特許第6039648号(P6039648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039648
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】併用ワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/085 20060101AFI20161128BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20161128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20161128BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20161128BHJP
   C07K 14/31 20060101ALI20161128BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61K39/085
   A61K39/00 H
   A61P31/04
   A61P31/04 171
   A61P43/00 121
   A61K9/72
   A61K39/39
   A61K48/00
   C07K14/31ZNA
   C12N15/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-504387(P2014-504387)
(86)(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公表番号】特表2014-511873(P2014-511873A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】GB2012050791
(87)【国際公開番号】WO2012140417
(87)【国際公開日】20121018
【審査請求日】2015年4月3日
(31)【優先権主張番号】1106162.9
(32)【優先日】2011年4月12日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507148917
【氏名又は名称】アブシンス・バイオロジクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Absynth Biologics Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ララ,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】フォスター,サイモン
【審査官】 渡邊 倫子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−502326(JP,A)
【文献】 特開平10−313873(JP,A)
【文献】 特開平11−069982(JP,A)
【文献】 Stranger-Jones,Y.K. et al.,Vaccine assembly from surface proteins of Staphylococcus aureus.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2006年11月 7日,Vol.103, No.45,pp.16942-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00
A61K 9/72
C12N 15/00
C07K 14/31
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の異なるポリペプチドを含有するワクチン組成物であって、該ポリペプチドが、
i)配列番号:21に示すアミノ酸配列を含むか又はその配列からなるポリペプチドないしはその免疫原性断片、
ii)配列番号:22に示すアミノ酸配列を含むか又はその配列からなるポリペプチドないしはその免疫原性断片、よび
iii)改変したブドウ球菌のポリペプチドであって、該ポリペプチドが、配列番号:21および22に示すアミノ酸配列のポリペプチド変異体であり、列番号:21および22に示す完全長アミノ酸配列に少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチド
からなる群から選択される、異なるブドウ球菌遺伝子によってコードされている、ワクチン組成物。
【請求項2】
2、3、4又は5つのブドウ球菌ポリペプチドをさらに含む、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる、請求項1又は2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
なくとも一のキャリアおよび/又はアジュバントをさらに含有する、請求項1からのいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記組成物が、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびリン酸カルシウムからなる群から選択されるアジュバントを含有する、請求項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記組成物がリン酸アルミニウムを含有する、請求項に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記アジュバントがゲルタイプとして製剤化される、請求項に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
前記組成物が鼻腔スプレーとしての投与に適する、請求項1からのいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、2以上の免疫原性ブドウ球菌ポリペプチドを含有する組成物、およびヒトおよび動物におけるブドウ球菌感染症の予防または治療における免疫原性ブドウ球菌ポリペプチドを含有する多価ワクチン組成物に関する。
【0002】
ワクチンは多種多様な感染症に効く。したがって、近年の多くのワクチンは、分子クローニングにより単離され精製される、病原体の防御抗原から作られている。これらのワクチンは「サブユニットワクチン」として知られている。サブユニットワクチンの開発は、近年、非常に研究の焦点となっている。新たな病原体の出現および抗生物質耐性の成長により、新たなワクチンを開発し、サブユニットワクチンの開発に有用なさらなる候補分子を同定する必要が生じている。同様に、ゲノムおよびプロテオミクス研究から新規のワクチン抗原を発見することにより、特に細菌性病原体に対して新しいサブユニットワクチン候補の開発が可能となっている。しかしながら、サブユニットワクチンは死亡又は弱毒化病原体ワクチンの副作用を避ける傾向にあるが、それらの「純粋な」状態はサブユニットワクチンが常に防御を付与するのに十分な免疫原性を持つわけではないことを意味する。
【0003】
ワクチン組成物の有効性を改善するためのアプローチは、B細胞およびT細胞の応答を誘発し、それによってワクチンを接種した被検体においてより厳密な免疫応答を備える優性抗原を含む多価ワクチンを提供することである。典型的な多価ワクチンは、複数の抗原性分子を含む全細胞ワクチンであってよい。例えば、カルメット・ゲラン菌(「BCG」)ワクチンには、ヒトにおいて防御免疫を誘発する弱毒化マイコバクテリウム・ボビス株が含まれる。多くの病原体を化学的または熱によって不活化するために、防御免疫を付与するワクチン免疫原を引き起こす一方で、発熱や注射部位反応などの副作用も引き起こしうる。細菌の場合には、不活性化された生物は非常に毒性が強く、副作用により粗ワクチン免疫原を用いることができない傾向があり、ゆえに、ワクチン開発は薬剤開発に後れをとっている。さらに、不活化生物の全細胞を用いた有効性が高いワクチンの開発は、エピトープマスキング、免疫優性、低い抗原濃度および抗原重複性の問題がある。
【0004】
現在、黄色ブドウ球菌感染を予防または治療するための効果的な予防接種方策はない。黄色ブドウ球菌は、正常に健常な人々の約20〜40%において、通常鼻の上皮内壁に生息する細菌であり、そして悪影響を引き起こすことなくたいてい人々の皮膚においても通常見出されている。しかし、特定の環境下で、特に皮膚が損傷を受ける場合、この微生物は、感染を引き起こし得る。これは、患者が外科的処置を受け得、そして/または免疫抑制性薬物を服用し得る病院において特に問題である。これらの患者は、彼らが受けている処置に起因して、黄色ブドウ球菌に非常に感染しやすい。微生物感染を制御する際に抗生物質が広く使用されるので、黄色ブドウ球菌の耐性株が生じている。メチシリン耐性株が流行しており、これらの耐性株の多くはまた、いくつかの他の抗生物質に対しても耐性である。
【0005】
黄色ブドウ球菌は、敗血症、心内膜炎、関節炎および中毒性ショックを含む広範囲な生命を脅かす疾患を引き起こし得る主要なヒト病原体である。この能力は、生物体の多様性、および病原性に関連する成分のその保有量によって決定される。感染の発症時、および感染が進行するにつれて、生物の必要性と環境が変化する。これは、黄色ブドウ球菌が生産する病原性決定因子の対応する変化とよく似ている。感染の初めには、病原体が宿主組織に接着することが重要であり、非常に多くのレパートリーの細胞表面結合接着タンパク質が作られる。また、病原体は、循環抗原に認識される細胞の能力を防御するかまたは食作用を低減する因子を産生することによって宿主の防御を回避する能力も持っている。
【0006】
ゆえに、防御性があり、多価ワクチンに用いることができるブドウ球菌の抗原を同定する必要性が継続的にある。併用は、多糖抗原および抗菌薬などの非タンパク質免疫原性分子と組み合わせて用いて、ブドウ球菌感染をコントロールするための治療投薬方法を提供しうる。また、この治療投薬方法を改変して、多価抗原を含む単一ワクチンの投与の別法として時間的に異なる一連の投与により被検体を免疫化することも本開示内容に包含される。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本開示内容は、併用または多価免疫原性組成物およびワクチン、ならびにブドウ球菌感染の予防および治療におけるそれらの使用に関する。本発明者らは、個々に防御性があり、典型的には細胞外ドメインを含み、ブドウ球菌の細胞増殖に必須である膜貫通型タンパク質であるポリペプチドを開示する。例えば、Div1Bは細胞内ドメイン、膜間ドメインおよび細胞外ドメインを含む内在性膜タンパク質である。 Div1Bとその断片は、動物モデルにおいて、少なくとも黄色ブドウ球菌の抗原刺激からの保護を提供する。関連遺伝子Div1Cもまた膜内在性タンパク質であり、その細胞外ドメインはブドウ球菌感染に対する防御免疫を誘発する。また、本開示内容は、遺伝子PheP、YdiEおよびFtsLによってコードされる、それぞれが膜外ドメインを有する抗原に関する。
【0008】
本発明の態様によると、2以上の異なるポリペプチドを含有する免疫原性組成物であって、該ポリペプチドが、
i)配列番号:20に示すアミノ酸配列を含むか又はその配列からなるポリペプチドないしはその免疫原性断片、
ii)配列番号:21に示すアミノ酸配列を含むか又はその配列からなるポリペプチドないしはその免疫原性断片、
iii)配列番号:22に示すアミノ酸配列を含むか又はその配列からなるポリペプチドないしはその免疫原性断片、
iv)配列番号:23に示すアミノ酸配列を含むか又はその配列からなるポリペプチドないしはその免疫原性断片、
v)配列番号:24に示すアミノ酸配列を含むか又はその配列からなるポリペプチドないしはその免疫原性断片、又は、
vi)改変したブドウ球菌のポリペプチドであって、該ポリペプチドは、配列番号:20、21、22、23又は24に示すアミノ酸配列のブドウ球菌のポリペプチド変異体であり、該配列は、配列番号:20、21、22、23又は24に示すポリペプチドと比較して、一又は複数のアミノ酸残基の付加、欠失又は置換により改変されており、免疫原性を維持しているか又は向上しているポリペプチド、
からなる群から選択される、異なるブドウ球菌遺伝子によってコードされている、免疫原性組成物が提供される。
【0009】
改変したブドウ球菌ポリペプチドないしは変異ブドウ球菌ポリペプチドは、いずれの組み合わせで存在してもよい一又は複数の置換、付加、欠失、切断化によってアミノ酸配列が異なっていてよい。好適な変異体には、保存的アミノ酸置換によって参照ポリペプチドとは異なっているものがある。このような置換は、所定のアミノ酸を類似の性質を持つ他のアミノ酸に置換するものである。以下のアミノ酸の非限定的列挙は保存的置換(類似)と見なされる:a)アラニン、セリンおよびスレオニン;b)グルタミン酸およびアスパラギン酸;c)アスパラギンおよびグルタミン;d)アルギニンおよびリジン;e)イソロイシン、ロイシン、メチオニンおよびバリン、およびf)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン。最も好ましくは、変異する前の参照ポリペプチドと同じ免疫原性および/又は活性を保つまたは向上する変異体である。
【0010】
ある実施形態では、変異ポリペプチドは、本明細書中に示す完全長アミノ酸配列と、少なくとも80〜89%の配列同一性、より好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは少なくとも97%の同一性、より好ましくは少なくとも99%の同一性を有する。
【0011】
本発明の好適な実施形態では、前記免疫原性組成物は、2、3、4又は5つのブドウ球菌ポリペプチドを含むか又は基本的にそのポリペプチドからなる。
【0012】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0013】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0014】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0015】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる組成物が提供される。
【0016】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:23および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0017】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21および22を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0018】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22および23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0019】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21および23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0020】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0021】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0022】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21、23および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0023】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22、23および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0024】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21、22および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0025】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21、22および23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0026】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:20を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:21、22、23および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0027】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0028】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0029】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0030】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:23および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0031】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22および23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0032】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0033】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:21を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:22、23および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0034】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:22を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:23および24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0035】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:22を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0036】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:22を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0037】
本発明の好適な実施形態では、
i)配列番号:23を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片と、
ii)配列番号:24を含むポリペプチド、ないしはその抗原性断片
とを含有してなる免疫原性組成物が提供される。
【0038】
本発明の好適な実施形態では、前記組成物はワクチン組成物であり、少なくとも一のキャリアおよび/又はアジュバントを含む。
【0039】
アジュバント(免疫増強因子または免疫調節因子)はワクチン抗原に対する免疫応答を改善するためにここ数十年間使用されている。ワクチン製剤へのアジュバントの混入は、ワクチン抗原に対して特異的な免疫応答を亢進する、加速するおよび延長することを目的としている。アジュバントの利点は、弱い抗原の免疫原性の強化、免疫化の成功に必要な抗原量の削減、必要な追加免疫の頻度の減少、および高齢者や免疫不全ワクチン受診者の免疫応答の改善を含む。選択的に、アジュバントは、例えば免疫グロブリンクラスおよび細胞障害性またはヘルパーTリンパ球の誘導に関して望ましい免疫応答を最適化するためにも用いられ得る。さらに、ある種のアジュバントは、粘膜表面での抗体応答を促進するために用いられ得る。水酸化アルミニウムおよびアルミニウムまたはリン酸カルシウムは、ヒトワクチンに日常的に用いられている。
【0040】
アジュバントは、その起源、作用のメカニズムおよび物理的又は化学的性質に従って分類することができる。最も一般的に記載されるアジュバント分類は、ゲルタイプ、微生物、油エマルジョンおよび乳化剤ベース、微粒子、合成およびサイトカインである。複数のアジュバントが本発明に係る最終ワクチン生成物中に存在してもよい。それらはワクチン中に存在する単一の抗原またはすべての抗原と組み合わされてもよいし、各アジュバントをある特定の抗原と組み合わせてもよい。現在使用されるまたは開発中のアジュバントの起源と性質は非常に多様である。例えば、アルミニウムベースのアジュバントは単純な無機化合物から構成され、PLGは重合炭水化物である。MDPは細菌の細胞壁に由来するものであり、サポニンは植物起源のものであり、スクアレンはサメ肝臓由来のものであり、そして組換え内因性免疫調節因子は組換え細菌、酵母または哺乳動物細胞由来のものである。動物用ワクチンには、ヒトへの使用では反応が強すぎる鉱物油エマルジョンなど、様々なアジュバントが認可されている。同様に、完全フロイントアジュバントは、最も強力なアジュバントの一つとして知られているがヒトへの使用には適さない。
【0041】
キャリアは、第二分子に結合した場合に後者への免疫応答を増強する免疫原性分子である。キャリアなる用語は以下のように解釈される。キャリアは、第二分子に結合した場合に後者への免疫応答を増強する免疫原性分子である。いくつかの抗原は、本来免疫原性ではないが、キーホールリンペットヘモシアニンまたは破傷風トキソイドのような外来タンパク質分子と結合した場合に抗体反応を生成することができる。このような抗原はB細胞エピトープを含むがT細胞エピトープは含んでいない。このようなコンジュゲートのタンパク質部分(「キャリア」タンパク質)は、抗原特異的B細胞を順に刺激してプラズマ細胞に分化させ、抗原に対する抗体を産生するヘルパーT細胞を刺激するT細胞エピトープを提供する。
【0042】
本発明のワクチン組成物は、注入、例えばエアロゾルや点鼻薬などの吸入による鼻腔スプレーを含め任意の従来の経路によって投与されうる。投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋肉内、腔内、皮下、または皮内であってよい。本発明のワクチン組成物は有効量で投与される。「有効量」とは、単独でまたは更なる投薬で所望の応答を生成するワクチン組成物の量である。特定の細菌性疾患を治療する場合には、感染性作用物質によって刺激されると所望の応答は防御を提供する。
【0043】
本発明の好適な実施形態では、前記ワクチン組成物は鼻腔スプレーとしての投与に適する。
【0044】
本発明の好適な実施形態では、前記ワクチン組成物は吸入器で提供され、エアロゾルとして運搬される。
【0045】
ワクチンの量は、当然のことながら、年齢、身体状態、体積および体重、治療期間、併用療法の性質(もしあれば)、特定の投与経路および保健従事者の知識と専門性の範囲内の因子を含む、個々の患者パラメータに依存するであろう。これらの因子は当業者によく知られており、所定の実験を超えない範囲内で対処することができる。概して、個々の成分またはそれらの組み合わせの最大用量が免疫を誘発するために十分に用いられることが好ましい。この量はつまり正当な医学的判断による安全性の高い用量である。しかしながら、患者は、医学的な理由、心理学的理由または実質的な他の理由によりより低用量または耐容量を主張することは当業者が容易に理解できるであろう。
【0046】
被検体に投与されるワクチンの用量は、異なるパラメーターに従って、特に用いる投与様式および被検体の状態に従って選択されうる。被検体の応答が用いた初期用量では不十分である場合には、より高用量(または異なるより局在的な運搬経路による効果的な高用量)が患者の許容範囲内で用いられてよい。
【0047】
一般に、複数用量のワクチンが製剤化され、当分野で標準的な手順に従って有効な免疫化用量で投与される。ワクチン組成物の投与のための他のプロトコールは当業者に知られており、その場合、投薬量、注入計画、注入部位、投与様式などは前述から変更されうる。ヒト以外の哺乳動物へのワクチン組成物の(例えば試験目的または獣医治療目的のための)投与は、前述と実質的に同じ条件で行われる。本明細書中の被検体は、哺乳動物、好ましくはヒトであり、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ又はヤギを含む。
【0048】
抗原の比率はペアごとの様式で異なっていてよい。各抗原の比率は、抗原の特定の組み合わせに対して被検体の応答を最適化するために、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1又は10:1であってよい。例えば、Div1BとYdiEの比率は上記のように変化しうる。
【0049】
本発明の好適な実施形態では、少なくとも一の更なる抗菌薬を含む本発明に係るワクチン組成物が提供される。
【0050】
本発明の好適な実施形態では、前記薬剤は第二の異なるワクチンおよび/又は免疫原性作用物質(例えば細菌のポリペプチドおよび/又は多糖抗原)である。
【0051】
本発明の更なる態様によると、
i)配列番号:1又は6に示すヌクレオチド配列を含むかその配列からなる核酸分子、
ii)配列番号:2又は7に示すヌクレオチド配列を含むかその配列からなる核酸分子、
iii)配列番号:3又は8に示すヌクレオチド配列を含むかその配列からなる核酸分子、
iv)配列番号:4又は9に示すヌクレオチド配列を含むかその配列からなる核酸分子、
v)配列番号:5又は10に示すヌクレオチド配列を含むかその配列からなる核酸分子、
vi)遺伝コードの結果として上記i〜vに定義するヌクレオチド配列に縮重するヌクレオチド配列を含むかその配列からなる核酸分子、又は、
vii)相補鎖が配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10の配列にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズし、ブドウ球菌の抗原ポリペプチドをコードする核酸分子、
からなる群から選択される、2以上の異なるブドウ球菌遺伝子のヌクレオチド配列を含むか、その配列からなり、免疫原性ポリペプチドをコードする核酸分子を含む組成物が提供される。
【0052】
核酸分子のハイブリダイゼーションは、2つの相補的な核酸分子が互いに多くの水素結合を受ける場合に生じる。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、核酸周辺の環境条件、ハイブリダイゼーション法の性質、および使用した核酸分子の組成および長さによって異なりうる。ある一定のストリンジェンシーに達するために必要なハイブリダイゼーション条件に関する算出は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001);および、Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes Part I, Chapter 2 (Elsevier, New York, 1993)のTijssen, Laboratory Techniquesにおいて論じられている。Tは、核酸分子の所定の鎖の50%がその相補鎖にハイブリダイズする温度である。以下は一連のハイブリダイゼーションの例であるが、限定するものではない。
【0053】
超高ストリンジェンシー(少なくとも90%の同一性を共有する配列のハイブリダイズを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65℃、5×SSC、16時間
2回の洗浄: 室温(RT)、2×SSC、各々15分間
2回の洗浄: 65℃、0.5×SSC、各々20分間
高ストリンジェンシー(少なくとも80%の同一性を共有する配列のハイブリダイズを可能にする)
ハイブリダイゼーション:65℃〜70℃、5×〜6×SSC、16〜20時間
2回の洗浄: RT、2×SSC、各々5〜20分間
2回の洗浄: 55℃〜70℃、1×SSC、各々30分間
低ストリンジェンシー(少なくとも50%の同一性を共有する配列のハイブリダイズを可能にする)
ハイブリダイゼーション:RT〜55℃、6×SSC、16〜20時間
少なくとも2回の洗浄: RT〜55℃、2×〜3×SSC、各々20〜30分間
【0054】
本発明の好適な実施形態では、前記組成物はワクチン組成物であり、少なくとも一のキャリアおよび/又はアジュバントを含む。
【0055】
核酸又はDNA組み合わせワクチンは、本明細書中で開示する抗原ポリペプチドをコードする核酸分子を含む。アミノ酸配列番号で表すポリペプチド抗原の特定の組み合わせは、DNAワクチンの製造において、本明細書中で開示する対応するヌクレオチド配列番号と置き換えることができる。
【0056】
本発明の更なる態様によると、ブドウ球菌感染又はブドウ球菌感染によって生じる状態に対する被検体動物の予防又は治療において使用するための本発明に係る併用ワクチンが提供される。
【0057】
本発明の好適な実施形態では、前記ブドウ球菌感染は、S.エピデルミデス(表皮ブドウ球菌)、S.アウレウス(黄色ブドウ球菌)、S.ホミニス、S.ヘモリチカス、S.ワルネリ、S.キャピティス、S.サッカロリティカス、S.アウリキュラリス、S.シムランス、S.サプロフィティクス、S.コーニイ、S.キシロサス、S.ヒイカス、S.カプレ、S.ガリナラム、S.インターメジウスからなる群から選択されるブドウ球菌属種によって生じる。
【0058】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記ブドウ球菌属種が黄色ブドウ球菌又は表皮ブドウ球菌である。
【0059】
本発明の好適な実施形態では、前記被検体はヒトである。
【0060】
本発明の他の好適な実施形態では、前記被検体は、ヒト以外の動物、好ましくは家畜動物、例えばウシである。
【0061】
本発明の好適な実施形態では、前記家畜動物は、ブドウ球菌に起因する細菌性乳腺炎に対して予防接種される。
【0062】
本発明の好適な実施形態では、前記家畜動物はヤギ亜科動物(例えばヒツジ、ヤギ)である。
【0063】
本発明の好適な実施形態では、前記家畜動物はウシ亜科動物(例えばウシ)である。
【0064】
ブドウ球菌性乳腺炎は、家畜動物に罹患する深刻な状態であり、抗生物質の投与による疾患コントロールの面でも乳量が失われる点においても多額の費用がかかりうる。本発明に係るワクチンにより細菌、特にブドウ球菌乳腺炎を費用効率良くコントロールすることができる。
【0065】
本明細書の記載および特許請求の範囲全体を通して、「含む」および「含有する」なる語句およびこれら語句の変形、例えば「含んでいる」および「含み」は、「含むがこれらに限定しない」ことを意味し、他の部分、付加物、成分、整数または工程を除くことを意図しない(または除かない)。
【0066】
本明細書の記載および特許請求の範囲全体を通して、文脈上別段の必要性がない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が用いられる場合、明細書は、文脈上別段の必要性がない限り、複数形および単数形を考慮しているものと理解される。
【0067】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して記載される特性、整数、特徴、化合物、化学的部分、または基は、本明細書において記載されている任意の他の態様、実施形態、または実施例と矛盾しない限り、それらに適用可能であると理解される。
【0068】
本発明の実施形態はここで以下の図を参照して例示としてのみ記載する。
【0069】
表3および4は、YdiEおよびDiv1Bの細胞外ドメインの組み合わせ抗原を用いたマウスモデルの予防接種を、個々の抗原予防接種と比較して示す。
【実施例】
【0070】
材料および方法
黄色ブドウ球菌のタンパク質の膜外断片の、大腸菌における過剰発現のためのプラスミドの構築
PheP選別ペプチドを合成し、そのC末端のシステインを介してキャリアタンパク質KLHにコンジュゲートして、予防接種に用いるキメラタンパク質とした。YdiE、Div1B、Div1CおよびFtsLの膜外断片を、黄色ブドウ球菌SH1000株(Horsburgh MJ, Aish JL, White IJ, Shaw L, Lithgow JK, Foster SJ: sigmaB modulates virulence determinant expression and stress resistance: characterization of a functional rsbU strain derived from Staphylococcus aureus 8325-4. J Bacterid 2002, 184:5457-5467)の染色体より、表1に示すオリゴヌクレオチド対を用いて以下のPCR反応条件に従ってPCR増幅した。94℃、4分間の開始変性サイクル1回;94℃、30秒間の変性と、45℃、30秒間のアニーリングと、72℃、最大2.5分間の伸長からなる増幅サイクル30回;最後に72℃、4分間の継続増幅ラウンドを行って完了した。
【0071】
オリゴヌクレオチド内に設計された制限酵素部位も表1に示す(下線;NcoI又はXhoI)。増幅した断片は、対応する制限酵素にて消化し(5’末端はNcoI、3’末端はXhoI)、NovagenのpET−21d(+)発現ベクター(カタログ番号69743−3)の相当部位にクローニングし、T7タグ付加(部分的、N末端)および6×Hisタグ付加(C末端)型の膜外断片を生成する、表1に示す過剰発現プラスミドを得た。配列中のT7およびHisタグは太字で示し、対象のタンパク質の膜外部分は下線で示す。組換えタンパク質断片を過剰発現させるために、過剰発現プラスミドを大腸菌BL21に形質移入した。
【0072】
レシピエントpET21d(+)レシピエントプラスミドベクターのNcoIおよびXhoI部位への上記PCR増幅断片のクローニングには、T7タグと膜外断片との間、および膜外断片とHisタグとの間にヒンジアミノ酸の付加が必要であった。これらのアミノ酸は配列中で太字にも下線を付してもいない。
【0073】
配列番号:25−28の過剰発現
配列番号:25から28は、100μg/mlのアンピシリンとPlacプロモーター無償性誘導因子のIPTG(イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド、1mM)の存在下にてブレインハートインフージョン培地(CM0225, Oxoid, United Kingdom)を用いて、37℃で4〜6時間、激しく撹拌させながら、大腸菌BL21株においてプラスミドpGL597、pGL601、pALB26およびpALB27から過剰発現させた。遠心分離(5000×g、15分、4℃)の後、0.5M NaClを含有するリン酸緩衝液(バッファA;0.1M、pH7.2)中の1mg/mlリゾチームにて1時間溶解し、その後超音波処理(超音波処理水培地中で10秒パルスを3サイクル)することによって細胞を回収した後、13000×gにて10分間遠心分離することによって対象のタンパク質の可溶型と不溶型を分離した。次いで、沈殿物を、凍結/解凍(−80℃で10分間の凍結とその後の室温への解凍を3サイクル)と超音波処理(超音波処理水培地中で10秒パルスを3サイクル)、その後18000×gで25分間遠心分離することによって、8M尿素を含有するバッファAに再懸濁した。上清中の過剰発現した対象のタンパク質と可溶化ペレットは、初めニッケル(NiSO4)結合セファロースクロマトグラフィカラム(Ni−セファロース)へ(Hisタグを介して)特異的に結合させ、5%で5分、30%で60分、35%で60分、50%で100分および55%で100分といった段階的な方法でカラムにイミダゾール溶液を流し込むことによって溶出させて、精製した。この段階的溶出から得た分画は、4%アクリルアミド/ビスアクリルアミド濃縮層と12%アクリルアミド/ビスアクリルアミド分離層を有するアクリルアミド変性ゲルにて分析した。過剰発現した対象のタンパク質を含有する分画をプールし、滅菌リン酸緩衝液(1リットルの蒸留水に対して8g NaCl、0.2g KCl、1.44g Na2HPO4、0.24g KH2PO4、pH7.4)にて透析した。
【0074】
対象とするすべてのタンパク質は、前記の株から前記の条件の下で成功裏に過剰発現した。また、その後、タンパク質は、過剰発現している大腸菌株の全細胞タンパク質含有量から95%より多くの純度で抽出された。各タンパク質について得られた精製の例を以下に示す。
【0075】
黄色ブドウ球菌による感染に対するBalb/Cマウスの予防接種による保護の評価
2回目の抗原刺激の1週間後、各動物に1.1×10(±0.5×10)細胞の黄色ブドウ球菌株Newmanを含有する100μlの無エンドトキシンPBSを静脈(尾静脈)注射することによって感染させた。後者はブレインハートインフージョン培地(BHI)中で初期静止期に成長した培養物から調製し、次いで同量のPBSにて3回洗浄した。
【0076】
10〜14日後、スケジュール1頸椎脱臼によって動物を屠殺した。各動物から無菌条件下で一対の腎臓を採取し、滅菌PBS中でホモジナイズした。腎臓破砕物はPBSにて段階希釈し、BHIアガープレート上に塗り広げた。10〜150のブドウ球菌コロニーを含むプレートを計数し、希釈補正した。腎臓内の生きている菌の数は、プレート上のコロニー形成単位(CFU)の数から推察した。Div1B−2による予防接種により与えられる感染に対する保護の可能性は、KLHにて予防接種した動物およびDiv1B−2にて予防接種した動物の腎臓における黄色ブドウ球菌の数の違いから評価した。統計学的に有意な違いは、マンホイットニー検定を用いて算出した。Div1B−2予防接種動物と比してKLH予防接種動物において有意(p<0.05)に多い数の黄色ブドウ球菌が見られた場合に保護と見なした。
【0077】
予防接種:多価ワクチンについての包括的プロトコール
様々な抗原を含む併用(又は多価)ワクチン(PhePペプチド、YdiE、Div1B、Div1CおよびFtsLの選択的コンジュゲート)は以下の変更を加えた同一プロトコールに準じる。ワクチン初期および追加刺激混合物は、単一成分よりはむしろ、2以上の成分を含有する。初期および追加刺激注入に用いられる混合ワクチンの全量は1動物当たり50〜100μlの間で変動する。同様に、各注射剤の全量も50〜100μgの間で変動しうる。初期又は追加刺激混合物におけるワクチンの総量に影響する各抗原の量は、総量の20%〜80%の間で変化するであろう。
【0078】
ワクチン混合物として評価する抗原の様々な組み合わせは表2に従って行う。組み合わせは3つの列に分類する。1列目の実験の結果に応じて2列目の実験を行い、2列目の実験の結果に応じて3列目の実験を行う。各列において、予防接種実験は、Y軸に抗原を含むとともに、X軸に沿ってメモリを付し、同じ色で識別する。各予防接種実験は異なる色で識別する。
【0079】
実施例1
実験試料は、YdiEおよびDiv1Bの細胞外ドメインの併用抗原とした。各マウス(雌Balb/C、およそ5〜6週齢)に投与する抗原の量は、5μgのYdiE+50μgのDiv1Bとした。これらの量は、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)と完全フロイントアジュバント(予防接種抗原刺激に用いる)又は不完全フロイントアジュバント(予防接種追加刺激に用いる)を50:50 v:v含む100μlの溶出液内に含めた。抗原刺激は0日目に行い、第1追加刺激は14日目、第2追加刺激は21日目に行った。その後、7日後、つまり28日目に動物に黄色ブドウ球菌株Newmanに感染させた。各試験群(コントロールおよび実験群)は10個体とした。動物(コントロールおよび実験群ともに)に投与する細菌用量は、100μlのPBS中4×10個の菌を含めた。感染期間は3日間とし、動物の体重は毎日計測した(また、臓器を採取し臓器中の細菌負荷を評価した、表4)。この時点で動物を屠殺した。実験の結果は、すべての動物について3日目と0日目との間での体重減少の割合として算出した。これらの実験結果を表3に示す。表3のデータの統計学的分析:
試験:ノンパラメトリック統計的仮説検定−マンホイットニーU
選択肢:両側、不対、95%信頼区間
結果:(2群間比較)
II とI: p=0.622
III とI: p=0.039*
IVとI: p=0.001*
IIとIII: p=0.061
IIとIV: p=0.008*
IIIとIV: p=0.158
* 群間で統計学的な有意差がある比較。
統計学的分析 表4:
試験:ノンパラメトリック統計的仮説検定−マンホイットニーU
選択肢:両側、不対、95%信頼区間
結果:(2群間比較)
IIとI: p=0.2
IIIとI: p=0.105
IVとI: p=0.009*
IIとIII: p=0.378
IIとIV: p=0.131
IIIとIV: p=0.504
* 群間で統計学的な有意差がある比較。
【0080】
配列
【0081】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]