(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トレッド部に、タイヤ赤道の両側をタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対の主溝と、前記主溝の間を継ぐことにより複数のクラウンブロックを区分する複数のクラウン横溝とが形成された空気入りタイヤであって、
前記各クラウンブロックは、隣接する一方の前記クラウン横溝に連なるように踏面の一部がタイヤ半径方向内側に凹むクラウン凹部を有し、
前記クラウン凹部は、両側の前記主溝とは離れて形成されており、
前記一対の主溝は、第1主溝と、第2主溝とを含み、
前記第1主溝及び前記第2主溝のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側に傾斜する第1傾斜部と、前記第1傾斜部と反対側に傾斜する第2傾斜部と、タイヤ軸方向内側に凸となる内側頂部とを含み、
前記クラウン横溝は、第1クラウン横溝と、第2クラウン横溝とを含み、
前記第1クラウン横溝は、前記第1主溝の前記各内側頂部と前記第2主溝の前記第1傾斜部とを継ぎ、
前記第2クラウン横溝は、前記第2主溝の前記各内側頂部と前記第1主溝の前記第2傾斜部とを継ぐことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、オフロード用タイヤの主溝は、溝深さ及び溝幅が大きいため、クラウンブロックの主溝に面した部分の剛性は小さい。一方、特許文献1のタイヤでは、クラウン凹部が、主溝と連なる位置に形成されている。これにより、クラウンブロックは、主溝に面するクラウン凹部付近の剛性が著しく低下し、ひいては、クラウンブロックの主溝に面する部分と主溝から離れた部分の剛性の差が拡大する傾向にあった。剛性が相対的に小さな部分には、走行時に応力が集中し、クラウンブロックの主溝に面するクラウン凹部付近には、チッピング等のブロック欠けが生じ易いとの問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑みなされたもので、マッド性能を維持しつつ、耐チッピング性能を向上しうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、トレッド部に、タイヤ赤道の両側をタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対の主溝と、前記主溝の間を継ぐことにより複数のクラウンブロックを区分する複数のクラウン横溝とが形成された空気入りタイヤであって、前記各クラウンブロックは、隣接する一方の前記クラウン横溝に連なるように踏面の一部がタイヤ半径方向内側に凹むクラウン凹部を有し、前記クラウン凹部は、両側の前記主溝とは離れて形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記クラウン凹部の深さは、前記クラウン横溝の溝深さよりも小さいのが望ましい。
【0008】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記各主溝は、第1主溝と、第2主溝とを含み、前記第1主溝及び前記第2主溝のそれぞれは、タイヤ周方向の一方側に傾斜する第1傾斜部と、前記第1傾斜部と反対側に傾斜する第2傾斜部と、タイヤ軸方向内側に凸となる内側頂部とを含み、前記クラウン横溝は、第1クラウン横溝と、第2クラウン横溝とを含み、前記第1クラウン横溝は、前記第1主溝の前記各内側頂部と前記第2主溝の前記第1傾斜部とを継ぎ、前記第2クラウン横溝は、前記第2主溝の前記各内側頂部と前記第1主溝の前記第2傾斜部とを継ぐのが望ましい。
【0009】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1傾斜部及び前記第2傾斜部は、タイヤ周方向に対して30〜40度の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0010】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記クラウン横溝の溝幅は、前記主溝の溝幅の35%〜75%の範囲であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記クラウン横溝は、タイヤ軸方向に対して30〜40度の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記空気入りタイヤは、前記トレッド部に、前記主溝からタイヤ軸方向外側にのびる複数のショルダー横溝が設けられ、前記各ショルダー横溝は、前記主溝に連なる第1横溝部と、前記第1横溝部のタイヤ軸方向外側に連なり、かつ、前記第1横溝部よりも大きい溝幅及び溝深さを有する第2横溝部とを含み、前記第1横溝部の一方の溝壁は、前記第2横溝部の一方の溝壁と滑らかに連続しているのが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気入りタイヤは、トレッド部に、タイヤ赤道の両側をタイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびる一対の主溝と、主溝の間を継ぐことにより複数のクラウンブロックを区分する複数のクラウン横溝とが形成されている。このような空気入りタイヤは、主溝及びクラウン横溝内で押し固めた泥をせん断するときに大きな反力を発生させるため、優れたマッド性能を発揮しうる。
【0014】
各クラウンブロックは、隣接する一方の前記クラウン横溝に連なるように踏面の一部がタイヤ半径方向内側に凹むクラウン凹部を有している。このようなクラウン凹部は、凹部内で押し固めた泥をせん断するときに大きな反力を発生させるため、マッド性能を向上させるのに役立つ。
【0015】
クラウン凹部は、両側の主溝とは離れて形成されている。このようなクラウン凹部は、クラウンブロックの主溝と離れて設けられるため、クラウン凹部による局部的な剛性低下が防止される。このため、本発明のクラウンブロックでは、主溝と離れたクラウン凹部により剛性が緩和された部分と、主溝に面する剛性が小さい部分との剛性の差が小さい。従って、本発明の空気入りタイヤのクラウンブロックは、局部的な剛性の小さい部分を減らし、ひいては、そこでの耐チッピング性能を向上しうる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載される場合がある。)のトレッド部2の展開図が示されている。本実施形態の空気入りタイヤは、SUV等の四輪駆動車用として好適に利用され得る。
【0018】
図1に示されるように、トレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側をのびる主溝3が設けられている。主溝3は、例えば、タイヤ赤道Cの一方側(図示右側)をのびる第1主溝3aと、タイヤ赤道Cの他方側(図示左側)をのびる第2主溝3bとを含んでいる。
【0019】
第1主溝3a及び第2主溝3bは、それぞれ、タイヤ周方向に連続してジグザグ状にのびている。本実施形態の第1主溝3a及び第2主溝3bは、互いに等しいジグザグピッチを有し、ジグザグの位相を互いに揃えて配されている。
【0020】
第1主溝3a及び第2主溝3bは、それぞれ、第1傾斜部4と第2傾斜部5とをタイヤ周方向に交互に含んでいる。第1傾斜部4は、タイヤ周方向に対して一方側に傾斜している。第2傾斜部5は、第1傾斜部4と反対側に傾斜している。
【0021】
第1主溝3a及び第2主溝3bは、それぞれ、タイヤ周方向に隣り合う第1傾斜部4と第2傾斜部5との間に、ジグザグ頂部6を含んでいる。ジグザグ頂部6は、タイヤ軸方向外側に凸となる外側ジグザグ頂部6aと、タイヤ軸方向内側に凸となる内側ジグザグ頂部6bとを含んでいる。
【0022】
このような第1主溝3a及び第2主溝3bは、それぞれ、溝内で押固めた泥を、第1傾斜部4及び第2傾斜部5でせん断する。これにより、本実施形態のタイヤでは、泥濘地でも大きな反力が発生し、優れたマッド性能を発揮しうる。また、ジグザグ状の第1主溝3a及び第2主溝3bは、ドライ路面の走行中、気柱共鳴音が生じ難いため、通過騒音を低減するのに役立つ。これらの観点から、第1傾斜部4及び第2傾斜部5は、それぞれ、タイヤ周方向に対して、例えば、25〜35度の角度αで傾斜しているのが望ましい。また、第1傾斜部4及び第2傾斜部5は、それぞれ、直線状にのびているのが望ましい。
【0023】
第1主溝3a及び第2主溝3bは、それぞれ、ジグザグ振幅W1が、例えば、トレッド端Te間の距離であるトレッド幅TWの20%〜30%の範囲であるのが望ましい。ジグザグ振幅W1がトレッド幅TWの20%未満の場合、泥濘地を走行する際、第1傾斜部4及び第2傾斜部5により大きな反力が発生しないおそれがある。逆に、ジグザグ振幅W1がトレッド幅TWの30%より大きい場合、第1主溝3a及び第2主溝3bの溝内で泥を押し固めるのが困難となるおそれがある。いずれの場合にも、マッド性能を十分に発揮できないおそれがある。
【0024】
本明細書において、前記「トレッド端」は、正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させたときのトレッド部2の接地面の最もタイヤ軸方向外側の位置である。
【0025】
前記「正規状態」とは、タイヤが、正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書及び特許請求の範囲において、特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法は、正規状態での値である。
【0026】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば"標準リム"、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0027】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、例えば、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0028】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、例えば、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0029】
図2には、
図1のA−A端面図が示されている。
図2に示されるように、第1主溝3aの最大溝幅W2は、ジグザグ振幅W1と同様の観点から、例えば、トレッド幅TW(
図1に示す)の5%〜10%の範囲であるのが望ましい。同様の観点から、第1主溝3a及び第2主溝3bの溝深さD1は、例えば、10〜20mmの範囲であるのが望ましい。また、本実施形態の第2主溝3bの最大溝幅及び溝深さは、第1主溝3aの最大溝幅W2及び溝深さD1と同程度であるのが望ましい。
【0030】
図3には、
図1のタイヤ赤道C付近の部分拡大図が示されている。
図1又は
図3に示されるように、本実施形態では、第1主溝3aと第2主溝3bとの間に、クラウン陸部8が区分されている。
【0031】
本実施形態のクラウン陸部8は、第1主溝3aと第2主溝3bのジグザグ位相が互いに揃えられていることにより、タイヤ軸方向の幅を一定としながら、タイヤ周方向へジグザグ状にのびている。クラウン陸部8には、複数本のクラウン横溝9が設けられている。これにより、クラウン陸部8には、複数のクラウンブロック8Cが区分されている。
【0032】
クラウン横溝9は、第1主溝3aと第2主溝3bの間を継いでいる。本実施形態のクラウン横溝9は、タイヤ周方向に交互に配された第1クラウン横溝9aと第2クラウン横溝9bとを含んでいる。
【0033】
第1クラウン横溝9aは、第1主溝3aの第2傾斜部5と同じ向きに傾斜している。第2クラウン横溝9bは、第2主溝3bの第1傾斜部4と同じ向きに傾斜、即ち、第1クラウン横溝9aと反対側に傾斜している。第1クラウン横溝9a及び第2クラウン横溝9bは、それぞれ、直線状にのびているのが望ましい。
【0034】
本実施形態の第1クラウン横溝9aは、第1主溝3aの内側ジグザグ頂部6bと第2主溝3bの第1傾斜部4との間を継いでいる。好ましくは、第1クラウン横溝9aは、例えば、第2主溝3bの第1傾斜部4の長手方向の中間部に接続される。
【0035】
本実施形態の第2クラウン横溝9bは、第2主溝3bの内側ジグザグ頂部6bと第1主溝3aの第2傾斜部5との間を継いでいる。好ましくは、第2クラウン横溝9bは、例えば、第1主溝3aの第2傾斜部5の長手方向の中間部に接続される。
【0036】
第1クラウン横溝9a及び第2クラウン横溝9bは、泥濘地において、溝内で押固めた泥を剪断することにより、大きな反力を発生させ、マッド性能をより一層高めることができる。このような観点から、第1クラウン横溝9aは、タイヤ軸方向に対して、例えば、30〜40度の角度βで傾斜しているのが望ましい。同様の観点から、第2クラウン横溝9bは、タイヤ軸方向に対して、例えば、第1クラウン横溝9aと同程度の角度で傾斜しているのが望ましい。
【0037】
図2又は
図3に示されるように、第1クラウン横溝9aの溝幅W3は、高いマッド性能を維持するために、例えば、第1主溝3aの溝幅W2の35%〜75%の範囲であるのが望ましい。同様に、第1クラウン横溝9aの溝深さD2は、例えば、第1主溝3a及び第2主溝3bの溝深さD1の70%〜90%の範囲であるのが望ましい。同様の観点から、第2クラウン横溝9bの溝幅及び溝深さは、第1クラウン横溝9aの溝幅W3及び溝深さD2と同程度であるのが望ましい。
【0038】
図3に示されるように、クラウンブロック8Cは、様々な向きにそのエッジを作用させて路面に対する摩擦力を高めるために、その踏面が多角形状であるのが好ましく、本実施形態では、第1主溝3a、第2主溝3b、第1クラウン横溝9a及び第2クラウン横溝9bにより、略五角形状に区分されている。
【0039】
本実施形態のクラウンブロック8Cは、高いマッド性能を維持しつつ、路面との摩擦力を確保するために、タイヤ軸方向の最大幅W4が、例えば、トレッド幅TW(
図1に示す)の20%〜50%の範囲であるのが望ましい。また、クラウンブロック8Cは、マッド性能及び耐チッピング性能を維持するために、タイヤ周方向の最大長さL1が、例えば、タイヤ軸方向の最大幅W4の50%〜200%の範囲であるのが望ましい。
【0040】
クラウンブロック8Cには、クラウン凹部10が設けられている。クラウン凹部10は、踏面8Sの一部がタイヤ半径方向内側に凹んだ窪みである。クラウン凹部10は、クラウンブロック8Cに隣接する一方の第1クラウン横溝9a又は第2クラウン横溝9bに連なるように設けられている。また、クラウン凹部10は、クラウンブロック8C内で終端している。このようなクラウン凹部10は、凹部内で泥を固めてせん断するときに大きな反力を発生させ、マッド性能をより一層向上させるのに役立つ。
【0041】
クラウン凹部10は、第1主溝3a及び第2主溝3bとは離れて形成されている。このようなクラウン凹部10は、クラウンブロック8Cの第1主溝3a及び第2主溝3bと離れて設けられるため、クラウン凹部10での局部的な剛性低下が防止される。このため、本実施形態のクラウンブロック8Cでは、第1主溝3a及び第2主溝3bと離れたクラウン凹部10により剛性が緩和された部分と、第1主溝3a及び第2主溝3bに面する剛性が小さい部分との剛性の差が小さい。従って、本実施形態の空気入りタイヤのクラウンブロック8Cは、局部的な剛性の小さい部分を減らし、ひいては、そこでの耐チッピング性能を向上しうる。
【0042】
クラウン凹部10のタイヤ軸方向の最大幅W5は、マッド性能を維持しつつ、耐チッピング性能を向上するとの観点から、例えば、クラウンブロック8Cのタイヤ軸方向の最大幅W4の25%〜35%の範囲であるのが望ましい。同様の観点から、クラウン凹部10のタイヤ周方向の最大長さL2は、例えば、クラウンブロック8Cのタイヤ周方向の最大長さL1の20%〜30%の範囲であるのが望ましい。
【0043】
図2に示されるように、クラウンブロック8Cのクラウン凹部10付近の剛性が過度に小さくならないように、クラウン凹部10の深さD3は、第1クラウン横溝9aの溝深さD2よりも小さいのが望ましい。より好ましい態様では、クラウン凹部10の深さD3は、例えば、第1クラウン横溝9aの50%〜70%の範囲である。
【0044】
クラウン凹部10は、クラウンブロック8Cの平面視において、例えば、略台形状に形成されている。より具体的には、クラウン凹部10は、クラウン横溝9に連なる一対の溝縁が、例えば、クラウンブロック8C内の終端側に向かって互いに近接するように形成されている。このようなクラウン凹部10は、接地時、各溝縁に沿って凹部のより終端側に泥を案内し、凹部内でより確実に泥を固めることができ、ひいては、マッド性能をより一層向上させるのに役立つ。
【0045】
上述の作用をより効果的に発揮させるため、本実施形態の各クラウン凹部10は、タイヤ赤道C上に形成されるのが望ましい。クラウンブロック8Cの接地時、クラウンブロック8Cのタイヤ赤道C側には、より大きな接地圧が作用する。このため、クラウン凹部10をタイヤ赤道C上に形成することにより、凹部内の泥をより大きい接地圧で固めることができる。
【0046】
クラウン凹部10が設けられることにより、クラウンブロック8Cの踏面8Sは、例えば、略C字状に形成されている。このようなクラウンブロック8Cでは、例えば、凹部内の泥と接地圧とにより押し広げられたクラウン凹部10に、凹部を収縮させる方向の復元力が作用する。このため、クラウン凹部10が収縮される際、凹部内の泥が、例えば、クラウン横溝9に押出される。これにより本実施形態のクラウンブロック8Cでは、凹部内に泥が堆積することを防止でき、優れたマッド性能を維持することができる。
【0047】
図3に示されるように、クラウンブロック8Cには、好ましくは、サイピング13が設けられる。サイピング13は、クラウン凹部10を囲むように、略C字状にのびている。サイピング13は、例えば、両端がクラウンブロック8C内で終端するクローズドサイプである。また、サイピング13は、例えば、複数のクローズドサイプを略C字状に並べて形成されても良い。このようなサイピング13は、クラウンブロック8Cの剛性を部分的に小さく抑制でき、ひいては、耐チッピング性能をより一層向上するのに役立つ。本明細書において、「サイピング」とは、幅が0.5〜1.5mm程度の切り込みを意味し、排水用の溝とは区別される。
【0048】
また、クラウンブロック8Cには、好ましくは、面取部14が設けられる。面取部14は、クラウンブロック8Cの踏面において、主溝3に面した頂部に設けられるのが望ましい。このような面取部14は、主溝3に面した剛性の小さな頂部を起点としたブロック欠けを抑制でき、ひいては、耐チッピング性能をより一層向上するのに役立つ。同様の観点から、本実施形態の面取部14は、例えば、クラウン凹部10に面した鋭角の頂部にも設けても良い。
【0049】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、第1主溝3aとトレッド端Teとの間、及び、第2主溝3bとトレッド端Teとの間に、ショルダー陸部15が区分されている。
【0050】
本実施形態のショルダー陸部15には、第1主溝3aとトレッド端Teとの間、又は、第2主溝3bとトレッド端Teとの間を継ぐ複数のショルダー横溝16が設けられている。これによりショルダー陸部15には、複数のショルダーブロック15Sが区分されている。
【0051】
図4には、
図1の右側のショルダー陸部15付近の部分拡大図が示されている。
図4に示されるように、各ショルダー横溝16は、例えば、第1主溝3aに連なる第1横溝部16aと、第1横溝部16aのタイヤ軸方向外側に連なる第2横溝部16bとを含んでいる。
【0052】
第1横溝部16aは、例えば、第1主溝3aの第1傾斜部4に接続され、第2傾斜部5と同じ向きに傾斜してタイヤ軸方向外側にのびている。本実施形態の第1横溝部16aは、第1傾斜部4とT字状の三叉路を形成するように接続されている。
【0053】
一般に、主溝3の第1傾斜部4と第2傾斜部5とが交わるジグザグ頂部6の位置では、その中を流れる空気の向きが変化する。このため、ジグザグ頂部6に、例えば、第1横溝部16aが接続されていると、主溝3からショルダー横溝16に空気が流入し易く、通過騒音が大きくなるという不具合が生じる。しかし、本実施形態のショルダー横溝16は、上述の第1傾斜部4にT字状の三叉路を形成するように接続されている。従って、本実施形態のタイヤは、ドライ路面の走行中、主溝3からショルダー横溝16への空気の流入が抑制されるので、主溝3やショルダー横溝16の溝容積を減じることなく通過騒音を低減しうる。
【0054】
第1横溝部16aは、例えば、主溝3の第2傾斜部5と同じ向きに傾斜している。本実施形態の第1横溝部16aは、第2傾斜部5に沿って直線状にのびている。このような第1横溝部16aは、例えば、ウェット走行時、第2傾斜部5内の水が第1傾斜部4側に移動するときの慣性を利用して、水をトレッド端Te側に案内する。
【0055】
上述の作用を効果的に発揮させるため、第1横溝部16aの溝幅W6は、例えば、4.0〜8.0mmの範囲であり、好ましくは5.0〜7.0mmの範囲である。同様の観点から、第1横溝部16aの溝深さは、例えば、6.0〜9.0mmの範囲である。
【0056】
第2横溝部16bは、例えば、第1横溝部16aからトレッド端Teまでタイヤ軸方向にのびている。好ましい態様として、第2横溝部16bのタイヤ軸方向に対する傾斜角度は、例えば、タイヤ軸方向外側に向かって漸減している。
【0057】
本実施形態の第2横溝部16bは、第1横溝部16aよりも大きい溝幅を有している。第2横溝部16bのトレッド端Teでの溝幅W7は、例えば、第1横溝部16aの溝幅W6の3.5〜6.0倍の範囲であるのが望ましい。
【0058】
本実施形態の第2横溝部16bは、第1横溝部16aよりも大きい溝深さを有している。第2横溝部16bの溝深さは、例えば、第1横溝部16aの溝深さの1.25〜1.65倍の範囲であるのが望ましい。
【0059】
このような第1横溝部16a及び第2横溝部16bは、主溝3から第2横溝部16b側に流入する空気の量が、第1横溝部16aによって絞られ、ポンピング音を小さくすることができる。
【0060】
第2横溝部16bのタイヤ周方向の一方側(
図4では下側)の溝壁は、第1横溝部16aの一方側の溝壁と滑らかに連続している。これにより、主溝3から流入した空気は、ショルダー横溝16内に乱流を発生させることなく、連続する第1横溝部16a及び第2横溝部16bの溝壁に沿って滑らかにトレッド端Te側に排出される。このため、接地時のショルダー横溝16内の空気圧の瞬間的な増加が緩和され、ポンピング音がさらに抑制される。
【0061】
ショルダーブロック15Sは、クラウンブロック8C(
図1に示す)と同様の観点から、その踏面が多角形状であるのが好ましく、本実施形態では、第1主溝3aのジグザグ位相とショルダー横溝16とにより略Y字状に区分されている。
【0062】
本実施形態のショルダーブロック15Sには、その剛性を緩和するために、例えば、第1主溝3aやショルダー横溝16からのびるサイピング17が設けられている。このサイピング17は、ショルダーブロック15Sの中央に向かってのびショルダーブロック15S内で終端している。また、ショルダーブロック15Sには、好ましくは、副溝18が設けられる。副溝18は、例えば、サイピング17の終端とトレッド端Teとの間に接続される。このような副溝18は、タイヤ軸方向外側への排水性を向上するのに役立つ。
【0063】
また、ショルダーブロック15Sには、好ましくは、面取部19が設けられる。面取部19は、ショルダーブロック15Sの踏面において、ショルダー横溝16に面した縁部に設けられるのが望ましい。このような面取部19は、加速時又は減速時に作用する大きな応力により生じる縁部を起点としたブロック欠けを抑制でき、ひいては、耐チッピング性能をより一層向上するのに役立つ。同様の観点から、本実施形態の面取部19は、例えば、第1主溝3aに面した頂部にも設けられるのが望ましい。
【0064】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこの実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0065】
図1に示される基本パターンを有し、かつ、表1の仕様に基いた実施例1〜7のタイヤ(サイズ:225/95R16C)が試作され、それらの性能がテストされた。なお、比較例として、クラウン凹部が主溝と連なる位置に形成されたクラウンブロックが区分されたタイヤが試作され、同様にテストされた。また、実施例8として、
図1を基調としつつ、クラウン横溝が各主溝の内側頂部と外側頂部を継ぐことにより、踏面が略四角形状のクラウンブロックが区分されたタイヤが試作され、同様にテストされた。
テスト方法は次の通りである。
【0066】
<マッド性能>
各試供タイヤが内圧(フロント:250kPa、リア:475kPa)でテスト車両の全輪に装着され、泥濘地を含むテストコースで走行させた後、ドライバーの官能により泥濘地でのトラクション性能について評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きいほどマッド性能に優れる。
【0067】
<耐チッピング性能>
上記テスト車両にて、砂利道でタイヤを空転させた後、クラウンブロックに生じたチッピングが検査官の目視により確認された。結果は、確認されたチッピングの数と状態とに基づいて、比較例を100とする評点であり、数値が大きいほど耐チッピング性能に優れる。
【0068】
【表1】
【0069】
表1に示されるように、各実施例のタイヤは、マッド性能を維持しつつ、対チッピング性能を向上しうることが確認できた。