特許第6039635号(P6039635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039635
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】自動注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20161128BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20161128BHJP
   A61M 5/46 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/20 500
   A61M5/20 550
   A61M5/20 570
   A61M5/24 502
   A61M5/46
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-247122(P2014-247122)
(22)【出願日】2014年12月5日
(62)【分割の表示】特願2011-524458(P2011-524458)の分割
【原出願日】2009年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-61664(P2015-61664A)
(43)【公開日】2015年4月2日
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】0815653.1
(32)【優先日】2008年8月28日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/136,340
(32)【優先日】2008年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501410160
【氏名又は名称】オウエン マンフォード リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォゼンクロフト,ロバート マイケル
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−177503(JP,A)
【文献】 特表2009−533124(JP,A)
【文献】 特表2008−521482(JP,A)
【文献】 特表2006−500150(JP,A)
【文献】 特表平11−503637(JP,A)
【文献】 米国特許第06203530(US,B1)
【文献】 米国特許第05273544(US,A)
【文献】 特表平06−508773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20− 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分離可能な前方部(10)および後方部(12)を有する本体を具備する自動注射デバイスであって、前記後方部は係止部(92)によって動作される駆動機構部(88,90)を備え、前記本体の前記前方部は前記本体の前方に向かって延在する作動部材(14)を有しており、該作動部材(14)は、前記駆動機構部(88,90)及び前記係止部(92)に対して、後方に向かって前記本体内へと駆動されるとともに、注射箇所に付与されて押圧されるときに前記係止部を解放するように形成される、自動注射デバイス。
【請求項2】
互いに分離可能な前方ハウジング部(10)および後方ハウジング部(12)を具備する自動注射デバイスであって、前記後方ハウジング部は、駆動エネルギ蓄積部(88)と、駆動部材(90)と、前方に向かう動きを係止解除する準備位置において前記駆動部材を係止する係止配列体(92)とを有する駆動機構部を備えており、前記前方ハウジング部は、該前方ハウジング部の前方に向かって延在する注射針被覆スリーブ部を有する作動部材(14)を備えており、該作動部材は、前記駆動部材に対して、前記駆動部材を係止解除するよう後方に移動可能であり、注射筒キャリア(38)が、前記作動部材上または前記作動部材内に取り付けられていて前記作動部材に対して長手方向に移動する、自動注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動注射デバイスに関し、限定されないが、特に再利用可能な自動注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
再利用可能な自動注射デバイスに対する需要が増している。かかる注射デバイスにおいて、使用済みの注射筒を新しいものに交換できるようにするためには、通常、何らかの形態の部分的な分解が要求されるため、注射器を再び組み立てて駆動機構部を再準備するときに、信頼できるセーフティロックなどが形成されていることを保証し、注射デバイスを安全に保つとともにセーフティロックが解放された後のみにおいて注射デバイスが起動されうるようにすることを保証する、何らかの形態の安全対策を保証することが特に重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
したがって、本発明は、その一態様において、
本体と、
使用時に注射筒から投与分量を放出するよう起動される前記本体内の駆動機構部と、
前記本体に関連付けられていて第1の位置から、前記駆動機構部が起動される第2の位置まで移動可能な作動部材と、
前記作動部材に関連付けられていて前記作動部材が前記第2の位置に到達するのを防ぐロック部材とを備えており、前記ロック部材および前記作動部材は、前記作動部材が前記第1の位置に在るときにロック位置とロック解除位置との間において相対的に移動可能であり、
前記作動部材を前記第2の位置まで移動させた後において前記ロック部材を前記ロック解除位置まで移動させると、前記作動部材が前記第1の位置に戻るのに伴って、前記ロック部材が前記ロック位置まで戻る、自動注射デバイスを提供する。
【0004】
したがって、好適な実施形態において、作動部材が第1の位置、すなわち停止位置に戻るときに、ロック部材はロック位置にリセットされる。
ロック部材は、作動部材および本体に対して移動可能に取り付けられた別離の構成要素であってもよく、或いは本体に関連付けられ、あるいは本体と一体の部品を形成してもよい。
【0005】
好ましくは、作動部材が第1の位置に向かって付勢され、ロック部材は、便宜上ロック位置に向かって付勢されうる。したがって、好適な配列体において、ロック部材はロック解除位置に移動され、作動部材は駆動機構部を起動するために付勢作用に抗して移動される。作動部材にかかる荷重を解放することにより、作動部材が第1の位置に戻り、そうするとロック部材にかかる付勢力によりロック部材がロック位置に戻る。
【0006】
他の配列であってもよいが、作動部材が第1の位置と第2の位置との間において直線的に移動可能であるのが好ましい。
好ましくは、作動部材が注射針被覆部を備えていて、注射が完了して作動部材が第1の位置に戻ることにより、注射筒の注射針を前記注射針被覆部により被覆する。この態様において、作動部材は、駆動機構部を起動するためと、注射針を被覆するためとの両方の二元的な目的に供する。さらに、説明する実施形態において、作動部材が第1の位置に戻るのに従ってロック部材がロック位置に戻るので、この配列体は被覆部を効果的に閉塞(lockout)する。
【0007】
他の配列であってもよいが、ロック部材はロック位置とロック解除位置との間において角度方向に移動可能であるのが好ましい。
作動部材が第2の位置に到達するのを防げるようにするためのロック部材は、多数の異なる配列を採りうるが、特に好適な配列体において、ロック部材が作動部材に対して角度方向に限定的に動けるとともに長手方向において作動部材に対して固定されており、ロック部材およびハウジングが協働する当接面を有し、これら当接面は、ロック部材がロック解除位置に移動するときに閉鎖された整列状態から離れて回転される。
【0008】
好適な実施形態において、作動部材およびロック部材のうちの一方には、ロック位置およびロック解除位置にそれぞれ対応する離間した窪みが形成されており、作動部材およびロック部材のうちの他方は、作動部材が第1の位置に在るときに、ロック窪みからロック解除窪みまで単一の角度方向に移動可能な歯状要素を備えており、作動部材が第2の位置に向かって移動することにより、歯状要素をロック解除窪みから軸線方向に後退させ、それに伴って歯状要素がロック窪みと角度方向に嵌り合うように戻れるようになる。
【0009】
駆動機構部は多数の形態を採れるが、好適な実施形態において、駆動バネと、ハウジング内を長手方向に移動可能な駆動部材と、該駆動部材を準備位置に係止する係止部とを備えており、作動部材が係止部を解放するように動作可能である。
好ましくは、係止部が少なくとも1つの側部を備えており、該側部は、駆動バネの軸線に対して概ね平行に延在するとともに、作動部材の互いに相補形状の傾斜面と協働するように形成された傾斜面を有していて、作動部材が第2の位置に向かって移動するときに前記係止部を解放する。対称な荷重を付与するために、係止部は2つの側部を備えていて、2つの傾斜面が作動部材にそれぞれ形成されるのが好ましい。
【0010】
本体は、便宜上互いに分離可能な前方部および後方部から形成されており、後方部が駆動機構部の少なくとも主要部分を含んでおり、前方部が作動部材およびロック部材を支持する。好ましくは、作動部材は本体の前方に向かって延在していて、注射針を概ね包囲するとともに使用時に注射箇所に接触する。作動部材は、該作動部材に関連付けられていて作動部材の有効長、ひいては使用時における注射筒の注射針の貫通深さを調節する移動調節可能部を備えてもよい。
【0011】
別の態様において、本発明は、互いに分離可能な前方部および後方部を有する本体を具備する自動注射デバイスであって、後方部は係止部によって動作される駆動機構部を備え、前記本体の前方部は本体の前方に向かって延在する作動部材を有しており、該作動部材は、後方に向かって本体内へと駆動されるとともに、注射箇所に付与されて押圧されるときに係止部を解放するように形成される、自動注射デバイスを提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、互いに分離可能な前方ハウジング部および後方ハウジング部を具備する自動注射デバイスであって、後方ハウジング部は、駆動エネルギ蓄積部と、駆動部材と、前方に向かう動きを係止解除する準備位置において該駆動部材を係止する係止配列体とを有する駆動機構部を備えており、前方ハウジング部は、該前方ハウジング部の前方に向かって延在する注射針被覆スリーブ部を有する作動部材を備えており、該作動部材は、駆動部材を係止解除するよう後方に移動可能であり、注射筒キャリアが、作動部材上または作動部材内に取り付けられていて作動部材に対して長手方向に移動する、自動注射デバイスを提供する。
【0013】
以上、本発明について述べたが、本発明は、前掲の特徴または後述する詳細な説明若しくは特許請求の範囲に係る特徴の任意の発明的組合せに及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る自動注射器の概略斜視図である。
図2(a)】停止位置における図1の自動注射器の側面図である。
図2(b)】停止位置における図1の自動注射器の縦断面図である。
図3】明確化のために外方ケースを取り外した状態の停止位置における自動注射器の斜視図である。
図4(a)】準備動作を説明する側面図である。
図4(b)】準備動作を説明する縦断面図である。
図5(a)】予め充填された注射筒が装填されて準備された自動注射器の側面図である。
図5(b)】予め充填された注射筒が装填されて準備された自動注射器の縦断面図である。
図6(a)】ロックが解除されて注射準備が整った状態の自動注射器の縦断面図である。
図6(b)】ロックが解除されて注射準備が整った状態の自動注射器の横断面図である。
図6(c)】ロックが解除されて注射準備が整った状態の自動注射器の側面図である。
【0015】
図7(a)】ロック位置におけるロック機構部の詳細図である。
図7(b)】ロック解除位置におけるロック機構部の詳細図である。
図7(c)】リセット位置におけるロック機構部の詳細図である。
図8(a)】注射器の駆動を示す側面図である。
図8(b)】注射器の駆動を示す縦断面図である。
図9】明確化のために外方ケースを取り外した状態の駆動段階における自動注射器を示す図である。
図10(a)】注射は完了したものの注射デバイスが皮膚に対してなお押圧されているときの側面図である。
図10(b)】注射は完了したものの注射デバイスが皮膚に対してなお押圧されているときの縦断面図である。
図11(a)】注射箇所から後退した後の自動注射器の側面図である。
図11(b)】注射箇所から後退した後の自動注射器の縦断面図である。
図12】前方組立体の分解図である。
図13】後方組立体の分解図である。
図14】代替的な実施形態におけるスリーブ14の後端を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず図1を参照すると、図示される実施形態の自動注射器は、それぞれ分離可能な前方組立体10と後方組立体12とを備えている。前方組立体10および後方組立体12は、後述する説明から明らかなように差込み式の嵌合いにより接続されていて、薬剤を含む注射筒の容易な挿入動作および後退動作を可能にしている。後方組立体は、より詳しく後述する駆動機構部を備えており、前方組立体は、長手方向に移動可能なスリーブ14と、図1において視認できる前方部と、回転式ロックダイアル16とを備えている。
【0017】
より詳細に図2図3図12および図13を参照すると、前方組立体10は前方ケース18を備えていて、ダイアル16の前方部とスリーブ14とがこの前方ケース18を通って突出している。深さ調節部20がスリーブの前端においてネジ式に受容されており、この深さ調節部20には、スリーブにおける窓部22を通して視認可能な貫通深さ表示部(penetration depth indicia)が付いている。スリーブの後端は、傾斜面26をそれぞれ有していて後方に延在する1対のプロング(prong)24を有している。プロング24は、襟部30に形成されたスロット28を後方に貫通しており、この襟部は、前方ケースにおいて直径方向両側に位置するピップ(pip)32が前方ケース18に形成された直径方向両側に位置する窪み34に収容されることによって固定される。スリーブ14は、襟部30とスリーブ14との間において作用するバネ36によって前方に付勢されている。注射筒キャリア38はスリーブ14の前方端内において摺動可能に受容されるとともにキャリア用バネ40によって後方に付勢されている。スリーブ14内における注射筒キャリア38の軸線方向の動きは、注射筒キャリア38に形成されたスロット44内に延びる2つの内方に向いたラグ42によって制限される。注射筒キャリア38の外方に湾曲する後方端46は、襟部30の円柱状の前方延伸部に位置していて内方に対面するリブ48と協働する。
【0018】
図3から分かるように、ロックダイアルは、直径方向両側に位置していてロックダイアル16の外表面から半径方向に直立する2つの一部円柱状の後方延伸部50を有している。この後方延伸部50のすぐ前方には2つのバネ弾性を呈する舌部58が形成されており、各舌部58は、前方から見て時計回りの自由端において外方に向いた歯部60を有している。ねじりバネ52はスリーブ14とダイアル16との間において作用し、前方から見て反時計回りの方向にダイアルを付勢している。組立体が停止位置に在るとき、歯部60は前方カバー18の内部に位置する対応する「ロック」窪み62において受容されるが、舌部が弾性を呈することは、ねじりバネ52の付勢作用に抗してダイアルを回転させることによって、歯部60が各「ロック解除」窪み64にクリック音を伴って嵌められうることを意味する。特に図12を参照すると、前方ケース18の内壁は、直径方向両側に直立する2つのウェブ66を有していて、これらウェブ66はダイアル16の延伸部50と協働して、ダイアルがロック解除位置に在る(歯部60が「ロック解除」窪み64に在る)か、またはロック位置に在る(歯部60が「ロック」窪み62に在る)かに応じて、前方ケース18内部におけるダイアル16の後方への動きを選択的に可能または不能にする。前方ケースは、ダイアルがロックされているか、またはロック解除されているかを示すダイアル16の表示部70と協働するポインタ68を有している。ダイアル16はスリーブ14の前端において回転可能であるが、ダイアル16が外方に向いたバネ弾性を呈する歯部72によってスリーブの前端にクリップ留めされているので、ダイアル16とスリーブ14とは長手方向に一体となって移動する。
【0019】
ダイアル16およびスリーブ14はバネ36により前方に付勢されていて、それにより、歯部60が停止時において前方に向かって付勢され、「ロック」窪み62に係合するようになる。しかしながら、歯部が窪み64に在って注射デバイスがロック解除されているときは、注射デバイスが皮膚に対して押圧される際のスリーブおよびダイアルの後方に向かう動きによって歯部60を「ロック解除」窪み64から軸線方向に移動させて、それにより、ダイアルがねじりバネ52の作用を受けて部分的に逆回転して、歯部60が「ロック」窪み62と軸線方向において整列されるもののウェブ66によって正確に整列されずに保持される位置に向かうようになる。
【0020】
ここで後方ハウジング組立体12について、特に図3および図13を参照すると、後方組立体12は外方ケーシングを備えており、この外方ケーシングは、ケース頂部82がケース底部80にスナップ留めされることにより形成される。ケース底部80の前方端には差込み式取付部84が形成されていて、この差込み式取付部84は、前方組立体10の一部を構成する襟部30の内部に形成された相補形状の取付部86と協働する。中空の筒状ピストン90内部に取り付けられる主駆動バネ88がケーシング内に配置される。サドル形態の係止部(latch)92は前方に向かって延在するアーム94を有しており、これらアーム94は、前方組立体10におけるスリーブ14のアーム24の傾斜面26と協働するように形成された傾斜面96を有している。アーム94の後方延伸部には回動ラグ98が形成されており、これら回動ラグ98はケース底部の座部100に受容されて、係止部92の回動を可能にする。板バネ100が係止部92の中央部の前方に向かって延在していて、ケース頂部82に作用して係止部92を係止位置に向けて下方に付勢する。係止当接部102は板バネの後方に向いていて係止部の下面に位置している。ピストン90は、その前端に係止面104を有しており、この係止面104は係止当接部102と協働して、ピストンを準備位置において係止する。また、ピストン90は、ケース底部80のガイド溝108に延びる側方スタブガイド(stub guide)106を有していて、ピストンを案内するとともにピストンの回転を防いでいる。このピストンは、特有の色、例えば赤色のプラスチック材料から形成されており、ケース頂部82は注射完了窓部110を有しており、ピストンが注射完了を示す前方位置に在るときに、この注射完了窓部110を通じてピストンを視認できるようになっている。
【0021】
ここで、注射デバイスの操作について述べる。注射デバイスが図2(a)および図2(b)に示される停止位置に在ると想定すると、まず後方組立体12を前方組立体10から分離させるとともに、深さ調節部の端部に位置する注射針キャップ除去部21がピストン90に対面するよう逆向きにする。前方組立体および後方組立体をともに押して、それによりピストンがピストンの係止面104と係合する係止当接部102により係止されるまで、ピストン90が、注射針キャップ除去部によって主駆動バネ88の付勢作用に抗して押されるようになる(図4(a)および図4(b)参照)。筒体2、プランジャ4、注射針6および注射針キャップ8を備えた注射筒は、注射筒を注射筒キャリア38に挿入して、注射針キャップが注射針キャップ除去部21の後端に位置する歯部23を通過するまで押すことによって前方組立体10に装填される(図5(b)参照)。次いで差込み式連結部84,86を接続することによって、前方組立体10および後方組立体12を一体に組み立てる。
【0022】
次いでねじりバネ52の付勢作用に抗してロックダイアル16を図6(c)の矢印Xの方向に回転させることにより注射デバイスをロック解除する。この動作により、前方ハウジング18の内部に位置するウェブ66との軸線方向の整列状態から離れて回転式ダイアル16の延伸部50が回転する(図7(a)および図7(b)参照)。これと同時に、ロックダイアル16の歯部60はねじりバネ52の付勢作用に抗して「ロック」窪み62から「ロック解除」窪み64まで移動する。
【0023】
次いで、自動注射器は注射箇所まで供給されて押圧され、スリーブ14および回転式ダイアル16を後方に向けてハウジング内へ移動させる。この動きの始めの段階に際して、回転式ダイアル16の歯部60は「ロック解除」窪みから離れて軸線方向にシフトして、それにより、回転式ダイアル16が、ねじりバネ52の作用により「ロック」窪みと軸線方向に整列するように部分的に向かって自由に逆回転できるようになる(ただし、後方にシフトする)。スリーブ14の角度方向の動きは、ウェブ66に係合する延伸部50により制約されている。続けて押圧することにより、スリーブ14のプロング24が係止部のアーム94に係合するまで、スリーブ14およびダイアル16をハウジング内にさらに駆動して、各傾斜面26,96が協働して係止部92をバネ付勢部100に抗して回動させてピストン90を解放させる(図9参照)。ピストンは前方に移動して注射筒のプランジャ4に係合する。まず、注射筒の筒体2内部の液状薬剤は固体として作用し、それにより、注射筒プランジャにかかる圧力が筒体2を前方に移動させ、注射針6をスリーブ14から突出させて使用者の表皮を貫通させる。注射筒キャリアの外方に湾曲した端部46が襟部30に形成された内方に湾曲した縁部48に係合するときに、注射筒および注射筒キャリア38の前方に向かう動きが停止される。その後、ピストン90は前方に移動を続けてプランジャ4を移動させ、投与分量を放出する(図10(b)参照)。この期間、スリーブ14は比較的静止したままであり、その一方で注射筒キャリア38は前方に移動してバネ40を圧縮し、スリーブ14内部のラグ42が注射筒キャリア38のスロット44内を延びる。このとき、注射完了窓部110を通じてピストンを視認できる。
【0024】
注射デバイスを皮膚から引き離すことによって、スリーブ14がバネ36,44の作用を受けて前方に移動できるようになり、それにより、スリーブ14および深さ調節部20が注射筒の注射針6を被覆するようになる。スリーブがまさにその最も前方の位置に近づく際に、延伸部50が前方ケース18のウェブ66の端部を外れて前方に向かって摺動し、そしてこれら延伸部がスリーブ14のアーム24に当接して、それにより延伸部50がこのときにウェブ66と閉鎖された整列状態になり、ダイアル16が後退してロック位置に戻るとともに、歯部60はロック窪み62に在るようになる。したがって、スリーブ14および深さ調節部20は注射針を被覆するための引き込む動きに対してロックされており、ダイアル16はロック位置に在る。
次いで、前方組立体および後方組立体は、次の工程の準備のために注射筒の後退動作が可能なように分離されうる。
【0025】
前述した実施形態において、そのロック機能として3つの主要な構成要素、すなわち、前方カバー、ダイアルおよびスリーブが存在している。変形例(図示せず)において、ロック位置とロック解除位置との間において回転可能なダイアルとともに角度方向に固定された前方カバーおよびスリーブを有する代わりに、代替的な配列体においては、ダイアルが省略されていてその代わりに、ロックまたはロック解除するためにスリーブがバネ付勢部に抗して限定的に回転できるようになっていて、スリーブおよび本体に形成されたそれぞれのロック当接部と窪みとに対してリセットされる。それ以外はこの代替的な実施形態は前述したように概ね動作する。この変形例において、スリーブ14には延伸部50および歯部60が形成されていて、スリーブは前方ハウジング内に回転可能に担持される。図3において、例えばスリーブ14およびダイアル16は互いに固定され、または一体成形されていてもよく、スリーブまたはダイアルは前方ハウジングに対して回転可能である。当然ながらこの配列体において、ピストンを係止解除するためにスリーブが後方に向かう動きを利用するように適切に変更された構成が付与される。一配列体において、スリーブ14の後部から延在するプロング24が適切な配列体によってスリーブに回転可能に取り付けられてもよく、この配列体は、スリーブ14がロック位置とロック解除位置との間において回転されるとき、プロング24がスリーブとともに長手方向に移動するが、ハウジングに対して角度方向には固定されたままであることを保証する。例えば、図14に示すようにスリーブの後部に回転可能に支持された円柱状のシェル24bにプロング24aが形成されうる。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11(a)】
図11(b)】
図12
図13
図14