(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039670
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】乾燥抽出物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 36/70 20060101AFI20161128BHJP
A61K 36/85 20060101ALI20161128BHJP
A61K 36/35 20060101ALI20161128BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20161128BHJP
A61K 36/515 20060101ALI20161128BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20161128BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20161128BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20161128BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20161128BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20161128BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20161128BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20161128BHJP
【FI】
A61K36/70
A61K36/85
A61K36/35
A61K36/185
A61K36/515
A61P31/04
A61P31/12
A61P29/00
A61P11/02
A61P11/00
A61P11/04
A23L33/105
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-526466(P2014-526466)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公表番号】特表2014-524454(P2014-524454A)
(43)【公表日】2014年9月22日
(86)【国際出願番号】EP2012066212
(87)【国際公開番号】WO2013026830
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】11178206.6
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11193734.8
(32)【優先日】2011年12月15日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12170125.4
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514043090
【氏名又は名称】バイオノリカ・ソシエタス−エウロペア
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】ポップ,ミヒャエル
【審査官】
春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0323013(US,A1)
【文献】
医薬品開発基礎講座 XI 薬剤製造法(上),株式会社 地人書館,1971年 7月10日,p.15−16,「(a)浸出溶剤」
【文献】
Melzer J, et al.,Systematic review of clinical data with BNO-101 (Sinupret) in the treatment of sinusitis,Forschende Komplementarmedizin,2006年,Vol.13, No.2,p.78-87
【文献】
Virgin F, et al.,The bioflavonoid compound, sinupret, stimulates transepithelial chloride transport in vitro and in vivo,The Laryngoscope,2010年,Vol.120, No.5,p.1051-1056,doi: 10.1002/lary.20871
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 33/00−33/29
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥植物抽出物を生産するための方法であって、以下の工程:
a)ルミシス・ハーバ(Rumicis herba)、クマツヅラ(Verbena officinalis)、 セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、プリムラ・ヴェリス(Primula veris)およびゲンチアナ(Gentiana lutea)のアルコール/水抽出;
b)上澄みの分離;
c)残渣の水抽出;
d)上澄みの分離;
e)b)およびd)で得られた上澄みを合わせる;および
f)前記上澄みの乾燥および乾燥植物抽出物の提供、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
工程a)において、ゲンチアナ(Gentiana lutea)、ルミシス・ハーバ(Rumicis herba)、クマツヅラ(Verbena officinalis)、 セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)およびプリムラ・ヴェリス(Primula veris)の割合が1:3:3:3:3であり、各場合に+/−0.3から0.5である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、水/アルコール抽出剤が40:60(v/v)から60:40(v/v)、特に41:59(v/v)または50:50(v/v)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
エタノール、特に96%エタノールがアルコールとして使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
a)の植物はバッチで一緒に提供される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)およびc)の抽出は20℃から40℃で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程a)およびc)の抽出は2時間から8時間行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程f)の乾燥プロセスは真空下、30℃から60℃、特に40℃から50℃で行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)の乾燥プロセスは真空撹拌乾燥機中で行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に従って取得可能な乾燥植物抽出物。
【請求項11】
適用可能な場合には好適な担体物質を含む、請求項10に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬製剤。
【請求項12】
好適な担体物質が、糖衣錠、錠剤、フィルムコーティング錠剤、粉末、カプセルまたは液体希釈物の形態である、請求項11に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬製剤。
【請求項13】
好適な担体物質が、ドロップ、ジュースまたはシロップ、軟膏、エマルジョン、顆粒、粉末、経鼻噴霧剤、吸引用の液体製剤若しくは固体製剤、湿布、創傷/歯茎用ドレッシング、タンポナーデ、アルコール液、うがい液またはそそぎ液の形態の、請求項11に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬製剤。
【請求項14】
請求項10に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品、あるいは請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項15】
抗菌剤、抗ウイルス剤または抗炎症剤として使用または適用するための、請求項10〜12のいずれか一項に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品。
【請求項16】
副鼻腔炎および/または鼻副鼻腔炎および/または鼻洞の炎症を治療および予防するための、請求項10〜14のいずれか一項に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品。
【請求項17】
副鼻腔炎および/または鼻副鼻腔炎および/または鼻洞の炎症が急性の場合である、請求項16に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品。
【請求項18】
全呼吸器官の疾患を治療および予防するための、請求項10〜14のいずれか一項に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品。
【請求項19】
上気道を治療および予防するための、請求項18に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品。
【請求項20】
咽喉、鼻および鼻洞粘膜部分の疾患を治療および予防するための、請求項18に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品。
【請求項21】
ムコビシドーシス(嚢胞性線維症)を治療および予防するための、請求項18に記載の乾燥植物抽出物を含有する医薬品。
【請求項22】
請求項10に記載の乾燥植物抽出物を含有する栄養補助食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥植物抽出物の製造方法および該抽出物を含む医薬調製物、特に少なくとも一つの植物(薬)のエタノール/水抽出物を含有する生薬に関し、該植物は、スイバ(Rumex acetosa L.)、ヒメスイバ(Rumex acetosella L.)、エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)、ルメクス・パティエンティア(Rumex patientia L.)およびヨウテイ(Rumex crispus L.)(これ以降、総称として、「ルミシス・ハーバ(Rumicis harba)」と呼ぶ)、クマツヅラ(Verbena officinalis)、 セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、プリムラ・ヴェリス(Primula veris)およびゲンチアナ(Gentiana lutea)並びにそれらの混合物からなる群から選択される。本発明は、鼻および咽喉部分の炎症性疾患および/または感染性疾患、および/または副鼻腔の炎症性疾患および/または感染性疾患、栄養補助食品およびその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
上述の薬用植物は、上気道の感染、その中でも特に副鼻腔炎の場合に、分泌分解剤として知られている。ここで、個々の薬は、組成物のユニークな効果にそれぞれ寄与している。ゲンチアナの根(Gentian root)は、一般的に薬用目的で使用されている。去痰効果を有する種々のセコイリドイドグリコシドが、とりわけ成分の中に見出される。
【0003】
これ以降「ルミシス・ハーバ(Rumicis harba)」(ギシギシ属の薬用植物)と呼ばれる上述のルメクスタイプの葉および茎は、一般的に薬用目的で使用されている。フラボノイドおよび種々の日焼け剤が、抗炎症効果を有する成分としてこの中に見出され、体の防御機構を追加的かつ肯定的に支援している。
【0004】
総称である「ルミシス・ハーバ(Rumicis harba)(ギシギシ属の薬用植物)」は、以下の種の混合物として理解されるべきである。スイバ(Rumex acetosa L.)‐類義語:Lapathum acetosa SCOP、類義語:Lapathum pratense LAM、類義語:Acetosa pratensis MILLER;ヒメスイバ(Rumex acetosella L.)‐類義語:Rumex infestus SALISB;エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)‐類義語:Lapathum obtusifolium MOENCH、類義語:Lapathum obtusantum MONTAD、類義語:Rumex actus WALLR、類義語:Rumex silvestris WALLR;ルメクス・パティエンティア(Rumex patientia L.)‐類義語:Rumex olympicus BOISS、類義語:Lapathum hortense MOENCH;ヨウテイ(Rumex crispus L.);Rumex thyrsiflorus FINGERH‐類義語:Acetosa thyrsiflora FINGERH、類義語:Rumex acetosa subsp. auriculatus WALLR。
【0005】
クマツヅラ(Verbena officinalis)の葉および茎は薬用目的で使用されるのが好ましく、主要成分としてイリドイドグリコシド、フェニレタノイドグリコシドおよびフラボノイドを含んでおり、去痰および抗ウイルス効果が達成される。
【0006】
セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)の葉(エルダーフラワー、セイヨウニワトコ葉)は、一般的に薬用目的で使用され、種々のフラボノールグリコシドを含んでおり、主要成分として去痰および抗ウイルス効果を有する青酸グリコシドの一種であるサンブニグリンが含まれる(Grabovac, A.およびUllmer, A., Oesterreichische Apotheker−Verlagsgesellschaft m.b.H(Austrian Pharmacists’ Publishing House),2003)。
【0007】
プリムラ・ヴェリス(Primula veris)の花および萼片(プリムラの花、プリムラ・ヴェリス葉)は薬用目的で使用される。成分には、トリテルペンサポニンおよびプリムラベリンなどのフェノールグリコシドが含まれる。かかる成分は、去痰および抗ウイルス効果を有しており、呼吸器疾患の治療において、マイルドな分泌分解剤および去痰剤として機能する。
【0008】
上記薬用植物の組み合わせは、商品名Sinupret(登録商標)の下に分泌分解剤として知られており、この商品は本出願者により登録され、約75年間市場で入手可能である。Sinupret(登録商標)に使用されている薬用植物は、標的法によって選別、試験並びに処理される。本明細書で得られる医薬品の均一な品質は、最適化された繁殖および収穫方法により、厳密な品質管理の下に、BIONORICAと呼ばれる製造会社により達成される。
【0009】
Sinupret(登録商標)の基礎を形成する組成物は、咽喉、鼻および耳部分の炎症および感染に有効であるのが好ましく、特に急性および慢性の副鼻腔炎および/または鼻副鼻腔炎の治療に適している。
【0010】
急性の副鼻腔炎も慢性の副鼻腔炎も一般的である。副鼻腔炎は、4症例中3症例において、風邪が副鼻腔に広がり粘膜の炎症を併発する場合に生じる。気道は、主要鼻腔から肺胞を含む種々の副鼻腔にまで達している。副鼻腔には、前頭洞、篩骨洞、蝶型骨洞および上顎洞が含まれる。上述の骨洞のすべてが粘膜に覆われており、狭い開口部(小口)を通して主要鼻腔につながっている。
【0011】
気道の表面は保護粘膜で覆われており、吸入された空気とともに侵入した埃の粒子やウイルス、細菌、カビなどの病原菌がその粘膜に付着する。粘膜には抗体が含まれており、その抗体が侵入した物質を攻撃し無害にする。粘膜は一般的に繊毛上皮の繊毛の助けを得て咽喉の方向に送られ、飲み込まれ、斯くして異物は体から排出される。感染誘発の呼吸器疾患を予防するには、粘膜に、制約のない保護および浄化機構が備わっていなければならない。病原菌の付着した粘膜を運び去るには、制約のない繊毛の機能が不可欠であり、繊毛は波状の動きの結果として粘膜を遠くまで運んでいく。上気道が感染し炎症過程にある場合には、粘膜の保護および浄化機構は制限される。
【0012】
例えば、ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスなどのウイルスは粘膜の炎症反応を引き起こし、該粘膜は膨張し、粘液の増大を引き起こす。その結果、まず水分の多い粘液、次に粘性の高い粘液の流れが生じる。鼻の粘膜の炎症中、副鼻腔の小口は膨張し、機能が損なわれ、粘液の排出が妨げられる場合すら生じ得る。その結果、粘性の高い粘液を伴う副鼻腔が閉塞され、繊毛の機能の低下または損失が生じる。そして、最終的に、粘膜の浄化機構の低下が生じる。
【0013】
かかるミクロ環境は、広範に分布する微生物の急速な増大を促進する。比較的長期間に亘って、膨張した粘膜や粘性の高い粘液で膠着した繊毛などの好ましくない状態が続くと、慢性の副鼻腔炎が生じ、粘膜や繊毛上皮の繊毛に永久的な損傷が生じる場合がある。粘液に生息する気道関連の病原菌(ENO関連の菌が特に含まれることを了解されたい)には、例えば、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、ミュータンス連鎖球菌、インフルエンザ菌などが含まれる。
【0014】
粘性の高い粘液のゆえに上気道が膠着すると、使用された組成物(ゲンチアナ:ルミシス・ハーバ:クマツヅラ:セイヨウニワトコ:プリムラ・ヴェリス=1:3:3:3:3)の成分が新鮮で薄い粘液の形成を誘発し、その結果、上述の去痰、運搬および炎症症状の緩和が達成され、鼻粘膜の治癒プロセスが開始される。Sinupret(登録商標)は、気道の自己浄化能力の再構築をマイルドに引き起こし、それと同時に強力な抗菌効果を発揮する。Sinupret(登録商標)の特徴は、良好な適合性、BIONORICAが確立した組成および投与量(患者に副作用が生じるのはまれである)などであり、さらに他の医薬品との相互作用も全く存在しない。
【0015】
乾燥植物抽出物は一般的に記述されており、水/エタノール抽出物から形成された乾燥植物抽出物が知られている。
乾燥植物抽出物は、例えばEP0753306の技術教示に従って、大量に生産可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、より優れた植物組み合わせの効果を発揮する、新規なSinupret(登録商標)乾燥植物抽出物の提供が求められている。
独逸医薬品局(DAB)2010は、薬の品質向上のために成分の最低含有量を確立したので、改善された一定の品質を確立するには、これまで以上の努力が求められている。特に抽出および乾燥方法が、生薬の十分な品質にとって障害となっている。
【0017】
従って、本発明の目的は、上述の従来の技術に基づき、少なくとも一つのエタノール/水抽出工程を含む改善された乾燥植物抽出物生産方法および改善された乾燥植物抽出物を提供することであり、該植物は、スイバ(Rumex acetosa L.)、ヒメスイバ(Rumex acetosella L.)、エゾノギシギシ(Rumex obtusifolius L.)、ルメクス・パティエンティア(Rumex patientia L.)およびヨウテイ(Rumex crispus L.)(これ以降および特許請求の範囲で、総称として、「ルミシス・ハーバ(Rumicis harba)」と呼ぶ)、クマツヅラ(Verbena officinalis)、 セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、プリムラ・ヴェリス(Primula veris)および/またはゲンチアナ(Gentiana lutea)並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚いたことに、改善された乾燥植物抽出物は、2つの抽出工程によって得ることができ、第一の工程では水/エタノール抽出が行われ、第二の工程では水抽出が行われた。
驚いたことに、本発明の方法に基づく乾燥後、各抽出物に含まれる既存の有効成分混合物中の有効成分含有量を増大させることができ、その結果、得られた乾燥植物抽出物について改善された薬効が達成される。
【0019】
従って、本発明は、乾燥植物抽出物を生産するための方法であって、以下の工程:
a)ルミシス・ハーバ(Rumicis harba)、クマツヅラ(Verbena officinalis)、 セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)、プリムラ・ヴェリス(Primula veris)およびゲンチアナ(Gentiana lutea)のアルコール/水抽出;
b)上澄みの分離;
c)a)からの残渣の水による第二抽出;
d)上澄みの分離;
e)b)およびd)で得られた上澄みを合わせる;および
f)前記上澄みの乾燥および乾燥植物抽出物の提供、
を含む方法に関する。
【0020】
本方法による改良は、従来の単純な水/エタノール抽出と比べて、効果が迅速に達成される(実施例を参照のこと)という事実に基づいている。抽出溶媒の変更によっては、(例えば、もし水/エタノール抽出のみが行われた場合、あるいはもし水抽出のみが行われた場合には)最大に見積もっても直線的外挿しか期待できなかったのであるから、これは驚くべきことである。
【0021】
特に、本発明の方法によって用量効果が改善されるので、同じ用量で改善された治癒効果が達成できる。
従って、本発明は、同様に、本発明の方法によって取得されるまたは取得可能な乾燥植物抽出物に関する(これ以降、本発明による乾燥(植物)抽出物をSinupret乾燥抽出物(TE)と呼ぶ)。
【0022】
本発明の方法の更に好ましい実施態様では、ゲンチアナ(Gentiana lutea)、ルミシス・ハーバ(Rumicis harba)、クマツヅラ(Verbena officinalis)、 セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)およびプリムラ・ヴェリス(Primula veris)の割合が1:3:3:3:3であり、各場合に+/−0.3から0.5(例えば、1:3.2:2.9:2.5:3.2:3)である。
【0023】
更に、全植物(薬)の植物群がバッチで提供されるのが好ましく、その場合、植物(薬)の割合は上述の通りである。更に、提供された植物(薬)は清潔にされ切断されるのが好ましい。
【0024】
本発明の方法の更に好ましい実施態様では、工程a)において、水/アルコール抽出剤は、水とアルコールの比が40:60(v/v)から60:40(v/v)、特に41:59(v/v)または50:50(v/v)である。エタノールが好ましいが、メタノールおよびプロパノールまたはその混合物も含まれる。更に、96%エタノールの使用が好ましい。
【0025】
更に、本発明によれば、工程a)およびc)の抽出は20℃から40℃で行われ、その場合、抽出は工程a)およびc)において2時間から8時間行われる。
「上澄みの分離」は、本発明の意味する範囲内において、本発明による抽出後、連続的または断続的に、ドレイニング、デカンテーション、濾過、スクリーニングまたは当業者に公知の分離方法で行うことができる。
【0026】
更に、工程f)の乾燥プロセスは真空下、30℃から60℃、特に40℃から50℃で行われるのが好ましく、真空撹拌乾燥機中で行われるのが好ましい。本発明の乾燥抽出物は、多くてもせいぜい0.5%の残留エタノール含有量を有している。
【0027】
更に好適な本発明の乾燥方法は以下に説明される。すなわち、乾燥植物抽出物は従来の方法で生産されるが、植物素材を溶媒または混合溶媒の助けを借りて、例えば、浸漬またはパーコレーションで抽出し、抽出残渣の分離後、得られた液体抽出物または得られたチンキを乾燥するまで圧搾する。
【0028】
従来の乾燥方法が本発明に従って構成されるが、それには、流動層乾燥、濃いまたは高密度の抽出物になるまで圧搾しその後真空バンド乾燥を行う方法、あるいは上記高密度の抽出物をトレイ乾燥する方法などが含まれる。
【0029】
流体抽出物(または液体植物抽出物)あるいはチンキを経て本発明の乾燥植物抽出物を生産するにあたり、従来の方法を同様に考慮してもよいが、その場合、溶媒を蒸留した後、高密度の抽出物(粘性抽出物)として知られるものが得られ、それに補助剤および/または添加剤、例えばラクトース、ポリビニルピロリドン、シュークロース、二酸化珪素などがしばしば添加される。次に、この湿気のある粘性の塊は、好みの乾燥抽出物を調製するため、トレイキャビネットまたは乾燥機に入れる。
【0030】
乾燥抽出物生産で頻繁に使用される方法は、真空バンド乾燥として知られている方法である。その場合、高密度抽出物は、ダウンドラフト式ベーパライザーを経て予備乾燥された後、乾燥抽出物調製が行われる。
【0031】
流動層乾燥機を使用する乾燥方法には、約47℃と117℃の間の温度が必要である。この方法の乾燥プロセスは、常圧条件下で行われる。
本発明の乾燥植物抽出物を得るためのマイルドな乾燥方法が、EP0753306に記載されている。そこに記載されている方法によれば、植物素材から抽出で得られる流体抽出物は、発明の方法に従って、(円柱状の混合乾燥室全体に延び、自らの駆動装置を有し、必要ならば蒸気フィルター、逆洗装置、アフタークーラ/回収容器付溶媒コンデンサ、バックコンデンサおよびプロセスコントロール管理ユニットを備え、任意に顆粒形成ノズルを有する)多分岐攪拌機を備えた真空乾燥システム、好ましくは真空撹拌乾燥機に導入され、混合乾燥室の奥行寸法にわたって延びているチョッパーを備え、櫛形の固定子全体にわたって回転するブレードを有する当該乾燥機で乾燥されるが、その場合、行き戻り温度は120℃と5℃の間であり、内側室の温度は10℃と80℃の間であり、フィルターの温度は15℃から55℃であり、圧力は0.5ミリバールと1,000ミリバールの間であり、攪拌機の回転速度は0rpmから10rpmであり、チョッパーの回転速度は200rpmから800rpmである。EP0753306で使用されている真空乾燥システムは、例えば、以前の会社であるFirmen Inox Glatt AGまたはInox−Maurer AGによって「IUT」または「INOX」の名前で販売されている。現在の製造会社および卸売業者には、例えば、De Dietrich Process System GmbH, Mainz, Germany(Rosemund(登録商標))が含まれる。
【0032】
この真空乾燥システムでは、乾燥対象の流体抽出物はバッチ方法によってポンプで上方から混合乾燥室に送られ、その後真空状態にされる。
好ましい真空乾燥システムは、例えば既知のIUT/INOXシステム(上述を参照のこと)で実施されているように、以下のような特徴を備えている。
a)円柱状の混合乾燥室全体に延び、自らの駆動装置を有し、要求に応じて蒸気フィルター、逆洗装置、アフタークーラ/回収容器付溶媒コンデンサ、バックコンデンサおよびプロセスコントロール管理ユニットを備え、任意に顆粒形成ノズルを有する多分岐攪拌機。
b)更に、混合乾燥室の奥行寸法にわたって延び、攪拌機とは独立に駆動装置を有しているチョッパー並びにチョッパーの効果を高めるため、任意に櫛形の固定子が提供されてもよい。
c)更に、例えばWO2002073108に記載されているように、貯蔵槽から乾燥室に液体植物抽出物を導入するため、1つまたは複数のノズルが任意に提供されてもよい。
【0033】
この方法で得られる乾燥植物抽出物は、医薬製剤を形成するために更に処理される。
従って、本発明の乾燥植物抽出物を含有し抗菌効果を有する薬品は、気道に関連する病原菌が引き起こす感染症の治療に有効に使用できる。去痰効果および抗炎症効果に、さらに抗菌効果が追加される。従って、細菌性病原菌は殺菌および/または繁殖の減少により弱められているが、その病原菌のついた高密度の粘液の排泄に加えて、上気道の感染は範囲が限定されるか、あるいは完全に治癒される。上述の発明のお蔭で、例えば副鼻腔炎および/または鼻副鼻腔炎および/または鼻洞の炎症に罹患している患者は、特に各症例において急性の場合に、合成化合物の成分を使用することなく、マイルドな方法で治療される。
【0034】
抗菌効果を有する本発明の(医薬)組成物は、気道に関連する病原菌に対して特に有効であり、黄色ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌(MRSA)、表皮ブドウ球菌、化膿連鎖球菌、肺炎連鎖球菌、ミュータンス連鎖球菌などのグラム陽性球菌、インフルエンザ菌などのグラム陰性桿菌、およびエンテロバクター・フェカリスに対する抗菌効果が具体的に証明されている。ウイルスに対する効果も達成されている。
【0035】
抗菌剤の調剤組成物は、特に生理学的および高浸透圧濃度の塩または塩混合物(好ましくは食卓塩、特に海塩)と組み合わせたドロップ、ジュース、シロップ、錠剤、糖衣錠、カプセル、遅延調剤、直腸または膣用座薬、浸剤、特に咽喉噴霧剤および殺菌液、軟膏、エマルジョン、顆粒、粉末、経鼻噴霧剤、吸引用の液体製剤または個体製剤、湿布、詰綿、特に創傷/歯茎用ドレッシング、タンポナーデ(歯を含む)、そそぎ液からなる群から選択できる。勿論、調剤には通常の医薬補助剤を含めてもよい。
【0036】
従って、本発明は、気道に関連する病原菌により引き起こされる感染症の治療のために、本発明の乾燥植物抽出物を含有する本発明の抗菌剤を使用または適用すること、医薬品の生産のための使用、およびかかる医薬品にも関する。
【0037】
更なる実施態様において、本発明は、副鼻腔炎および/または鼻副鼻腔炎および/または鼻洞の炎症、特に各症例において急性の場合、特に副鼻腔炎および/または鼻副鼻腔炎および/または鼻洞の炎症を治療および予防するために、特に各症例において急性の場合に使用または適用されるための医薬品に関する。
【0038】
本発明の薬剤は、試験対象病原菌がENO関連であるがゆえに、細菌が局部的または局所的に直接および即座に退治し得るあらゆる場合に、同様に極めて適している。
従って、本発明の薬剤は、生物学的に100%弱めるため、(全身的適用に加えて)汚染された部分に直接、例えば殺菌液の形態で、あるいは勿論、人間と動物の両方において、
皮膚および粘膜に直接局所適用するためにも好ましく使用できる。この目的のために、様々な形態の適用が考慮されている。調剤は、人間の皮膚科部門および獣医医療において、溶液、クリーム、軟膏およびエマルジョンとして特に好適である。その場合、本発明の薬剤は、皮膚の疾患部分に直接適用できる、および/または飽和湿布、詰綿またはタンポナーデの形態で使用できる。
【0039】
勿論、本発明の薬剤の適用は、全呼吸器系の疾患全体、特に上気道、好ましくは咽喉、鼻および鼻洞粘膜部分において特に関係している。鼻のすすぎ洗い、特に塩を使ったすすぎ洗い、例えば生理学的または高浸透圧塩溶液と組み合わせた鼻のすすぎ洗いは特に重要である。本発明によれば、本発明の薬剤を含有する鼻噴霧剤もここに含まれる。
【0040】
新規な適用の可能性は、咽頭感染の場合のアルコール液およびうがい液から、粉末吸入製剤またはネブライザー吸入製剤に至るまで広範囲である。
更なる適用の分野には、例えば本発明の薬剤を充填した詰綿または詰綿紡糸形態の創傷/歯茎用ドレッシングが含まれる。本発明の薬剤を含有する溶液による耳のすすぎ洗いも、外耳道の感染の場合には想定できる。
【0041】
従って、本発明は、全呼吸器官の疾患、特に上気道、特に咽喉、鼻および鼻洞粘膜部分の疾患および呼吸器疾患、特にムコビシドーシス(嚢胞性線維症)、特にそれらを治療および予防するために使用または適用されるための医薬品に関する。ムコビシドーシスの治療には特に有効であり得る(
図7Aおよび7Bを参照のこと)。
【0042】
更に好ましい実施態様は、本発明の薬剤を含有する、特に栄養組成物形態の栄養補助食品に関する。本発明の食品または食材成分(水を含む)は、例えば2002年1月28日の規則(EC)番号178/2002に(決定的ではないが)定義されているパン製品、飲料水および乳幼児用食品製剤などである。本発明の栄養補助食品は、生理学的に適合性のある適切な担体とミックスしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、本発明の乾燥抽出物による、ヒト(FluA)および豚(pFluA)インフルエンザウイルスの増殖阻害を示す。
【
図2】
図2は、本発明の乾燥抽出物による、ウイルスの増殖阻害を示す。
【
図3】
図3は、本発明の乾燥抽出物の抗炎症作用を示す。
【
図4】
図4は、本発明の乾燥抽出物の抗炎症作用を示す。
【
図5】
図5は、本発明の乾燥抽出物の抗炎症作用を示す。
【
図6】
図6は、本発明の乾燥抽出物の抗炎症作用を示す。
【
図7A】
図7Aは、本発明の乾燥抽出物による塩化物分泌の活性化、および繊毛博動頻度の高まりを示す。
【
図7B】
図7Bは、本発明の乾燥抽出物による塩化物分泌の活性化、および繊毛博動頻度の高まりを示す。
【
図8】
図8は、本発明の乾燥抽出物の抗炎症作用を示す。
【
図9】
図9は、本発明の乾燥抽出物の抗炎症作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の医薬製剤は単位調剤の形態で生産できる。つまり、製剤は個々の部分、例えばカプセルやアンプルの形態で存在し得るし、その場合、乾燥植物抽出物の有効成分量は個々の用量の分数または倍数に対応する。単位調剤は、例えば単一用量の1、2、3または4倍、あるいは単一用量の1/2、1/3または1/4であり得る。単一用量は、本発明の乾燥植物抽出物(活性成分)を1回の適用で投与される量および通常は1日分の全用量あるいは1日分の用量の半分、3分の1または4分の1の量を含むのが好ましい。好ましくは錠剤の形態で、特に朝、午後、夕方、可能であれば食事と一緒に1日3回摂取するのが好ましい。
【0045】
更に好ましい実施態様では、EP1392337に開示されるように、カルシウムコーティングした錠剤の調剤組成物が選択できる。
非毒性かつ不活性で医薬的に好適な担体物質には、固体、半固体または液体の希釈剤、充填剤およびあらゆるタイプの調製補助剤、例えばa)充填剤および希釈剤、例えば澱粉、ラクトース、蔗糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、マルトデキストリンおよび珪酸、分散度の高い二酸化珪素、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、セルロース粉末、微結晶セルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、c)湿潤剤、例えばグリセロール、d)破砕剤、例えば寒天、炭酸カルシウムおよび炭酸ナトリウム、e)希釈抑制剤、例えばパラフィン、f)再吸収加速剤、例えば第四級アンモニウム化合物、g)加湿剤、例えばセチルアルコール、モノステアリン酸グリセロール、h)吸着剤、例えばカオリンおよびベントナイト、およびi)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウムおよび固体ポリエチレングリコール、並びにa)からi)に列挙した物質の混合物が含まれることが理解されるべきである。
【0046】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬および顆粒には、通常の被覆剤および被膜剤が提供されてもよく、任意に不透明度促進剤、例えば限定されないがヒプロメロース、微結晶セルロース、ステアリン酸、二酸化チタンなどを含んでもよく、腸管の特定部分のみまたは好ましくは腸管の特定部分に、必要ならば徐放形態で有効成分(類)を放出するように構成されてもよく、その場合、例えばポリマー成分およびワックスが包埋剤として使用されてもよい。
【実施例】
【0047】
以下の実施例は本発明を単に説明するためだけのものであり、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
これ以降、「乾燥抽出物(TE)」は、本発明により生産される乾燥植物抽出物を意味する。
【実施例1】
【0048】
本発明の乾燥抽出物の抗ウイルス活性は、数多くのインビトロ試験により確認された。
かかる試験では、本発明の乾燥抽出物の一般的細胞破壊(細胞毒)効果について、既知の製品であるSinupret(登録商標)(アルコール/水)とまず比較した。適切な細胞株を1時間様々なウイルスと培養した後、感染した細胞株を異なる濃度で処置し、ウイルス繁殖への効果を測定した。
【0049】
抗ウイルス活性は、プラーク減少法(FluA、HRV14、RSV)およびウイルス特異的酵素免疫学的測定法(ELISA;Adeno5、RSV)によって、細胞変性効果の検出により、インビトロで定量的に測定した。
【0050】
細胞変性効果の検出の際、規定されたウイルス液で、集密的に成長させたウイルス感受性細胞を感染させた(感染多重度‐MOI)。1時間培養後、ウイルス接種材料を取り出し、感染細胞層を洗浄した。次に、種々の濃度の生理学的物質を添加した。未処理のウイルス対照中に70−90%細胞変性効果(CPE)(破壊された細胞部分として現れる)が顕微鏡下で観察されるまで、各試験バッチを培養した。破壊された細胞部分の面積を100%感染として定義した。比較のため、分析対象物質の阻害効果を阻害パーセント(阻害%)として示せるように、各試験バッチの細胞面積を評価した。
【0051】
プラーク減少法の場合、規定されたウイルス液で、集密的に成長させたウイルス感受性細胞を感染させた(感染多重度‐MOI)。1時間培養後、ウイルス接種材料を取り出し、感染細胞層を洗浄した。次に、種々の濃度の生理学的物質および固体培地成分(アガロースまたはメチルセルロース)を添加し、培養を継続した。積層培地中の固体成分により感染部分の境界を定めることにより、一連の感染細胞(「プラーク」)を産出した。未処理のウイルス対照中に一定のプラーク数(MOI)が顕微鏡下で観察されるまで、各試験バッチを培養した。細胞層を固定および染色することにより、ウイルスプラークを暗い色の細胞層中に明るい輪として見ることができる。プラーク数は画像処理システムの助けを得て測定した。未処理対照のプラーク数を100%感染として定義した。比較のため、試験物質の阻害効果を阻害パーセント(阻害%)として提示できるように、各試験バッチのプラーク数を評価した。
【0052】
ウイルス生産をELISAにより分析した。特定のウイルスに対する抗体を有する試験片は、感染した細胞株の細胞培養上清中のウイルスと結合する。反応を可視化するため、パーオキシダーゼで標識した病原菌特異的検出抗体を導入した。基質/クロモゲンおよび過酸化水素並びにテトラメチルベンジジンを添加した後、発色反応が生じる。発色の強度を測光法により測定したが、それはウイルス抗原の量に比例した。規定されたウイルス液で集密的に成長させたウイルス感受性細胞を感染させた(感染多重度‐MOI)後、感染/処理細胞のウイルス生産を分析した。1時間培養後、ウイルス接種材料を取り出し、感染細胞層を洗浄した。次に、種々の濃度の生理学的物質を添加した。未処理のウイルス対照中に70−90%細胞変性効果(CPE)が顕微鏡下で観察されるまで、各試験バッチを培養した。
【0053】
ウイルス繁殖の有意な阻害、すなわちウイルス量の減少が全試験で証明された(
図1を参照のこと)。
本発明の乾燥抽出物は、ヒト(FluA)および豚(pFluA)インフルエンザウイルスの増殖を阻害する。ウイルス(量)を50%阻害(減少)させるには、Sinupret/ml(FluA)の124.8μgおよびSinupret/ml(pFluA)の43.4μgの濃度があれば十分である。本発明のSinupret乾燥抽出物は、ウイルス株であるHRV14、Adeno5およびRSVに対して、Sinupret(登録商標)(アルコール/水)よりも低いEC50、従ってより高い効果を示した(
図1および2を参照のこと)。
【0054】
【表1】
【実施例2】
【0055】
Sinupretの抗炎症作用は動物モデルで確認できた。例えば、ラット(雄のウィスターハンラット、220−230g)のカラゲーン誘発足浮腫がテストモデルとして選択された。このモデルでは、カラゲーンにより引き起こされた足浮腫または胸膜炎に対する試験物質の阻害効果を測定することにより、その抗炎症効果を調べることが可能であった。参照物質として、(RS)−2−[4−(2−メチルプロピル)フェニル]プロパン酸(イブプロフェン(登録商標))および2−[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸(インドメタシン、“indo”)が使用された。当該試験では、ケース毎に10匹のラットをイブプロフェン(登録商標)、インドメタシン、Sinupret(登録商標)乾燥抽出物(SIN TR)またはSinupret(登録商標)薬混合(SIN、商業的に入手可能)で処置し、1時間後にカラゲーンを注射した。試験物質および参照物質による浮腫形成阻害を、カラゲーン注射後様々な時点で測定したが、その場合、カラゲーンのみで処置された動物の足の体積を対照(ビヒクル=ブランク対照)として使用した。かかる試験の結果は表1および表2並びに
図3から
図6に示しており、以下に説明を記載する。
【0056】
図3:カラゲーンモデルにおいて、本発明の乾燥抽出物は、カラゲーン注射後僅か30分で、かかる初期の時点ではイブプロフェン(登録商標)は抗炎症効果をまだ全く示していないにも拘わらず、カラゲーン誘発の足浮腫を阻害し、更に具体的には、Sinupret薬混合よりも広範囲に上述の足浮腫を阻害することが分かった。浮腫誘発の1時間後および2時間後においてさえ、本発明の乾燥抽出物の抗炎症効果は、イブプロフェン(登録商標)およびSinupret(登録商標)薬混合(SIN)よりも依然として強力であった。
【0057】
4時間後に測定された、カラゲーン誘発胸膜炎に対するSinupret(登録商標)(SIN)の効果を、炎症マーカー(PGE
2、LTB
4、TNFアルファ、IL1ベータ)に基づいて表1に示す。
【0058】
ラット(グループあたり10匹)はそれぞれ100mg/kgまたは500mg/kgのSIN並びに比較のために5mg/kgのインドメタシンおよびブランクで処置し、1時間後にカラゲーンを注射した。
【0059】
「炎症細胞」は、PMN(多形核好中球)蓄積/浸潤に相関する。
統計:平均+/−SEM、n=10、**p<0.01;***p<0.001対ビヒクル(ブランク)(Tukeyの検定)、p<0.05は統計学的に有意である。
【0060】
グラフによる比較説明を
図4に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
4時間後に測定された、カラゲーン誘発胸膜炎に対するSinupret(登録商標)乾燥抽出物(SIN TR)の効果を、炎症マーカー(PGE
2、LTB
4、TNFアルファ、IL1ベータ)に基づいて表2に示す。
【0063】
ラット(グループあたり10匹)はそれぞれ100mg/kgまたは500mg/kgのSIN TR並びに比較のために5mg/kgのインドメタシンおよびブランクで処置し、1時間後にカラゲーンを注射した。
【0064】
「炎症細胞」は、PMN(多形核好中球)蓄積/浸潤に相関した。
統計:平均+/−SEM、n=10、**p<0.01;***p<0.001対ビヒクル(ブランク)(Tukeyの検定)、p<0.05は統計学的に有意である。
【0065】
【表3】
【0066】
グラフによる比較説明を
図4に示す。
ラットの肺のCOX−2蛋白質発現に対するSinupret(登録商標)薬混合(SIN)およびSinupret乾燥抽出物(SIN TR)の効果を
図5に示す。
【0067】
ラット(グループあたり10匹)はそれぞれ100mg/kgまたは500mg/kgのSINまたはSIN TR並びに比較のために5mg/kgのインドメタシンおよびブランクで処置し、1時間後にカラゲーンを注射した。
【0068】
サイトカインに対するSinupret(登録商標)薬混合(SIN)およびSinupret乾燥抽出物(SIN TR)の効果を
図6に示す。
ラット(グループあたり10匹)はそれぞれ100mg/kgまたは500mg/kgのSINまたはSIN TR並びに比較のために5mg/kgのインドメタシンおよびブランクで処置し、1時間後にカラゲーンを注射した。炎症マーカーであるIL1ベータおよびTNFアルファは、カラゲーン注射後4時間後に測定した。ケース毎にラットの肺から得た30μgの蛋白質を使って、10%SDSポリアクリルアミドゲル上でウェスタンブロットを行い、COX−2を分析した。
【0069】
統計:平均+/−SEM、n=10、**p<0.01;***p<0.001対ビヒクル(ブランク)(Tukeyの検定)、p<0.05は統計学的に有意である。
結論:本発明のSinupret乾燥抽出物は、少なくともPGE2に関し、Sinupret(登録商標)薬混合と比較して、PGE2の形成を特に有利かつ有意に阻害することが証明された。更に、本発明のSinupret乾燥抽出物(SIN TR)は、既知のSinupret(登録商標)薬混合(SIN)と比較して、低用量においてより有効である。
【実施例3】
【0070】
本発明の乾燥抽出物は、局所使用により塩化物分泌を活性化すること、そしてそれはCFTRの活性化を通して行う可能性が高いことを、以下の実施例が示している。更に、本発明の乾燥抽出物は、繊毛博動頻度を高める。
【0071】
素材:細胞培養:ヒトの気管支上皮細胞をロンザ(ワーカースビル、メリーランド)から得て、それをロンザ(ワーカースビル、メリーランド)から得た気管支上皮細胞成長培地で増殖させた。本発明の乾燥抽出物250mgを50%エタノール1mlに溶解し、35kHzの超音波で30分処理し、その後室温で30分、3,000gで遠心分離した。上澄みを吸引除去した。アミロライド(シグマ、セントルイス、ミズリー)を蒸留脱イオン水に溶解し、1,000倍に希釈した。フォルスコリン(Kaliokemm、EMD、サンディエゴ、カリフォルニア)をDMSOに溶解し、1,000倍に希釈した。
【0072】
Ussingチャンバー(Physiology Instruments、サンディエゴ、カリフォルニア)を使用したが、このチャンバーは、37度で実行されるTranswellインサート(Corning Life Science)および順抵抗を設定した後ゼロボルトの電圧端子(VCC600)を有する単層(Physiology Cal Instruments, サンディエゴ、カリフォルニア)を含んでいた。Transwellフィルターを38度で溶液中に配置し、該溶液には95%酸素/5%CO
2を継続的に注入した。経上皮抵抗(RT)は、コンピュータープログラム(Physiology Instruments、サンディエゴ、カリフォルニア)を使用し、オームの法則に従って測定された当該単層を通して、640ms、バイポーラ−型10mV電位で調整した。定義的には、良好な結果はアニオンの分泌またはカチオンの吸収である。該実験は、HBE細胞培養で少なくとも3回繰り返した。
【0073】
使用した電解質溶液(mM):120NaCl、25NaHCO
3、3.3KH
2PO
4、0.8K
2HPO
4、1.2MgCl
2、1.2CaCl
2および10ブドウ糖。
繊毛博動頻度(CBF)測定は、ウッドワース(Woodworth)等(Woodworth BA、Zhang S、Tamashiro E、亜鉛はカルシウム依存的に繊毛博動頻度を増加させる、Am J Rhinol Allergy 24:6−10、2010)の方法に従って行った。画像は、63xレンズ(A 602f−2型、高速モノグラムデジタルビデオカメラ、Basler AG、アーレンスブルク、ドイツ)を使用して、Leica Microsystems,Inc.(バンノックバーン、イリノイ)によって作成された。乾燥抽出物は、濃度を高めながら、Ussingチャンバー内のHBE細胞の基底外側面に適用し、その後アミロライドおよびフォルスコリンを添加した。
【0074】
図7aおよび
図7bにおいて、アミロライドおよびフォルスコリンを添加した後、乾燥抽出物によって経上皮短絡回路電流(I
SC)に変化が生じ(7A)、その結果、用量依存的に繊毛博動頻度(CBF)測定値が上昇し、塩化物イオンの分泌がそれに伴うことが示されている。
【0075】
粘膜繊毛クリアランス(MCC)が達成できるのであるから、上記の結果は、例えば鼻内噴霧によって、本発明の乾燥抽出物が有効に使用できることを証明している。
結論:本発明の乾燥抽出物は、呼吸器系疾患の治療、特にムコビシドーシス(嚢胞性線維症)の治療に好適である。
【実施例4】
【0076】
本発明のSinupret乾燥抽出物およびSinupretドロップ(アルコール/水(「Sinupret OD」))による抗炎症効果を以下に調査した。
カラゲーン誘発足浮腫(上記を参照のこと):試験動物(n=8/グループ)の体重を空腹状態で測定し、後足の基礎体積を測定した。動物には試験物質(10mL/kg(体質量))を与えた(Sinupret乾燥抽出物(TE):5mg/kg、ドロップ1mL/kg中の薬混合の量と等価;50mgTE/kg、1xヒト等価量(1xHED)に対応;Sinupretドロップ(Sinupret OD):1mLOD/kg、1xヒト等価量(1xHED)に対応;2.5mLOD/kg、50mgTE/kg中の薬混合の量と等価;インドメタシン:陽性対照として20mg/kg;ビヒクル対照として10%v/vエタノール)。60分後、カラゲーン(生理食塩溶液中の1%w/v溶液0.1mL)を動物の左後肢に(足底から)皮下注射した。全動物について、カラゲーン注射の前(−1時間)および後(試験1:+1時間(
図8)、試験2:+15分、+30分、+1時間(
図9))に、プレスチモグラフィーで足体積を測定した。ビヒクルコントロールと比較した足膨張の阻害パーセントを各試験動物について個別に計算した。
【0077】
結果は
図8に比較して示す(1時間後の炎症阻害)。
図8:A:Sinupret TEおよびSinupret ODは、1xヒト等価量に等しい用量でそれぞれ投与した。Sinupret TEはSinupret ODよりも迅速かつ強力な抗炎症効果を有する。Sinupret ODによる炎症阻害ではなく、Sinupret TEによる炎症阻害が、1時間後、既知の抗炎症薬であるインドメタシンの阻害効果に匹敵する。
【0078】
B、C:Sinupret TEおよびSinupret ODの投与量は、生産に使用した薬混合(DM)の各量(B:23.6mg/kg、C:223mg/kg)に基づき同等である。Sinupret TEはSinupret ODと比較して迅速かつ強力な抗炎症効果を有する。Sinupret ODによってもたらされる炎症阻害ではなく、Sinupret TEによってもたらされる炎症阻害が、1時間後、既知の抗炎症薬であるインドメタシンによってもたらされる阻害効果に匹敵する。
【0079】
結果は
図9に比較して示す(+15分、+30分、+1時間後の炎症阻害)。
図9:Sinupret TEおよびSinupret ODの投与量は、生産に使用した薬混合の各量(薬混合23.6mg/kg)に基づき同等である。Sinupret TEは、Sinupret ODと比較して、より早くより強力な作用開始により特徴付けられる。Sinupret ODは30分後から炎症を阻害するにすぎない。Sinupret TEは、既知の抗炎症薬であるインドメタシンと比べ、全試験期間に亘って、比較的強力かつ迅速に炎症を阻害する。
【実施例5】
【0080】
以下の実施例は、複数成分混合からの具体的なマーカー化合物を記述する。
実施:試料は全て、各抽出工程後直ちに抽出、濾過し、600mg/L(30体積%メタノール)の濃度で質量分析法により分析した。内部標準としてメチルパラベンを使用した。試料は2回処理し2回分析した。以下のパラメータ−および装置を使用した。
【0081】
MS:5600 Triple ToF(ABSciex);HPLC:Agilent 1290。
ソフトウェア:Analyst TF 1.5.1、MultiQuant 2.1.1、MarkerView 1.2.1。
【0082】
固定相:Zorbax RRHD Eclipse Plus C18、2.1x50mm、1.8μm。
【0083】
【表4】
【0084】
A=0.1%のギ酸水溶液;B=アセトニトリル
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
参照基準によって定量化される限り、成分量は、[g]で表される絶対量として特定化される。それ以外、成分量は、(工程f)後の)各全抽出物との関係で[%]で特定化される。データは研究室規模のバッチA1および生産規模のバッチP1から得られた。シグナルは陰イオン化により検出した。
【0088】
【表7】
【0089】
参照基準によって定量化される限り、成分量は、[g]で表される絶対量として特定化される。それ以外、成分量は、(工程f)後の)各全抽出物との関係で[%]で特定化される。データは研究室規模のバッチA1および生産規模のバッチP1から得られた。シグナルは陰イオン化により検出した。