(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6039703
(24)【登録日】2016年11月11日
(45)【発行日】2016年12月7日
(54)【発明の名称】デンタルインプラント及びそのボルト締結構造
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20161128BHJP
F16B 39/28 20060101ALI20161128BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
F16B39/28 Z
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-1488(P2015-1488)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-123778(P2016-123778A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年2月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391006636
【氏名又は名称】ハードロック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002088
【氏名又は名称】特許業務法人プロイスIPパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107445
【弁理士】
【氏名又は名称】小根田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】若林 克彦
【審査官】
宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−110922(JP,A)
【文献】
特開2014−168592(JP,A)
【文献】
特開2014−147431(JP,A)
【文献】
特開平10−037936(JP,A)
【文献】
特開平09−236109(JP,A)
【文献】
特表2013−511339(JP,A)
【文献】
特開2010−220700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
F16B39/28−39/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口するネジ穴を有するベース部材と、該ベース部材に上方から外嵌される被取付部材と、該被取付部材を前記ベース部材に締結固定するボルトとを備え、前記ベース部材のネジ穴の底部には、前記ネジ穴の内径よりも小径の直円筒内面を有する係合穴が設けられており、前記ボルトは、前記ネジ穴に螺合するネジ軸部と、該ネジ軸部よりも大径のボルト頭部と、前記ネジ軸部の先端下面から下方に突出して前記係合穴の直円筒内面に係合する係合軸部とを備え、該係合軸部が前記係合穴の直円筒内面に係合することにより前記ネジ穴に対して前記ネジ軸部が僅かに偏心及び/又は傾斜されるよう、前記係合軸部が前記ネジ軸部に対して僅かに偏心して設けられているか或いは前記係合穴が前記ネジ軸部に対して僅かに偏心して設けられており、その偏心量は、前記係合軸部が前記係合穴の直円筒内面に係合した状態で前記ネジ穴に対して前記ネジ軸部がこれらのハメアイの遊びの範囲で僅かに偏心及び/又は傾斜することによりプリベリングトルクがほぼ一定に保たれたまま前記ボルトが螺進するよう設定されていることを特徴とするボルト締結構造。
【請求項2】
請求項1に記載のボルト締結構造において、前記被取付部材は、前記ボルト頭部の少なくとも一部が内嵌する嵌合孔と、ボルト頭部が上方から係合する係合面とを備え、前記被取付部材が外嵌されたベース部材のネジ穴に前記ボルトを螺着していく際に前記係合穴に前記係合軸部が係合する前に前記嵌合孔への前記ボルト頭部の内嵌が開始されるよう構成されていることを特徴とするボルト締結構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボルト締結構造において、前記係合軸部の先端面の外周縁に、該係合軸部の前記係合穴への係合を案内するテーパー面を設けたことを特徴とするボルト締結構造。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のボルト締結構造において、前記ベース部材には、前記被取付部材の下端面が上方から係合する係合面が設けられており、前記ボルトの締結によって、被取付部材の下端面と前記係合面とが液密状に接触することを特徴とするボルト締結構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のボルト締結構造を有するデンタルインプラント
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩み止め機能を有するボルト締結構造に関し、特に、デンタルインプラントに好適に用いることができるボルト締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デンタルインプラント(歯科インプラント)が欠損歯の問題を解決する目的で種々開発されている。一般的なインプラントは、顎骨に埋め込まれるフィクスチャー(人工歯根若しくはインプラント体とも呼ばれる。)と、該フィクスチャーの上部に取付固定されるアパットメント等の上部構造とを備えている。アパットメントとフィクスチャーとの固定方法の一つとして、アパットメントスクリュー(ボルトの一種)によりアパットメントをフィクスチャーに固定する構造が知られている。
【0003】
従来より、アパットメントスクリューの緩みを防止するための技術が、例えば下記の特許文献1〜4に開示されているが、いずれの先行技術も緩み止め構造としての実績がなく、普及するには至っていない。
【0004】
一方、本願出願人は、従来より高い緩み止め効果を発揮し得るハードロックナット(登録商標)の製造販売を行うとともに、このハードロックナットの原理を採用した緩み止めボルトの開発をも行っており、例えば下記の特許文献5に開示している。
【0005】
この従来の緩み止めボルトは、先端下面に裁頭円錐形の凸部(2)又は凹部を有するボルト(1)と、前記ボルトの凸部又は凹部と対称的な凹部(3)又は凸部を上面に有する円盤状受部材(4,4’)とからなり、円盤状受部材はボルトが螺入されるネジ穴(5)に挿入乃至螺合できるように該ネジ穴の内径と略等しい外径で形成され、且つボルト並びに円盤状受け部材の向かい合う凹部又は凸部は相対的に少し偏芯させて形成されている構造となされており、円盤状受部材を予めボルトの寸法に応じた正しい位置にセットしておくことにより、ボルトの最終螺入過程において凹部の傾斜内面と凸部の傾斜側面との接触によってボルト並びに受部材に水平方向の応力が増大し、大きな水平応力が内在されることで緩み止め効果を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−220700号公報
【特許文献2】特開2003−325552号公報
【特許文献3】特開2005−270334号公報
【特許文献4】特開平9−66065号公報
【特許文献5】特許第3814344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハードロックナットによって培われた凹凸偏心嵌合による緩み止め機能には多数の実績と大きな信用を得ているため、上記緩み止めボルトをデンタルインプラントに採用すれば信用性の高い製品を提供できることとなるが、フィクスチャーに設けた微小なネジ穴内の軸方向に適切な位置に受部材をセットしておくことは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、加工及び取付けが容易でありながらも偏心嵌合による信用性の高い緩み止め効果を発揮し得る新たなボルト締結構造を提供し、これにより長年の使用によっても緩みが殆ど発生しないデンタルインプラントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
【0010】
即ち、本発明のボルト締結構造は、上面に開口するネジ穴を有するベース部材と、該ベース部材に上方から外嵌される被取付部材と、該被取付部材を前記ベース部材に締結固定するボルトとを備え、前記ベース部材のネジ穴の底部には、前記ネジ穴の内径よりも小径の直円筒内面を有する係合穴が設けられており、前記ボルトは、前記ネジ穴に螺合するネジ軸部と、該ネジ軸部よりも大径のボルト頭部と、前記ネジ軸部の先端下面から下方に突出して前記係合穴の
直円筒内面に係合する係合軸部とを備え、該係合軸部が前記係合穴
の直円筒内面に係合することにより前記ネジ穴に対して前記ネジ軸部が僅かに偏心及び/又は傾斜されるよう、前記係合軸部が前記ネジ軸部に対して僅かに偏心して設けられているか或いは前記係合穴が前記ネジ軸部に対して僅かに偏心して設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
かかる本発明のボルト締結構造によれば、被取付部材を外嵌したベース部材のネジ穴にボルトを螺着していくと、ボルトのネジ軸先端に設けた係合軸部がネジ穴底部の係合穴に挿通され、該係合軸部の外周面が係合穴の内周面に係合することで、ネジ穴に対してネジ軸部がこれらのハメアイの遊びの範囲で僅かに偏心若しくは傾斜され、係合軸部と係合穴との係合部位とは径方向反対側でネジ軸部のネジ山がネジ穴のネジ山に強く押しつけられるか或いはボルト頭部がその嵌合孔の内周面の周方向一部に強く押しつけられて、ネジ軸部に水平方向の一定の内部応力が蓄積されるとともに、係合軸部と係合穴内周面の係合部位の摩擦力がある程度大きくなって、ボルトを回転操作するためにある程度のプリベリングトルクを要するようになる。本発明では、円錐台形状の凹凸部ではなく、直円筒内面を有する係合穴内面に係合軸部を係合させる構成とし、さらに係合穴の深さをボルト締結完了時の係合軸部の下端位置よりも深くしておくことで、上記プリベリングトルクよりも大きな所定の締め付けトルクでさらにボルトを回転操作することができ、ボルトをベース部材に対して所定の軸方向位置まで締め付けることができる。即ち、本発明では、締め付け量に応じて水平方向の内部応力が飛躍的に増大していく構造とはせず、係合軸部と係合穴との偏心嵌合によりある程度のプリベリングトルクを有したままボルトの締結を行える構成としている。したがって、インプラントなどの微小構造物にも本発明構造を容易に加工できるとともに、ボルト締結作業も容易かつ迅速に行うことができ、ボルト締結後は上記偏心嵌合によるプリベリングトルクによる安定した緩み止め効果を発揮することができる。さらに加えて、従来構造ではボルト頭がその座面に強く押圧されるよう所定の締め付けトルクで締め付けなければ容易に緩んでしまうところ、デンタルインプラントのフィクスチャーの歯槽骨に対する固着力がケースバイケースで一定していないため、所定の締め付けトルクで締め付けると歯槽骨からフィクスチャーが剥離してしまい、フィクスチャーを一旦除去して再度埋め込み治療を行う必要が生じることがあり、したがって、治療施術者の技量と経験により締め付けトルクを調整するということが行われていたが、本発明では、ボルト頭がその座面に当接する前段階から所定のプリベリングトルクが生じる構造のため、上記偏心量を適切に設定することによりプリベリングトルクを従来構造における所定締め付けトルクより小さくしつつも上記プリベリングトルクにより必要な緩み止め作用を生じさせることができ、結果的に従来よりも小さな所定の締め付けトルクで締め付けるものでありながらも従来よりも緩みにくいボルト締結構造を提供できる。
【0012】
前記被取付部材は、前記ボルト頭部の少なくとも一部が内嵌する嵌合孔と、ボルト頭部が上方から係合する係合面とを備えることができる。また、前記被取付部材が外嵌されたベース部材のネジ穴に前記ボルトを螺着していく際に前記係合穴に前記係合軸部が係合する前に前記嵌合孔への前記ボルト頭部の内嵌が開始されるよう構成することができる。かかる構成は、例えば、各部の寸法設定の最適化等によって実施できる。これによれば、ボルト頭部の軸心の傾斜が、嵌合孔とのハメアイの範囲に規制され、ボルト頭部の傾きを規制することにより、係合面とボルト頭部とを全周にわたってほぼ均一に面接触させることができ、ボルト頭部と被取付部材との間の液密性を向上できる。したがって、例えばデンタルインプラントに本発明構造を用いた場合において、ボルト頭部と被取付部材との間から唾液等がネジ穴内に流入してしまうことを防止できる。
【0013】
さらに、前記係合軸部の先端面の外周縁に、該係合軸部の前記係合穴への係合を案内するテーパー面を設けておくことが好ましく、これによりボルトの締結作業過程で係合軸部が軸方向から見て係合穴の周壁にオーバーラップしている場合でも、係合軸部を係合穴へ容易に係合させることが可能となる。
【0014】
また、前記ベース部材には、前記被取付部材の下端面が上方から係合する係合面が設けられており、前記ボルトの締結によって、被取付部材の下端面と前記係合面とが液密状に接触するものとすることが好ましい。これによれば、例えばデンタルインプラントに本発明構造を用いた場合において、ベース部材と被取付部材との間から唾液等がネジ穴内に流入してしまうことを防止できる。
【0015】
上記した本発明構造は種々の用途に用いることができるが、好ましくは、デンタルインプラントに具備させることができる。例えば、デンタルインプラントのフィクスチャーをベース部材とし、アパットメントを被取付部材とし、アパットメントスクリューをボルトとして、本発明構造を適用できる。また、フィクスチャーとアパットメントとの間に種々のアパットメントに適合させるためのアタッチメントを設ける場合には、フィクスチャーをベース部材とし、アタッチメントを被取付部材とし、アタッチメントスクリューをボルトとして本発明構造を適用することもできるし、また、アタッチメントスクリューをベース部材とし、アパットメントを被取付部材とし、アパットメントスクリューをボルトとして本発明構造を適用することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加工及び取付けが容易でありながらも偏心嵌合による信用性の高い緩み止め効果を発揮し得る新たなボルト締結構造を提供でき、ひいてはアパットメントスクリューなどのボルトの緩み止め効果の高いデンタルインプラントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインプラントの全体断面図である。
【
図2】同インプラントのフィクスチャーを示し、(a)は平面図、(b)は半断面正面図である。
【
図3】同インプラントのアタッチメントを示し、(a)は平面図、(b)は半断面正面図、(c)は底面図である。
【
図4】同インプラントのアパットメントを示し、(a)は平面図、(b)は半断面正面図、(c)は底面図である。
【
図5】同インプラントのアタッチメントスクリューを示し、(a)は平面図、(b)は半断面正面図である。
【
図6】同インプラントのアパットメントスクリューを示し、(a)は平面図、(b)は半断面正面図である。
【
図7】アパットメントを固定するためのボルト締結構造部位の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1〜
図6は本発明の一実施形態に係るボルト取付構造を有するデンタルインプラントと、その構成部品を示している。このデンタルインプラントは、歯槽骨内に埋め込まれるフィクスチャー1と、該フィクスチャー1の上端部にアタッチメント2を介して取り付けられるアパットメント3と、フィクスチャー1に対してアタッチメント2を固定するためのアタッチメントスクリュー4と、アタッチメントスクリュー4に対してアパットメント3を取り付けるためのアパットメントスクリュー5とを備え、これら各構成部品は例えばチタン合金製である。
【0020】
フィクスチャー1は、
図2に示すように、図示例ではパラレル・インプラント(ストレート・インプラント)であって、フランジ部11aと該フランジ部11a上部に段部を介して連設された六角ナット状の工具係合部11bとを有するプラットフォーム部11(ボルト頭部)が上端に設けられ、プラットフォーム部11の下縁からフィクスチャー1の下端(先端)まで同径の外周ネジ部12が設けられている。また、フィクスチャー1には、プラットフォーム部11の上面に開口するネジ穴13が軸方向に沿って設けられており、該ネジ穴13の底部には、ネジ穴13の内径(メネジ山径)よりも小径の直円筒内面を有する断面円形の係合穴14が設けられている。この係合穴14は、ネジ穴13と同心状に設けられている。
【0021】
アタッチメント2は、
図3に示すように、略円錐台形筒状であって、その下端部にはフィクスチャー1のプラットフォーム部11の工具係合部11bに外嵌する逆円錐台形筒状の嵌合部21が設けられている。この嵌合部21の下面は、フィクスチャー1のプラットフォーム部11の段部上面に上方から当接するとともに、全周に亘って液密状に面接する。該嵌合部21より上部のアタッチメント2の内周には、アタッチメントスクリュー4の嵌合軸部が内嵌する円筒状内周面を有する嵌合孔22が上下方向に貫通して設けられている。
【0022】
アタッチメントスクリュー4は、アタッチメント2(被取付部材)をフィクスチャー1(ベース部材)に固定するボルトであって、
図5に示すように、六角ナット状の工具係合部41aとフランジ部41bと柱状の嵌合軸部41cとが連設されてなるボルト頭部41と、該ボルト頭部41から下方に延設され且つフィクスチャー1のネジ穴13に螺合するネジ軸部42と、該ネジ軸部42の下端面から下方に延設され且つフィクスチャー1の係合穴14に挿通されてその内周面に係合する係合軸部43とを一体に備え、この係合軸部43の下端面の外周縁には係合軸部43の係合穴14への係合を案内するテーパー面43aが設けられている。
【0023】
係合軸部43は、ネジ軸部42に対して僅かに偏心して設けられており、これにより係合軸部43がフィクスチャー1の係合穴14に係合することによりネジ穴13に対して前記ネジ軸部が僅かに偏心及び傾斜するように構成されている。本実施形態では、嵌合軸部41cがアタッチメント2の嵌合孔22に嵌合することによりボルト頭部41の傾斜及び水平方向の位置ずれが規制されているため、嵌合軸部41cと嵌合孔22との僅かなハメアイの範囲(例えば、0.1mm未満)でアタッチメントスクリュー4の傾斜や水平方向の位置ずれが許容され、かかる傾斜や水平方向の位置ずれに応じた量だけネジ軸部42がネジ穴13に対して偏心乃至傾斜し、これにより周方向一部でネジ軸部42のネジ山がネジ穴13のネジ山に対して強く押しつけられるか或いはボルト頭部41の嵌合軸部41cが嵌合孔22の内周面の周方向一部に強く押しつけられるようになり、全体としてネジ軸部42に水平方向の内部応力が蓄積される。また、係合軸部43が係合穴14に係合した状態では、プリベリングトルクがほぼ一定に保たれたままスクリュー4を螺進させていくことが可能であり、これにより、正しい位置までスクリュー4を締結することが可能である。
【0024】
アタッチメントスクリュー4のフランジ部41bは、アタッチメント2の上端面に液密状に当接・係合するとともに、アタッチメント2の外周面と面一となるテーパー状外周面を有している。
【0025】
また、アタッチメントスクリュー4のボルト頭部41には、上面に開口するネジ穴44が軸方向に沿って設けられており、該ネジ穴44の底部には、ネジ穴44の内径(メネジ山径)よりも小径の直円筒内面を有する断面円形の係合穴45が設けられている。この係合穴45は、ネジ穴44と同心状に設けられている。
【0026】
アパットメント3は、
図4に示すように、アタッチメント2及びアタッチメントスクリュー4に被冠されるテーパー筒状の部材であり、その下端面はアタッチメント2の嵌合部21の上面に全周にわたって液密状に当接・係合する。アパットメント3の上端部には、アパットメントスクリュー5のボルト頭部51が嵌合する嵌合孔31を内周に有するクラウン取付部32が設けられている。このクラウン取付部32の外周面は略方形状に面取りされている。
【0027】
アパットメントスクリュー5は、アパットメント3(被取付部材)をアタッチメント2及びアタッチメントスクリュー4(ベース部材)に固定するボルトであって、
図6に示すように、上面にマイナスドライバー等の工具を係合するための工具係合溝を有する円柱状のボルト頭部51と、該ボルト頭部51の下面から下方に連設されたネジ軸部52と、該ネジ軸部52の下端面から下方に連設された係合軸部53とを備え、該係合軸部53はネジ軸部52に対して僅かに偏心して設けられ、これにより係合軸部53がアタッチメントスクリュー4の係合穴45に係合することによりネジ穴44に対してネジ軸部52が僅かに偏心及び傾斜するように構成されている。係合軸部53のネジ軸部52に対する偏心量は、ネジ穴44とネジ軸部52とのハメアイ(ネジ穴44とネジ軸部52が同心状であるときのネジ軸部52のネジ山の頂部とネジ穴44のネジ山の谷部とのスキマ)と同程度とすることができる。本実施形態では、ボルト頭部51がアパットメント3の嵌合孔31に嵌合することによりボルト頭部51の傾斜及び水平方向の位置ずれが規制されているため、ボルト頭部51と嵌合孔31との僅かなハメアイの範囲(例えば、0.1mm未満)でアパットメントスクリュー5の傾斜や水平方向の位置ずれが許容され、かかる傾斜や水平方向の位置ずれに応じた量だけネジ軸部52がネジ穴44に対して偏心乃至傾斜し、これにより周方向一部(図示右側)でネジ軸部52のネジ山がネジ穴44のネジ山に対して強く押しつけられるとともに周方向他側(図示左側)ではネジ軸部52のネジ山がネジ穴44のネジ山から浮くようになり、ネジ軸部52に水平方向の内部応力が蓄積される。また、係合軸部53が係合穴45に係合した状態では、プリベリングトルクがほぼ一定に保たれたままスクリュー5を螺進させていくことが可能であり、これにより、正しい位置までスクリュー5を締結することが可能である。
【0028】
本実施形態のインプラントによれば、フィクスチャー1に対するアタッチメント2の固定、並びに、アタッチメント2及びアタッチメントスクリュー4に対するアパットメント3の固定に本発明のボルト締結構造を用いたので、アタッチメント2及びアパットメント3のいずれの締結構造においても各スクリュー4,5の緩みが殆ど発生せず、長年に亘り緩みの生じ難いインプラントを提供できる。また、各係合穴14,45の深さを各スクリュー4,5の締結完了時の係合軸部43,53の下端位置よりも深くしておくことで、フィクスチャー1とアタッチメント2との当接面、及び、アタッチメント2とアパットメント3との当接面を密に押圧させるまで各スクリュー4,5を締結させることができる。
【0029】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では係合軸部をネジ軸部に対して偏心させたが、ベース部材側の係合穴をネジ穴に対して偏心させても同等の緩み止め効果を発揮し得る。