特許第6039679号(P6039679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アエスキュラップ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039679
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】折畳み可能な先端部を備えた吻合用器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20161128BHJP
   A61B 17/11 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61B17/11
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-540423(P2014-540423)
(86)(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公表番号】特表2015-504330(P2015-504330A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2012071941
(87)【国際公開番号】WO2013068354
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年10月16日
(31)【優先権主張番号】102011055236.7
(32)【優先日】2011年11月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイスハウプト ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ロスワイラー クリストフ
【審査官】 木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−521995(JP,A)
【文献】 特表2010−536398(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0128672(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0111704(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/006937(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0152861(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/125146(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/083026(WO,A2)
【文献】 国際公開第2011/083027(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/11
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空臓器において生体組織を結合するための外科用器具(126、128)であり、
器具シャンク(12)と、
第1および第2器具要素(46,48,46’,46’’,46’’’)
を備え、
前記器具要素は前記器具シャンク(12)に互いに動作可能に配置または形成され、それぞれ少なくともひとつの環状電極(28,58,58’,58’’)を具備し、
前記電極は互いに最小の間隔を画定し、互いに対向し、かつ、互いに向かい合っており、
前記第1器具要素(48)は前記器具シャンク(12)の遠位端(22)に配置または形成され、
前記第2器具要素(46,46’,46’’,46’’’)は前記第1器具要素(48)とは離れて位置し、
前記第2器具要素(46,46’,46’’,46’’’)は、操作位置において周縁方向に距離をあけ、および少なくともひとつの前記電極(28,58,58’,58’’)が固定される自由端部分で径方向に変形するように形成され、傘の形状に径方向に変形または外側に傾向する、いくつかの工具要素部材(74)を備えることで、前記第2器具要素(46,46’,46’’,46’’’)が除去位置へ後退できる前記近接位置に移動可能であるように構成され、
前記除去位置において前記器具要素部材(74)は折畳位置を取り、前記折畳位置においては前記第2器具要素(46,46’,46’’,46’’’)少なくともひとつの前記電極(58,58’,58’’)により画定される環状周縁後退線(154)が、前記近接位置において少なくともひとつの前記電極(58,58’,58’’)により画定される環状周縁接近線(152)より短くなることを特徴とする、
外科用器具。
【請求項2】
前記除去位置において前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)により画定される第1器具線(156)が、前記操作位置において前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)により画定される第2器具線(158)より短いことを特徴とする、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記操作位置において前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)を固定する保持手段(82;82’)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記保持手段(82;82’)と前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)とが、互いに対して移動可能に配置されることを特徴とする、請求項3に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記器具要素部材(74)が前記操作位置から前記除去位置および/または前記操作位置から前記折畳位置へ前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)を移動させる折畳機構(200;200’;200’’;200’’’)形成することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項6】
前記折畳機構(200;200’;200’’;200’’’)が、前記保持手段に前記操作位置から前記折畳位置および/または前記操作位置から前記折畳位置へ移動させるための動力を前記保持手段(82;82’)に伝達するための第1力伝達要素(40)さらに備えることを特徴とする、請求項5に記載の外科用器具。
【請求項7】
前記保持手段(82;82’)と前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)へ動力を伝達する第2力伝達要素(38)とが、前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)を前記除去位置から前記近接位置および/または前記近接位置から前記除去位置へ、変形した前記器具要素部材(74)とともに移動させるために、互いに移動可能に配置されることを特徴とする、請求項6に記載の外科用器具。
【請求項8】
前記保持手段(82;82’)および/または前記第1および/または前記第2力伝達要素(38;40)が前記シャンク(12)に対して移動可能に配置されることを特徴とする、請求項6または7に記載の外科用器具。
【請求項9】
前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)が、第2電極(58;58’)に取り付けられる、または前記第2電極の一部を支持する少なくとも2つの器具要素部材(74;74’;74’’;74’’’)を備えることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項10】
前記器具要素部材(74;74’;74’’;74’’’)が、少なくともその一部が径方向に突出するアームの形状に構成されることを特徴とする、請求項または9に記載の外科用器具。
【請求項11】
少なくとも2つの前記器具要素部材(74;74’;74’’;74’’’)が前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)の遠位端に配置または固定され、その自由端(150;150’;150’’;150’’’)が近位方向または実質的に近位の方向に指向することを特徴とする、請求項1、9、10のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項12】
前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)がカバー、キャップ、傘のいずれかの形状を有し、前記器具要素部材(74;74’;74’’;74’’’)が、径方向又は実質的に径方向に延伸する、第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)の直線状か曲線状のそれぞれのスリット(72;72’;72’’;72’’’)により互いに分離されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項13】
前記第2器具要素(46)の前記電極(58;58’;58’’’)が、変形可能な周縁部を備える電極リング(60)の形状に形成されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項14】
前記電極リング(58;58’)が、径方向に溝を有することを特徴とする、請求項13に記載の外科用器具。
【請求項15】
前記電極リング(58’)が、互いにスリット(72’)により分離される複数の電極リング部分(164)備え、それぞれの前記電極リング部分は器具要素部材(46’)の自由端(150’)に配置または形成されることを特徴とする、請求項14に記載の外科用器具。
【請求項16】
前記電極リング(58’’)は全円状で、弾性または拡張性のある素材から作られることを特徴とする、請求項13に記載の外科用器具。
【請求項17】
前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)は、前記操作位置において前記保持手段(82;82’)に対して付勢される前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)を保持する付勢手段(80;80’;80’’)を備えることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項18】
前記付勢手段(80;80’;80’’)が、少なくとも1つの付勢部材(78;78’;78’’)を含むことを特徴とする、請求項17に記載の外科用器具。
【請求項19】
少なくとも1つの前記付勢部材(78;78’;78’’)は、少なくともその一部がばね弾性要素の形状に形成されることを特徴とする、請求項18に記載の外科用器具。
【請求項20】
少なくとも2つの前記器具要素部材(78)の少なくとも一部が、付勢部材(76)備えまたは形成することを特徴とする、請求項18または19に記載の外科用器具。
【請求項21】
前記保持手段(82)が前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)(14)から径方向に外側へ指向するように動作するストップ(85)を備え、
前記操作位置において、少なくとも2つの前記器具要素部材(74;74’;74’’;74’’’)または前記第2器具要素(46;46’;46’’;46’’’)の前記電極(58;58’;58’’’)が、前記ストップと直接的または間接的に隣接する状態であることを特徴とする、請求項3〜20のいずれか一項に記載の外科用器具。
【請求項22】
前記保持手段(82)が、前記縦軸(14)を囲むとともに、前記ストップ(85)を形成または備える、環状または実質的に環状のストップ部材(87)を含むことを特徴とする、請求項21に記載の外科用器具。
【請求項23】
生体組織を切断するための切断要素(88)を有し、好ましくは、前記保持手段(82)は前記切断要素(88)を備えることを特徴とする、請求項1〜22のいずれか一項に記載の外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、生体組織結合用の外科用器具に関する。より具体的には、シャンク、ならびに第1および第2の器具要素を備え、該要素は互いに対して移動可能に配置され、あるいは構成されており、各要素は電極を備え、電極は器具要素の近接位置において要素間の最短の距離を画定し、互いに対向するとともに向かい合っている。第1器具要素はシャンクの遠位端に配置され、あるいは形成される。
【背景技術】
【0002】
冒頭で述べたような種類の外科用器具は、例えばドイツ実用新案第20 2010 013152号などで知られている。前記器具により、血管や腸管部分などの中空器官を、生体に優しい方法でクリップや縫合材料を使用せずに結合することができる。特に端々(end−to−end)、側端(side−to−end)、および側々(side−to−side)吻合を行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記器具を、生体から除去することが問題となる。特に第2器具要素に関して、2つの生体組織部分を結合したのち、該器具が生成した2つの生体組織部分間の吻合部を過伸しないようにし、手術結果に悪影響をもたらすことなく除去することが重要である。
【0004】
よって、本発明の目的は、冒頭で述べたような種類の外科用器具を改良することで、電流を流すことで生成する生体組織部分の吻合にかかる、外科用器具を生体から取り除く際の機械的負荷を最小限にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、冒頭で述べたような種類の外科用器具の発明によって達成される。第2器具要素が、近接位置へ移動できる操作位置から、除去位置に移動するように構成され、該除去位置において、第2器具要素の電極に画定される周縁後退線(peripheral withdrawing line)は、近接位置において電極によって画定される周縁接近線(peripheral approximating line)より短い。
【0006】
冒頭で述べたような種類の外科用器具のより進化した形態においては、近接位置で電極により画定される周縁線の長さを変えることができ、すなわち除去位置への移動の際に、短くすることが可能となる。これにより特に、結合部分すなわち吻合部を変形、過伸することなしに第2器具要素を吻合部分から除去することが可能となるように、同様に近接位置から除去位置へ移動する際に第2器具要素の外観、特にサイズに関して変更することを許容する。ドイツ実用新案第20 2010 013152号で知られるように、第2器具要素を単純に折りたたむだけでは、器具を除去する際に吻合部は、少なくとも変形してしまう。若干の伸長を完全になくすことはできない。近接位置から除去位置へ移動する際に電極の周辺線の長さを変更することにより、器具要素の範囲において特にシャンクによって画定される縦軸に対する第2器具要素の角位置とは無関係に、第2器具要素に画定される有効表面が減少する。したがって、前記外科用器具を使用すれば、生体組織部分を従来器具より生体に優しい態様で結合できる。
【0007】
冒頭で述べたような種類の外科用器具においては、除去位置での第2器具要素に画定される第1周縁線が、操作位置での第2器具要素に画定される第2周縁線より短いと好ましい。このように形状や外観を変更できる第2器具要素では、吻合部分を変形や過伸することなく器具によって生成された結合箇所を通って第2器具要素を移動することができる。
【0008】
器具の操作は、操作位置において第2器具要素を固定するための保持手段を具備する点で特に、さらに改良することができる。したがって、保持手段により、器具要素が操作位置から除去位置に不注意に移動してしまうことがないことが特に保障される。
【0009】
保持手段および第2器具要素がお互いに対して移動可能に配置されるのが、利点である。例えば、保持手段および第2器具要素のこのような相対移動を、器具要素を操作位置から除去位置へ移動するのに利用することができる。
【0010】
本願の別の実施形態によると、外科用器具は第2器具要素を操作位置から除去位置、および/または除去位置から操作位置へ移動するための折畳み機構を具備していてもよい。折畳み機構により、第2器具要素の形状および/または構成を選択的に変更でき、周縁接近線を周縁後退線にまで減少させることができ、および/または、第2周縁器具線を第1周縁器具線までに減らすことができる。
【0011】
折り畳み機構は、保持手段を操作位置から除去位置および/または除去位置から操作位置へ移動させる稼働力を保持手段に伝達するための第1力伝達要素を具備するとき、特に容易に稼働することができる。よって、このように指定した所定の方法においては、第1力伝達要素により、保持手段を例えば純粋に機械的に稼働するか移動させることを可能にし、同保持手段および器具をそれぞれ動かし、操作位置あるいは近接位置から除去位置および/または除去位置から操作位置あるいは近接位置へ移動させることができる。
【0012】
有利なことには、保持手段および、第2器具要素へ稼働力を伝達するための第2力伝達要素は、同器具を操作位置から近接位置へ、および/または近接位置から操作位置へ移動させるようにお互いに対して動作可能に配置される。このように、指定された所定の方法およびお互いに独立して折畳機構および第2器具要素を稼働させることが特に可能である。
【0013】
第2器具要素および保持手段がお互いに対して動作可能および/またはねじり可能および/または螺合可能であるとき特に、該外科用器具の構造的デザインは単純となる。
【0014】
保持手段および/または第1および/または第2力伝達要素は、シャンクに対して動作可能に配置されるときが好ましい。このようにすれば、例えば、手術を行う外科医がシャンク部で器具をつかむことができ、例えば生体組織を結合したり、または指定された所定の方法で患者の身体から器具を取り除くために、保持手段または第1または第2力伝達部を選択的に、適切に所望の方法で稼働することができる。
【0015】
本願の別の好ましい実施例によると、該器具は折畳機構および/または第2力伝達要素および/または保持手段に取り付けられたアクチュエータ機構を備えることができ、折畳機構を稼働、および/または、第2力伝達要素および/または保持手段をシャンクに対して移動させる。アクチュエータ機構は特に、折畳機構あるいは第2力伝達要素あるいは保持手段に対し直接的または間接的に取り付けられるかまたは同アクチュエータ機構と相互作用する、1つまたは複数のアクチュエータ要素かアクチュエータ部材を備えており、好ましくは選択的にそれらを稼働させる。
【0016】
好ましくは、第2器具要素は、第2電極に取り付けられるかその一部を支持する、少なくとも2つの器具要素部材を具備する。好ましくは、特に同一の方法で設計することができる複数の器具要素部材が設けられる。第2器具要素が同要素に画定される長手軸に関して回転対称であるとき有利である。特に、器具要素部材がお互いに対して移動可能に配置または構成されることで、該第2器具要素の外輪郭か外部形状を容易に変更することができる。
【0017】
好ましくは、少なくとも2つの器具要素部材は、第2器具要素により画定される長手軸に対して径方向に移動可能に配置され、あるいは構成される。例えば、器具要素部材の自由端が操作位置から除去位置へ移動する際に長手軸にむかって移動可能であることが好ましい。
【0018】
少なくとも2つの器具要素部材が、少なくとも一部が径方向に延伸するアームの形状をしていることが好ましい。これらの器具要素部材は、例えば第2器具要素を傘やカバーやスリーブの形状に切り取ることで容易に形成できる。
【0019】
できるだけ安定した構成を得るために、少なくとも2つの器具要素部材が第2器具要素の遠位端に配置され、又は固定され、その自由端が近位か略近位方向へ指向することが好ましい。このように、器具要素部材の自由端は電極部を備えるか、近位方向に指向し、および遠位方向へ指向する第1器具要素の電極と相互作用するように構成される電極に取り付けられることができる。
【0020】
第2器具要素の製造は、少なくとも2つの器具要素部材が径方向又は略径方向に延びる直線あるいは曲線のスリットによりお互いに分離されたときは、特に単純となる。これにより、器具要素部材は、例えば、スリットが間に設けられ余裕が生まれるため、お互いに向かって、特にまた長手軸にむかって移動することができる。言い換えると、操作位置から除去位置へ移動する際、周方向に器具要素間の距離を減少させることを許容するような、スリットの規定幅があることが好ましい。
【0021】
第2器具要素の電極が、変形可能な周縁部を備える電極リングの形状であることが好ましい。こういった電極リングにより、単純な方法で周縁接近線が周縁後退線より長くなることを許容することができる。
【0022】
電極リングが径方向にスリットを備えることが好ましい。特に複数のスリットを備えることができる。スリットがひとつのみ提供される場合でも、電極により画定される周縁線の長さを変更することができるように、電極リングの自由端を互いに近づくように、またはお互いから離れるように動かすことができる。同様にこの構成は、電極リングを複数のスリットにより適切な数の電極部に細分することでも、得ることができる。
【0023】
本発明のより好ましい実施例によると、電極リングは中空であり電極リング経路を画定し、および、電極リング経路においては、スリットのある電極リングの自由端と連結するように電極リングバランス要素が動作可能に固定される。電極リングバランス要素により、連続的環状電極を、スリットによりお互いに分離された電極リングの自由端間の間隔とは関連せずに形成することができる。ここで電極は、スリットの部分、すなわち電極リングバランス要素が特に電極リングの自由端から突出する領域において、電極リング自体より若干小さい外径を持ち得る。
【0024】
電極リングが、お互いがスリットで分けられ、器具要素部材のそれぞれの自由端に配置または形成される複数の電極リング部材を備えるとき好ましい。例えば、複数の器具要素部材において、適切な数の電極リング部を用いて形成できる。これにより特に、電極リング部材は近位方向へ指向する電極表面部を画定でき、そして電極は全体として選択的に離れるように配置され、または、それぞれお互いに隣接する電極リング部と接触するような、複数の電極リング部を具備することになる。よって特に電極の周縁線は、操作位置から除去位置へ移動する際の器具要素部材の移動により、所望の方法で減らすことができる。
【0025】
特に簡単な方法で、すなわち第2器具要素部材が操作位置か除去位置のどちらかに位置するのに関わらず、電極リングが全円状で弾性を有する、あるいは拡張可能な素材から成る場合、連続的な電極リングを形成できる。好ましくは、電極リングを形成する素材が導電性である。特にはニチノールを含む素材かニチロールであってもよく、それにより電極に画定される周縁線について、8%の変更まで許容する弾性を得られる。
【0026】
また、第2器具要素が、操作位置において保持手段に対して第2器具要素を固定するための付勢手段を備えるのも有利であり得る。付勢手段は一方で、第2器具要素の安定性を高めることができ、また一方では、例えば第2器具要素に対して保持手段を動かしている間に、器具要素が操作位置から除去位置へ自動的に移動することを許容する。
【0027】
付勢手段の構造的デザインは、それが少なくともひとつの付勢部材を含むという事実により容易にすることができる。2つかそれ以上の付勢部材であってもよい。
【0028】
少なくともひとつの付勢部材が、少なくとも部分的にばね製弾性要素の形状であるとき、外科用器具を特に容易に製造することができる。この場合、特に板ばねあるいはコイルばねが考えられる。また、特に弾性の、あるいはばね製の弾性のあるプラスチック要素が、ある程度候補として考えられる。
【0029】
外科用器具は、少なくとも2つの器具要素部材のうち、少なくとも一部が付勢部材を含む、あるいは形成する場合、特に簡単でコンパクトな方法でデザインすることができる。したがって器具要素部材それ自体が付勢部材を構成することが特に可能となる。例えば、第2器具要素はひとつかそれ以上のプラスチック部材から作ることができる。もし器具要素部材がお互いに分離したプラスチックアームの形状である場合、それらは一定の弾性を本来的に有する。もしそれらが特に除去位置から操作位置へ移動する際に操作位置へ広げられる場合、例えば保持手段によって、第2器具要素を保持手段に対して固定させた状態を保持する。保持手段を、器具要素部材が開放されるように第2器具要素に関して移動させるとき、保持手段はその元の位置へ戻ることができ、そして第2器具要素は自動的に操作位置から除去位置へ移動できる。
【0030】
さらに本発明の好ましい実施形態に従って、少なくとも2つの器具要素部材または第2器具要素の電極が直接あるいは間接的に操作位置においてストップに隣接している状態で、第2器具要素の縦軸から離れる向きへと径方向に作用するストップを具備していてもよい。このストップは、例えば上記した偏向する位置において器具要素部材を固定するように構成され、その位置からは器具要素部材は元の位置に戻ることができる(すなわち、ストップから再度リリースされた後に、操作位置から除去位置へ移動することができる)。
【0031】
保持手段のデザインは、それが長手軸の周りを包囲する環状あるいは略環状ストップ部材を構成し、そしてストップを形成するか備えるとき、特に容易となる。ストップ部材はしたがって、径方向において長手軸から離れる向きへと向いているストップ表面を備えるリングあるいはスリーブ形状に特に構成することができ、特に器具要素部材あるいはその自由端は直接あるいは間接的に操作位置のストップ面に隣接することができる。
【0032】
ストップ部材が縦軸に平行して移動可能に固定され、操作位置から除去位置へ移動する際に少なくとも2つの器具要素部材または第2器具要素の電極を解放する場合に有利である。特に操作位置でストップ部材に対して器具要素が固定されるとき、器具要素に関してストップ部材が動く間、器具要素は元の位置(特に除去位置)へ戻ることができ、そのとき(すなわち、器具要素部材を解放するとき)、ストップ部材はもはやストップとして働くように構成されていない。
【0033】
外科用器具が、生体組織を切断する切断要素を具備することが好ましい。例えば、器具により生成された、2つの生体組織部分の吻合域において、突出する組織を切断することができる。
【0034】
好ましくは、切断要素は、縦軸を囲む環状切断ブレードとして形成される。このような環状切断ブレードは、所望の方法で、器具により生成される環状組織吻合を作成するように構成される。切断要素は、特に切断エッジを備える機械的切断要素あるいはHF切断要素としてデザインすることができる。
【0035】
器具は、保持手段が切断要素を具備または支持するとき、特にコンパクトな方法で製造できる。これにより、特に第2器具要素が近接位置をとり、結合されるべきふたつの生体組織部が対向する第1および第2電極により結合されるとき、切断要素を移動させることを許容する。切断要素が移動するとき、特に第2器具要素が操作位置から除去位置へ移動するのを可能となるように保持手段を動かせる。したがって、これは特に生体吻合域で、突出する生体組織を切断するのとワンステップで行うことができる。
【0036】
器具を除去する際、吻合域において突出する組織を切断するために、切断要素の刃が近位方向へ指向しているとき有利である。
【0037】
外科用器具の操作は、アクチュエータ機構が器具の近位端あるいは器具の近位端域に配置または動作可能に固定される、少なくとも一つのアクチュエータ部材を含む点で、単純な方法で改良することができる。器具のシャンクに関して同器具の移動を選択的に許容するように、特に第2器具要素および保持手段に取り付ける複数のアクチュエータ部材を備えることができる。
【0038】
前述の記載は、以後に記載する外科用器具の実施例を特に備える。
【0039】
特徴1、 生体組織(126、128)を結合するための外科用器具であり、
シャンク又はシャフト(12)と、
第1および第2器具要素(46、48、46’、46’’、46’’’)とを備え、
前記器具要素(46、48、46’、46’’、46’’’)は互いに動作可能に配置または形成され、それぞれ電極(28、58、58’、58’’)を具備し、
前記電極(28、58、58’、58’’)は、前記器具要素(46、48、46’、46’’、46’’’)の近接位置において、互いに最小の間隔を画定し、互いに対向し、かつ、互いに向かい合っており、
第1器具要素(48)はシャンク(12)の遠位端(22)に配置または形成され、
第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)は、前記近接位置に移動可能な操作位置から除去位置に移動できるように構成され、
前記除去位置において前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)の前記電極(58、58’、58’’)により画定される周縁後退線(154)が、前記近接位置において前記電極(58、58’、58’’)により画定される周縁接近線(152)より短くなることを特徴とする、
外科用器具。
【0040】
特徴2、 前記除去位置において前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)により画定される第1器具線(156)が、前記操作位置において前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)により画定される第2器具線(158)より短いことを特徴とする、特徴1、特に特徴1の序文に記載の外科用器具。
【0041】
特徴3、 前記操作位置において前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)を固定する保持手段(82、82’)を有することを特徴とする、特徴1または2に記載の外科用器具。
【0042】
特徴4、前記保持手段(82、82’)と前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)とが、互いに対して移動可能に配置されることを特徴とする、特徴3に記載の外科用器具。
【0043】
特徴5、前記操作位置から前記除去位置および/または前記操作位置から前記除去位置へ前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)を移動させる折畳機構(200、200’、200’’、200’’’)を有することを特徴とする、特徴1〜4のいずれか一つに記載の外科用器具。
【0044】
特徴6、 前記折畳機構(200、200’、200’’、200’’’)が、前記保持手段(82、82’)に前記操作位置から前記除去位置および/または前記操作位置から前記除去位置へ移動させるための動力を前記保持手段(82、82’)に伝達するための第1力伝達要素(40)を備えることを特徴とする、特徴5に記載の外科用器具。
【0045】
特徴7、 前記保持手段(82、82’)と前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)へ動力を伝達する第2力伝達要素(38)とが、前記第2器具要素を前記操作位置から前記近接位置および/または前記近接位置から前記操作位置へ移動させるために、互いに移動可能に配置されることを特徴とする、特徴6に記載の外科用器具。
【0046】
特徴8、前記第2力伝達要素(38)および前記保持手段(82、82’)が互いに動作可能および/またはねじり可能および/または螺合可能であるように構成されることを特徴とする、特徴7に記載の外科用器具。
【0047】
特徴9、前記保持手段(82、82’)および/または前記第1および/または前記第2力伝達要素(38、40)が前記シャンク(12)に対して移動可能に配置されることを特徴とする、特徴6〜8のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0048】
特徴10、前記折畳機構(200、200’、200’’、200’’’)を稼働させ、および/または前記第2力伝達要素(38)および/または前記保持手段(82、82’)を前記シャンク(12)に対して移動するアクチュエータ機構(96)を特徴とする、特徴5〜9のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0049】
特徴11、 前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)が、第2電極(58、58’)に取り付けられる、または前記第2電極の一部を支持する少なくとも2つの器具要素部材(74、74’、74’’、74’’’)を備えることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0050】
特徴12、 少なくとも2つの前記器具要素部材(74、74’、74’’、74’’’)が、前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)により画定される縦軸(14)に対して径方向に移動可能に配置または構成されることを特徴とする、特徴11に記載の外科用器具。
【0051】
特徴13、 少なくとも2つの前記器具要素部材(74、74’、74’’、74’’’)が、少なくともその一部が径方向状に突出するアームの形状に構成されることを特徴とする、特徴11または12に記載の外科用器具。
【0052】
特徴14、 少なくとも2つの前記器具要素部材(74、74’、74’’、74’’’)が前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)の遠位端に配置または固定され、その自由端(150、150’、150’’、150’’’)が近位方向または実質的に近位の方向に指向することを特徴とする、特徴11〜13のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0053】
特徴15、 少なくとも2つの前記器具要素部材(74、74’、74’’、74’’’)が、径方向又は実質的に径方向に延伸する直線状か曲線状のスリット(72、72’、72’’、72’’’)により互いに分離されることを特徴とする、特徴11〜14のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0054】
特徴16、 前記第2器具要素(46)の前記電極(58、58’、58’’)が、変形可能な周縁部を備える電極リング(60)の形状に形成されることを特徴とする、特徴1〜15のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0055】
特徴17、 前記電極リング(58、58’)が、径方向に溝を有することを特徴とする、特徴16に記載の外科用器具。
【0056】
特徴18、 前記電極リング(58)が中空であり電極リング経路(62)を画定し、前記電極リング経路(62)において電極リングバランス要素(70)が溝を有する前記電極リング(58)の自由端(66、68)を連結するため移動可能に固定されることを特徴とする、特徴17に記載の外科用器具。
【0057】
特徴19、 前記電極リング(58’)が、互いにスリット(72’)により分離される複数の電極リング部分(164)を構成し、それぞれの前記電極リング部分は器具要素部材(46’)の自由端(150’)に配置または形成されることを特徴とする、特徴17に記載の外科用器具。
【0058】
特徴20、 前記電極リング(58’’)は全円状で、弾性または拡張性のある素材から作られることを特徴とする、特徴16に記載の外科用器具。
【0059】
特徴21、 前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)は、前記付勢手段(80、80’、80’’)前記操作位置において前記保持手段(82、82’)に対して付勢される前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)を保持する付勢手段(80、80’、80’’)を備えることを特徴とする、特徴1〜20のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0060】
特徴22、 前記付勢手段(80、80’、80’’)が、少なくとも1つの付勢部材(78、78’、78’’)を含むことを特徴とする、特徴21に記載の外科用器具。
【0061】
特徴23、 少なくとも1つの前記付勢部材(78、78’、78’’)は、少なくともその一部がばね弾性要素の形状に形成されることを特徴とする、特徴22に記載の外科用器具。
【0062】
特徴24、 少なくとも2つの前記器具要素部材(78)の少なくとも一部が、付勢部材(76)を構成または形成することを特徴とする、特徴22または23に記載の外科用器具。
【0063】
特徴25、 前記保持手段(82)が前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)の前記縦軸(14)から径方向に外側へ指向するように動作するストップ(85)を備え、
前記操作位置において、少なくとも2つの前記器具要素部材(74、74’、74’’、74’’’)または前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)の前記電極(58、58’、58’’)が、前記ストップと直接的または間接的に隣接する状態であることを特徴とする、特徴3〜24のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0064】
特徴26、 前記保持手段(82)が、前記縦軸を(14)を囲むとともに、前記ストップ(85)を形成または構成する、環状または実質的に環状のストップ部材(87)を含むことを特徴とする、特徴25に記載の外科用器具。
【0065】
特徴27、前記ストップ部材(87)が前記縦軸(14)に対して平行に移動可能に固定され、操作位置から除去位置へ移動する際に少なくとも2つの前記器具要素部材(74、74’、74’’、74’’’)または前記第2器具要素(46、46’、46’’、46’’’)の前記電極(58、58’、58’’)を解放することを特徴とする、特徴26に記載の外科用器具。
【0066】
特徴28、 生体組織を切断するための切断要素(88)を有することを特徴とする、特徴1〜27のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0067】
特徴29、前記切断要素(88)が前記縦軸(14)を囲む環状刃の形状に構成されることを特徴とする、特徴28に記載の外科用器具。
【0068】
特徴30、 前記保持手段(82)が前記切断要素(88)を構成することを特徴とする、特徴28または29に記載の外科用器具。
【0069】
特徴31、前記切断要素(88)の切断エッジ(90)が近位方向に指向することを特徴とする、特徴28〜30のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0070】
特徴32、前記アクチュエータ機構(96)が前記器具(10)の近位端または近位端部分に移動可能に配置又は移動可能に固定される、少なくともひとつのアクチュエータ部材(98、108)を備えることを特徴とする、特徴10〜31のいずれか一項に記載の外科用器具。
【0071】
本発明の好適な実施形態の下記に記載する事項は、以下の図面において、図示されることとなる。図面の説明は、以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】生体組織を結合する外科用器具の全体像の模式図。
図2】端側吻合を行う際の図1示す器具の先端の一部切り欠き図。
図3図2の配置における拡大切り抜き図。
図4】生体組織を結合する前の器具の一部カットスルー側面図。
図5】生体組織結合中の器具の、図3に類似した図。
図6】吻合部分において突出する生体組織を切除する様子を示す、図5に類似した図。
図7】操作位置から除去位置へ器具を移動する際の、図4に類似する図。
図8】操作位置から除去位置へ第2器具要素を移動した後の、図6に類似した図。
図9a】保持手段を含む第2器具要素の底面側からみた外観図。
図9b】保持手段を含まない、図9aに類似した図。
図10a】第2器具要素の別の実施例の外観側面図。
図10b図10aの配置の一部分解図。
図10c図10aの構成の分解図。
図11】操作位置および近接位置における図10aに示す第2器具要素の縦断面図。
図12図11に類似する、除去位置における図。
図13】第2器具要素の別の実施例の、図11に類似する図。
図14】第2器具要素の別の実施例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1は、生体組織を結合する外科用器具10を示す。外科用器具10は、縦軸14を画定する細長シャンク12を備える。器具10の全体長の約半分以上に延伸するシャンク状ハンドル部16は、シャンク12の近位側と連結する。ハンドル部16aの近位端18からは、器具10と例えばHF発電機などの電力源(図示せず)とを連結する連結線20が突出する。
【0074】
シャンク12は、端22から開始する短い円柱状の受容スペース24が遠位方向にむかって開口形成されるように、実質的に段差がない態様で外径に遠位端22に向かって延伸する。スリーブ状の電極28は、縦軸14の方向に傾斜する電極表面30を画定するようにして端部22を始端として内部壁26に隣接する受容スペース24に挿入される。電極28は、詳細には示さない方法で連結線20に電気的に連結される。
【0075】
シャンク12と同心円状に、同シャンク内に受容スペース24の近位端近傍まで延伸する内部シャンク32が配置される。内部シャンク32は経路34を画定する。カバー36が近位側の受容チャンバー24を縁取り、経路34のみを開口させる。
【0076】
案内部を形成する内部シャンク32において、スリーブ状の第2力伝達部材40に囲まれたロッド状の第1力伝達部材38は、縦方向に移動可能に案内される。力伝達部材38および40は、縦軸14に平行して互いに対して移動可能である。
【0077】
器具10の第1器具要素48が、電極28を備える端22によって形成される。第1力伝達部材38の遠位端42は、近位方向に開口する第2器具要素46の凹部44に拘束される態様で係合する。
【0078】
第2器具要素46は、ゆるやかに丸みを帯びた先端52を有する、わずかに凸状に湾曲した端面50を備える一種のカバーとして構成される。端面50は器具10の操作位置および近接位置において、縦軸14とは間隔をあけて、縦軸14に対して同心円状に形成あるいは配置される環状側壁54へと移行する。近位方向に突出する側壁54の端面56は凹状に湾曲し、電極リング60の形状で構成される第2器具要素46の電極58を受容および固定する役割を担う。電極リング60は中空であり、電極リング経路62を画定する。電極リング60は全円状ではないように設計されており、スリット64で切り取られ、その対向する2つの端66および68の間にわずかに間隔を有している。電極リング経路62において、切り込みのある電極リング60の2つの端66および68を相互に連結する電極リングバランス要素70が挿入される。このように2つの異なる外径、すなわち電極リング60の外径に画定される大きい外径と電極リングバランス要素70の外径に画定される端66および68間の小さい外径とを備える、全体として全円状である環状電極58が形成される。
【0079】
第2器具要素46は、側壁54を始端として、第2器具要素46の円周上に等間隔に配置される複数の放射状スリット72をそなえる。このように、先端52において一つに固定され、そこから径方向状に近位方向へと側壁54に沿って延伸する器具要素部材74が形成され、これらは実質的にアーム形状を有している。第2器具要素46がプラスチック素材からなるため、端面50の一部を形成する部分76は付勢部材78を構成しており、これらは総じて符号80を付される付勢手段80を構成する。付勢手段80は、総じて符号82を付される保持手段に第2器具要素46を固定させる役割を持つ。
【0080】
保持手段82は、第2力伝達要素40に固定連結される縦軸14に対して実質的に横方向に延伸する保持ディスク84を備える。保持ディスク84は最大外径86を画定するとともに環状スリーブ状切断要素88を備えており、これは縦軸14を同心円状に囲み近位方向へ突出する全円状の切断エッジ90を備えている。切断要素88はこのように、保持手段84の一部を形成する。保持ディスク84および切断要素88はともに器具要素部材74が縦軸14から径方向に離間するのを留めるストップを画定する、ストップ部材87を形成する。このように全体として、折畳機構200が形成され、傘を開くのと類似した方法で、第2器具要素46を実質的に開閉する。
【0081】
図1から5で模式的に示されるように、器具10が操作位置にあるとき、保持手段82が近位方向からきて器具要素46に完全に挿入されるように、器具要素部材74はわずかに径方向に広げられる。切断エッジ90は、第2器具要素46のもっとも突出する部分が電極58となるように、電極58に相対してわずかに遠位方向に位置調整される。器具要素部材74の内側表面92は、このように側壁54の一部を形成し、器具要素74が広げられることにより、保持手段82すなわち切断要素88および保持ディスク84に対して付勢されるように固定される。したがって器具要素部材74の自由端94が縦軸14にむかって動いてしまうことを、保持手段82が防止する。
【0082】
器具10はさらに、縦軸14を同心円状に囲むとともにハンドル部16に画定されるハウジング内で縦軸14を中心として回転可能に支持される、スクリューホイール100の形状を有する第1アクチュエータ要素98を含むアクチュエータ機構96を具備する。スクリューホイール100は、ネジ山106を支持し、外径に厚みのある第1力伝達部材38の部分104に操作可能に連結される。この構成により、縦軸14を中心とするスクリューホイール100の回転によって、第1力伝達部材38が遠位または近位方向へ移動することが可能になる。遠位方向における移動では電極28および58間の間隔が長くなり、近位方向へ第1力伝達部材を動かすと、電極58は電極28にむかって移動する。
【0083】
アクチュエータ機構96はさらに、左右対称のコントロールアーム装置110の形状を有する第2アクチュエータ部材108を具備する。2つの第1コントロールアーム112は、縦軸14に対して横方向にオフセットされており、縦軸に交差する方向に延伸し、かつ互いに平行である、ハウジング102に設けられた枢動軸を中心として枢動する。コントロールアーム112の自由端114は、さらにそれぞれコントロールアーム116に軸支される。コントロールアーム116の2つの自由端は、互いに枢動可能に取り付けられ、垂直に縦軸14に交差する枢動軸120を軸にして第2力伝達部材40にも取り付けられる。端114はもうひとつの自由端122に対してわずかにオフセットし、枢動軸120に平行に延伸する枢動軸を中心にコントロールアーム116に軸支される。縦軸から離れて突出するコントロールアーム116の自由端122は、第2アクチュエータ要素108を稼働させるアクチュエータ部材を形成する。
【0084】
図7で模式的に示されるように端122が矢印124の方向に互いに対して枢動されるとき、第2力伝達部材40は近位方向に第1力伝達部材38に対して移動する。
【0085】
器具10の機能について、以後、図1から8を組み合わせて、すなわち端側吻合を形成する例示を通して説明する。
【0086】
第1管126を第2管128に側方向から結合するために、第2管128は小型切開部130で切開される。第1管126には、端132から若干離れた位置に、第2切開部134により開口部が形成される。器具10の遠位端は先端に第2器具要素46を備えつつ、まずは上述の操作位置をとり、保持手段82によりその位置に固定されて付勢され、第2切開部134を通して第1管126に挿入され、最後に第2器具要素46が端132から突出する。端132は電極28の内側にわたって覆いかぶせられる。
【0087】
次のステップでは、上述した方法で第1管126が器具10に固定されている状態で、第1切開部130を通して第2器具要素46を挿入することで、器具10は第2管128に挿入される。この様子は、図2で示される。管126および128は、第1管126の端132が第2管128の第1切開部130をできるだけ同心円状に覆うように配置される。図3に示されるように、このように2つの組織層が重ね合わせられる。
【0088】
重ね合わせられた組織層を結合するため、図4に模式的に示されるように、第1力伝達部材38が矢印138の方向(近位方向)へ移動するように、スクリューホイール100は矢印136の方向に回転される。
【0089】
器具要素46および48が、互いの間隔が最小に画定される近接位置をとると、図5に示されるように、2つの細胞層が隣接し、電極28および58にHF電流を流すことで結合される。この結合は実質的には管126および128を溶接することで行われ、電極28および58を介して適切な電流が流れることにより、管126および128に含まれるタンパク質がお互いに溶着するまで加熱され、電極28および58間の全円状の環状吻合部140において半永久的ですみやかな負荷の印加が可能な結合部が生成される。
【0090】
管126および128間の結合がある一定の方法で完成してすぐに、器具10は引き抜くことができる。この目的のため、器具10はまず近接位置から除去位置へ移動される。これは第2アクチュエータ要素108を稼働させること、すなわち端122を互いに向かって矢印124の方向に旋回させることで行う。第2力伝達要素40を近位方向すなわち矢印142の方向に移動させることで、図7に示されるように、第2力伝達部材40に固定されている保持手段82も、近位方向に移動する。その結果、切断要素88も近位方向に動かされ、切断エッジ90が吻合部140に隣接する部分において結合された管126および128を切断し、その結果、縦軸14に向かって径方向に突出している組織部144が切除され受容スペース24に回収される。突出組織部144を切除する間、電極28および58は互いに同じ間隔を保ったままである。
【0091】
保持ディスク84が近位方向へ電極リング60を通過してすぐ、器具要素部材74の自由端150が付勢部材78によって縦軸14にむかって径方向に移動されるように、保持手段82は第2器具要素46を解放し、特に器具要素部材74の自由端150の部分を解放する。これにより、図9aに示されるように、操作位置においてスリット72で画定される第1間隔146が、図9bに示されるように、除去位置においてより小さい間隔148まで減少する。このように、器具要素部材74の自由端150も周縁方向に互いに接近することができ、図9aで示されるように、操作位置または近接位置における電極58の周縁線が周縁接近線152から、図9bで示されるように、除去位置における周縁後退線154に短縮される。このように第2器具要素46は、そこから近接位置に移動できる操作位置から、電極58が画定する周縁後退線154が近接位置において電極58に画定される周縁接近線152より短くなる除去位置へ移動されるように構成される。このように電極58はその周縁に関して可変である。さらに、図9aおよび図9bで示すように、除去位置において第2器具要素46に画定される第1周縁器具線156は、操作位置での第2器具要素46に画定される第2周縁器具線158より短い。
【0092】
電極リングバランス要素70を備える電極リング60の代替実施形態のひとつとして、電極58を連続的な方法で製造するのではなく、器具要素部材74の先端150において残る端面部分のみを導電するような方法で製造する、あるいは電極リング部材をその位置に配置するという方法もある。そうすると、電極58は、互いにスリット72で分割された複数の電極リング部材で構成されることになる。
【0093】
図10aから12において、第2器具要素の別の実施形態を示し、全体として符号46’を付与する。第2器具要素46’は、保持手段80’だけでなく電極58’の構造において、第2器具要素46と実質的に異なる。保持手段82’は保持手段82と実質的に同一である。径方向に指向し、遠位方向に対向する複数のリブ160を具備する保持ディスク84’の構成においてのみ差異がある。それぞれ2つのリブ160間には、遠位方向に開口する座部162が形成され、操作位置または近接位置において電極要素164が嵌合する。2つの電極要素164は、リブ160によって互いに間隔を空けられる。電極要素164は実質的にL型であり、器具要素部材74’の端150’のため、遠位端には縦軸14から離間するように径方向へ突出する突出部166を備え、該突出部は器具要素部材74’の端150’のための遠位方向に指向するストップ面168を形成する。突出部166はさらに、縦軸14’に対して外側に傾斜する電極表面170を画定する。
【0094】
操作位置において、器具要素部材74’の部分172が縦軸14’および切断要素88に平行して延伸する。部分172に対して横方向に向く部分174が縦軸14’に向かって部分172と接続し、それが縦軸14’に関して約45度傾斜し、および先端52’の方向へ指向する部分176へと移行する。部分176に画定される自由端178は、先端52’に向かって開く凹部180を備える。部分174および176間の移動域において、別の凹部182が形成され、径方向に縦軸14から離間するようにして開口して形成される。第1弾性リング184が電極要素164の凹部180に挿入され、非拘束的および/または拘束的な方法で固定される。操作位置において拡大する第2弾性リング186が、凹部182に挿入される。該第2弾性リングは、保持手段82’に対して付勢される縦軸14に向かって電極要素164を固定するように、操作位置において電極要素164に張力を与える役割をもつ。このように、リング186は付勢部材78’を形成する。
【0095】
電極要素164は好ましくは、導電性のある素材で形成されるか、導電性があるようにコーティングされている。リング184は好ましくは、同様に導電性のある素材で形成されて、電極リング184を通してすべての電極要素が通電するように相互接続される。選択的にはリング186は導電性を持つように形成されてもよい。この一方で、例えば弾性のあるプラスチックリングで形成されてもよい。
【0096】
切断エッジ90により画定される切断面は、縦軸14’に対して傾斜してもよい。これは保持手段82’だけでなく、保持手段82において備えていてもよい。
【0097】
器具10の働きは、第2器具要素46と第2器具要素46’のどちらを備えていても同一である。図11に示すように、器具10が第2器具要素46’によって除去位置に移動されるときには、操作位置において第2器具要素46’が近接位置に移動可能であるのと同様に、保持手段82’を近位方向に同様に動かすことで、リング186によって電極要素164を縦軸14の方向へと動かすことができる。このように第2器具要素46’によって画定される周縁線および電極58’により画定される周縁線の両方が、除去位置における場合よりも近接位置において必ず長くなる。これにより、図11および12に示すように、器具要素部材74’の自由端150により制限される第2器具要素46’の外径が減少する。このように、全体として、傘と同様の方法で、第2器具要素46’を実質的に開閉する折畳機構200’が形成される。
【0098】
第2器具要素の別の実施形態が図13で説明され、全体として符号46’’が付与される。実質的に第2器具要素46と異なる点は、器具要素部材74’’の自由端150’’が内側に三段階に屈曲あるいは湾曲し、まず径方向に延伸する部分190、次に縦軸14に平行に延伸する隣接部192、そして同時に自由端150’’を形成する遠位方向および径方向に傾斜する部分194が、側壁54’’において形成される点である。このように、部分190、192、194が電極リング60’’のための座部196を実質的に画定する。該電極リング60’’は例えば全円状に形成されていてもよく、全体的にあるいは部分的にニチノールで構成されていてもよい。このように、電極リング60’’は最大で約8%の弾性をそなえる。よって、電極リング60’’は同時に付勢部材78’’を構成することになり、全体としての付勢手段に80’’の符号が付与される。
【0099】
操作位置における第2器具要素46’を図13に示す。操作位置において、部分192は、図1から9bにおいて説明した保持手段82と同一の保持手段82に隣接する。上述の方法で第2力伝達部材40を近位方向へ動かすことにより、保持手段82が近位方向へ配置されるとき、器具要素部材74’’が解放され、電極リング60’’が収縮し、近接位置から除去位置へ移動する際に、電極58’’が画定する電極線を減少させる。全体として、この方法で、傘と同様の方法で、第2器具要素46’’を実質的に開閉する、折畳機構200’’が形成される。
【0100】
図14で、第2器具要素のさらなる実施例を示し、全体として符号46’’’を付与する。第2器具要素46と異なる点は、器具要素部材74’’’を分けるスリット72’’’が、縦軸14から離れて径方向状に指向するのではなく曲線を描く方法で縦軸14から離れて延伸しており、図14においてみられる器具要素部材74’’’のらせん状構造が形成される。特に第2器具要素46と同様に、第2器具要素46’’’も、電極58を装備することができる。これにより、特に第2器具要素46、46’、46’’のように、除去位置での第2器具要素46’’’が画定する第1周縁器具線が、操作位置での第2器具要素が画定する第2周縁器具線より短くなる構造になる。また、第2器具要素46’’’も同様に、近接位置へ移動できる操作位置から除去位置へ移動でき、その除去位置では電極58が画定する周縁後退線は近接位置で電極58が画定する周縁接近線より短い。全体として、このように傘と同様に、第2器具要素46’’’を視覚的に開閉する折畳機構200’’’が全体で形成される。
【0101】
電極28および58がそれぞれ連結線20に導電的に連結することを詳細に記載および示す必要はない。好ましくは、それらはお互いに絶縁していてもよい。特に力伝達部材38および40を介して電極58に電力を供給し、保持手段82、82’、82’’だけでなく、第2器具要素46、46’、46’’に導電接続を適切に提供して、結果HF電流を電極28および、58あるいは58’にそれぞれ給電できるようにすることは容易に可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10a
図10b
図10c
図11
図12
図13
図14