(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザーエネルギーを有するレーザービームを眼球の外側部分を通して眼球中の標的部分の方向に向けるように構成されたレーザー装置と、前記外側部分の光学濃度測定値を受信し、該光学濃度測定値と、レーザービームの方向で測定されたショットの深さである角膜深さとに従って前記レーザーエネルギーを決定し、前記レーザーエネルギーを有するレーザービームを前記眼球の外側部分を通して前記眼球の標的部分の方向に向ける指示を前記レーザー装置に与えるように構成された制御コンピューターと、を備えるものであることを特徴とする装置。
前記光学濃度測定値は、前記眼球の外側部分の一つ以上の位置に対して一つ以上の光学濃度値からなり、各々の前記光学濃度値は前記眼球の外側部分の一つの位置での光学濃度を表しているものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記装置は、さらに前記光学濃度測定値に従ってレーザーエネルギー調整値を決定し、該レーザーエネルギー調整値に応じてレーザーエネルギーを調整して、前記レーザーエネルギーを決定するものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記光学濃度測定値は、前記眼球の外側部分の一つ以上の位置に対して一つ以上の光学濃度値からなり、前記レーザーエネルギーを決定することはさらに、一つの位置の光学濃度値に従って、その位置に適用されるレーザーエネルギーを決定することを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記レーザーエネルギーを決定することはさらに、複数の光学濃度値を複数のレーザーエネルギー調整値に結び付けるデータ構造にアクセスし、前記光学濃度測定値についての光学濃度値に結び付けられたレーザー調整値を特定することを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記光学濃度測定値は、前記眼球の外側部分の一つ以上の位置に対する一つ以上の光学濃度値を含み、各々の前記光学濃度値は前記眼球の外側部分の一つの位置での光学濃度を表すことを特徴とする請求項9に記載の方法。
前記レーザーエネルギーを決定することはさらに、前記光学濃度測定値に従ってレーザーエネルギー調整値を決定し、該レーザーエネルギー調整値に従って前記レーザーエネルギーを調整することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
前記光学濃度測定値は、前記眼球の外側部分の一つ以上の位置に対する一つ以上の光学濃度値を含み、前記レーザーエネルギーを決定することはさらに、一つの位置の光学濃度値に従って、その位置に適用されるレーザーエネルギーを決定することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
前記レーザーエネルギーを決定することはさらに、複数の光学濃度値を複数のレーザーエネルギー調整値に結び付けるデータ構造にアクセスし、前記光学濃度測定値についての光学濃度値に結び付けられたレーザー調整値を特定することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の典型的な実施の形態を、例として添付の図面を参照して詳細に以下に説明する。
【0008】
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図1A】ある実施の形態における光学濃度値に従ってレーザーエネルギーを調整可能なシステムの一例を示す図である。
【
図1B】ある実施の形態における試行ショットに従ってレーザーエネルギーを調整可能なシステムの一例を示す図である。
【
図2A】ある実施の形態における撮像システムの動作例を示す図である。
【
図2B】ある実施の形態における撮像システムの動作例を示す図である。
【
図2C】ある実施の形態における撮像システムの動作例を示す図である。
【
図3A】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図3B】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
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図3C】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図3D】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図4A】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図4B】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図4C】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図4D】ある実施の形態における患者の角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図5A】ある実施の形態におけるドナーの角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図5B】ある実施の形態におけるドナーの角膜に試行ショットを向ける例を示す図である。
【
図6】ある実施の形態における生体組織を光切断するように構成されたレーザー装置と制御コンピューターの一例を示す図である。
【
図7】ある実施の形態における光学濃度測定値に従ってレーザーエネルギーを調整する方法の一例を示す図である。
【
図8】ある実施の形態における試行ショットに従ってレーザーエネルギーを調整する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に明細書の記載と図面を参照して、開示された装置、システム、及び方法の実施の形態を詳細に示す。記載と図面は、網羅的である、或いは特許請求の範囲を図面中に示され、明細書中に開示された特定の実施の形態に限定または制限するように意図されたものではない。図面は実施可能な形態を代表しているが、図面は必ずしも一様な縮尺によるものではなく、ある特徴は誇張されていたり、削除されていたり、或いは実施の形態をより良く示すために部分的に断面図として描かれていてもよい。
【0010】
図1Aはある実施の形態における光学濃度値に従ってレーザーエネルギーを調整可能なシステム10の一例を示している。ある実施の形態においては、システム10は眼球22の外側部分の光学濃度測定値を受信し、光学濃度測定値に従ってレーザービームのレーザーエネルギーを決定し、レーザーエネルギーを有するレーザービームを眼球22の外側部分を通して眼球22の標的部分の方向へ向けるようにレーザー装置に指示を出すことができる。
【0011】
例において、システム10は撮像システム12、レーザー装置15、及びコンピュータシステム20を含む。コンピュータシステム20は、一つ以上のインターフェース(IFs)24、ロジック26、及び一つ以上のメモリー28を含む。ロジック26は、制御コンピューター30と、例えば濃度計モジュール36、レーザーエネルギーモジュール38、及びレーザー制御プログラム34のようなコンピューターコードを含んでいる。メモリー28は、コンピューターコード、画像データ40、及びテーブル42のようなデータ構造を蓄積している。
【0012】
眼球22は人間のような、適切な生きている生物体の眼球であってもよい。眼球22は異なる部分から構成される。ある実施の形態においては、レーザービームは標的部分の組織を光切断するために、標的部分の方向に向けられてもよい。レーザービームは、標的部分に到達するために眼球22の外側部分を通過してもよい。外側部分は標的部分に関して典型的には手前の部分である。一つの部分は眼球22の適切などの部分のことを指してもよい。ある実施の形態においては、一つの部分は角膜の一つの層のことであってよい。前方から後方までの角膜の複数の層は、上皮、ボーマン層、角膜実質、デスメ膜、及び内皮を含む。例えば、外側部分は角膜の外側の層であってもよく、そして標的部分は角膜の内側の層であってもよい。ある実施の形態においては、一つの部分は眼球の一部分のことであってもよい。前方から後方までの眼球の複数部分は、角膜、房水、水晶体、硝子体液、及び網膜を含む。例えば、外側部分は角膜と房水であり、標的部分は水晶体であってもよい。
【0013】
撮像システム12は、眼球22の画像を取得し、それから眼球22の光学濃度測定値が計算されてもよい。ある実施の形態においては、撮像システム12は光を直線的に、及び/又は回転させるようにして導くスリットスキャン法を用いてもよい。例えば撮像システム12は、シャインプルーフスリットカメラのようなシャインプルーフ撮像システムであってもよい。ある実施の形態において、撮像システム12は、眼球22から反射された同心円状の環から画像を生成するプラシド手法に結び付けたシャインプルーフ手法を用いてもよい。ある実施の形態において、撮像システム12は、眼球22の画像を取得するために低干渉性干渉計を用いた光干渉断層撮影(OCT)システムであってもよい。
【0014】
画像データ40は眼球22の画像を記録する。画像データ40は、画像の各々のピクセルに対して一以上の数値を持ってもよい。各々のピクセルは眼球の位置に対応し、その数値はその位置における光学濃度を示している。画像の例を
図2を参照してより詳細に説明する。
【0015】
濃度計モジュール36は、画像データ40から外側部分の光学濃度測定値を決定する。光学濃度測定値は眼球の外側部分の一つ以上の位置に対して一つ以上の光学濃度値を含んでいてもよい。各々の光学濃度値は、眼球の外側部分の特定の位置の光学濃度を示している。
【0016】
光学濃度測定値は、適切な方法で画像データ40から決定してよい。ある実施の形態において、あるピクセルでのピクセル値はそのピクセルに対応する位置に対する光学濃度値を決定するために使われてもよい。キャリブレーションテーブルにより、ピクセル値をそのピクセル値によって示される光学濃度値にマッピングできる。例えば、キャリブレーションテーブルによりピクセル強度値(0から255)をその強度値によって示される標準化された光学濃度値(ODU)にマッピングできる。
【0017】
レーザーエネルギーモジュール38は、光学濃度測定値に従ってレーザーパルスエネルギーを決定する。ある実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38は、光学濃度値を対応するレーザーエネルギー調整値にマッピングする(テーブル42のような)データ構造へアクセスすることによってレーザーエネルギーを決定する。光学濃度値に対応するレーザーエネルギー調整値は、光学濃度値によって示された光学濃度を補償するためにレーザーエネルギーへなされた調整であってもよい。例えば、Y光学濃度値(ODU)に相当するXジュール(J)の調整値は、レーザーエネルギーがY(ODU)の光学濃度を補償するためにX(J)だけ増加されられるべきであることを示している。XとYは適切な値をとることができる。ある実施の形態において、光学濃度が大きいほどレーザーエネルギーの大きな増加を必要とし、光学濃度が小さいほどレーザーエネルギーは小さい増加を必要とするか、或いは増加を必要としない。マッピングは実験データから決定してもよい。レーザーエネルギーモジュール38は、適切な調整値を特定し、次いでその調整値を用いてレーザーエネルギーを調整してもよい。
【0018】
レーザーエネルギーモジュール38は、(後で調整することができる)初期エネルギーを決定するために適切な方法を用いることができる。ある実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38は、角膜の深さに従って初期のレーザーエネルギーを決定する。例えば、角膜の深さとレーザーエネルギーをマッピングするテーブルが初期のレーザーエネルギーを決定するために使われてもよい。次に、初期のレーザーエネルギーは光学濃度を補償するレーザーエネルギー調整値に従って、調整されることができる。
【0019】
ある実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38は、レーザーエネルギーの数式に従ってレーザーエネルギーを決定する。その実施の形態において、レーザーエネルギーの数式は一つ以上の変数、例えば、光学濃度値と、例えば角膜深さ及び/又は患者のパラメーターのようなその他の変数を持つ、数学的な関数であってもよい。例えば、光学濃度値とある一つの位置に対する角膜深さが、その位置に対するレーザーエネルギー値を算出するために関数の中に入力されてもよい。
【0020】
レーザーエネルギーモジュール38は、計算されたレーザーエネルギーをレーザーコントロールプログラム34へ送信する。レーザーコントロールプログラム34は、レーザーエネルギーを有するレーザービームを外側部分を通して眼球22の標的部分へ向けるためにレーザー装置15の制御可能な構成部分に指示を与える。ある実施の形態において、レーザー装置15は、レーザーエネルギーと(ピコ、フェムト、或いはアト秒パルスのような)超短パルスを有する(レーザービームのような)パルス化されたレーザー放射を生成できる。レーザー装置15は、標的部分の生体組織を光切断するために、パルス化されたレーザービームを眼球22の外側部分を通して眼球22の標的部分に向けることができる。
【0021】
図1Bは、ある実施の形態における、試行ショット(放射)に従ってレーザーエネルギーを調整可能なシステム10の一例を表している。ある実施の形態において、システム10は、試行ショットを試行部分の方向に向ける指示をレーザー装置に与え、試行部分に対する施行ショットの作用を確定し、その作用に従ってレーザーエネルギーを決定し、レーザーエネルギーを有するレーザービームを眼球22の標的部分の方向に向ける指示をレーザー装置に与えることができる。
【0022】
示された例において、システム10は、撮像システム12の代わりに(或いは加えて)顕微鏡13、濃度計モジュール36の代わりに(或いは加えて)試行ショットモジュール35を含む。顕微鏡13は、眼球22を見ることができる適切な顕微鏡であってもよく、眼球22の角膜に対する試行ショットの作用を決定するために使ってもよい。
【0023】
試行ショットモジュール35は、試行ショットを試行部分の方向に向ける指示をレーザー装置に与えることができる。試行ショットは、レーザーエネルギーを決定するために試行部分の方向に向けられたレーザーパルスであってもよい。試行部分は、患者の角膜、或いはドナーの角膜から取り除かれる(そして廃棄されてもよい)生体組織のような、生体組織の重要でない部分であってもよい。試行ショットは、ショットのレーザーエネルギー、(以下に記載するように、z方向に測定されてもよい)ショットの角膜の深さ、或いはショットの大きさと形のようなパラメーターに関係づけられていてもよい。パラメーターは適切な値とすることができる。例えば、ショットは丸くてもよいし、角張っていてもよい。試行ショットモジュール35は、適切な大きさと形状の適切なパターンで試行ショットを向けることができる。試行ショットがどのように向けられるかの例が以下に示される。
【0024】
図2Aから2Cは、ある実施の形態に従った撮像システムの動作の例を表すものである。
図2Aは、撮像システムによって撮像されることができる眼球の面50の端部の例を表している。
図2Bは、特定の面52とその面52から生成された画像54の例を表している。画像54は角膜の曇り56を示している。
図2Cは、撮像システムによって生成されることができる画像の一例を表している。撮像システムにより、眼球の面60(a−b)の画像62(a−b)を生成してもよい。例えば、画像62aは面60aのものであり、画像62bは面60bのものである。画像62は角膜の曇り64を示している。
【0025】
図3Aから4Dは、ある実施の形態に従って患者の角膜に試行ショットを向ける例を表したものである。その例において、患者の角膜150は、取り除かれてドナーの角膜で置換されてもよい疾患の部分のような、重要でない生体組織152を含んでいる。重要でない組織152は、試行ショット154に対する試行部分として役に立つ。
【0026】
図3Aから3Dは、ある実施の形態に従って患者の角膜に複数の試行ショット154aからなるパターンを向ける一例を表している。その例において、そのパターンの各々の試行ショット154aは異なったレーザーエネルギーを有している。例えば、第一の試行ショットは第一のレーザーエネルギーを持ち、第二の試行ショットは第一のレーザーエネルギーとは異なる第二のレーザーエネルギーを持っている。その例において、そのパターンの試行ショット154aは、同じ角膜深さに各々向けられてもよい。即ち、試行ショット154aは同じ角膜の面に置かれていてもよい。
【0027】
図4Aから4Dは、ある実施の形態に従って患者の角膜に複数の試行ショット154bからなるパターンを向ける別の例を表している。その例において、そのパターンの各々の試行ショット154bは、パターンが一定の角膜深さの位置において角膜面に対し(零より大きい)角度で交差するように、異なった角膜深さを有している。例えば、第一の試行ショットは第一の角膜深さを持ち、第二の試行ショットは第一の角膜深さとは異なる第二の角膜深さを持つ。その例において、そのパターンの試行ショット154bは各々同じレーザーエネルギーを持っていてもよい。もう一つの例においては、要求されたエネルギーと同じ水準で内皮を測定するために、第二の試行ショットのエネルギー水準は第一の試行ショットのエネルギー水準と異なっていてもよい。
【0028】
図5Aと5Bは、ある実施の形態に従ってドナーの角膜に試行ショットを向ける例を表している。その例において、ドナーの角膜160は患者に移植されるドナーの角膜160の部分から除去される余分な部分のような、重要でない生体組織162を含んでいる。重要でない生体組織162は試行ショット164に対する試行部分として役に立つ。
【0029】
図5Aは、
図3Aから3Dの方法と類似の方法でドナーの角膜に試行ショットを向ける一例を表している。その例において、そのパターンの各々の試行ショット164aは異なったレーザーエネルギーを持っており、同じ角膜深さに各々向けられてもよい。
【0030】
図5Bは
図4Aから4Dの方法と類似した方法でドナーの角膜に試行ショットを向ける一例を表している。その例において、そのパターンの各々の試行ショット164bはパターンが一定の角膜深さの角膜面に対し(零より大きい)角度を持って交差するように、異なった角膜深さを有している。各々の試行ショット164bは同じレーザーエネルギーを持っていてもよい。もう一つの例においては、要求されたエネルギーと同じ水準で内皮を測定するために、第二の試行ショットのエネルギー水準は第一の試行ショットのエネルギー水準と異なっていてもよい。
【0031】
図6はある実施の形態に従って生体組織を光切断するように構成されたレーザー装置15と制御コンピューター30の一例を表している。その実施の形態において、レーザー装置15は計算されたレーザーエネルギーと(ピコ、フェムト、或いはアト秒パルスのような)超短パルスのパルス化されたレーザーの放射を生成することができる。レーザー装置15は、標的部分の生体組織を光切断するために、パルス化されたレーザービームを眼球の外側部分を通して眼球の標的部分に向けることができる。制御コンピューター30は、外側部分の光学濃度測定値を受信し、光学濃度測定値に従ってレーザーエネルギーを決定し、レーザーエネルギーを有するレーザービームを外側部分を通して標的部分に向けるために一つ以上の制御可能な構成部分に指示を与えることができる。
【0032】
ある実施の形態において、レーザービームにより(角膜フラップ或いは角膜キャップのような)角膜における要素を形成してもよく、その角膜の要素はエキシマレーザーによる屈折力の矯正を適用できるようにするために除去されてもよい。角膜の要素は屈折力の矯正の後で、置き換えられても、置き換えられなくてもよい。ある実施の形態において、レーザービームにより屈折力の矯正を行うために除去されるレンティクルを形成してもよい。
【0033】
示された例において、コンピュータシステム20は制御コンピューター30とメモリー28を含む。メモリー28は制御プログラム34を蓄積する。レーザー装置15は、図示されたように連結されたレーザー光源112、スキャナー116、一つ以上の光学素子117、及び/又は焦光対物レンズ118を含む。レーザー装置15は患者用アダプター120に連結されている。患者用アダプター120は、図示されたように連結された(サンプルから外側方向に配置された接触面126を有する)接触部品124とスリーブ128を含んでいる。
【0034】
レーザー光源112は、超短パルスのレーザービーム114を生成する。本明細書において、光の超短パルスとは、持続時間がピコ秒、フェムト秒、或いはアト秒のオーダーであるような、ナノ秒より小さい光のパルスのことである。レーザービーム114の焦点の合う位置では角膜のような生体組織の中にレーザー誘起光学破壊(LIOB)を生成されてもよい。レーザービーム114は他の組織が不必要に破壊されることを低減又は回避することを可能にする、正確な切開を上皮の細胞層の中に用意するために正確に焦点を合わされてもよい。
【0035】
レーザー光源112の例としてフェムト秒、ピコ秒、及びアト秒レーザーが含まれる。レーザービーム114は、例えば、300から650、650から1050、1050から1250、或いは1100から1500ナノメートル(nm)の範囲の波長である、300から1500(nm)の範囲の中の適切な真空中での波長を持っている。レーザービーム114は例えば直径が5マイクロメーター(μm)以下である比較的小さな焦点体積を持っていてもよい。ある実施の形態において、レーザー光源112及び/又は伝送路は真空か、或いは真空に近い状態であってもよい。
【0036】
スキャナー116、光学素子117、及び焦光対物レンズ118は、光路の中にある。スキャナー116はレーザービーム114の焦点位置を横方向と縦方向に制御する。「横方向」はレーザービーム114の伝搬方向に対して直角な方向のことであり、「縦方向」はビームの伝搬方向のことである。横方向の平面はx−y平面と呼ばれてもよく、縦方向はz方向と呼ばれてもよい。ある実施の形態において、患者用インターフェース120の接合面126はx−y平面上にある。
【0037】
スキャナー116は適切な方法でレーザービーム114を横方向に向けてもよい。例えば、スキャナー116は、相互に直交する軸周りに傾けられることが可能な一組のガルバノメーターの原理で駆動させるスキャナーミラーを含んでいてもよい。もう一つの例として、スキャナー116はレーザービーム114を電気光学的に動かすことができる電気光学結晶を含んでいてもよい。スキャナー116は、適切な方法でレーザービーム114を縦方向に向けてもよい。例えば、スキャナー116は縦方向に調節可能なレンズ、可変屈折力を持つレンズ、或いはビームの焦点のz位置を制御可能とするように変形可能なミラーを含んでいてもよい。スキャナー116の焦点を制御する構成部分は、例えば、同じ或いは異なるモジュールユニット内に、光路に沿って適切な方法で配置されていてもよい。
【0038】
一つ(以上)の光学素子117は焦光対物レンズ118の方向にレーザービーム114を向ける。光学素子117はレーザービーム114を反射させ、及び/又は屈折/回折させることのできる適切な光学素子であってもよい。例えば、光学素子117は固定の偏向ミラーであってもよい。焦光対物レンズ118は患者用アダプター120にレーザービーム114の焦点を合わせ、患者用アダプター120と分離可能に連結されていてもよい。焦光対物レンズ118は、fθ対物レンズのような適切な光学素子であってもよい。
【0039】
患者用アダプター120は眼球22の角膜と接触して配置されている。その例においては、患者用アダプター120は接触部品124に連結されたスリーブ128を有している。スリーブ128は焦光対物レンズ118に連結されている。接触部品124はレーザービームに対して透明であり、角膜と接触して配置される接触面126を有し、角膜の一部分を平らにしてもよい。ある実施の形態において、接触面126は平面であり、角膜上に平面領域を形成する。接触面126はx−y平面上にあってもよく、その結果として、平面領域もx−y平面上にある。他の実施の形態においては、角膜は平面領域を含む必要はない。
【0040】
制御コンピューター30は、制御プログラム34に従って、例えばレーザー光源112及びスキャナー116である制御可能な構成部品を制御する。制御プログラム34は、眼球22の外側部分の光学濃度に従って計算されたレーザーエネルギーを有するパルス化されたレーザービームの焦点を合わせるようにレーザー装置15の制御可能な構成部品に指示を与えるコンピューターコードを含んでいる。
【0041】
ある動作例において、スキャナー116は適切な形状の切開を形成するためにレーザービーム114を向けてもよい。切開の型の例としてはベッド切開と側部切開が含まれる。ベッド切開は典型的にはx−y平面上にある2次元の切開である。スキャナー116は接触面126の下に一定のz値でレーザービーム114の焦点を合わせ、そしてx−y平面内のあるパターンで焦点を動かすことによってベッド切開を形成してもよい。側部切開は(ベッド切開からのような)角膜表面の下から表面へ伸びる切開である。スキャナー116はレーザービーム114の焦点のz値を変え、そして任意にx及び/又はy値を変えることによって側部切開を形成してもよい。
【0042】
図7はある実施の形態における光学濃度測定値に従ってレーザーエネルギーを調整するための方法の一例を表している。その方法はコンピュータシステム20によって実行されてもよい。その方法はコンピュータシステム20が眼球22の外側部分の光学濃度測定値を受信する工程210から開始される。ある実施の形態において、外側部分とは角膜の外側の層であってもよい。ある実施の形態において、光学濃度測定値は外側部分の一つ以上の位置に対して一つ以上の光学濃度値を含み、各々の光学濃度値は一つの位置の光学濃度を示しているようにしてもよい。
【0043】
レーザー調整値は工程212において光学濃度測定値に従って決定される。ある実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38がレーザー調整値を決定する。その実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38は幾つかの光学濃度値を幾つかのレーザー調整値に結び付ける(テーブル42のような)データ構造にアクセスしてもよい。レーザーエネルギーモジュール38は、ある一つの位置の光学濃度値に結び付けられたその位置のレーザー調整値を特定してもよい。
【0044】
レーザーエネルギーは、工程214でレーザー調整値に従って決定される。ある実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38はレーザーエネルギーを決定してもよい。その実施の形態において、レーザーエネルギーモジュールはある一つの位置における初期のレーザーエネルギーを決定してもよく、その後、その位置に対するレーザー調整値に従って初期のレーザーエネルギーを調整してもよい。
【0045】
レーザー装置15は、工程216でレーザーエネルギーを有するレーザービームを外側部分を通して標的部分に向ける指示が与えられる。例えば、レーザーエネルギーモジュール38は、ある一つの位置にレーザービームをその位置に対して決定された調整後のレーザーエネルギーで向けるようにレーザー装置15に指示を送信してもよい。
【0046】
図8はある実施の形態において試行ショットに従ってレーザーエネルギーを調整する方法の一例を表している。その方法はコンピュータシステム20によって実行されてもよい。その方法はコンピュータシステム20が試行部分の方向に試行ショットを向ける指示をレーザー装置に与える工程310から始まる。ある実施の形態において、試行部分はドナー或いは患者の重要でない生体組織であってもよい。
【0047】
試行ショットの作用が工程312で確定される。ある実施の形態において、顕微鏡13は目的にかなう一つの作用を持つ一つの試行ショットを特定するために使われてもよい。目的にかなう一つの作用とは、一つ以上の(最善の効果のような)要求事項を満足する一つ以上の作用のうちの一つである。例えば、試行ショットの目的にかなう一つの作用とは、生体組織を損傷することなしにその生体組織に切れ目を作ることであってもよい。
【0048】
レーザーエネルギーは工程314において上記作用に従って決定される。ある実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38はレーザーエネルギーを決定してもよい。その実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38は目的にかなう作用を有する試行ショットを特定し、特定された試行ショットのレーザーエネルギーであるようにレーザーエネルギーを決定してもよい。ある実施の形態において、レーザーエネルギーモジュール38は測定された作用からレーザーエネルギーを内挿及び/又は外挿可能なものであってもよい。例えば、もし低いレーザーエネルギーを持つ一つのレーザーショットが切れ目を作らず、しかしより高いレーザーエネルギーを持つ次のショットが過大な損傷を引き起こしたならば、その高いエネルギーと低いエネルギーの間のレーザーエネルギーモジュールが使われてもよい。
【0049】
レーザー装置15は工程316にて上記レーザーエネルギーを有するレーザービームを標的部分に向けるように指示を与えられる。例えば、レーザーエネルギーモジュール38は標的部分の方向にそのレーザーエネルギーを有するレーザービームを向ける指示をレーザー装置15に送信する。
【0050】
ここに開示されたシステムと装置の構成要素は、インターフェース、ロジック、メモリー、及び/又は他の適切な要素を含んでいてよく、それらのいずれもハードウエア及び/又はソフトウエアを含んでいてもよい。インターフェースは、入力を受信し、出力を送信し、入力及び/又は出力を加工処理し、及び/又は他の適切な動作を実行することができる。ロジックは例えば入力から出力を生成する指示を実行するような、構成要素の動作を実行することができる。ロジックはメモリーの中に符号化されていてもよく、コンピューターによって実行された時に動作を行ってもよい。ロジックは一つ以上のコンピューターのような処理装置、一つ以上のマイクロプロセッサー、一つ以上のアプリケーションソフト、及び/又は他のロジックであってもよい。メモリーは情報を蓄積することができ、一つ以上の有体で、コンピューターで読み取り可能な、及び/又はコンピューターで実行可能な記憶媒体である。メモリーの例としては、コンピューターメモリー(例えば、ランダムアクセスメモリー(RAM)、或いはリードオンリイメモリー(ROM))、大量記憶媒体(例えば、ハードディスク)、取り外し可能な記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)、或いはデジタルビデオディスク(DVD))、データベース、及び/又はネットワークによる記憶(例えば、サーバー)、及び/又は他のコンピューターで読み取り可能な媒体が含まれる。
【0051】
特定の実施の形態においては、その実施の形態の動作は、コンピュータープログラムが符号化された一つ以上のコンピューターで読み取り可能な媒体、ソフトウエア、コンピューターが実施可能な指示、及び/又はコンピューターによって実行されうる指示によって実現されてもよい。特定の実施の形態においては、その動作は、蓄積し、具体化され、及び/又はコンピュータープログラムが符号化され、及び/又は、蓄積され及び/又は符号化されたコンピュータープログラムを持つ、一つ以上のコンピューターで読み取り可能な媒体によって実現されてもよい。
【0052】
この開示はある実施の形態によって説明されたが、(変化、置き換え、追加、省略、及び/又は他の変更のような)実施の形態の変更は当業者にとって明白であろう。従って、それらの変更は本発明の範囲からはずれることなしに実施の形態に対して行ってもよい。例えば、変更はここに開示されたシステムと装置に対して行ってもよい。システムと装置の構成部品は統合されていても、或いは分離されていてもよく、システムと装置の動作はより多くても、より少なくても、或いは他の構成部分によって実行されてもよい。もう一つの例において、変更はここに開示された方法に対してなされてもよい。その方法はより多くても、より少なくても、或いは他の工程を含んでいてもよく、その工程は適切な順番で実行されてもよい。
【0053】
他の変更が本発明の範囲から外れることなく実施可能である。例えば、本記載は特に実用的な適用についての実施の形態を説明したが、他の適用も当業者にとって明白であろう。加えて、将来的な発展がこの中で議論された技術に対して起こりうり、開示されたシステム、装置、及び方法はそのような将来的な発展とともに用いられるであろう。
【0054】
本発明の範囲は、その記載のみに関して決定されるべきではない。特許の法令に従って、その記載は模範的な実施の形態を用いて発明の原理と動作の様式を説明し例示している。その記載は当業者がシステム、装置、及び方法を様々な実施の形態において様々な変更を伴って使用することができるようになっているが、本発明の範囲を限定するために使われるべきではない。
【0055】
本発明の範囲は請求項とその請求項が権利を保有する均等物の広い範囲に関して決定されるべきである。総ての請求項の用語は、そうではないとの明白な表示がこの中でなされていないならば、最も広い合理的な解釈と当業者によって理解される通常の意味を与えられるべきである。例えば、「a」、「the」等のような単数冠詞の使用は、請求項がそれと反対の明白な限定を記述していないのであれば、指示された要素の一回以上の再引用のためのものと読まれるべきである。もう一つの例として、「each」はひとそろいの中の各々の部分、或いはひとそろいを構成するまとまりの中の各々の部分のことを意味しており、ひとそろいとは零、或いは一以上の要素を含んでいてもよい。要するに、本発明は変更が可能であり、発明の範囲はその記載のみに関してではなく、請求項と均等物の広い範囲に関して決定されるべきである。