(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039581
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】加工物を機械加工するための方法およびそのために設計された工作機械
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20161128BHJP
【FI】
B23F5/16
【請求項の数】13
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-549760(P2013-549760)
(86)(22)【出願日】2012年1月19日
(65)【公表番号】特表2014-506535(P2014-506535A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】EP2012000249
(87)【国際公開番号】WO2012098002
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】102011009027.4
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500120211
【氏名又は名称】グリーソン − プァウター マシネンファブリク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート シュワイカー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ブログーニ
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平1−205915(JP,A)
【文献】
特開平1−159127(JP,A)
【文献】
特開平1−159126(JP,A)
【文献】
特開昭63−180411(JP,A)
【文献】
特開昭62−68220(JP,A)
【文献】
特開昭48−86199(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0234043(US,A1)
【文献】
米国特許第2338528(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00−23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物軸(Z)を中心とした回転運動で駆動され、かつその形状が周期構造を含む加工物(2)を機械加工するための方法において、
歯車状の歯を有し、その歯の前縁に切れ刃が形成された切削工具(0)であって、前記加工物軸(Z)から離れて配置される切削工具軸(Z0)を中心とした回転運動で駆動される切削工具(0)を、前記2つの回転軸(Z、Z0)の間の交差角(Σ)の下で前記加工物(2)に回転係合させ、
前記加工物軸に平行な方向の成分を有する、前記切削工具の切削運動を通して、前記切れ刃が前記加工物(2)から材料を除去し、および、所望の軸範囲にわたって前記加工物(2)を機械加工するために、前記切削工具がさらに、前記加工物軸に平行な方向の別の成分であって前記切削運動の前記成分に対して逆向きの別の成分を有する送り運動を行う、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記機械加工は、前記切削工具軸と前記加工物軸との間の距離の前記方向(X)に、前記切削工具(0)の異なる切削深さを有する少なくとも2つのパスで行われ、前記切削運動の前記成分とは逆向きの前記別の成分を有する前記送り運動は、反対の送り方向で機械加工パスが先行する後続のパスで行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記機械加工は、少なくとも3つのパスで行われ、後続のパスは、最後の機械加工パスであり、全ての先行するパスは、反対の送り方向で行われ、2つのそのような機械加工パスの間では、前記切削工具の引き戻し運動が生じて、その間は前記加工物との切削係合がなされないことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
軸方向送り運動として前記別の成分を有する前記送り運動は、前記軸同士の最短距離の方向に、重畳された半径方向送り運動を伴うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記2つの送り運動の前記重畳により、前記加工物の歯面隙間の、所望の形状の軸方向フェーズイン部分またはフェーズアウト部分が切削されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記歯面隙間の前記フェーズイン部分または前記フェーズアウト部分は、前記歯面隙間に接線方向に走る弓形のものであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記歯面隙間の前記フェーズイン部分または前記フェーズアウト部分は、一連のステップで成形されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記機械加工は、スカイビングを含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
外歯を備えた歯車が機械加工され/生成され、前記軸方向送り運動は、特に前記工具軸に平行に向いていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
内歯を備えた歯車が機械加工され/生成され、前記軸方向送り運動は、特に前記加工物軸に平行に向いていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項11】
機械加工され/生成されている歯車の歯は、螺旋状の歯であり、前記切削工具の歯は、平歯車の歯であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
加工物軸(Z)であって、それに付着して加工物が回転運動で駆動される加工物軸(Z)を画定する第1のスピンドルと、
調節可能な距離で前記加工物軸から離れて配置された工具軸(Z0)を画定する第2のスピンドルであって、調節可能な軸交差角の下で前記工具軸が前記加工物軸と交差し、および、切削工具(0)が前記工具軸(Z0)を中心とした回転運動で駆動される、第2のスピンドルと
を含む工作機械であって、さらに、
歯車状の歯を有しかつ前記歯の前端に切れ刃が形成されている切削工具が前記加工物に回転係合するように、機械軸の運動を方向付ける制御器であって、前記切れ刃が、前記加工物軸に平行な方向の成分を有する、前記切削工具の切削運動を通して、前記加工物から材料を除去し、一方で前記切削工具は、前記加工物軸に平行な方向の別の成分を有する送り運動をさらに行う制御器を含む工作機械であって、
前記制御器は、前記送り運動の前記別の成分が前記切削運動の前記成分に対して逆向きになるように、前記機械軸の運動をさらに方向付けることを特徴とする工作機械。
【請求項13】
前記制御器は、請求項2から請求項11のいずれか1項に記載の方法が実施されるように、前記機械軸の前記運動をさらに方向付けることを特徴とする請求項12に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物軸を中心とした回転運動で駆動され、かつその形状が周期構造を含む加工物、特に歯車の歯を備えた加工物を、機械加工するための方法であって、加工物軸から半径方向に離れて配置される切削工具軸を中心とした回転運動で駆動される、歯の前縁に切れ刃(cutting edge)が形成された歯付き切削工具を、これら2つの回転軸の間の交差角の下で加工物に回転係合させ、加工物軸に平行な方向に成分を有する切断運動を通して、切れ刃で加工物から材料を除去し、所望の軸範囲にわたって加工物を機械加工するために、切削工具が、加工物軸に平行な成分を有する送り運動を行うようになされている、方法に関する。本発明はさらに、この方法を実施するように設計された工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
関係ある機械軸の運動がこの種の動力学的パターンに従う機械加工法は、百年以上にもわたり公知であった(例えば、特許文献1参照)。これは例えば、スカイビングホイール(skiving wheel)を用いて、外歯または内歯を備えた円筒状の歯車加工物を削り出すプロセスを含む。下記の説明は、特にこの実施例に関するが、その他の適用例に使用することができる限り、明らかに、請求項1の包括的部分に従うさらに一般的なプロセスにも有効である。
【0003】
より良く知られているホブ切りなどのスカイビングプロセスは、幾何学的に決定された切れ刃を使用するチップ除去生成プロセスのグループに分類することができる。機械加工プロセスが回転駆動機構の分野でウォーム歯車(worm gear)の例を模倣する、ホブ切りのプロセスとは対照的に、スカイビングプロセスは、歯車の加工物およびスカイビングホイールのそれぞれの回転軸が斜めになった配置構成を特徴とする、はすば歯車伝動装置の例にたとえることができる。この文脈において、2つのホイールの間の相対運動を、スクリュ式運動とも呼ぶ。
【0004】
スカイビングホイールの歯元の面の前縁に形成され、したがって、2つの回転軸の間の交差角で傾斜した平面内で、加工物軸に直交する平面に対して位置する切れ刃を用い、スカイビングホイールと歯車加工物との間の回転運動を、加工物ブランク上の歯を生成することができる回転切断運動に使用することができる。このプロセスでの主な切断方向は、生成される歯形(toothed profile)の歯面隙間(tooth gap)に沿って走る。
【0005】
ホブ切りと比較すると、このプロセスには、同じ切断パス速度でより高い切断速度をもたらすという著しい利点があるが、それは動力学的性質が、より効果的な切断係合を、同じ長さの時間内で生成するからである。さらにスカイビングは、内側の歯車の歯の完全な生成または機械加工プロセスで特に有利であることが判明しており、このプロセスでは、ホブ切りを限られた範囲でしか使用することができず、かつスカイビングが機械加工時間に関して成形と比較しても利点をもたらす。
【0006】
一方、スカイビングプロセスは、この工具の幾何形状の構成に関して欠点があるが、それはスカイビングの場合、基準プロファイルの理論に必ずしも依拠することができないからである。また、スカイビングホイールと歯車加工物との間の速度伝達比は、ホブ切りに比べて明らかに小さく、速度伝達比の少しの誤差が、生成される歯車の品質に直接影響を及ぼし、したがって高い機械加工品質を実現するために極めて精密な機械設定が必要とされる。
【0007】
平歯車を生成し/完成させる公知の現況技術によれば、スカイビングホイールは、螺旋状の歯と共に構成され(螺旋角β
0で)、交差角Σは、スカイビングホイールの螺旋角β
0に等しくなるように選択される。機械加工される歯車加工物が、螺旋角β
2で螺旋状の歯を受容するためのものである場合、螺旋角β
2は軸の交差角Σに重畳されるが、このβ
2には、スカイビングホイールおよび歯車加工物の歯面捩れ(flank twist)が同じ回転方向を有する場合に負の符号が与えられ、歯面捩れが反対の回転方向を有する場合は正の符号が与えられる。さらに、従来の手法によれば、スカイビングホイールの送り運動は加工物軸Zに平行に進むが、回転係合の関数である加工物の基本回転は、軸方向の送り運動において加工物面への切込みを避けるために、追加の重畳された回転モードを伴う必要がある。スカイビング、および既に硬化された加工物の動力学的に類似する硬質スカイビングの原理に関するより詳細な記述は、文献に見出すことができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
原則として、歯車加工物は、ただ1つの送り運動を使用する単一操作で、スカイビングプロセスにより生成することが可能である。しかし、特により大量の材料が除去される場合、またはスカイビングホイールへの応力を削減するために、任意の2つの送り運動の間でスカイビングホイールを引き戻し運動により開始位置に戻し、かつ次の送り運動を軸間の半径距離の方向でより大きな切込み深さで行うという、複数の作業操作で機械加工を行うことも従来の手法である。これは、例えば文献に記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
それにも関わらず、先の記述の現況技術のスカイビング法では、プロセスを何回か行った場合であっても、生成され/完成された加工物の品質が依然として完全に満足のいくものではないことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE 243 514
【特許文献2】DE 10 2008 037 514 A1
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Thomas Bausch et al., Innovative Zahnradfertigung, Expertverlag
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって本発明には、スカイビングの動力学に基づきながら、機械加工された加工物でより高いレベルの品質を実現する、チップ除去機械加工法を提供するという目的がある。
【0013】
プロセス設計製作の観点から、この課題は、序論で記述された方法のさらなる開発により解決され、その改善点は本質的に、送り運動および切断運動が、加工物軸に平行なそれぞれの成分が反対方向を向くように調整されることによって、特徴付けられる。
【0014】
本発明に至る調査において、加工物軸に平行なその成分が、スカイビングホイールの回転係合から生じる切断運動の加工物軸平行成分とは反対の方向に向いている、送り運動を使用することにより、この手法で機械加工された切断面の改善された品質が得られることがわかった。従来の機械加工技法とは対照的に、特に工具がその前方に剥離した削り屑を押し遣る本発明のスカイビングの実施例では、本発明の方法は、工具の引込み動作を特徴とする。これは、機械加工される歯面隙間に削り屑が詰まるようになるという、歯面隙間の切断面の品質に悪影響を及ぼす可能性のある危険性を低下させる。
【0015】
他に、軸方向送り運動と切断運動との間の、加工物軸に平行なそれらのそれぞれの成分に対する関係を支配する、構成および動力学に関する公知の条件も、本発明による方法の指針として使用することができる。特にスカイビングホイールは、その基本的本体形状が円錐形であり、したがって必要とされる逃げ角(clearance angle)をそのデザインの固有の特徴として既に有しているものを、使用することができる。しかし、その基本的本体形状が円筒形であるスカイビングホイールを取り扱うことも可能であり、その場合、逃げ角は、機械軸の運動を経て、特にスカイビングホイールの位置をシフトさせることによって(偏心「e」)実現される。
【0016】
さらにこの方法は、外歯ならびに内歯を供える平歯車およびはすば歯車の生成に適用可能であり、従来のスカイビングにも適用される工具軸と加工物軸との間の十分大きい交差角Σと同じ要件に供される。切れ刃は、段差付きエッジグラインド(edge grind)で構成することもできる。
【0017】
この方法の好ましい例では、本発明で記述されるような「引込み」方向での送りパスの前に、反対の送り方向での1つまたは複数の機械加工パスがあり、即ち従来の現況技術により公知の「押込み」送りがある。したがって、1つまたは複数の粗い切断パスが従来の手法により行われる機械加工プロセスでは、後続の仕上げパスによって、詰まったチップによる可能性のある欠陥を少なくとも部分的に軽減することができる場合、この後続の仕上げパスは、本発明による「引込み」送り運動を、回転係合から生じる回転切断運動と組み合わせることによって行われ、詰まった削り屑の問題はもう生じることがない。
【0018】
原則として、1つまたは複数の機械加工パスに、半径方向送込み運動を使用することが考えられ、この場合、切断は軸方向送り運動により行われる。しかし場合によって、特に、1つまたは複数の歯形を持つ円筒状の車軸の形をした加工物の製造では、軸方向送り運動と同時に行われるよう同様に重畳することが可能な半径方向送り運動を行うことも、有利と考えられる。これは特に、加工物の歯面隙間のフェーズイン(phase−in)セクションまたはフェーズアウト(phase−out)セクションを所望の形状に切断するという可能性を広げる。
【0019】
送り運動の動的重畳がどのように制御されるかに応じて、歯面隙間に接線方向に走る、弓形のフェーズインまたはフェースズアウトを生成することが可能である。代替として、段階的に歯面隙間に進入するフェーズインセクションまたはフェーズアウトセクションも考えられる。これは、工具の軸方向運動により高い自由度を与える。
【0020】
機械加工法は、既に硬化された加工物にも適用することもできる(硬質スカイビング)。しかし、この方法の好ましい使用は、硬化プロセスの前である(スカイビング)。さらに、スカイビングプロセスでは、切断を、予備的な機械加工なしにブランクに直接行うことができる。それにも関わらず、歯の基本形状が既に形成されておりかつ意図される最終的な歯の形状が本発明のプロセスで生成されるだけである、予備段階を受けた加工物を、機械加工することも可能である。
【0021】
製造される加工物のサイズ、スカイビングホイールのサイズ、加工物とスカイビングホイールとの螺旋角により支配される軸の交差角に応じて、工具の送り運動は、加工物軸に平行に向けることができまたは工具軸に平行に向けることもでき、後者の運動は、加工物軸に対して、軸方向および接線方向の送り運動の組合せである。前者の種類の運動は、特に内部歯車プロファイルの生成に有利である。当然ながら、螺旋角および送り速度に基づいて、加工物は、加工物軸上の工具の位置Zごとに正確なスカイビング係合状態を得るために、回転係合に必要な基本回転に重畳させる必要があるさらなる回転運動に、従来の手法で供さなければならない。
【0022】
スカイビングホイールは一般に、螺旋状の歯の配置構成を保持することができる。一方、加工物に生成される歯が既に十分大きい螺旋角を有している場合、スカイビングホイールは、好ましくは平歯車の歯の配置構成を有することもできる。
【0023】
装置重視の観点から、工作機械は特許保護の下に置かれるが、この工作機械は、コンピュータによる数値制御(CNC)の下で機械軸運動を行う能力と共に、この方法の実行のために上述の機械軸を有し、かつ制御器システムを含んでその命令の下に、この方法の前述の変形例の1つまたは複数に必要な機械軸運動を行うことができるものである。
【0024】
さらに、保護の範囲は、その基本形態にある先の記述による方法または本明細書に示される方法のさらなる態様の1つまたは複数による方法で製造された、加工物にもおよぶ。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明のさらなる特性の特徴、詳細、および利点を、添付図面を参照する以下の記述に示す。
【
図1】スカイビングホイールと、機械加工がなされている過程の歯車加工物との間の、回転係合を示す図である。
【
図3】本発明による方法で生じる、切断運動および送り運動の方向成分を示す図である。
【
図4a】加工物の歯面隙間の端部を概略的に示す図である。
【
図4b】加工物の歯面隙間の端部を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
スカイビングホイール0の形をした
図1に示される工具は、
図1に同様に示される、機械加工される歯車加工物2を削り出すために使用する。このプロセスにおいて、
図1の2個のホイール0および2は互いに回転係合しており、工具軸Z
0および加工物軸Zは、
図1の実施例では加工物2に生成される歯車の歯の螺旋角に該当する交差角Σの下、少し離れて互いに交差している。軸同士の方向関係を、
図2において、2つの一目瞭然の図面で同様に示す。
【0027】
スカイビングホイール0は、その基本的な本体形状が円錐状であり、したがって加工物2の切断に必要な逃げ角は、既に、スカイビングホイール0のデザインの一体部分である。スカイビングホイール0の歯は、平歯車の手法で設計され、回転係合中は、スカイビングホイール0の歯は加工物2の歯面隙間と同じ向きにある。スカイビングホイール0の歯の自由端に形成される切れ刃は、回転切断運動中に加工物2の歯面隙間を生成する。加工物2の全歯幅をカバーするために、スカイビングホイール0は、工具軸Z
0に平行にまたは加工物軸Zにも平行に向けることのできる軸方向送り運動を行う。回転係合に必要な加工物2の基本回転の他に、生成される歯形に関して正しいスカイビング係合状態をスカイビングホイール0の全ての位置Zで維持するために、スカイビングホイール0の軸方向送り運動に応じて、追加の回転モードを重畳させなければならなくなる可能性がある。いずれの場合も、軸方向送り運動は、加工物軸Zに平行な成分F
Zを有することになる。
【0028】
v
cとして
図1に示される、スカイビングプロセスで生じる主な切断方向(切断速度)は、切れ刃と、切断される加工物材料との間の、切断係合の位置でのそれぞれの接線速度ベクトルv
0およびv
2の和として得られる。v
c,IIとして
図3に示される加工物軸Zに平行に走る切断方向v
cの成分は、
図1において左から右に向かう。
【0029】
この点まで、先の記述は、現況技術のスカイビングプロセスに該当し、軸方向送り運動は同様に、
図1の表示において左から右に向かう加工物軸に平行な成分を有する。切断が複数回のパスで行われる場合、材料の除去は数回のパスにおよぶことができ、これはスカイビングホイール0をパスとパスとの間で引き戻し、かつ軸同士の距離を調節することで各パスでの切断深さを増大させることによってなされる。
【0030】
前述の現況技術のスカイビング法とは対照的に、本発明で提示される概念は、スカイビングホイール0の軸方向送り運動を、加工物軸に平行なその成分が同じ加工物軸に対して切断運動の成分とは反対方向を有するように行うことであり、即ち、加工物軸に平行な軸方向送り運動の成分が
図1の右から左に向けられ、したがって送り運動は、チップが詰まる危険性を低下させる「引込み」運動である。
【0031】
図3に概略的に示される実施例では、この「逆」送り運動−従来技術の方法に関して−は、n回の切断パスの最後に行われ、即ち仕上げパスで行われ、それに対して、先行するn−1回のパス、例えば荒削りパスは、従来の送り運動で行われ、加工物軸に平行な送り成分は、互いに交差する2つの回転軸との回転係合の結果生じる同じ軸に平行な切断運動成分(v
c,IIとして
図3の上部に示される)と同じ方向に向いている。
【0032】
図3は、ベクトル成分v
c,IIと、加工物軸に平行な軸方向送り成分とを示し、f
z(i)は、i回目の機械加工パスにおけるそれぞれの軸方向送り成分を示す。
【0033】
これらの軸方向送り運動f
z(i)は、例えば歯面隙間の軸端部で所望の幾何形状を生成するために、半径方向で、即ち軸間の距離変化で、追加の重畳された送り運動を伴うことができる。重畳された半径方向送り運動で生成された、フェーズイン部分またはフェーズアウト部分を備える歯面隙間の実施例を
図4に示し、
図4aは、弓形フェーズアウト部分を示し、
図4bは、歯面隙間の段階的フェーズアウト部分を示す。
図4の破線は、連続する切断パスに関するそれぞれの切断深さを表し、これらは、軸方向送り運動に半径方向の前進または半径方向の送込みを重畳することによって実現されるものである。歯面隙間の端部でのこのプロファイルの変形例に関する好ましい適用例は、歯幅に該当する軸方向の長さにおよぶ歯形を持ちかつ通常なら切削工具の許容運動範囲を限定するように構成される、円筒軸の機械加工で生じる。これは特に、異なる歯形を持つ異なる断面を有する円筒軸に適用される。
【0034】
異なる設定パラメータを、前述の荒削りパスおよび仕上げパス用に、特にスカイビングホイールおよび加工物の回転の絶対速度に関してかつ/または送り速度に関して、選択することができる。
【0035】
本発明は、例示された実施形態に論じられた詳細に限定されない。むしろ、個々にまたは任意の組合せで得られた、記述および特許請求の範囲で挙げられた特徴は、本発明をその異なる実施形態で実現する際に必要不可欠であると証明することができる。