【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、歯科対象物の第1領域が、第1の3次元光学測定法を使用して測定される、歯科対象物の3次元光学測定のための方法に関する。この第1の3次元光学測定法は、三角測量法及び縞投影法に基づく。測定を実行する前に、少なくとも第1領域に粉体を適用して、第1の画像データを生成する。次いで、より精度の低い第2の3次元光学測定法を使用して、最初に粉体を適用することなく、歯科対象物の第2領域を測定することにより、第2の画像データを生成する。次いで、第1の画像データを第2の画像データと組み合わせて、重ね合わせ3次元写真を形成する。
【0014】
第1の3次元光学測定法は、対象物の実際の寸法からの最小限の偏差を伴う、歯科対象物の精密測定を可能にするものであり、例えば、対象物への粉体の事前適用を使用する三角法による縞投影法とすることができる。第1領域は、精密測定を必要とし、例えば、計画された修復物の挿入のための前処理部、及びこの前処理部に近位の隣接する歯を含み得る。第1の画像データは、歯科対象物の第1領域の3次元構造を含み、メモリ内に記憶させることができる。第2の3次元光学測定法は、より低い精度を有するものであるが、第1の測定法よりも容易かつ迅速に実行することができる。第1の測定法と比較した第2の測定法の有利点としては、この第2の測定法は、測定が実行される際のハンドピースの動揺に対して、より感受性が低いという事実と、干渉する反射を防止するための、対象物への粉体の適用が必要とされないことと、測定中の対象物から色情報を取得することができるという事実と、測定が、測定対象物の上を飛び越えて移動する間に継続的に実行され(オンザフライ能力)、空間の種々の角度からの、複数の個別の写真を通じて漸進的に実行されるものではないという事実とを、挙げることができる。この生成された第2の画像データもまた、メモリ内に保存することができる。次いで、コンピュータによって、第1の画像データを第2の画像データと組み合わせることにより、撮影される歯科対象物の第1領域及び第2領域内で必要とされる精度を有する、重ね合わせ3次元写真が形成される。
【0015】
この方法の1つの有利点は、その方法が、この測定作業の精度要件を満たす、単純で迅速な、最適化された3次元法を提供し、特定の測定作業に関して最適化される点である。
【0016】
この方法の別の有利点は、2つの画像データのセットを組み合わせる際に、第1の画像データと第2の画像データとの偏差が、またそれゆえ光学的エラーが検知されるため、次いで、これらのエラーを補正することができる点である。
【0017】
第1の測定法での粉体の適用を通じて、第1領域(前処理部位とすることができる)は、第1工程で、反射を防止するための粉体でコーティングされ、第2工程で、縞投影法による歯科用ハンドピースによって測定される。精度を改善するために、第1の精密測定法で、短波の青色光を使用して、写真の精度を改善することができる。400nm〜500nmの波長を有する青色光を好ましくは使用することができる。
【0018】
第2領域は、反射に関して感受性がより低い、第2の測定法によって測定されるが、このことは、第2領域が、粉体の事前適用を必要としないことを意味する。
【0019】
この第2の3次元光学測定法は、有利には、第1の3次元光学測定法に対応するが、投影グリッドのグリッド周期がより大きく、この第2領域には粉体が適用されないという相違点を有する。
【0020】
この第2の測定法は、それゆえ、第1の測定法と同様に、縞投影法に基づくものであるが、第2の方法では、投影グリッドの第2のグリッド周期は、第1の方法での、投影グリッドの第1のグリッド周期よりも大きく、第2領域には粉体を適用する必要がない。この第2の測定法は、それゆえ、より精度の低いものであるが、より単純に実行することができる。投影グリッドの第1のグリッド周期は、300μm〜400μm、好ましくは350μmとすることができ、投影グリッドの第2のグリッド周期は、600μm〜800μm、好ましくは700μmとすることができる。
【0021】
第2の3次元光学測定法は、有利には、共焦点顕微鏡検査法に基づき得る。
【0022】
この3次元測定のための共焦点顕微鏡検査法は、縞投影法よりも、対象物の表面での反射に関して感受性が低く、それゆえ対象物に粉体を適用することなく、3次元の形状の決定を可能にする。第2領域はそれゆえ、その領域に粉体を適用することなく、共焦点顕微鏡検査法を使用することによって測定することができる。対象物の色も、この方法で検知することができる。この方法の不利点は、共焦点面の寸法に応じて決定される解像度が、縞投影法の場合よりも低く、測定の所要時間が、縞投影法での所要時間よりも遙かに長いという点である。
【0023】
第2の3次元光学測定法は、有利には、白色光干渉法に基づき得る。
【0024】
第2領域は、それゆえ、白色光干渉法に基づく歯科用ハンドピースによって測定することができる。白色光干渉法は、対象物の表面での反射に関してより感受性が低く、それゆえ、いかなる粉体の適用も使用しない、第2領域の3次元の形状の決定を可能にする。この3次元測定に加えて、対象物の表面についての色情報も取得することができる。
【0025】
第2の3次元光学測定法は、有利には、色パターンを使用する三角測量法に基づき得る。
【0026】
色パターンを使用する既知の三角測量法は、その測定が、第2領域への粉体の事前適用を必要とすることなく、歯科対象物についての追加的な色情報を取得することができるという有利点を有する。
【0027】
第2の3次元光学測定法を実行する際に、有利には、歯科対象物についての色情報を生成することができる。
【0028】
それゆえ、測定対象物の3次元寸法に加えて、その対象物についての色情報も取得することができる。第2領域、例えば隣接する歯についての、この色情報は、計画される修復物の色調を、隣接する歯の色調に適合させるように、その修復物を計画するために使用することができる。
【0029】
歯科対象物の第1領域は、有利には、患者の口腔内の前処理部位とすることができる。
【0030】
それゆえ、より精度の高い第1の測定法で撮影されるこの第1領域は、修復物を挿入するための前処理部位を含む。次いで、隣接する歯、対合歯、顎の残りの区域、及び/又は前処理部位を取り囲む歯肉を、より精度の低い第2の測定法によって測定することができる。
【0031】
この歯科対象物の第2領域は、有利には、第1領域の近傍の、隣接する歯を含む対合歯、又は顎全体とすることができる。
【0032】
前述の構造はそれゆえ、より低い精度で検知され、挿入される修復物の配向及び計画に関してのみ役立つものであり、この修復物は、隣接する歯並びに対合歯に、形状及び/又は彩色が適合される。
【0033】
第2領域は、有利には、歯科対象物の第1領域を含み得る。
【0034】
第1領域はそれゆえ、第1の測定法によって検知され、同様に、より精度の低い第2の測定法によっても検知される。
【0035】
第1の画像データは、有利には、第2の画像データと比較することができ、それゆえ第1の画像データ内の不完全な箇所が検知可能である。
【0036】
それゆえ、例えば、第1領域への粉体の不完全な適用によって引き起こされる、光学的エラーを検知することができる。第1の測定法による第1領域の測定の間に使用されるハンドピースの動揺もまた、写真内のエラーを生じさせる恐れがあるが、このエラーは、第2の画像データとの比較によって検知することができる。
【0037】
有利には、この第1の画像データ内の不完全な箇所を補正することができる。
【0038】
この不完全な箇所は、既知のパターン認識アルゴリズムを使用して自動的に、又はユーザーによって手作業で、補正することができる。補正の結果は、第1領域及び第2領域の双方を含む、エラーのない写真である。
【0039】
有利には、第2領域と第1領域が重複しない場合がある。
【0040】
対象物の第1領域はそれゆえ、第1の測定法のみを使用して測定される。
【0041】
本発明の別の主題は、歯科対象物の3次元光学測定のための測定装置であり、この測定装置は、三角測量法及び縞投影法に基づく、第1の精密な3次元光学測定法の使用のための第1の手段を含む。この第1の手段は、第1のグリッド定数を有する第1の投影グリッドを含む。この測定装置は、より精度の低い第2の3次元光学測定法の使用のための、第2の手段を更に含む。この測定装置はまた、第1の方法に従う動作のための第1モードと、第2の方法に従う動作のための第2モードとの間で、測定装置を切り替えるための、スイッチ及び調節手段も含む。この調節手段による、第1モードから第2モードへの切り替えの間に、第2の手段が、第1の手段の代わりに、測定装置のビームの経路内に配置される。
【0042】
この測定装置は、上述の本発明の方法を実行することを可能にする。第1モードでは、第1の精密な光学測定法を使用して、歯科対象物を測定することができ、第2モードでは、より精度の低い第2の光学測定法を使用して、歯科対象物を測定することができる。このモード設定に応じて、第1の手段又は第2の手段が、測定装置のビームの経路内に導入される。第1の投影グリッドは、平行縞などの、種々の投影パターンを有し得る。スイッチは、ユーザーによって、手動で操作可能である。
【0043】
この測定装置の1つの有利点は、第1の測定法又は第2の測定法を使用することによって、歯科対象物を、同じ測定装置で任意選択的に検知することができる点である。それゆえ、測定装置を変更する必要がないため、測定全体の所要時間が短縮される。
【0044】
第2の測定法は、有利には、第1の測定法に対応し得るが、ただし、第2の手段は、測定装置のビームの経路内に導入することができる、第2のグリッド定数を有する第2の投影グリッドを含むという相違点がある。この第2の投影グリッドの第2のグリッド定数は、第1の投影グリッドの第1のグリッド定数よりも大きい。
【0045】
より大きいグリッド定数を有する第2の測定法は、第1の測定法の場合よりも、低い解像度の画像データが生成されるという結果をもたらすが、この第2の測定法は、反射を防止するために、歯科対象物に粉体を適用することを必要としないという有利点を有する。グリッド定数の値は、対象物の面内での、投影パターンの平行線間の距離に関連する。
【0046】
対象面内での、第1の投影グリッドの第1のグリッド定数は、有利には、300μm〜400μm、好ましくは350μmとすることができる。対象物の面内での、第2の投影グリッドの第2のグリッド定数は、600μm〜800μm、好ましくは750μmとすることができる。
【0047】
第1モードから第2モードへの切り替えの間に、有利には、第2の投影グリッドは、機械的旋回装置によって、第1の投影グリッドの場所の、ビームの経路内へと旋回させることができる。
【0048】
この機械的旋回装置は、それゆえ、単純操作での切り替えによって、測定装置のビームの経路内の、第1の手段の場所内に、第2の手段を配置することを可能にする。この機械的旋回装置は、例えば、測定装置のビームの経路と平行に位置合わせされる、旋回軸を有し得、その旋回軸に、第1の手段及び第2の手段が、旋回可能に接続される。第1及び第2の手段は、旋回軸の回転によって、特定の回転角を中心として回転されることにより、それらの手段は、任意選択的に測定装置のビームの経路内へと導入される。この旋回軸は、制御装置によって適宜に制御される、ステッピングモーターなどの電動モーターによって駆動することができる。
【0049】
第1及び第2の投影グリッドは、有利には、デジタル投光器(略称DLP)によって生成することができる。第1モードから第2モードへの切り替えの間に、このデジタル投光器は、制御装置によって制御されるが、このことは、第2の投影グリッドが、第1の投影グリッドの代わりに生成され、対象物の面内に所望のグリッド定数を有する線パターンが、その対象物上に投影されることを意味する。
【0050】
第1モードと第2モードとの間の迅速な切り替えが、このデジタル投光器を使用することによって可能となる。デジタル投光器は、例えば液晶素子を有し得る。1つの有利点は、切り替えを実行するために、機械的調節手段を必要としないことにより、測定装置の耐用年数及び動作信頼性が改善される点である。
【0051】
第2の手段は、有利には、共焦点顕微鏡検査法の使用に好適なものとすることができ、光源、第1アパーチャー、第2アパーチャー、ビームスプリッター、及び/又は検知器を含み得る。第2の手段は、第2モードでは、光源によって放出される照明ビームが、第1アパーチャーを通過して、測定される焦点面上に、焦点調整装置によって集束されるように、配置される。第2アパーチャーは、焦点面内の対象物によって反射されて戻る観測ビームが、第2アパーチャーを通過して検知器に到達するように配置され、焦点面の外側の観測ビームは遮蔽される。
【0052】
第2モードではそれゆえ、共焦点顕微鏡検査法によって測定が実行され、3次元構造の検知に加えて、歯科対象物の色の検知が可能となる。
【0053】
第2の手段は、有利には、白色光干渉法の使用に好適なものとすることができ、広帯域白色光源並びに干渉計を含み得る。
【0054】
この干渉計は、任意の所望の設計を有し得る。白色光源は、好ましくは連続性の広域スペクトルを有する。
【0055】
色パターンを使用する三角測量法の使用のための、第2の手段は、有利には、種々の色の複数の光源、若しくは種々の色の複数のフィルターを有する1つの光源、及び投影される色パターンを生成するための投影グリッドを有し得る。
【0056】
それゆえ、互いに明確に差異化される、種々の色の平行線などの色パターンを生成して、歯科対象物上に投影することができる。第1モード及び第2モードに関して、同じ光源及び同じ投影グリッドを使用することができ、第2モードへの切り替えの間に、色フィルターがビームの経路内へと旋回される。そのような有利な実施形態では、光源は、色パターンに使用される色の波長を有する広域スペクトルを有する。