルのシャフト102の中を通過させて延ばし、近位コネクタ(例えば112、114、116)を通じてアクセスすることができる。開口部から結合部材を引っ張り、作動させ、移動させると、スリーブ106を縫い目206に沿って開き、装置104をより大きな直径へと膨張させることができる。腔内送達のためつぶれた状態にした膨張可能な装置を解放可能に維持するための拘束部材と結合部材の例は、Leopoldらに付与されたアメリカ合衆国特許第6,352,561号に見いだすことができる(その内容の全体が参考としてこの明細書に組み込まれている)。
【0015】
さまざまな実施態様では、可撓性スリーブ106は、
図2bに示してあるように、装置104を中間状態に維持する構成にできる。この状態では、スリーブ106は、そのスリーブ106の第1の外周サイズよりも大きいが、それでも装置104が完全に広げられた外周サイズよりは小さい第2の外周サイズに維持される。したがって装置104が一般に治療部位またはその近くに位置しているとき、可撓性スリーブ106を作動させると、例えばバルーンおよび/または装置のステントまたはワイヤ・フレーム部分によって装置104が膨張して一般に径方向外側に向かう力が加わることでそのスリーブ106を膨張させ(すなわち外側に押し)、中間状態にすることができる。装置を中間状態に維持することにより、医師は、その装置を完全に解放して膨張させることで完全に広げられた外周サイズに向かわせて周囲の血管系組織と係合させる前に、血管系に対するその装置の軸方向および/または回転方向の位置を調節することができる。
【0016】
さまざまな実施態様では、スリーブは、第1の解放可能な縫い目の固定に用いるのと同じ結合部材の一部によって保持された第2の解放可能な縫い目202により、または第1の解放可能な縫い目とは独立した別の結合部材により、この中間状態(すなわち第2の外周サイズ204)に維持される。したがってさまざまな実施態様では、多段階式に広げられる単一の可撓性スリーブが形成される。例えば2段階で広げる構成では、スリーブは、第1の解放可能な縫い目206によって解放可能に維持された第1の外周サイズ(
図2aに208で示す)と、第2の解放可能な縫い目202によって解放可能に維持された第2の外周サイズ(
図2bに204で示す)を持つことができる。さまざまな別の実施態様では、スリーブは、3つ以上の状態または段階を持つ構成にすることができ、追加の解放可能な縫い目を組み込むことにより、それに付随する複数の外周サイズを利用して最終的に完全に広げられた外周サイズに向かわせることができる。
【0017】
本発明の拘束部材を形成する方法は、全体が、一連の
図3a〜
図3cに示されている。これらの図では、拘束部材は多段階式に広げられる。拘束部材は、可撓性シートのある部分を互いに接続して解放可能な縫い目を形成して第1の外周サイズを有する管腔を規定するとともに、管腔のサイズを第2の外周サイズへと小さくするためにその可撓性シートの別の部分を互いに接続して別の解放可能な縫い目を形成することによって形成される。
図3aには、拘束部材にされることになる可撓性シート材料200の側面図が示されている。さまざまな実施態様では、シートは、可撓性材料(例えばePTFE)からなるチューブを平坦にすることによって形成できる。そのため得られる管腔は二重壁になる。
【0018】
シート200は、
図3bに示してあるように、折り曲げられて管腔を形成する。次に、折り曲げられたシート200は結合部材を用いて縫われ、解放可能な縫い目202を形成する。得られた管腔は、上述のように、装置が膨張するのを制限して中間状態にする。
【0019】
次に、可撓性シートの他の部分が折り曲げられて互いに接続され、追加の解放可能な縫い目206を形成することで、管腔のサイズが、装置の腔内送達に適した外周サイズへとさらに小さくなる。断面領域210は、装置が拘束される領域を大まかに示している。
【0020】
縫い目202、206は、
図3cに図示した実施態様に示されているように、一般に、領域210の実質的に同じ側に沿って径方向に揃うか位置している。縫い目は、例えば領域210の互いに反対側に配置することができる。
【0021】
装置(
図1、104)は、
図2aに示してあるように、最初は小さな直径の送達状態に拘束される。可撓性スリーブ106は、この小さな直径の状態にあるとき、装置を治療部位に腔内送達するのに適した小さなサイズ、すなわち外周サイズ208を有する。解放可能な第1の縫い目206が作動したとき、
図2bに示してあるように、バルーンおよび/または装置のステントまたはワイヤ・フレーム部分によって装置104が膨張して一般に径方向外側に向かう力が加わることで、スリーブ106は膨張して直径のより大きな状態、すなわち第2の外周サイズ204になる。装置を送達すること、または治療部位において装置を完全に広げることを完了させるため、解放可能な第2の縫い目202を作動させることにより、装置を膨張させて完全に広げられた外周サイズに向かわせ、治療部位において周囲の組織と係合させることができる。
【0022】
さまざまな実施態様では、拘束に用いる可撓性スリーブは、グラフトの形成に用いるのと同様の材料を含むことができる。さまざまな別の実施態様では、可撓性シート(
図3a、200)は、平坦にされた壁の薄いチューブから形成することができる。壁の薄いチューブ(とシート)は、そのシートまたはチューブの壁に取り付けるか埋め込んだ長手方向の高強度繊維の形態にされた“リップ-ストップ”を備えることができる。
【0023】
途中まで膨張した装置をカテーテルを通じて操作して再度位置決めできるようにするため、その装置は、さまざまな実施態様では、カテーテルに解放可能に結合される。さまざまな実施態様では、途中まで、または完全に膨張したステントが、例えば取り外し可能な連結ひもやクリップなどによってカテーテルに解放可能に結合される。
【0024】
別の実施態様では、
図4a〜
図4cに示してあるように、一般に互いに反対側にある遠位端404と近位端406を有するカテーテルのシャフト400が、ステント・グラフトに対して内側または外側で、そのステント・グラフトの壁部412に隣接した位置にある。カテーテルのシャフト400をステント・グラフトの壁部412に解放可能に結合させるため、細長い部材402(例えばワイヤ)をカテーテルのシャフト400の遠位端404を通過させて延ばすことができる。細長い部材402はさらに、カテーテルの管腔を通過させて延ばし、遠位壁開口部408を通過させて外に延ばすことができる。細長い部材はループを形成していて、グラフト壁部412の少なくとも1つの穴413を通ってグラフト壁部412に侵入し、近位壁開口部410を通過してカテーテルの管腔の中に戻ることができる。細長い部材402は、この構成によってグラフトの壁部に解放可能に結合しているため、必要に応じてグラフトの操作と再位置決めが可能になる。あるいは細長い部材をワイヤ・フレームの先端を通過させて延ばすことで、または少なくともワイヤ・フレームの一部のまわりに延ばすことで、カテーテルのシャフトをステント・グラフトの壁部に解放可能に結合させることができる。
【0025】
グラフトが治療部位に沿って望む位置に来ると、カテーテル400をステント・グラフトの壁部412から離し、カテーテルを治療部位から取り除き、ステント・グラフトを治療部位のその場所に残すことができる。より詳細には、
図4bに示してあるように、カテーテルは、細長い部材402を方向矢印414によって示してあるように遠位方向に引っ張ることによってグラフト壁部から解放することができる。細長い部材は、カテーテルの側壁の両方の穴408、410から出して、カテーテルの管腔から完全に引き抜くことができる。
【0026】
細長い部材402は、
図4bに示してあるように、グラフト壁部を、またはステントのフレームを、またはグラフト/ステント結合要素(例えばフック)を通過させることができる。さまざまな実施態様では、細長い部材は、“螺旋”の構成にしてグラフトに取り付けることができる。そのような螺旋は、捩ってグラフト壁部に係合または侵入させること(またはステントのフレームにロックすること)と、捩りをほどいてグラフト/ステントから細長い部材を解放することができる。
【0027】
細長い部材またはロック用ワイヤは、さまざまな実施態様では、金属材料、ポリマー材料、天然材料から形成することができ、一般的な医用品質の材料(例えばナイロン、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エラストマー有機ケイ素ポリマー);金属(例えばステンレス鋼、コバルト-クロム合金、ニチノール)を含むことができる。別のさまざまな実施態様では、細長い部材またはロック用ワイヤは、高強度ポリマー繊維である例えば超高分子量ポリエチレン繊維(例えばSpectra(登録商標)、Dyneema Purity((登録商標))など)やアラミド繊維(例えばTechnora(登録商標)など)から形成することもできる。
【0028】
グラフトが治療部位に沿って望む位置に来ると、
図2cに示してあるように、可撓性スリーブ106をさらに作動させてそのスリーブ106を“分割して開かせ”、装置104を完全に解放することができる。その後、装置104は膨張して完全に広げられた外周サイズに向かい、血管壁と係合する。
図4bに戻ると、カテーテルは、細長い部材402を方向矢印414によって示した遠位方向に引っ張ることにより、今や広げられている装置104のグラフト壁部から解放することができる。細長い部材は、カテーテルの側壁の両方の穴408、410から出して、カテーテルの管腔から完全に引き抜くことができる。
【0029】
ステントは、従来技術で知られているさまざまな構成にすることができ、例えばチューブ、または巻かれたワイヤ(またはリボン)、またはパターニングされた平坦なシートがチューブの形態にされたものから切断して製造することができる。ステントは、金属材料、ポリマー材料、天然材料から形成することができ、一般的な医用品質の材料(例えばナイロン、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エラストマー系有機ケイ素ポリマー);金属(例えばステンレス鋼、コバルト-クロム合金、ニチノール);生物由来の材料(例えばウシの動脈/静脈、心膜、コラーゲン)を含むことができる。ステントは、生体再吸収性材料(例えばポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ニュサン/グリコール酸)ポリマー、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(オルトエステル))も含むことができる。
【0030】
グラフト部材として可能な材料には、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロポリマー(例えばペルフルオロエラストマーなど)、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン、ウレタン、超高分子量ポリエチレン、アラミド繊維や、これらの組み合わせが含まれる。グラフト材料のための好ましい一実施態様はePTFEである。グラフト部材の材料の別の実施態様には、高強度ポリマー繊維である例えば超高分子量ポリエチレン繊維(例えばSpectra(登録商標)、Dyneema Purity((登録商標))など)やアラミド繊維(例えばTechnora(登録商標)など)が含まれる。グラフト部材には、生物活性剤を含めることができる。一実施態様では、ePTFEグラフトは、血液と接触するその表面に炭素成分を含んでいる。
【0031】
カテーテルを構成するのに用いられる典型的な材料は、一般に知られている材料を含んでいる。それは例えば、アモルファス汎用熱可塑性材料(ポリメチルメタクリレート(PMMAまたはアクリル樹脂)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、改質ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、セルロースアセテートブチレート(CAB)など);半結晶性汎用プラスチック(ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPEまたはLLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)など);アモルファス工業用熱可塑性材料(ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、改質ポリフェニレンオキシド(Mod PPO)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、改質ポリフェニレンエーテル(Mod PPE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)など);半結晶性工業用熱可塑性材料(ポリアミド(PAまたはナイロン)、ポリオキしメチレン(POMまたはアセタール)、ポリエチレンテレフタレート(PET、熱可塑性ポリエステル)、ポリブチレンテレフタレート(PBT、熱可塑性ポリエステル)、超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)など);高性能熱可塑性材料(ポリイミド(PI、イミド化プラスチック)、ポリアミドイミド(PAI、イミド化プラスチック)、ポリベンゾイミダゾール(PBI、イミド化プラスチック)など);アモルファス高性能熱可塑性材料(ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールスルホン(PAS)など);半結晶性高性能熱可塑性材料(ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など);半結晶性高性能熱可塑性フルオロポリマー(フッ化エチレンプロピレン(FEP)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、エチレン、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PDFE)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)など)である。他の一般に知られている医用品質の材料として、エラストマー系有機ケイ素ポリマー、ポリエーテルブロックアミド、熱可塑性コポリエーテル(PEBAX)、金属(ステンレス、ニッケル/チタン合金など)がある。
【0032】
当業者には、本発明の精神または範囲を逸脱することなく、本発明においてさまざまな改変やバリエーションが可能であることが明らかであろう。したがって本発明は、本発明の改変とバリエーションが、添付の請求項の範囲およびそれと同等な範囲に入るのであれば、そのような改変とバリエーションも含むと考えられる。
【0033】
関連する出願の相互参照
本出願は、2010年11月11日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願第61/412,647号の仮ではない出願であり、同仮出願の優先権を主張する。なおその内容の全体が、参考としてこの明細書に組み込まれている。