特許第6039646号(P6039646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム アンド ハース カンパニーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039646
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】サンケア組成物、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20161128BHJP
   A61K 8/899 20060101ALI20161128BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61K8/899
   A61Q17/04
   A61K8/37
   A61K8/40
   A61K8/35
   A61K8/44
   A61K8/29
   A61K8/27
   A61K8/34
   A61K8/31
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-502729(P2014-502729)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-509649(P2014-509649A)
(43)【公表日】2014年4月21日
(86)【国際出願番号】US2012030820
(87)【国際公開番号】WO2012135265
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月13日
(31)【優先権主張番号】61/470,122
(32)【優先日】2011年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ミャオ ワン
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−518988(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0089852(US,A1)
【文献】 特表平09−504310(JP,A)
【文献】 国際公開第95/005402(WO,A1)
【文献】 特開2009−249381(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0252689(US,A1)
【文献】 特表2008−545832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
DB等 DWPI(Thomson Innovation)
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンケア組成物であって、
(a)一つ以上の完全に可溶性のポリマーであって、重合単位として
(i−a)前記ポリマーの質量に基づいて30%〜75質量%の、1.490以上の屈折率を有する、スチレン、α―メチルスチレン、及びこれらの組合せからなる群から選択される一つ以上のモノマー、
(ii−a)前記ポリマーの質量に基づいて1%〜30質量%の、2―アクリルアミド―2―メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される一以上の酸官能性モノマー、並びに
(iii−a)前記ポリマーの質量に基づいて5%〜69質量%の、オレフィン、ジエン、及び(メタ)アクリレートからなる群から選択される一以上のノマー;又は
(i/ii−b)前記ポリマーの質量に基づいて31%〜95質量%の、1.490以上の屈折率を有し、少なくとも一つの酸官能基を有する、スチレンスルホン酸、置換スチレンスルホン酸、及びこれらの組合せからなる群から選択される一つ以上のモノマー、並びに
(iii−b)前記ポリマーの質量に基づいて5%〜69質量%の、オレフィン、ジエン、及び(メタ)アクリレートからなる群から選択される一以上のモノマー
を含む、完全に可溶性のポリマーと、
(b)少なくとも一つのサンケア活物質と、
を含
前記サンケア活物質が、オクチルメトキシシンナメート、オクトクリレン、オクチサラート、オキシベンゾン、アボベンゾン、パラアミノ安息香酸、ホモサラート、二酸化チタン、酸化亜鉛、ベンゾフェノン類、ベンジリデン類、又はサリチラート類の少なくとも一つであり、
前記組成物がアルコールベースであり、ポリマー(a)がアルコールに可溶性であり、前記組成物の合計質量に基づく使用濃度0.5〜7質量%において、結果として透明溶液になる、サンケア組成物。
【請求項2】
前記サンケア活物質が、少なくとも2つのサンケア活物質の混合物である、請求項1に記載したサンケア組成物。
【請求項3】
記組成物が87より大きい接触角を有する、請求項1に記載したサンケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルケア組成物、及び特にサンケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サンケア組成物の処方で最も難しい側面の一つは、一旦人に適用したならば、水又は汗に露出した後、活性成分が確実に皮膚上に残るようにすることである。一方で、組成物は、従来の石鹸又は他の洗浄剤によって除去できなければならない。従来における一つのストラテジーは、日焼け止めローション及びクリーム内に、フィルム形成成分を取り入れることであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、日焼け止めローション及びクリームに適する大部分のフィルム形成剤は、スプレーのハードウェア(例えば弁、及びアクチュエータ、又はポンプ)を最終的に詰まらせる溶解性/安定性の問題のため、アルコールベースの日焼け止めスプレー製品と相溶しない。したがって、これらの障壁を克服し、従来の組成物より良好に機能するサンケア組成物が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、本発明は、(a)一つ以上の完全に可溶性なポリマーであって、重合単位として、(i)前記ポリマーの質量に基づいて30%〜75質量%の、1.490以上の屈折率を有する一つ以上のモノマー、(ii)前記ポリマーの質量に基づいて1%〜30質量%の一以上の酸官能性モノマー、及び(iii)前記ポリマーの質量に基づいて5%〜69質量%の一以上の更なるモノマーを含む、完全に可溶性なポリマーと、(b)少なくとも一つのサンケア活物質とを含むサンケア組成物を提供する。
【0005】
「サンケア組成物」は、人に局所適用する(口、耳、及び鼻腔を含むが、摂取されない)組成物に関する。そのような組成物は美容的に許容できなければならず、すなわち、パーソナルケア組成物に典型的に使用される成分を含み、これは、パーソナルケア組成物中に典型的に見つかる量で存在する場合に有毒な材料は、本発明の一部として考慮しないことを強調することを目的とする。
【0006】
サンケア組成物は、ローション、クリーム、及びスプレー、並びに好ましくは日焼け止め、より好ましくは25より大きいSPFを有する日焼け止めを含む。一実施形態において、サンケア組成物はアルコールベースのスプレーである。一実施形態において、ポリマー(a)はアルコールに可溶性で、アルコール、及びアルコール/水溶媒中への良好な溶解性を示し、使用濃度0.5〜7質量%において、結果として透明溶液になる。一実施形態において、サンケア活物質は、日焼け止めスプレーの処方の中で、ポリマー(a)の溶解性及び相溶性を強化する。
【0007】
一実施形態において、サンケア活物質は、有機色素微粒子、又は無機金属酸化物の日焼け止め粒子である。「有機色素微粒子」は、約250nm未満、好ましくは約200nm未満の炭素ベースの粒子を指す。一実施形態において、有機色素微粒子は、ビソクトリゾールである。ビソクトリゾール(INCI名:メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール)は、幅広いスペクトルのUV吸収体として作用し、UVA及びUVB範囲の両者に効果的な、ベンゾトリアゾールベースの有機化合物である。ビソクトリゾールは、商品名TINOSORB MでCiba Specialty Chemicals社から入手可能である。一実施形態において、有機色素微粒子は、組成物の質量に対して約0.1%〜約50%、及びより好ましくは1%〜約25%の量で存在する。最も好ましい実施形態において、有機色素微粒子は、約10%の活物質を構成する量において存在する。
【0008】
好ましくは、無機金属酸化物の日焼け止め粒子は、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化チタン(TiO)、又はこれらの混合物から選択される。一実施形態において、無機金属酸化物の日焼け止め粒子は、色素グレードの酸化亜鉛、又は色素グレードの二酸化チタンである。一実施形態において、無機金属酸化物の日焼け止め粒子は、透明酸化亜鉛、又は透明二酸化チタンである。日焼け止めに使用する大部分の無機金属酸化物の日焼け止め粒子は、光散乱によって生じる美容上望ましくない白い外観を生じる。したがって、本明細書で用いる用語「透明無機金属酸化物の日焼け止め粒子」とは、無機金属酸化物組成物を用途に応じてクリアに又は透明にする様々な処理条件で製造した、無機金属酸化物の日焼け止め粒子を指す特別な意味を有する。換言すれば、これらの特別に処理した無機金属酸化物組成物は、一旦適用すると白く見えず、それゆえ透明と称呼される。例えば、透明酸化亜鉛の例としては、米国特許第5,223,250号、第5,372,805号、第5,573,753号、第5,587,148号、及び第5,876,688号明細書において開示されている。透明酸化亜鉛の一例は、BASF社(ドイツ)から、商品名Z―COTEの下で商業的に入手可能である。透明酸化亜鉛の他の例は、Antaria社(オーストラリア)から、商品名ZINCLEAR IMの下で商業的に入手可能である。透明酸化亜鉛の他の例は、Actifirm(米国)から、商品名Z―CLEARの下で商業的に入手可能である。例えば、透明二酸化チタンの例は、米国特許第5,573,753号、第5,733,895号、及び第7,390,355号明細書に開示されている。透明二酸化チタンの例は、石原産業社(日本)から、商品名TIPAQUE、及びTTO―51(A)の下で商業的に入手可能である。透明二酸化チタンの他の例は、BASF社(ドイツ)から、商品名T―COTEの下で商業的に入手可能である。透明二酸化チタンの他の例は、三好化成社(日本)から、商品名UFTRの下で商業的に入手可能である。透明二酸化チタンの他の例は、Uniqema社(イギリス)から、商品名SOLAVEIL CLARUSの下で商業的に入手可能である。一実施形態において、透明無機金属酸化物の日焼け止め粒子は、透明酸化亜鉛、透明二酸化チタン、又はこれらの混合物から選択される。
【0009】
一実施形態において、サンケア活物質は、少なくとも一つのオクチルメトキシシンナメート、アボベンゾン、パラアミノ安息香酸、ホモサラート、二酸化チタン、酸化亜鉛、ベンゾフェノン類、ベンジリデン類、サリチラート類、又はオクトクリレン、オクチサラート、及びオキシベンゾンを含む他の公知のUVフィルタである。
【0010】
本発明において有用なモノマーの種類の一例としては、例えば、エチレン不飽和モノマー(すなわち、少なくとも一つの炭素―炭素二重結合を有するモノマー)である。典型的なエチレン不飽和モノマーは、500未満の分子量を有する。そのようなモノマーの中では、例えば、ビニルモノマーである。いくつかの適切なビニルモノマーとしては、例えばスチレン、置換されたスチレン、ジエン、エチレン、エチレン誘導体、及びこれらの混合物が挙げられる。エチレン誘導体としては、例えば、以下の非置換又は置換型が挙げられる。すなわち、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、塩化ビニル、ハロゲン化アルケン、及びこれらの混合物である。本明細書において用いる「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。「置換」は、少なくとも一つの結合した化学基、例えばアルキル基、アルケニル基、ビニル基、ヒドロキシル基、カルボン酸基、他の官能基、及びこれらの組み合わせを有することを意味する。
【0011】
いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、一つ以上のビニルポリマーを含む。いくつかの実施形態において、サンケア組成物中の全てのポリマー(a)はビニルポリマーである。本明細書で用いるビニルポリマーは、ビニルモノマーの重合によって作ったポリマーである。いくつかの実施形態において、ビニルポリマーは、ビニルモノマーのフリーラジカル重合によって作られる。
【0012】
ポリマー(a)の組成とは独立して、いくつかの実施形態において、25,000以上、又は50,000以上のMwを有する一つ以上のポリマー(a)を用いる。独立して、いくつかの実施形態において、300,000以下、又は150,000以下のMwを有する一つ以上のポリマー(a)を用いる。独立して、いくつかの実施形態において、全てのポリマー(a)は、25,000〜300,000のMwを有する。ポリマーの分子量は、標準方法、例えばサイズ除外クロマトグラフィー(SEC、ゲル透過クロマトグラフィー又はGPCとも呼ばれる)によって測定することができる。一般に、ポリマーは、1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。いくつかのポリマーは、数平均分子量Mnによって特徴づけられる。
【0013】
ポリマー(a)は、1.490以上の屈折率を有する一つ以上のモノマー(本明細書において「モノマー(i)」として記載)の重合単位を含む。モノマーの屈折率は、例えば、25℃において、ASTM標準D1218―02によって測定することができる。いくつかの実施形態において、モノマー(i)は、1.500以上、又は1.530以上の屈折率を有する一つ以上のモノマーを含む。いくつかの実施形態において、全てのモノマー(i)は、1.530以上の屈折率を有するモノマーである。
【0014】
いくつかの実施形態において、モノマー(i)は、一つ以上のビニルモノマーを含む。いくつかの実施形態において、モノマー(i)は、一つ以上のビニル芳香族モノマーを含む。ビニル芳香族モノマーは、一つ以上の炭素―炭素二重結合、及び一つ以上の芳香環を含むモノマーである。適切なビニル芳香族モノマーは、例えばベンジル基を有するモノマー、フェニル基を有するモノマー、スチレン、スチレン誘導体(例えば、α―メチルスチレン)、及びこれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、全てのモノマー(i)は、ビニル芳香族モノマーである。いくつかの実施形態において、モノマー(i)は、一つ以上のスチレン、α―メチルスチレン、又はこれらの混合物を含む。いくつかの実施形態において、全てのモノマー(i)は、スチレン、α―メチルスチレン、及びこれら混合物から選択される。適切なモノマー(i)の混合物もまた適切である。
【0015】
ポリマー(a)中のモノマー(i)の重合単位の量は、ポリマー(a)の質量に基づいて30質量%〜75質量%である。いくつかの実施形態において、モノマー(i)の重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、35質量%以上、又は39質量%以上である。いくつかの実施形態において、モノマー(i)の重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、65質量%以下、又は55質量%以下である。本明細書で用いる「ポリマーの質量」とは、ポリマーの乾燥質量を意味する。
【0016】
ポリマー(a)は、少なくとも一つの酸官能基を有する一つ以上のモノマー(本明細書において「モノマー(ii)」と呼ばれる)の一つ以上の重合単位を更に含む。適切な酸官能基としては、例えば、スルホン酸基、及びカルボン酸基が挙げられる。酸官能基は、中和形若しくはイオン形、又はこれら組合せであってもよい。いくつかの適切なモノマー(ii)としては、例えば、少なくとも一つの酸官能基を有するビニルモノマーが挙げられる。独立して、いくつかの実施形態において、カルボン酸基を有する少なくとも一つのモノマー(ii)を用いる。いくつかの実施形態において、全てのモノマー(ii)はカルボン酸基を有する。
【0017】
スルホン酸基を有する適切なモノマー(ii)としては、例えば、2―アクリルアミド―2―メチルプロパンスルホン酸が挙げられる。適切なモノマー(ii)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、モノマー(ii)は、正確に一つの酸官能基を有する少なくとも一つのモノマーが挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、無水マレイン酸のいかなる重合単位も含まない。いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、任意の無水物基を有する任意のモノマーのいかなる重合単位も含まない。いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、一つより多いカルボキシル基を有する任意のモノマーのいかなる重合単位も含まない。いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、一つより多い酸官能基を有する任意のモノマーのいかなる重合単位も含まない。適切なモノマー(ii)の混合物もまた適切である。
【0019】
ポリマーのモノマー(ii)の重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、1%〜30質量%である。いくつかの実施形態において、ポリマーのモノマー(ii)の重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、2質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、14質量%以上、18質量%以上、20質量%以上、又は22質量%以上である。
【0020】
いくつかの実施形態において、存在する全てのモノマー(i)は、酸官能基を有しないモノマーである。独立して、いくつかの実施形態において、存在する全てのモノマー(ii)は、1.490未満の屈折率を有するモノマーである。また、存在する全てのモノマー(i)が酸官能基を有しないモノマーであり、存在する全てのモノマー(ii)が1.490未満の屈折率を有するモノマーである実施形態もまた考慮される。
【0021】
また、1.490以上の屈折率を有し、かつ少なくとも一つの酸官能基も有する一つ以上のモノマーを用いる実施形態もまた考慮される。このような実施形態において、1.490以上の屈折率を有する、又は少なくとも一つの酸官能基を有する、又は1.490の屈折率及び少なくとも一つの官能基の両方を有するモノマーの重合単位の合計質量を見いだし、それぞれの重合単位を一度数えることによって、ポリマー(a)中のモノマー(i)及び(ii)の重合単位の量を算出することが考慮される。合計質量は、ポリマー(a)の質量に基づいて、31%〜95質量%である。
【0022】
1.490以上の屈折率を有し、かつ少なくとも一つの酸官能基もまた有する一つ以上のモノマーを用いる実施形態の中で、いくつかの適切なそのようなモノマーとしては、例えばスチレンスルホン酸、及び置換スチレンスルホン酸である。
【0023】
ポリマー(a)は、一つ以上の更なるモノマー(本明細書において「モノマー(iii)」として記載)の重合単位を更に含む。モノマー(iii)として適切なモノマーは、モノマー(i)ではなく、かつモノマー(ii)ではないモノマーである。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、一つ以上のビニルモノマーを含む。いくつかの実施形態において、全てのモノマー(iii)は、ビニルモノマーである。
【0024】
いくつかの適切なモノマー(iii)としては、例えばオレフィン、ジエン、及び(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。本明細書で用いるように、(メタ)アクリレートモノマーは、アクリル酸及びメタクリル酸の、置換及び非置換の、エステル及びアミドを含む。例えば、いくつかの適切なモノマー(iii)としては、例えばアルキル基が直鎖状、分岐状、環状、又はそれらの組み合わせであり1〜20の炭素原子を有し、(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、一つ以上のC〜C20のアルキルアクリレートを含む。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、2以上の炭素原子を有する、又は3以上の炭素原子を有する一つ以上のアルキルアクリレートを含む。独立して、いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、10以下の炭素原子を有する、又は8以下の炭素原子を有する一つ以上のアルキルアクリレートを含む。一つ以上のアルキルアクリレートを用いるいくつかの実施形態において、ポリマー中のアルキルアクリレートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、5質量%以上、又は10質量%以上である。独立して、一つ以上のアルキルアクリレートを用いるいくつかの実施形態において、ポリマー中のアルキルアクリレートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、50質量%以下、又は40質量%以下である。
【0025】
独立して、いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、一つ以上のC〜C20のアルキルメタクリレートを含む。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、6以下の炭素原子を有する、又は3以下の炭素原子を有する、又は2以下の炭素原子を有する一つ以上のアルキルメタクリレートを含む。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、一つ以上のアルキルアクリレートを含み、及び一つ以上のアルキルメタクリレートもまた含む。一つ以上のアルキルメタクリレートを用いるいくつかの実施形態において、ポリマー中のアルキルメタクリレートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、3質量%以上、又は6質量%以上である。独立して、一つ以上のアルキルメタクリレートを用いるいくつかの実施形態において、ポリマー中のアルキルメタクリレートモノマーの重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、25質量%以下、又は12質量%以下である。
【0026】
独立して、いくつかの適切なモノマー(iii)としては、更なる例として、エステル基が一つ以上の置換基、例えば一つ以上のヒドロキシル基を有する、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルの構造を有する、(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルもまた挙げられる。いくつかの適切なモノマー(iii)としては、例えば、アルキル基が1〜10の炭素原子を有する、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)としては、アルキル基が6以下の炭素原子、又は4以下の炭素原子を有する、一つ以上の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル挙げられる。いくつかの適切な(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルとしては、例えば、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が挙げられる。一つ以上の(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルを用いるいくつかの実施形態において、ポリマー中の(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルの重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、2質量%以上、又は5質量%以上である。独立して、一つ以上の(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルを用いるいくつかの実施形態において、ポリマー中の(メタ)アクリル酸の置換アルキルエステルの重合単位の量は、ポリマーの質量に基づいて、40質量%以下、又は20質量%以下である。
【0027】
いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、一つ以上のアルキルアクリレート、一つ以上のアルキルメタクリレート、及び一つ以上の置換アルキル(メタ)アクリレートを含む。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)は、いかなる置換アルキル(メタ)アクリレートも含まない。いくつかの実施形態において、モノマー(ii)の重合単位の量に、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの重合単位の量を加えた合計は、ポリマーの質量に基づき、10質量%以上、又は20質量%以上である。独立して、いくつかの実施形態において、モノマー(ii)の重合単位の量に、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの重合単位の量を加えた合計は、ポリマーの質量に基づいて、50質量%以下、又は40質量%以下である。いくつかの実施形態において、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルの量は、ポリマーの質量に基づいて、5質量%以下、又は0%であり、また、モノマー(ii)の量は20質量%以上である。モノマー(iii)の組成から独立して、全てのモノマー又はモノマー(iii)の重合単位の、ポリマー(a)中の総量は、ポリマー(a)の質量に基づいて、30質量%〜89質量%である。いくつかの実施形態において、モノマー(iii)の重合単位の総量は、ポリマー(a)の質量に基づいて、75質量%以下、又は60質量%以下である。適切なモノマー(iii)の混合物もまた適切である。
【0028】
いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、ビニルラクタムである任意のモノマーの、いかなる重合単位も含まない。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、アクリル酸のアミド又はメタクリル酸のアミドである任意のモノマーの、いかなる重合単位も含まない。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、アミド化合物である任意のモノマーの、いかなる重合単位も含まない。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、酢酸ビニルのいかなる重合単位も含まない。独立して、いくつかの実施形態において、ポリマー(a)は、500以上の分子量を有する任意のモノマーの、いかなる重合単位も含まない。
【0029】
独立して、いくつかの実施形態において、ポリマー(a)の全ての重合単位は、スチレン、アルキル―置換スチレン、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル、連鎖移動剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0030】
一実施形態において、好ましいポリマー(a)は、米国特許出願第2009/0252689号に記載されており、引用によりその全ての内容は本明細書に含まれる。
【0031】
一実施形態において、好ましいポリマー(a)は、Dow Chemical社から入手可能なACUDYNE SHINEである。
【0032】
一実施形態において、好ましいポリマー(a)は、Dow Chemical社から入手可能なACUDYNE BOLDである。
【0033】
本発明の組成物は、少なくとも一つの美容上許容できる皮膚軟化剤、保湿剤、調整剤、油、懸濁化剤、乳白剤/真珠光沢化剤(pearlizers)、界面活性剤、乳化剤、防腐剤、レオロジー調節剤、着色剤、pH調整剤、推進剤、還元剤、抗酸化剤、芳香剤、発泡剤若しくは消泡剤、日焼け剤、防虫剤、又は殺生物剤を含む、日焼け止めの処方の本技術分野において知られている他の成分を更に取り入れることができる。好ましくは、本発明の日焼け止め組成物は、湿潤剤、界面活性剤、皮膚軟化剤、及び防腐剤の少なくとも1つを含む。一実施形態において、日焼け止め組成物はデシルグルコシドを含む。
【0034】
一実施形態において、日焼け止め組成物は、CORAPAN TQ ジエチルヘキシル2,6ナフタレート、又は他の光安定剤を含む。
【0035】
本発明のサンケア組成物のための他の任意の成分は、美容上許容できる皮膚軟化剤、日焼け止め、界面活性剤、乳化剤、防腐剤、レオロジー調節剤、着色剤、染料、防腐剤、pH調整剤、推進剤、還元剤、芳香剤、発泡強化剤、日焼け剤、収斂剤、消毒剤、脱臭剤、制汗剤、防虫剤、漂白剤、ライトナー(lightners)、フケ防止剤、又は殺生物剤を含む。
【0036】
芳香剤は、天然材料の抽出、又は前記のように合成的な製造によって得られたアルデヒド、ケトン、又は油であることができる。しばしば、芳香剤は、補助材料、例えば定着剤、増量剤、安定剤、及び溶媒を伴う。
【0037】
殺生物剤は、抗菌剤(antimicrobials)、殺菌剤(bactericides)、殺真菌剤(fungicides)、殺藻薬(algaecides)、防カビ剤(mildicides)、抗細菌剤(disinfectants)、消毒剤(anticeptics)、及び殺虫剤(incecticides)を含む。
【0038】
当業者は、そのような成分によって提供される所望の特性を達成するために有効な任意の成分の量を、容易に決定することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、本発明のサンケア組成物は、いかなるシリコーン化合物も含まない。代替として、いくつかの実施形態において、本発明のサンケア組成物は、少なくとも一つのシリコーン化合物を含む。
【実施例】
【0040】
以下の例は、単に説明の目的であり、本発明の範囲を制限することを目的とするものではない。全てのパーセンテージは、特に明記しない限り質量によるものである。
【0041】
《例1》
例示的なサンケア組成物は、質量/質量(質量%)に基づいて表1に詳述する構成成分を含む。
【0042】
【表1】
【0043】
エタノール溶液にUV吸収体を分散させ、十分に可溶化するまで、オーバーヘッドミキサーにより100〜300rpmで混合した。シリコーンを加え、芳香剤を必要に応じて加え、次にポリマー(a)を分散させ、透明溶液が形成するまで混合した。
【0044】
《例2》―比較
従来のサンケア組成物は、質量/質量(質量%)に基づいて表2に詳述する構成成分を含む。
【0045】
【表2】
【0046】
これらの組成物は、当業者の慣例知識の範囲内で必要に応じて変更をして、実質的に例1の手順に従って調製した。
【0047】
《例3》
実質的に例1〜2の手順に従って組成物を作り、SPF及び耐水性特性について試験した。このような組成物は耐水性の増強を与え、UV活物質分布を強化し、及び/又はSPF性能を高めた。
【0048】
浸漬防水試験の手順は以下の通りである。すなわち、サンプルを、パドルタイプの撹拌翼を使用して50〜150rpmで一定に混合している温度制御水浴(25℃)中に、5〜80分間浸漬した。水浴の体積(2L〜5L)は、分散した日焼け止めの高濃縮、及び再吸着の可能性を妨げるのに十分大きい。UVスペクトルを、LABSPHERE2000分光計を使用して、240〜420nmの波長範囲で、サンプルごとに収集した。浸漬試験前後のサンプルのスペクトルを、防水性能の指標として比較した。
【0049】
《例4》
処方B、処方C、比較処方1、及び比較処方2を、実質的に例1〜2の手順に従って作り、接触角について試験した。
【0050】
接触角/生体外試験方法は以下の通りである。サンプル調製:一つの面をサンドブラスト処理し、特定の粗さ(Ra=6〜7μm)を有するポリメチルメタクリレートプレート(Helioplates(登録商標))に処方を載せ、10mil厚のキャスティングバー(drawn down bar)を用いてフィルムをキャストした。プレートを、室温条件下で60分間乾燥させた。
【0051】
日焼け止め処方で処理した後の基材の湿潤性を、接触角の測定によって決定した。接触角がより大きいほど、耐水性能はより良好である。針から滴下した後約4秒に受け取られる、サンプル上の18メガオームの超純水を用いて、接触角を測定した。角度はKrussG10計測器で測定し、DSA 1.65.0.49ソフトウェアを用いて分析した。左右の角度を個々の測定ごとに平均し、それぞれのサンプルについて少なくとも4滴を測定した。接触角の結果を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
本発明の処方は、より高い接触角を示し、強化された耐水性能を示した。
【0054】
《例5》
例示的なサンケア組成物、及び従来のサンケア組成物は、質量/質量(質量%)に基づいて表4に詳述する構成成分を含む。
【0055】
【表4】
【0056】
処方D、及び比較処方3は、それぞれ実質的に例1〜2の手順に従って作ったアルコールベースの日焼け止め処方である。試験する処方を含むエアゾール缶を振盪して計量皿の中に吹き付け、2mg/cmをピペット及び指サックにより対象物に適用し、15分間乾燥させるようにして変更した、少なくとも5つの対象物に対するFDA SPF試験手順を使用して、静的SPF及び耐水性特性の両者について処方を試験した。
【0057】
処方Dについての静的SPFは30.42(1.79+/−0.8の標準偏差)であり、比較処方3についての静的SPFは27.51(4.22+/−1.72の標準偏差)であった。
【0058】
耐水性について、試験する処方を上記の通りに適用して15分間乾燥させた後、次いで、対象物に、15分の間隔を開けて、水中で20分の連続運動を4サイクル行った。処方Dについて保持されたSPF活性におけるパーセンテージの違いは34.32%(10.26+/−4.19の標準偏差)であり、比較処方3については28.25%(3.81+/−1.71の標準偏差)であった。したがって、本発明の処方Dは、従来の処方と比較して、著しくより良好な耐水性(水と接触した場合のSPFの保持)を示した。
【0059】
本発明は、本明細書において詳細に開示し、及び例証した実施形態に限定されないことが理解される。本発明の様々な変形は、当業者にとって明らかである。添付の特許請求の範囲の要旨を逸脱しない範囲で、そのような変更及び変形を行ってもよい。
【0060】
さらに、それぞれの詳述した範囲は、範囲の全ての組合せ及び下位の組合せを含み、同様に特定の数字もここに含まれる。加えて、本明細書中に引用し、又は記載した、それぞれの特許、特許出願、及び刊行物の開示は、引用によりこれらの全体が本明細書中に含まれる。
以下、本発明の実施態様を列記する。
[項目1]
サンケア組成物であって、
(a)一つ以上の完全に可溶性のポリマーであって、重合単位として
(i)前記ポリマーの質量に基づいて30%〜75質量%の、1.490以上の屈折率を有する一つ以上のモノマー、
(ii)前記ポリマーの質量に基づいて1%〜30質量%の、一以上の酸官能性モノマー、及び
(iii)前記ポリマーの質量に基づいて5%〜69質量%の、一以上の更なるモノマーを含む、完全に可溶性のポリマーと、
(b)少なくとも一つのサンケア活物質と、
を含む、サンケア組成物。
[項目2]
前記サンケア活物質が、オクチルメトキシシンナメート、オクトクリレン、オクチサラート、オキシベンゾン、アボベンゾン、パラアミノ安息香酸、ホモサラート、二酸化チタン、酸化亜鉛、ベンゾフェノン類、ベンジリデン類、又はサリチラート類の少なくとも一つである、項目1に記載したサンケア組成物。
[項目3]
前記サンケア活物質が、少なくとも2つのサンケア活物質の混合物である、項目1に記載したサンケア組成物。
[項目4]
好ましくは、前記組成物が87より大きい接触角を有する、項目1に記載したサンケア組成物。
[項目5]
前記組成物がアルコールベースであり、ポリマー(a)がアルコールに可溶性である、項目1に記載したサンケア組成物。
[項目6]
モノマー(i)が一つ以上のビニル芳香族モノマーを含む、項目1に記載したサンケア組成物。
[項目7]
モノマー(iii)が、一つ以上のヒドロキシアルキル(メス)アクリレートを含む、項目1に記載したサンケア組成物。
[項目8]
少なくとも一つのシリコーンを更に含む、項目1に記載したサンケア組成物。